JP2018130987A - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】変速比がステップ的に変化する場合であっても駆動力の変化を滑らかにし、また減速操作に応じた変化となるように駆動力を制御できる装置を提供する。【解決手段】減速操作の操作量に基づいて駆動トルクを制御するコントローラを備え、コントローラは、各変速段ごとの駆動力線に沿って駆動力を変化させる基本駆動力特性制御と、変速時駆動力特性制御とを行うように構成され、変速時駆動力特性制御は、変速比を変更する変速が実行される場合に、駆動トルクを変速前のトルクから操作量の変化に応じて変化させる補助駆動力線を設定し、変速が達成された後の駆動トルクを補助駆動力線に沿って変化させ、前記補助駆動力線に沿って変化させた駆動トルクが、前記変速の後の変速比ごとに前記操作量に応じて予め定められているトルクに一致するまで前記補助駆動力線に沿って駆動トルクを変化させる制御である。【選択図】図5
Description
本発明は、変速比がステップ的(段階的)に変化する自動変速機がエンジンなどの駆動力源の出力側に連結されている車両における駆動力、特に変速時の駆動力を制御する装置に関するものである。
車両の駆動力(走行するトルク)は、駆動力源が出力するトルクと変速機で設定される変速比とによって決まる。自動変速機を搭載した車両では、運転者が意図もしくは期待する駆動力を発生するように駆動力源の出力トルクと変速比とを制御している。この種の車両における運転者の加減速などの意図は、アクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度やシフト装置の運転者による操作に基づいて把握もしくは検出される。したがって従来、自動変速機を搭載した車両では、アクセル開度が増大し、あるいは車速が低下することによりダウンシフトを実行し、また反対にアクセル開度が低下し、あるいは車速が増大することによりアップシフトを実行している。さらに最近では、自動変速機であっても運転者の手動操作(マニュアル操作)によってアップシフトあるいはダウンシフトを実行し、マニュアル操作によって選択された変速比を維持するように変速機を制御する例がある。さらに、変速比を変化させるだけでなく、駆動力源の出力トルクを自動変速機での変速と併せて制御することにより、駆動力をより多様に制御することが行われている。
特許文献1に記載された装置はその一例であり、特許文献1に記載された装置では、自動変速機で設定される各変速段ごとにアクセル開度と駆動トルクとの関係を定めた駆動力特性マップを用意し、所定の変速段を設定して走行している際には、その変速段に対応する駆動力特性マップから求まる駆動力となるように制御している。また、この装置では、変速段を変更する場合には、変速前の駆動力特性マップから求まる駆動力から変速後の駆動力特性マップから求まる駆動力にステップ的に変化させずに、これらの各変速段の駆動力特性マップから求まる駆動力の間の駆動力を順次設定して、変速時の全体としての駆動力の変化が滑らかになるように制御している。
また、アクセル開度が一定であれば、運転者は車速あるいは加速度もしくは減速度が変化しないことを意図していないと考えられる。そこで例えば特許文献2に記載された制御装置は、アクセル開度が一定でかつ走行路面の勾配が一定の場合には、ハイブリッド車両の加速度を一定に維持するように構成されている。さらに、変速比がステップ的に変化するとしても変速終了時に駆動力段差を生じさせないように制御する装置が特許文献3に記載されている。特許文献3に記載された装置は、アクセルペダルが踏み込まれていないアクセルオフの状態でのマニュアルダウンシフト中にアクセル開度を検出し、アクセル開度がしきい値以上であれば、タービントルクと変速の進行度とに基づいて現在発生する駆動力を推定し、その推定された駆動力が目標駆動力となるように制御している。
