WO2019163131A1 - 構造体、接着用材料、構造体の製造方法、及び被覆方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、被覆対象物と、該被覆対象物の表面を、金属元素を含む中間層を介して被覆するエアロゲル層と、を備える、実用性に優れる構造体に関する。

Description

構造体、接着用材料、構造体の製造方法、及び被覆方法
 本発明は構造体、接着用材料、構造体の製造方法、及び被覆方法に関する。
 ゲル中に含まれる溶媒を超臨界乾燥等により気体に置換した多孔性の物質として、エアロゲルが知られている(例えば、下記特許文献1)。エアロゲルは非常に低密度の固体であり、常圧で低熱伝導である等の際立った特性を有している。そのため、対象の表面にエアロゲルの層を設けることができれば、エアロゲルが有するそのような特性を対象に付与することができると考えられる。
米国特許第4402927号明細書
 しかしながら、エアロゲルの層と対象表面との接着性(接合性)等の観点から、エアロゲル層を表面に備える構造体を得る技術については、実用上改善の余地があるというのが現状である。
 本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、表面にエアロゲル層を備える、実用性に優れる構造体を提供することを目的とする。本発明はまた、エアロゲル層接着用材料、構造体の製造方法及び被覆方法を提供することを目的とする。
 本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、有機金属化合物を用いて形成される、金属元素を含む層を介在させることで、対象とエアロゲルとの接着性を向上できることを見出し、本発明の完成に至った。
 本発明は、被覆対象物と、該被覆対象物の表面を、金属元素を含む中間層を介して被覆するエアロゲル層と、を備える構造体を提供する。
 本発明に係る構造体では、被覆対象物とエアロゲル層とが、金属元素を含む中間層を介して一体的に接合されている。このような構造体は、エアロゲル層と被覆対象物とが良好に接着しているため、実用性に優れるものである。
 エアロゲルが有する特性を活用する方法としては、例えば対象物とは別体でエアロゲルを準備して、利用に付すことが考えられる。例えば、基材上にエアロゲル層を備える積層体を準備し、これを用いて対象物を被覆する方法が考えられる。しかしながら、多種多様な表面形状を有する対象物に適用するには、このような方法では限界がある。これに対し、本発明に係る構造体であれば、エアロゲル層が対象物(被覆対象物)に一体的に接合されているため、対象物の形状に依存することなく、対象物に対してエアロゲルが有する特性を付与することができる。
 本発明において、中間層は、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料の熱処理物とすることができる。これにより良質な中間層を対象物上に形成し易い。
 本発明において、金属元素はチタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種とすることができる。
 本発明において、エアロゲル層は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種、を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成することができる。この際、当該ゾルはさらにシリカ粒子を含んでいてもよい。
 従来、エアロゲルは非常に脆いものとして知られていた。例えば、塊状のエアロゲルは、手で触って持ち上げようとするだけで破損してしまう場合があった。この問題に対処するべく、エアロゲルを補強材により補強することも検討されてきたが、エアロゲル自体の脆さが改善されたわけではないため、衝撃、折り曲げ等の外力に弱く、エアロゲル粉末が脱落する場合があった。これに対し、上記のようにして得られたエアロゲル層であれば、エアロゲルの脆さを改善することができるため、施工性に優れると共に、より優れた断熱性、難燃性、撥水性、接着性及び柔軟性を発現することができる。この傾向は、シリカ粒子を含むことにより、より強靭化されたエアロゲル層において顕著である。
 本発明において、シリカ粒子の平均一次粒子径は1~500nmとすることができる。これによりエアロゲル層をさらに強靭化することができる。また、断熱性、柔軟性等をさらに向上することができる。
 本発明において、中間層の厚みは0.001~1000μmとすることができる。これにより、被覆対象物とエアロゲル層との接着性をより向上することができる。
 本発明において、中間層は充填材を含んでいてもよい。これにより、エアロゲル層におけるクラックの発生を抑制し易くなる。また、例えば構造体としての耐熱性をより向上することができる。
 本発明において、被覆対象物は、金属、セラミック、ガラス及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含むことができる。被覆対象物に特に限定は無いが、これらの材料を含む被覆対象物であれば、上記の中間層を介してエアロゲル層が好適に接着する傾向がある。
 上記のとおり、金属元素を含む中間層は、被覆対象物とエアロゲル層との接着性を向上することができる。したがって、本発明は、そのような中間層を形成することができる材料として、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、エアロゲル層接着用材料を提供することができる、ということもできる。
 本発明は、また、被覆対象物上に金属元素を含む中間層を形成する中間層形成工程と、中間層上にエアロゲル層を形成するエアロゲル層形成工程と、を備える、構造体の製造方法を提供する。本方法により得られる構造体は、上記のとおり優れた実用性を有している。
 本発明の製造方法において、中間層形成工程は、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料を前記被覆対象物と接触させた後、該材料を熱処理する工程を含むことができる。
 本発明の製造方法において、金属元素はチタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種とすることができる。
 本発明の製造方法において、エアロゲル層形成工程が、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種、を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥する工程を含むことができる。この際、当該ゾルはさらにシリカ粒子を含んでいてもよい。
 本発明は、さらに、被覆対象物を金属元素を含む中間層で被覆する工程と、中間層をエアロゲル層で被覆する工程と、を備える、被覆対象物の被覆方法を提供する。本方法であれば、エアロゲル層を接着性良く被覆対象物上に設けることができる。
 本発明の被覆方法において、中間層で被覆する工程は、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料を前記被覆対象物と接触させた後、該材料を熱処理する工程を含むことができる。
 本発明の被覆方法において、金属元素はチタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種とすることができる。
 本発明の被覆方法において、エアロゲル層で被覆する工程は、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種、を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥する工程を含むことができる。この際、当該ゾルはさらにシリカ粒子を含んでいてもよい。
 本発明によれば、表面にエアロゲル層を備える、実用性に優れる構造体を提供することができる。また、本発明によれば、エアロゲル層接着用材料、構造体の製造方法及び被覆方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る構造体を模式的に示す断面図である。 粒子の二軸平均一次粒子径の算出方法を示す図である。
 以下、場合により図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<構造体>
 本実施形態に係る構造体は、被覆対象物と、該被覆対象物の表面を、金属元素を含む中間層を介して被覆するエアロゲル層と、を備える。
 図1は、本発明の一実施形態に係る構造体を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る構造体(エアロゲル構造体、エアロゲル被覆体、被覆構造体、エアロゲル被覆構造体等ともいうことができる)1は、図1に示すように、被覆対象物3と、被覆対象物3を、中間層4を介して被覆するエアロゲル層5と、を備える。好適には、構造体1において、被覆対象物3と中間層4とエアロゲル層5とは一体的に接合されている。なお、被覆対象物3は、例えば、エアロゲル層5が設けられる本体部ということもでき、エアロゲル層5を支持する支持部(支持部材)ということもできる。エアロゲル層5は、後述のとおり断熱性、難燃性、撥水性、耐熱性等に優れているため、好適には被覆対象物3とエアロゲル層5とが中間層4を介して一体的に接合されている構造体1もまた、同様の特性を有することができる。
 構造体1において、中間層4は、被覆対象物3の表面3aの少なくとも一部(一部又は全体)に設けられていてもよく、また、エアロゲル層5は、中間層4の被覆対象物3とは反対側の表面4aの少なくとも一部(一部又は全体)に設けられていてもよい。すなわち、エアロゲル層5は、中間層4を介して、被覆対象物3の表面の一部又は全部を被覆していてもよい。被覆対象物3の表面3aは、平坦面であってもよく、複合平面(傾斜面の組合せ)であってもよく、曲面であってもよい。
[被覆対象物]
 被覆対象物を構成する材料としては、金属、セラミック、ガラス、樹脂、これらの複合材料等が挙げられる。被覆対象物は、例えば、金属、セラミック、ガラス及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。被覆対象物の形態としては、使用する目的又は材料に応じて、ブロック状、シート状、パウダー状、球状、繊維状等が採用できる。
 金属としては、特に限定されず、金属の単体;金属の合金;酸化被膜が形成された金属等が挙げられる。金属としては、具体的には、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、チタン、クロム、コバルト、スズ、金、銀等が挙げられる。後述のゾル生成工程で使用する材料によっては、金属表面の耐食性に優れる観点から、金属として、チタン、金、銀等の単体;酸化被膜が形成された鉄、アルミニウム等を用いることができる。
 セラミックとしては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等の酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物;これらの混合物などが挙げられる。
 ガラスとしては、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
 樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。
 被覆対象物の表面粗さ(Ra)は、良好なアンカー効果が得られ、エアロゲル層の密着性がさらに向上する観点から、100nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。被覆対象物の表面粗さの上限は特に限定されないが、2000nm程度とすることができる。
[中間層]
 中間層は金属元素を含んでおり、被覆対象物とエアロゲル層との接着層として機能することができる。したがって、中間層をプライマ層ということもできる。より具体的には、中間層は、後述のとおり有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料を用いて形成することができる。形成された中間層内において、原料である有機金属化合物は、有機金属化合物として含まれていてもよく、その配位子の一部が分解及び酸化されて含まれていてもよく、金属酸化物となって含まれていてもよい。
 有機金属化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンイソステアレート等の有機チタン化合物、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ステアリン酸ジルコニウム、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等の有機ジルコニウム化合物、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、有機金属化合物の加水分解生成物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリイソシアネートシラン、テトライソシアネートシラン等の有機ケイ素化合物の加水分解生成物が挙げられる。
