図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
図1を参照して、実施形態に係わる車両用操舵装置の概略構成を説明する。車両用操舵装置は、ステアリングホイール11が転舵輪(13L、13R)から機械的に切り離され、ステアリングホイール11の操作を電気信号として転舵輪(13L、13R)へ伝える、ステアリングバイワイヤ(SBW)方式を採用している。
ステアリングホイール11は、ステアリングシャフト12に連結され、車輪(転舵輪)13L及び13Rは、ナックルアーム14、タイロッド15、ラック軸16、及びピニヨンギヤ17を順に介して第一ピニヨンシャフト18に連結される。ステアリングシャフト12及び第一ピニヨンシャフト18は、クラッチ19を介して機械的に接続又は遮断の何れかに切替え可能な状態で連結されている。
ここで、クラッチ19の入力側に存在するステアリングホイール11、及びステアリングシャフト12は、運転者のステアリング操作によってステアリングシャフト12が回転する操舵入力機構StINである。また、クラッチ19の出力側に存在するナックルアーム14、タイロッド15、ラック軸16、ピニヨンギヤ17、及び第一ピニヨンシャフト18は、第一ピニヨンシャフト18の回転によって車輪13L及び13Rが転舵される転舵出力機構StOUTである。
クラッチ19は、無励磁締結形の電磁クラッチからなる。すなわち、電磁コイルが無励磁のときに、例えばカムローラ機構により、入力軸のカム面と出力軸の外輪との間にローラが噛み合い、入力軸と出力軸とが締結される。一方、電磁コイルを励磁するときに、アーマチュアの吸引により、入力軸のカム面と出力軸の外輪との間でローラの噛み合いが解除され、入力軸と出力軸とが遮断される。
ラック軸16は、車体左右方向(車幅方向)に延在し、その一方側(ここでは車体右側)にラックギヤ(歯)31を形成してあり、ラックギヤ31にピニヨンギヤ17を噛合させている。ラックギヤ31とピニヨンギヤ17との噛合状態はリテーナ機構によって調整される。
第一ピニヨンシャフト18は、クラッチ側の入力軸と、ピニヨンギヤ側の出力軸とからなり、その出力軸には、例えばウォームギヤ32を介して第一転舵モータM1を連結してある。第一転舵モータM1には、モータ回転角を検出するレゾルバ33を設けてある。
ウォームギヤ32は、第一ピニヨンシャフト18に連結されたウォームホイールと、第一転舵モータM1に連結されたウォームとからなり、ウォーム軸をウォームホイール軸に対して斜交させている。ウォームギヤ32は、ウォームの回転によってウォームホイールが回転し、またウォームホイールの回転によってもウォームが回転するように、つまり逆駆動が可能となるように、ウォームのねじれ角を安息角(摩擦角)よりも大きくしてある。
第一ピニヨンシャフト18における入力軸と出力軸との間には、トルクセンサ34を設けている。
ピニヨンギヤ17、第一ピニヨンシャフト18の出力軸、ウォームギヤ32、第一転舵モータM1、レゾルバ33、及びトルクセンサ34は、一体化した複合部品(アッセンブリ)として構成され、これを第一アクチュエータA1とする。第一アクチュエータA1は、電動パワーステアリング装置の構成部品と共通化される。
第一アクチュエータA1によれば、クラッチ19を遮断している状態で、第一転舵モータM1を駆動すると、ウォームギヤ32を介して第一ピニヨンシャフト18が回転するので、第一転舵モータM1の回転角に応じて車輪13L及び13Rの転舵角が変化する。したがって、クラッチ19を遮断しているときに、運転者のステアリング操作に応じて第一転舵モータM1を駆動制御することにより、ステアリングバイワイヤ機能として所望のステアリングコントロール特性が実現される。さらに、クラッチ19を接続しているときに、運転者のステアリング操作に応じて第一転舵モータM1を駆動制御することにより、運転者の操作負担を軽減する所望のアシスト特性が実現される。
ラック軸16の他方側(ここでは車体左側)には、ピニヨンギヤ35を介して第二ピニヨンシャフト36が連結されている。すなわち、ラック軸16の他方側(ここでは車体左側)にラックギヤ(歯)37を形成してあり、ラックギヤ37にピニヨンギヤ35を噛合させている。ラックギヤ37とピニヨンギヤ35との噛合状態はリテーナ機構によって調整される。
第二ピニヨンシャフト36には、例えばウォームギヤ38を介して第二転舵モータM2を連結してある。第二転舵モータM2は、第一転舵モータM1と同一型のモータである。第二転舵モータM2には、モータ回転角を検出するレゾルバ39を設けてある。
ウォームギヤ38は、第二ピニヨンシャフト36に連結されたウォームホイールと、第二転舵モータM2に連結されたウォームとからなり、ウォーム軸をウォームホイール軸に対して斜交させている。ウォームギヤ38は、ウォームの回転によってウォームホイールが回転し、またウォームホイールの回転によってもウォームが回転するように、つまり逆駆動が可能となるように、ウォームのねじれ角を安息角(摩擦角)よりも大きくしてある。
ピニヨンギヤ35、第二ピニヨンシャフト36の出力軸、ウォームギヤ38、第二転舵モータM2、及びレゾルバ39は、一体化された複合部品(アッセンブリ)として構成され、これを第二アクチュエータA2とする。
第二アクチュエータA2によれば、クラッチ19を遮断している状態で、第二転舵モータM2を駆動すると、ウォームギヤ32を介して第二ピニヨンシャフト36が回転するので、第二転舵モータM2の回転角に応じて車輪13L及び13Rの転舵角が変化する。したがって、クラッチ19を遮断しているときに、運転者のステアリング操作に応じて第二転舵モータM2を駆動制御することにより、ステアリングバイワイヤ機能として所望のステアリングコントロール特性が実現される。
