JP2018130932A - エアロゲル積層複合体及び断熱材 - Google Patents

エアロゲル積層複合体及び断熱材 Download PDF

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知里 吉川
智彦 小竹
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智彦 小竹
慧 高安
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慧 高安
海斗 小暮
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海斗 小暮
春巳 根岸
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春巳 根岸
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Koichi Saito
晃一 斉藤
正人 宮武
Masato Miyatake
正人 宮武
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Abstract

【課題】優れた断熱性を有し且つ薄型化が可能なエアロゲル積層複合体及びこれを備える断熱材を提供する。
【解決手段】エアロゲル層2と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体3とを少なくとも含む積層体5と、エアロゲル層2と支持体3が互いに分離するのを防止する接合部材とを含むエアロゲル積層複合体10。積層体5は多孔性スペーサー層1をさらに含んでもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、エアロゲル積層複合体及び断熱材に関する。
近年、居住空間の快適性及び省エネルギーの要求が高まる中、断熱対象物の形状が複雑となり、また、断熱材の設置空間が狭小となる傾向にある。したがって、これらに用いられる断熱材に対しては、更なる断熱性の向上及び薄型化が求められている。
発泡樹脂を用いた断熱材の断熱性能向上の試みとして、例えば、特許文献1では、ポリプロピレン系樹脂発泡体の表面及び/又は内部に少なくとも1層の金属薄膜を含有する板状発泡体が提案されている。
液体窒素、液体ヘリウム等の極低温物質を保管する容器にも断熱材が使用されている。すなわち、当該容器は、内容器と外容器とからなる二重壁構造を有し、内容器と外容器との間は真空になっており、断熱材が充填されている。真空空間に充填する断熱材として、例えば、特許文献2には、ポリイミドフィルムの片面又は両面に金属層を形成した反射膜と、プラスチックヤーンからなるネット状のスペーサーとを積層した積層断熱材が開示されている。
特許文献3には、人工衛星、宇宙ステーション等の各種宇宙機において、外装材として用いられる多層断熱材が開示されている。この多層断熱材は、断熱フィルムの層間に介装する断熱部材と、断熱フィルム、断熱セパレータ及び断熱部材を積層方向に結束する止着手段を備える。
特開2001−179866号公報 特開平9−109323号公報 特開2012−132494号公報
しかしながら、樹脂発泡体を用いた断熱材の場合、良好な断熱性能を得るためには、発泡体を厚くする必要があり、断熱層の薄型化は難しい。また、極低温物質を必要とする極低温技術、超電導技術等の分野において用いられる断熱材には、厚さを薄くした上で、断熱性能の更なる向上が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた断熱性を有し且つ薄型化が可能なエアロゲル積層複合体及びこれを備える断熱材を提供することを目的とする。
本発明に係るエアロゲル積層複合体は、エアロゲル層と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体とを少なくとも含む積層体と、エアロゲル層と支持体が互いに分離するのを防止する接合部材とを備える。
エアロゲル層と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体とを少なくとも含む積層体において、エアロゲル層と支持体が互いに分離しないように両者を接合した状態としておくことにより、優れた断熱性能と薄膜化を両立できる。これに加え、エアロゲル積層複合体を対象物に巻きつける際、単位面積あたりの層数のバラツキを防止することができる。接合部材としては、積層体を厚さ方向に貫通するピン、積層体を縫合する糸状部材、又は積層体を厚さ方向に貫通するボルトとボルトに対応するナットとの組み合わせが挙げられる。
接合部材の代わりに、積層体に対する加圧圧着、熱圧着、レーザー圧着又は結束によってエアロゲル層と支持体を全体的に又は局所的に接合させてもよい。すなわち、本発明に係るエアロゲル積層複合体は、エアロゲル層と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体とを少なくとも含む積層体と、エアロゲル層と支持体が互いに分離するのを防止する接合部であって積層体に対する加圧圧着、熱圧着、レーザー圧着又は結束によって形成された接合部とを備えるものであってもよい。
より優れた断熱性能を達成する観点から、エアロゲル積層複合体を構成する積層体は多孔性スペーサー層を含んでいてもよい。この場合、積層体において、多孔性スペーサー層、エアロゲル層及び支持体がこの順序で積層されていることが好ましい。かかる構成を採用することにより、複数のエアロゲル積層複合体を重ね合わせて使用する際、エアロゲル層と支持体との接触を抑制でき、更に優れた断熱性を達成することができる。
上記エアロゲル積層複合体の断熱性能向上の観点から、多孔性スペーサー層は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層であってもよい。また、多孔性スペーサー層が、ガラス不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維紙、ポリエステルネット又はナイロンメッシュを含む層であると、更に優れた断熱性を達成することができる。
上記エアロゲル層は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層であってもよい。これにより、エアロゲル層の厚さを薄くできるとともに、エアロゲル積層複合体の断熱性を向上するという効果をより一層発現し易くなる。
上記エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物からなる層であってもよい。かかるエアロゲル層を備えるエアロゲル積層複合体は、断熱性と柔軟性とのバランスに優れるものとなる。
上記エアロゲル層は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物からなる層であってもよい。これにより、更に優れた断熱性及び柔軟性を達成することができる。上記シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上500nm以下とすることができる。これにより、断熱性と柔軟性とを更に向上し易くなる。
上記支持体は、カーボングラファイト、アルミニウム、マグネシウム、銀、チタン、カーボンブラック、金属硫酸塩及びアンチモン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層を有することができる。また、上記支持体が、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルムであると、更に優れた断熱性を達成することができる。
本発明はまた、上述したエアロゲル積層複合体を備える断熱材を提供することができる。これのような断熱材は、ハンドリング性に優れ、厚さを薄くした上で、優れた断熱性能を発現することができる。
本発明によれば、優れた断熱性を有し且つ薄型化が可能なエアロゲル積層複合体を提供することができる。そして、このようなエアロゲル積層複合体を備える断熱材は、取扱い性に優れ、厚さを薄くした上で、優れた断熱性能を発現することができる。
図1は本発明に係るエアロゲル積層複合体の一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2(a)はピン(接合部材)が積層体を一体化する態様の一例を模式的に示す断面図であり、図2(b)は矩形のエアロゲル積層複合体におけるピンの設置箇所の一例を模式的に示す平面図である。 図3(a)は積層体の全体にわたって接合部が形成されたエアロゲル積層複合体を模式的に示す平面図であり、図3(b)は積層体の周縁部に沿った領域のみに接合部が形成されたエアロゲル積層複合体を模式的に示す平面図である。 図4は図1に示すエアロゲル積層複合体が積層された多層積層体を模式的に示す断面図である。 図5は粒子の二軸平均一次粒子径の算出方法を示す図である。 図6は断熱性評価用の液体窒素容器の模式断面図である。 図7は断熱性能試験装置の概略図である。
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<エアロゲル積層複合体>
図1は本実施形態のエアロゲル積層複合体を模式的に示す断面図である。同図に示すエアロゲル積層複合体10は、必要に応じて設けられる多孔性スペーサー層1と、エアロゲル層2と、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体3とがこの順序で積層された積層体5と、積層体5の構成部材(多孔性スペーサー層1、エアロゲル層2及び支持体3)が互いに分離するのを防止する接合部材(図2(a)及び図2(b)参照)とを備える。つまり、エアロゲル積層複合体10は、接合部材によって積層体5が積層方向に結束された構成を有する。なお、多孔性スペーサー層1をエアロゲル層2上に設けることにより、優れた断熱性を発現することができる。
図2(a)はピン(接合部材)8によって積層体5の構成部材が接合(一体化)されている様子を模式的に示す断面図であり、図2(b)は矩形のエアロゲル積層複合体10におけるピン8の設置箇所の一例を模式的に示す平面図である。エアロゲル積層複合体10における接合部材の設置はエアロゲル積層複合体10の表面1mあたり好ましくは2000〜40000箇所程度であり、より好ましくは10000〜30000箇所程度である。接合部材の設置が2000箇所/m以上であれば積層体5が一体化された状態を十分に維持でき、他方、40000箇所/m以下であればエアロゲル積層複合体10を効率的に製造しやすく、またエアロゲル積層複合体10の可とう性を維持しやすく取り扱い性に優れる。なお、断熱すべき対象物にエアロゲル積層複合体10を巻きつけて使用する場合は、エアロゲル積層複合体10は帯状であることが好ましい。
エアロゲル層2は可とう性に優れている。従来、エアロゲルは取扱い性が困難であったが接合部材(例えばピン8)によってエアロゲル層2と支持体3とを一体化させることでエアロゲルのシート化が可能となる。これにより、エアロゲル積層複合体10を断熱材として用いた場合、断熱層を薄型化することができるとともに、これを備える断熱材は取扱い性に優れる。非エアロゲル層である支持体3は、輻射体として働き、外部からの熱を遮断する役割を果たすことができる。かかる構成のエアロゲル積層複合体10は薄型化可能であり且つ優れた断熱性及び柔軟性を有する。なお、図1には支持体3の一方の面のみにエアロゲル層2が積層された構造を図示したが、支持体3の両面にエアロゲル層2が積層された構造としてもよい。
接合部材としては、図2(a)に示すようなピン8の他に、積層体5を縫合する糸状部材、又は積層体を厚さ方向に貫通するボルトとボルトに対応するナットとの組み合わせが挙げられる。
接合部材の代わりに、積層体5に対する加圧圧着、熱圧着、レーザー圧着又は結束により積層体5の構成部材を接合する接合部9を設けてもよい。積層体5における接合部9の形成箇所は、図3(a)に示すように、積層体5の全体にわたって接合部9を設けてもよいし、図3(b)に示すように、積層体5の周縁部に沿った領域のみに接合部9を形成してもよい。エアロゲル積層複合体における接合部9の形成はエアロゲル積層複合体の表面1mあたり好ましくは2000〜40000箇所程度であり、より好ましくは10000〜30000箇所程度である。接合部9の設置が2000箇所/m以上であれば積層体5が一体化された状態を十分に維持でき、他方、40000箇所/m以下であればエアロゲル積層複合体を効率的に製造しやすく、またエアロゲル積層複合体の可とう性を維持しやすく取り扱い性に優れる。なお、接合部9の形状に特に制限はなく、図3(a)及び図3(b)に示すように直線状であってもよいし、円形、楕円形、矩形又は曲線状であってもよい。
複数のエアロゲル積層複合体10を準備し、図4に示すように、多孔性スペーサー層1、エアロゲル層2及び支持体3がこの順に複数積層された多層積層体を構成してもよい。このように複数のエアロゲル積層複合体10を重ねた場合、支持体3と支持体3との間で高断熱性のエアロゲル層2が介在することなるため、支持体3同士の接触による熱伝導を抑制することができる。エアロゲル積層複合体10の積層数は、5以上であってもよく、10以上であってもよく、20以上であってもよく、30以上であってもよい。エアロゲル積層複合体10を複数重ねることにより、一つのエアロゲル積層複合体10では得られない優れた断熱性能を発現することができる。
