図1を参照して、この発明の一実施例である基礎貫通用鞘管10(以下、単に「鞘管10」という。)は、鞘管本体30と養生蓋50とを備える。鞘管10は、建物の基礎を貫通する排水管などの配管を施工するために用いられるものであり、基礎に埋設固定されることによって、基礎の屋内側と屋外側とを連通させる貫通路を形成する。そして、この鞘管10(具体的には鞘管本体30)内に挿通した内管12によって屋内側配管14と屋外側配管16とを連結することにより、基礎を貫通する配管が施工される(図13(C)参照)。
図1に示すように、この実施例では、布基礎100に対して鞘管10を適用して、この鞘管10内を通るように排水管18を施工する例を示す。布基礎100は、立上り部(立上り基礎)102とその下端に設けられるフーチング104とを備え、逆T字形の断面形状を有する。また、立上り部102には、布基礎100の打設時においてボイド孔106が予め形成される。ボイド孔106は、鞘管本体30の横管部32の外径よりも若干大きいまたは略同じ内径を有する断面円形の貫通孔である。
なお、布基礎100の立上り部102の厚みは、一般的には150〜170mmに設定されるが、この実施例では、最も厚い部類に入る190mmを想定している。また、施工する排水管18は、内径75mmの合成樹脂管を想定している。後述する鞘管10の各部の寸法は、これらに合わせて設定された寸法である。
先ず、鞘管10内に配設される内管12の一例について説明する。内管12は、鞘管10内に配置されて、屋内側配管14と屋外側配管16とを連結する継手であって、排水管18の一部を構成する(図13(C)参照)。
図2に示すように、内管12は、可撓性を有さないエルボ状の硬質管であって、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。この実施例では、内管12として汎用の90°大曲りエルボが用いられる。すなわち、内管12は、90°の角度で湾曲する曲管状の内管本体20を有し、その上流側端部には、屋内側配管14と接続される第1受口22が上向きに形成され、その下流側端部には、屋外側配管16と接続される第2受口24が横向きに形成される。第1受口22および第2受口24の外径、つまり内管12の径方向における最大幅は、たとえば97mmである。
続いて、鞘管10の構成について具体的に説明する。図3に示すように、鞘管10は、90°エルボ状に形成される鞘管本体30と、鞘管本体30の上開口36aに着脱可能に装着される養生蓋50とを備える。
図4−図6に示すように、鞘管本体30は、横管部32、湾曲部34および縦管部36を含む。鞘管本体30は、硬質塩化ビニル、ポリエチレンおよびポリプロピレン等の合成樹脂によって形成され、ブロー成形などを利用して製造される。横管部32は、横方向に延びる断面円形の短直管状に形成され、その下流側端部に横向きに開口する横開口32aが形成される。横管部32の内径は、たとえば96mmである。湾曲部34は、横管部32の上流側に設けられ、横管部32の上流側端部から連続して上向きに湾曲する筒状に形成される。縦管部36は、湾曲部34の上流側に設けられ、上下方向に延びる短直管状に形成される。この縦管部36の上流側端部に上向きに開口する上開口36aが形成される。
また、横管部32の基端部38、つまり横管部32から湾曲部34への移行部分は、その断面形状が馬蹄形となるように段差状に拡径される。すなわち、横管部32の基端部38は、半円筒状の上半部と半角筒状の下半部とを有し、横管部32の外周面には、鍔状に突出する段差面38aが形成される。横管部32をボイド孔106に嵌め込んで鞘管本体30を設置する際には、ボイド孔106の周縁と段差面38aとが当接することによって、鞘管本体30が位置決めされる。
横管部32の外周面には、周方向に延びる環状の標線40が、軸方向に所定間隔で並ぶように形成される。この標線40は、小突起、小溝および印刷などによって形成される。作業者は、この標線40を目安とすることによって、横管部32をその軸方向と直交する方向に正確に切断し易くなる。
また、湾曲部34の上流側底部には、矩形平板状の平板部42が形成される。鞘管本体30を設置する際には、この平板部42と横管部32の基端部38底面とが、載置面上に載置されることで鞘管本体30が安定し、鞘管本体30の側方への転倒が防止される。
