JP2018126088A - 害虫防除剤スプレー - Google Patents

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Abstract

【課題】害虫防除成分に対して特定量の乳化剤を含有する水性製剤を、長期間安定して噴射することが継続的に可能な害虫防除剤スプレーを提供する。【解決手段】(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有し、前記(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲であり、かつ、スプレー容器内の流路シール部材30が、イソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されている。【選択図】図3

Description

本発明は、長期間安定した噴射を継続して得ることができる、害虫防除剤スプレーに関する。
従来、害虫防除剤スプレーは、ヒトや哺乳動物の皮膚や衣類などに使用し、蚊のような吸血昆虫に対する忌避効果を得るものや、衛生害虫または衛生害虫の生息場所に噴射して殺虫効果を得るものとして、広く知られている。
忌避効果を得るための害虫防除剤スプレーは、皮膚に直接使用することはもとより、直接または間接的に皮膚と接触する衣類に噴射して使用することも多い。そのため、ヒトの皮膚に対する刺激性の軽減や使用感の改善を目的とした様々な特許が出願され、中でも、組成物中に皮膚に優しい水を配合した水性害虫忌避剤の特許も出願されている。例えば、下記特許文献1には、害虫忌避成分、水溶性溶剤及び水を配合し、水溶性溶剤と水の配合比率を規定することにより、皮膚感触と臭気を改善する試みを、また、下記特許文献2には、害虫忌避成分、アルコール又はグリコール、界面活性剤及び水を配合し、害虫忌避成分の安定化と、さらに敏感な皮膚に対する刺激を軽減する試みを開示している。
害虫防除成分の多くは油溶性であるため、安定した害虫防除水性製剤を得るためには、水溶性溶剤をある程度配合する必要があり、水溶性溶剤の配合量を減らすためには界面活性剤の配合が必要となる。一方、皮膚に対する刺激性を軽減するためには、水溶性溶剤および界面活性剤の配合量をともに低減する必要があるが、それでは安定した害虫防除水性製剤を得ることは非常に困難であったため、新たな処方の開発が求められていた。
特開2003−192503号公報 特開平11−349409号公報
本発明者は、害虫防除成分に対して特定量の乳化剤を配合することにより、水溶性溶剤の配合を必須とすることなく安定した水性製剤を得ることを見出したが、この水性製剤をスプレー容器に入れ噴射すると、噴射不良が発生しやすいことが明らかとなった。
そこで、本発明はこの状況に鑑みてなされたものであり、害虫防除成分に対して特定量の乳化剤を含有する水性製剤を、長期間安定して噴射することが継続的に可能な害虫防除剤スプレーの提供を課題としている。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分とを特定の配合重量比率で配合し、これを(C)水で希釈した害虫防除剤組成物を、スプレー容器内の流路シール部材がイソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されているスプレー容器に入れ、害虫防除剤スプレーとすることにより、噴射不良を発生することなく、長期間安定した噴射を継続して得ることが可能であることを見出し、上記課題を解決するに至ったものである。
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有し、
前記(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲であり、かつ、
スプレー容器内の流路シール部材が、イソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されていることを特徴とする、
害虫防除剤スプレー。
2.(A)乳化剤が、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、または、水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子より選択される1種以上であることを特徴とする、1.に記載の害虫防除剤スプレー。
3.(B)害虫防除成分が、ピレスロイド系化合物、ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルエステルから選択される1種以上であることを特徴とする、1.または2.に記載の害虫防除剤スプレー。
本発明の害虫防除剤スプレーは、噴射不良を発生することなく、長期間安定した噴射を継続して得ることができる。
本発明の害虫防除剤スプレーは、噴射して使用した後、ある程度使用しない期間があったとしても、次に使用する時にも、前回使用した時と同じように快適な噴射を得ることができるため、虫除けスプレー等として好適に使用することができる。
トリガー式スプレー容器の1例を示す正面図である。 ミスト式スプレー容器の1例を示す正面図である。 トリガー式スプレー容器における流路シール部材を示す半断面図である。 ミスト式スプレー容器における流路シール部材を示す半断面図である。