特許文献1に記載された装置によれば、アクセルペダルを踏み込んで駆動力が変速前の駆動力特性マップで決まる駆動力から変速後の駆動力特性マップで決まる駆動力に変化する場合、これらの駆動力特性マップの間の駆動力を経由させて駆動力を変化させるから、駆動力の変化が滑らかになる。しかしながら、そのように駆動力を変化させる要因となっている変速が、アクセル開度が一定に維持されているなど、運転者の加減速操作に基づかない変速であった場合には、たとえ変化が滑らかであっても駆動力が変化するので、運転者が意図していない車両の挙動の変化が生じることになり、これが違和感になる可能性がある。また、アクセルペダルを戻した場合には、各変速段ごとに設けてある駆動力特性マップに即して駆動力を制御するので、その駆動力特性マップ上の駆動力になるまで駆動力は一定に維持されてしまい、違和感となる可能性がある。しかも特許文献1の装置による駆動力の新たな制御は、ダウンシフトの際の駆動力制御に限られてしまう。
また、特許文献2に記載された装置は、ハイブリッド車が走行中にエンジンをいわゆる押し掛けする際に回転数を制御する装置であり、有段自動変速機を搭載した車両における変速時の駆動力制御には直ちには使用することができない。さらに特許文献3に記載された装置は、クラッチが解放状態から完全に係合して変速が終了する時点までの過程における駆動力を目標駆動力に基づいて制御するので、変速終了時の駆動力段差を解消もしくは抑制することができる。しかしながら、特許文献3に記載された装置は、変速の過程での駆動力の制御を行う装置であり、したがって車両の駆動力は変速が完了した時点で変速後の変速比に基づいて定まる駆動力にステップ的に変化する。そのため、上述したように、変速自体がアクセル操作などの運転者による加減速操作に基づかない変速の場合には、意図せずに駆動力がステップ的に変化し、これが違和感となる可能性がある。
本発明は上記の技術的課題に鑑みてなされたものであって、変速比がステップ的に変化するとしても運転者の意図とは乖離した駆動力の変化が生じたり、これが違和感となったりすることを回避もしくは抑制することのできる駆動力制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明は、運転者の加減速操作によって出力トルクを変更する駆動力源の出力側に、変速比を段階的に変化させる自動変速機が連結され、走行のための駆動トルクを前記自動変速機で設定される変速比ごとに前記加減速操作の操作量に応じて予め定められたトルクに制御する基本駆動力特性制御を有する、車両の駆動力制御装置において、前記加減速操作の操作量に基づいて前記駆動トルクを制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記基本駆動力特性制御と、変速時駆動力特性制御とを行うように構成され、前記変速時駆動力特性制御は、前記変速比を変更する変速が実行される場合に、前記駆動トルクを前記変速前のトルクから前記操作量の変化に応じて変化させる補助駆動力線を設定し、前記変速が達成された後の前記駆動トルクを前記補助駆動力線に沿って変化させ、前記補助駆動力線に沿って変化させた駆動トルクが、前記変速の後の変速比ごとに前記操作量に応じて予め定められているトルクに一致するまで前記補助駆動力線に沿って駆動トルクを変化させる制御であることを特徴とする駆動力制御装置である。
本発明によれば、所定の変速比が設定されて車両が走行している状態で運転者が加減速操作を行うと、変速が生じなければ、駆動トルクは、変速比ごとに操作量に応じて定められているトルクに制御される。すなわち、基本駆動力特性制御が実行される。これに対して、変速が実行される場合、駆動トルクは、変速時駆動力特性制御によって制御される。その変速時駆動力特性制御は、変速比の変化によらずに操作量の変化に応じて駆動トルクを変化させる制御であるから、変速比が変更されるとしても、その時点で加減速操作量が変化していなければ、駆動トルクは変速前のトルクに維持される。このような駆動トルクの維持は、駆動力源の出力トルクを制御することにより実行される。変速比が切り替わった状態で操作量が変速前の状態から変化していれば、駆動トルクが操作量に応じたトルクに制御され、そのトルクは、その時点の操作量および変速前の変速比に基づいて定まるトルクと、その時点の操作量および変速後の変速比に基づいて定まるトルクとの間のトルクとなる。したがって、変速比が変更されるとしても、駆動トルクは、変化した前記操作量に応じたトルクに設定されるので、加減速の意図のない状態での駆動トルクの変化を防止もしくは抑制できるとともに、変速前の駆動トルクから変速後の駆動トルクへの変化を滑らかなものとすることができる。また、補助駆動力線に沿った駆動トルクの制御は、その駆動トルクが基本駆動力特性制御によるトルクに一致するまで継続されるので、補助駆動力線に沿った駆動トルクの制御中に操作量が増減した場合、駆動トルクは補助駆動力線に沿って変化するので、操作量に応じた駆動トルクを設定することができ、操作量と駆動トルクとが乖離するなどの事態が生じることを回避できる。しかも本発明によれば、このような操作量に応じた滑らかな駆動トルクの変化は、ダウンシフトに限らず、アップシフトの場合にも達成することができる。
