WO2017168845A1 - エアロゲル層付き部材 - Google Patents

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    • F16L59/00Thermal insulation in general

Abstract

本発明は、本体部と、エアロゲル層と、ポリシラザンと水との反応物を含むバリア層と、をこの順に備える、エアロゲル層付き部材に関する。

Description

エアロゲル層付き部材
 本発明は、エアロゲル層付き部材に関する。
 近年、居住空間の快適性及び省エネルギーの要求が高まる中、断熱対象物の形状が複雑となり、また、断熱材の設置空間が狭小となる傾向にある。したがって、これらに用いられる断熱材に対しては、更なる断熱性の向上及び薄型化が求められている。
 従来の断熱構造体は、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡性の断熱材を構成材料として含んでいる。しかし、これらの材料は、使用温度範囲が狭いこと、及び、空気の断熱性を用いている。そのため、更なる断熱性の向上のためには、使用温度範囲が広く、かつ、空気よりも断熱性に優れる材料を開発しなければならない。
 空気より優れた断熱性を有する断熱材として、フォームを形成する空隙に、フロン又はフロン代替発泡剤等の使用により低熱伝導ガスを充填させた断熱材がある。しかし、このような断熱材は、経時劣化による低熱伝導ガスの漏出の可能性があり、断熱性の低下が懸念される(例えば下記特許文献1)。
 また、気密性の袋に珪酸カルシウム又は不織布を入れ真空状態のまま梱包したものは、真空断熱材として知られており、空気よりも断熱性に優れている(例えば下記特許文献2)。しかし、真空断熱材は、経時劣化又は梱包袋の傷といった問題により断熱性が著しく低下し、さらに、真空梱包することから、断熱材の柔軟性がなく、曲面への施工ができないといった課題がある。
 現在、常圧で最も低熱伝導の材料としてエアロゲルが知られている(例えば下記特許文献3)。エアロゲルは、微細多孔質の構造を有することで、空気をはじめとする気体の移動が抑制されることで熱伝導が小さくなる。
特許第4084516号公報 特許第4898157号公報 米国特許第4402927号明細書
 ところで、エアロゲルを用いる断熱方法に対しては、多種多様な断熱対象物に対して優れた断熱効果を達成する観点から、新規な使用態様が求められる。
 一方で、エアロゲルは微細多孔質の構造を有していることから、油等の液体又はミストが存在する環境では、液体又はミストがエアロゲル内の孔内に吸収されてしまうという問題がある。
 本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐油性を有するエアロゲル層付き部材を提供することを目的とする。
 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本体部と、エアロゲル層と、ポリシラザンと水との反応物を含むバリア層と、をこの順に備えるエアロゲル層付き部材を見出し、本発明の完成に至った。
 本発明は、本体部と、エアロゲル層と、ポリシラザンと水との反応物を含むバリア層と、をこの順に備えるエアロゲル層付き部材を提供する。本発明のエアロゲル層付き部材は、優れた耐油性を有している。また、本発明のエアロゲル層付き部材は、優れた断熱性、難燃性及び耐熱性を有していると共にエアロゲルの脱落を抑制することができる。
 本発明において、上記エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、上記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であるエアロゲルを含んでいてもよい。エアロゲル層がこのようなものであると、断熱性、難燃性及び柔軟性を高度に両立できる。また、このようなエアロゲル層は、施工性にも優れると考えられる。エアロゲルは、一般的に脆い傾向がある。例えば、塊状のエアロゲルは、手で触って持ち上げようとするだけで破損してしまう場合がある。これに対し、従来、エアロゲルと補強材とを用いたエアロゲルシートが考案されている。しかし、エアロゲル自体が脆いと、衝撃又は折り曲げ作業によりシートが破れること、シートからエアロゲル粉末が脱落すること等の施工性の問題が生じることが考えられる。一方で、エアロゲル層が上述のものであると、エアロゲルの脆さが低減され、施工性が向上すると考えられる。
 上記エアロゲル層は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であるエアロゲルを含んでいてもよい。これにより、更に優れた断熱性及び柔軟性を達成することができる。
 上記シリカ粒子の平均一次粒子径は、1~500nmであってもよい。これにより、断熱性及び柔軟性が更に向上し易くなる。
 本発明によれば、優れた耐油性を有するエアロゲル層付き部材を提供することができる。また、本発明のエアロゲル層付き部材は、断熱性、難燃性及び耐熱性にも優れる。
本発明の一実施形態に係るエアロゲル層付き部材を模式的に示す断面図である。 粒子の二軸平均一次粒子径の算出方法を示す図である。
 以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのいずれか一方を含んでいればよく、両方を含んでいてもよい。本実施形態で例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
<エアロゲル層付き部材>
 図1は、本実施形態のエアロゲル層付き部材を模式的に示す断面図である。本実施形態のエアロゲル層付き部材(エアロゲル複合体、エアロゲル複合構造体)1は、図1に示すように、本体部3と、エアロゲル層4と、ポリシラザンと水との反応物を含むバリア層5と、をこの順に備える。本体部3は、例えば、エアロゲル層4を支持する支持部である。本体部3は、例えば、断熱対象物である。バリア層5は、例えば、油等に対してバリア性を有する層である。バリア層5は、非エアロゲル層である。本実施形態のエアロゲル層付き部材1は、耐油性、断熱性、難燃性及び耐熱性に優れている。また、本実施形態のエアロゲル層付き部材1によれば、油等の液体及びミストの吸収を抑制できることから、これに起因した断熱性の低下等を抑制でき、液体及びミストの存在下でも安定した断熱効果を得ることができる。さらに、本実施形態のエアロゲル層付き部材1によれば、エアロゲルの脱落を抑制することができる。
 エアロゲルへの液体及びミストの吸収を抑制する方法としては、例えば、エアロゲル粉体に樹脂等を混合する方法が考えられる。一方で、このような方法によれば、樹脂等の熱伝導により、断熱性能が低下する傾向にある。これに対し、本実施形態のエアロゲル層付き部材によれば、バリア層とエアロゲル層がそれぞれ単独で存在しているため、液体及びミストの吸収を抑制すると共に、優れた断熱性を有することができる。
 エアロゲル層4は、本体部3上の少なくとも一部(一部又は全体)に配置された態様であってもよい。バリア層5は、エアロゲル層4上の少なくとも一部(一部又は全体)に配置された態様であってもよい。エアロゲル層付き部材1においては、エアロゲル層4は、本体部3に一体的に接合された形態であり得る。これにより本体部3に直接断熱性能を付与することができる。バリア層5は、エアロゲル層4に一体的に接合された形態であり得る。すなわち、エアロゲル層付き部材1は、本体部3上に、エアロゲル層4及びバリア層5が一体的に接合された形態(例えば、本体部3とエアロゲル層4とバリア層5とが一体化して固定された形態)であり得る。また、本体部3とエアロゲル層4との間、又は、エアロゲル層4とバリア層5との間には、例えば、中間層等の別の層を更に備えていてもよい。
 エアロゲル層4は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(シリコン化合物)、及び、上記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物(加水分解性の官能基が加水分解したケイ素化合物)からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルに由来する湿潤ゲル)の乾燥物であるエアロゲルを含んでいてもよい。すなわち、エアロゲル層4は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、上記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなるエアロゲルを含んでいてもよい。これにより、断熱性、難燃性及び柔軟性を更に高度に両立できる。
{本体部}
 本体部を構成する材料としては、例えば、金属、セラミック、ガラス、樹脂及びこれらの複合材料が挙げられる。本体部は、例えば、金属、セラミック、ガラス及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む態様であってもよい。本体部の形態としては、使用する目的又は材料に応じて、ブロック状、シート状、パウダー状、球状、繊維状等が採用できる。
 上記金属としては、特に限定されず、金属の単体;金属の合金;酸化被膜が形成された金属等が挙げられる。前記金属としては、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、チタン、クロム、コバルト、スズ、金、銀等が挙げられる。後述のゾル生成工程で使用する材料によっては、金属表面の耐食性に優れる観点から、上記金属として、チタン、金、銀等の単体;酸化被膜が形成された鉄及びアルミニウムを用いることができる。
 上記セラミックとしては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物;これらの混合物などが挙げられる。
 上記ガラスとしては、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
 上記樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。
 表面粗さが大きい本体部、又は、多孔質構造の本体部を用いることにより密着性を更に向上させることができる。本体部の表面粗さは、良好なアンカー効果が得られ、エアロゲル層の密着性が更に向上する観点から、100nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。断熱性が更に向上し易い観点から、多孔質構造の本体部に形成された孔が連通孔であり、かつ、孔体積の合計が本体部の全体積のうち50~99体積%である態様であってもよい。
{エアロゲル層}