ステアリングシャフト12には、反力モータ51を連結してある。反力モータ51は、ステアリングシャフト12と共に回転するロータと、このロータに対向してハウジングに固定されるステータと、を備える。ロータは、周方向に等間隔に並べたマグネットを、例えばインサートモールドによってロータコアに固定して形成してある。ステータは、コイルを巻装した鉄心を周方向に等間隔に並べ、ハウジングに対して例えば焼き嵌めによって固定して形成してある。反力モータ51には、モータ回転角を検出するレゾルバ52を設けてある。
ステアリングシャフト12には、操舵角センサ53を設けてある。
反力モータ51によれば、クラッチ19を遮断している状態で、反力モータ51を駆動すると、ステアリングシャフト12にモータトルクが伝達される。したがって、クラッチ19を遮断してステアリングバイワイヤを実行しているときに、路面から受ける反力に応じて反力モータ51を駆動制御することにより、運転者のステアリング操作に対して操舵反力を付与する所望の反力特性が実現される。
次に、制御系統の構成について説明する。本実施形態では、第一転舵コントローラ(転舵ECU1)71と、第二転舵コントローラ(転舵ECU2)72と、反力コントローラ(反力ECU)73と、を備える。各コントローラは、例えばマイクロコンピュータからなる。
第一転舵コントローラ71は、レゾルバ33、トルクセンサ34、及び操舵角センサ53からの信号を入力し、駆動回路を介して第一転舵モータM1を駆動制御する。第二転舵コントローラ72は、レゾルバ39、及び操舵角センサ53からの信号を入力し、駆動回路を介して第二転舵モータM2を駆動制御する。反力コントローラ73は、レゾルバ52、及び操舵角センサ53からの信号を入力し、駆動回路を介して反力モータ51を駆動制御する。
レゾルバ33は、第一転舵モータM1のモータ回転角θm1を検出する。レゾルバ33は、ステータコイルに励磁信号が入力されるときに、ロータの回転角に応じた検出信号をロータコイルから出力する。第一転舵コントローラ71は、信号処理回路により、励磁信号をステータコイルに出力すると共に、ロータコイルから入力される検出信号の振幅変調に基づいて第一転舵モータM1のモータ回転角θm1を判断する。なお、第一転舵コントローラ71は、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
同様に、第二転舵モータM2のモータ回転角θm2については、レゾルバ39を介して第二転舵コントローラ72で検出し、反力モータ51のモータ回転角θrについては、レゾルバ52を介して反力コントローラ73で検出する。
トルクセンサ34は、第一ピニヨンシャフト18に入力されるトルクTsを検出する。トルクセンサ34は、第一ピニヨンシャフト18の入力側と出力側との間に介在させたトーションバーの捩れ角を、例えばホール素子で検出し、多極磁石とヨークとの相対角度変位によって生じる磁束密度の変化を電気信号に変換して第一転舵コントローラ71に出力する。第一転舵コントローラ71は、入力された電気信号からトルクTsを判断する。なお、第一転舵コントローラ71は、運転者の右操舵を正の値として処理し、左操舵を負の値として処理する。
操舵角センサ53は、例えばロータリエンコーダからなり、ステアリングシャフト12の操舵角θsを検出する。操舵角センサ53は、ステアリングシャフト12と共に円板状のスケールが回転するときに、スケールのスリットを透過する光を二つのフォトトランジスタで検出し、ステアリングシャフト12の回転に伴うパルス信号を各コントローラに出力する。各コントローラは、入力されたパルス信号からステアリングシャフト12の操舵角θsを判断する。なお、各コントローラは、右旋回を正の値として処理し、左旋回を負の値として処理する。
なお、各コントローラ同士は、通信線74によって相互通信可能に接続されている。すなわち、例えばCSMA/CA方式の多重通信(CAN:Controller Area Network)やフレックスレイ(Flex Ray)等の車載通信ネットワーク(車載LAN)規格を用いた通信路を構築してある。
各コントローラは、通信線75によってクラッチ19に接続されている。この通信線75は、クラッチ19を接続又は遮断の何れかに切替え可能なクラッチ制御信号を出力する通信路である。クラッチ制御信号は、クラッチ19を遮断するための信号であり、各コントローラがクラッチ制御信号を出力しているときに、クラッチ19が遮断され、何れかのコントローラがクラッチ制御信号の出力を停止すると、クラッチ19が接続される。
第一転舵コントローラ71及び第二転舵コントローラ72は、操舵角θsに対する指令転舵角θw*を設定すると共に、実際の転舵角θwを推定する。そして、モータ回転角θm1及びθm2を入力し、指令転舵角θw*に実際の転舵角θwが一致するように、例えばロバストモデルマッチング手法などを用いて第一転舵モータM1及び第二転舵モータM2を駆動制御する。
指令転舵角θw*の設定は、例えば車速Vに応じて行う。すなわち、据え切り時や低速走行時には、運転者の操作負担を軽減するために、小さな操舵角θsで大きな転舵角θwが得られるように指令転舵角θw*を設定する。また、高速走行時には、過敏な車両挙動を抑制し、走行安定性を確保するために、操舵角θsの変化に対する転舵角θwの変化が抑制されるように指令転舵角θw*を設定する。例えば、第一転舵コントローラ71及び第二転舵コントローラ72は、例えば車速Vに応じて可変ギア比を設定し、操舵角θsに可変ギア比を乗算して指令可変ギア角を算出し、指令可変ギア角から指令転舵角θw*を設定する。
実際の転舵角θwの推定は、操舵角θs、モータ回転角θm1、モータ回転角θm2等に基づいて行う。
