JP5458624B2 - 加工性に優れた耐磨耗鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工性に優れた耐磨耗鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建設、土木、鉱山等の分野で使用される、例えば、パワーショベル、ブルドーザー、ホッパー、バケットなどの産業機械や運搬機器等で、土砂との接触による磨耗が問題となるような部材用として好適な耐磨耗鋼板およびその製造方法に係り、特に、曲げ加工性に優れるものに関する。
土、砂等による磨耗を受ける部材には、長寿命化のため、耐磨耗性に優れた鋼材が使用される。鋼材の耐磨耗性は、高硬度化することにより、向上することが知られ、耐磨耗性が要求される部材には、Cr、Mo等の合金元素を大量に添加した鋼材に焼入等の熱処理を施し、高硬度化した鋼材が使用されてきた。
例えば、特許文献1には、C:0.10〜0.19%を含み、Si、Mnを適正量含有し、Ceqを0.35〜0.44%に限定した鋼を、熱間圧延後直接焼入れし、あるいは900〜950℃に再加熱したのち焼入れし、300〜500℃で焼戻し、鋼板表面硬さを300HV以上とする耐磨耗鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献2には、C:0.10〜0.20%を含み、Si、Mn、P、S、N、Alを適正量に調整し、あるいは更にCu、Ni、Cr、Mo、Bの1種以上を含有する鋼に、熱間圧延後直接焼入れし、あるいは圧延後放冷した後、再加熱して焼入れし、340HB以上の硬さを付与する、耐磨耗厚鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献3には、C:0.07〜0.17%を含み、Si、Mn、P、S、N、Alを適正量に調整し、あるいは更にCu、Ni、Cr、Mo、Bの1種以上を含有する鋼に、熱間圧延後直ちに焼入れ、あるいは一旦空冷した後に、再加熱して焼入れし、表面硬さが321HB以上で、曲げ加工性に優れた鋼板とする耐磨耗鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献1〜3に記載された技術は、合金元素を多量に添加して、固溶硬化、変態硬化、析出硬化等を活用して、高硬度化することで、耐磨耗特性を向上させている。しかし、合金元素を多量に添加して、固溶硬化、変態硬化、析出硬化等を活用して、高硬度化した場合には、溶接性、加工性が低下するようになり、更に製造コストが高騰する。
ところで、耐磨耗性が要求される部材の場合、使用条件によっては、表面近傍のみを高硬度化して、耐磨耗性を向上させるだけでも良い場合があり、このような場合に用いられる鋼材は、Cr、Mo等の合金元素を多量に添加する必要はなく、焼入れ処理等の熱処理を施して、表面近傍のみを焼入れ組織とすることが考えられる。
しかし、焼入れ組織の高硬度化のためには、一般に、鋼材の固溶C量を増加させる必要があるが、固溶C量の増加は、溶接性の低下、曲げ加工性の低下などを招き、特に曲げ加工性の低下は部材として必要な曲げ加工が制限され使用条件が限定される。
このため、過度に高硬度化を図ることなく、耐磨耗特性を向上させることが可能な耐磨耗鋼板が要望され、特許文献4には、C:0.10〜0.45%を含み、Si、Mn、P、S、Nを適正量に調整し、さらにTi:0.10〜1.0%含有し、平均粒径0.5μm以上のTiC析出物あるいはTiCとTiN、TiSとの複合析出物を400個/mm以上を含み、Ti*が0.05%以上0.4%未満とする表面性状に優れた耐磨耗鋼が提案されている。
特許文献4に記載された技術によれば、凝固時に粗大なTiCを主体とする析出物を生成させ、過度に高硬度化させることなく安価に耐磨耗性を向上させることが可能である。
特開昭62−142726号公報 特開昭63−169359号公報 特開平1−142023号公報 特許3089882号公報
しかしながら、特許文献4に記載された技術では、焼入れ熱処理を実施し、組織を焼入れままのマルテンサイト組織としているため、強度が引張り強さ1000MPa以上と高く、その結果、曲げ加工時の変形抵抗が高くなるため、曲げ加工が容易であるとは云い難く、曲げ加工性に問題を残していた。
一方、耐磨耗鋼の使用用途には衝撃荷重を受けるものがあり、強度が低い場合には、変形するため、鋼板自体の強度として引張り強さ780MPa以上あることが望ましい。
そこで、本発明は、引張り強さ780MPa以上1000MPa未満で、耐磨耗性および曲げ加工性に優れた耐磨耗鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記した目的を達成するために、耐磨耗性と曲げ加工性に影響する各種要因について、鋭意研究を重ね、TiとCを含有する成分系で、圧延後、加速冷却を施すことにより、金属組織がフェライト−ベイナイト組織の複合組織を基地相とし、かつ、マトリクス中に硬質な第二相(硬質相:TiC)を分散させることにより、耐磨耗性を確保したまま、曲げ加工時の加工荷重低減が可能、すなわち、曲げ加工性の改善が可能であることを見出した。
