JP2018131678A - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
板厚の増大に伴い、焼入れ時の板厚中心部の冷却速度が低下するため、(焼戻し後も)中心部の硬度が得難くなる。
単に硬度をあげるだけの成分設計では靭性の低下を生じるため、板厚200mm超という極厚材では、表層硬度および中心部硬度を確保しつつ、かつ−40℃での低温靭性も確保するための成分バランス調整は困難を極める。
(1)質量%にて、C:0.10%以上、0.14%以下、Si:0.00%以上、0.40以下、Mn:0.90%以上、1.50%以下、Cu:0.00%以上、0.40%以下、Ni:0.20%以上、1.00%以下、Cr:0.60%以上、1.50%以下、Mo:0.60%以上、1.00%以下、V::0.000%以上、0.050%以下、Al:0.050%以上、0.085%以下、N:0.0025%以上、0.0070%以下、B:0.0005%以上、0.0020%以下、P:0.000%以上、0.0100%以下、S:0.000%以上、0.0020%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Al×Nが2.0×10−4以上を満足し、下記式(1)を満足し、鋼の組織が、焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイトの1種または2種を合計で面積率で99%以上であって、残りの組織はフェライト・パーライト・残留オーステナイト・焼戻しされないマルテンサイト、焼戻されないベイナイトであり、板厚中心部に於ける-40℃でのC方向吸収エネルギーの3点平均が20J以上であり、表層の硬度がHBで330以上、板厚中心部の硬度がHBで300以上であることを特徴とする、高強度鋼板。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5≧0.70 (1)
ここでC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vはそれぞれの元素の質量%。
(2)上記成分に加えてさらに、Nb:0.001%以上、0.050%以下、Ti:0.001%以上、0.020%以下、Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、REM:0.0001%以上、0.0030%以下、のうち1種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
(3)質量%にて、C:0.10%以上、0.14%以下、Si:0.00%以上、0.40以下、Mn:0.90%以上、1.50%以下、Cu:0.00%以上、0.40%以下、Ni:0.20%以上、1.00%以下、Cr:0.60%以上、1.50%以下、Mo:0.60%以上、1.00%以下、V::0.000%以上、0.050%以下、Al:0.050%以上、0.085%以下、N:0.0025%以上、0.0070%以下、
B:0.0005%以上、0.0020%以下、P:0.000%以上、0.0100%以下、S:0.000%以上、0.0020%以下、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Al×Nが2.0×10−4以上を満足し、
下記式(1)を満足する成分の鋼を、下式(2)で計算されるAlN固溶温度Ts(℃)以上へ加熱後・熱間圧延し、550℃超Ac1未満の温度で、処理温度T(℃)ならびに処理時間tp(Hr)が下式(3)を満たすように加熱する析出処理の後、常温まで冷却またはそのまま昇温し、Ac3変態点以上1000℃以下に再加熱し水冷する焼入れ処理、500℃以上550℃以下で焼戻して常温まで冷却することを特徴とする、高強度鋼板の製造方法。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5≧0.70 (1)
Ts=7400/(1.95−log([Al]×[N])) (2)
Log(tp[Hr])+0.012×T[℃]≧8.7 (3)
ここでC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Al、N、はそれぞれの元素の質量%。
(4)上記成分に加えてさらに、Nb:0.001%以上、0.050%以下
Ti:0.001%以上、0.020%以下、Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、REM:0.0001%以上、0.0030%以下、のうち1種類以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の高強度鋼板の製造方法。
一般的には結晶粒の細粒化はピン止め粒子の活用または低温圧延によって達成されるが、板厚200mm超では圧延による細粒化が困難であるため、ピン止め粒子を分散させることが重要となる。
図1に示すように、Alが0.050%未満またはAl×Nが2.0×10−4未満となった場合はAlNの総量が十分でないため結晶粒径が50μm超となり、板厚中心部に於ける-40℃でのC方向吸収エネルギー≧20Jが得られない。また、Al≧0.085%となった場合は粗大AlNの生成により板厚中心部に於ける-40℃でのC方向吸収エネルギー≧20Jが確保できなくなるため、上限は0.085%に規制される。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5 (1)
各元素記号は成分組成を意味し、質量%である。