以下、本発明の害虫防除剤スプレーについて詳細に説明する。
本発明の害虫防除剤スプレーは、特定量の(A)乳化剤を含有するものである。
<(A)成分について>
本発明における(A)乳化剤は、(B)害虫防除成分と併用できることが知られている公知の乳化剤から適宜選択することができ、その配合量は、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲であり、この範囲内で安定した乳化状態が得られるものであれば、その種類は限定されない。特に、本発明の(A)乳化剤として、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体(以下、「閉鎖小胞体」ということがある。)、または、水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子(以下、「重縮合ポリマーの粒子」ということがある。)より選択される1種以上のものであることが、安定した乳化状態を得るために好ましい。
本発明の(A)乳化剤として、閉鎖小胞体または重縮合ポリマーの粒子は、乳化性能に極めて優れているため、これを含有する組成物において、(C)水の量は20〜99重量%の範囲から幅広く選択することができ、乳化の形態や(B)害虫防除成分の量に応じて適宜選択することができる。また、(A)乳化剤として、閉鎖小胞体又は重縮合ポリマーの粒子の配合量は、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50内で適宜設定されるものであり、その範囲内においては、害虫防除剤スプレー全量に対して、合計で0.0001重量%以上、5重量%以下であってよく、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.75重量%以下という少量でも、乳化状態を維持することができる。なお、上記量は、いずれも固形分含量である。また、乳化の構造は、特に限定されないがO/W型のエマルション構造が好ましい。
本発明における(A)乳化剤としての閉鎖小胞体は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成される。閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質としては、下記の一般式(1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体もしくは一般式(2)で表されるようなジアルキルアンモニウム誘導体、トリアルキルアンモニウム誘導体、テトラアルキルアンモニウム誘導体、ジアルケニルアンモニウム誘導体、トリアルケニルアンモニウム誘導体、またはテトラアルケニルアンモニウム誘導体のハロゲン塩の誘導体を採用するとよい。
Figure 2018126088
式中、エチレンオキシドの平均付加モル数であるEは、3〜100である。Eが過大になると、両親媒性物質を溶解する良溶媒の種類が制限されるため、親水性ナノ粒子の製造の自由度が狭まる。Eの上限は50が好ましく、40がより好ましい。また、Eの下限は5が好ましい。
Figure 2018126088
式中、R及びRは、各々独立して炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基であり、R及びRは、各々独立して水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、XはF、Cl、Br、I又はCHCOOである。
さらに、本発明における(A)乳化剤としての閉鎖小胞体は、リン脂質やリン脂質誘導体等を採用してもよい。リン脂質としては、下記の一般式(3)で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長14のDMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)、炭素鎖長16のDPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−choline)が採用可能である。
Figure 2018126088
また、下記の一般式(4)で示される構成のうち、炭素鎖長12のDLPG(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩、炭素鎖長14のDMPG(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩、炭素鎖長16のDPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phospho−rac−1−glycerol)のNa塩又はNH塩を採用してもよい。
Figure 2018126088