本発明は得られた知見を基に、更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ti:0.1〜1.2%、Al:0.1%以下、更に、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、B:0.0003〜0.0030%の1種または2種以上を含有し、(1)式で示されるDI*が60未満であり、残部Feおよび不可避的不純物からなり、金属組織が、フェライト−ベイナイト相を基地相とし、該基地相中に硬質相が分散していることを特徴する加工性に優れた耐磨耗鋼板。
DI*=33.85×(0.1×C*)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo*+1)×(1.5×W*+1)・・・・・(1)
但し、C*=C−1/4×(Ti−48/14N)、Mo*=Mo×(1−0.5×(Ti−48/14N)、W*=W×(1−0.5×(Ti−48/14N)、
C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,W,Ti,Nは含有量(質量%)
2.更に、質量%でNb:0.005〜1.0%、V:0.005〜1.0%の1種または2種を含有することを特徴とする1記載の耐磨耗鋼板。
3.更に、前記硬質相の分散密度が、400個/mm以上であることを特徴とする1または2に記載の耐磨耗鋼板。
4.1または2記載の組成を有する鋼片を熱間圧延後、18℃/s以上の冷却速度で400℃以上、550℃以下まで冷却することを特徴とする加工性に優れた耐磨耗鋼板の製造方法。
5.更に、550℃以下の温度で焼き戻すことを特徴とする4記載の加工性に優れた耐磨耗鋼の製造方法。
本発明によれば、耐磨耗性を劣化させることなく耐衝撃性と曲げ加工性に優れる耐磨耗鋼板およびその製造方法が得られるので産業上格段の効果を奏する。
耐磨耗性に及ぼすTi添加量の影響を示す図。 引張り強度(YS,TS)に及ぼすTi添加量の影響を示す図。 耐磨耗性に及ぼすDI*の影響を示す図。 引張り強度(YS,TS)に及ぼすDI*の影響を示す図。
本発明に係る耐磨耗鋼板で成分組成、金属組織を規定した理由について説明する。
[成分組成]以下の%表示は、いずれも質量%とする。
C:0.05〜0.35%
Cは、金属組織においてマトリクスの硬度を向上させて耐磨耗性を向上させるとともに、硬質な第二相(以下、硬質相ともいう)としてのTi炭化物を形成し、耐磨耗性の向上に、有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。
一方、0.35%を超える含有は、硬質相としての炭化物が粗大になり、曲げ加工時に炭化物を起点として割れが発生する。このため、Cは0.05〜0.35%の範囲に規定した。なお、好ましくは0.15〜0.30%である。
Ti:0.1〜1.2%
Tiは、Cとともに本発明における重要な元素であり、耐磨耗性向上に寄与する硬質相としてTi炭化物を形成する必須の元素である。このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。
図1に耐磨耗性に及ぼすTi添加量の影響を、図2に引張り強度(YS,TS)に及ぼすTi添加量の影響を示す。図1において縦軸はラバーホイール磨耗試験における磨耗量を軟鋼(SS400)の磨耗量と比較した耐磨耗比を示す。
供試鋼は、Mass%で、0.33%C−0.35%Si−0.82%Mn−0.05〜1.2%Tiを含む鋼片を、19mmtに圧延後、冷却速度38℃/sの加速冷却により500℃まで冷却して製造し、得られた鋼板について、引張特性、磨耗試験を実施した。
引張試験は、JISZ2201の規定に準拠して、JIS5号試験片を採取して実施し、引張特性(引張強さ:TS、降伏強さ:YS)を求めた。
磨耗試験は、ASTMG65に準拠したラバーホイール磨耗試験によって実施し、試験結果を軟鋼(SS400)の磨耗量と各供試鋼板の磨耗量の比を耐磨耗比として整理した。耐磨耗比が大きいほど、磨耗特性に優れていることを示す。
図1、2より、Ti添加量が0.1%以上となると、耐磨耗性は一般的な耐磨耗鋼と同程度以上の特性で、TSは800MPa程度となる。すなわち、従来の焼入れ熱処理をした耐磨耗鋼板と同等の磨耗特性を有しつつ、加工性を改善し、且つ耐衝撃特性を備えることが可能である。

尚、一般的な耐磨耗鋼の特性は、一般的な熱処理で製造する耐磨耗鋼板について上記と同様の試験を実施して求めた。比較試験に用いた耐磨耗鋼板は、0.15mass%C−0.35mass%Si−1.50mass%Mn−0.13mass%Cr−0.13mass%Mo−0.01mass%Ti−0.0010mass%Bの組成の鋼板を熱間圧延した後、900℃に再加熱後、焼入れ熱処理を施して製造したもので、ブリネル硬さが400HB程度の鋼板である。得られた結果は、上記図1と図2に、0.01mass%Ti量の場合として示している。
一方、1.2%を越えるTiの含有は、硬質相(Ti系炭化物)が粗大化し、曲げ加工時に粗大な硬質相を起点として割れが発生する。このため、Tiは0.1〜1.2%、好ましくは、0.1〜0.8%の範囲に限定した。