実施形態に係わる舵角補正装置は、舵角の補正の一例として、第一転舵コントローラ71及び第二転舵コントローラ72により算出された指令可変ギア角を補正する。
反力コントローラ73は、ステアリング操作時に路面から受ける反力に相当する指令操舵反力トルクTr*を設定し、指令操舵反力トルクTr*に反力モータ51のトルクが一致するように、反力モータ51を駆動制御する。指令操舵反力トルクTr*の設定は、例えば指令可変ギア角、第一転舵モータM1に流れる電流Im1、第二転舵モータM2に流れる電流Im2等に基づいて行う。
実施形態に係わる舵角補正装置は、操舵反力の補正の一例として、反力コントローラ73が指令操舵反力トルクTr*を生成する際の指令可変ギア角を補正する。
なお、車両用操舵装置において、各センサ、各コントローラ、各モータを複数設けた冗長系としてもよい。また、第一転舵コントローラ71、第二転舵コントローラ72と反力コントローラ73を同じハードウェアで構成してもよい。
図2を参照して、図1の車両用操舵装置に適用される実施形態に係わる舵角補正装置20の構成を説明する。舵角補正装置20は、図1の転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置のずれを補正する装置である。換言すれば、平らな路面で、車両が真っ直ぐ走っている時に、ステアリングホイール11の操舵角が零度(中立位置)になるように、転舵輪(13L、13R)とステアリングホイール11の間の舵角のずれを補正する装置である。舵角補正装置20は、左右前輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置の舵角のずれ量を測定し、舵角のずれを補正する。
舵角補正装置20は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを舵角補正装置20として機能させるためのコンピュータプログラム(舵角補正プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、舵角補正装置20が備える複数の情報処理回路(24、25、26、27)を構成する。なお、ここでは、ソフトウェアによって舵角補正装置20を実現する例を示すが、もちろん、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、舵角補正装置20を構成することも可能である。また、舵角補正装置20に含まれる回路(24〜27)の各々を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、舵角補正装置20は、図1の第一転舵コントローラ71、第二転舵コントローラ72或いは反力コントローラ73、或いは、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
舵角補正装置20は、図1のコントローラ(71、72、73)及び車速センサ21、及び車両に加わるヨーレートを検出するヨーレートセンサ22に対して有線或いは無線により通信可能であり、コントローラ(71、72、73)及び各センサから出力される信号が舵角補正装置20に入力される。また、舵角補正装置20は、第一転舵コントローラ71及び第二転舵コントローラ72に対して舵角を補正するための信号を出力し、反力コントローラ73に対して操舵反力を補正するための信号を出力する。更に、舵角補正装置20は、外部記憶装置23に対して有線或いは無線により通信可能である。外部記憶装置23は、舵角補正装置20により生成された各種データを記憶し、舵角補正装置20の要求に応じて、記憶している各種データを舵角補正装置20へ送信する。
舵角補正装置20が備える複数の情報処理回路には、反力補正角検出回路24と、転舵目標補正角算出回路25と、操舵反力補正回路26と、舵角補正回路27とが含まれる。
舵角補正装置20は、以下に示すように、互いに異なる2種類の方法(アルゴリズムを含む)により、左右前輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置の舵角のずれ量を求める。2つのずれ量を、それぞれ「転舵目標補正角(第1のずれ量の一例)」及び「反力補正角(第2のずれ量の一例)」と呼ぶ。
反力補正角検出回路24(第2のずれ量検出回路)は、「反力補正角」を検出する。反力補正角は、操舵反力補正回路26がステアリングホイール11に付与される操舵反力を補正する際に参照する角度である。反力補正角検出回路24は、車両が直進しており且つステアリングホイール11が操作されていない時に、反力補正角を検出する。反力補正角検出回路24が反力補正角を検出する具体的な方法は特に問わず、既知の方法を用いることができる。
転舵目標補正角算出回路25(第1のずれ量検出回路)は、「転舵目標補正角」を算出する。転舵目標補正角は、舵角補正回路27が舵角を補正する際に参照する角度である。転舵目標補正角算出回路25は、車両が直進しており且つステアリングホイール11が操作されていない場合に、転舵目標補正角を算出する。転舵目標補正角算出回路25が転舵目標補正角を算出する具体的な方法は特に問わず、既知の方法を用いることができる。例えば、連続して複数回サンプリングされたずれ量の平均値を転舵目標補正角として求めることができる。ずれ量をサンプリングする具体的な方法は、反力補正角と同様にして、既知の方法を用いればよい。
ここで、反力補正角と転舵目標補正角とを対比する。反力補正角は、転舵目標補正角に比べて、検出精度は低いが、簡便な方法によって短時間で求めることができる。