両親媒性物質としては、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。また、両親媒性物質は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の(A)乳化剤としての重縮合ポリマーの粒子における重縮合ポリマーは、特に限定されず、天然高分子または合成高分子のいずれであってもよく、用途に応じて適宜選択されてよい。ただし、安全性に優れ、一般的に安価である点で、天然高分子が好ましく、乳化機能に優れる点で以下に述べる糖ポリマーがより好ましい。なお、粒子とは、重縮合ポリマーが単粒子化したもの、またはその単粒子同士が連なったもののいずれも包含する一方、単粒子化される前の凝集体(網目構造を有する)は包含しない。重縮合ポリマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記糖ポリマーは、セルロース、デンプン等のグルコシド構造を有するポリマーである。例えば、リボース、キシロース、ラムノース、フコース、グルコース、マンノース、グルクロン酸、グルコン酸等の単糖類の中からいくつかの糖を構成要素として微生物が産生するもの、キサンタンガム、アラビアガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインスシードガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、シロキクラゲ多糖類等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子が挙げられる。糖ポリマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
糖ポリマー粒子としては、寒天等の多糖類混合物、疎水変性アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グァーガムまたはこれらの塩を用いることが好ましい。
本発明の害虫防除剤スプレーにおける(A)乳化剤は、乳化状態が安定化しやすく、ヒトや動物に対する安全性が高いことより、疎水変性アルキルセルロースが特に好ましい。
疎水変性アルキルセルロースは、水溶性セルロースエーテル誘導体に、疎水性基を導入した化合物であり、下記一般式(5)で表される。
Figure 2018126088
式中、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、−[CHCHO]H、−[CHCH(CH)O]H、−CHCH(OH)CHO−A、−[CHCH(OH)CHO]−A、又は、−[CHCHO]CHCH(OH)CHO−Aから選択される1種以上の基であるが、すべて同時に水素原子、又は、炭素数1〜4のアルキル基である場合を除き、必ず、−CHCH(OH)CHO−A、−[CHCH(OH)CHO]−A、−[CHCHO]CHCH(OH)CHO−Aから選択される1種以上の基を含有する。n’は50〜5000の整数、mは1〜10の整数、Aは疎水性基を示す。
本発明の害虫防除剤スプレーに配合する(A)乳化剤として、一般式(5)で表される疎水変性アルキルセルロースが好ましく、中でも、式中の「A」で表される疎水性基として、アルキル基が好ましく、炭素数10〜28のアルキル基がより好ましく、特に、炭素数14〜22のアルキル基が好ましく、具体的にはステアロイル基が最も好ましい。
一般式(5)の式中「A」で表される疎水性基がステアロイル基である疎水変性アルキルセルロースの具体例として、例えば、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。この化合物は、サンジェロースの商品名で大同化成工業株式会社から市販されており、このような市販品を本発明の害虫防除剤スプレーの配合成分(A)乳化剤として使用することも可能である。その配合量は、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲内で適宜設定されるものであり、その範囲内においては、害虫防除剤スプレー全量に対し、合計で0.0001重量%以上、5重量%以下であってよく、好ましくは、0.001重量%以上、1.0重量%以下であり、より好ましくは、0.005重量%以上、0.75重量%以下であり、さらに好ましくは、0.01重量%以上、0.5重量%以下であり、特に好ましくは、0.01重量%以上、0.3重量%以下である。この配合量の範囲であれば、(B)害虫防除成分を水中において安定な乳化状態とすることができるので好適である。
<(B)成分について>
本発明における(B)害虫防除成分は、例えば、害虫防除活性を有する以下の公知化合物群を挙げることができ、これらは1種または2種以上を併用することができる。
(1)ピレスロイド系化合物
アクリナトリン、アレスリン、ベータ−シフルトリン、ビフェントリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、エンペントリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フタルスリン、フルシトリネート、フルフェンプロックス、フルメトリン、フルバリネート、ハルフェンプロックス、ペルメトリン、プラレトリン、ピレトリン、シラフルオフェン、テフルトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、テトラメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ラムダシハロトリン、ガンマシハロトリン、フラメトリン、タウフルバリネート、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、レスメトリン等。なお、これらの化合物には、光学異性体、立体異性体等が存在する場合があるが、本発明は、これら異性体の単独又は2以上の異性体を任意の割合で含む混合物をも含むものである。