図1に本発明の実施形態における車両10の一例を模式的に示してある。この車両10においては、駆動力源1の出力側に自動変速機2が連結され、自動変速機2から出力されたトルクが終減速機であるデファレンシャルギヤ3を介して左右の駆動輪4に伝達される。駆動力源1はガソリンエンジンなどの内燃機関やモータを備え、その出力を電気的に制御できるように構成されている。自動変速機2は、電気的な制御によって変速比を段階的(ステップ的)に設定するように構成された変速機であり、歯車機構を備えたいわゆる有段自動変速機や、変速比を連続的に変化させることのできる機構を備え、かつ設定する変速比を段階的に変化させる無段変速機などによって構成されていてよい。
駆動力源1や自動変速機2を制御する電子制御装置(ECU)5を備えている。電子制御装置5は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、図示しない各種のセンサから入力されるデータや予め記憶しているデータなどを使用して演算を行い、その演算の結果を制御指令信号として出力するように構成されている。入力されるデータの一例は、加減速の操作量に相当するアクセル開度Acc、車速V、シフト装置(図示せず)を手動操作することによるマニュアルシフト信号Smなどであり、また予め記憶しているデータは、各変速段をアクセル開度や車速によって定めたマップ(変速線図)や、各変速段ごとにアクセル開度に対応させて駆動力(駆動トルク)Fを定めた駆動力線などである。さらに、電子制御装置5から出力される制御指令信号は、エンジン1の出力トルクを制御するための駆動信号、自動変速機2で設定する変速段を指示する変速信号などである。なお、エンジン1が電子スロットルバルブ(図示せず)を備えている場合には、前記駆動信号はその電子スロットルバルブの開度信号であってよい。
変速線図は、従来の自動変速機で変速段を設定するために使用されているものと同様の線図であり、例えば図2に模式的に示すように、車速Vとアクセル開度Accとによって変速段の領域を決めてある。図2における実線はn段から(n+1)段へのアップシフト線であり、車速Vとアクセル開度Accとによって決まる走行状態がアップシフト線を低車速側から高車速側に変化し、あるいはアクセル開度Accが高開度側から低開度側に変化することによりn段から(n+1)段へのアップシフトの判断が成立する。また、図2で破線はn段から(n−1)段へのダウンシフト線であり、車速Vとアクセル開度Accとによって決まる走行状態がダウンシフト線を高車速側から低車速側に変化し、あるいはアクセル開度Accが低開度側から高開度側に変化することによりn段から(n−1)段へのダウンシフトの判断が成立する。なお、図2には車速Vが増大してn段から(n+1)段へのアップシフトが生じる場合、およびアクセル開度Accが増大してn段から(n−1)段へのダウンシフトが生じる場合の走行状態の変化を矢印で示してある。また、図1に示す自動変速機2では、運転者がシフト装置(図示せず)によって変速段を選択もしくは切り替える操作を行うことによるマニュアルシフト信号Smによっても変速の判断が成立し,アップシフトもしくはダウンシフトが実行される。
上記の車両10における走行のための駆動トルクFは、駆動力源1の出力トルクもしくは自動変速機2の変速機構に入力されるトルクに自動変速機2での変速比(変速機構で設定される変速比)を掛けることにより求まるトルクである。したがって、駆動トルクFは変速比だけでなく、駆動力源1の出力トルクを適宜に制御することにより任意のトルクに設定することができる。駆動力線はこのような自由度のある駆動トルクFを制御するために予め用意されている制御マップである。より具体的には、アクセル開度Accで代表される加減速操作量に対応する駆動トルクFが各変速段ごとに定められている。