 本実施形態に係るエアロゲル層は、エアロゲルにより構成されるものである。狭義には、湿潤ゲルに対して超臨界乾燥法を用いて得られた乾燥ゲルをエアロゲル、大気圧下での乾燥により得られた乾燥ゲルをキセロゲル、凍結乾燥により得られた乾燥ゲルをクライオゲルと称するが、本実施形態においては、湿潤ゲルのこれらの乾燥手法によらず、得られた低密度の乾燥ゲルを「エアロゲル」と称する。すなわち、本実施形態において、「エアロゲル」とは、広義のエアロゲルである「Gel comprised of a microporous solid in which the dispersed phase is a gas(分散相が気体である微多孔性固体から構成されるゲル)」を意味する。一般的に、エアロゲルの内部は、網目状の微細構造を有しており、2~20nm程度のエアロゲル粒子(エアロゲルを構成する粒子)が結合したクラスター構造を有している。このクラスターにより形成される骨格間には、100nmに満たない細孔がある。これにより、エアロゲルは、三次元的に微細な多孔性の構造を有している。なお、本実施形態おけるエアロゲルは、例えば、シリカを主成分とするシリカエアロゲルである。シリカエアロゲルとしては、例えば、有機基(メチル基等)又は有機鎖を導入した、いわゆる有機-無機ハイブリッド化されたシリカエアロゲルが挙げられる。エアロゲル層は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層であってもよい。
 本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるものであってもよい。前記縮合物は、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解により得られた加水分解生成物の縮合反応により得られてもよく、加水分解により得られた官能基ではない縮合性の官能基を有するケイ素化合物の縮合反応により得られてもよい。前記ケイ素化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基の少なくとも一方を有していればよく、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基の双方を有していてもよい。なお、後述する各エアロゲルは、このように、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
 エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。
 本実施形態に係るエアロゲルは、シロキサン結合(Si-O-Si)を含む主鎖を有するポリシロキサンを含有することができる。エアロゲルは、構造単位として、下記M単位、D単位、T単位又はQ単位を有することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 上記式中、Rは、ケイ素原子に結合している原子(水素原子等)又は原子団(アルキル基等)を示す。M単位は、ケイ素原子が1個の酸素原子と結合した一価の基からなる単位である。D単位は、ケイ素原子が2個の酸素原子と結合した二価の基からなる単位である。T単位は、ケイ素原子が3個の酸素原子と結合した三価の基からなる単位である。Q単位は、ケイ素原子が4個の酸素原子と結合した四価の基からなる単位である。これらの単位の含有量に関する情報は、Si-NMRにより得ることができる。
 本実施形態に係るエアロゲルは、シルセスキオキサンを含有していてもよい。シルセスキオキサンは、構造単位として上記T単位を有するポリシロキサンであり、組成式:(RSiO1.5を有する。シルセスキオキサンは、カゴ型、ラダー型、ランダム型等の種々の骨格構造を有することができる。
 加水分解性の官能基としては、例えば、アルコキシ基が挙げられる。縮合性の官能基(加水分解性の官能基に該当する官能基を除く)としては、例えば、水酸基、シラノール基、カルボキシル基及びフェノール性水酸基が挙げられる。水酸基は、ヒドロキシアルキル基等の水酸基含有基に含まれていてもよい。加水分解性の官能基及び縮合性の官能基のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 ケイ素化合物は、加水分解性の官能基としてアルコキシ基を有するケイ素化合物を含むことが可能であり、また、縮合性の官能基としてヒドロキシアルキル基を有するケイ素化合物を含むことができる。ケイ素化合物は、エアロゲルの柔軟性が更に向上する観点から、アルコキシ基、シラノール基、ヒドロキシアルキル基及びポリエーテル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することができる。ケイ素化合物は、ゾルの相溶性が向上する観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することができる。
 ケイ素化合物の反応性の向上とエアロゲルの熱伝導率の低減の観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基のそれぞれの炭素数は、1~6であってもよく、エアロゲルの柔軟性が更に向上する観点から2~4であってもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
 本実施形態に係るエアロゲルとしては、以下の態様が挙げられる。これらの態様を採用することにより、断熱性、難燃性、耐熱性及び柔軟性に優れるエアロゲルを得ることが容易となる。特に、柔軟性が優れていることにより、従来では形成が困難であった形状に対しても断熱層を更に容易に形成することができる。各々の態様を採用することで、各々の態様に応じた断熱性、難燃性及び柔軟性を有するエアロゲルを得ることができる。
(第一の態様)
 本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物(前記加水分解性の官能基が加水分解したポリシロキサン化合物)からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、場合により「ポリシロキサン化合物群」という)を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるものであってもよい。なお、後述する各エアロゲルも、このように、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
 エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよい。すなわち、エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層から構成されていてもよい。
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基とは異なる反応性基(加水分解性の官能基及び縮合性の官能基に該当しない官能基)を更に有していてもよい。反応性基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びアミノ基が挙げられる。エポキシ基は、グリシドキシ基等のエポキシ基含有基に含まれていてもよい。前記反応性基を有するポリシロキサン化合物は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 ヒドロキシアルキル基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 式(A)中、R1aはヒドロキシアルキル基を示し、R2aはアルキレン基を示し、R3a及びR4aはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、nは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。式(A)中、2個のR1aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR2aは各々同一であっても異なっていてもよい。式(A)中、2個以上のR3aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR4aは各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記構造のポリシロキサン化合物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルから生成された湿潤ゲル)を用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを更に得易くなる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(A)中、R1aとしては、例えば、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基が挙げられ、具体的には、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。式(A)中、R2aとしては、例えば、炭素数が1~6のアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。式(A)中、R3a及びR4aはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(A)中、nは2~30であってもよく、5~20であってもよい。
 上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としては、市販品を用いることができ、例えば、X-22-160AS、KF-6001、KF-6002、KF-6003等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、及び、XF42-B0970、Fluid OFOH 702-4%等の化合物(いずれも、モメンティブ社製)が挙げられる。
 アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(B)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 式(B)中、R1bはアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、R2b及びR3bはそれぞれ独立にアルコキシ基を示し、R4b及びR5bはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、mは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。なお、式(B)中、2個のR1bは各々同一であっても異なっていてもよく、2個のR2bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のR3bは各々同一であっても異なっていてもよい。式(B)中、mが2以上の整数の場合、2個以上のR4bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のR5bは各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記構造のポリシロキサン化合物又はその加水分解生成物を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルから生成された湿潤ゲル)を用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを更に得易くなる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(B)中、R1bとしては、例えば、炭素数が1~6のアルキル基及び炭素数が1~6のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メチル基、メトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。式(B)中、R2b及びR3bは、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルコキシ基であってもよい。当該アルコキシ基としては、例えばメトキシ基及びエトキシ基が挙げられる。式(B)中、R4b及びR5bは、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(B)中、mは2~30であってもよく、5~20であってもよい。
 上記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、例えば、特開2000-26609号公報、特開2012-233110号公報等にて報告される製造方法を適宜参照して得ることができる。
 なお、アルコキシ基は加水分解するため、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物はゾル中にて加水分解生成物として存在する可能性があり、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物と、その加水分解生成物とは混在していてもよい。また、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物において、分子中のアルコキシ基の全てが加水分解されていてもよいし、部分的に加水分解されていてもよい。
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 上記ゾルに含まれるポリシロキサン化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物の含有量、及び、前記加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、良好な反応性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上であってもよく、3質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、7質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。ポリシロキサン化合物群の前記含有量は、良好な相溶性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。これらの観点から、ポリシロキサン化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1~50質量部であってもよく、3~50質量部であってもよく、4~50質量部であってもよく、5~50質量部であってもよく、7~30質量部であってもよく、10~30質量部であってもよく、10~15質量部であってもよい。
[第二の態様]
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、ポリシロキサン化合物以外のケイ素化合物(シリコン化合物)を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、(分子内に)加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、場合により「ケイ素化合物群」という)を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であってもよい。前記ケイ素化合物における分子内のケイ素数は、1又は2であってもよい。
 加水分解性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキルケイ素アルコキシドが挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドにおいて、耐水性が向上する観点から、加水分解性の官能基の数は、3個以下であってもよく、2~3個であってもよい。アルキルケイ素アルコキシドとしては、例えば、モノアルキルトリアルコキシシラン、モノアルキルジアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、モノアルキルモノアルコキシシラン、ジアルキルモノアルコキシシラン及びトリアルキルモノアルコキシシランが挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びエチルトリメトキシシランが挙げられる。
 縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、例えば、シランテトラオール、メチルシラントリオール、ジメチルシランジオール、フェニルシラントリオール、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、n-プロピルシラントリオール、ヘキシルシラントリオール、オクチルシラントリオール、デシルシラントリオール及びトリフルオロプロピルシラントリオールが挙げられる。
 加水分解性の官能基の数が3個以下であり、反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等も用いることができる。
 縮合性の官能基を有し、前述の反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルシラントリオール、3-グリシドキシプロピルシラントリオール、3-グリシドキシプロピルメチルシランジオール、3-メタクリロキシプロピルシラントリオール、3-メタクリロキシプロピルメチルシランジオール、3-アクリロキシプロピルシラントリオール、3-メルカプトプロピルシラントリオール、3-メルカプトプロピルメチルシランジオール、N-フェニル-3-アミノプロピルシラントリオール、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルシランジオール等も用いることができる。
 アルキルケイ素アルコキシドとしては、分子末端の加水分解性の官能基の数が3個を超えるケイ素化合物であるビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサン等を用いることもできる。
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物のそれぞれは、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 良好な反応性を更に得易くなることから、上記ゾルに含まれるケイ素化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)の含有量、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上とすることができ、10質量部以上であってもよく、12質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、18質量部以上であってもよい。良好な相溶性を更に得易くなることから、ケイ素化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下とすることができ、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。すなわち、ケイ素化合物群の前記含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、5~50質量部とすることができ、10~30質量部であってもよく、12~30質量部であってもよく、15~25質量部であってもよく、18~20質量部であってもよい。
 前記ポリシロキサン化合物群の含有量及び前記ケイ素化合物群の含有量の総和は、良好な反応性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、15質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、22質量部以上であってもよい。前記ポリシロキサン化合物群の含有量及び前記ケイ素化合物群の含有量の総和は、良好な相溶性を更に得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよい。これらの観点から、前記ポリシロキサン化合物群の含有量及び前記ケイ素化合物群の含有量の総和は、ゾルの総量100質量部に対し、5~50質量部であってもよく、10~30質量部であってもよく、15~30質量部であってもよく、20~30質量部であってもよく、22~25質量部であってもよい。
 前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、良好な相溶性を更に得易くなる観点から、1:0.5以上であってもよく、1:1以上であってもよく、1:2以上であってもよく、1:3以上であってもよい。前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、ゲルの収縮を更に抑制し易くなる観点から、1:4以下であってもよく、1:2以下であってもよい。これらの観点から、前記ポリシロキサン化合物群の含有量と、前記ケイ素化合物群の含有量との比(ポリシロキサン化合物群:ケイ素化合物群)は、1:0.5~1:4であってもよく、1:1~1:2であってもよく、1:2~1:4であってもよく、1:3~1:4であってもよい。
[第三の態様]