 中間層は、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を含むことができる。中間層に含まれる金属元素は、AES(オージェ電子分光法)、EDX(エネルギー分散型X線分光法)、WDX(波長分散型X線分光法)、XPS(X線光電子分光法)、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)等の方法により分析して特定することができる。例えば、EDXを用いる場合であれば、加速電圧を5~20kVとし、0~10keVの範囲に現れる特性X線のピークを分析すればよい。
 中間層は、耐熱性がさらに向上する観点、及び、クラックをさらに抑制する観点から、さらに充填材を含んでいてもよい。充填材としては、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。充填材は、中間層の耐熱温度を向上し、高温環境で使用し易くなることから、無機充填材であってもよく、高温環境で繰り返し使用した場合の、熱サイクル信頼性が向上する観点から、有機充填材であってもよい。充填材の形状に特に制限はなく、短繊維状、微粉末状、中空状等であってもよい。
 無機充填材を構成する材料としては、シリカ、マイカ、タルク、ガラス、炭酸カルシウム、石英、金属水和物、金属水酸化物、これらの複合材料等が挙げられる。無機充填材は、例えば、シリカ、マイカ、タルク、ガラス、炭酸カルシウム、石英、金属水和物及び金属水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
 金属水和物としては、硫酸カリウムアルミニウム12水和物、硝酸マグネシウム6水和物、硫酸マグネシウム7水和物等が挙げられる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。水酸化アルミニウムは、ベーマイト型水酸化アルミニウムであってもよい。
 耐熱性及び難燃性がさらに向上する観点から、無機充填材は、シリカ、ガラス又は金属水酸化物を含有するものであってもよく、ガラスは、ガラス短繊維又は中空ガラスであってもよく、金属水酸化物は、水酸化マグネシウム又はベーマイト型水酸化アルミニウムであってもよい。
 有機充填材を構成する材料としては、リン酸エステル、ポリエステル、ポリスチレン、パルプ、エラストマー、これらの複合材料等が挙げられる。有機充填材は、例えば、リン酸エステル、ポリエステル、ポリスチレン、パルプ及びエラストマーからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。パルプは、パルプフロックの形態であってもよい。有機充填材は、被覆対象物と中間層との熱膨張差による応力を緩和し、クラックが抑制され易くなることから、エラストマーを含有するものであってもよい。
 エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性がさらに向上する観点から、エラストマーとして、フッ素系エラストマー又はシリコーン系エラストマーを用いることができる。
 中間層に含まれる充填材の含有量は、耐熱性がさらに向上する観点から、中間層の全体積に対し、0.1体積%以上であってもよい。中間層に含まれる充填材の含有量は、中間層を形成するときの作業性が向上する観点、及び、被覆対象物とエアロゲル層との密着性が向上する観点から、中間層の全体積に対し、50体積%以下であってもよく、40体積%以下であってもよく、30体積%以下であってもよい。これらの観点から、中間層に含まれる充填材の含有量は、中間層の全体積に対し、0.1~50体積%であってもよく、0.1~40体積%であってもよく、0.1~30体積%であってもよい。
 中間層は、密着性向上剤、難燃剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
 密着性向上剤としては、尿素シラン等の尿素化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。
 難燃剤としては、メラミンシアヌレート、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン等が挙げられる。
 酸化防止剤としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックパウダー及び無機バインダからなる酸化防止剤が挙げられる。
 中間層の熱分解温度は、耐熱性がさらに向上する観点から、300℃以上であってもよい。ここで、熱分解温度が300℃以上であるとは、中間層を構成する材料を株式会社日立ハイテクサイエンス製の高温型示差熱熱重量同時測定装置(製品名:TG/DTA7300)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で測定した場合に、5%重量減少する時の温度が300℃以上であることを意味する。
 中間層の厚みは、衝撃等による損傷が低減され、被覆対象物の保護性能が向上する観点、及び、被覆対象物とエアロゲル層との接着性がさらに向上する観点から、0.001μm以上であってもよく、0.01μm以上であってもよく、0.1μm以上であってもよい。中間層の厚みは、中間層の形成時のクラックを抑制する観点から、1000μm以下であってもよく、1000μm未満であってもよく、500μm以下であってもよい。中間層の厚みは、さらに被覆対象物と中間層との熱膨張差によるクラックを抑制する観点、及び、熱サイクル安定性が向上する観点から、100μm以下であってもよい。これらの観点から、中間層の厚みは、0.001~1000μmであってもよく、0.001μm以上1000μm未満であってもよく、0.01~500μmであってもよく、0.1~100μmであってもよい。
 吸水率の低い中間層を用いることにより、被覆対象物に対する水溶性の酸性物質及び塩基性物質、無機塩類等による化学的影響をさらに低減できる。具体的には、例えば、後述のゾル塗液等の影響による、被覆対象物表面の化学的変化(腐食、変性等)をさらに低減できる。すなわち、そのような中間層は、エアロゲル層を形成する際の条件及びゾル塗液の組成による影響を受け難く、構造体の製造が容易となる。これらの観点から、中間層の吸水率は5%未満であってもよく、4%未満であってもよく、3%未満であってもよい。
 中間層の吸水率とは、20mm×20mm×0.5mmサイズに成形した中間層の試験片を120℃の環境に1時間放置した後、60℃、90%RHの環境に6時間放置した際の質量変化率を意味する。
 ある程度の表面粗さを中間層が有することにより、中間層とエアロゲル層との密着性をさらに向上させることができ、エアロゲル層の剥離及び脱落をさらに抑制することができる。中間層の表面粗さ(Ra)は、中間層とエアロゲル層との間に良好なアンカー効果が得られ、エアロゲル層の密着性がさらに向上する観点から、200nm以上であってもよく、300nm以上であってもよく、500nm以上であってもよい。中間層の表面粗さの上限は特に限定されないが、2000nm程度とすることができる。
 中間層の表面粗さは、被覆対象物上に中間層を形成した後、当該中間層に研磨加工(研磨処理)、粗化加工(粗化処理)等を施すことにより調整できる。研磨加工又は粗化加工は、機械的加工であっても、化学的加工であってもよい。加工方法としては、砥粒のような研磨剤を含むスラリーによる機械的加工、酸若しくは塩基、酸化剤又は還元剤によるウェットエッチング、六フッ化硫黄又は四フッ化炭素によるドライエッチング等が挙げられる。なお、中間層は、単層であってもよく、複数の層であってもよい。
[エアロゲル層]
 本実施形態に係るエアロゲル層はエアロゲルから構成されるものである。狭義には、湿潤ゲルに対して超臨界乾燥法を用いて得られた乾燥ゲルをエアロゲル、大気圧下での乾燥により得られた乾燥ゲルをキセロゲル、凍結乾燥により得られた乾燥ゲルをクライオゲルと称するが、本実施形態においては、湿潤ゲルのこれらの乾燥手法によらず、得られた低密度の乾燥ゲルを「エアロゲル」と称する。すなわち、本実施形態において、「エアロゲル」とは、広義のエアロゲルである「Gel comprised of a microporous solid in which the dispersed phase is a gas(分散相が気体である微多孔性固体から構成されるゲル)」を意味する。一般的に、エアロゲルの内部は、網目状の微細構造を有しており、2~20nm程度のエアロゲル粒子(エアロゲルを構成する粒子)が結合したクラスター構造を有している。このクラスターにより形成される骨格間には、100nmに満たない細孔がある。これにより、エアロゲルは、三次元的に微細な多孔性の構造が形成されている。なお、本実施形態に係るエアロゲルは、例えば、シリカを主成分とするシリカエアロゲルである。シリカエアロゲルとしては、例えば、有機基(メチル基等)又は有機鎖を導入した、いわゆる有機-無機ハイブリッド化されたシリカエアロゲルが挙げられる。本実施形態に係るエアロゲルは、上述のエアロゲル粒子から構成されるエアロゲル成分を含有することができる。
 本実施形態に係るエアロゲルとしては、以下の態様が挙げられる。これらの態様を採用することにより、断熱性、難燃性、耐熱性及び柔軟性に優れるエアロゲルを得ることが容易となる。特に、柔軟性が優れていることにより、従来では形成が困難であった形状の被覆対象物に対してもエアロゲル層を容易に形成することができる。各々の態様を採用することで、各々の態様に応じた断熱性、難燃性及び柔軟性を有するエアロゲルを得ることができる。
(第一の態様)
 本実施形態に係るエアロゲルは、下記一般式(1)で表される構造を有することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、式(1)で表される構造を含む構造として、下記一般式(1a)で表される構造を有することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 式(1)及び式(1a)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、R及びRはそれぞれ独立にアルキレン基を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。なお、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。pは1~50の整数を示す。式(1a)中、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。式(1a)中、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に、2個のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記式(1)又は式(1a)で表される構造をエアロゲル成分としてエアロゲルの骨格中に導入することにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルとなる。このような観点から、式(1)及び式(1a)中、R及びRとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(1)及び式(1a)中、R及びRとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキレン基等が挙げられ、当該アルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基等が挙げられる。式(1a)中、pは2~30とすることができ、5~20であってもよい。
(第二の態様)
 本実施形態に係るエアロゲルは、支柱部及び橋かけ部を備えるラダー型構造を有し、かつ橋かけ部が下記一般式(2)で表される構造を有することができる。このようなラダー型構造をエアロゲル成分としてエアロゲルの骨格中に導入することにより、耐熱性と機械的強度を向上させることができる。なお、本実施形態において「ラダー型構造」とは、2本の支柱部(struts)と支柱部同士を連結する橋かけ部(bridges)とを有するもの(いわゆる「梯子」の形態を有するもの)である。本態様において、エアロゲルの骨格がラダー型構造からなっていてもよいが、エアロゲルが部分的にラダー型構造を有していてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 式(2)中、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、bは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(2)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のRも各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記の構造をエアロゲル成分としてエアロゲルの骨格中に導入することにより、例えば、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有する(すなわち、下記一般式(X)で表される構造を有する)エアロゲルよりも優れた柔軟性を有するエアロゲルとなる。シルセスキオキサンは、組成式:(RSiO1.5を有するポリシロキサンであり、カゴ型、ラダー型、ランダム型等の種々の骨格構造を有することができる。なお、下記一般式(X)にて示すように、従来のラダー型シルセスキオキサンに由来する構造を有するエアロゲルでは、橋かけ部の構造が-O-であるが、本実施形態に係るエアロゲルでは、橋かけ部の構造が上記一般式(2)で表される構造(ポリシロキサン構造)である。ただし、本態様のエアロゲルは、一般式(2)で表される構造に加え、さらにシルセスキオキサンに由来する構造を有していてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