(エアロゲル層)
エアロゲル層2は、エアロゲルにより構成されるものである。狭義には、湿潤ゲルに対して超臨界乾燥法を用いて得られた乾燥ゲルをエアロゲル、大気圧下での乾燥により得られた乾燥ゲルをキセロゲル、凍結乾燥により得られた乾燥ゲルをクライオゲルと称するが、本実施形態においては、湿潤ゲルのこれらの乾燥手法によらず、得られた低密度の乾燥ゲルを「エアロゲル」と称する。すなわち、本実施形態において、「エアロゲル」とは、広義のエアロゲルである「Gel comprised of a microporous solid in which the dispersed phase is a gas(分散相が気体である微多孔性固体から構成されるゲル)」を意味する。一般的に、エアロゲルの内部は、網目状の微細構造を有しており、2〜20nm程度のエアロゲル粒子(エアロゲルを構成する粒子)が結合したクラスター構造を有している。このクラスターにより形成される骨格間には、100nmに満たない細孔がある。これにより、エアロゲルは、三次元的に微細な多孔性の構造を有している。なお、本実施形態おけるエアロゲルは、例えば、シリカを主成分とするシリカエアロゲルである。シリカエアロゲルとしては、例えば、有機基(メチル基等)又は有機鎖を導入した、いわゆる有機−無機ハイブリッド化されたシリカエアロゲルが挙げられる。エアロゲル層2は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層であってもよい。
本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるものであってもよい。前記縮合物は、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解により得られた加水分解生成物の縮合反応により得られてもよく、加水分解により得られた官能基ではない縮合性の官能基を有するケイ素化合物の縮合反応により得られてもよい。前記ケイ素化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基の少なくとも一方を有していればよく、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基の双方を有していてもよい。なお、後述する各エアロゲルは、このように、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
エアロゲル層2は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層2は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。
本実施形態に係るエアロゲルは、シロキサン結合(Si−O−Si)を含む主鎖を有するポリシロキサンを含有することができる。エアロゲルは、構造単位として、下記M単位、D単位、T単位又はQ単位を有することができる。
Figure 2018130932
上記式中、Rは、ケイ素原子に結合している原子(水素原子等)又は原子団(アルキル基等)を示す。M単位は、ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した一価の基からなる単位である。D単位は、ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した二価の基からなる単位である。T単位は、ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した三価の基からなる単位である。Q単位は、ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した四価の基からなる単位である。これらの単位の含有量に関する情報は、29Si−NMRにより得ることができる。
本実施形態に係るエアロゲルは、シルセスキオキサンを含有していてもよい。シルセスキオキサンは、構造単位として上記T単位を有するポリシロキサンであり、組成式:(RSiO1.5を有する。シルセスキオキサンは、カゴ型、ラダー型、ランダム型等の種々の骨格構造を有することができる。
加水分解性の官能基としては、例えば、アルコキシ基が挙げられる。縮合性の官能基(加水分解性の官能基に該当する官能基を除く)としては、例えば、水酸基、シラノール基、カルボキシル基及びフェノール性水酸基が挙げられる。水酸基は、ヒドロキシアルキル基等の水酸基含有基に含まれていてもよい。加水分解性の官能基及び縮合性の官能基のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
ケイ素化合物は、加水分解性の官能基としてアルコキシ基を有するケイ素化合物を含むことが可能であり、また、縮合性の官能基としてヒドロキシアルキル基を有するケイ素化合物を含むことができる。ケイ素化合物は、エアロゲルの柔軟性が更に向上する観点から、アルコキシ基、シラノール基、ヒドロキシアルキル基及びポリエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することができる。ケイ素化合物は、ゾルの相溶性が向上する観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することができる。
ケイ素化合物の反応性の向上とエアロゲルの熱伝導率の低減の観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基のそれぞれの炭素数は、1〜6であってもよく、エアロゲルの柔軟性が更に向上する観点から2〜4であってもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
本実施形態に係るエアロゲルとしては、以下の態様が挙げられる。これらの態様を採用することにより、断熱性、難燃性、耐熱性及び柔軟性に優れるエアロゲルを得ることが容易となる。特に、柔軟性が優れていることにより、従来では形成が困難であった形状に対しても断熱層を更に容易に形成することができる。各々の態様を採用することで、各々の態様に応じた断熱性、難燃性及び柔軟性を有するエアロゲルを得ることができる。
[第一の態様]
本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)湿潤ゲルであってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるものであってもよい。なお、後述する各エアロゲルも、このように、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
エアロゲル層2は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層2は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層から構成されていてもよい。
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基とは異なる反応性基(加水分解性の官能基及び縮合性の官能基に該当しない官能基)を更に有していてもよい。反応性基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアミノ基が挙げられる。エポキシ基は、グリシドキシ基等のエポキシ基含有基に含まれていてもよい。前記反応性基を有するポリシロキサン化合物は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
ヒドロキシアルキル基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、下記式(A)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2018130932
式(A)中、R1aはヒドロキシアルキル基を示し、R2aはアルキレン基を示し、R3a及びR4aはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、nは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。式(A)中、2個のR1aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR2aは各々同一であっても異なっていてもよい。式(A)中、2個以上のR3aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR4aは各々同一であっても異なっていてもよい。
上記構造のポリシロキサン化合物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルから生成された湿潤ゲル)を用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを更に得易くなる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(A)中、R1aとしては、例えば、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基が挙げられ、具体的には、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。式(A)中、R2aとしては、例えば、炭素数が1〜6のアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。式(A)中、R3a及びR4aはそれぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(A)中、nは2〜30であってもよく、5〜20であってもよい。
上記式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、及び、XF42−B0970、Fluid OFOH 702−4%等の化合物(いずれも、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)が挙げられる。
アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、下記式(B)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2018130932
式(B)中、R1bはアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、R2b及びR3bはそれぞれ独立にアルコキシ基を示し、R4b及びR5bはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、mは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。なお、式(B)中、2個のR1bは各々同一であっても異なっていてもよく、2個のR2bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR3bは各々同一であっても異なっていてもよい。式(B)中、mが2以上の整数の場合、2個以上のR4bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR5bは各々同一であっても異なっていてもよい。
上記構造のポリシロキサン化合物又はその加水分解生成物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルから生成された湿潤ゲル)を用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを更に得易くなる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(B)中、R1bとしては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基及び炭素数が1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メチル基、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。式(B)中、R2b及びR3bは、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルコキシ基であってもよい。当該アルコキシ基としては、例えばメトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。式(B)中、R4b及びR5bは、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(B)中、mは2〜30であってもよく、5〜20であってもよい。