Ts=7400/(1.95−Log([Al]×[N])) (2)
Log(tp[Hr])+0.012×T[℃]≧8.7 (3)
圧延前に溶体化を実施しなかった場合は、鋳造時に生じた粗大AlNが残存し、鋼中のAlNの総量が減るため、析出処理によって得られる微細AlNが減少し、ピン止め効果を得られなくなる。なお、上式(2)の溶体化温度は、非特許文献1などに記載されている公知のものである。
C:0.10%以上、0.14%以下
Cは焼き入れ組織の硬さを高め硬度向上に有効な元素であり0.10%を下限とする。一方で過剰な添加は靭性を損なうため、上限を0.14%とする。
Siは脱酸材として、また強度を改善させるためにも有効な元素ではあるが、多量の添加は焼戻し脆性を助長し靭性を低下させるため低減させることが好ましく、上限を0.40%とする。一方、下限は0.00%でも構わないが、溶鋼精錬時の脱酸効率や脱酸コストの観点から、0.05%以上とすることが好ましい。
Mnは脱酸材として、また焼き入れ性を改善し強度向上に有効な元素であるが、過剰な添加は焼戻し脆性を助長して靭性を低下させるため上限を1.50%とする。下限については特に規制されるものではないが、他の合金と比べて安価にCeqを確保できるため0.90%を下限として添加する。
Cuは低温靭性を損なうことなく鋼の強度を高めることができる元素であるが、多量の添加によって熱間加工時の割れを生じるほか金属Cuの析出などで靭性を低下させるため上限を0.40%とする。CuはCeqを高めることでフェライトの抑制に寄与するが、他の合金元素による代替が可能であり、下限について特に規制されるものではなく、代替できれば0.00%でも構わないが、精錬による皆無化が困難な合金元素であり、0.02%を下限とすることが好ましい。
Niは鋼の強度および靭性を向上するのに有効な元素であり、0.20%以上が添加されるが、過度の添加では効果が飽和するうえ、高価な合金であるNiの多量添加は製造コストの悪化を招くため、工業生産が成り立つ範囲として、上限を1.00%とする。
Cr・Moは焼き入れ性を改善し中心部硬度を上げるうえ、析出硬化により表層ならびに中心部の硬度を底上げする重要な元素であり、Cr・Moともに0.60%以上が添加されるが、多量の添加は合金炭化物形成により却って靭性を低下させるため、Crは上限を1.50%、Moは上限を1.00%とする。
Vは炭化物の形成・焼入れ性の改善を通じて母材強度を向上させるが、多量の添加は合金炭化物形成による靭性の低下を引き起こすため上限を0.050%とする。Ceqを高めることでフェライトの抑制に寄与するが、Vは高価な合金元素であり他の合金によって代替が可能であることから、下限について特に規制されるものではなく、代替できれば0.000%でも構わないが、皆無化が困難な合金元素であり、不可避的不純物として含まれる量として0.003%を下限とすることが好ましい。
Alは脱酸材として有効な元素であるとともに、鋼中Nと結びついてAlNを形成し組織の細粒化に寄与し、靭性の確保に寄与するため0.050%以上が添加されるが、過剰な添加は粗大AlNにより靭性の低下ならびに鋳片の割れを生じるため上限を0.085%とする。
Nは合金元素と窒化物・炭窒化物を形成し細粒化に寄与し靭性確保に寄与するため0.0025%を下限として添加される。一方で鋼中に過剰に固溶した場合ならびに粗大な窒化物・炭窒化物を形成した場合は靭性を低下させるため、0.0070%を上限とする。
Bは微量の添加により鋼の焼入れ性を改善し中心部硬度を向上させ、これに伴いΔHBを低減させる元素であり、0.0005%以上が添加される。しかし、添加過剰となった場合は粗大な金属の炭硼化物を形成し靭性が低下するため、上限を0.0020%とする。
Pは鋼中に含有される不純物元素であり、粒界脆化を助長し靭性を低下させる有害元素であるため、出来るだけ少ないことが好ましく、0.0100%以下まで低減される。下限は0.000%が望ましいが精錬コストの増大ならびに生産性の低下の観点から、0.0010%とすることが好ましい。
Sは鋼中に含有される不純物元素であり、偏析および硫化物の形成を通じて靭性を低下させる元素であるため、出来るだけ少ないことが好ましく、0.0020%以下まで低減される。下限は0.000%が望ましいが精錬コストの増大ならびに生産性の低下の観点から、0.0004%とすることが好ましい。
Nb:0.001%以上、0.050%以下
Nbは炭窒化物を形成し鋼の内部組織の細粒化に寄与する元素であり0.001%以上を含有させることが出来る。しかし、多量の添加によって生じる粗大な炭窒化物は却って靭性を低下させるため上限を0.050%とする。
Tiは安定な窒化物を形成し組織の細粒化に寄与する元素であり、0.001%以上を含有させることが出来る。しかし、Tiの過剰添加は粗大窒化物による靭性低下を生じるため、添加量は0.020%を上限とする。
Ca、Mg、REMは何れもSなどの有害不純物と結合し、無害な介在物を形成することで鋼の機械的性質を改善させることができるため、0.0001%以上含有させることができる。しかし、過剰に添加すると効果が飽和するばかりか鋳造ノズルなどの耐火物の溶損を助長するため、上限を0.0030%とする。
組織:焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイト
本発明では、鋼の組織を焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイトの1種または2種を合計で面積率で99%以上であって、残りの組織はフェライト・パーライト・残留オーステナイト・焼戻しされないマルテンサイト、焼戻されないベイナイトである。