 式(X)中、Rはヒドロキシ基、アルキル基又はアリール基を示す。
 支柱部となる構造及びその鎖長、並びに橋かけ部となる構造の間隔は特に限定されないが、耐熱性と機械的強度とをより向上させるという観点から、ラダー型構造としては、下記一般式(3)で表されるラダー型構造を有していてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
 式(3)中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、a及びcはそれぞれ独立に1~3000の整数を示し、bは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(3)中、bが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のRも各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(3)中、aが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよく、同様にcが2以上の整数の場合、2個以上のRは各々同一であっても異なっていてもよい。
 なお、より優れた柔軟性を得る観点から、式(2)及び(3)中、R、R、R及びR(ただし、R及びRは式(3)中のみ)としてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(3)中、a及びcは、それぞれ独立に6~2000とすることができるが、10~1000であってもよい。また、式(2)及び(3)中、bは、2~30とすることができるが、5~20であってもよい。
(第三の態様)
 本実施形態に係るエアロゲルは、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種、を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物(ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥して得られるもの:ゾル由来の湿潤ゲルの乾燥物)であってもよい。なお、これまで述べてきたエアロゲルも、このように、ケイ素化合物等を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥することで得られるものであってもよい。
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、ポリシロキサン化合物を用いることができる。すなわち、上記ゾルは、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(以下、場合により「ポリシロキサン化合物群」という)を含有することができる。
 ポリシロキサン化合物等における官能基は、特に限定されないが、同じ官能基同士で反応するか、あるいは他の官能基と反応する基とすることができる。加水分解性の官能基としては、アルコキシ基が挙げられる。縮合性の官能基としては、水酸基、シラノール基、カルボキシル基、フェノール性水酸基等が挙げられる。水酸基は、ヒドロキシアルキル基等の水酸基含有基に含まれていてもよい。なお、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基とは異なる反応性基(加水分解性の官能基及び縮合性の官能基に該当しない官能基)をさらに有していてもよい。反応性基としては、エポキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基等が挙げられる。エポキシ基は、グリシドキシ基等のエポキシ基含有基に含まれていてもよい。これらの官能基及び反応性基を有するポリシロキサン化合物は単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。これらの官能基及び反応性基のうち、例えば、エアロゲルの柔軟性を向上する基としては、アルコキシ基、シラノール基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられ、これらのうち、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基は、ゾルの相溶性をより向上することができる。また、ポリシロキサン化合物の反応性の向上とエアロゲルの熱伝導率の低減の観点から、アルコキシ基及びヒドロキシアルキル基の炭素数は1~6とすることができるが、エアロゲルの柔軟性をより向上する観点から2~4であってもよい。
 分子内にヒドロキシアルキル基を有するポリシロキサン化合物としては、下記一般式(A)で表される構造を有するものが挙げられる。下記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、前記一般式(1)及び式(1a)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 式(A)中、R1aはヒドロキシアルキル基を示し、R2aはアルキレン基を示し、R3a及びR4aはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、nは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(A)中、2個のR1aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個のR2aは各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(A)中、2個以上のR3aは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のR4aは各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記構造のポリシロキサン化合物を含有するゾルの縮合物である(ゾルから生成された)湿潤ゲルを用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルをさらに得易くなる。このような観点から、式(A)中、R1aとしては炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基等が挙げられ、当該ヒドロキシアルキル基としてはヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。また、式(A)中、R2aとしては炭素数が1~6のアルキレン基等が挙げられ、当該アルキレン基としてはエチレン基、プロピレン基等が挙げられる。また、式(A)中、R3a及びR4aとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(A)中、nは2~30とすることができるが、5~20であってもよい。
 上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としては、市販品を用いることができ、X-22-160AS、KF-6001、KF-6002、KF-6003等の化合物(いずれも、信越化学工業株式会社製)、XF42-B0970、Fluid OFOH 702-4%等の化合物(いずれも、モメンティブ社製)などが挙げられる。
 分子内にアルコキシ基を有するポリシロキサン化合物としては、下記一般式(B)で表される構造を有するものが挙げられる。下記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物を使用することにより、前記一般式(2)又は(3)で表される橋かけ部を有するラダー型構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 式(B)中、R1bはアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を示し、R2b及びR3bはそれぞれ独立にアルコキシ基を示し、R4b及びR5bはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を示し、mは1~50の整数を示す。ここで、アリール基としてはフェニル基、置換フェニル基等が挙げられる。また、置換フェニル基の置換基としては、アルキル基、ビニル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。なお、式(B)中、2個のR1bは各々同一であっても異なっていてもよく、2個のR2bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個のR3bは各々同一であっても異なっていてもよい。また、式(B)中、mが2以上の整数の場合、2個以上のR4bは各々同一であっても異なっていてもよく、同様に2個以上のR5bも各々同一であっても異なっていてもよい。
 上記構造のポリシロキサン化合物又はその加水分解生成物を含有するゾルの縮合物である(ゾルから生成された)湿潤ゲルを用いることにより、低熱伝導率かつ柔軟なエアロゲルをさらに得易くなる。このような観点から、式(B)中、R1bとしては炭素数が1~6のアルキル基、炭素数が1~6のアルコキシ基等が挙げられ、当該アルキル基又はアルコキシ基としてはメチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、式(B)中、R2b及びR3bとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルコキシ基等が挙げられ、当該アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。また、式(B)中、R4b及びR5bとしてはそれぞれ独立に炭素数が1~6のアルキル基、フェニル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。また、式(B)中、mは2~30とすることができるが、5~20であってもよい。
 上記一般式(B)で表される構造を有するポリシロキサン化合物は、特開2000-26609号公報、特開2012-233110号公報等にて報告される製造方法を適宜参照して得ることができる。
 なお、アルコキシ基は加水分解するため、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物はゾル中にて加水分解生成物として存在する可能性があり、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物とその加水分解生成物は混在していてもよい。また、アルコキシ基を有するポリシロキサン化合物において、分子中のアルコキシ基の全てが加水分解されていてもよいし、部分的に加水分解されていてもよい。
 これら、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物、及び、加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物は、単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 本実施形態に係るエアロゲルを作製するにあたり、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、上述のポリシロキサン化合物以外のケイ素化合物を用いることができる。すなわち、上記のケイ素化合物を含有するゾルは、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く化合物であり、「シランモノマー」ということもできる。)、及び、加水分解性の官能基を有する当該ケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種(以下、場合により「ケイ素化合物群」という)を、上述のポリシロキサン化合物群に加えて、あるいは上述のポリシロキサン化合物群に代えて、含有することができる。ケイ素化合物における分子内のケイ素数は1又は2とすることができる。