さらに、鞘管本体30の軸方向中央部(主に湾曲部34)には、周方向および軸方向などに延びる複数のリブ44が形成される。リブ44は、たとえば、鞘管本体30の側壁を外側に突き出すことによって形成される。これによって、鞘管本体30の剛性が高められる。なお、リブ44の数および形状などは、図示したものに限定されず、適宜変更可能である。
さらにまた、鞘管本体30には、リング状の保持部材取付部46が設けられる。この保持部材取付部46は、鞘管本体30の周囲にコンクリートを打設する際に、鞘管本体30の浮上(変位)を防止するワイヤ等の保持部材を取り付けるために用いられる。ただし、保持部材取付部46の形状、個数および配置位置などは適宜変更可能である。
また、縦管部36は、横管部32の軸方向において対向配置される半円筒状の側壁36bと、横管部32の軸方向と直交する方向において対向配置されて、側壁36bの周方向の端部同士を連結する側壁36cとによって形成される。つまり、縦管部36の横断面形状は、略小判形とされる。そして、縦管部36の大きさ(上開口36aの開口面積)は、後述する排水管18の更新時に、布基礎100から屋外に突出する排水管18を布基礎100の近傍で切断した後に、鞘管本体30内に残った排水管18をそれ以上分割することなく抜き取ることができる大きさに設定される。これによって、排水管18を更新する際には、排水管18の切断作業を全て、鞘管本体30(貫通路)の外部で行うことが可能となる。
ただし、部材コストや後述する土間コンクリート110の見た目などを考慮すると、縦管部36の上開口36aの大きさは、なるべく小さくすることが好ましい。そこで、この実施例では、排水管18の更新時に、布基礎100から屋外に突出する排水管18を布基礎100の近傍で切断するときには、排水管18を立上り部102側に寄せた状態で切断することとし(図14(B)参照)、縦管部36の大きさは、このときに鞘管本体30内に残る排水管18を抜き取り可能な最小限の大きさに設定される。したがって、横管部32の軸方向における縦管部36の内径(上開口36aの径)は、排水管18の更新時に鞘管本体30内に残った排水管18を抜き取る際、この鞘管本体30内に残った排水管18の抜き取り方向における後端が横管部32の基端部38に達したときに、排水管18の抜き取り方向における先端側部分が縦管部36の内周面にぎりぎり当たらない程度の最小限の大きさに設定される(図14(C)参照)。これにより、上開口36aの大きさが抑えられる。また、鞘管本体30内に内管12を配置した際には、内管12は、横管部32の軸方向に沿って移動可能となる。つまり、排水管18の配管可動域が存在するようになる。横管部32の軸方向における縦管部36の内径は、たとえば285mmである。
また、横管部32の軸方向と直交する方向における縦管部36の内径は、内管12の第1受口22の外径、つまり縦管部36内に配置される排水管18の外径と同じまたは略同じ大きさに設定される。これにより、上開口36aの大きさが抑えられる。また、鞘管本体30内に内管12を挿通した際には、内管12は、縦管部36の側壁36cに支えられて、横管部32の軸方向周りに回転して側方に倒れることが防止される。横管部32の軸方向と直交する方向における縦管部36の内径は、たとえば104mmである。
さらに、縦管部36の側壁36cは、外方に向かって少し(側壁36bの端部を直線的に連結した場合と比較して2−4mm程度)膨らむ湾曲板状に形成される。すなわち、側壁36cの外側面は、外方に向かって膨らむ湾曲面となっている。これによって、上開口36aの大きさを抑えつつ、外圧(側圧)に対する側壁36cの強度が向上され、縦管部36の内方への変形が抑制される。ただし、側壁36cは、周方向中央部に向かって徐々に厚みを大きくすることによって、側壁36cの外側面が外方に向かって膨らむ湾曲面となるように形成することもできるし、平板状に形成することもできる。
そして、鞘管本体30の上開口36aには、その内縁部(つまり縦管部36の上端部内側面)から内側に突出する抜止め用突起48が形成される。この抜止め用突起48は、上開口36aに養生蓋50を装着したときの、養生蓋50の抜け止めに用いられる。この実施例では、抜止め用突起48は、横管部32の軸方向に延びるように、縦管部36の側壁36cの上端部のそれぞれに形成される。抜止め用突起48は、横管部32の軸方向における側壁36cの略全長に亘って延び、その突出高さは、たとえば1−5mmである。
