JP2013230466A - 混合エマルション組成物の安定化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異なる油性成分を混合させても分離、反応することなく経時的に安定な混合エマルション組成物を得るための、混合エマルション組成物安定化方法を提供する。
【解決手段】自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性化合物により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤を用い、複数の被乳化油性成分ごとにエマルション組成物を調製し、これら複数のエマルション組成物を混合させることにより安定な混合エマルション組成物を得る、混合エマルション組成物の安定化方法。該両親媒性物質はポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体の内でエチレンオキシドの平均付加数が5〜100である誘導体であり、該糖ポリマーは多糖類もしくは、多糖類誘導体から選ばれた1又は2以上のものである。
【選択図】なし
【解決手段】自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性化合物により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤を用い、複数の被乳化油性成分ごとにエマルション組成物を調製し、これら複数のエマルション組成物を混合させることにより安定な混合エマルション組成物を得る、混合エマルション組成物の安定化方法。該両親媒性物質はポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体の内でエチレンオキシドの平均付加数が5〜100である誘導体であり、該糖ポリマーは多糖類もしくは、多糖類誘導体から選ばれた1又は2以上のものである。
【選択図】なし
Description
本発明は、複数種類のエマルション組成物を互いに混合して形成される混合エマルション組成物の安定化方法に関する。
従来、機能性油性基剤を水に乳化分散させる場合には、機能性油性基剤の所要HLBや顆粒表面の性質に応じて界面活性剤を選択し、乳化分散 を行うようにしていた。また、乳化剤として用いられる界面活性剤の所要HLB値は、O/W型エマルションを作る場合とW/O型エマルションを作る場合とのそれぞれに応じて使い分ける必要があり、しかも、熱安定性や経時安定性が十分でないため、多種多様な界面活性剤を混合して用いていた。
しかしながら、従来の界面活性剤を用いた乳化法では、油と水との界面に界面活性剤が吸着し、その界面エネルギーを低下させることを乳化・分散法の基本としていたので、その界面張力を低下させるために多量の乳化分散剤を必要とするものであり、また、最適な乳化剤を選択するために非常に煩雑かつ多大な労力を有し、まして、多種類の油が混在していると、安定に乳化させることは殆ど不可能であった。
そこで、本発明者らは、油/両親媒性化合物/水系の中で独立相として存在する両親媒性化合物のナノ粒子をファンデルワールス力により燃料油に付着させることで乳化を行なう技術、即ち、油や水の粒子に対して乳化分散剤相のナノ粒子を付着させ、これにより、水相―乳化分散剤相―油相の三相構造を形成し、従来の界面活性剤とは異なり、相溶性による油水界面の界面エネルギーを低下させることなく、熱衝突による合一を起こりにくくして乳化物の長期安定化を図るようにした新規な乳化技術(以下、三相乳化法という)について先に提案している(特許3855203号、特許3858230号参照)。
ところで、格別な効果を得るためや政策的基準を満たす必要等のために、異なる油性成分同士を混合させて用いる要請がでてくるが、異なる油性成分を混合させようとしても、混合せずに分離したり、混合させると反応を起こす等の不都合を生じる場合が多い。
例えば、植物性油や廃食油などから得られる脂肪酸エステルは、ディーゼルエンジンにそのまま燃料(バイオディーゼル燃料(BDF:Bio Diesel Fuel))として利用することができ、また、京都議定書で義務づけられた炭酸ガスの排出量抑制に役立つことから、軽油に混合させて利用することが検討されているが、廃食油(例えば、テンプラ油)は、軽油に比べて炭素鎖が長いために切れにくく、また、燃えにくいことが知られている。このため、軽油にテンプラ油を混ぜると、排出ガス中のすす(炭素微粒子)、CO、HCなどの未燃物が増大する不都合が懸念される。しかも、バイオディーゼル燃料は、植物性油や廃食油などの油脂を、アルカリ触媒(水酸化カリウム等)の存在下でアルコール(メタノール等)と反応させてエステル化することで生成されるので、エステル化する過程でエネルギーを要し、京都議定書で義務づけられた炭酸ガスの排出量を抑制しにくい。
また、酵素の例を挙げると、洗濯や食洗機に使用する洗剤は、タンパク質分解酵素とデンプン分解酵素の両方を混合させることで洗浄性能が向上するが、多くの酵素は水に溶解すると失活され易くなり、また、タンパク質分解酵素によりデンプン分解酵素が分解されて失活してしまう。