図3に(n−1)段、n段、(n+1)段の駆動力線を模式的に示してある。図3に示すように、変速比が小さいほど(高車速側の変速段ほど)駆動トルクFが小さく、アクセル開度Accが大きいほど駆動トルクFは大きくなる。上述した車両10が走行している場合、駆動トルクFはその時点の変速段に対応する駆動力線とその時点のアクセル開度Accを示す線との交点で表されるトルクに制御され、その状態からアクセルペダルが踏み込まれ、あるいは踏み戻されるなど加減速操作が行われると、その時点の変速段に対応する駆動力線上の駆動トルクに変化させられる(制御される)。また、変速が実行されると、変速後の変速段に対応する駆動力線上の駆動トルクであってその時点のアクセル開度Accに応じた駆動トルクが設定される。図3にはアクセル開度Accが増大してn段から(n−1)段にダウンシフトした場合の駆動トルクFの変化、およびアクセル開度Accが減少してn段から(n+1)段にアップシフトした場合の駆動トルクFの変化の例を矢印で示してある。アクセル開度Accの変更に伴う変速および各変速段ごとの駆動力線に沿った駆動トルクの制御は、上述した電子制御装置5によって実行され、このような制御が本発明の実施形態における通常駆動力特性制御に相当し、また電子制御装置5が本発明の実施形態におけるコントローラに相当する。
上記の車両10における変速は、アクセル開度Accが変化することにより実行されるだけでなく、アクセル開度Accが変化することなく車速Vが変化することにより実行され、あるいは運転者がシフト装置をマニュアル操作することにより実行されることがある。本発明の実施形態における動力制御装置は、変速段(変速比)がステップ的に変更された場合(すなわち変速が生じた場合)、駆動トルクを各変速段ごとの駆動力線に即して制御せずに、各駆動力線で定まるトルクの間のトルクに制御するように構成されている。変速時におけるこのような駆動トルクの制御が本発明の実施形態における変速時駆動力特性制御に相当する。
図4はその変速時駆動力特性制御の一例を説明するためのフローチャートであり、上述した車両10が走行している際に所定の短時間ごとに繰り返し実行される。先ず、変速の開始が判断される(ステップS1)。この判断は、前述した自動変速機2に対する変速指令信号に基づいて行うことができる。変速の判断が成立していないことにより変速が開始していなければステップS1で否定的に判断され、その場合、特に制御を行うことなくリターンする。
ステップS1で肯定的に判断された場合、変速開始時の駆動力(駆動トルク)が推定される(ステップS2)。駆動トルクは前述したように、駆動力源1の出力トルクに変速比を掛けて求められる。駆動力源1の出力トルクは、駆動力源1に対する電子制御装置5からの指令信号に基づいて求めることができ、あるいは駆動力源1がガソリンエンジンであればスロットル開度や燃料噴射量に基づいて出力トルクを推定することができる。さらに、自動変速機2がトルクコンバータ(図示せず)を有している場合には、トルクコンバータにおける速度比を駆動力源1の出力トルクに加味して駆動トルクを推定することになる。
ついで変速後のアクセル開度に対する駆動力線が算出される(ステップS3)。この駆動力線は、前述した変速段ごとの駆動力線とは異なり、変速段ごとの駆動力線を結んだ状態に設定される駆動力線であって、変速に伴う駆動トルクの変化が滑らかになるように予め用意されている駆動力線である。したがって、このような変速時に使用される駆動力線は補助駆動力線と称することができ、ステップS3では上記のステップS2で推定された変速開始時駆動トルクを使用して補助駆動力線が選択もしくは設定される。変速が実行された状態でアクセル開度が変速前の開度から変化している場合の駆動トルクを制御するために、駆動トルクの制御のための駆動力線が上記の補助駆動力線に読み替えられる(ステップS4)。読み替えられた駆動力線の具体例は後述する。
したがって、ステップS4の制御を実行することにより、変速が実行された時点の駆動トルクは、その時点のトルクに設定もしくは維持され、変速後の変速段に対応させて設けてある駆動力線で決まるトルクにステップ的に変化することはない。すなわち、駆動トルクのステップ的な変化やそれに伴う違和感が回避もしくは抑制される。また、アクセル開度が変化していることにより、駆動トルクは補助駆動力線に沿って滑らかに変化させられ。すなわち、運転者の加減速の意図に即して駆動トルクが変化し、かつその変化が滑らかなものになるので、この点においても違和感を回避もしくは抑制することができる。