 分子内に加水分解性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、アルキルケイ素アルコキシド等が挙げられる。アルキルケイ素アルコキシドは、耐水性を向上する観点から、加水分解性の官能基の数を3個以下とすることができる。このようなアルキルケイ素アルコキシドとしては、モノアルキルトリアルコキシシラン、モノアルキルジアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、モノアルキルモノアルコキシシラン、ジアルキルモノアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシラン等が挙げられ、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。ここで、加水分解性の官能基としては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基などが挙げられる。
 縮合性の官能基を有するケイ素化合物としては、特に限定されないが、シランテトラオール、メチルシラントリオール、ジメチルシランジオール、フェニルシラントリオール、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、n-プロピルシラントリオール、ヘキシルシラントリオール、オクチルシラントリオール、デシルシラントリオール、トリフルオロプロピルシラントリオール等が挙げられる。
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物は、加水分解性の官能基及び縮合性の官能基とは異なる上述の反応性基(加水分解性の官能基及び縮合性の官能基に該当しない官能基)をさらに有していてもよい。
 加水分解性の官能基の数が3個以下であり、反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等も用いることができる。
 また、縮合性の官能基を有し、反応性基を有するケイ素化合物として、ビニルシラントリオール、3-グリシドキシプロピルシラントリオール、3-グリシドキシプロピルメチルシランジオール、3-メタクリロキシプロピルシラントリオール、3-メタクリロキシプロピルメチルシランジオール、3-アクリロキシプロピルシラントリオール、3-メルカプトプロピルシラントリオール、3-メルカプトプロピルメチルシランジオール、N-フェニル-3-アミノプロピルシラントリオール、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルシランジオール等も用いることができる。
 さらに、分子末端の加水分解性の官能基が3個以下のケイ素化合物であるビストリメトキシシリルメタン、ビストリメトキシシリルエタン、ビストリメトキシシリルヘキサン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等も用いることができる。
 加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)、及び、加水分解性の官能基を有する当該ケイ素化合物の加水分解生成物は、単独で、又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 上記のケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)を使用することにより、下記一般式(4)~(6)で表される構造をエアロゲルの骨格中に導入することができる。本実施形態に係るエアロゲルは、これらの構造をのうちいずれかを単独で、又は2種以上有することができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
 式(4)中、Rはアルキル基を示す。ここで、アルキル基としては炭素数が1~6のアルキル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 式(5)中、R10及びR11はそれぞれ独立にアルキル基を示す。ここで、アルキル基としては炭素数が1~6のアルキル基等が挙げられ、当該アルキル基としてはメチル基等が挙げられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
 式(6)中、R12はアルキレン基を示す。ここで、アルキレン基としては炭素数が1~10のアルキレン基等が挙げられ、当該アルキレン基としてはエチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
(第四の態様)
 本実施形態に係るエアロゲルは、エアロゲル層をさらに強靱化する観点並びにさらに優れた断熱性及び柔軟性を達成する観点から、エアロゲル成分に加え、さらにシリカ粒子を含有していてもよい。エアロゲル成分及びシリカ粒子を含有するエアロゲルを、エアロゲル複合体ということもできる。エアロゲル複合体は、エアロゲル成分とシリカ粒子とが複合化されていながらも、エアロゲルの特徴であるクラスター構造を有しており、三次元的に微細な多孔性の構造を有していると考えられる。
 エアロゲル成分及びシリカ粒子を含有するエアロゲルは、上述の、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種と、シリカ粒子と、を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物ということができる。したがって、第一の態様~第三の態様に関する記載は、本実施形態に係るエアロゲルに対しても適宜準用することができる。
 シリカ粒子としては、特に制限なく用いることができ、非晶質シリカ粒子等が挙げられる。非晶質シリカ粒子としては、溶融シリカ粒子、ヒュームドシリカ粒子、コロイダルシリカ粒子等が挙げられる。これらのうち、コロイダルシリカ粒子は単分散性が高く、ゾル中での凝集を抑制し易い。なお、シリカ粒子としては、中空構造、多孔質構造等を有するシリカ粒子であってもよい。
 シリカ粒子の形状は特に制限されず、球状、繭型、会合型等が挙げられる。これらのうち、シリカ粒子として球状の粒子を用いることにより、ゾル中での凝集を抑制し易くなる。シリカ粒子の平均一次粒子径は、適度な強度及び柔軟性をエアロゲルに付与し易く、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易い観点から、1nm以上であってもよく、5nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。シリカ粒子の平均一次粒子径は、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、500nm以下であってもよく、300nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の平均一次粒子径は、1~500nmであってもよく、5~300nmであってもよく、20~100nmであってもよい。
 本実施形態において、粒子の平均粒子径(エアロゲル粒子の平均粒子径、シリカ粒子の平均一次粒子径等)は、走査型電子顕微鏡(以下「SEM」と略記する。)を用いてエアロゲル層の断面を直接観察することにより得ることができる。例えば、エアロゲル層の断面に露出した粒子の直径に基づき、エアロゲル粒子又はシリカ粒子個々の粒子径を得ることができる。ここでいう「直径」とは、エアロゲル層の断面に露出した粒子の断面を円とみなした場合の直径を意味する。また、「断面を円とみなした場合の直径」とは、断面の面積を同じ面積の真円に置き換えたときの当該真円の直径のことである。なお、平均粒子径の算出に当たっては、100個の粒子について円の直径を求め、その平均を取るものとする。
 なお、シリカ粒子の平均粒子径は、原料から測定することができる。例えば、二軸平均一次粒子径は、任意の粒子20個をSEMにより観察した結果から、次のようにして算出される。すなわち、通常固形分濃度が5~40質量%程度で、水中に分散しているコロイダルシリカ粒子を例にすると、コロイダルシリカ粒子の分散液に、パターン配線付きウエハを2cm角に切って得られたチップを約30秒浸した後、当該チップを純水にて約30秒間すすぎ、窒素ブロー乾燥する。その後、チップをSEM観察用の試料台に載せ、加速電圧10kVを掛け、10万倍の倍率にてシリカ粒子を観察し、画像を撮影する。得られた画像から20個のシリカ粒子を任意に選択し、それらの粒子の粒子径の平均を平均粒子径とする。この際、選択したシリカ粒子が図2に示すような形状であった場合、シリカ粒子Pに外接し、その長辺が最も長くなるように配置した長方形(外接長方形L)を導く。そして、その外接長方形Lの長辺をX、短辺をYとして、(X+Y)/2として二軸平均一次粒子径を算出し、その粒子の粒子径とする。
 シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、耐収縮性に優れるエアロゲルを得易くなる観点から、10×1018個/g以上であってもよく、50×1018個/g以上であってもよく、100×1018個/g以上であってもよい。シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、均質なエアロゲルが得易くなる観点から、1000×1018個/g以下であってもよく、800×1018個/g以下であってもよく、700×1018個/g以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の1g当たりのシラノール基数は、10×1018~1000×1018個/gであってもよく、50×1018~800×1018個/gであってもよく、100×1018~700×1018個/gであってもよい。
 上記ゾルに含まれるポリシロキサン化合物群の含有量(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するポリシロキサン化合物の含有量、及び、加水分解性の官能基を有するポリシロキサン化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、良好な反応性をさらに得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。上記ゾルに含まれるポリシロキサン化合物群の含有量は、良好な相溶性をさらに得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。これらの観点から、上記ゾルに含まれるポリシロキサン化合物群の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、5~50質量部であってもよく、10~30質量部であってもよい。
 上記ゾルがケイ素化合物(ポリシロキサン化合物を除く)を含有する場合、ケイ素化合物群(加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物の含有量、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物の含有量の総和)は、良好な反応性をさらに得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよい。上記ゾルに含まれるケイ素化合物群の含有量は、良好な相溶性をさらに得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、50質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよい。これらの観点から、上記ゾルに含まれるケイ素化合物群の含有量は、5~50質量部であってもよく、10~30質量部であってもよい。
 ゾルが、ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群を共に含む場合、ポリシロキサン化合物群の含有量と、ケイ素化合物群の含有量との比は、良好な相溶性がさらに得易くなる観点から、1:0.5以上であってもよく、1:1以上であってもよい。ポリシロキサン化合物群の含有量と、ケイ素化合物群の含有量との比は、ゲルの収縮がさらに抑制し易くなる観点から、1:4以下であってもよく、1:2以下であってもよい。これらの観点から、ポリシロキサン化合物群の含有量と、ケイ素化合物群の含有量との比は、1:0.5~1:4であってもよく、1:1~1:2であってもよい。
 上記ゾルにシリカ粒子が含まれる場合、シリカ粒子の含有量は、適度な強度をエアロゲルに付与し易くなり、乾燥時の耐収縮性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、1質量部以上であってもよく、4質量部以上であってもよい。シリカ粒子の含有量は、シリカ粒子の固体熱伝導を抑制し易くなり、断熱性に優れるエアロゲルが得易くなる観点から、ゾルの総量100質量部に対し、20質量部以下であってもよく、15質量部以下であってもよい。これらの観点から、シリカ粒子の含有量は、ゾルの総量100質量部に対し、1~20質量部であってもよく、4~15質量部であってもよい。
 エアロゲル層の厚みは、良好な断熱性を得易くなることから、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよい。エアロゲル層の厚みは、後述の洗浄及び溶媒置換工程並びに乾燥工程を短縮できる観点から、1000μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、250μm以下であってもよい。これらの観点から、エアロゲル層の厚みは、1~1000μmであってもよく、10~500μmであってもよく、30~250μmであってもよい。
<構造体の製造方法>