(2)有機リン系化合物
アセフェート、リン化アルミニウム、ブタチオホス、カズサホス、クロルエトキシホス、クロルフェンビンホス、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、シアノホス、ダイアジノン、DCIP、ジクロフェンチオン、ジクロルボス、ジメトエート、ジメチルビンホス、ジスルホトン、EPN、エチオン、エトプロホス、エトリムホス、フェンチオン、フェニトロチオン、ホスチアゼート、ホルモチオン、リン化水素、イソフェンホス、イソキサチオン、マラチオン、メスルフェンホス、メチダチオン、モノクロトホス、ナレッド、オキシデプロホス、パラチオン、ホサロン、ホスメット、ピリミホスメチル、ピリダフェンチオン、キナルホス、フェントエート、プロフェノホス、プロパホス、プロチオホス、ピラクロホス、サリチオン、スルプロホス、テブピリムホス、テメホス、テトラクロルビンホス、テルブホス、チオメトン、トリクロルホン、バミドチオン、フォレート等。
(3)カーバメート系化合物
アラニカルブ、ベンダイオカルブ、ベンフラカルブ、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ、フェノチオカルブ、フェノキシカルブ、フラチオカルブ、イソプロカルブ、メトルカルブ、メソミル、メチオカルブ、オキサミル、ピリミカルブ、プロポキスル、XMC、チオジカルブ、キシリルカルブ、アルジカルブ等。
(4)ネライストキシン系化合物
カルタップ、ベンスルタップ、チオシクラム、モノスルタップ、ビスルタップ等。
(5)ネオニコチノイド系化合物
イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、チアメトキサム、チアクロプリド、ジノテフラン、クロチアニジン等。
(6)ベンゾイル尿素系化合物
クロルフルアズロン、ビストリフルロン、ジアフェンチウロン、ジフルベンズロン、フルアズロン、フルシクロクスロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、ルフェヌロン、ノバルロン、ノバフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、トリアズロン等。
(7)フェニルピラゾール系化合物
アセトプロール、エチプロール、フィプロニル、バニリプロール、ピリプロール、ピラフルプロール等。
(8)Btトキシン系化合物
バチルス・チューリンゲンシス菌由来の生芽胞および産生結晶毒素、並びにそれらの混合物。
(9)ヒドラジン系化合物
クロマフェノジド、ハロフェノジド、メトキシフェノジド、テブフェノジド等。
(10)有機塩素系化合物
アルドリン、ディルドリン、ジエノクロル、エンドスルファン、メトキシクロル等。
(11)忌避系化合物
ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルエステル(以下、「イカリジン」と称する。)、p−メンタン−3,8−ジオール、ジメチルフタレート、ユーカリプトール、α−ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、カラン−3,4−ジオール等。
本発明の害虫防除剤スプレーは、(B)害虫防除成分として、ピレスロイド系化合物、忌避系化合物から選択される1種以上の成分を含有することが好ましく、ピレスロイド系化合物、ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、イカリジンから選択される1種以上の成分を含有することがより好ましい。
本発明の害虫防除剤スプレーに配合される(B)害虫防除成分の含有量は、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲で適宜設定されるものであり、その範囲内においては、害虫防除剤スプレー全量に対して、0.001〜50重量%含有することが好ましく、0.01〜30重量%含有することがより好ましい。
本発明の害虫防除剤スプレーは、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲で含有するものであるが、その配合重量比率は、1:1000〜1:50の範囲が好ましく、1:500〜1:50の範囲がより好ましい。
本発明の害虫防除剤スプレーの水性害虫防除剤組成物を調製するにあたっては、成分(C)の水以外の公知の液体担体のほか、ガス状担体、固体担体、その他製剤用補助剤を配合することが可能である。