操舵反力補正回路26は、反力補正角検出回路24により検出された反力補正角に基づいて、ステアリングホイール11に付与される操舵反力を補正する。換言すれば、平らな路面で、車両が真っ直ぐ走っている時に、操舵反力が零(中立位置)になるように、反力コントローラ73が指令操舵反力トルクを生成される際の指令可変ギア角を補正する。操舵反力には、車両の直進に対する絶対角を基準とする制御項と、ラック軸16の中心に対する絶対角を基準とする制御項が含まれる。操舵反力補正回路26が補正する操舵反力は、車両の直進に対する絶対角を基準とする制御項である。
操舵反力を補正することにより、転舵輪の中立位置と操舵反力の中立位置とのずれが解消され、ドライバがステアリングホイール11を保持する力を緩めても車両を真っ直ぐ走行させることができる。所謂、「片流れ」を解消することができる。ただし、操舵反力の中立位置を補正しても、転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置は補正されない。つまり車両が真っ直ぐ走行している時のステアリングホイール11の見た目の角度(舵角)は、ステアリングホイール11の中立位置からずれたまま(オフセンター)である。
舵角補正回路27は、転舵目標補正角算出回路25により算出された転舵目標補正角に基づいて、転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置のずれを補正する。換言すれば、平らな路面で、車両が真っ直ぐ走っている時に、ステアリングホイール11の角度が零度(中立位置)になるように、第一転舵コントローラ71及び第二転舵コントローラ72により算出された指令可変ギア角を補正する。
舵角を補正することにより、転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置のずれが解消される。換言すれば、平らな路面で、車両が真っ直ぐ走っている時に、ステアリングホイール11の中立位置がずれた状態(オフセンター)が解消される。更に、ステアリングホイール11の中立位置の補正量に応じて、操舵反力の中立位置も同時に補正される。
図3を参照して、図2に示す舵角補正装置20を用いた舵角補正方法の一例を説明する。図3のフローチャートは、車両のイグニションスイッチがオンされ、図1の車両用操舵装置を実現する電子制御ユニット(ECU)が起動してから、イグニションスイッチがオフされ、車両用操舵装置を実現する電子制御ユニット(ECU)が終了するまでの間、繰り返し実行される。
<ずれ量測定及び操舵反力補正>
先ず、ステップS01〜S21において実行される舵角のずれ量の測定及び操舵反力の補正について説明する。
ステップS01〜S05において、転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置のずれ量を精度良く求める為に、舵角補正装置20は、車速、操舵、直進に関する条件を判定する。ステップS01において、舵角補正装置20は、車両の速度が所定範囲内であることを判定する。例えば、車速センサ21により測定された車速が毎時40km以上であることを確認する。毎時40km以上であることを確認した後、ステップS03に進み、舵角補正装置20は、操舵状態を判断する。つまり、ステアリングホイール11が操作されているか否かを判断する。
ここで、「ステアリングホイール11が操作されている」とは、車両の進行方向を変更するためにドライバがステアリングホイール11を回転させていることである。直線道路を車両が走行しているときに同一車線内で軌道を修正するために行うステアリングホイール11の操作は含まれない。例えば、ステアリングホイール11の角速度が毎秒10°以上である場合、「ステアリングホイール11が操作されている」と判断する。舵角補正装置20は、操舵角センサ53により測定された操舵角の時間変化から、ステアリングホイール11の操作を判断する。
ステアリングホイール11が操作されていると判断した場合(S03でYES)、ステップS23に進む。一方、ステアリングホイール11が操作されていないと判断した場合(S03でNO)、高精度のずれ測定を行うための条件を満たすため、ステップS05に進む。ステップS23については、後述する。
ステップS05において、舵角補正装置20は、車両が真っ直ぐ走行しているか否かを判断する。例えば、車両に搭載されたヨーレートセンサ22により測定されたヨーレートが毎秒0.2°未満である場合、真っ直ぐ走行していると判断し、ヨーレートが毎秒0.2°以上である場合、真っ直ぐ走行していない(旋回している)と判断する。
車両が真っ直ぐ走行していると判断された場合(S05でYES)、高精度のずれ測定を行うための条件を満たすため、ステップS07に進む。一方、真っ直ぐ走行していないと判断された場合、ずれ測定を行わずに、このサイクルを終了して、ステップS01に戻る。
ステップS07において、一時的な直進状態を排除して、安定的な直進状態を抽出するために、舵角補正装置20は、予め定めた距離又は時間を車両が直進していることを判定する。例えば、連続して1秒間以上、車両が真っ直ぐ走行していると判断されることを確認する。例えば、車両が毎時40km以上で走行する場合、10m以上の距離を安定的に直進していることを確認できる。直進区間を確認できない場合、ずれ測定を行わずに、このサイクルを終了して、ステップS01に戻る。
直進区間を確認できた場合、互いに異なる2種類の方法でずれ量を測定する為に、ステップS09及びステップS17の各々に進む。
先ず、ステップS09において、反力補正角検出回路24は、既知の方法を用いて、反力補正角を検出する。ステップS11に進み、操舵反力補正回路26は、検出された反力補正角に対応した操舵反力を補正する。これにより、転舵輪(13L、13R)の中立位置と操舵反力の中立位置とのずれが解消され、ドライバがステアリングホイール11を保持する力を緩めても車両を真っ直ぐ走行させることができる。ただし、車両が真っ直ぐ走行している時のステアリングホイール11の見た目の角度は、ステアリングホイール11の中立位置からずれたまま(オフセンター)である。