 本実施形態に係る構造体は、被覆対象物上に金属元素を含む中間層を設ける中間層形成工程と、中間層上にエアロゲル層を設けるエアロゲル層形成工程と、を備える製造方法により製造することができる。
 具体的には、例えば、被覆対象物となる基材(支持体)上に中間層を形成する中間層形成工程と、エアロゲル層を形成するためのゾルを作製するゾル生成工程と、ゾル生成工程で得られたゾルを中間層上でゲル化し、その後熟成して湿潤ゲル層を得る湿潤ゲル生成工程と、湿潤ゲル生成工程で得られた湿潤ゲル層に対し洗浄及び溶媒置換する工程と、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲル層を乾燥してエアロゲル層を得る乾燥工程と、を主に備える製造方法により製造することができる。これにより、被覆対象物とエアロゲル層とが中間層を介して一体的に接合された構造体を得ることができる。なお、「ゾル」とは、ゲル化反応が生じる前の状態であって、本実施形態においては、ケイ素化合物と、場合によりシリカ粒子とが溶媒中に溶解又は分散している状態を意味する。
 以下、本実施形態に係る構造体の製造方法の各工程について説明する。
(中間層形成工程)
 中間層形成工程は、具体的には、例えば中間層形成材料を被覆対象物と接触させた後、当該材料を熱処理する工程を含む。これにより、被覆対象物上に中間層(中間層形成材料の熱処理物)を形成することができる。中間層形成材料は、被覆対象物に対するエアロゲル層の接着材料として機能することができるため、当該材料をエアロゲル層接着用材料ということもできる。
 中間層形成材料を被覆対象物と接触させる方法は、例えば、被覆対象物上に液状の中間層形成材料を塗布する方法(ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート等)が挙げられる。塗布方法は、被覆対象物に対する層形成性、製造コスト等の観点から選択することができる。例えば、被覆対象物がシート状又は繊維状であれば、ディップコート又はロールコートを用いることができ、被覆対象物がブロック状又は球状であれば、ディップコート又はスプレーコートを用いることができる。
 中間層形成材料を被覆対象物と接触させた後、中間層を被覆対象物上に定着させる観点から中間層形成材料に対し熱処理を施す。熱処理条件は、被覆対象物を保護する観点、中間層形成材料の変性を抑制する観点等から、40~250℃であってもよく、60~170℃であってもよい。また、形成された中間層表面から不純物を除去する観点、中間層とエアロゲル層との密着性を向上させる観点等から、中間層に対し洗浄及び/又は乾燥を行ってもよい。さらに、中間層の表面粗さを調整する目的で、中間層表面に研磨処理及び/又は粗化処理を施してもよい。
 中間層形成材料は、上述の有機金属化合物、有機金属化合物の加水分解生成物、充填材等に加え、溶媒を含有することができる。これにより、中間層形成材料を被覆対象物上に薄くかつ均一に塗工することができる。
 溶媒としては、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物と任意に混和し、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物を失活させないものであれば特に制限されない。そのような溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。溶媒は、工程上250℃以下の熱風により除去できるものが好ましい。
 有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物の含有量は、エアロゲル層との接着性を良好にする観点から、中間層形成材料の全質量を基準として、0.001質量%以上であってもよく、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。なお、当該含有量は、良質な中間層を形成し易いという観点から、50質量%以下とすることができる。
 ここまで、中間層形成材料が液状である場合について説明したが、被覆対象物上に金属元素を含む中間層を設けられさえすれば、形態は液状でなくともよい。中間層の厚み、被覆対象物の形状等によっては、中間層形成材料はシート状(固体状)であってもよい。シート状の中間層形成材料を用いる場合は、被覆対象物上にこれを積層することで、中間層形成材料を被覆対象物と接触させることができる。
 シート状の中間層形成材料は、例えば支持フィルム上に形成されていてもよい。使用に際しては、被覆対象物に中間層形成材料を貼り付けた後、フィルムを剥離することで、被覆対象物上に中間層を形成することができる。したがって、シート状の中間層形成材料は、有機金属化合物、有機金属化合物の加水分解生成物、充填材等の他に、バインダ樹脂等をさらに含むことによりタック性を有しているとよい。
(ゾル生成工程)
 ゾル生成工程は、ケイ素化合物と、場合によりシリカ粒子(シリカ粒子を含む溶媒であってもよい)と、を混合して加水分解反応を行った後、ゾルゲル反応を行い、半ゲル化したゾル塗液を得る工程である。ゾル生成工程においては、加水分解反応を促進させるため、溶媒中に酸触媒をさらに添加してもよい。また、特許第5250900号公報に示されるように、溶媒中に界面活性剤、熱加水分解性化合物等を添加することもできる。さらに、ゲル化反応を促進させるため、塩基触媒を添加してもよい。なお、ゾル中にシリカ粒子が含まれることにより、ゾル生成工程~湿潤ゲル生成工程における工程時間を短縮し、加熱温度及び乾燥温度を低温化することができる。
 溶媒としては、湿潤ゲル生成工程において良好な塗膜性が得られれば特に限定されず、水、水及びアルコールの混合液等を用いることができる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。これらの中でも、表面張力が高く、揮発性が低い観点から、水を用いることができる。
 酸触媒としては、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、臭素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸等の無機酸;酸性リン酸アルミニウム、酸性リン酸マグネシウム、酸性リン酸亜鉛等の酸性リン酸塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、アゼライン酸等の有機カルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、酸触媒としては、得られるエアロゲル層の耐水性がさらに向上する観点から、有機カルボン酸を用いることができる。有機カルボン酸としては、特に、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸であってもよく、酢酸であってもよい。酸触媒は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 酸触媒を用いることで、ポリシロキサン化合物及びケイ素化合物の加水分解反応を促進させて、より短時間でゾルを得ることができる。
 酸触媒の添加量は、ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群の総量100質量部に対し、0.001~0.1質量部であってもよい。
 界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むもの、ポリオキシプロピレン等の親水部を含むものなどを使用できる。ポリオキシエチレン等の親水部と主にアルキル基からなる疎水部とを含むものとしては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。ポリオキシプロピレン等の親水部を含むものとしては、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック共重合体等が挙げられる。
 イオン性界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を用いることができ、カチオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤を用いてもよい。カチオン性界面活性剤としては、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化セチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。両イオン性界面活性剤としては、アミノ酸系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アミンオキシド系界面活性剤等が挙げられる。アミノ酸系界面活性剤としては、アシルグルタミン酸等が挙げられる。ベタイン系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。アミンオキシド系界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
 これらの界面活性剤は、湿潤ゲル生成工程において、反応系中の溶媒と、成長していくシロキサン重合体との間の化学的親和性の差異を小さくし、相分離を抑制する作用を有すると考えられる。
 界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群の種類並びに量等にも左右されるが、例えば、ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群の総量100質量部に対し、1~100質量部であってもよく、5~60質量部であってもよい。
 熱加水分解性化合物は、熱加水分解により塩基触媒を発生して反応溶液を塩基性とし、ゾルゲル反応を促進すると考えられる。熱加水分解性化合物としては、加水分解後に反応溶液を塩基性にできる化合物であれば、特に限定されず、尿素;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の酸アミド;ヘキサメチレンテトラミン等の環状窒素化合物などを挙げることができる。これらの中でも尿素は上記促進効果が得られ易い。
 熱加水分解性化合物の添加量は、ゾルゲル反応を充分に促進することができる量であれば、特に限定されない。例えば、熱加水分解性化合物の添加量は、ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群の総量100質量部に対して、1~200質量部であってもよく、2~150質量部であってもよい。熱加水分解性化合物の添加量が1質量部以上であることにより、良好な反応性をさらに得易くなり、また、200質量部以下であることにより、結晶の析出及びゲル密度の低下をさらに抑制し易くなる。
 ゾル生成工程の加水分解は、混合液中のポリシロキサン化合物、ケイ素化合物、シリカ粒子、酸触媒、界面活性剤等の種類及び量にも左右されるが、例えば、20~60℃の温度環境下で10分~24時間行ってもよく、50~60℃の温度環境下で5分~8時間行ってもよい。これにより、ポリシロキサン化合物及びケイ素化合物中の加水分解性官能基が充分に加水分解され、ポリシロキサン化合物の加水分解生成物及びケイ素化合物の加水分解生成物をさらに確実に得ることができる。
 ただし、溶媒中に熱加水分解性化合物を添加する場合は、ゾル生成工程の温度環境を、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制してゾルのゲル化を抑制する温度に調節してもよい。この時の温度は、熱加水分解性化合物の加水分解を抑制できる温度であれば、いずれの温度であってもよい。例えば、熱加水分解性化合物として尿素を用いた場合の温度環境は、0~40℃であってもよく、10~30℃であってもよい。
 塩基触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム化合物;メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム等の塩基性リン酸ナトリウム塩;アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、3-エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、3-(ジブチルアミノ)プロピルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、t-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、3-(メチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-メトキシアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の脂肪族アミン;モルホリン、N-メチルモルホリン、2-メチルモルホリン、ピペラジン及びその誘導体、ピペリジン及びその誘導体、イミダゾール及びその誘導体等の含窒素複素環状化合物などが挙げられる。これらの中でも、揮発性が高く、乾燥後のエアロゲル層に残存し難いため耐水性を損なわない観点、及び、経済性の観点から、水酸化アンモニウム(アンモニア水)を用いることができる。塩基触媒は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 塩基触媒を用いることで、ゾル中のポリシロキサン化合物、ケイ素化合物、及び、シリカ粒子の脱水縮合反応及び/又は脱アルコール縮合反応を促進することができ、ゾルのゲル化をさらに短時間で行うことができる。特に、アンモニアは揮発性が高く、エアロゲル層内に残留し難い。そのため、塩基触媒としてアンモニアを用いることで、耐水性のさらに優れたエアロゲル層を得ることができる。