上記式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、例えば、特開2000−26609号公報、特開2012−233110号公報等にて報告される製造方法を適宜参照して得ることができる。
なお、アルコキシ基は加水分解するため、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物はゾル中にて加水分解生成物として存在する可能性があり、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物と、その加水分解生成物とは混在していてもよい。また、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物において、分子中のアルコキシ基の全てが加水分解されていてもよいし、部分的に加水分解されていてもよい。
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
上記ゾルに含まれるポリシロキサン化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物の含有量、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、良好な反応性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。ポリシロキサン化合物群の前記含有量は、良好な相溶性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。これらの観点から、ポリシロキサン化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1〜50質量部であってもよく、3〜50質量部であってもよく、4〜50質量部であってもよく、5〜50質量部であってもよく、7〜30質量部であってもよく、10〜30質量部であってもよく、10〜15質量部であってもよい。
[第二の態様]
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、ポリシロキサン化合物以外のケイ素化合物(シリコン化合物)を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、場合により「ケイ素化合物群」という)を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。前記ケイ素化合物における分子内のケイ素数は、1又は2であってもよい。
加水分解性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキルケイ素アルコキシドが挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドにおいて、耐水性が向上する観点から、加水分解性の官能基の数は、3個以下であってもよく、2〜3個であってもよい。アルキルケイ素アルコキシドとしては、例えば、モノアルキルトリアルコキシシラン、モノアルキルジアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、モノアルキルモノアルコキシシラン、ジアルキルモノアルコキシシラン及びトリアルキルモノアルコキシシランが挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びエチルトリメトキシシランが挙げられる。
縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、シランテトラオール、メチルシラントリオール、ジメチルシランジオール、フェニルシラントリオール、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、n−プロピルシラントリオール、ヘキシルシラントリオール、オクチルシラントリオール、デシルシラントリオール及びトリフルオロプロピルシラントリオールが挙げられる。
加水分解性の官能基の数が3個以下であり、反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等も用いることができる。
縮合性の官能基を有し、前述の反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルシラントリオール、3−グリシドキシプロピルシラントリオール、3−グリシドキシプロピルメチルシランジオール、3−メタクリロキシプロピルシラントリオール、3−メタクリロキシプロピルメチルシランジオール、3−アクリロキシプロピルシラントリオール、3−メルカプトプロピルシラントリオール、3−メルカプトプロピルメチルシランジオール、N−フェニル−3−アミノプロピルシラントリオール、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルシランジオール等も用いることができる。
アルキルケイ素アルコキシドとしては、分子末端の加水分解性の官能基の数が3個を超えるケイ素化合物であるビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサン等を用いることもできる。
加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
良好な反応性を更に得易くなることから、上記ゾルに含まれるケイ素化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)の含有量、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上とすることができ、10質量部以上であってもよく、12質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、18質量部以上であってもよい。良好な相溶性を更に得易くなることから、ケイ素化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下とすることができ、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。すなわち、ケイ素化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、5〜50質量部とすることができ、10〜30質量部であってもよく、12〜30質量部であってもよく、15〜25質量部であってもよく、18〜20質量部であってもよい。
前記ポリシロキサン化合物群の含有量及び前記ケイ素化合物群の含有量の総和は、良好な反応性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、22質量部以上であってもよい。前記ポリシロキサン化合物群の含有量及び前記ケイ素化合物群の含有量の総和は、良好な相溶性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。これらの観点から、前記ポリシロキサン化合物群の含有量及び前記ケイ素化合物群の含有量の総和は、ゾルの総量100質量部に対し、5〜50質量部であってもよく、10〜30質量部であってもよく、15〜30質量部であってもよく、20〜30質量部であってもよく、22〜25質量部であってもよい。
前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、良好な相溶性を更に得易くなる観点から、1:0.5以上であってもよく、1:1以上であってもよく、1:2以上であってもよく、1:3以上であってもよい。前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、ゲルの収縮を更に抑制し易くなる観点から、1:4以下であってもよく、1:2以下であってもよい。これらの観点から、前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、1:0.5〜1:4であってもよく、1:1〜1:2であってもよく、1:2〜1:4であってもよく、1:3〜1:4であってもよい。
[第三の態様]
本実施形態に係るエアロゲルは、下記式(1)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、式(1)で表される構造を含む構造として、下記式(1a)で表される構造を有することができる。上記式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、式(1)及び式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
Figure 2018130932
Figure 2018130932
式(1)及び式(1a)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。pは1〜50の整数を示す。式(1a)中、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(1a)中、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
上記式(1)又は式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを容易に得ることができる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(1)及び式(1a)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(1)及び式(1a)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキレン基であってもよい。当該アルキレン基は、エチレン基又はプロピレン基であってもよい。式(1a)中、pは2〜30とすることができ、5〜20であってもよい。
[第四の態様]
本実施形態に係るエアロゲルは、支柱部及び橋かけ部を備えるラダー型構造を有するエアロゲルであり、かつ、橋かけ部が、下記式(2)で表される構造を有するエアロゲルであってもよい。エアロゲルの骨格中にこのようなラダー型構造を導入することにより、耐熱性及び機械的強度を容易に向上させることができる。上記式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、式(2)で表される構造を有する橋かけ部を含むラダー型構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。なお、本実施形態において「ラダー型構造」とは、2本の支柱部(struts)と、支柱部同士を連結する橋かけ部(bridges)とを有する構造(いわゆる「梯子」の形態を有する構造)である。本態様において、エアロゲル骨格がラダー型構造からなっていてもよいが、エアロゲルが部分的にラダー型構造を有していてもよい。
Figure 2018130932
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、bは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。なお、式(2)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
上記の構造をエアロゲルの骨格中に導入することにより、例えば、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有する(すなわち、下記式(X)で表される構造を有する)エアロゲルよりも優れた柔軟性を有するエアロゲルとなる。なお、下記式(X)に示すように、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有するエアロゲルでは、橋かけ部の構造が−O−であるが、本態様のエアロゲルでは、橋かけ部の構造が上記式(2)で表される構造(ポリシロキサン構造)である。
Figure 2018130932
式(X)中、Rはヒドロキシ基、アルキル基又はアリール基を示す。
支柱部となる構造及びその鎖長、並びに、橋かけ部となる構造の間隔は、特に限定されないが、耐熱性と機械的強度とを更に向上させる観点から、ラダー型構造としては、下記式(3)で表されるラダー型構造を有していてもよい。
Figure 2018130932
式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、a及びcはそれぞれ独立に1〜3000の整数を示し、bは1〜50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。式(3)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(3)中、aが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(3)中、cが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