補助駆動力線は、変速前の変速段(変速比)に対応させて設定されている駆動力線と、変速後の変速段(変速比)に対応させて設定されている駆動力線とを結んだ状態の駆動力線であり、その補助駆動力線と変速後の変速段に対応する駆動力線(いわゆる基本駆動力特性制御で使用する駆動力線)との交点(以下、A点と記す)で表される駆動トルクになることにより、自動変速機2での変速に伴う駆動力制御が一旦終了する。ステップS5ではこのような変速時の駆動力制御を終了する状態が生じているか否かが判断される。具体的にはアクセルペダルが上記のA点に相当するアクセル開度Accになるまで踏み増されているか否かが判断される。
ステップS5で肯定的に判断された状態は、変速後の変速段に対応して設けてある駆動力線で決まる駆動トルクと、補助駆動力線で決まる駆動トルクとが一致した状態である。すなわち、駆動トルクが、変速前のトルクから変速後の変速段で使用する駆動力線で決まるトルクに変化したことになり、変速に伴う過渡的な駆動トルク制御が終了した状態である。すなわち、補助駆動力線に沿った駆動トルクの制御は、基本駆動力特性制御によるトルクに一致するまで継続される。したがってこの場合、変速後のアクセル開度に対する駆動力線の読み替えを解消し、変速後の変速段に対応して設けてある駆動力線およびアクセル開度によって駆動トルクを求め、かつ制御し(ステップS6)、リターンする。
一方、ステップS5で否定的に判断された場合、すなわち上述したA点で表されるアクセル開度になるまでアクセルペダルが踏み込まれていない場合、アクセルペダルが大きく踏み戻されているか否かが判断される(ステップS7)。この判断の結果が肯定的になる点を仮にB点とすると、B点は変速後の変速段で使用する駆動力線と変速前の変速段で使用されていた駆動力線とが接近した点、言い換えればこれらの駆動力線に基づいて決まる駆動トルクの差が予め定めた所定値以下になる点である。すなわち、B点は制御終了点である。なお、その「接近」を判断するためのしきい値や前記「差」は、駆動力線の変更による駆動トルクの変化が違和感にならないなどの基準を設けて、設計上予め定めておくことができる。
アクセルペダルが大きく踏み戻されていることによりステップS7で肯定的に判断された場合には、上述したステップS6に進んで駆動力線の読み替えが解消され、前述した基本駆動力特性制御で使用する各変速段ごとの駆動力線による駆動トルクの制御が実行される。言い換えれば、変速時駆動力特性制御が終了される。これに対してステップS7で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなくリターンする。すなわち、駆動トルクを制御する駆動力線が前述した補助駆動力線に読み替えられていてその補助駆動力線に基づいて変速時駆動力特制御が継続される。
上述した変速時の駆動トルクの変化および補助駆動力線について、図5を参照して説明する。図5の(a)は補助駆動力線が設定されて、その補助駆動力線に沿った駆動トルクFの変化を示し、(b)はそのような駆動トルクFの変化が生じる走行状態を模式的に示している。図5の(b)に示すように車両10がn段を設定して平坦路を走行している状態から所定の勾配の登坂路に差し掛かると(P1点)、アクセルペダルが踏み込まれてアクセル開度Accが増大する。したがって駆動トルクFは、アクセル開度Accの増大に応じてn段の駆動力線に沿って増大させられる。このような駆動トルクFの増大は、駆動力源1の出力トルクを増大させることにより達成される。その増大過程のP2点で、アクセル開度Accの増大による(n−1)段へのダウンシフトが実行される。
その場合、変速制御と併せて駆動力源1の出力トルクの制御が実行される。ダウンシフトを実行することにより変速比が増大するが、変速比の増大による駆動トルクFの増大を相殺するように駆動力源1の出力トルクが低下させられ、その結果、駆動トルクFが変速の実行の前後で変化しないように駆動力源1の出力トルクが制御される。図5に示す例においては、駆動トルクFはP2点で示すトルクに維持される。図5の(b)には駆動力源1のトルクの制御を行わない例を破線で示してあり、変速のみを実行した場合には、駆動トルクFは変速後の変速段である(n−1)段に対応して設けている駆動力線上のトルクにステップ的に増大し、このような駆動トルクの変化が違和感となる可能性がある。