操舵反力の補正は、車両の挙動に現れにくく、運転者に気づかれにくい。よって、運転者がステアリングホイールを操作せずに保持している時に操舵反力を補正しても、運転者は操舵反力の変化に気づきにくい。そこで、本実施形態では、舵角補正回路27が舵角を補正する(ステップS23)前に、反力補正角検出回路24が転舵目標補正角算出回路25よりも簡便な方法により反力補正角を検出する(S09)。そして、舵角補正回路27が舵角を補正する(ステップS23)前に、操舵反力補正回路26が反力補正角のみを補正する(S11)。これにより、車両を真っ直ぐ走行させるためにステアリングホイール11に加えていた力を緩めても直進状態を維持できるようになる。簡便な方法により早期に反力補正角を検出し、早期に操舵反力のずれを解消できる。
反力補正角が大きければ、操舵反力を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくい。そこで、ステップS11において、図5に示すように、反力補正角検出回路24は、反力補正角が大きいほど、操舵反力を補正する速度を速める。これにより、運転者に気づかれにくい状態で、早期に操舵反力のずれを解消することができる。図5の横軸は反力補正角を示し、縦軸は操舵反力を補正する速度を示す。グラフRF1は、反力補正角の増加と共に、操舵反力を補正する速度が速くする領域を有している。領域よりも反力補正角が大きい場合及び領域よりも反力補正角が小さい場合、操舵反力を補正する速度を一定にしてもよい。
ステップS13に進み、反力補正角検出回路24は、ステアリングホイール11の角度が変化しているか否かを判断する。ここで、「ステアリングホイール11の角度が変化している」ことには、「ステアリングホイール11が操作されている」ことのみならず、「直線道路を車両が走行しているときに同一車線内で軌道を修正するためにステアリングホイール11を操作する」ことも含まれる。換言すれば、運転者がステアリングホイール11を保持して車両の進路を制御しようとしていれば、ステアリングホイール11の角度は変化する。一方、運転者が車両の進路を制御しようとしていなければ、ステアリングホイール11の角度は変化しない。例えば、0.5秒間で操舵角の変化が0.3°以下である場合、反力補正角検出回路24は、ステアリングホイール11の角度が変化していないと判断する。
ステアリングホイール11の角度が変化していないと判断した場合(S13でNO)、操舵反力を補正する速度を更に速めても、運転者に気づかれにくい。そこで、ステップS15に進み、反力補正角検出回路24は、図5のグラフRF1からグラフRF2へ変更する。一方、ステアリングホイール11の角度が変化していると判断した場合(S13でNO)、ステップS15は実行せずに、スタートに戻る。このように、運転者が車両の進路を制御しようとしていなければ、グラフRF1からグラフRF2へ変更して、操舵反力を補正する速度を更に速める。これにより、更に早期に操舵反力のずれを解消することができる。
一方、ステップS17において、転舵目標補正角算出回路25は、ずれ量をサンプリングし始める前に、転舵目標補正角をリセットする。ステップS19に進み、左右前輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置がずれているか否かを判断する。具体的には、反力補正角検出回路24と同様にして、先ず簡便な方法により、転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置とのずれ量を検出し、検出ずれ量が所定の閾値以上であるか否かを判断する。所定の閾値は、転舵目標補正角を算出する為のサンプリング処理(S21)を行う必要性を判断するための基準であって、計算負荷及び処理速度の観点から調整可能な値である。
検出ずれ量が所定の閾値以上であれば、中立位置がずれていると判断して(S19でYES)、ステップS21に進む。検出ずれ量が所定の閾値未満であれば、中立位置がずれていないと判断して(S19でNO)、ステップS21を実行せずに、このサイクルを終了して、ステップS01に戻る。
ステップS21において、転舵目標補正角算出回路25は、転舵目標補正角を算出する。具体的には、転舵目標補正角算出回路25は、舵角のずれ量を所定回数だけサンプリングする。サンプリングは例えば1m秒毎に行う。サンプリングされた舵角のずれ量の平均値を転舵目標補正角として算出する。例えば、図3のフローチャートの前回のサイクルにおいて算出された転舵目標補正角に、今回のサイクルにおいてサンプリングされた舵角のずれ量を加味した新たな平均値を求め、転舵目標補正角を更新すればよい。
<舵角の補正及び操舵反力の調停>
次に、ステップS23において実行される舵角の補正及び操舵反力の調停について説明する。舵角を補正することにより、補正量分の操舵反力も変化する。運転者がステアリングホイール11を操作していない時、つまり運転者がステアリングホイール11を回転させていない時に舵角を補正してしまうと、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づき易い。一方、ステアリングホイール11を操作すれば操舵反力も変化する。このステアリングホイール11操作による操舵反力の変化に、補正量分の操舵反力の変化を重畳させることにより、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくくなる。