更に優れた柔軟性を得る観点から、式(2)及び式(3)中、R、R、R及びR(ただし、R及びRは式(3)中のみ)は、それぞれ独立に炭素数が1〜6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(3)中、a及びcは、それぞれ独立に6〜2000であってもよく、10〜1000であってもよい。式(2)及び式(3)中、bは、2〜30であってもよく、5〜20であってもよい。
[第五の態様]
本実施形態に係るエアロゲルは、更に優れた断熱性及び柔軟性を達成する観点から、シリカ粒子を含有していてもよい。エアロゲルを与えるゾルは、シリカ粒子を更に含有していてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、支持体(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるもの)であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲル層2は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルに由来する湿潤ゲル)の乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるもの)であるエアロゲルを含んでいてもよい。エアロゲル層2は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよく、シリカ粒子を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。なお、これまで述べてきたエアロゲルも、このように、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
シリカ粒子としては、特に制限なく用いることができ、例えば、非晶質シリカ粒子が挙げられる。非晶質シリカ粒子としては、例えば、溶融シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子及びコロイダルシリカ粒子が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカ粒子は、単分散性が高く、ゾル中での凝集を抑制し易い。
シリカ粒子の形状としては、特に制限されず、球状、繭型、会合型等が挙げられる。これらのうち、シリカ粒子として球状の粒子を用いることにより、ゾル中での凝集を抑制し易くなる。シリカ粒子の平均一次粒子径は、適度な強度及び柔軟性をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、1nm以上であってもよく、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。シリカ粒子の平均一次粒子径は、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、500nm以下であってもよく、300nm以下であってもよく、250nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の平均一次粒子径は、1〜500nmであってもよく、5〜300nmであってもよく、10〜250nmであってもよく、20〜100nmであってもよい。
本実施形態において、粒子の平均粒子径(シリカ粒子の平均一次粒子径等)は、走査型電子顕微鏡(以下「SEM」と略記する。)を用いてエアロゲル層2の断面を直接観察することにより得ることができる。例えば、エアロゲルの内部における網目状の微細構造からは、エアロゲル層2の断面に露出した粒子の直径に基づきエアロゲル粒子又はシリカ粒子個々の粒子径を得ることができる。ここでいう「直径」とは、エアロゲル層2の断面に露出した粒子の断面を円とみなした場合の直径を意味する。また、「断面を円とみなした場合の直径」とは、断面の面積を同じ面積の真円に置き換えたときの当該真円の直径のことである。なお、平均粒子径の算出に当たっては、100個の粒子について円の直径を求め、その平均を取るものとする。
なお、シリカ粒子の平均粒子径は、原料から測定することができる。例えば、二軸平均一次粒子径は、任意の粒子20個をSEMにより観察した結果から、次のようにして算出される。すなわち、通常水に分散している固形分濃度5〜40質量%のコロイダルシリカ粒子を例にすると、コロイダルシリカ粒子の分散液に、パターン配線付きウエハを2cm角に切って得られたチップを約30秒浸した後、当該チップを純水にて約30秒間すすぎ、窒素ブロー乾燥する。その後、チップをSEM観察用の試料台に載せ、加速電圧10kVを掛け、10万倍の倍率にてシリカ粒子を観察し、画像を撮影する。得られた画像から20個のシリカ粒子を任意に選択し、それらの粒子の粒子径の平均を平均粒子径とする。この際、選択したシリカ粒子が図5に示すような形状であった場合、シリカ粒子Pに外接し、その長辺が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形L)を導く。そして、その外接長方形Lの長辺をX、短辺をYとして、(X+Y)/2として二軸平均一次粒子径を算出し、その粒子の粒子径とする。
シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、耐収縮性に優れるエアロゲルを得易くなる観点から、10×1018個/g以上であってもよく、50×1018個/g以上であってもよく、100×1018個/g以上であってもよい。シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、均質なエアロゲルが得易くなる観点から、1000×1018個/g以下であってもよく、800×1018個/g以下であってもよく、700×1018個/g以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、10×1018〜1000×1018個/gであってもよく、50×1018〜800×1018個/gであってもよく、100×1018〜700×1018個/gであってもよい。
上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、適度な強度をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよい。上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよく、12質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、8質量部以下であってもよい。これらの観点から、上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1〜20質量部であってもよく、4〜15質量部であってもよく、4〜12質量部であってもよく、4〜10質量部であってもよく、4〜8質量部であってもよい。
[その他の態様]
本実施形態に係るエアロゲルは、下記式(4)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有すると共に、下記式(4)で表される構造を有することができる。
Figure 2018130932
式(4)中、Rはアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基が挙げられる。
本実施形態に係るエアロゲルは、下記式(5)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有すると共に、下記式(5)で表される構造を有することができる。
Figure 2018130932
式(5)中、R10及びR11はそれぞれ独立にアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基が挙げられる。
本実施形態に係るエアロゲルは、下記式(6)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有すると共に、下記式(6)で表される構造を有することができる。
Figure 2018130932
式(6)中、R12はアルキレン基を示す。アルキレン基としては、例えば、炭素数が1〜10のアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基及びヘキシレン基が挙げられる。
本実施形態に係るエアロゲルは、ポリシロキサン由来の構造を有していてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲル層2は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層で構成されていてもよい。ポリシロキサン由来の構造としては、例えば、上記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)で表される構造が挙げられる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有せずに、上記式(4)、(5)及び(6)で表される構造のうち、少なくとも一種を有するものであってもよい。
エアロゲル層2の厚さは、良好な断熱性を得易くなることから、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。エアロゲル層2の厚さは、後述の洗浄及び溶媒置換工程並びに乾燥工程を短縮できる観点から、1000μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。これらの観点から、エアロゲル層2の厚さは、1〜1000μmであってもよく、10〜200μmであってもよく、30〜100μmであってもよく、30〜80μmであってもよい。
(支持体)
支持体3は、非エアロゲル層であり、支持体3の構成としては、特に限定されず、単層でも複層でも構わない。支持体3の形状としては、エアロゲル層2を含む積層体5に軽量性を付与できることから、フィルム状又は箔状とすることができる。
支持体3は、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する層を少なくとも1層有すると、積層体5の断熱性をより向上することができる。熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体3は、輻射体として働き、外部からの熱を遮断する役割を果たすことができる。
熱線反射機能とは、例えば、800〜3000nm程度の近赤外又は赤外領域における光の反射が、光の吸収及び光の透過よりも大きい機能をいう。これに対して、熱線吸収機能とは、例えば、800〜3000nm程度の近赤外又は赤外領域における光の吸収が、光の反射及び光の透過よりも大きい機能をいう。ここで、光の反射には光の散乱が含まれる。
本実施形態に係る支持体3は、熱線反射機能を有する層及び熱線吸収機能を有する層のうち少なくとも一方から構成されていてもよく、熱線反射機能を有する層のみからなるものでも、熱線吸収機能を有する層のみからなるものでもよい。また、支持体3は、熱線反射機能を有する層と熱線吸収機能を有する層とが積層されたものであってもよい。さらに、支持体3は、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する層と熱線反射機能及び熱線吸収機能を有しない層とが積層されたものでもよい。この場合、熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する層は、熱線反射機能及び熱線吸収機能を有しない層の片面又は両面に形成されていてもよい。
熱線反射機能を有する層は、熱線反射性の材料を含むことができる。熱線反射性の材料としては、近赤外又は赤外領域の光を反射する材料であれば、特に限定されない。熱線反射性の材料として、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、アルミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ハイドロタルサイト等のマグネシウム化合物、銀等の銀化合物、チタン、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等のチタン化合物、銅、青銅等の銅化合物、ステンレス、ニッケル、錫、シラスバルーン等のマイクロバルーン、セラミックバルーン及びパールマイカが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、熱伝導率を低減し易く、廉価性及び取り扱い性に優れる観点から、熱線反射性の材料として、アルミニウム、マグネシウム、銀又はチタンを含む材料を用いることができる。