 塩基触媒の添加量は、ポリシロキサン化合物群及びケイ素化合物群の総量100質量部に対し、0.5~5質量部であってもよく、1~4質量部であってもよい。塩基触媒の添加量が0.5質量部以上であることにより、ゲル化をさらに短時間で行うことができ、5質量部以下であることにより、耐水性の低下をさらに抑制することができる。
 ゾル生成工程におけるゾルゲル反応は、湿潤ゲル生成工程において良好な湿潤ゲル層を得る目的から、半ゲル化状態のゾルが得られるように行う。この反応は、溶媒及び塩基触媒が揮発しないように密閉容器内で行うことができる。ゲル化温度は、ゾル中のポリシロキサン化合物、ケイ素化合物、シリカ粒子、酸触媒、界面活性剤、塩基触媒等の種類及び量にも左右されるが、30~90℃であってもよく、40~80℃であってもよい。ゲル化温度が30℃以上であることにより、ゲル化をさらに短時間に行うことができる。ゲル化温度が90℃以下であることにより、急なゲル化を抑制することができる。
 ゾルゲル反応の時間は、ゲル化温度に応じて適宜設定することができる。ゾル中にシリカ粒子が含まれている場合は、含まれていない場合と比較して、ゲル化時間を短縮することができる。この理由は、ゾル中のポリシロキサン化合物、ケイ素化合物等が有する反応性基及び/又はシラノール基が、シリカ粒子のシラノール基と水素結合及び/又は化学結合を形成するためであると推察する。なお、ゲル化時間は、10~360分であってもよく、20~180分であってもよい。ゲル化時間が10分以上であることにより、ゾルの粘度が向上し、湿潤ゲル生成工程において良好な塗工性を得易くなり、360分以下であることにより、ゾルの完全ゲル化を抑制し、中間層との接着性を得易くなる。
(湿潤ゲル生成工程)
 湿潤ゲル生成工程は、上記ゾル生成工程で得られたゾル塗液(半ゲル化状態のゾル塗液)を中間層に接触させた後、ゾル塗液のゲル化を行い、その後熟成して湿潤ゲル層を得る工程である。湿潤ゲル層は、中間層との接着力が確保される状態であることが望ましい。
 ゾル塗液と中間層との接触方法としては、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート等の塗工方法が挙げられ、湿潤ゲル層の厚み、被覆対象物の形状、層形成性、製造コスト等によって適宜選択される。例えば、被覆対象物がシート状又は繊維状であれば、ディップコート又はロールコートを用いることができ、被覆対象物がブロック状又は球状であれば、ディップコート又はスプレーコートを用いることができる。
 上記接触後、ゾル塗液は加熱及び乾燥され、中間層上に湿潤ゲル(熟成前であるため厳密には湿潤ゲルの前駆体)が形成される。なお、ゾルのゲル化終了時点を判別することは困難な場合が多いため、ゾルのゲル化と後述する熟成とは、連続して一連の操作で行ってもよい。
 熟成は、湿潤ゲルの前駆体を加熱することにより行う。熟成工程において、熟成後の湿潤ゲル層の含水量は、湿潤ゲル層と中間層との接着性の低下を抑制する観点から、10質量%以上であってもよく、50質量%以上であってもよい。熟成雰囲気は特に制限されないが、密閉雰囲気での熟成、加熱による含水量の低下を抑制できる恒湿恒温槽等を用いた熟成などが挙げられる。
 熟成温度は、例えば、40~90℃であってもよく、50~80℃であってもよい。熟成温度が40℃以上であることにより、熟成時間を短縮でき、90℃以下であることにより、含水量の低下を抑制できる。
 熟成時間は、例えば、1~48時間であってもよく、3~24時間であってもよい。熟成時間が1時間以上であることにより、優れた断熱性を有するエアロゲル層が得易く、48時間以下であることによりエアロゲル層と中間層との高い接着性を得ることができる。
(洗浄及び溶媒置換工程)
 洗浄及び溶媒置換工程は、上記熟成工程により得られた湿潤ゲル層を洗浄する工程(洗浄工程)と、乾燥工程に適した溶媒に置換する工程(溶媒置換工程)とを有する工程であり、手法は特に制限はされない。洗浄及び溶媒置換工程は、湿潤ゲル層を洗浄する工程を行わず、溶媒置換工程のみを行う形態でも実施可能である。ただし、湿潤ゲル層を洗浄することにより、エアロゲル層中の未反応物、副生成物等の不純物を低減し、より純度の高いエアロゲル層の製造が可能となる。
 洗浄工程では、上記熟成工程で得られた湿潤ゲル層に対し、水又は有機溶媒を用いて繰り返し洗浄することができる。
 有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジメトキシエタン、アセトニトリル、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ギ酸等の各種の有機溶媒を使用することができる。有機溶媒は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 溶媒置換工程では、乾燥工程におけるエアロゲル層の収縮を抑制するため、低表面張力の溶媒が用いられることがある。しかし、低表面張力の溶媒は、一般的に水との相互溶解度が極めて低い。そのため、溶媒置換工程において低表面張力の溶媒を用いる場合、洗浄工程で用いる有機溶媒として、水及び低表面張力の溶媒の双方に対して高い相互溶解性を有する親水性有機溶媒を用いることができる。なお、洗浄工程において用いられる親水性有機溶媒は、溶媒置換工程のための予備置換の役割を果たすことができる。このことから、上記の有機溶媒の中で、親水性有機溶媒である観点から、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン又はメチルエチルケトンを用いることが可能であり、経済性に優れる観点から、メタノール、エタノール又はメチルエチルケトンを用いることができる。
 洗浄工程に使用される水又は有機溶媒の量としては、湿潤ゲル層中の溶媒を充分に置換し、洗浄できる量を用いることが可能であり、湿潤ゲル層の容量に対して3~10倍の量の溶媒を用いることができる。洗浄は、洗浄後の湿潤ゲル層中の含水量が10質量%以下となるまで繰り返すことができる。
 洗浄工程における温度環境は、洗浄に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができる。例えば、メタノールを用いる場合、30~60℃程度の温度を用いることができる。
 溶媒置換工程では、乾燥工程におけるエアロゲル層の収縮を抑制するため、洗浄した湿潤ゲル層の溶媒を所定の置換用溶媒に置き換える。この際、加温することにより置換効率を向上させることができる。置換用溶媒としては、具体的には、乾燥工程において、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて大気圧下で乾燥する場合は、後述の低表面張力の溶媒を用いることができる。超臨界乾燥を行う場合、エタノール、メタノール、2-プロパノール、ジクロロジフルオロメタン、二酸化炭素等の溶媒を単独で用いるか、又は、これらを2種以上混合した溶媒を用いることができる。
 低表面張力の溶媒としては、20℃における表面張力が30mN/m以下の溶媒であってもよく、25mN/m以下の溶媒であってもよく、20mN/m以下の溶媒であってもよい。低表面張力の溶媒としては、ペンタン(15.5)、ヘキサン(18.4)、ヘプタン(20.2)、オクタン(21.7)、2-メチルペンタン(17.4)、3-メチルペンタン(18.1)、2-メチルヘキサン(19.3)、シクロペンタン(22.6)、シクロヘキサン(25.2)、1-ペンテン(16.0)等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン(28.9)、トルエン(28.5)、m-キシレン(28.7)、p-キシレン(28.3)等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン(27.9)、クロロホルム(27.2)、四塩化炭素(26.9)、1-クロロプロパン(21.8)、2-クロロプロパン(18.1)等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル(17.1)、プロピルエーテル(20.5)、イソプロピルエーテル(17.7)、ブチルエチルエーテル(20.8)、1,2-ジメトキシエタン(24.6)等のエーテル類;アセトン(23.3)、メチルエチルケトン(24.6)、メチルプロピルケトン(25.1)、ジエチルケトン(25.3)等のケトン類;酢酸メチル(24.8)、酢酸エチル(23.8)、酢酸プロピル(24.3)、酢酸イソプロピル(21.2)、酢酸イソブチル(23.7)、エチルブチレート(24.6)等のエステル類などが挙げられる(かっこ内は20℃での表面張力を示し、単位は[mN/m]である)。これらの中で、低表面張力及び優れた作業環境性を達成する観点から、脂肪族炭化水素類であってもよく、ヘキサン又はヘプタンであってもよい。また、これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、1,2-ジメトキシエタン等の親水性有機溶媒を用いることで、上記洗浄工程の有機溶媒と兼用することができる。なお、これらの中でも、乾燥工程における乾燥が容易な観点から、常圧での沸点が100℃以下の溶媒を用いてもよい。低表面張力の溶媒は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
 溶媒置換工程に使用される溶媒の量としては、洗浄後の湿潤ゲル層中の溶媒を充分に置換できる量を用いることが可能であり、湿潤ゲル層の容量に対して3~10倍の量の溶媒を用いることができる。
 溶媒置換工程における温度環境としては、置換に用いる溶媒の沸点以下の温度とすることができる。例えば、ヘプタンを用いる場合、30~60℃程度の温度を用いることができる。
 なお、ゲルがシリカ粒子を含有している場合は、溶媒置換工程は必ずしも必須ではない。推察されるメカニズムとしては次のとおりである。シリカ粒子が三次元網目状のエアロゲル骨格の支持体として機能することにより、当該骨格が支持され、乾燥工程におけるゲルの収縮が抑制される。そのため、洗浄に用いた溶媒を置換せずに、ゲルをそのまま乾燥工程に移すことができると考えられる。ゲルがシリカ粒子を含有している場合は、洗浄及び溶媒置換工程~乾燥工程の簡略化が可能である。
 被覆対象物の耐熱温度によっては、洗浄及び溶媒置換工程を行わず、熟成後に乾燥工程により不純物を揮発させ又は除去することが可能である。
(乾燥工程)
 乾燥工程では、上記の通り洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲルを乾燥させる。これによりエアロゲル(エアロゲル層)を得ることができる。すなわち、上記ゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥してなるエアロゲルを得ることができる。
 乾燥の手法としては特に制限されず、公知の常圧乾燥、超臨界乾燥又は凍結乾燥を用いることができる。これらの中で、低密度のエアロゲルを製造し易い観点から、常圧乾燥又は超臨界乾燥を用いることができる。低コストで生産可能な観点から、常圧乾燥を用いることができる。なお、本実施形態において「常圧」とは、0.1MPa(大気圧)を意味する。
 本実施形態に係るエアロゲルは、例えば、洗浄及び(必要に応じ)溶媒置換した湿潤ゲル層を、乾燥に用いられる溶媒の臨界点未満の温度にて、大気圧下で乾燥することにより得ることができる。乾燥温度は、置換された溶媒(溶媒置換を行わない場合は洗浄に用いられた溶媒)の種類、又は、エアロゲルの耐熱性により異なるが、60~500℃であってもよく、90~150℃であってもよい。乾燥時間は、湿潤ゲル層の容量及び乾燥温度により異なるが、2~48時間であってもよい。なお、生産性を阻害しない範囲内において圧力をかけて乾燥を速めることもできる。
 急激な乾燥によりエアロゲルにクラックが生じることを抑制する観点から、乾燥工程に先立ちプレ乾燥工程を行ってもよい。プレ乾燥温度は、60~180℃であってもよく、90~150℃であってもよい。プレ乾燥時間は、湿潤ゲル層の容量及び乾燥温度により異なるが、1~30分であってもよい。
 以上の工程により、被覆対象物とエアロゲル層とが中間層を介して一体的に接合された構造体を得ることができる。当該構造体は、例えばエアロゲル層に由来する優れた断熱性、耐熱性、難燃性等を有する(この場合、被覆対象物を断熱対象物、構造体を断熱構造体とそれぞれいうこともできる)。それと共に、当該構造体は、被覆対象物とエアロゲル層との接着性に優れるため、エアロゲル層が被覆対象物表面から脱離し難く、実用性にも優れるものである。このような利点から、本実施形態に係る構造体は、極低温容器、宇宙分野、建築分野、自動車分野、家電分野、半導体分野、産業用設備等における断熱材としての用途などに適用できる。さらに詳しくは、本実施形態に係る構造体は、自動車エンジン、電気炉等における断熱材としての用途などに適用できる。また、本実施形態に係る構造体は、断熱材としての用途の他に、撥水材、吸音材、静振材、触媒担持材等として利用することができる。