さらに、防黴剤の例を挙げると、防黴剤はその効能により抑制できる菌種が異なるが、防黴剤を必要とする場面では複数の菌種が存在することが多く,異種の防黴剤を混合した製剤があれば一つの薬剤で防黴性能が得られる。しかし,防黴剤は有機溶媒に可溶性で,それぞれ溶解できる溶媒が異なることから、溶媒に溶かした薬剤同士の混合は困難である。
さらにまた、潤滑剤の例を挙げると、潤滑性能は潤滑油の種類と対象物で選択され,石油系の潤滑油,シリコーン油,フッ素系油剤などが用いられるが、シリコーン油とフッ素系油剤は炭化水素系油よりも耐熱性,絶縁性に優れており、通常の炭化水素系の潤滑油にシリコーン油またはフッ素油を混合することにより潤滑性の向上と共に耐熱性を向上させることが可能となる。しかしながら、炭化水素系の潤滑油とシリコン系の潤滑油とは、そのままでは混合させることができない。このため、仮に両潤滑油を混合させることができれば、高熱下における潤滑,摩耗防止が可能となり、また、シリコーン油やフッ素油単独では届かない細部まで油剤を浸透させることが可能となり、潤滑性能を向上させることが可能となる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、異なる油性成分を混合させても分離、反応することがなく、経時安定的に混合させることが可能な混合エマルション組成物の安定化方法を提供することを主たる課題としている。
本発明者らは、上述した三相乳化法で得られたエマルションについて、その利用可能性について鋭意研究を重ねた結果、異なる油性成分が互いに影響することなく混合できるのであれば、それらの油性成分を予め混合した後に前記三相乳化法によりエマルションを形成すれば安定したエマルションを得ることが可能となるが、異なる油性成分が互いに混合できない場合や、混合しても一部の油性成分に影響を与えるような場合には、前記三相乳化法によりそれぞれの油性成分を個別に乳化し、その後にそれらのエマルション組成物を混合させれば、個々の油性成分が他に影響を与えることなく均一かつ安定に混合できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る混合エマルション組成物の安定化方法は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤の粒子を、複数の被乳化油性成分に対して被乳化油性成分毎に付着させ、前記複数の被乳化油性成分の熱衝突による合一を防ぐことで、前記乳化分散剤により乳化された前記被乳化油性成分毎のエマルション組成物を混合した混合エマルション組成物を安定化させることを特徴としている。
例えば、混合エマルション組成物が2種類のエマルション組成物を混合して形成される場合であれば、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする第1の乳化分散剤を第1の被乳化油性成分に付着させ、前記第1の被乳化油性成分の熱衝突による合一を防ぐことで前記第1の被乳化油性成分のエマルション組成物を安定化させる第1の工程と、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする第2の乳化分散剤を第2の被乳化油性成分に付着させ、前記第2の被乳化油性成分の熱衝突による合一を防ぐことで前記第2の被乳化油性成分のエマルション組成物を安定化させる第2の工程と、前記第1のエマルション組成物と前記第2のエマルション組成物とを混合させて形成される混合エマルション組成物を前記第1の乳化分散剤及び前記第2の乳化分散剤により前記第1の被乳化分散剤と前記第2の被乳化分散剤との熱衝突による合一を防ぐことで安定化させる第3の工程とを具備するとよい。
ここで、第1の乳化分散剤と第2の乳化分散剤は、同一のものであっても、異なるものであってもよい。
また、前述した三相乳化法を利用して異なる油性成分を混合する場合においては、異なる油性成分を混合させた後に上述した三相乳化法を用いて乳化するのではなく、それぞれの油性成分を上述した三相乳化法を用いて予め乳化しておき、それぞれのエマルション組成物を混合させることに特徴がある。
また、前述した三相乳化法を利用して異なる油性成分を混合する場合においては、異なる油性成分を混合させた後に上述した三相乳化法を用いて乳化するのではなく、それぞれの油性成分を上述した三相乳化法を用いて予め乳化しておき、それぞれのエマルション組成物を混合させることに特徴がある。
安定に混合されない異なる油性成分を機械力を利用して混ぜ合わせ、その状態で三相乳化法によりエマルションを形成することも考えられるが、このような工程を経たエマルションは、経時安定性に欠け、分離する等の不具合を生じることが確認されている。
これに対して、それぞれの油性成分のエマルションを一旦形成し、それぞれのエマルションを混合させて混合エマルション組成物を形成すれば、それぞれの油性成分を乳化した場合の特性を保持しつつ異なる油性成分同士を安定に混合させることが可能となる。