Si:0.05〜1.0%
Siは、脱酸元素として有効な元素であり、このような効果を得るためには0.05%以上の含有を必要とする。また、Siは、鋼に固溶して固溶強化により高硬度化に寄与する有効な元素であるが、1.0%を超える含有は、延性、靭性を低下させ、さらに介在物量が増加するなどの問題を生じる。このため、Siは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.05〜0.40%である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、固溶強化により高硬度化に寄与する有効な元素であり、このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Mnは0.1〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.60%である。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸材として作用し、このような効果は、0.0020%以上の含有で認められるが、0.1%を超える多量の含有は、鋼の清浄度を低下させる。このため、Alは0.1%以下に限定することが好ましい。
Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、B:0.0003〜0.0030%の1種または2種以上
Cu:0.1〜1.0%
Cuは、固溶することにより焼入れ性を向上させる元素であり、この効果を得るためには0.1%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を超える含有は、熱間加工性を低下させる。このため、Cuは添加する場合は0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
Ni:0.1〜2.0%
Niは、固溶することにより焼入れ性を向上させる元素であり、このような効果は0.1%以上の含有で顕著となる。一方、2.0%を越える含有は、材料コストを著しく上昇させる。このため、Niは添加する場合は0.1〜2.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜1.0%である。
Cr:0.1〜1.0%
Crは、焼入れ性を向上させる効果を有し、このような効果を得るためには、0.1%以上の含有を必要とするが、0.1%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Crは添加する場合は0.1〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.40%である。
Mo:0.05〜1.0%
Moは、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を越えて含有すると溶接性を低下させる。そのため、Moは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.05〜0.40%である。
W:0.05〜1.0%
Wは、焼入れ性を向上させる元素である。このような効果を得るためには、0.05%以上の含有を必要とする。一方、1.0%を越えて含有すると溶接性を低下させる。そのため、Wは0.05〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.05〜0.40%である。なお、MoやWは、TiCに固溶するため、硬質相量を増加させる効果も有する。
B:0.0003〜0.0030%
Bは、粒界に偏析し、粒界を強化して、靭性向上に有効に寄与する元素であり、このような効果を得るためには、0.0003%以上の含有が必要である。一方、0.0030%を超える含有は、溶接性を低下させる。このため、Bは添加する場合は、0.0003〜0.0030%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは、0.0003〜0.0015%である。
DI*<60
本発明でDI*(焼入れ性指標値)は、DI*=33.85×(0.1×C*)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo*+1)×(1.5×W*+1)、ここでC*=C−1/4×(Ti−48/14N)、Mo*=Mo×(1−0.5×(Ti−48/14N)、W*=W×(1−0.5×(Ti−48/14N)で定義し、DI*<60とする。ここで、C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,W,Ti,Nは含有量(質量%)である。
図3に、耐磨耗性に及ぼすDI*の影響を、図4に引張り強度(YS,TS)に及ぼすDI*の影響を示す。図3において縦軸はラバーホイール磨耗試験における磨耗量を軟鋼(SS400)の磨耗量と比較した耐磨耗比を示す。耐磨耗比が大きいほど、磨耗特性に優れていることを示す。