また、鞘管本体30の上開口36aには、その外縁部から外側に突出する(つまり抜止め用突起48とは反対側に突出する)断面半円形の突条49が形成される。突条49は、横管部32の軸方向に延びるように、縦管部36の側壁36cの上端部のそれぞれに形成される。後述のように、ブロー成形後に基体200(図7参照)から鞘管本体30を切り出すと、成形時の歪みが開放されて、縦管部36の側壁36c間の距離が狭まる方向に応力が発生するが、梁のように配置される突条49を上開口36aに形成しておくことによって、上開口36a部分の剛性が上がり、縦管部36の略小判形の形状が適切に保たれる。なお、上述の抜止め用突起48にも、突条49と同様に、上開口36a部分の剛性を上げる効果がある。
上述のような鞘管本体30の製造方法の一例について簡単に説明しておく。図7に示すように、鞘管本体30の製造するときには、中央部に鞘管本体30となる部分を有し、その両端部に上捨て袋202および横捨て袋204を有する袋状の基体200を、ブロー成形によって形成する。このとき、縦管部36の側壁36cの上端となる位置には、突条49を形成しておく。また、縦管部36の側壁36cを外方に向かって少し膨らむ湾曲板状に形成するのに対して、上捨て袋202の側壁を平板状に形成することによって、縦管部の側壁36cよりも上捨て袋202の側壁を内側に凹ましておく。これによって、抜止め用突起48となる部分が基体200に形成される。そして、基体200のブロー成形後に、突条49の上端面に沿って上捨て袋202部分を切断除去すると共に、横管部32が所望の長さとなるように横捨て袋204の部分を切断除去することによって、基体200から鞘管本体30を取り出す。その後、バリを除去する等の後処理を適宜施すことで、鞘管本体30の製造が終了する。
図8−図10に示すように、養生蓋50は、鞘管本体30の上開口36aを封止する封止部52と、上開口36aに内嵌めされる嵌合部54とを有する。封止部52は、上開口36aの形状に合わせて略小判形に形成され、その上面52aは平面状に形成される。また、この実施例では、嵌合部54は、縦管部36の側壁36cのそれぞれと対向するように、封止部52の下面周縁部の直線状部のそれぞれに形成される2本の突条である。嵌合部54の外側面54a間の距離は、鞘管本体30の側壁36cの内側面間の距離とほぼ同じ大きさに設定される。すなわち、鞘管本体30の上開口36aに養生蓋50を装着したときには、嵌合部54の外側面54aと側壁36cの内側面とが近接または当接する。
また、封止部52の下面には、補強部が形成される。この実施例では、嵌合部54の内側面同士を連結するように、封止部52の短手方向(横管部32の軸方向と直交する方向)に延びる複数の第1補強部56と、両側の第1補強部56の外側面中央部から突出して封止部52の長手方向(横管部32の軸方向)に延びる第2補強部58とが形成される。
さらに、封止部52の長手方向における両端部には、封止部52の厚み方向に延びる通し溝60が形成される。この通し溝60は、鞘管本体30を仮固定するために、鞘管本体30内を通されるPPバンド、ワイヤ、針金、紐および糸などの保持部材70を通すために用いられる(図12(A)参照)。これにより、鞘管本体30内を通る保持部材70によって鞘管本体30を仮固定しつつ、鞘管本体30の上開口36aに養生蓋50を適切に装着できる。なお、この実施例では、鞘管本体30に対する養生蓋50の装着方向が一方向に限定されないように、封止部52の長手方向における両端部に通し溝60を形成しているが、通し溝60は、封止部52の周縁部の、横管部32の突出方向に対応する位置に形成されるだけでもよい。また、この通し溝60は、上開口36aから養生蓋50を取り外す際に、棒状治具を挿し込む差込口として利用することも可能である。
このような養生蓋50は、発泡樹脂などの易破壊材料で形成することが好ましい。ここで、易破壊材料とは、外力を及ぼして変形させることで容易に割れて破壊できる易破壊性を有する材料のことであり、素手または簡単な治具を用いた人力で破壊可能な強度を有するものを言う。易破壊材料によって養生蓋50を形成することにより、万一、縦管部36の周囲に打設されるコンクリートからの圧力などによって養生蓋50が上開口36aから抜けなくなってしまった場合でも、養生蓋50を破壊することで上開口36aを開口させることができるようになる。