液体担体としては、例えば、芳香族または脂肪族炭化水素類(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン、流動パラフィン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、乳酸エチル、安息香酸エチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、ヘテロ環系溶剤(スルホラン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレン等)、植物油(大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)が挙げられる。成分(C)の水以外の液体担体は、乳化状態を壊さない程度の量で配合することができる。
また、ガス状担体としては、例えば、ブタンガス、フロンガス、(HFO、HFC等の)代替フロン、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、および炭酸ガスが挙げられ、固体担体としては、例えば、粘土類(カオリン、珪藻土、ベントナイト、クレー、酸性白土等)、合成含水酸化珪素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、多孔質体等が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、固着剤、分散剤、溶解助剤および安定剤等、具体的には例えばカゼイン、ゼラチン、多糖類(でんぷん、アラビアガム、セルロース誘導体、アルギン酸等)、リグニン誘導体、糖類、合成水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等)、安息香酸エステルや塩類、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、およびBHA(2−tert−ブチル−4−メトキシフェノールと3−tert−ブチル−4−メトキシフェノールとの混合物)が挙げられる。
本発明では、さらに必要に応じて共力剤、防錆剤、防腐剤、pH調整剤、香料等の成分を適宜添加し得る。これらの成分としては、この分野で慣用されているものを使用することができ、具体的には、共力剤としてはピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロペニルエーテル、MGK264、サイネピリン等を、防錆剤としてはカーレンNo.955、No.906、No.954、No.958、No.970(「カーレン」は、三洋化成工業株式会社の登録商標である。)等を、防腐剤としてはパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、イソチアゾリノン、サリチル酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム等を、pH調整剤としては酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機酸類やリン酸等の無機酸類、その塩類をそれぞれ例示できる。防腐剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノールが好ましく、中でも、フェノキシエタノールがより好ましい。pH調整剤としては、アスコルビン酸、クエン酸、これらの塩類が好ましく、中でも、クエン酸とクエン酸ナトリウムの混合物がより好ましい。
<スプレー容器について>
本発明の害虫防除剤スプレーは、(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を使用して製剤化し、得られた液体製剤をスプレー容器に充填することにより、スプレー剤として使用することができる。スプレー容器としては、スプレー容器内の流路シール部材が、イソプレンイソブチレンラバー(以下、「IIR」という場合がある。)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されていれば、限定されるものではない。
スプレー容器としては、液体製剤を容易に充填することができ、スプレーする機能を有するものであればよいが、汎用性やスプレー精度の高さを考慮すると、以下の2つのスプレー容器、詳しくは、トリガー式スプレー容器またはミスト式スプレー容器が好ましく、特に、トリガー式スプレー容器が好ましい。
(1)トリガー式スプレー容器:この容器は、内容物を充填する容器本体の口部にピストル状のトリガー式スプレー装置が装着されたものであり、大気圧でスプレーを操作でき、スプレー容器として汎用性の高いものである。ここでいうトリガー式スプレー容器には、スプレー機能を高めるために、トリガー式スプレー容器の一部を改良したものも全て含まれる。
トリガー式スプレー容器の1例を図1に正面図にて示す。このトリガースプレー容器10は、液体製剤Lを収容する容器本体11と、この容器本体の頸部12に取付けられたトリガースプレー部材13とからなっている。トリガースプレー部材13は、容器本体内の液体製剤Lを外部に噴射する噴射機構15と、この噴射機構を手の握力で駆動するためのトリガー機構16とを有し、容器本体11の底部付近まで延びたチューブ19が取り付けられている。このトリガースプレー容器10は、トリガー機構16を液体製剤Lの噴射方向と反対方向に引くことにより、噴射口14から液体製剤Lを噴射することができる。トリガー式スプレー容器は、トリガー機構16を頸部12近くまで引いて噴射することが容易であり、また狭い室内の低位置や手前に向けて噴射する場合などにも、手首を不自然に捻ったり、容器を極端に傾けたり倒置したりせずに、さまざまな角度で容易に液体を噴射することができる。