供試鋼は、mass%で0.34%C−0.22%Si−0.55%Mn−0.22%Tiに更にCu、Ni、Cr、Mo、Wの1種あるいは2種以上含み、DI*が40〜120の鋼片を、12mmtに圧延後、冷却速度:55(℃/s)で加速冷却して製造した。
得られた鋼板について、引張特性、磨耗試験を実施した。引張試験は、JISZ2201の規定に準拠して、JIS5号試験片を採取して引張試験を実施し、引張特性(引張強さTS、降伏強さYS)を求めた。
ラバーホイール磨耗試験はASTMG65に準拠して実施し、試験結果は軟鋼(SS400)の磨耗量と各鋼板の磨耗量の比を耐磨耗比として整理した。
図3,4より、DI*が60以上の場合、引張強さが1000MPa以上で、磨耗性には優れているものの、加工性に劣るので、DI*は60未満とする。
上記した成分が基本成分で優れた耐磨耗性が得られるが、本発明では、更に耐磨耗性を向上させるため、硬質な第二相を形成し、耐磨耗性に寄与する元素であるNb,Vを選択元素として含有することができる。
Nb:0.005〜1.0%、
Nbは、Tiと複合して添加することにより、Ti、Nbの複合炭化物((NbTi)C)を形成し、硬質な第二相として分散し、耐磨耗性向上に有効に寄与する元素である。このような耐磨耗性向上効果を得るためには、0.005以上の含有を必要とする。一方、1.0%を越える含有は、硬質な第二相(Ti,Nbの複合炭化物)が粗大化し、曲げ加工時に硬質な第二相(Ti,Nbの複合炭化物)を起点として割れが発生する。このため、添加する場合は、Nbは0.005〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
V:0.005〜1.0%
Vは、Tiと複合して添加することにより、Nbと同様に、Ti、Vの複合炭化物((VTi)C)を形成し、硬質な第二相として分散し、耐磨耗性向上に有効に寄与する元素である。このような耐磨耗性向上効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。
一方、1.0%を超える含有は、硬質な第二相(Ti,Vの複合炭化物)が粗大化し、曲げ加工時に硬質な第二相(Ti,Vの複合炭化物)を起点として割れが発生する。このため、添加する場合は、Vは0.005〜1.0%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは0.1〜0.5%である。
なお、NbとVを複合して添加する場合には、硬質な第二相が(NbVTi)Cとなるだけで、同様に耐磨耗性を向上させる効果を有する。なお、Nを含有する場合には、炭化物の他に、炭窒化物が形成される場合もあるが、同様の効果が得られる。
但し、N添加量が0.01%を超える場合には、炭窒化物中のNの割合が増加し、硬質第二相の硬度が低下するため、耐磨耗性の劣化が懸念される。従って、N添加量は0.01%以下とすることが好ましい。但し、N添加量は上記DI*の規定を満足するように規定する。
[金属組織]
本発明に係る耐磨耗鋼板は、金属組織を、フェライト−ベイナイト相を基地相とし、当該基地相中に硬質相(硬質な第二相)が分散した組織とする。基地相とは体積率で90%以上有することを意味しており、本発明に係る鋼板は、フェライトとベイナイトの2つの相が合計で全体の90%以上を占めている。鋼板の硬度は、加工性を考慮してブリネル硬度で250〜320HBの範囲とすることが好ましい。
硬質相としては、TiCなどのTi系炭化物とすることが好ましく、TiC、(NbTi)C、(VTi)C、あるいはTiC中にMo、Wが固溶したものが例示できる。
なお、硬質相の大きさは、特に限定しないが、耐磨耗性の観点からは、0.5μm以上50μm以下程度とすることが好ましい。また、硬質相の分散密度は、耐磨耗性の観点から、400個/mm以上とすることが好ましい。
尚、硬質相の大きさは、各硬質相の面積を測定し、同面積から円相当直径を算出し、得られた円相当直径を算術平均して平均値をその鋼板における硬質相の大きさ(平均粒径)とする。
[製造方法]
本発明に係る耐磨耗鋼板は、上記した組成の溶鋼を、公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法あるいは造塊−分解圧延法により、所定寸法のスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
硬質相を所定の大きさおよび個数に調整するためには、例えば、連続鋳造法を用いた場合、厚み200〜400mmの鋳片の1500〜1200℃の温度域における冷却速度0.2〜10℃/sの範囲と成るように冷却を調整することが好ましい。
なお、造塊法を用いる場合にも、インゴットの大きさおよび冷却条件を、硬質相を所望の大きさおよび個数になるように、調整する必要があることはいうまでもない。
次いで、鋼素材を、冷却することなく、直ちに熱間圧延し、または冷却後、950〜1250℃に再加熱したのち、熱間圧延し、所望の板厚の鋼板とする。熱間圧延は所望の板厚が得られればよく、とくに圧延条件は規定しない。