本発明の実施形態における制御装置では、図5の(a)に太い実線で示す補助駆動力線が設定される。この補助駆動力線は、駆動トルクFを、n段の駆動力線上のトルクと(n−1)段の駆動力線上のトルクとの間のトルク(いわゆる中間のトルク)を経由して、変速後のトルクである(n−1)段の駆動力線上のトルクに向けて変化させるための駆動力線である。そのいわゆる中間のトルクは、アクセル開度Accの増大に応じて増大し、かつアクセル開度Accの減少に応じて低下するトルクであり、そのトルクの変化が滑らかになるように予め設定されている。したがって、ここで説明している例では、アクセル開度Accが増大させられているので、駆動トルクFはn段の駆動力線を離れてその駆動力線上のトルクより大きいトルクのP3点で示すトルク(補助駆動力線上のトルク)に制御される。
アクセル開度Accが(n−1)段へのダウンシフトを生じさせる開度であり、その開度が維持されていれば、駆動トルクFは補助駆動力線と(n−1)段の駆動力線との交点である前述したA点で表されるトルクに制御される。なお、図5の(a)にはA点に符号「P4」を併記してある。このP4点の駆動トルクFおよびアクセル開度Accは、前述した基本駆動力特性制御によるトルクおよび開度であり、したがってこの時点で変速に伴う過渡的な駆動トルク制御すなわち変速時駆動力特性制御が終了する。その後、車速が増大するなどのことによって運転者がアクセルペダルを踏み戻してアクセル開度Accが減少すると、駆動トルクFは(n−1)段の駆動力線に沿って制御され、アクセル開度Accに応じた例えば図5の(a)、(b)のP5点で示すトルクに制御される。
本発明の実施形態における上記の駆動力制御によれば、駆動トルクは図5の(b)に実線で示すように滑らかに増大し、運転者が意図しない急激な加速度の変化や違和感を回避もしくは抑制することができる。これに対して、前述した補助駆動力線を使用せずに各変速段ごとの駆動力線のみによって駆動力を制御するとすれば、図5の(b)に破線で示すように、変速に伴って駆動トルクFが急激に変化し、これが違和感となる可能性がある。
本発明の実施形態による駆動力制御装置は、変速の際の駆動トルクFを、その変速の時点のトルクから変速後の変速段に対応させて設定されている駆動力線上のトルクに滑らかに変化させる補助駆動力線に沿って変化させる。その変化の過程の駆動トルクFはアクセル開度Accに応じたトルクに設定される。したがって、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度Acc)を一定に保ったまま、マニュアル操作によって変速を実行した場合、本発明の実施形態における駆動力制御装置によれば、駆動トルクFは従前のトルクに保持され、変化することはない。
その例を図6に示してあり、ここに示す例は、車両10が一定のアクセル開度で登坂路を走行している状態でマニュアルダウンシフト操作された場合の例である。変速段がn段になっている状態でダウンシフト操作されることにより変速段は図6の(b)に示しように(n−1)段に切り替えられる。しかしながら、アクセル開度Accが一定に維持されていることにより、駆動トルクFは従前のトルクに維持される。この制御は、ダウンシフトによる変速比の増大およびそれに伴う駆動トルクFの増大を駆動力源1の出力トルクの低下によって相殺する制御として実行される。その駆動トルクFは、図6の(a)に示すように、変速前の変速段であるn段の駆動力線上のP10点のトルクになる。したがって、アクセル操作を行っていないにもかかわらず駆動トルクFが変化したり、それに伴って違和感を生じさせたりする事態を回避もしくは抑制することができる。また、駆動トルクFが変化しないので、アクセルペダルを踏み増したり、あるいは踏み戻したりする操作が不要であり、駆動力制御が容易になる。
なお、この場合も前述した補助駆動力線が設定されるから、マニュアルダウンシフトに続けてアクセルペダルが操作された場合には図6の(a)に太い実線で示す補助駆動力線に沿って駆動トルクFが制御される。
また、図6の(b)には補助駆動力線を使用しない制御を行った場合の駆動トルクFの変化を破線で示してある。補助駆動力線を使用しない場合、すなわち変速時駆動力特性制御を行わない場合には、変速比の増大と共に駆動トルクFが増大し、これが変速ショックや加速度の急変などの要因になり、運転者に違和感を抱かせる可能性がある。