そこで、舵角補正装置20が、ステアリングホイール11が操作されていると判断した場合に(S03でYES)、ステップS23aへ進み、舵角を補正する。これにより、運転者に補正量分の操舵反力の変化を気づかせにくくすることができる。よって、運転者に気づかれにくい状態でオフセンターを解消することができ、運転者に違和感を与えにくくすることができる。
ただし、舵角を補正する(S23a)前に、操舵反力は補正されている(S11)。このため、S23aにおいて補正量分の操舵反力が変化してしまうと、操舵反力は過剰に補正されてしまう。例えば、ステアリングホイール11の角度(舵角)が2°ずれている場合、ステアリングホイール11の2°分の操舵反力はステップS11で補正される。よって、ステップS23aにおいて補正量(2°)分の操舵反力を補正してしまうと、ステップS11とS23aとを合計して、4°(=2°+2°)に対応する操舵反力が1回のサイクルにおいて補正されてしまい、操舵反力は真のずれ量(2°)を超えて過剰に補正されてしまう。
そこで、ステップS23では、舵角の補正(S23a)、及び舵角と操舵反力との調停(S23b)を並行して行う。具体的には、ステップS23bにおいて、操舵反力を低減することによりステップS11で補正した操舵反力を相殺する。
ステップS23を具体的に説明する。ステップS23aにおいて、図7に示すように、舵角補正回路27は、転舵目標補正角算出回路25により算出された転舵目標補正角(OS1)に基づいて、第一転舵コントローラ71及び第二転舵コントローラ72により生成される指令可変ギア角又は指令転舵角θw*を補正する。これにより、転舵輪(13L、13R)の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置のずれは解消される。
ステップS23bにおいて、操舵反力補正回路26は、図7に示すように、反力補正角(OS2)に対応する操舵反力を低減することにより、ステップS09、S11で検出及び実行した操舵反力の補正量を相殺する。これにより、反力補正角(OS2)に対応した操舵反力の補正と舵角の補正とは調停され、操舵反力とステアリングホイール11の見た目の角度(舵角)とを、同じずれ量(転舵目標補正角(OS1))を基準として補正することができる。
ステアリングホイール11を操作する速度が速ければ、舵角を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくい。そこで、ステップS23aにおいて、図6に示すように、舵角補正回路27は、ステアリングホイール11の角速度が速いほど、舵角を補正する速度を速める。これにより、運転者に気づかれにくい状態で、早期に舵角のずれ(オフセンター)を解消することができる。図6の横軸はステアリングホイール11の角速度を示し、縦軸は、舵角を補正する速度を示す。
グラフSA1は、車両が直進している場合を示し、グラフSA2は、車両が旋回している場合を示す。舵角補正回路27は、ヨーレートセンサ22の出力信号から車両のヨーレートを求め、ヨーレートが毎秒2°以上である場合、車両が旋回していると判断して、グラフSA2に沿って舵角を補正する速度を制御する。舵角補正回路27は、ヨーレートが毎秒2°未満である場合、車両が直進していると判断して、グラフSA1に沿って舵角を補正する速度を制御する。車両が直進している場合、ステアリングホイール11の角速度がω1(=毎秒10°)未満であれば、舵角を補正しない。車両が旋回している場合、ステアリングホイール11の角速度がω2(=毎秒3°)未満であれば、舵角を補正しない。このように、舵角補正回路27は、車両が旋回している場合、車両が直進している場合に比べて、舵角を補正する速度を速める。車両が旋回している場合、車両が直進している場合に比べて、操舵反力は大きいため、舵角を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくくなる。したがって、運転者に気づかれにくい状態で、早期にオフセンターを解消することができる。
図6のグラフSA3に示すように、舵角補正回路27は、車両の走行速度が所定閾値(例えば、毎時10km)以下である場合、舵角補正回路27は、ステアリングホイール11が操作される角速度に依らず、一定の速度(例えば、毎秒1°)で舵角を補正する。車両の走行速度が所定閾値以下であれば、ステアリングホイール11が操作される速度に依らず一定の速度で舵角を補正しても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくくなる。したがって、運転者に気づかれにくい状態で、早期にオフセンターを解消することができる。
なお、操舵反力補正回路26は、図7に示すように、舵角補正回路27が舵角を補正する速度(S23a)に応じて、反力補正角(OS2)に対応する操舵反力を低減する速度を調整する。図7は、転舵目標補正角(OS1)と反力補正角(OS2)とが等しい場合の舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)を示す。この場合、舵角を補正する速度(S23a)に応じて操舵反力を低減する速度を調整することにより、舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)を同時に開始して終了させることができる。よって、ステップS11における操舵反力の補正量を一定に保つことができる。
これに対して、転舵目標補正角(OS1)と反力補正角(OS2)とが異なる場合、舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)の開始又は終了のタイミングをずらすことができる。