熱間圧延後は、直ちに冷却速度18℃/s以上で400℃以上、550℃以下の温度範囲まで加速冷却する。冷却速度18℃/s未満の場合、フェライトーベイナイト組織が得られず、引張り強さが780MPa以下となり、部材に加工後、衝撃を受けて変形する場合があるため、冷却速度18℃/s以上とする。冷却停止温度が400℃未満ではマルテンサイト相が、また550℃超ではパーライト相が生成しやすくなり、基地相をフェライト−ベイナイト相とすることが困難になるため、加速冷却の冷却停止温度は400℃以上、550℃以下とする。
加速冷却後、焼戻しを行ってもよい。焼戻し温度が550℃を超えると引張り強さが780MPa以下となり、部材に加工後、衝撃を受けて変形する場合があるため、焼戻し温度は550℃以下とする。
尚、製造条件の規定において、冷却速度は板厚方向での平均冷却速度、温度は表面温度で規定する。
表1に示す組成の溶鋼を、真空溶解炉で溶製し、小型鋼塊(50kg)(鋼素材)とした後、1050〜1250℃に加熱し、熱間圧延を施した後、種々の条件で冷却を施し、板厚12〜32mmの供試鋼板とした。各供試鋼板について組織観察、引張試験、磨耗試験を実施した。
[組織観察]
組織観察用試験片は、研磨後、ナイタール腐食して、表層下1mmの位置について、光学顕微鏡(倍率:400倍)を用いて、組織の同定,硬質相の大きさ、個数を測定した。なお、観察視野において、90%以上を占める組織を基地相とし、硬質相の大きさは、前述の方法により求めた平均粒径とした。
[引張試験]
JISZ2201の規定に準拠して、JIS5号試験片を採取し、JISZ2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さ:YS、引張強さ:TS)を求めた。本発明は引張り強さ780MPa以上1000MPa未満とする。
[磨耗試験]
試験片はt(板厚)×20×75(mm)とし、ASTM G 65の規定に準拠して、ラバーホイール磨耗試験を、磨耗砂を使用して実施した。試験後、試験片の磨耗量を測定した。
試験結果は、軟鋼(SS400)板の磨耗量を基準(1.0)として、耐磨耗比=(軟鋼板の磨耗量)/(各鋼板の磨耗量)で評価した。耐磨耗比が大きいほど、耐磨耗性に優れていることを意味し、本発明範囲は耐磨耗比:4.0以上とした。
表2に組織観察、引張試験、磨耗試験の結果を示す。本発明例(鋼板No.1〜4、6、鋼板No.8,9)は、引張強さ(TS)≧780MPaで耐磨耗性が非常に優れた鋼板となっている
一方、比較例(鋼板No.7)はマルテンサイト組織が得られ、耐摩耗性は良好であるが、曲げ加工性に劣ることが予想される。比較例(鋼板No.10、12)はミクロ組織中に硬質相が観察されず、耐摩耗性におとる。比較例(鋼板No.11)は引張り強さが過大で曲げ加工性に劣ることが予想される。
Figure 0005458624
Figure 0005458624

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.1〜2.0%、Ti:0.1〜0.8%、Al:0.1%以下、更に、Cu:0.1〜1.0%、Ni:0.1〜2.0%、Cr:0.1〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、W:0.05〜1.0%、B:0.0003〜0.0030%の1種または2種以上を含有し、(1)式で示されるDI*が60未満であり、残部Feおよび不可避的不純物からなり、金属組織が、フェライト−ベイナイト相を基地相とし、該基地相中に硬質相が分散していることを特徴する引張り強さ780MPa以上1000MPa未満の加工性に優れた耐磨耗鋼板。
    DI*=33.85×(0.1×C*)0.5 ×(0.7×Si+1)×(3.33×Mn+1)×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo*+1)×(1.5×W*+1)・・・・・(1)
    但し、C*=C−1/4×(Ti−48/14N)、Mo*=Mo×(1−0.5×(Ti−48/14N)、W*=W×(1−0.5×(Ti−48/14N)、
    C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,W,Ti,Nは含有量(質量%)
  2. 更に、質量%でNb:0.005〜1.0%、V:0.005〜1.0%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の耐磨耗鋼板。
  3. 更に、前記硬質相の分散密度が、400個/mm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐磨耗鋼板。
  4. 請求項1または2記載の組成を有する鋼片を熱間圧延後、18℃/s以上の冷却速度で400℃以上、550℃以下まで冷却することを特徴とし、金属組織が、フェライト−ベイナイト相を基地相とし、該基地相中に硬質相が分散している、引張り強さ780MPa以上1000MPa未満の加工性に優れた耐磨耗鋼板の製造方法。
  5. 更に、550℃以下の温度で焼き戻すことを特徴とする請求項4記載の加工性に優れた耐磨耗鋼の製造方法。
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