また、養生蓋50は、発泡倍率が30倍以上70倍以下の範囲内である発泡スチロールによって形成すること好ましく、発泡倍率が40倍以上60倍以下の範囲内である発泡スチロールによって形成することがより好ましい。これによって、養生蓋50は、上述の易破壊性を有する上、鞘管本体30の抜止め用突起48が嵌合部54に食い込み可能な適度な弾性または柔軟性を有し、かつ、嵌合部54が鞘管本体30の上開口36aを内側から支持する補強にもなる強度を有するようになる。この実施例では、発泡倍率が50倍の発泡スチロールによって養生蓋50を形成している。
図11に示すように、養生蓋50を鞘管本体30の上開口36aに装着したときには、封止部52の下面周縁部が縦管部36の上端面によって支持されると共に、嵌合部54が上開口36aに内嵌めされる。この際、上開口36aの内縁部に形成される抜止め用突起48が嵌合部54の外側面54aに食い込んで係合することによって、つまり鞘管本体30の抜止め用突起48と養生蓋50の嵌合部54の外側面54aとの係合構造によって、養生蓋50が適切に抜け止めされる。また、嵌合部54が鞘管本体30の上開口36a部分を内側から支持することによって、上開口36a部分が補強される。
続いて、図12および図13を参照して、鞘管10を用いて建物の布基礎100を貫通する排水管18を施工する管路施工方法の一例について説明する。
この管路施工方法では、先ず、図12(A)に示すように、布基礎100のボイド孔106に鞘管10の横管部32を嵌め込んで、鞘管本体30を仮固定する。この際には、ボイド孔106の周縁と鞘管10の横管部32の段差面38aとを当接させることによって鞘管本体30を位置決めし、PPバンド等の保持部材70を用いて仮固定する。鞘管本体30を仮固定する方法は特に限定されないが、この実施例では、鞘管本体30内を通した保持部材70を布基礎100の立上り部102上面を経由させて環状にし、環状にした保持部材70を締め込むことで、鞘管本体30を吊り上げるようにして仮固定する。その後、鞘管本体30の上開口36aに養生蓋50を装着し、養生蓋50の封止部52の上面に対して水平器を当てる或いは載置して、鞘管本体30が傾いて設置されていないことを確認する。鞘管本体30が傾いている場合には、鞘管本体30の仮固定をやり直す。
鞘管本体30が保持部材70によって仮固定されると、次に、図12(B)に示すように、横管部32とボイド孔106との間の隙間、および湾曲部34のボイド孔106近くの部分の周囲にモルタル108を充填することにより、鞘管本体30を固定する。なお、保持部材70は、モルタル108が硬化した時点で取り外してもよいし、土間コンクリート110を打設するときまで取り付けておいてもよい。
続いて、図12(C)に示すように、鞘管本体30の上開口36aから養生蓋50を取り外した後、上開口36aから鞘管本体30内に内管12を挿入する。そして、横開口32aから鞘管本体30内に屋外側配管16の配管部材を差し込み、鞘管本体30内で内管12の第2受口24に対して屋外側配管16の配管部材を接着接合する。このとき、所望する屋内側配管14の配管位置に合わせて、内管12の配置位置を調整しておく。屋外側配管16の施工が終わると、屋外側配管16の周囲を土等で埋め戻す。
次に、図13(A)に示すように、鞘管本体30の上開口36aに養生蓋50を装着する。その後、図13(B)に示すように、鞘管本体30の周囲の空間を土等で埋め戻した後、或いはそのまま、鞘管10の縦管部36の周囲を覆うように土間コンクリート110を打設して、鞘管本体30を埋設する。なお、図示は省略するが、土間コンクリート110の下には、防湿シートを設置しておくとよい。
ここで、この実施例では、土間コンクリート110の打設時および養生時には、鞘管本体30の上開口36aに養生蓋50が装着されるので、鞘管本体30内に生コンクリートやゴミ等が入り込むことが防止される。また、養生蓋50は、抜止め用突起48によって抜け止めされるので、土間コンクリート110の打設時および転圧時の振動、或いは風の影響などを受けて養生蓋50が不用意に上開口36aから外れてしまうことが防止される。さらに、養生蓋50の嵌合部54が鞘管本体30の上開口36a部分を内側から支持することによって、上開口36a部分が補強されるので、土間コンクリート110打設時の生コンクリート圧による縦管部36(延いては鞘管本体30)の変形が適切に防止される。