図8A〜図8Cは、転舵目標補正角(OS1)が反力補正角(OS2)よりも小さい場合の舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)の時間変化を示す。図9A〜図9Cは、転舵目標補正角(OS1)が反力補正角(OS2)よりも大きい場合の舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)の時間変化を示す。図10(a)及び図10(b)は、舵角の補正(S23a)、操舵反力の低減(S23b)、及び操舵反力の補正量の合計値の時間変化を示すグラフであり、図10(a)は転舵目標補正角(OS1)が反力補正角(OS2)よりも小さい場合を示し、図10(b)は転舵目標補正角(OS1)が反力補正角(OS2)よりも大きい場合を示す。
転舵目標補正角(OS1)が反力補正角(OS2)よりも小さい場合、図8A及び図10(a)に示すように、舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)を同時に開始する(時刻t6)。図8B及び図10(a)に示すように、舵角の補正(S23a)の終了した時点(t5)において、操舵反力の低減(S23b)は、ステップS11における操舵反力の補正量に達していない。つまり、ステップS11で補正した操舵反力の一部(g1)はまだ相殺されていない。よって、操舵反力補正回路26は、図8C及び図10(a)に示すように、ステップS11で補正した操舵反力の全体が相殺されるまで、操舵反力の低減(S23b)を継続する。これにより、反力補正角(OS2)に対応した操舵反力の補正と舵角の補正とは調停され、操舵反力とステアリングホイールの見た目の角度(舵角)とを、同じずれ量(転舵目標補正角(OS1))を基準として補正することができる。つまり、操舵反力の補正量の合計値(T01)を、転舵目標補正角(OS1)を基準とした値にすることができる。
転舵目標補正角(OS1)が反力補正角(OS2)よりも大きい場合、図9A及び図10(b)に示すように、転舵目標補正角(OS1)と反力補正角(OS2)の差分(g2)だけ、舵角の補正(S23a)を行う。その後、図9B及び図10(b)に示すように、操舵反力の低減(S23b)を開始する(t4)。そして、図9C及び図10(b)に示すように、舵角の補正(S23a)と操舵反力の低減(S23b)を同時に終了させる。これにより、反力補正角(OS2)に対応した操舵反力の補正と舵角の補正とは調停され、操舵反力とステアリングホイールの見た目の角度(舵角)とを、同じずれ量(転舵目標補正角(OS1))を基準として補正することができる。つまり、操舵反力の補正量の合計値(T02)を、転舵目標補正角(OS1)を基準とした値にすることができる。
更に、例えば、図10(b)に示すように、時刻t6から舵角の補正(S23a)のみならず操舵反力の低減(S23b)も開始した場合、操舵反力の補正量の合計値(T’02)は、ステップS11で補正した操舵反力が相殺される時刻t7まで変化しない。操舵反力の補正量の合計値(T’02)は、時刻t7以降に、転舵目標補正角(OS1)を基準とした値まで、舵角の補正(S23a)と共に増加する。これに対して、本実施形態では、図9B及び図10(b)に示すように、転舵目標補正角(OS1)と反力補正角(OS2)の差分(g2)だけ舵角を補正した(S23a)後に、操舵反力の低減(S23b)を開始する(t4)。これにより、早期に、操舵反力の補正量の合計値(T02)を、転舵目標補正角(OS1)を基準とした値にすることができる。
図4(b)のグラフEm2に示すように、車両の直進を判定したとき(時刻t1)、先ず、操舵反力を補正する(S11)。このとき、図4(a)のグラフEm1に示すように、舵角(指令可変ギア角)はまだ補正しない。安定的な直進状態を検出したとき(時刻t2)、転舵目標補正角を算出する。そして、操舵状態を検出したとき(時刻t3)、舵角を補正すると同時に、反力補正角に対応する操舵反力を低減する。なお、グラフPr1及びグラフPr2は比較例を示す。比較例では、車両直進時に、舵角及び操舵反力を同時(時刻t2)に補正している。
次に、図11及び図12を参照して、図1の車両用操舵装置の動作が終了してから再び起動する際の舵角補正装置の動作を説明する。
図11は、指令舵角(Gt1、Gt2)及び実際の舵角(Rg)の時間変化を示す。車両用操舵装置の終了時において、転舵目標補正角が検出され、舵角が補正されている場合、指令舵角は実際の舵角(Rg)に一致している。このため、舵角補正装置20は、終了処理として、当該サイクルにおいて検出した転舵目標補正角(S21)及び反力補正角(S09)を記憶しなくてもよい。指令舵角は、例えば、指令可変ギア角と転舵目標補正角と前回転舵補正角とを加算した値である。「前回転舵補正角」とは、当該サイクルの1つ前のサイクルにおいて検出した転舵目標補正角である。
一方、図3のフローチャートに示すサイクルの途中で、車両のイグニションスイッチ(車両システム)がオフされ、ステップS23が実行されずに、図1の車両用操舵装置の動作が終了した場合(図12のステップS57でYES)、舵角補正装置20は、図12のステップS59に進み、終了処理を実行する。
車両用操舵装置の終了時において、転舵目標補正角が検出されているが、舵角が補正されていない場合、指令舵角(Gt2)は実際の舵角(Rg)と相違している。このため、舵角補正装置20は、終了処理(S59)として、当該サイクルにおいて検出した転舵目標補正角(S21)を記憶する。なお、指令舵角(Gt2)は、例えば、指令可変ギア角と転舵目標補正角と前回転舵補正角とを加算した値である。