熱線反射機能を有する層は、アルミニウム箔、銅箔等の金属箔から構成されていてもよい。また、熱線反射機能を有する層は、アルミニウムペースト又は酸化チタンをポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂に混練して作製される樹脂フィルムであってもよい。さらに、熱線反射機能を有する層は、アルミニウム、銀等をスパッタリング、真空蒸着等の物理蒸着又は化学蒸着により、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の樹脂フィルムへ蒸着した蒸着フィルムであってもよい。
熱線吸収機能を有する層は、熱線吸収性の材料を含むことができる。熱線吸収性の材料としては、近赤外又は赤外領域の光を吸収する物質であれば、特に限定されない。熱線吸収性の材料として、例えば、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛等のカーボングラファイト、カーボンブラックなどの炭素粉末;硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸カルシウム、メルカライト(KHSO)、ハロトリ石、ミョウバン石、鉄ミョウバン石等の金属硫酸塩;三酸化アンチモン等のアンチモン化合物;酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、無水酸化アンチモン酸亜鉛等の金属酸化物;アンモニウム系、尿素系、イモニウム系、アミニウム系、シアニン系、ポリメチン系、アントラキノン系、ジチオール系、銅イオン系、フェニレンジアミン系、フタロシアニン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系又はベンゾトリアゾール系の染料又は顔料を挙げることができる。
これらの中でも、熱線吸収性の材料としては、熱伝導率を低減し易く、廉価性及び取扱い性に優れる観点から、カーボングラファイト、カーボンブラック、金属硫酸塩又はアンチモン化合物を含む材料を用いることができる。熱伝導率をより一層低減する観点から、熱線吸収機能を有する層は、カーボンブラック、酸化アンチモン又は硫酸バリウムを混練して作製される樹脂フィルムであってもよい。
断熱性をより向上する観点から、支持体3は、カーボングラファイト、アルミニウム、マグネシウム、銀、チタン、カーボンブラック、金属硫酸塩及びアンチモン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層を有することができる。取扱い性に優れると共に、断熱性を向上する観点から、支持体3は、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、銀蒸着フィルム又は酸化アンチモン含有フィルムであってもよい。
支持体3のエアロゲル層2が設けられていない側の面には、積層体5を複数層重ねた際にエアロゲル層を保護する目的で保護層を有していてもよい。保護層の構成材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、上述した樹脂層と同じ材料であってもよい。これらの樹脂層は、単層であっても複層であってもよい。
支持体3のエアロゲル層が積層されていない側の面には、離型処理を施してもよい。
支持体3の厚さは特に限定されないが、ハンドリング性の観点から、3μm以上とすることができ、5μm以上であってもよく、7μm以上であってもよい。一方、断熱性を向上する観点から、支持体3の厚さは、100μm以下とすることができ、80μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。すなわち、支持体3の厚さは3〜100μmとすることができ、5〜80μmであってもよく、7〜50μmであってもよい。
(多孔性スペーサー層)
多孔性スペーサーは、多孔構造が多く含まれる材料の総称であり、本実施形態においては孔サイズによらず多孔性スペーサーと称する。本実施形態に係る多孔性スペーサー層1は、非エアロゲル層であるが、多孔構造を有し、高真空下においては、断熱層として働くことができる層でもある。また、多孔性スペーサーをエアロゲル層上に積層することで、ナノサイズの細孔を有するエアロゲル層の真空度を向上させることができる。さらに、支持体と支持体との間に多孔性スペーサー層1が介在することにより(図4参照)、支持体同士の接触による熱伝導を抑制することができる。多孔性スペーサー層1の構成としては、特に限定されず、単層でも複層でも構わない。多孔性スペーサー層1は、多孔構造を有する層で構成されていれば特に限定されない。多孔性スペーサー層1は、同種の多孔性スペーサーから構成されていてもよく、異種の多孔性スペーサーから構成されていてもよい。
多孔性スペーサー層1を構成する材料としては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリイミド繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の有機繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維等の無機繊維が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。断熱性をより向上し易く、ハンドリング性に優れる観点から、多孔性スペーサー層1は、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層であってもよい。多孔性スペーサー層1を構成する繊維の形態としては、特に限定はされないが、例えば、織物、編物、不織布、紙、ネット、メッシュ等が挙げられる。断熱性をより向上し易く、廉価性及びハンドリング性に優れる観点から、多孔性スペーサー層1は、ガラス不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維紙、ポリエステルネット又はナイロンメッシュを含む層であってもよい。
また、一定の断熱性を確保した上で、難燃性が求められる用途にエアロゲル積層複合体を用いる場合、多孔性スペーサー層1を構成する材料は、例えば、銅繊維、鉄繊維、ステンレス繊維、金繊維、銀繊維、アルミニウム繊維等の金属繊維であってもよい。該金属繊維は、上述の有機繊維又は無機繊維と組み合わせて用いてもよい。
多孔性スペーサー層1の厚さは、特に限定されないが、ハンドリング性の観点から、1μm以上とすることができ、10μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。一方、断熱性を向上する観点から、多孔性スペーサー層1の厚さは、300μm以下とすることができ、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。すなわち、多孔性スペーサー層1の厚さは1〜300μmとすることができ、10〜200μmであってもよく、50〜100μmであってもよい。
多孔性スペーサー層1の空隙率は、特に限定されないが、断熱性を向上する観点から、5%以上とすることができ、20%以上であってよく、30%以上であってもよい。一方、ハンドリング性の観点から、多孔性スペーサー層1の空隙率は、98%以下とすることができ、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。すなわち、多孔性スペーサー層1の空隙率は、5〜95%とすることができ、20〜95%であってもよく、30〜90%であってもよい。
多孔性スペーサー層1を用いる場合、エアロゲル積層複合体10の後述の製造方法の第二の工程において、エアロゲル層2上に多孔性スペーサー層1を配置する。なお、多孔性スペーサー層1はエアロゲル積層複合体10において接合部材又は接合部によってエアロゲル層2と部分的に接合されていてもよい。
<エアロゲル積層複合体の製造方法>
次に、エアロゲル積層複合体の製造方法について説明する。エアロゲル積層複合体の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、本実施形態のエアロゲル積層複合体は、支持体3上にエアロゲル層2が形成された積層体5を作製する第1の工程と、積層体5におけるエアロゲル層2と支持体3とを接合部材又は接合部で接合する第2の工程とを経て作製される。
[第1の工程]
第1の工程は、例えば、エアロゲルを形成するためのゾルを生成させるゾル生成工程と、上記ゾルを含むゾル塗液を支持体3の表面上に塗工してゾル塗膜を形成するゾル塗膜形成工程と、ゾル塗膜から湿潤ゲルを生成させる湿潤ゲル生成工程と、湿潤ゲルを洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換する工程と、洗浄及び溶媒置換した湿潤ゲルを乾燥する乾燥工程とを主に備えることができる。なお、ゾルとは、ゲル化反応が生じる前の状態をいう。本実施形態においては、例えば、ケイ素化合物(必要に応じて、更にシリカ粒子)が溶媒中に溶解又は分散している状態を意味する。また、湿潤ゲルとは、液体媒体を含んでいながらも、流動性を有しない湿潤状態のゲル固形物を意味する。以下、エアロゲル層形成工程の各工程について説明する。
(ゾル生成工程)
ゾル生成工程においては、例えば、ケイ素化合物(必要に応じて、更にシリカ粒子)と、溶媒とを混合し、加水分解させてゾルを生成する。本工程においては、加水分解反応を促進させるため、更に酸触媒を添加してもよい。また、特許第5250900号に示されるように、界面活性剤、熱加水分解性化合物等を添加することもできる。さらに、熱線輻射抑制等を目的として、カーボングラファイト、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、銀化合物、チタン化合物等の成分を添加してもよい。
溶媒としては、例えば、水、又は、水及びアルコール類の混合液を用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、ゲル壁との界面張力を低減させる点で、表面張力が低くかつ沸点の低いアルコールとしては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
例えば、溶媒としてアルコール類を用いる場合、アルコール類の量は、シリコン化合物及びポリシロキサン化合物の総量1モルに対し、例えば、4〜8モルであってもよく、4〜6.5であってもよく、4.5〜6モルであってもよい。アルコール類の量を4モル以上にすることにより良好な相溶性を更に得易くなり、また、8モル以下にすることによりゲルの収縮を更に抑制し易くなる。
酸触媒としては、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、臭素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸類;酸性リン酸アルミニウム、酸性リン酸マグネシウム、酸性リン酸亜鉛等の酸性リン酸塩類;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、アゼライン酸等の有機カルボン酸類などが挙げられる。これらの中でも、得られるエアロゲル層の耐水性をより向上する酸触媒としては有機カルボン酸類が挙げられる。当該有機カルボン酸類としては酢酸が挙げられるが、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸等であってもよい。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
酸触媒を用いることで、ケイ素化合物の加水分解反応を促進させて、より短時間でゾルを得ることができる。酸触媒の添加量は、ケイ素化合物の総量100質量部に対し、例えば、0.001〜0.1質量部とすることができる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を用いることができる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むもの、ポリオキシプロピレン等の親水部を含むものなどを使用できる。ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むものとしては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシプロピレン等の親水部を含むものとしては、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体等が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノ酸系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アミンオキシド系界面活性剤等が挙げられる。アミノ酸系界面活性剤としては、アシルグルタミン酸等が挙げられる。ベタイン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。アミンオキシド系界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