 本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(1)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、式(1)で表される構造を含む構造として、下記一般式(1a)で表される構造を有することができる。上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、式(1)及び式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 式(1)及び式(1a)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。pは1~50の整数を示す。式(1a)中、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(1a)中、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記式(1)又は式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルを容易に得ることができる。同様の観点から、以下に示す特徴を満たしてもよい。式(1)及び式(1a)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(1)及び式(1a)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルキレン基であってもよい。当該アルキレン基は、エチレン基又はプロピレン基であってもよい。式(1a)中、pは2~30とすることができ、5~20であってもよい。
[第四の態様]
 本実施形態に係るエアロゲルは、支柱部及び橋かけ部を備えるラダー型構造を有するエアロゲルであり、かつ、橋かけ部が、下記一般式(2)で表される構造を有するエアロゲルであってもよい。エアロゲルの骨格中にこのようなラダー型構造を導入することにより、耐熱性及び機械的強度を容易に向上させることができる。上記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、一般式(2)で表される構造を有する橋かけ部を含むラダー型構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。なお、本実施形態において「ラダー型構造」とは、2本の支柱部(struts)と、支柱部同士を連結する橋かけ部(bridges)とを有する構造(いわゆる「梯子」の形態を有する構造)である。本態様において、エアロゲル骨格がラダー型構造からなっていてもよいが、エアロゲルが部分的にラダー型構造を有していてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 式(2)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、bは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。なお、式(2)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記の構造をエアロゲルの骨格中に導入することにより、例えば、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有する(すなわち、下記一般式(X)で表される構造を有する)エアロゲルよりも優れた柔軟性を有するエアロゲルとなる。なお、下記一般式(X)に示すように、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有するエアロゲルでは、橋かけ部の構造が-O-であるが、本態様のエアロゲルでは、橋かけ部の構造が上記一般式(2)で表される構造(ポリシロキサン構造)である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 式(X)中、Rはヒドロキシ基、アルキル基又はアリール基を示す。
 支柱部となる構造及びその鎖長、並びに、橋かけ部となる構造の間隔は、特に限定されないが、耐熱性と機械的強度とを更に向上させる観点から、ラダー型構造としては、下記一般式(3)で表されるラダー型構造を有していてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、a及びcはそれぞれ独立に1~3000の整数を示し、bは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としては、例えばフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。置換フェニル基の置換基としては、例えばアルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基及びシアノ基が挙げられる。式(3)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(3)中、aが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(3)中、cが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
 更に優れた柔軟性を得る観点から、式(2)及び式(3)中、R、R、R及びR(ただし、R及びRは式(3)中のみ)は、それぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基又はフェニル基であってもよい。当該アルキル基は、メチル基であってもよい。式(3)中、a及びcは、それぞれ独立に6~2000であってもよく、10~1000であってもよい。式(2)及び式(3)中、bは、2~30であってもよく、5~20であってもよい。
[第五の態様]
 本実施形態に係るエアロゲルは、更に優れた断熱性及び柔軟性を達成する観点から、シリカ粒子を含有していてもよい。エアロゲルを与えるゾルは、シリカ粒子を更に含有していてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるもの)であってもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲル層は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲル(前記ゾルに由来する湿潤ゲル)の乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるもの)であるエアロゲルを含んでいてもよい。エアロゲル層は、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される層であってもよく、シリカ粒子を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなる層で構成されていてもよい。なお、これまで述べてきたエアロゲルも、このように、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(前記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるもの)であってもよい。
 シリカ粒子としては、特に制限なく用いることができ、例えば、非晶質シリカ粒子が挙げられる。非晶質シリカ粒子としては、例えば、溶融シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子及びコロイダルシリカ粒子が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカ粒子は、単分散性が高く、ゾル中での凝集を抑制し易い。
 シリカ粒子の形状としては、特に制限されず、球状、繭型、会合型等が挙げられる。これらのうち、シリカ粒子として球状の粒子を用いることにより、ゾル中での凝集を抑制し易くなる。シリカ粒子の平均一次粒子径は、適度な強度及び柔軟性をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、1nm以上であってもよく、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。シリカ粒子の平均一次粒子径は、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、500nm以下であってもよく、300nm以下であってもよく、250nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の平均一次粒子径は、1~500nmであってもよく、5~300nmであってもよく、10~250nmであってもよく、20~100nmであってもよい。
 本実施形態において、粒子の平均粒子径(シリカ粒子の平均一次粒子径等)は、走査型電子顕微鏡(以下「SEM」と略記する。)を用いてエアロゲル層の断面を直接観察することにより得ることができる。例えば、エアロゲルの内部における網目状の微細構造からは、エアロゲル層の断面に露出した粒子の直径に基づきエアロゲル粒子又はシリカ粒子個々の粒子径を得ることができる。ここでいう「直径」とは、エアロゲル層の断面に露出した粒子の断面を円とみなした場合の直径を意味する。また、「断面を円とみなした場合の直径」とは、断面の面積を同じ面積の真円に置き換えたときの当該真円の直径のことである。なお、平均粒子径の算出に当たっては、100個の粒子について円の直径を求め、その平均を取るものとする。
 なお、シリカ粒子の平均粒子径は、原料から測定することができる。例えば、二軸平均一次粒子径は、任意の粒子20個をSEMにより観察した結果から、次のようにして算出される。すなわち、通常水に分散している固形分濃度5~40質量%のコロイダルシリカ粒子を例にすると、コロイダルシリカ粒子の分散液に、パターン配線付きウエハを2cm角に切って得られたチップを約30秒浸した後、当該チップを純水にて約30秒間すすぎ、窒素ブロー乾燥する。その後、チップをSEM観察用の試料台に載せ、加速電圧10kVを掛け、10万倍の倍率にてシリカ粒子を観察し、画像を撮影する。得られた画像から20個のシリカ粒子を任意に選択し、それらの粒子の粒子径の平均を平均粒子径とする。この際、選択したシリカ粒子が図2に示すような形状であった場合、シリカ粒子Pに外接し、その長辺が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形L)を導く。そして、その外接長方形Lの長辺をX、短辺をYとして、(X+Y)/2として二軸平均一次粒子径を算出し、その粒子の粒子径とする。
 シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、耐収縮性に優れるエアロゲルを得易くなる観点から、10×1018個/g以上であってもよく、50×1018個/g以上であってもよく、100×1018個/g以上であってもよい。シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、均質なエアロゲルが得易くなる観点から、1000×1018個/g以下であってもよく、800×1018個/g以下であってもよく、700×1018個/g以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、10×1018~1000×1018個/gであってもよく、50×1018~800×1018個/gであってもよく、100×1018~700×1018個/gであってもよい。
 上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、適度な強度をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよい。上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよく、12質量部以下であってもよく、10質量部以下であってもよく、8質量部以下であってもよい。これらの観点から、上記ゾルに含まれるシリカ粒子の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1~20質量部であってもよく、4~15質量部であってもよく、4~12質量部であってもよく、4~10質量部であってもよく、4~8質量部であってもよい。
[その他の態様]
 本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(4)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有すると共に、下記一般式(4)で表される構造を有することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 式(4)中、Rはアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、炭素数が1~6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基が挙げられる。
 本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(5)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有すると共に、下記一般式(5)で表される構造を有することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
 式(5)中、R10及びR11はそれぞれ独立にアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、炭素数が1~6のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基が挙げられる。
 本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(6)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有すると共に、下記一般式(6)で表される構造を有することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 式(6)中、R12はアルキレン基を示す。アルキレン基としては、例えば、炭素数が1~10のアルキレン基が挙げられ、具体的には、エチレン基及びヘキシレン基が挙げられる。
 本実施形態に係るエアロゲルは、ポリシロキサン由来の構造を有していてもよい。すなわち、本実施形態に係るエアロゲル層は、ポリシロキサン由来の構造を有するエアロゲルを含有する層で構成されていてもよい。ポリシロキサン由来の構造としては、例えば、上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)で表される構造が挙げられる。本実施形態に係るエアロゲルは、シリカ粒子を含有せずに、上記一般式(4)、(5)及び(6)で表される構造のうち、少なくとも一種を有するものであってもよい。
 エアロゲル層の厚みは、良好な断熱性を得易くなることから、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。エアロゲル層の厚みは、後述の洗浄及び溶媒置換工程並びに乾燥工程を短縮できる観点から、1000μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。これらの観点から、エアロゲル層の厚みは、1~1000μmであってもよく、10~200μmであってもよく、30~100μmであってもよい。
{バリア層}
 バリア層は、上述のとおり、ポリシラザンと水との反応物を含む。ポリシラザンは、例えば、Si-Nで表される結合、Si-Hで表される結合及びN-Hで表される結合を含有し得る。ポリシラザンは、例えば、加熱によって空気中の水分と反応し得る。ポリシラザンと水との反応物は、例えば、Si-Oで表される結合、Si-Nで表される結合、Si-Hで表される結合及びN-Hで表される結合を含有し得る。ポリシラザンとしては、例えば、パーヒドロポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)、メチルヒドロポリシラザン等のオルガノポリシラザン、及びケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザンが挙げられる。耐熱性、入手容易性及び緻密な層を得られる等の観点から、ポリシラザンは、例えば、パーヒドロポリシラザンであってもよい。
 上記バリア層は、例えば、充填材を更に含んでいてもよい。充填材を構成する材料としては、金属、セラミック等が挙げられる。上記金属としては、例えば、金属の単体;金属の合金;酸化被膜が形成された金属等が挙げられる。上記金属としては、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、チタン、クロム、コバルト、スズ、金、銀等が挙げられる。上記セラミックとしては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物;これらの混合物などが挙げられる。充填材を構成する材料は、例えば、溶融シリカ、フュームドシリカ、コロイダルシリカ、中空状シリカ、ガラス、及び鱗片状シリカであってもよい。上記ガラスとしては、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
 バリア層におけるポリシラザンと水との反応物の含有量は、緻密な層を形成し易くなる観点から、バリア層の全体積に対して、例えば、20体積%以上であってもよく、30体積%以上であってもよく、40体積%以上であってもよい。バリア層が充填材を含有する場合、バリア層における充填材の含有量は、作業性向上の観点から、バリア層の全体積に対して、例えば、80体積%以下であってもよく、70体積%以下であってもよく、60体積%以下であってもよい。また、バリア層における充填材の含有量は、エアロゲル層へのバリア層組成物の浸透抑制及び耐熱性向上の観点から、バリア層の全体積に対して、例えば、0.1体積%以上であってもよく、1体積%以上であってもよく、5体積%以上であってもよい。
 バリア層の厚みは、耐油性がより向上する観点から、例えば、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。バリア層の厚みは、バリア層形成後の取扱性向上の観点から、例えば、1000μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。エアロゲル層とバリア層との合計の厚みは、より良好な断熱性及び耐油性を得る観点から、例えば、2μm以上であってもよく、15μm以上であってもよく、40μm以上であってもよい。エアロゲル層とバリア層との合計の厚みは、製造工程時間の短縮、取扱性向上等の観点から、例えば、2000μm以下であってもよく、400μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。
<エアロゲル層付き部材の製造方法>
 次に、エアロゲル層付き部材の製造方法について説明する。エアロゲル層付き部材の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造することができる。
 本実施形態のエアロゲル層付き部材は、例えば、本体部上にエアロゲル層を形成する工程(エアロゲル層形成工程)と、エアロゲル層上にバリア層を形成する工程(バリア層形成工程)と、を備える方法により製造できる。
{エアロゲル層形成工程}
 エアロゲル層形成工程は、例えば、エアロゲルを形成するためのゾルを生成させるゾル生成工程と、上記ゾルを含むゾル塗液を本体部に塗工してゾル塗膜を形成するゾル塗膜形成工程と、ゾル塗膜から湿潤ゲルを生成させる湿潤ゲル生成工程と、湿潤ゲルを洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換する工程と、洗浄及び溶媒置換した湿潤ゲルを乾燥する乾燥工程とを主に備えることができる。なお、ゾルとは、ゲル化反応が生じる前の状態をいう。本実施形態においては、例えば、ケイ素化合物(必要に応じて、更にシリカ粒子)が溶媒中に溶解又は分散している状態を意味する。また、湿潤ゲルとは、液体媒体を含んでいながらも、流動性を有しない湿潤状態のゲル固形物を意味する。
 以下、エアロゲル層形成工程の各工程について説明する。
(ゾル生成工程)
 ゾル生成工程においては、例えば、ケイ素化合物(必要に応じて、更にシリカ粒子)と、溶媒とを混合し、加水分解させてゾルを生成する。本工程においては、加水分解反応を促進させるため、更に酸触媒を添加してもよい。また、特許第5250900号に示されるように、界面活性剤、熱加水分解性化合物等を添加することもできる。さらに、熱線輻射抑制等を目的として、カーボングラファイト、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、銀化合物、チタン化合物等の成分を添加してもよい。
 溶媒としては、例えば、水、又は、水及びアルコール類の混合液を用いることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、ゲル壁との界面張力を低減させる点で、表面張力が低くかつ沸点の低いアルコールとしては、メタノール、エタノール、2-プロパノール等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 例えば、溶媒としてアルコール類を用いる場合、アルコール類の量は、シリコン化合物及びポリシロキサン化合物の総量1モルに対し、例えば、4~8モルであってもよく、4~6.5であってもよく、4.5~6モルであってもよい。アルコール類の量を4モル以上にすることにより良好な相溶性を更に得易くなり、また、8モル以下にすることによりゲルの収縮を更に抑制し易くなる。