これに対して、それぞれの油性成分のエマルションを一旦形成し、それぞれのエマルションを混合させて混合エマルション組成物を形成すれば、それぞれの油性成分を乳化した場合の特性を保持しつつ異なる油性成分同士を安定に混合させることが可能となる。
ここで、前記両親媒性物質としては、下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100である誘導体が利用可能である。
また、前記糖ポリマーは、アルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉,カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロースなどの多糖類やその誘導体よりなる群から選ばれた1又は2以上のものが利用可能である。
以上述べたように、本発明によれば、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤の粒子を、複数の被乳化油性成分に対して被乳化油性成分毎に付着させ、複数の被乳化油性成分の熱衝突による合一を防ぐことで混合エマルション組成物を安定化させるようにしたので、異なる油性成分を分離、反応させずに均一且つ安定に混合させることが可能となる。
また、用途別には次のような効果が得られる。
即ち、燃料として利用可能な混合エマルションにおいては、軽油に植物油や廃食油を混合させて用いる場合に、植物油や廃食油をエステル化せずに三相乳化法によりエマルションを形成し、これを同方法により乳化した軽油エマルションと混合させることで、燃焼後の排出ガス中のすす、CO、HCなどの未燃物が大幅に低減され、また、植物油や廃食油をエステル化する工程が不要となるので、炭酸ガスの排出量を抑制することができる。
即ち、燃料として利用可能な混合エマルションにおいては、軽油に植物油や廃食油を混合させて用いる場合に、植物油や廃食油をエステル化せずに三相乳化法によりエマルションを形成し、これを同方法により乳化した軽油エマルションと混合させることで、燃焼後の排出ガス中のすす、CO、HCなどの未燃物が大幅に低減され、また、植物油や廃食油をエステル化する工程が不要となるので、炭酸ガスの排出量を抑制することができる。
また、酵素として利用可能な混合エマルションにおいては、洗浄性能を向上させるためにタンパク質分解酵素とデンプン分解酵素の両方を混合させる場合に、それぞれの酵素のエマルションを形成して混合することで、それぞれの酵素が水中で失活するのを抑えることが可能になると共に、デンプン分解酵素がタンパク質分解酵素により分解されて失活することを抑えることが可能になる。
防黴剤として利用可能な混合エマルションにおいては、複数の菌種に対応するために異種の防黴剤を混合させる場合に、それぞれの防黴剤のエマルションを形成して混合させることで、有機溶媒に溶かした防黴用薬剤同士の混合を任意の割合に調整することが可能となる。
潤滑剤として利用可能な混合エマルションにおいては、石油系の潤滑油と、シリコーン油又はフッ素系油剤とを混合させて用いる場合に、それぞれの潤滑剤のエマルションを形成して混合させることで、潤滑性の向上と共に耐熱性を向上させることが可能となる。
また、いずれの場合も、三相乳化法で形成された異なるエマルションを、任意の割合で混ぜ合わせることが可能になるので、用途に応じて混合割合を調整することが可能になる。さらに、三相乳化法で形成されたエマルションを混合させて形成される混合エマルションは、異なる2種類のエマルションだけでなく、3種類以上のエマルションを混合させる場合にも有用である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
本発明に係る混合エマルション組成物の安定化方法は、予め個々の油性成分を、特許3855203号、特許3858230号に示される三相乳化法を用いて個別に乳化しておき、それぞれのエマルション組成物を混合するものである。
ここで、三相乳化法に用いる乳化分散剤は、油や水の粒子に対して乳化分散剤相のナノ粒子を付着させ、これにより、水相―乳化分散剤相―油相の三相構造を形成し、従来の界面活性剤と異なり、相溶性による油水界面の界面エネルギーの低下を必要条件とすることなく、熱衝突による合一を起こりにくくするものが用いられる。
このような乳化分散剤としては、自己組織能を有する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いることが有効であり、下記の一般式(化2)で表される(ポリオキシエチレン)硬化ひまし油誘導体を採用するとよい。硬化ひまし油の誘導体としては、エチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100である誘導体が使用可能である。