これらの界面活性剤は、湿潤ゲル生成工程において、反応系中の溶媒と、成長していくシロキサン重合体との間の化学的親和性の差異を小さくし、相分離を抑制する作用をすると考えられる。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、又はケイ素化合物の種類並びに量にも左右されるが、例えば、ケイ素化合物の総量100質量部に対し、1〜100質量部であってもよく、5〜60質量部であってもよい。
熱加水分解性化合物は、熱加水分解により塩基触媒を発生して、反応溶液を塩基性とし、湿潤ゲル生成工程でのゾルゲル反応を促進すると考えられている。よって、この熱加水分解性化合物としては、加水分解後に反応溶液を塩基性にできる化合物であれば、特に限定されず、尿素;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の酸アミド;ヘキサメチレンテトラミン等の環状窒素化合物などを挙げることができる。これらの中でも、特に尿素は上記促進効果を得られ易い。
熱加水分解性化合物の添加量は、湿潤ゲル生成工程でのゾルゲル反応を充分に促進することができる量であれば、特に限定されない。例えば、熱加水分解性化合物(尿素等)の添加量は、ケイ素化合物の総量100質量部に対して、例えば、1〜200質量部であってもよく、2〜150質量部であってもよい。添加量を1質量部以上とすることにより、良好な反応性を更に得易くなり、また、200質量部以下とすることにより、結晶の析出及びゲル密度の低下を更に抑制し易くなる。
ゾル生成工程の加水分解は、混合液中のケイ素化合物、シリカ粒子、酸触媒、界面活性剤等の種類及び量にも左右されるが、例えば、20〜60℃の温度環境下で10分〜24時間行ってもよく、50〜60℃の温度環境下で5分〜8時間行ってもよい。これにより、ケイ素化合物中の加水分解性官能基が充分に加水分解され、ケイ素化合物の加水分解生成物をより確実に得ることができる。
溶媒中に熱加水分解性化合物を添加する場合は、ゾル生成工程の温度環境を、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制してゾルのゲル化を抑制する温度に調節してもよい。この時の温度は、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制できる温度であれば、いずれの温度であってもよい。例えば、熱加水分解性化合物として尿素を用いた場合は、ゾル生成工程の温度環境は0〜40℃であってもよく、10〜30℃であってもよい。
(ゾル塗膜形成工程)
ゾル塗膜形成工程は、上記ゾルを含むゾル塗液を支持体3の表面上に塗工してゾル塗膜を形成する工程である。上記ゾル塗液は、上記ゾルからなる態様であってもよい。また、上記ゾル塗液は、上記ゾルを、流動性を有する程度にゲル化(半ゲル化)させたものであってもよい。ゾル塗液は、例えば、ゲル化を促進させるため、塩基触媒を含んでいてもよい。
塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム化合物;メタ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウム等の塩基性燐酸ナトリウム塩;アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、3−(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、3−(メチルアミノ)プロピルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3−メトキシアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン類;モルホリン、N−メチルモルホリン、2−メチルモルホリン、ピペラジン及びその誘導体、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体等の含窒素複素環状化合物類などが挙げられる。これらの中でも、水酸化アンモニウム(アンモニア水)は、揮発性が高く、乾燥後のエアロゲル層中に残存し難いため耐水性を損なわないという点、更には経済性の点で優れている。上記の塩基触媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
塩基触媒を用いることで、ゾル中のケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)及びシリカ粒子の、脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応、又はそれら両者の反応を促進することができ、ゾルのゲル化をより短時間で行うことができる。これにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができる。特に、アンモニアは揮発性が高く、エアロゲル層中に残留し難いので、塩基触媒としてアンモニアを用いることで、より耐水性の優れたエアロゲル層を得ることができる。
塩基触媒の添加量は、ケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)の総量100質量部に対し、例えば、0.5〜5質量部であってもよく、1〜4質量部であってもよい。上記添加量を0.5質量部以上とすることにより、ゲル化をより短時間で行うことができ、5質量部以下とすることにより、耐水性の低下をより抑制することができる。
上記ゾルを半ゲル化させる場合、ゲル化は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行ってもよい。この場合のゲル化温度は、例えば、30〜90℃であってもよく、40〜80℃であってもよい。ゲル化温度を30℃以上とすることにより、ゲル化をより短時間に行うことができる。また、ゲル化温度を90℃以下にすることにより、溶媒(特にアルコール類)の揮発を抑制し易くなるため、体積収縮を抑えながらゲル化することができる。
上記ゾルを半ゲル化させる場合のゲル化時間は、ゲル化温度により異なるが、ゾル中にシリカ粒子を含有する場合は、従来のエアロゲルに適用されるゾルと比較して、ゲル化時間を短縮することができる。この理由は、ゾル中のケイ素化合物が有する加水分解性の官能基又は縮合性の官能基が、シリカ粒子のシラノール基と水素結合又は化学結合を形成するためであると推察する。なお、ゲル化時間は、例えば、10〜360分であってもよく、20〜180分であってもよい。ゲル化時間が10分以上であることにより、ゾルの粘度が適度に向上し、支持体3の表面への塗工性が向上し、360分以下であることにより、ゾルが完全にゲル化されることを抑制し易く、かつ、支持体3の表面との良好な接着性が得られ易い。
ゾル塗液を支持体3の表面への塗工方法に特に制限はないが、例えば、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート等が挙げられる。
(湿潤ゲル生成工程)
湿潤ゲル生成工程は、例えば、上記ゾル塗膜から湿潤ゲルを生成させる工程である。湿潤ゲル生成工程においては、例えば、上記ゾル塗膜を加熱することにより、ゾル塗膜をゲル化させた後、得られたゲルを必要に応じ熟成させることにより湿潤ゲルを生成させる。湿潤ゲル生成工程は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行ってもよい。湿潤ゲル生成工程おいてゲルを熟成させると、湿潤ゲルを構成する成分の結合が強くなり、その結果、乾燥時の収縮を抑制するのに充分な強度(剛性)の高い湿潤ゲルが得られ易い。湿潤ゲル生成工程における加熱温度及び熟成温度は、例えば、30〜90℃であってもよく、40〜80℃であってもよい。加熱温度又は熟成温度を30℃以上とすることにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができ、加熱温度又は熟成温度を90℃以下にすることにより、溶媒(特にアルコール類)の揮発を抑制し易くなるため、体積収縮を抑えながらゲル化することができる。
(洗浄及び溶媒置換工程)
洗浄及び溶媒置換工程は、上記湿潤ゲル生成工程により得られた湿潤ゲルを洗浄する工程(洗浄工程)と、湿潤ゲル中の洗浄液を乾燥条件(後述の乾燥工程)に適した溶媒に置換する工程(溶媒置換工程)を有する工程である。洗浄及び溶媒置換工程は、湿潤ゲルを洗浄する工程を行わず、溶媒置換工程のみを行う形態でも実施可能であるが、湿潤ゲル中の未反応物、副生成物等の不純物を低減し、より純度の高いエアロゲル層の製造を可能にする観点からは、湿潤ゲルを洗浄してもよい。なお、ゲル中にシリカ粒子が含まれている場合には、後述するように溶媒置換工程は必ずしも必須ではない。
洗浄工程では、上記湿潤ゲル生成工程で得られた湿潤ゲルを洗浄する。当該洗浄は、例えば水又は有機溶媒を用いて繰り返し行うことができる。この際、加温することにより洗浄効率を向上させることができる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ギ酸等の各種の有機溶媒を使用することができる。上記の有機溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
後述する溶媒置換工程では、乾燥によるゲルの収縮を抑制するため、低表面張力の溶媒を用いることができる。しかし、低表面張力の溶媒は、一般的に水との相互溶解度が極めて低い。そのため、溶媒置換工程において低表面張力の溶媒を用いる場合、洗浄工程で用いる有機溶媒としては、水及び低表面張力の溶媒の双方に対して高い相互溶解性を有する親水性有機溶媒が挙げられる。なお、洗浄工程において用いられる親水性有機溶媒は、溶媒置換工程のための予備置換の役割を果たすことができる。上記の有機溶媒の中で、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等は経済性の点で優れている。
洗浄工程に使用される水又は有機溶媒の量としては、湿潤ゲル中の溶媒を充分に置換し、洗浄できる量とすることができる。当該量は、湿潤ゲルの容量に対して、例えば、3〜10倍の量とすることができる。洗浄は、例えば、洗浄後の湿潤ゲル中の含水率が、シリカ質量に対し、10質量%以下となるまで繰り返すことができる。
洗浄工程における温度環境は、洗浄に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができる。例えば、メタノールを用いる場合、30〜60℃程度の温度であってもよい。
溶媒置換工程では、後述する乾燥工程における収縮を抑制するため、洗浄した湿潤ゲルの溶媒を所定の置換用溶媒に置き換える。この際、加温することにより置換効率を向上させることができる。置換用溶媒としては、具体的には、乾燥工程において、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥する場合は、後述の低表面張力の溶媒が挙げられる。一方、超臨界乾燥をする場合は、置換用溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素等、又はこれらを2種以上混合した溶媒が挙げられる。
低表面張力の溶媒としては、20℃における表面張力が30mN/m以下のものが挙げられる。なお、当該表面張力は25mN/m以下であっても、又は20mN/m以下であってもよい。低表面張力の溶媒としては、例えば、ペンタン(15.5)、ヘキサン(18.4)、ヘプタン(20.2)、オクタン(21.7)、2−メチルペンタン(17.4)、3−メチルペンタン(18.1)、2−メチルヘキサン(19.3)、シクロペンタン(22.6)、シクロヘキサン(25.2)、1−ペンテン(16.0)等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン(28.9)、トルエン(28.5)、m−キシレン(28.7)、p−キシレン(28.3)等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン(27.9)、クロロホルム(27.2)、四塩化炭素(26.9)、1−クロロプロパン(21.8)、2−クロロプロパン(18.1)等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル(17.1)、プロピルエーテル(20.5)、イソプロピルエーテル(17.7)、ブチルエチルエーテル(20.8)、1,2−ジメトキシエタン(24.6)等のエーテル類;アセトン(23.3)、メチルエチルケトン(24.6)、メチルプロピルケトン(25.1)、ジエチルケトン(25.3)等のケトン類;酢酸メチル(24.8)、酢酸エチル(23.8)、酢酸プロピル(24.3)、酢酸イソプロピル(21.2)、酢酸イソブチル(23.7)、エチルブチレート(24.6)等のエステル類などが挙げられる(かっこ内は20℃での表面張力を示し、単位は[mN/m]である)。これらの中で、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)は低表面張力でありかつ作業環境性に優れている。また、これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン等の親水性有機溶媒を用いることで、上記洗浄工程の有機溶媒と兼用することができる。なお、これらの中でも、後述する乾燥工程における乾燥が更に容易な点で、常圧での沸点が100℃以下のものを用いてもよい。上記の溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