(2)ミスト式スプレー容器:このスプレー容器は、大気圧でスプレーでき、加圧ガスなどを必要とせず、かつ容器構造も比較的単純であるので安全性が高く、携帯用に向くスプレー容器である。構造は吸い上げ式のチューブを装着した噴射機構と、これを固定し、内容物を充填するねじ式容器からなる。
ミスト式スプレー容器の1例を図2に正面図にて示す。このミスト式スプレー容器20は、液体製剤Lを収容する容器本体21と、この容器本体の頸部22に取付けられた噴射機構25とからなっている。この噴射機構25は、噴射口24を有する噴射ボタン28を備えており、容器本体21の底部付近まで延びたチューブ29が取り付けられている。このミスト式スプレー容器20は、噴射ボタン28を下に押すことにより、噴射口24から液体製剤Lを噴射することができる。
<噴射不良について>
本発明の(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有する害虫防除剤組成物は、市販されている従来から知られたスプレー容器に充填した場合に噴射不良が発生した。この原因を検討したところ、当該スプレー容器の流路内を構成する部材が、本発明の害虫防除剤組成物により膨潤または変形してしまい、噴射不良を引き起こすことが判明した。
この噴射不良を詳しく説明するため、まずは、スプレー容器の噴射の仕組みについて説明する。
スプレー容器は、噴射機構の流路内にある液体を手動で加圧することにより、噴射口からスプレー容器内の液体を一定量噴射させるものである。噴射の仕組みを図1のトリガー式スプレー容器10で簡単に説明すると、トリガー機構16を握ることにより噴射機構15内が負圧化され、容器本体11中の液体製剤Lが噴射機構15の流路内に流入し、再び、トリガー機構16を握ることにより、流路内の液体製剤Lが加圧され、流路内の液体製剤Lが噴射口14から噴射するものである。ミスト式スプレー容器についても、図2中の噴射ボタン28を押すことにより噴射機構25内が負圧化される点以外は、同様の仕組みである。
ここで重要なことは、噴射機構内が1度負圧化されると、噴射機構の流路内にスプレー容器に充填した液体により常時満たされるようになる点である。そのため、スプレー容器に充填した液体の種類や含有物によっては、流路内を構成する部材を徐々に膨潤または変形させ、結果的に噴射不良を引き起こす可能性がある。本発明の害虫防除剤組成物は、市販の害虫防除剤に比べて乳化剤の配合量が極めて少ないため、市販の害虫防除剤では良好な噴射が得られるスプレー容器に充填した場合でも、噴射不良が発生する可能性が考えられる。
そこで、噴射不良を起こしたスプレー容器を詳細に検討したところ、スプレー容器の流路内を構成する部材、詳しくは流路シール部材が、NBR(Nitrile Butadiene Rubber)により構成されているスプレー容器において、高い頻度で噴射不良が発生することが明らかとなった。しかも、汎用されているスプレー容器の多くが、流路シール部材がNBRにより構成されていることも判明した。
<スプレー容器内の流路シール部材について>
本発明の害虫防除剤スプレーにおけるスプレー容器内の流路シール部材とは、噴射機構内に存在し、噴射機構内が負圧化された時に、スプレー容器に充填した液体が噴射機構の流路内に一定量保持される空間において、流路内の液体漏出防止機能を有する部材を意味する。
本発明の流路シール部材について、その1例を図3または図4に半断面図にて示す。図3は、トリガースプレー容器内の流路シール部30を、図4は、ミスト式スプレー容器内の流路シール部40を示す半断面図である。
本発明の流路シール部材は、イソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されているものである。これは、スプレー容器内の流路シール部材を構成できる素材を種々検討し、本発明の害虫防除剤組成物を充填した時にも噴射不良を起こさない素材を選抜した結果、イソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されている場合においてのみ、本発明の害虫防除剤組成物により膨潤または変形を受けることがなく、正常な噴射が得られることが確認でき、本発明を完成するに至ったものである。流路シール部材がこれらの素材により構成されていることにより、本発明の害虫防除剤スプレーは、噴射不良の発生がなく、長期間安定して噴射することが継続的に可能となる。特に、流路シール部材がポリプロピレンにより構成されている本発明の害虫防除剤スプレーは、噴射不良を引き起こすことなく、長期間安定した噴射を継続的に得るうえで特に好ましい。
<配合可能な薬効成分>