また、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤を用いてもよく、このような糖ポリマーとしては、下記のアルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースよりなる群から選ばれた1又は2以上のものが使用可能である。
・ (1)アルカリゲネス産生多糖類(分子量 約150万)
アルカリゲネス産生多糖類は伯東株式会社から提供されたものをそのまま用いた。アルカリゲネス産生多糖類はAlcaligenes latus B−16菌株が産出した糖ポリマーで、下式で示されるように、高分子成分と低分子成分の混合物構成成分(高分子量成分:低分子量成分=約7:1)である。
アルカリゲネス産生多糖類は伯東株式会社から提供されたものをそのまま用いた。アルカリゲネス産生多糖類はAlcaligenes latus B−16菌株が産出した糖ポリマーで、下式で示されるように、高分子成分と低分子成分の混合物構成成分(高分子量成分:低分子量成分=約7:1)である。
(2)Locust Bean Gum
ローカストビーンガムは地中海沿岸に生育するマメ科の植物であるローカストビーン(イナゴマメ)の種子の胚乳部分を原料に作られる。ガラクトマンナン多糖で,下式に基本的な構造式を示す。
ローカストビーンガムは地中海沿岸に生育するマメ科の植物であるローカストビーン(イナゴマメ)の種子の胚乳部分を原料に作られる。ガラクトマンナン多糖で,下式に基本的な構造式を示す。
・ (3)Carrageenan
カラギーナンは,紅藻類の細胞間粘質物質を原料とする硫酸基を含有する直鎖状の構造の酸性多糖類である。その基本的な構造を下式に示す。
カラギーナンは,紅藻類の細胞間粘質物質を原料とする硫酸基を含有する直鎖状の構造の酸性多糖類である。その基本的な構造を下式に示す。
(4)Xanthan Gum(Keruzan)
キサンタンガム(ケルザン)は、下式に示される構成を有し、Xanthomonas campestrisが菌体外に生産する酸性多糖類である。
キサンタンガム(ケルザン)は、下式に示される構成を有し、Xanthomonas campestrisが菌体外に生産する酸性多糖類である。
(5)HEC(Hydroxyethylcellulose)
HEC(ヒドロキシエチルセルロース)は、下式に示される構成を有し、植物から抽出される天然食物繊維のセルロースから作られるノニオン性の水溶性の高分子物質。
HEC(ヒドロキシエチルセルロース)は、下式に示される構成を有し、植物から抽出される天然食物繊維のセルロースから作られるノニオン性の水溶性の高分子物質。
(6)片栗粉(Mix starch)
片栗粉はユリ科の多年草である片栗の地下茎から製した白色の澱粉。近時,市販の多くは馬鈴薯澱粉である。下式に示されるように、α-グルコースが直鎖状につながった高分子のアミロースとα-グルコースが多数の分岐を以て鎖状につながった高分子のアミロペクチンからなる。
片栗粉はユリ科の多年草である片栗の地下茎から製した白色の澱粉。近時,市販の多くは馬鈴薯澱粉である。下式に示されるように、α-グルコースが直鎖状につながった高分子のアミロースとα-グルコースが多数の分岐を以て鎖状につながった高分子のアミロペクチンからなる。
(7)カルボキシメチルセルロース(CMC)
CMC(カルボキシメチルセルロース)は、天然パルプを原料として、セルロースの水酸基を部分的にカルボキシチル基で置換(エーテル化)して得られるアニオン系水溶性高分子である。基本構造を下式に示す。
CMC(カルボキシメチルセルロース)は、天然パルプを原料として、セルロースの水酸基を部分的にカルボキシチル基で置換(エーテル化)して得られるアニオン系水溶性高分子である。基本構造を下式に示す。
(8)カチオン化セルロース
ヒドロキシエチルセルロースのカチオン化反応により生成したカチオン化ヒドロキシエチルセルロースである。ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテルなどと表されることもある。
ヒドロキシエチルセルロースのカチオン化反応により生成したカチオン化ヒドロキシエチルセルロースである。ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテルなどと表されることもある。
以下、混合エマルション組成物の実施例を掲げる。混合エマルション組成物としては、各種例が考えられるが、ここでは代表例として、燃料として用いられる混合エマルション組成物と、酵素として用いられる混合エマルション組成物とについて説明する。
1.燃料として用いられる混合エマルション組成物について
燃料として用いられる混合エマルション組成物を形成するために、燃料油として軽油と廃食油(テンプラ油)を用い、乳化分散剤としてHCO−20を用いた。HCO−20を1wt%で固定し、それぞれの油剤と水との混合比が所定の割合(65:34、70:29、80:19)となるように調製した軽油エマルションと廃食油エマルションとを予め用意しておき、それぞれの軽油エマルションと廃食油エマルションとを、混合割合を変化させて混ぜ合わせ、乳化状態を目視により観測した結果を図1に示す。