溶媒置換工程に使用される溶媒の量としては、洗浄後の湿潤ゲル中の溶媒を充分に置換できる量とすることができる。当該量は、湿潤ゲルの容量に対して、例えば、3〜10倍の量とすることができる。
溶媒置換工程における温度環境は、置換に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができる。例えば、ヘプタンを用いる場合、30〜60℃程度の温度であってもよい。
なお、上述のとおり、ゲル中にシリカ粒子が含まれている場合、溶媒置換工程は必ずしも必須ではない。推察されるメカニズムとしては次のとおりである。シリカ粒子が含まれていない場合、乾燥工程における収縮を抑制するため、湿潤ゲルの溶媒を所定の置換用溶媒(低表面張力の溶媒)に置き換えることが好ましい。一方で、シリカ粒子が含まれている場合、シリカ粒子が三次元網目状の骨格の支持体として機能することにより、当該骨格が支持され、乾燥工程におけるゲルの収縮が抑制されると考えられる。したがって、洗浄に用いた溶媒を置換せずに、ゲルをそのまま乾燥工程に付すことができると考えられる。なお、このように、洗浄及び溶媒置換工程から乾燥工程の簡略化が可能であるが、溶媒置換工程を行うことを何ら排除するものではない。
(乾燥工程)
乾燥工程では、上記のとおり洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲルを乾燥させる。
乾燥の手法としては特に制限されず、公知の常圧乾燥、超臨界乾燥又は凍結乾燥を用いることができる。これらの中で、低密度のエアロゲル層を製造し易いという観点からは、常圧乾燥又は超臨界乾燥を用いることができる。また、低コストで生産可能という観点からは、常圧乾燥を用いることができる。なお、本実施形態において、常圧とは0.1MPa(大気圧)を意味する。
本実施形態に係るエアロゲル層は、例えば、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲルを、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥することにより得ることができる。乾燥温度は、置換された溶媒(溶媒置換を行わない場合は洗浄に用いられた溶媒)の種類により異なるが、特に高温での乾燥が溶媒の蒸発速度を速め、ゲルに大きな亀裂を生じさせる場合があるという点に鑑み、例えば、20〜150℃であってもよく、60〜120℃であってもよい。また、乾燥時間は、湿潤ゲルの容量及び乾燥温度により異なるが、例えば、4〜120時間とすることができる。なお、本実施形態において、生産性を阻害しない範囲内において臨界点未満の圧力をかけて乾燥を早めることも、常圧乾燥に包含されるものとする。
本実施形態に係るエアロゲル層形成工程においては、急激な乾燥によるエアロゲルのクラックを抑制する観点から、乾燥工程の前にプレ乾燥を行ってもよい。プレ乾燥温度は、例えば、60〜180℃であってもよく、90〜150℃であってもよい。プレ乾燥時間は、エアロゲル層の容量及び乾燥温度により異なるが、例えば、1〜30分であってもよい。
乾燥工程における乾燥方法は、例えば、超臨界乾燥であってもよい。超臨界乾燥は、公知の手法にて行うことができる。超臨界乾燥する方法としては、例えば、湿潤ゲルに含まれる溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にて溶媒を除去する方法が挙げられる。あるいは、超臨界乾燥する方法としては、湿潤ゲルを、液化二酸化炭素中に、例えば、20〜25℃、5〜20MPa程度の条件で浸漬することで、湿潤ゲルに含まれる溶媒の全部又は一部を当該溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素を単独で、又は二酸化炭素及び溶媒の混合物を除去する方法が挙げられる。
このような常圧乾燥又は超臨界乾燥により得られたエアロゲル層は、更に常圧下にて、105〜200℃で0.5〜2時間程度追加乾燥してもよい。これにより、密度が低く、小さな細孔を有するエアロゲル層を更に得易くなる。追加乾燥は、常圧下にて、150〜200℃で行ってもよい。
[第2の工程]
次いで、上記のようにして得たエアロゲル層2と支持体3とを含む積層体(エアロゲル積層体)のエアロゲル層2の表面上に必要に応じて多孔性スペーサー層1を配置する。そして、エアロゲル層2を含む積層体を構成する構成部材が互いに分離しないように、接合部材の設置又は接合部の形成によって積層体を積層方向に一体化させる。例えば部材に巻きつける際、単位面積あたりの層数のバラツキを防止する観点から、接合部材としては、ピン、縫合する糸状部材、ボルトとナットが挙げられ、接合部の形成手段としては、加圧圧着、熱圧着、レーザー圧着又は結束が挙げられる。エアロゲル層2を含む積層体を一体化させることで、エアロゲル積層複合体の強度が補強され、断熱性を向上することができる。
<断熱材>
本実施形態の断熱材は、これまで説明したエアロゲル積層複合体の少なくとも一つを備えるものであり、高断熱性と優れた柔軟性とを有している。断熱材は、該エアロゲル積層複合体が複数層積層されたものであってもよい。
本実施形態のエアロゲル積層複合体は、厚さ方向に、エアロゲル層と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体とが積層されてなる構造を、少なくとも一つ有するものである。従来では取扱い性が困難であったエアロゲルの薄膜化が可能であるため、本実施形態のエアロゲル積層複合体は、優れた断熱性と柔軟性を有する断熱材として用いることができ、断熱材の薄型化が可能である。
このような利点から、本実施形態のエアロゲル積層複合体は、極低温分野(超伝導、極低温容器等)、宇宙分野、建築分野、自動車分野、家電製品、半導体分野、産業用設備等における断熱材としての用途等に適用できる。また、本実施形態のエアロゲル積層複合体は、断熱材としての用途の他に、撥水シート、吸音シート、静振シート、触媒担持シート等として利用することができる。
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
(実施例1)
[ゾル塗液1]
シリコン化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:LS−530、以下「MTMS」と略記)を60.0質量部及びジメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:LS−520、以下「DMDMS」と略記)を40.0質量部、水を120.0質量部及びメタノールを80.0質量部混合し、これに酸触媒として酢酸を0.10質量部加え、25℃で2時間反応させた。これに、塩基触媒として5%濃度のアンモニア水を40.0質量部加え、60℃で5時間ゾルゲル反応させてゾル塗液1を得た。
[エアロゲル積層体1]
上記ゾル塗液1を、支持体である(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)12μmの両面アルミニウム蒸着PETフィルム(日立エーアイシー株式会社製、製品名:VM−PET)に、ゲル化後の厚さが40μmとなるように塗布し、60℃で6分乾燥して、ゲル状のエアロゲル層を有するエアロゲル積層体を得た。その後、得られたエアロゲル積層体を密閉容器に移し、60℃で8時間熟成した。
次いで、熟成したエアロゲル積層体を水5000mLに浸漬し、30分かけて洗浄を行った後、メタノール5000mLに浸漬し、60℃で30分かけて洗浄を行った。この洗浄操作を、新しいメタノールに交換しながら2回行った。さらに、洗浄したエアロゲル積層体を、メチルエチルケトン5000mLに浸漬し、60℃で30分かけて溶媒置換を行った。この溶媒置換操作を、新しいメチルエチルケトンに交換しながら2回行った。洗浄及び溶媒置換されたエアロゲル積層体を、常圧下にて、120℃で6時間乾燥することで上記式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲル積層体1を得た。
[エアロゲル積層複合体1]
専用のガンを使用して上記エアロゲル積層体を宇宙ピン(JAXA製)で接合し、エアロゲル積層複合体1を得た。エアロゲル積層複合体1における宇宙ピンの設置箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(実施例2)
[エアロゲル積層体2]
上記ゾル塗液1を用いて、実施例1と同様にして、上記式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲル積層体2を得た。
[エアロゲル積層複合体2]
エアロゲル積層体2のエアロゲル層上に、目付け量:16g/m、メッシュ数:75/cm、(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)190μmのポリエステルネットを積層し、宇宙ピン(JAXA製)を専用のガンで接合し、多孔性スペーサー層を有するエアロゲル積層複合体2を得た。エアロゲル積層複合体2における宇宙ピンの設置箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(実施例3)
[エアロゲル積層体3]
上記ゾル塗液1を用いて、実施例1と同様にして、上記式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲル積層体3を得た。
[エアロゲル積層複合体3]
エアロゲル積層体1のエアロゲル層上に、目付け量:16g/m、メッシュ数:75/cm、(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)190μmのポリエステルネットを積層し、ポリエステル糸(大貫繊維株式会社製、製品名:エースクラウン#40)で逢着し、多孔性スペーサー層を有するエアロゲル積層複合体3を得た。エアロゲル積層複合体2におけるポリエステル糸による逢着箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(実施例4)
[エアロゲル積層体4]
上記ゾル塗液1を用いて、実施例1と同様にして、上記式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲル積層体4を得た。
[エアロゲル積層複合体4]
エアロゲル積層体1のエアロゲル層上に、目付け量:16g/m、メッシュ数:75/cm、(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)190μmのポリエステルネットを積層し、針なしホチキス(製品名:Harinacsコクヨ製)を用いて、加圧することによって接合し、多孔性スペーサー層を有するエアロゲル積層複合体4を得た。エアロゲル積層複合体4における加圧による接合箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(実施例5)
[ゾル塗液5]
水を200.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにシリコン化合物としてMTMSを80.0質量部及びポリシロキサン化合物として上記式(5)で表される構造を有する両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物A」という)を20.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で5時間ゾルゲル反応させてゾル塗液5を得た。
なお、上記「ポリシロキサン化合物A」は次のようにして合成した。まず、撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコにて、両末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名:XC96−723)を100.0質量部、メチルトリメトキシシランを181.3質量部及びt−ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させた。その後、この反応液を、1.3kPaの減圧下、140℃で2時間加熱し、揮発分を除去することで、両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物A)を得た。
[エアロゲル積層体5]
上記ゾル塗液5を用いて、実施例1と同様にして、上記式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲル積層体5を得た。
[エアロゲル積層複合体5]