つぎに、駆動トルクFが補助駆動力線上のトルクになっている状態でアクセルペダルが踏み戻された場合の制御例を説明する。図7は前述した図5に示す例において、補助駆動力線上のP3点でアクセルペダルが大きく踏み戻されてアクセル開度Accが減少し、その後、アクセルペダルが再度踏み込まれた例である。P3点でアクセル開度Accが大きく減少した場合、制御の選択肢としては、補助駆動力線に沿って駆動トルクFを変化させる制御、(n−1)段の駆動力線に沿って駆動トルクFを変化させる制御、n段の駆動力線に沿って駆動トルクFを変化させる制御などが考えられる。本発明の実施形態では、それらの制御のうち第1番目の補助駆動力線を使用した制御を行う。具体的には、図7の(a)および(b)に示すように、P3点で示すアクセル開度Accまでアクセルペダルが踏み込まれた後にアクセルペダルが踏み戻されると、駆動トルクFはアクセル開度Accの減少に応じて図7の(a)に太い実線で示す補助駆動力線に沿って低下させられる。補助駆動力線に即して駆動トルクを変化させる変速時駆動力特性制御が継続されているからである。駆動トルクFがn段の駆動力線上のトルクまで低下するようにアクセル開度Accが減少した場合には、駆動トルクFをn段の駆動力線に基づいて求まるトルクに制御するものの、自動変速機2ではアップシフトが生じない。アップシフト線とダウンシフト線との間にヒステリシスが設定されているためである。この点を符号P11で示してあり、これは前述したP2点と同じである。したがって、アップシフトが生じないことにより変速比が(n−1)段の変速比になっているとしても、駆動力源1の出力トルクが、変速比が大きいことによる駆動トルクFの増大分を低下させるように(相殺するように)低下させられる。
その後は、変速段を(n−1)段に維持したまま、n段の駆動力線による駆動トルクFと同様のトルクとなるように駆動トルクFが低下させられる。そして、n段の駆動力線と(n−1)段の駆動力線とが接近してこれらの駆動力線に基づく駆動トルクFに大きな差がない状態(例えばこれらの駆動力線が交差する状態)までアクセル開度Accが減少すると、図4のフローチャートを参照して説明したように、駆動力線の読替を解消するので、駆動トルクFはその時点の変速段である(n−1)段の駆動力線に沿って変化するように制御される。このような切り替えが生じる点が前述したB点であり、図7にはP12点として示してある。そして、アクセル開度Accがわずかに増大した点をP13点として図7に示してあり、これは、(n−1)段の駆動力線上の点である。なお、図7の(b)には補助駆動力線への読替を行わない場合、すなわち変速時駆動力特性制御を行わない場合の駆動トルクFの変化を破線で示してある。本発明の実施形態による変速時駆動力特性制御を行わないとすれば、駆動トルクFの変化が大きくなり、また急激な変化になるので、変速ショックや違和感が生じる可能性がある。
なお、本発明の実施形態による制御装置は、ダウンシフトの際の駆動力制御に限らず、アップシフトの場合にも変速時駆動力特性制御を行うように構成することができる。その制御の例を図8に示してある。図8において、車両が(n−1)段の変速段で走行している場合、駆動トルクFは(n−1)段の駆動力線とその時点のアクセル開度Accとによって決まるトルクに制御される。その状態を図8でP21点で示してある。この状態からアクセルペダルが次第に踏み戻されてアクセル開度Accが徐々に減少すると、駆動トルクFは(n−1)段の駆動力線に沿って変化させられる。
そして、アクセル開度Accが(n−1)段からn段へのアップシフトが生じる開度まで減少すると(図8のP22点)、それ以降、駆動トルクFは、(n−1)段の駆動力線上のP22点とn段の駆動力線上の所定の点を繋ぐように設定された補助駆動力線によって変化するように制御される。この場合の補助駆動力線は、上述したダウンシフトの場合と同様に、(n−1)段の駆動力線上のアップシフトの生じるP22点からn段の駆動力線上のP23点のトルクに向けた駆動トルクFが滑らかに変化するように設定された駆動力線であり、設計上予め用意されている。図8の(a)にはこの補助駆動力線を太い実線で示してある。したがって、アップシフトが実行されても駆動トルクFは(n−1)段の駆動力線上のトルクに設定されるので、アップシフトが実行されてもアップシフトが要因となる駆動トルクFのステップ的もしくは急激な変化は生じない。