土間コンクリート110が硬化して鞘管本体30が完全に固定されると、図13(C)に示すように、養生蓋50を取り外す。このとき、万一、土間コンクリート110からの圧力などによって養生蓋50が上開口36aから抜けなくなってしまった場合には、養生蓋50を破壊することで取り外すとよい。養生蓋50を取り外した後、内管12の第1受口22に対して屋内側配管14の配管部材を接着接合することによって、布基礎100の立上り部102を貫通する排水管18の施工が終了する。
なお、図示は省略するが、排水管18の施工が終了した後は、鞘管本体30の上開口36aを封止する蓋を適宜設けておくとよい。この際の蓋としては、養生蓋50と別のものを用意してもよいし、養生蓋50の封止部52に屋内側配管14を通すための孔を現場で形成することによって、養生蓋50を利用するようにしてもよい。
続いて、図14を参照して、鞘管10を用いて布基礎100を貫通するように施工された排水管18を更新する管路更新方法の一例について説明する。
老朽化等により排水管18を更新する必要が生じた場合には、先ず、図14(A)に示すように、屋内側配管14および屋外側配管16を鞘管10(鞘管本体30)の外部で切断する。また、次の図14(B)の工程において排水管18を立上り部102側に寄せるスペースを確保するため、排水管18を移動させる最大距離L以上の間隔をあけた箇所において、屋外側配管16を再度切断して除去する。なお、図14(A)では、縦管部36の端面近傍で屋内側配管14を切断するようにしているが、この切断位置は、もっと上の方(上流側)であってもよい。同様に、屋外側配管16の切断位置は、もっと下流側であってもよい。
次に、図14(B)に示すように、鞘管本体30内の排水管18を布基礎100の立上り部102側に寄せる。この際には、たとえば、排水管18が鞘管本体30の内周面に当接ないし近接するまで排水管18を立上り部102側に寄せるとよい。ただし、予め所定の基準位置を設けておいて、排水管18をこの基準位置よりも立上り部102側に寄せるようにしてもよい。その後、立上り部102(ボイド孔106)から屋外に突出する屋外側配管16を、立上り部102の屋外側の側面近傍で切断する。
続いて、図14(C)に示すように、鞘管本体30内に残る排水管18を縦管部36の上開口36aから抜き取る。具体的には、鞘管本体30内の排水管18を布基礎100の立上り部102と反対側に寄せながら、排水管18の抜き取り方向における後端(屋外側配管16の先端)を支点として回動させることによって、排水管18を上開口36aから抜き取る。このように、既設の排水管18を除去する際には、排水管18の切断作業を全て、鞘管本体30の外部で行うことが可能であり、鞘管本体30内に残る排水管18も縦管部36の上開口36aから容易に抜き取ることができる。その後、新規の排水管18を鞘管本体30内に挿通して設置することによって、排水管18の更新が完了する。
以上のように、この実施例によれば、養生蓋50の嵌合部54が鞘管本体30の上開口36a部分を内側から支持するので、土間コンクリート110の打設時の生コンクリート圧による鞘管本体30の変形が適切に防止される。
また、上開口36aの内縁部に形成された抜止め用突起48によって養生蓋50が抜け止めされるので、土間コンクリート110の打設時および転圧時などにおいて、養生蓋50が上開口36aから不用意に外れてしまうことが防止される。したがって、鞘管本体30の上開口36aに養生蓋50を適切に装着できる。
さらに、上開口36aを養生蓋50で封止するので、養生テープを用いる場合と比較して、見栄えもよい。
なお、上述の実施例では、側壁36cの略全長に亘って連続的に延びるように抜止め用突起48を形成したが、抜止め用突起48の具体的な形状ないし配置については、適宜変更可能である。たとえば、抜止め用突起48は、側壁36cの一部に形成されていてもよいし、円弧状の側壁36bに形成されていてもよい。また、たとえば、抜止め用突起48は、上開口36aの内縁部の周方向全長に亘って連続的または間欠的に形成されてもよい。また、抜止め用突起48の先端下側部分には、外Rをつけてもよい。