本発明の害虫防除剤スプレーを虫除けスプレーとして使用する場合には、ヒトの皮膚に間接的または直接的に触れることもあるため、皮膚に潤いを与えるなどの薬効成分を、乳化状態を壊さない範囲で適宜配合してもよい。これら薬効成分としては、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エチナシ葉エキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、コンフリーエキス、コケモモエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、スイカズラエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、トマトエキス、納豆エキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノ蜂蜜、トウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス等が挙げられる。
本発明の害虫防除剤スプレーは、ヒトや哺乳動物の皮膚や衣類に直接噴射して使用するか、蚊などの吸血昆虫を防除したい屋内空間や車内、これら空間にあるカーテンやソファー等に噴射して使用する。
本発明の害虫防除剤スプレーは、噴射不良を起こすことなく、長期間安定した噴射を継続的に得ることができるため、噴射して使用した後、ある程度使用しない期間があったとしても、次に使用する時にも、前回使用した時と同じように快適な噴射を得ることができる。これにより、本発明の害虫防除剤スプレーは、虫除けスプレーとして好適に使用することが可能である。
以下、製剤例及び試験例等により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
まず、本発明の(A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有する害虫防除剤組成物の製剤例を示す。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
<試験検体>
表1に示す組成において、液体製剤(実施検体1〜4、比較検体)を調製し、それぞれ安定した乳化状態であることを確認した。
比較検体は、ディートを含有する一般的な液体製剤処方である。また、疎水変性アルキルセルロースは、市販されているステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用した。
Figure 2018126088
<噴射確認試験>
上記試験検体(実施検体1〜4、比較検体)を下記に示す市販スプレー容器A〜Eに充填したものを3回噴射し、流路内が試験検体により満たされた状態として、40℃で12時間静置後、試験検体の温度が25℃になった時点で、噴射可能であるかを確認した。
スプレー容器A:トリガー式スプレー(流路シール部材:ポリプロピレン)
スプレー容器B:トリガー式スプレー(流路シール部材:NBR)
スプレー容器C:ミスト式スプレー(流路シール部材:ポリプロピレン)
スプレー容器D:ミスト式スプレー(流路シール部材:NBR)
スプレー容器E:ミスト式スプレー(流路シール部材:イソプレンイソブチレンラバー)
問題なく噴射できた場合には「〇」、噴射不良であった場合には「×」として、試験結果を表2に示す。表2中の「PP」、「NBR」、「IIR」は流路シール部材がポリプロピレン、NBR(Nitrile Butadiene Rubber)、イソプレンイソブチレンラバーであることを意味している。
Figure 2018126088
表2の結果より、本発明の害虫防除剤の液体製剤処方は、ディートを含有する一般的な液体製剤処方と異なり、流路シール部材がNBRで構成されているスプレー容器(B、D)では、噴射不良が発生することが確認された。一方、流路シール部材がポリプロピレンまたはイソプレンイソブチレンラバーで構成されているスプレー容器(A、C、E)では、噴射不良が発生することなく、安定した噴射が得られることが明らかとなった。
また、実施検体を充填したスプレー容器B、Dを分解したところ、NBRにより構成される流路シール部材が、未使用品と比べて変形していることが確認された。
これらの結果より、本発明の害虫防除剤スプレーは、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲とする(A)乳化剤の配合量が非常に少ない組成物であるために、一般的な液体製剤処方とは異なり、流路シール部材であるNBRが変形してしまい、それにより流路内の閉塞や液体漏出が起きて、噴射不良が発生するものと考えられる。一方、(A)乳化剤の配合量が非常に少ない本発明の害虫防除剤スプレーは、流路シール部材がポリプロピレンやイソプレンイソブチレンラバーで構成されているスプレー容器であれば、噴射不良を引き起こすことなく、安定した噴射が得られることが確認された。
<流路シール部材の変形等の確認試験>
上記表1の実施検体2を、上記市販スプレー容器A、D、Eおよび下記に示す市販スプレー容器F、Gに充填したものを3回噴射し、流路内が実施検体により満たされた状態として、40℃で12時間静置後、スプレー容器を分解し、流路シール部材を目視確認した。流路シール部材が変形している場合には、変形している部分について、未使用品と比較した変形率(%)を算出した。
スプレー容器F:トリガー式スプレー(流路シール部材:ポリオキシメチレン)
スプレー容器G:トリガー式スプレー(流路シール部材:ポリエチレン)
試験結果を表3に、目視による変形が認められない場合には「〇」、変形が認められた場合には「×」として示した。また、流路シール部材の一番太い部分の直径を計測し、試験前後の変形率(%)を算出し、表3に示した。