アクセル開度Accが更に減少すると、アクセル開度Accの減少に応じて駆動トルクFが低下させられるが、その駆動トルクFの変化は補助駆動力線に沿う変化であり、駆動トルクFは滑らかに変化する。そして、アクセル開度Accが補助駆動力線とn段の駆動力線との交点であるP23点の開度に相当する開度まで減少すると、駆動力線の読替が解消させられ、n段の駆動力線に基づく駆動トルクFの制御が実行される。駆動トルクFの制御に使用する駆動力線がこのようにして変更されるとしても、その時点の駆動トルクFは変更の前後におけるいずれの駆動力線上の点でもあるから駆動トルクFが変化することはない。それ以降、n段の駆動力線に沿って駆動トルクFが制御されるから、例えばアクセル開度Accが更に減少すると、駆動トルクFは図8にP24点として示すトルクにn段の駆動力線に沿って低下させられる。
(n−1)段からn段にアップシフトする場合、上記のように補助駆動力線を設定して駆動トルクFを制御することにより、変速ショックや違和感などのない変速を実行し、あるいは駆動トルクFを制御することができる。これに対して上述した補助駆動力線を使用しない制御、すなわち本発明の実施形態における変速時駆動力特性制御を実行しないとした場合には、図8の(b)に破線で示すように駆動トルクFが変化し、アップシフトに伴って駆動トルクFが急激に低下し、これが変速ショックや違和感となる可能性がある。
1…駆動力源、 2…自動変速機、 5…電子制御装置(ECU)。
Claims (1)
- 運転者の加減速操作によって出力トルクを変更する駆動力源の出力側に、変速比を段階的に変化させる自動変速機が連結され、走行のための駆動トルクを前記自動変速機で設定される変速比ごとに前記加減速操作の操作量に応じて予め定められたトルクに制御する基本駆動力特性制御を有する、車両の駆動力制御装置において、
前記加減速操作の操作量に基づいて前記駆動トルクを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記基本駆動力特性制御と、変速時駆動力特性制御とを行うように構成され、
前記変速時駆動力特性制御は、
前記変速比を変更する変速が実行される場合に、前記駆動トルクを前記変速前のトルクから前記操作量の変化に応じて変化させる補助駆動力線を設定し、
前記変速が達成された後の前記駆動トルクを前記補助駆動力線に沿って変化させ、
前記補助駆動力線に沿って変化させた駆動トルクが、前記変速の後の変速比ごとに前記操作量に応じて予め定められているトルクに一致するまで前記補助駆動力線に沿って駆動トルクを変化させる制御である
ことを特徴とする車両の駆動力制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017024202A JP2018130987A (ja) | 2017-02-13 | 2017-02-13 | 車両の駆動力制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2018130987A true JP2018130987A (ja) | 2018-08-23 |
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ID=63249114
Family Applications (1)
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Country Status (1)
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JP (1) | JP2018130987A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020138571A (ja) * | 2019-02-26 | 2020-09-03 | トヨタ自動車株式会社 | 車両の駆動力制御装置 |
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-
2017
- 2017-02-13 JP JP2017024202A patent/JP2018130987A/ja active Pending
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JP7351239B2 (ja) | 2020-02-28 | 2023-09-27 | トヨタ自動車株式会社 | 車両の制御装置 |
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