<被覆方法>
 本実施形態に係る被覆方法は、被覆対象物を金属元素を含む中間層で被覆する工程と、中間層をエアロゲル層で被覆する工程と、を備えるものである。なお、これらの工程を備える方法は、被覆対象物の表面を、中間層を介してエアロゲルにより処理する、表面処理方法ということもできる。
 被覆対象物を中間層で被覆する工程、及び中間層をエアロゲル層で被覆する工程については、それぞれ構造体の製造方法における、中間層形成工程及びエアロゲル層形成工程を参照することができる。本方法により、被覆対象物をエアロゲルの層で被覆することが可能となる。特に、被覆対象物表面を、中間層を介してエアロゲル層により被覆することで、被覆対象物とエアロゲル層との接着性が向上し、被覆対象物表面からのエアロゲル層の脱離等を抑制することができる。
 以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[被覆対象物]
 被覆対象物(基材)として、以下のアルミニウム板、ステンレス板、ポリイミド板、ガラス板、アルミナ板、PETフィルム及びガラス不織布を準備した。
アルミニウム板:A1035P(竹内金属箔粉工業株式会社製、製品名、寸法:300mm×300mm×0.5mm)
ステンレス板:SUS304(株式会社岩田製作所製、製品名、寸法:100mm×100mm×0.5mm)
ポリイミド板:べスペル(登録商標) SP-1(デュポン株式会社製、製品名、寸法:254mm×254mm×6.3mm)
ガラス板:S-1214(松浪硝子工業株式会社製、品番、寸法:26mm×76mm×1.3mm)
アルミナ板:AR-99.6(アスザック株式会社製、品番、寸法:300mm×300mm×0.5mm)
PETフィルム:コスモシャイン(登録商標) A4100(東洋紡株式会社、製品名、寸法:100mm×100mm×0.1mm)
ガラス不織布:MGP(登録商標)BMS-5(日本板硝子株式会社製、製品名、寸法:300mm×200mm×3mm)
[中間層]
 準備した各種被覆対象物上に、下記の要領で中間層を形成した。
(TA-8)
 有機チタン化合物であるオルガチックスTA-8(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名、テトライソプロピルチタネート)のイソプロピルアルコール希釈溶液(希釈後有効成分5質量%)を調製した。この液を、被覆対象物にエアーブラシ(アネスト岩田株式会社製、商品名:HP-CP)を用いて塗工した後、150℃で15分間乾燥させ、被覆対象物上に厚み1μmの中間層を形成した。
 なお、オルガチックスTA-8を用いて、上記と同様にしてアルミニウム板上に厚み1μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧10kV)により分析したところ、チタン元素の検出を確認した。
(ZA-45)
 有機ジルコニウム化合物であるオルガチックスZA-45(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名、ノルマルプロピルジルコネート)のプロパノール希釈溶液(希釈後有効成分5質量%)100gと、SO-25R(株式会社アドマテックス製、製品名、溶融シリカ)3gとを、200rpmで10分間スターラで撹拌し、調製液を得た。この液を、被覆対象物にエアーブラシを用いて塗工した後、200℃で1時間乾燥させ、被覆対象物上に厚み5μmの中間層を形成した。
 なお、オルガチックスZA-45及びSO-25Rを用いて、上記と同様にしてアルミニウム板上に厚み5μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧20kV)により分析したところ、ジルコニウム元素の検出を確認した。
(TC-401)
 有機チタン化合物であるオルガチックスTC-401(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名、チタンアセチルアセトネート)の2-プロパノール希釈溶液(希釈後有効成分65質量%)100gと、水酸化マグネシウム(和光純薬株式会社製、試薬、粒径0.6μm)10gとを、200rpmで、10分間スターラで撹拌し、調製液を得た。この液を、被覆対象物にバーコータを用いて塗工した後、90℃で30秒間乾燥させた。塗工と乾燥を8回繰り返した後、さらに150℃で2時間乾燥させ、被覆対象物上に厚み100μmの中間層を形成した。
 なお、オルガチックスTC-401及び水酸化マグネシウムを用いて、上記と同様にしてアルミニウム板上に厚み100μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧10kV)により分析したところ、チタン元素の検出を確認した。
(ZC-540)
 有機ジルコニウム化合物であるオルガチックスZC-540(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名、ジルコニウムモノアセチルアセテート)のトルエン希釈溶液(希釈後有効成分0.1質量%)を調製した。この液に被覆対象物をディップした後、200℃で1時間乾燥させ、被覆対象物上に厚み0.1μmの中間層を形成した。厚みは重量変化により計算した。
 なお、オルガチックスZC-540を用いて、上記と同様にしてステンレス板上に厚み0.1μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧20kV)により分析したところ、ジルコニウム元素の検出を確認した。
(TC-201)
 有機チタン化合物であるオルガチックスTC-201(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名、チタンオクチレングリコレート)のイソプロピルアルコール希釈溶液(希釈後有効成分0.01質量%)を調製した。この液に被覆対象物をディップした後、150℃で30分間乾燥させ、被覆対象物上に厚み0.01μmの中間層を形成した。厚みは重量変化により計算した。
 なお、オルガチックスTC-201を用いて、上記と同様にしてポリイミド板上に厚み0.01μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧10kV)により分析したところ、チタン元素の検出を確認した。
(AL-3001)
 有機アルミニウム化合物であるオルガチックスAL-3001(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名、アルミニウムセカンダリーブトキシド)のトルエン希釈溶液(希釈後有効成分1質量%)を調製した。この液に被覆対象物をディップした後、200℃で1時間乾燥させ、被覆対象物上に厚み0.1μmの中間層を形成した。厚みは重量変化により計算した。
 なお、オルガチックスAL-3001を用いて、上記と同様にしてポリイミド板上に厚み0.1μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧10kV)により分析したところ、アルミニウム元素の検出を確認した。
(TEOS:テトラエトキシシラン)
 容積50mLのガラス製サンプル瓶に、テトラエトキシシラン20gと10質量%の酢酸水溶液10gをとり、室温で30分撹拌して加水分解させた。この液を、被覆対象物にバーコータで塗工し、150℃で1時間乾燥させ、被覆対象物上に厚み1μmの中間層を形成した。
 テトラエトキシシランの加水分解物を用いて、上記と同様にしてアルミニウム板上に厚み1μmの層を形成した。この層に含まれる元素をEDX(加速電圧10kV)により分析したところ、ケイ素元素の検出を確認した。
 また、各中間層に対応する試験片を作製し、各中間層の吸水率を測定した。具体的には、アルミニウム板上に設けられた、20mm×20mm×0.5mmサイズに成形した各中間層の試験片を準備し、120℃の熱風乾燥機で1時間乾燥した後に吸水前質量を秤量した。その後、試験片を60℃、90%RHの恒温恒湿槽内に6時間放置した後に取り出し、吸水後質量を秤量した。試験片の吸水前質量及び吸水後質量から試験片の質量変化率を測定し、これを吸水率とした。測定結果を表1に示す。
 上記と同様に、各中間層に対応する試験片を作製し、各中間層の熱分解温度(5%重量減少する時の温度)を測定した。具体的には、アルミニウム板上に設けられた、20mm×20mm×0.5mmサイズに成形した各中間層の試験片を準備し、これを株式会社日立ハイテクサイエンス製の高温型示差熱熱重量同時測定装置(製品名:TG/DTA7300)に入れた。窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で試験片の重量を測定したところ、いずれの中間層についても、熱分解温度が300℃以上であった。
[ゾル塗液]
 エアロゲル層を形成するためのゾル塗液を、以下の要領で調製した。
(ゾル塗液1)
 シリカ粒子含有原料としてST-OXS(日産化学工業株式会社製、製品名、平均一次粒子径:5nm、固形分:10質量%)を100.0質量部、水を100.0質量部、メタノールを100.0質量部及び酸触媒として酢酸を0.10質量部混合し、これにケイ素化合物としてメチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:KBM-13)を80.0質量部及びジメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名:KBM-22)を40.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。これに、塩基触媒として5%濃度のアンモニア水を50.0質量部加えた。その後、60℃で2時間ゾルゲル反応させてゾル塗液1を得た。
(ゾル塗液2)
 シリカ粒子含有原料としてST-OXSを100.0質量部、水を200.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにケイ素化合物としてKBM-13を80.0質量部及びKBE-22(ジメチルジエトキシシラン、信越化学工業株式会社製、製品名)を30.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で3時間ゾルゲル反応させてゾル塗液2を得た。
(ゾル塗液3)
 シリカ粒子含有原料としてST-OXSを100.0質量部、水を200.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにケイ素化合物としてKBM-3063(ヘキシルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製、製品名)を80.0質量部及びKBE-22を50.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で5時間ゾルゲル反応させてゾル塗液3を得た。
(ゾル塗液4)
 シリカ粒子含有原料としてPL-2L(扶桑化学工業(株)製、製品名、平均一次粒子径:20nm、固形分:20質量%)を100.0質量部、水を50.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにケイ素化合物としてKBM-13を50.0質量部及び上記一般式(A)で表される構造を有するポリシロキサン化合物としてKF-6001(信越化学工業株式会社製、製品名)を50.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で5時間ゾルゲル反応させてゾル塗液4を得た。
(ゾル塗液5)
 シリカ粒子含有原料としてPL-2Lを100.0質量部、水を100.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにケイ素化合物としてKBM-13を80.0質量部、KBM-22を30.0質量部及びポリシロキサン化合物として上記一般式(B)で表される構造を有する両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物A」という)を20.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で5時間ゾルゲル反応させてゾル塗液5を得た。
 なお、上記「ポリシロキサン化合物A」は次のようにして合成した。まず、撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1Lの3つ口フラスコにて、両末端にシラノール基を有するジメチルポリシロキサン(モメンティブ社製、製品名:XC96-723)を100.0質量部、メチルトリメトキシシランを181.3質量部及びt-ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させた。その後、この反応液を、1.3kPaの減圧下、140℃で2時間加熱し、揮発分を除去することで、両末端2官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物A)を得た。
(ゾル塗液6)