 酸触媒としては、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、臭素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸類;酸性リン酸アルミニウム、酸性リン酸マグネシウム、酸性リン酸亜鉛等の酸性リン酸塩類;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、アゼライン酸等の有機カルボン酸類などが挙げられる。これらの中でも、得られるエアロゲル層の耐水性をより向上する酸触媒としては有機カルボン酸類が挙げられる。当該有機カルボン酸類としては酢酸が挙げられるが、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸等であってもよい。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 酸触媒を用いることで、ケイ素化合物の加水分解反応を促進させて、より短時間でゾルを得ることができる。
 酸触媒の添加量は、ケイ素化合物の総量100質量部に対し、例えば、0.001~0.1質量部とすることができる。
 界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を用いることができる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むもの、ポリオキシプロピレン等の親水部を含むものなどを使用できる。ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むものとしては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシプロピレン等の親水部を含むものとしては、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体等が挙げられる。
 イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノ酸系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アミンオキシド系界面活性剤等が挙げられる。アミノ酸系界面活性剤としては、アシルグルタミン酸等が挙げられる。ベタイン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。アミンオキシド系界面活性剤としては、例えばラウリルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
 これらの界面活性剤は、湿潤ゲル生成工程において、反応系中の溶媒と、成長していくシロキサン重合体との間の化学的親和性の差異を小さくし、相分離を抑制する作用をすると考えられる。
 界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、又はケイ素化合物の種類並びに量にも左右されるが、例えば、ケイ素化合物の総量100質量部に対し、1~100質量部であってもよく、5~60質量部であってもよい。
 熱加水分解性化合物は、熱加水分解により塩基触媒を発生して、反応溶液を塩基性とし、湿潤ゲル生成工程でのゾルゲル反応を促進すると考えられている。よって、この熱加水分解性化合物としては、加水分解後に反応溶液を塩基性にできる化合物であれば、特に限定されず、尿素;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の酸アミド;ヘキサメチレンテトラミン等の環状窒素化合物などを挙げることができる。これらの中でも、特に尿素は上記促進効果を得られ易い。
 熱加水分解性化合物の添加量は、湿潤ゲル生成工程でのゾルゲル反応を充分に促進することができる量であれば、特に限定されない。例えば、熱加水分解性化合物(尿素等)の添加量は、ケイ素化合物の総量100質量部に対して、例えば、1~200質量部であってもよく、2~150質量部であってもよい。添加量を1質量部以上とすることにより、良好な反応性を更に得易くなり、また、200質量部以下とすることにより、結晶の析出及びゲル密度の低下を更に抑制し易くなる。
 ゾル生成工程の加水分解は、混合液中のケイ素化合物、シリカ粒子、酸触媒、界面活性剤等の種類及び量にも左右されるが、例えば、20~60℃の温度環境下で10分~24時間行ってもよく、50~60℃の温度環境下で5分~8時間行ってもよい。これにより、ケイ素化合物中の加水分解性官能基が充分に加水分解され、ケイ素化合物の加水分解生成物をより確実に得ることができる。
 溶媒中に熱加水分解性化合物を添加する場合は、ゾル生成工程の温度環境を、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制してゾルのゲル化を抑制する温度に調節してもよい。この時の温度は、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制できる温度であれば、いずれの温度であってもよい。例えば、熱加水分解性化合物として尿素を用いた場合は、ゾル生成工程の温度環境は0~40℃であってもよく、10~30℃であってもよい。
(ゾル塗膜形成工程)
 ゾル塗膜形成工程は、上記ゾルを含むゾル塗液を本体部に塗工してゾル塗膜を形成する工程である。上記ゾル塗液は、上記ゾルからなる態様であってもよい。また、上記ゾル塗液は、上記ゾルを、流動性を有する程度にゲル化(半ゲル化)させたものであってもよい。ゾル塗液は、例えば、ゲル化を促進させるため、塩基触媒を含んでいてもよい。
 塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム化合物;メタ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸ナトリウム等の塩基性燐酸ナトリウム塩;アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、3-エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、t-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-メトキシアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン類;モルホリン、N-メチルモルホリン、2-メチルモルホリン、ピペラジン及びその誘導体、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体等の含窒素複素環状化合物類などが挙げられる。これらの中でも、水酸化アンモニウム(アンモニア水)は、揮発性が高く、乾燥後のエアロゲル層中に残存し難いため耐水性を損なわないという点、更には経済性の点で優れている。上記の塩基触媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 塩基触媒を用いることで、ゾル中のケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)及びシリカ粒子の、脱水縮合反応、脱アルコール縮合反応、又はそれら両者の反応を促進することができ、ゾルのゲル化をより短時間で行うことができる。これにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができる。特に、アンモニアは揮発性が高く、エアロゲル層中に残留し難いので、塩基触媒としてアンモニアを用いることで、より耐水性の優れたエアロゲル層を得ることができる。
 塩基触媒の添加量は、ケイ素化合物(ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群)の総量100質量部に対し、例えば、0.5~5質量部であってもよく、1~4質量部であってもよい。上記添加量を0.5質量部以上とすることにより、ゲル化をより短時間で行うことができ、5質量部以下とすることにより、耐水性の低下をより抑制することができる。
 上記ゾルを半ゲル化させる場合、ゲル化は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行ってもよい。この場合のゲル化温度は、例えば、30~90℃であってもよく、40~80℃であってもよい。ゲル化温度を30℃以上とすることにより、ゲル化をより短時間に行うことができる。また、ゲル化温度を90℃以下にすることにより、溶媒(特にアルコール類)の揮発を抑制し易くなるため、体積収縮を抑えながらゲル化することができる。
 上記ゾルを半ゲル化させる場合のゲル化時間は、ゲル化温度により異なるが、ゾル中にシリカ粒子を含有する場合は、従来のエアロゲルに適用されるゾルと比較して、ゲル化時間を短縮することができる。この理由は、ゾル中のケイ素化合物が有する加水分解性の官能基又は縮合性の官能基が、シリカ粒子のシラノール基と水素結合又は化学結合を形成するためであると推察する。なお、ゲル化時間は、例えば、10~360分であってもよく、20~180分であってもよい。ゲル化時間が10分以上であることにより、ゾルの粘度が適度に向上し、本体部への塗工性が向上し、360分以下であることにより、ゾルが完全にゲル化されることを抑制し易く、かつ、本体部との良好な接着性が得られ易い。
 ゾル塗液を本体部への塗工方法に特に制限はないが、例えば、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート等が挙げられる。
(湿潤ゲル生成工程)
 湿潤ゲル生成工程は、例えば、上記ゾル塗膜から湿潤ゲルを生成させる工程である。湿潤ゲル生成工程においては、例えば、上記ゾル塗膜を加熱することにより、ゾル塗膜をゲル化させた後、得られたゲルを必要に応じ熟成させることにより湿潤ゲルを生成させる。湿潤ゲル生成工程は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行ってもよい。湿潤ゲル生成工程おいてゲルを熟成させると、湿潤ゲルを構成する成分の結合が強くなり、その結果、乾燥時の収縮を抑制するのに充分な強度(剛性)の高い湿潤ゲルが得られ易い。湿潤ゲル生成工程における加熱温度及び熟成温度は、例えば、30~90℃であってもよく、40~80℃であってもよい。加熱温度又は熟成温度を30℃以上とすることにより、強度(剛性)のより高い湿潤ゲルを得ることができ、加熱温度又は熟成温度を90℃以下にすることにより、溶媒(特にアルコール類)の揮発を抑制し易くなるため、体積収縮を抑えながらゲル化することができる。