フェライトは鋼材の硬度の低下要因である。とりわけ焼入れ冷却速度の遅い板厚中心部に生じ易く、表層との硬度差の原因になるため、存在しない方が好ましい。パーライトは硬度確保には有効ではあるものの、その硬質さゆえに脆性破壊起点となるため、存在しない方が好ましい。フェライト析出時に排出されるCが濃化することでパーライトは生成されるため、フェライト析出の回避によって同時に抑制される。
Ts=7400/(1.95−log[Al][N]) ‥‥(2)
Log(tp[Hr])+0.012×T[℃]≧8.7 ‥‥(3)
Ac1=750−25×C+22×Si−40×Mn−30×Ni+20×Cr+25×Mo ‥‥(4)
Ac3=937.2−476.2×C+56×Si−19.7×Mn−16.3×Cu−26.6×Ni−4.9×Cr+38.1×Mo+124.8×V+198.4×Al+3315×B−19.1×Nb+136.3×Ti ‥‥(5)
加えて、板厚中心部に於ける-40℃でのC方向吸収エネルギーは、全ての鋼板の板厚中心部からC方向で、ASTM A370に規定されるシャルピー衝撃試験片を採取し、試験を実施した。シャルピー衝撃試験の判定として、−40℃での3本の吸収エネルギーの平均値が20J以上であるものを合格とした。
Claims (4)
- 板厚が200mm超であって、鋼の成分が質量%で
C:0.10%以上、0.14%以下
Si:0.00%以上、0.40以下
Mn:0.90%以上、1.50%以下
Cu:0.00%以上、0.40%以下
Ni:0.20%以上、1.00%以下
Cr:0.60%以上、1.50%以下
Mo:0.60%以上、1.00%以下
V::0.000%以上、0.050%以下
Al:0.050%以上、0.085%以下、
N:0.0025%以上、0.0070%以下、
B:0.0005%以上、0.0020%以下
P:0.0100%以下、
S:0.0020%以下、
残部Feおよび不可避的不純物からなり、
Al×Nが2.0×10−4以上を満足し、
下記式(1)を満足し、
金属組織が、焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイトの1種または2種を合計で面積率で99%以上であって、残りの組織はフェライト・パーライト・残留オーステナイト・焼戻しされないマルテンサイト、焼戻されないベイナイトであり、
板厚中心部に於ける-40℃でのC方向吸収エネルギーの3点平均が20J以上であり、表層の硬度がHBで330以上、板厚中心部の硬度がHBで300以上であることを特徴とする、高強度鋼板。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5≧0.70 (1)
ここでC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Vはそれぞれの元素の質量%。 - 上記成分に加えてさらに、
Nb:0.001%以上、0.050%以下
Ti:0.001%以上、0.020%以下、
Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、
Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、
REM:0.0001%以上、0.0030%以下、
のうち1種類以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。 - 鋼の成分が質量%で
C:0.10%以上、0.14%以下
Si:0.00%以上、0.40以下
Mn:0.90%以上、1.50%以下
Cu:0.00%以上、0.40%以下
Ni:0.20%以上、1.00%以下
Cr:0.60%以上、1.50%以下
Mo:0.60%以上、1.00%以下
V::0.000%以上、0.050%以下
Al:0.050%以上、0.085%以下、
N:0.0025%以上、0.0070%以下、
B:0.0005%以上、0.0020%以下
P:0.0100%以下、
S:0.0020%以下、
残Feおよび不可避的不純物からなり、
Al×Nが2.0×10−4以上を満足し、
下記式(1)を満足する成分の鋼を下式(2)で計算されるAlN固溶温度Ts(℃)以上へ加熱後・熱間圧延し、550℃超Ac1未満の温度で、処理温度T(℃)ならびに処理時間tp(Hr)が下式(3)を満たすように加熱する析出処理の後、常温まで冷却またはそのまま昇温し、Ac3変態点以上1000℃以下に再加熱し水冷する焼入れ処理、500℃以上550℃以下で焼戻して常温まで冷却することを特徴とする、高強度鋼板の製造方法。
Ceq=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5≧0.70 (1)
Ts=7400/(1.95−Log([Al]×[N])) (2)
Log(tp[Hr])+0.012×T[℃]≧8.7 (3)
ここでC、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Al、N、はそれぞれの元素の質量%。 - 上記成分に加えてさらに、
Nb:0.001%以上、0.050%以下
Ti:0.001%以上、0.020%以下、
Ca:0.0001%以上、0.0030%以下、
Mg:0.0001%以上、0.0030%以下、
REM:0.0001%以上、0.0030%以下、
のうち1種類以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の高強度鋼板の製造方法。
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