また、車両用操舵装置の終了時において、反力補正角は検出されているが、転舵目標補正角が検出されておらず、舵角も補正されていない場合、指令舵角(Gt1)は実際の舵角(Rg)と相違している。このため、舵角補正装置20は、終了処理(S59)として、当該サイクルにおいて検出した反力補正角(S09)を記憶する。なお、指令舵角(Gt1)は、例えば、指令可変ギア角と反力補正角と前回転舵補正角とを加算した値である。
その後、再び、車両のイグニションスイッチ(車両システム)がオンされ、図1の車両用操舵装置が起動した場合(図12のステップS51でYES)、ステップS53に進む。ステップS53において、舵角補正回路27は、外部記憶装置23に記憶した転舵目標補正角又は反力補正角をずれ量の初期値として設定する。そして、ステップS55に進み、初期値として設定された転舵目標補正角又は反力補正角に基づいて舵角の補正(ステップS23)を実行する。これにより、再起動後に、実際の舵角(Rg)が、指令舵角(Gt2)又は指令舵角(Gt1)と一致する。
以上説明したように、実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
舵角を補正することにより、補正量分の操舵反力が変化する。運転者がステアリングホイール11を操作していない時、つまり運転者がステアリングホイール11を回転させていない時に舵角を補正してしまうと、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づき易い。一方、ステアリングホイール11を操作すれば操舵反力も変化する。このステアリングホイール11操作による操舵反力の変化に、補正量分の操舵反力の変化を重畳させることにより、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくくなる。そこで、運転者がステアリングホイール11を操作している時に舵角を補正する。これにより、運転者に補正量分の操舵反力の変化を気づかせにくくすることができる。よって、運転者に気づかれにくい状態でオフセンターを解消することができ、運転者に違和感を与えにくくすることができる。
ステアリングホイール11を操作する速度が速ければ、舵角を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくい。そこで、図6に示すように、舵角補正回路27は、ステアリングホイール11の角速度が速いほど、舵角を補正する速度を速める。これにより、運転者に気づかれにくい状態で、早期に舵角のずれ(オフセンター)を解消することができる。
車両が旋回している場合、車両が直進している場合に比べて、舵角を補正する速度を速める。車両が旋回している場合、車両が直進している場合に比べて、操舵反力は大きいため、舵角を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくくなる。したがって、運転者に気づかれにくい状態で、早期にオフセンターを解消することができる。
車両の走行速度が所定閾値以下である場合、ステアリングホイール11が操作される角速度に依らず、一定の速度で前記舵角を補正する。車両の走行速度が所定閾値以下であれば、ステアリングホイール11が操作される速度に依らず一定の速度で舵角を補正しても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくくなる。したがって、運転者に気づかれにくい状態で、早期にオフセンターを解消することができる。
舵角を補正する前に、転舵目標補正角(第1のずれ量の一例)とは異なる方法によって求めた反力補正角(第2のずれ量の一例)に対応した操舵反力を補正する。この場合、転舵輪の中立位置に対するステアリングホイール11の中立位置の真のずれ量は転舵目標補正角であると判断する。転舵目標補正角に対応した操舵反力を低減する替わりに、反力補正角に対応した操舵反力を低減する。これにより、反力補正角に対応した操舵反力の補正と舵角の補正とは調停され、操舵反力とステアリングホイール11の見た目の角度(舵角)とを、同じずれ量(転舵目標補正角)を基準として補正することができる。
図9A〜図9C及び図10(b)に示すように、転舵目標補正角が反力補正角よりも大きい場合、転舵目標補正角と反力補正角の差分だけ舵角を補正し、その後、転舵目標補正角だけ舵角を補正し、転舵目標補正角に対応した操舵反力を低減する。早期に真のずれ量である転舵目標補正角に対応した操舵反力を補正することができる。
図5に示すように、反力補正角が大きいほど、操舵反力を補正する速度を速める。反力補正角が大きければ、操舵反力を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくい。したがって、運転者に気づかれにくい状態で、早期に操舵反力のずれを解消することができる。
ステアリングホイール11の角度が変化していない場合、角度が変化している場合に比べて、操舵反力を補正する速度を速める。角度が変化していなければ、操舵反力を補正する速度を速めても、運転者は、補正量分の操舵反力の変化に気づきにくい。したがって、運転者に気づかれにくい状態で、更に早期に操舵反力のずれを解消することができる。
車両システムをオフする際に、転舵目標補正角及び反力補正角の少なくとも一方を記憶し、車両システムを再びオンしたときに、転舵目標補正角及び反力補正角の少なくとも一方に基づき補正を実行する。これにより、終了時に検出した転舵目標補正角又は反力補正角を有効に活用することができる。
上述の各実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理装置は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。