(洗浄及び溶媒置換工程)
 洗浄及び溶媒置換工程は、上記湿潤ゲル生成工程により得られた湿潤ゲルを洗浄する工程(洗浄工程)と、湿潤ゲル中の洗浄液を乾燥条件(後述の乾燥工程)に適した溶媒に置換する工程(溶媒置換工程)を有する工程である。洗浄及び溶媒置換工程は、湿潤ゲルを洗浄する工程を行わず、溶媒置換工程のみを行う形態でも実施可能であるが、湿潤ゲル中の未反応物、副生成物等の不純物を低減し、より純度の高いエアロゲル層の製造を可能にする観点からは、湿潤ゲルを洗浄してもよい。なお、ゲル中にシリカ粒子が含まれている場合には、後述するように溶媒置換工程は必ずしも必須ではない。
 洗浄工程では、上記湿潤ゲル生成工程で得られた湿潤ゲルを洗浄する。当該洗浄は、例えば水又は有機溶媒を用いて繰り返し行うことができる。この際、加温することにより洗浄効率を向上させることができる。
 有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジメトキシエタン、アセトニトリル、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ギ酸等の各種の有機溶媒を使用することができる。上記の有機溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 後述する溶媒置換工程では、乾燥によるゲルの収縮を抑制するため、低表面張力の溶媒を用いることができる。しかし、低表面張力の溶媒は、一般的に水との相互溶解度が極めて低い。そのため、溶媒置換工程において低表面張力の溶媒を用いる場合、洗浄工程で用いる有機溶媒としては、水及び低表面張力の溶媒の双方に対して高い相互溶解性を有する親水性有機溶媒が挙げられる。なお、洗浄工程において用いられる親水性有機溶媒は、溶媒置換工程のための予備置換の役割を果たすことができる。上記の有機溶媒の中で、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、メタノール、エタノール、メチルエチルケトン等は経済性の点で優れている。
 洗浄工程に使用される水又は有機溶媒の量としては、湿潤ゲル中の溶媒を充分に置換し、洗浄できる量とすることができる。当該量は、湿潤ゲルの容量に対して、例えば、3~10倍の量とすることができる。洗浄は、例えば、洗浄後の湿潤ゲル中の含水率が、シリカ質量に対し、10質量%以下となるまで繰り返すことができる。
 洗浄工程における温度環境は、洗浄に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができる。例えば、メタノールを用いる場合、30~60℃程度の温度であってもよい。
 溶媒置換工程では、後述する乾燥工程における収縮を抑制するため、洗浄した湿潤ゲルの溶媒を所定の置換用溶媒に置き換える。この際、加温することにより置換効率を向上させることができる。置換用溶媒としては、具体的には、乾燥工程において、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥する場合は、後述の低表面張力の溶媒が挙げられる。一方、超臨界乾燥をする場合は、置換用溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、2-プロパノール、ジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素等、又はこれらを2種以上混合した溶媒が挙げられる。
 低表面張力の溶媒としては、20℃における表面張力が30mN/m以下のものが挙げられる。なお、当該表面張力は25mN/m以下であっても、又は20mN/m以下であってもよい。低表面張力の溶媒としては、例えば、ペンタン(15.5)、ヘキサン(18.4)、ヘプタン(20.2)、オクタン(21.7)、2-メチルペンタン(17.4)、3-メチルペンタン(18.1)、2-メチルヘキサン(19.3)、シクロペンタン(22.6)、シクロヘキサン(25.2)、1-ペンテン(16.0)等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン(28.9)、トルエン(28.5)、m-キシレン(28.7)、p-キシレン(28.3)等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン(27.9)、クロロホルム(27.2)、四塩化炭素(26.9)、1-クロロプロパン(21.8)、2-クロロプロパン(18.1)等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル(17.1)、プロピルエーテル(20.5)、イソプロピルエーテル(17.7)、ブチルエチルエーテル(20.8)、1,2-ジメトキシエタン(24.6)等のエーテル類;アセトン(23.3)、メチルエチルケトン(24.6)、メチルプロピルケトン(25.1)、ジエチルケトン(25.3)等のケトン類;酢酸メチル(24.8)、酢酸エチル(23.8)、酢酸プロピル(24.3)、酢酸イソプロピル(21.2)、酢酸イソブチル(23.7)、エチルブチレート(24.6)等のエステル類などが挙げられる(かっこ内は20℃での表面張力を示し、単位は[mN/m]である)。これらの中で、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)は低表面張力でありかつ作業環境性に優れている。また、これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジメトキシエタン等の親水性有機溶媒を用いることで、上記洗浄工程の有機溶媒と兼用することができる。なお、これらの中でも、後述する乾燥工程における乾燥が更に容易な点で、常圧での沸点が100℃以下のものを用いてもよい。上記の溶媒は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 溶媒置換工程に使用される溶媒の量としては、洗浄後の湿潤ゲル中の溶媒を充分に置換できる量とすることができる。当該量は、湿潤ゲルの容量に対して、例えば、3~10倍の量とすることができる。
 溶媒置換工程における温度環境は、置換に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができる。例えば、ヘプタンを用いる場合、30~60℃程度の温度であってもよい。
 なお、上述のとおり、ゲル中にシリカ粒子が含まれている場合、溶媒置換工程は必ずしも必須ではない。推察されるメカニズムとしては次のとおりである。シリカ粒子が含まれていない場合、乾燥工程における収縮を抑制するため、湿潤ゲルの溶媒を所定の置換用溶媒(低表面張力の溶媒)に置き換えることが好ましい。一方で、シリカ粒子が含まれている場合、シリカ粒子が三次元網目状の骨格の支持体として機能することにより、当該骨格が支持され、乾燥工程におけるゲルの収縮が抑制されると考えられる。したがって、洗浄に用いた溶媒を置換せずに、ゲルをそのまま乾燥工程に付すことができると考えられる。なお、このように、洗浄及び溶媒置換工程から乾燥工程の簡略化が可能であるが、溶媒置換工程を行うことを何ら排除するものではない。
(乾燥工程)
 乾燥工程では、上記のとおり洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲルを乾燥させる。
 乾燥の手法としては特に制限されず、公知の常圧乾燥、超臨界乾燥又は凍結乾燥を用いることができる。これらの中で、低密度のエアロゲル層を製造し易いという観点からは、常圧乾燥又は超臨界乾燥を用いることができる。また、低コストで生産可能という観点からは、常圧乾燥を用いることができる。なお、本実施形態において、常圧とは0.1MPa(大気圧)を意味する。
 本実施形態に係るエアロゲル層は、例えば、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲルを、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥することにより得ることができる。乾燥温度は、置換された溶媒(溶媒置換を行わない場合は洗浄に用いられた溶媒)の種類により異なるが、特に高温での乾燥が溶媒の蒸発速度を速め、ゲルに大きな亀裂を生じさせる場合があるという点に鑑み、例えば、20~150℃であってもよく、60~120℃であってもよい。また、乾燥時間は、湿潤ゲルの容量及び乾燥温度により異なるが、例えば、4~120時間とすることができる。なお、本実施形態において、生産性を阻害しない範囲内において臨界点未満の圧力をかけて乾燥を早めることも、常圧乾燥に包含されるものとする。
 本実施形態に係るエアロゲル層形成工程においては、急激な乾燥によるエアロゲルのクラックを抑制する観点から、乾燥工程の前にプレ乾燥を行ってもよい。プレ乾燥温度は、例えば、60~180℃であってもよく、90~150℃であってもよい。プレ乾燥時間は、エアロゲル層の容量及び乾燥温度により異なるが、例えば、1~30分であってもよい。
 乾燥工程における乾燥方法は、例えば、超臨界乾燥であってもよい。超臨界乾燥は、公知の手法にて行うことができる。超臨界乾燥する方法としては、例えば、湿潤ゲルに含まれる溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にて溶媒を除去する方法が挙げられる。あるいは、超臨界乾燥する方法としては、湿潤ゲルを、液化二酸化炭素中に、例えば、20~25℃、5~20MPa程度の条件で浸漬することで、湿潤ゲルに含まれる溶媒の全部又は一部を当該溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素を単独で、又は二酸化炭素及び溶媒の混合物を除去する方法が挙げられる。
 このような常圧乾燥又は超臨界乾燥により得られたエアロゲル層は、更に常圧下にて、105~200℃で0.5~2時間程度追加乾燥してもよい。これにより、密度が低く、小さな細孔を有するエアロゲル層を更に得易くなる。追加乾燥は、常圧下にて、150~200℃で行ってもよい。
{バリア層形成工程}
 バリア層形成工程においては、例えば、バリア層形成用組成物(例えば、ポリシラザンと必要に応じその他の成分とを含有する組成物)を、エアロゲル層に接触させた後、必要に応じ加熱及び乾燥することにより、エアロゲル層上にバリア層を形成させる。なお、エアロゲル層付き部材が、エアロゲル層とバリア層との間にその他の層を含む場合には、バリア層形成用組成物は、その他の層に接触させればよい。
 接触方法は、バリア層形成用組成物の種類、バリア層の厚み、又はエアロゲル層の撥水性等によって適宜選択することができる。接触方法としては、例えば、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート等が挙げられる。その中で、エアロゲル内部へのバリア層形成用組成物の浸透が抑制され易い観点から、スプレーコートが好適に利用できる。