エアロゲル積層体5と、目付け量:15g/m、(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)100μmのポリエステル不織布(ユニチカ株式会社製、製品名:エルベスT153WDO)とを用いた以外は実施例1と同様にして、エアロゲル積層複合体5を得た。エアロゲル積層複合体5における宇宙ピンの設置箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(実施例6)
[ゾル塗液6]
シリカ粒子含有原料としてPL−2L(製品名、扶桑化学工業株式会社製、平均一次粒子径:20nm、固形分:20質量%)を100.0質量部、水を100.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにシリコン化合物としてMTMSを60.0質量部及びDMDMSを40.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で1.0時間ゾルゲル反応させてゾル塗液6を得た。
[エアロゲル積層体6]
上記ゾル塗液6を用いて、実施例1と同様にして、上記式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲル積層体3を得た。
[エアロゲル積層複合体6]
エアロゲル積層体6と、目付け量:25g/m、(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)210μmのガラス不織布(オリベスト株式会社、製品名:FBP−025)とを用いた以外は実施例1と同様にして、エアロゲル積層複合体6を得た。エアロゲル積層複合体6における宇宙ピンの設置箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(実施例7)
[ゾル塗液7]
シリカ粒子含有原料としてPL−2Lを100.0質量部、水を100.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにシリコン化合物としてMTMSを60.0質量部及びDMDMSを20.0質量部、並びにポリシロキサン化合物としてX−22−160AS(商品名、信越化学工業株式会社製)を20.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で1.0時間ゾルゲル反応させてゾル塗液7を得た。
[エアロゲル積層体7]
上記ゾル塗液7を用いて、実施例1と同様にして、上記式(2)、(6)及び(7)で表される構造を有するエアロゲル積層体7を得た
[エアロゲル積層複合体7]
エアロゲル積層体7と、目付け量:20g/m、(縦)1000mm×(横)500mm×(厚)70μmのナイロンメッシュ(大紀商事株式会社製、製品名:OKILON−Sha 2520)とを用いた以外は実施例1と同様にして、エアロゲル積層複合体7を得た。エアロゲル積層複合体7における宇宙ピンの設置箇所の数は20000箇所/m程度であった。
(比較例1)
[積層断熱材1]
支持体である両面アルミニウム蒸着PETフィルム(日立エーアイシー株式会社製、製品名:VM−PET)に、断熱層として実施例1で用いたポリエステルネットを積層することで、積層断熱材1を得た。
(比較例2)
[積層断熱材2]
断熱層をポリエステル不織布(ユニチカ株式会社製、製品名:エルベスT153WDO)に変更した以外は、比較例1と同様にして、積層断熱材2を得た。
(比較例3)
[積層断熱材3]
断熱層をナイロンメッシュ(大紀商事株式会社製、製品名:OKILON−Sha 2520)に変更した以外は、比較例1と同様にして、積層断熱材3を得た。
各実施例で得られたエアロゲル積層複合体及び各比較例で得られた積層断熱材の層構成を表1に示す。
Figure 2018130932
[評価]
各実施例で得られたエアロゲル積層複合体及び各比較例で得られた積層断熱材について、以下の条件に従い、測定又は評価をした。
(1)断熱性評価用の液体窒素容器の準備
エアロゲル積層複合体及び積層断熱材を、(縦)606mm×(横)343mmのシートA、(縦)612mm×(横)362mmのシートB、(縦)618mm×(横)38
0mmのシートC、(直径)105mmのシートD、(直径)112mmのシートE、(直径)118mmのシートFのサイズにそれぞれ加工した。
次に、液体窒素容器外周用シートとして、多孔性スペーサー層又は断熱層を介して隣接する支持体同士が直接接触しないようにシートAを10層積層したシートA10、シートBを10層積層したシートB10、シートCを10層積層したシートC10をそれぞれ作製した。同様にして、液体窒素容器上下用シートとして、シートDを10層積層したシートD10、シートEを10層積層したシートE10及びシートFを10層積層したシートF10をそれぞれ作製した。
高さ600mm、直径100mmの液体窒素容器を準備し、その側面にシートA10を配置し、液体窒素容器の上下にシートD10をそれぞれ配置し、液体窒素容器に巻きつけて、エアロゲル積層複合体又は積層断熱材が10層積層された断熱性評価用の液体窒素容器を得た。次に、シートA10の上にシートB10を配置し、シートD10の上にシートE10を配置し、エアロゲル積層複合体又は積層断熱材が20層積層された断熱性評価用の液体窒素容器を得た。さらに、シートB10の上にシートC10を配置し、シートD10の上にシートF10を配置し、エアロゲル積層複合体又は積層断熱材が30層積層された断熱性評価用の液体窒素容器を得た。なお、側面のシートと上下のシートの合わせ部は、アルミニウムテープで貼り付けた。
図6は、複数のエアロゲル積層複合体(実施例)又は積層断熱材(比較例)を重ね合せてなる断熱材30を液体窒素容器12に巻き付けた断熱性評価用の液体窒素容器の構造を模式的に表した断面図である。断熱材30は、注入口11を有する液体窒素容器12に外周を覆うように積層されている。
(2)断熱材の厚さの測定
液体窒素容器12の外周に設けられた断熱材の総厚D(mm)を、次式より算出した。
D=D/2−50.0
式中、D(mm)は、断熱材を巻き付けた後の液体窒素容器の直径を示す。
(3)断熱性能(熱流束)
断熱性評価用の液体窒素容器を用いて、断熱性能を測定した。図7に、断熱性能試験装置の概略図を示す。まず、断熱材30が巻き付けられた液体窒素容器12を283Kに設定した恒温槽14に入れ、真空容器16内に設置した。次に、真空容器16内の真空排気をターボ分子ポンプ20で行い、真空容器16内部の真空圧力をピラニー真空計22及びイオン真空計24で計測した。ターボ分子ポンプ20を運転して、ピラニー真空計22が4×10−1Pa以下の真空圧力を示したのを確認後、イオン真空計24で真空圧力を計
測し、真空容器16の圧力が1×10−2Pa以下になるまで、7日間真空排気を行った。その後、真空容器16内に設置された液体窒素容器12に液体窒素を注液後、首配管18の温度と蒸発した窒素ガス流量がほぼ一定値であり、定常状態であることを確認したときの、断熱材30を通過する熱流束qを算出した。
液体窒素の蒸発ガス質量流量m(kg/s)は、次式(I)より求めた。
Figure 2018130932

式(I)中、ρg,Tは室温のガス密度(kg/m)、Vg,Tは室温のガス流量(m/s)を示し、湿式流量計26の出力と湿式流量計26内部の温度により計測される値である。
次に、断熱材30を通して入る放射熱量Q(W)、及び、フランジ17と液体窒素容器12を接続している首配管18からの伝導熱Q(W)の和は、次式(II)より求めた。
Figure 2018130932

式(II)中、Lは液体窒素の蒸発潜熱(J/kg)、ρg,Sは大気圧飽和温度における窒素ガス密度(kg/m)、ρl,Sは液体窒素密度(kg/m)を示す。
また、Qは、次式(III)より求めた。
Figure 2018130932

式(III)中、( )内は首配管18の伝導熱を示し、A(m)は、首配管18の断面積、L(m)は、首配管18の長さを示し、T(K)は、恒温温度、T(K)は、低温温度を示し、λsus(W/(m・K))は、ステンレスの熱伝導率を示す。首配管18の伝導熱は、蒸発ガスの熱伝達によって首配管18の表面から熱を奪うので効率φの係数が関わる。
効率φは、次式(IV)より求めた。
Figure 2018130932

式(IV)中、C(J/(kg・K))は、比熱を示す。なお、本評価において、上記Aの値は、0.243×10−4(m)であり、上記Lの値は、199000(J/kg)である。
エアロゲル積層複合体及び積層断熱材を通過する熱流束q(W/m)は、次式(V)より求めた。熱流束の測定は、3回行い、その平均値を本評価の熱流束とした。
Figure 2018130932

式(V)中、A(m)は、液体窒素容器の表面積を示し、その値は、0.2041(m)である。
各実施例で得られたエアロゲル積層複合体及び各比較例で得られた積層断熱材の断熱性の評価結果を表2に示す。
Figure 2018130932
表2に示す結果から、実施例で作製したエアロゲル積層複合体を用いた場合、熱流束が小さく、断熱性能に優れることが確認できる。また、実施例で作製したエアロゲル積層複合体は、比較例と比べて、少ない層数で同等の熱流束を得ることができ、断熱材の厚さを薄くできることが確認できる。
1…多孔性スペーサー層、2…エアロゲル層、3…支持体、5…積層体、8…ピン(接合部材)、9…接合部、10…エアロゲル積層複合体、11…注入口、12…液体窒素容器、14…恒温槽、16…真空容器、17…フランジ、18…首配管、20…ターボ分子ポンプ、22…ピラニー真空計、24…イオン真空計、26…湿式流量計、30…断熱材、L…外接長方形、P…シリカ粒子。

Claims (15)

  1. エアロゲル層と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体とを少なくとも含む積層体と、
    前記エアロゲル層と前記支持体が互いに分離するのを防止する接合部材と、
    を備える、エアロゲル積層複合体。
  2. 前記接合部材が、前記積層体を厚さ方向に貫通するピン、前記積層体を縫合する糸状部材、又は前記積層体を厚さ方向に貫通するボルトと前記ボルトに対応するナットとの組み合わせである、請求項1に記載のエアロゲル積層複合体。
  3. エアロゲル層と熱線反射機能又は熱線吸収機能を有する支持体とを少なくとも含む積層体と、
    前記エアロゲル層と前記支持体が互いに分離するのを防止する接合部であって前記積層体に対する加圧圧着、熱圧着、レーザー圧着又は結束によって形成された接合部と、
    を備える、エアロゲル積層複合体。
  4. 前記積層体は多孔性スペーサー層を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  5. 前記積層体において、前記多孔性スペーサー層、前記エアロゲル層及び前記支持体がこの順序で積層されている、請求項4に記載のエアロゲル積層複合体。
  6. 前記多孔性スペーサー層が、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層である、請求項4又は5に記載のエアロゲル積層複合体。
  7. 前記多孔性スペーサー層が、ガラス不織布、ポリエステル不織布、ガラス繊維紙、ポリエステルネット又はナイロンメッシュを含む層である、請求項4又は5に記載のエアロゲル積層複合体。
  8. 前記エアロゲル層が、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  9. 前記エアロゲル層が、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物からなる層である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  10. 前記エアロゲル層が、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物からなる層である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  11. 前記シリカ粒子の平均一次粒子径が、1nm以上500nm以下である、請求項10に記載のエアロゲル積層複合体。
  12. 前記支持体が、カーボングラファイト、アルミニウム、マグネシウム、銀、チタン、カーボンブラック、金属硫酸塩及びアンチモン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む材料から構成される層を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  13. 前記支持体が、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、銀蒸着フィルム又は酸化アンチモン含有フィルムである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  14. 前記支持体が、アルミニウム箔又はアルミニウム蒸着フィルムである、請求項1〜13のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載のエアロゲル積層複合体を備える、断熱材。
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