表3中の「PP」、「NBR」、「IIR」、「POM」、「PE」は流路シール部材がポリプロピレン、NBR(Nitrile Butadiene Rubber)、イソプレンイソブチレンラバー、ポリオキシメチレン、ポリエチレンであることを意味している。
Figure 2018126088
表3の結果より、本発明の害虫防除剤組成物の液体製剤処方は、NBRにより構成された流路シール部材を大きく変形させることが明らかとなった。このため、NBRにより構成された流路シール部材は、本来の機能を果たすことができなくなり、流路内の閉塞や液体漏出が起こり、噴射不良が発生したものと考えられる。
一方、本発明の害虫防除剤組成物の液体製剤処方は、ポリプロピレン、イソプレンイソブチレンラバー、ポリオキシメチレン、ポリエチレンの何れかにより構成された流路シール部材を変化させない、もしくは、ほとんど変化させないことが明らかとなった。詳しく説明すると、ポリプロピレン、イソプレンイソブチレンラバー、ポリオキシメチレン、ポリエチレンの何れかにより構成された流路シール部材全てにおいて、目視による変形は認められなかった。また、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリエチレンの何れかにより構成された流路シール部材は、変形率が1%以下と小さいことが確認された。また、イソプレンイソブチレンラバーにより構成された流路シール部材は、変形率が10%未満であり、変形率(%)としては許容範囲内であることが確認できた。
この結果より、(A)乳化剤の配合量が非常に少ない本発明の害虫防除剤スプレーは、流路シール部材がポリプロピレン、イソプレンイソブチレンラバー、ポリオキシメチレン、ポリエチレンの何れか1種以上で構成されているスプレー容器を採用することにより、噴射不良を引き起こすことなく、長期間安定した噴射を継続的に得られることが明らかとなった。
<処方例>
以下に処方例を示す。
下記1〜6の成分を均一に混合溶解し、本発明の害虫防除剤組成物を調製した。なお、精製水により全量100.0部とした。
1.(A)サンジェロース 0.04部
2.(B)ディート 10.0 部
3. 防腐剤 0.5 部
4. pH調整剤 0.1 部
5. 香料 0.1 部
6.(C)精製水 残部
得られた本発明の害虫防除剤組成物を、上記スプレー容器Aに充填し、本発明の害虫防除スプレーとした。
本発明の害虫防除剤組成物は、(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲とする(A)乳化剤の配合量が非常に少ない組成物であるために、一般的な害虫防除成分を含有する液体製剤処方とは異なり、一部のスプレー容器では噴射不良が発生する。本発明は、当該害虫防除剤組成物における固有の問題を解決するためには、スプレー容器内の流路シール部材イソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されているものとすることにより、噴射不良を起こすことなく、長期間安定した噴射を継続的に得ることができることを見出し、発明を完成させたものである。すなわち、本発明が奏する効果は、本発明者が多くの実験を行い初めて確認した格別顕著な効果である。
本発明の害虫防除剤スプレーは、(A)乳化剤の配合量が非常に少なく、水溶性溶剤の配合を必須としない安定な水性製剤であるため、虫除けスプレーとしてヒトの皮膚や衣類に直接噴射しても、刺激が少なく安全性が高いので安心して使用することができ、かつ、長期間安定な噴射も得ることができるため好適である。
10:トリガースプレー容器
20:ミスト式スプレー容器
11、21:容器本体
12、22:容器本体の頸部
13:トリガースプレー部材
14、24:噴射口
15、25:噴射機構
16:トリガー機構
28:噴射ボタン
19、29:チューブ
30、40:流路シール部
L:液体製剤

Claims (3)

  1. (A)乳化剤、(B)害虫防除成分および(C)水を含有し、
    前記(A)乳化剤と(B)害虫防除成分の配合重量比率が1:10000〜1:50の範囲であり、かつ、
    スプレー容器内の流路シール部材が、イソプレンイソブチレンラバー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオキシメチレンの何れか1種以上で構成されていることを特徴とする、
    害虫防除剤スプレー。
  2. (A)乳化剤が、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体、または、水酸基を有する重縮合ポリマーの粒子より選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の害虫防除剤スプレー。
  3. (B)害虫防除成分が、ピレスロイド系化合物、ディート、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボン酸1−メチルプロピルエステルから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の害虫防除剤スプレー。
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