 バリア層形成工程では、バリア層形成用組成物を乾燥及び定着させる観点から、加熱処理を施してもよく、不純物を除去する観点から、洗浄又は乾燥を行ってもよい。
 以上のとおり説明した本実施形態のエアロゲル層付き部材は、本体部と、エアロゲル層と、ポリシラザンと水との反応物を含むバリア層とをこの順に備えているため、優れた断熱性、難燃性、耐熱性及び耐油性(油分吸収抑制効果)を有する。このような利点から、本実施形態のエアロゲル層付き部材は、極低温容器、宇宙分野、建築分野、自動車分野、家電分野、半導体分野、産業用設備等、様々な環境下における断熱材としての用途等に適用できる。本実施形態のエアロゲル層付き部材は、特に、油等の液体及びミストが存在するエンジン等の断熱用途に好適である。
 以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(本体部の準備)
 本体部として、アルミニウム合金板:A6061P(竹内金属箔粉工業株式会社製、製品名、寸法:300mm×300mm×0.5mm、アルマイト処理)を準備した。
(ゾル塗液の作製)
[ゾル塗液1]
 シリカ粒子含有原料としてPL-2Lを100.0質量部、水を100.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(以下、「CTAB」と略記)を20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合して混合物を得た。この混合物にケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(以下「MTMS」ともいう)を80.0質量部及びポリシロキサン化合物として上記一般式(B)で表される構造を有する両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物A」という)を20.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で2時間ゾルゲル反応させてゾル塗液1を得た。
 なお、上記「ポリシロキサン化合物A」は次のようにして合成した。まず、撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1Lの3つ口フラスコにて、両末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン(モメンティブ社製、製品名:XC96-723)を100.0質量部、メチルトリメトキシシランを181.3質量部及びt-ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させた。その後、この反応液を、1.3kPaの減圧下、140℃で2時間加熱し、揮発分を除去することで、両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物A)を得た。
[ゾル塗液2]
 シリカ粒子含有原料としてST-OZL-35(日産化学工業株式会社製、製品名、平均一次粒子径:100nm、固形分:35質量%)を100.0質量部と、水を100.0質量部と、酸触媒として酢酸を0.10質量部と、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部と、熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部とを混合して混合物を得た。この混合物にケイ素化合物としてMTMSを60.0質量部と、上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としてX-22-160AS(信越化学工業株式会社製、製品名)を20.0質量部とを加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で5時間ゾルゲル反応させてゾル塗液2を得た。
[ゾル塗液1C]
 シリカ粒子含有原料としてPL-2L(扶桑化学工業株式会社製、製品名、平均一次粒子径:20nm、固形分:20質量%)を100.0質量部、水を120.0質量部、メタノールを80.0質量部及び酸触媒として酢酸を0.10質量部混合して混合物を得た。この混合物にケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(MTMS)(信越化学工業株式会社製、製品名:LS-530)を60.0質量部及びジメチルジメトキシシラン(DMDMS)(信越化学工業株式会社製、製品名:LS-520)を40.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。これに、塩基触媒として5%濃度のアンモニア水を40.0質量部加えてゾル塗液1Cを得た。
(バリア層形成用組成物の作製)
[バリア層形成用組成物1]
 パーヒドロポリシラザンを含有するAZ NL120A-20(AZエレクトロニックマテリアルズマニュファクチャリング株式会社製、製品名)に、フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、アエロジル(商標登録)R972)を混合し、バリア層形成用組成物1を得た。なお、バリア層の全体積に対する、フュームドシリカの含有量を5体積%とした。
(実施例1)
 本体部を、バットに入れたゾル塗液1に浸した後に取り出し、60℃で30分ゲル化して、ゲル層の厚みが100μmの構造体を得た。その後、得られた構造体を密閉容器に移し、60℃で12時間熟成した。
 熟成した構造体を水2000mLに浸漬し、30分かけて洗浄を行った。次に、メタノール2000mLに浸漬し、60℃で30分かけて洗浄を行った。メタノールによる洗浄を、新しいメタノールに交換しながら更に2回行った。次に、メチルエチルケトン2000mLに浸漬し、60℃で30分かけて溶媒置換を行った。メチルエチルケトンによる洗浄を新しいメチルエチルケトンに交換しながら更に2回行った。洗浄及び溶媒置換された構造体を、常圧下にて、120℃で6時間乾燥することで、本体部上に、上記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲルを含有するエアロゲル層1を形成した。
 本体部上に形成したエアロゲル層1上に、エアーブラシを用いてバリア層形成用組成物1を塗布した後、150℃2時間の加熱硬化をすることで、エアロゲル複合構造体1を作製した。エアロゲル層1とバリア層1の合計厚みは120μmであった。
(実施例2)
 ゾル塗液1をゾル塗液2に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、本体部上に、上記一般式(1)、(1a)及び(4)で表される構造を有するエアロゲルを含有するエアロゲル層2を形成した。
 本体部上に形成したエアロゲル層2上に、エアーブラシを用いて、パーヒドロポリシラザンを含有するAZ NAX120-20(AZエレクトロニックマテリアルズマニュファクチャリング株式会社製、製品名)を塗布した後、150℃2時間の加熱硬化をすることで、エアロゲル複合構造体2を作製した。エアロゲル層2とバリア層2の合計厚みは120μmであった。
<比較例1>
 ゾル塗液1をゾル塗液1Cに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、本体部上にエアロゲル層1Cを形成した。これを比較例に係るエアロゲル複合構造体1Cとした。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
<各種評価>
(耐油性評価)
 各実施例及び比較例で得られたエアロゲル複合構造体の本体部とは反対側の面に、エンジンオイル(EMGマーケティング合同会社製、モービル1 5W-30)を1μL滴下し、液滴が浸透せず、表面に残った場合を耐油性良好、液滴が表面からなくなった場合を耐油性不良とした。
(表面脱落性評価)
 各実施例及び比較例のエアロゲル複合構造体について、本体部とは反対側の面を指で擦り、指への付着の有無を目視で判断した。付着のない場合を表面脱落性良好、付着がある場合を表面脱落性不良とした。
(断熱性評価)
 各実施例及び比較例のエアロゲル複合構造体について、本体部とは反対側の面が下面となるように、表面温度70℃のホットプレートに配置して加熱し、10分後に表面の最高温度をサーモグラフィ(アピステ社製、赤外線サーモビュアFSV-1200-L16)で測定した。加熱前のサンプル温度及び室温は23℃であった。
(難燃性評価)
 各実施例及び比較例で得られたエアロゲル複合構造体の本体部とは反対の表層に対して、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に準じて接炎させて難燃性評価を行った。
(耐熱性評価)
 各実施例及び比較例で得られたエアロゲル複合構造体について、本体部とは反対側の面が下面となるように、表面温度200℃のホットプレートに配置して、200℃で5分間加熱した。加熱後、目視観察し、変形、変色、剥離等の外観を評価した。目視観察で変化が無い場合を耐熱性良好と判定し、変形、変色、剥離等が生じた場合を耐熱性不良と判定した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 表2から、実施例では、耐油性、表面脱落性、断熱性、難燃性及び耐熱性が良好である。そのため、油分の存在下であっても、高温環境であっても、好適に利用できる。一方、比較例1では、耐油性及び表面脱落性が劣っており、実施例と同等の効果は得られない。
 1…エアロゲル層付き部材、3…本体部、4…エアロゲル層、5…バリア層、L…外接長方形、P…シリカ粒子。

Claims (4)

  1.  本体部と、エアロゲル層と、ポリシラザンと水との反応物を含むバリア層と、をこの順に備える、エアロゲル層付き部材。
  2.  前記エアロゲル層が、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、前記加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であるエアロゲルを含む、請求項1に記載のエアロゲル層付き部材。
  3.  前記エアロゲル層が、シリカ粒子を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物であるエアロゲルを含む、請求項1又は2に記載のエアロゲル層付き部材。
  4.  前記シリカ粒子の平均一次粒子径が1~500nmである、請求項3に記載のエアロゲル層付き部材。
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