 シリカ粒子含有原料としてST-OXS(日産化学工業株式会社製、製品名、平均一次粒子径:5nm、固形分:10質量%)を100.0質量部、水を100.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにケイ素化合物としてKBM-3063を80.0質量部及びポリシロキサン化合物として上記一般式(B)で表される構造を有する両末端3官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(以下、「ポリシロキサン化合物B」という)を60.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で2時間ゾルゲル反応させてゾル塗液6を得た。
 なお、上記「ポリシロキサン化合物B」は次のようにして合成した。まず、撹拌機、温度計及びジムロート冷却管を備えた1Lの3つ口フラスコにて、XC96-723を100.0質量部、テトラメトキシシランを202.6質量部及びt-ブチルアミンを0.50質量部混合し、30℃で5時間反応させた。その後、この反応液を、1.3kPaの減圧下、140℃で2時間加熱し、揮発分を除去することで、両末端3官能アルコキシ変性ポリシロキサン化合物(ポリシロキサン化合物B)を得た。
(ゾル塗液7)
 シリカ粒子含有原料としてST-OZL-35を100.0質量部、水を200.0質量部、酸触媒として酢酸を0.10質量部、カチオン系界面活性剤としてCTABを20.0質量部及び熱加水分解性化合物として尿素を120.0質量部混合し、これにケイ素化合物としてKBM-3063を80.0質量部及びKBM-22を50.0質量部加え、25℃で2時間反応させた。その後、60℃で1時間ゾルゲル反応させてゾル塗液7を得た。
(構造体の作製)
<実施例1~12>
 被覆対象物上に形成された中間層上に、以下の要領でエアロゲル層を形成した。これにより、被覆対象物とエアロゲル層とが、中間層を介して一体的に接合された構造体を作製した。各実施例における、被覆対象物、中間層及びエアロゲル層の組合せを表1に示す。
[エアロゲル層1]
 ゾル塗液1を、中間層上に、ゲル化後の厚みが50μmとなるようにエアーブラシ(アネスト岩田株式会社製、製品名:HP-CP)を用いて塗布し、60℃で30分ゲル化して構造体を得た。その後、得られた構造体を密閉容器に移し、60℃で12時間熟成した。
 その後、熟成した構造体を水2000mLに浸漬し、30分かけて洗浄を行った。次に、メタノール2000mLに浸漬し、60℃で30分かけて洗浄を行った。メタノールによる洗浄を、新しいメタノールに交換しながらさらに2回行った。次に、メチルエチルケトン2000mLに浸漬し、60℃で30分かけて溶媒置換を行った。メチルエチルケトンによる洗浄を新しいメチルエチルケトンに交換しながらさらに2回行った。洗浄及び溶媒置換された構造体を、常圧下にて、120℃で6時間乾燥することで、上記一般式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層1(被覆対象物に中間層を介して一体的に接合したエアロゲル層。以下同様。)を得た。
[エアロゲル層2]
 ゾル塗液1に代えてゾル塗液2を用いたこと以外は、「エアロゲル層1」に記載した方法と同様にして、上記一般式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層2を得た。
[エアロゲル層3]
 ゾル塗液1に代えてゾル塗液3を用いたこと以外は、「エアロゲル層1」に記載した方法と同様にして、上記一般式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層3を得た。
[エアロゲル層4]
 ゾル塗液1に代えてゾル塗液4を用いたこと以外は、「エアロゲル層1」に記載した方法と同様にして、上記一般式(1)及び(4)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層4を得た。
[エアロゲル層5]
 ゾル塗液1に代えてゾル塗液5を用いたこと以外は、「エアロゲル層1」に記載した方法と同様にして、上記一般式(3)、(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層5を得た。
[エアロゲル層6]
 ゾル塗液1に代えてゾル塗液6を用いたこと以外は、「エアロゲル層1」に記載した方法と同様にして、上記一般式(2)及び(4)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層6を得た。
[エアロゲル層7]
 ゾル塗液1に代えてゾル塗液7を用いたこと以外は、「エアロゲル層1」に記載した方法と同様にして、上記一般式(4)及び(5)で表される構造を有するエアロゲルから構成されるエアロゲル層7を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
<比較例1>
 中間層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム板上にエアロゲル層1を備える構造体を得た。
<比較例2>
 エアロゲル層1を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム板上に厚み1μmの中間層を備える構造体を得た。
<比較例3>
 エアロゲル層1に代えて、ウレタンフォーム層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム板上に中間層及びウレタンフォームをこの順に備える構造体を得た。なお、ウレタンフォームは、中間層上に発泡ウレタンフォーム(ヘンケルジャパン株式会社製、製品名:シスタ M5230)を厚みが50μmとなるように塗布することにより形成した。
 各比較例における、被覆対象物、中間層及びエアロゲル層又は他の被覆層の組合せを表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
<各種評価>
(断熱性評価)
 各例で得られた構造体を、エアロゲル層、中間層又は発泡ウレタンフォーム層が下面となるように、表面温度70℃のホットプレートに配置して加熱した。10分後に構造体の被覆対象物表面の温度をサーモグラフィ(株式会社アピステ製、製品名:赤外線サーモビュアFSV-1200-L16)で測定した。なお、加熱前の構造体温度及び室温は23℃であった。測定結果を表3に示す。
(難燃性評価)
 各例で得られた構造体のエアロゲル層又はウレタンフォーム層に対して、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に準じて接炎させて難燃性評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、エアロゲル層等を設けていない比較例2については評価を行わなかった。
(耐熱性評価)
 各例で得られた構造体を、エアロゲル層又は発泡ウレタンフォーム層が下面となるように、表面温度200℃のホットプレートに配置して加熱した。5分後に構造体を目視観察し、変形、変色、剥離等の外観変化の有無を確認した。目視観察で変化が無い場合を耐熱性良好、変形、変色、剥離等が生じた場合を耐熱性不良と評価した。評価結果を表3に示す。なお、エアロゲル層等を設けていない比較例2については評価を行わなかった。
(接着性評価)
 各例で得られた構造体の、エアロゲル層又はウレタンフォーム層に対し、JIS K-5600-5-6に従ってクロスカット試験を実施した。テープ引き剥がし後の判定で、下記分類0~2であるものを接着性良好、分類3~5であるものを接着性不良と評価した。評価結果を表3に示す。なお、エアロゲル層等を設けていない比較例2については評価を行わなかった。
・分類0(どの格子の目も剥がれがない)~分類2(層がカットの線に沿って、交差点において剥がれている。5%以上15%未満)
・分類3(層がカットの線に沿って、部分的、全面的に剥がれている。15%以上35%未満)~分類5(分類4(層がカットの線に沿って、部分的、全面的に大剥がれを生じている。15%以上35%未満)以上の剥がれ)
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 実施例では、断熱性、難燃性、耐熱性及び接着性の全てが良好であった。実施例の構造体を断熱性等の観点から考察すると、エアロゲル層を被覆層として設けることにより従来材料よりも厚みの薄い被覆層により対象物に断熱性等を付与することができる。さらに、実施例の構造体においては、対象物とエアロゲル層との接着性が良好であることから、エアロゲルの粉落ちを抑制でき、断熱構造体としての実用性及び信頼性を十分に確保することができる。一方、比較例では、断熱性、難燃性、耐熱性及び接着性のいずれかの特性が劣っており、実施例と同等の効果は得られなかった。
 1…構造体、3…被覆対象物、3a…被覆対象物の表面、4…中間層、4a…中間層の被覆対象物とは反対側の表面、5…エアロゲル層、L…外接長方形、P…シリカ粒子。

Claims (20)

  1.  被覆対象物と、該被覆対象物の表面を、金属元素を含む中間層を介して被覆するエアロゲル層と、を備える構造体。
  2.  前記中間層が、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料の熱処理物である、請求項1に記載の構造体。
  3.  前記金属元素がチタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の構造体。
  4.  前記エアロゲル層が、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含有するゾルの縮合物である湿潤ゲルの乾燥物から構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
  5.  前記ゾルがさらにシリカ粒子を含む、請求項4に記載の構造体。
  6.  前記シリカ粒子の平均一次粒子径が1~500nmである、請求項5に記載の構造体。
  7.  前記中間層の厚みが0.001~1000μmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造体。
  8.  前記中間層がさらに充填材を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造体。
  9.  前記被覆対象物が、金属、セラミック、ガラス及び樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造体。
  10.  有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、エアロゲル層接着用材料。
  11.  被覆対象物上に金属元素を含む中間層を形成する中間層形成工程と、
     前記中間層上にエアロゲル層を形成するエアロゲル層形成工程と、
    を備える、構造体の製造方法。
  12.  前記中間層形成工程が、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料を前記被覆対象物と接触させた後、該材料を熱処理する工程を含む、請求項11に記載の製造方法。
  13.  前記金属元素がチタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項11又は12に記載の製造方法。
  14.  前記エアロゲル層形成工程が、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種、を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥する工程を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法。
  15.  前記ゾルがさらにシリカ粒子を含む、請求項14に記載の製造方法。
  16.  被覆対象物を金属元素を含む中間層で被覆する工程と、
     前記中間層をエアロゲル層で被覆する工程と、
    を備える、被覆対象物の被覆方法。
  17.  中間層で被覆する前記工程が、有機金属化合物及び有機金属化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種を含む中間層形成材料を前記被覆対象物と接触させた後、該材料を熱処理する工程を含む、請求項16に記載の被覆方法。
  18.  前記金属元素がチタン、ジルコニウム、アルミニウム及びケイ素からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項16又は17に記載の被覆方法。
  19.  エアロゲル層で被覆する前記工程が、加水分解性の官能基又は縮合性の官能基を有するケイ素化合物、及び、加水分解性の官能基を有するケイ素化合物の加水分解生成物からなる群より選択される少なくとも一種、を含有するゾルから生成された湿潤ゲルを乾燥する工程を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の被覆方法。
  20.  前記ゾルがさらにシリカ粒子を含む、請求項19に記載の被覆方法。
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