また、養生蓋50が有する嵌合部54および補強部56,58の具体的な形状ないし配置も、適宜変更可能である。たとえば、嵌合部54は、上開口36aの内縁部の周方向全長と対向するように、封止部52の下面周縁部の全長に亘って連続的または間欠的に形成されてもよい。また、補強部56,58は、必ずしも設けられる必要はない。ただし、嵌合部54および補強部56,58は、少なくとも、鞘管本体30の上開口36a部分が扁平し易い方向に対する補強となるように形成されることが望ましい。
さらに、上述の実施例では、鞘管本体30の上開口36aを小判形状(角丸長方形状)に開口させるようにしたが、上開口36aは、馬蹄形、楕円形および円形に開口させてもよい。また、鞘管本体30の上開口36a(縦管部36)の大きさも適宜変更可能であり、鞘管本体30は、内管12のタイプ(一体型、分割型および可撓型など)に合わせて、少なくとも内管12を挿通可能な内径を有していればよい。
また、上述の実施例では、発泡倍率が50倍の発泡スチロールによって養生蓋50を形成するようにしたが、養生蓋50の材質は、特に限定されない。たとえば、養生蓋50は、硬質ポリ塩化ビニル等の強度の高い難破壊材料によって形成することもできる。この場合、養生蓋50には、抜止め用突起48と対応する位置に嵌合溝を形成しておき、抜止め用突起48と嵌合溝とを嵌合させることで、養生蓋50を抜け止めするとよい。すなわち、鞘管本体30と養生蓋50との間の係合構造は、鞘管本体30の抜止め用突起48と養生蓋50の嵌合溝とで構成されてもよい。ただし、この場合には、コンクリートからの圧力などにより、養生蓋50を外せなくなる可能性があるので、養生蓋50の上面に取っ手を設けると好適である。また、養生蓋50に抜止め用突起を設け、鞘管本体30に嵌合溝を設けることで、鞘管本体30と養生蓋50との間の係合構造を構成することもできる。
さらに、上述の実施例では、鞘管本体30の湾曲部34を比較的緩やかに上向きに湾曲させているが、図15に示す実施例のように、湾曲部34は、横管部32の基端部38から略垂直方向に立ち上がるように湾曲させてもよい。これによって、縦管部36を横管部32側、つまり布基礎100の立上り部102の近傍に寄せて配置することが可能となるので、立上り部102の屋内側の壁面に沿わせて屋内側配管14を配管し易くなる。また、鞘管10の縦管部36は、斜め方向に延びるように形成されても構わない。
さらにまた、上述の実施例では、鞘管本体30の横管部32は、ボイド孔106の全長に亘る長さを有するようにしたが、横管部32は、必ずしもボイド孔106の全長に亘る長さを有する必要はない。また、上述の実施例では、布基礎100の立上り部102に断面円形のボイド孔106を形成したが、ボイド孔106の断面形状は特に限定されない。ボイド孔106は、たとえば、断面矩形や断面馬蹄形(アーチ形)の貫通孔であってもよい。
また、上述の実施例では、布基礎100に対して鞘管10を適用した例を示したが、べた基礎に対して鞘管10を適用することもできる。
さらに、上述の実施例では、排水管18は、鞘管10(鞘管本体30)内において90°の角度で立ち上がる(湾曲する)ように配管されているが、これに限定されない。たとえば、排水管18は、鞘管10内において、45°などの任意の角度で湾曲するように配管されてよい。また、内管12には、屋内側配管14として曲管が接続されてもよいし、直接または接続管を介して、合流桝や旋回桝などの桝が接続されてもよい。さらにまた、鞘管10(鞘管本体30)内に挿通される配管は、給水管やガス管であってもよい。
また、上述の実施例では、鞘管10を用いた排水管18の施工方法として、図12および図13に示す方法を例示したが、具体的な施工手順については適宜変更可能である。たとえば、上述の実施例では、内管12および屋外側配管16を配管する前に、鞘管本体30をモルタル108で固定するようにしたが、内管12および屋外側配管16を配管した後に、鞘管本体30をモルタル108で固定してもよい。つまり、図13(A)に示す工程の後に、図12(B)に示す工程をおこなってもよい。また、排水管18の施工は、鞘管本体30の周囲に土間コンクリート110を打設した後にまとめて行うこともできる。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。