燃料として用いられる混合エマルション組成物を形成するために、燃料油として軽油と廃食油(テンプラ油)を用い、乳化分散剤としてHCO−20を用いた。HCO−20を1wt%で固定し、それぞれの油剤と水との混合比が所定の割合(65:34、70:29、80:19)となるように調製した軽油エマルションと廃食油エマルションとを予め用意しておき、それぞれの軽油エマルションと廃食油エマルションとを、混合割合を変化させて混ぜ合わせ、乳化状態を目視により観測した結果を図1に示す。
図1(a)は、油剤65wt%,水34wt%,HCO−20 1wt%で調製した軽油エマルションと廃食油エマルションの混合例であり、図1(b)は、油剤70wt%,水29wt%,HCO−20 1wt%で調製した軽油エマルションと廃食油エマルションの混合例であり、図1(c)は、油剤80wt%,水19wt%,HCO−20 1wt%で調製した軽油エマルションと廃食油エマルションの混合例である。
コアセルベーションの状態でも両エマルションが分離している状態ではないため、いずれの場合も安定したエマルションが得られている。
コアセルベーションの状態でも両エマルションが分離している状態ではないため、いずれの場合も安定したエマルションが得られている。
このうち、油剤65wt%,水34wt%,HCO−20 1wt%で調製した混合エマルション燃料を用いてディーゼル車を走行させた場合の炭素微粒子排出量、NOx排出量、HC排出量の結果を図2に示す。ここで、図2(b)において、各棒グラフの淡部分はNO排出量を、濃部分はNO2排出量を示し、両方の合計をNOx排出量としている。
燃料が軽油100%の場合に比べて、混合エマルション燃料を用いた場合には、炭素微粒子(煤)の排出量(PM)やNOxの大幅な低減を確認できた。
ただし、HCの排出量については、廃食油を20wt%まで増やすと、HCの排出量は軽油単独の場合とほぼ同じとなるため、廃食油を添加させた場合においては、20wt%まで添加しても使用上のデメリットはないことが分かる。
燃料が軽油100%の場合に比べて、混合エマルション燃料を用いた場合には、炭素微粒子(煤)の排出量(PM)やNOxの大幅な低減を確認できた。
ただし、HCの排出量については、廃食油を20wt%まで増やすと、HCの排出量は軽油単独の場合とほぼ同じとなるため、廃食油を添加させた場合においては、20wt%まで添加しても使用上のデメリットはないことが分かる。
また、政策的な観点から、軽油に所定の割合のBDFを混合することが提唱されており、このBDFを生成するためにアルカリエタノールでエステル化したものが用いられているが、上述の構成によれば、廃食油(テンプラ油)をエステル化することなく三相乳化法によりエマルションを形成しておき、それをそのまま軽油エマルションに添加すれば利用可能となるので、エステル化に要するエネルギーが不要となり、炭酸ガスの排出量の抑制に寄与することが可能となる。
2.酵素として用いられる混合エマルション組成物について
混合する酵素としてタンパク質分解酵素であるパパインと、糖の分解酵素であるαアミラーゼとを用い、それぞれの酵素について三相乳化法によりエマルションを形成し、これらを混合させる。
混合する酵素としてタンパク質分解酵素であるパパインと、糖の分解酵素であるαアミラーゼとを用い、それぞれの酵素について三相乳化法によりエマルションを形成し、これらを混合させる。
図3において、(a)はパパインの活性状態を示す測定結果であり、□はパパインを水中に溶解させた場合の活性状態を示し、●は三相乳化法でパパインのW/O/W型エマルションを形成した場合の活性状態を示す。また、(b)はαアミラーゼの活性状態を示すものであり、□はαアミラーゼを水中に溶解させた場合の活性状態を示し、●は三相乳化法でαアミラーゼのW/O/W型エマルションを形成した場合の活性状態を示す。
パパインは、図3(a)に示されるように、水中に入れても失活しない。これに対して、αアミラーゼは、図3(b)に示されるように、水中に入れると失活する。このため、これら両方の酵素を混ぜ合わせると、本来であれば、αアミラーゼは水溶液中で失活すると共にパパインのタンパク質分解機能により分解されて一層失活することとなる。
パパインは、図3(a)に示されるように、水中に入れても失活しない。これに対して、αアミラーゼは、図3(b)に示されるように、水中に入れると失活する。このため、これら両方の酵素を混ぜ合わせると、本来であれば、αアミラーゼは水溶液中で失活すると共にパパインのタンパク質分解機能により分解されて一層失活することとなる。
そこで、三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションとαアミラーゼのW/O/W型エマルションとを混合させた混合エマルションの有効性について調べるために、パパインの反応速度とαアミラーゼの反応について調べた。
図4は、パパインの反応速度を測定したもので、(a)はパパイン単独での反応曲線であり、反応開始から30分までの経過を示しており、□はパパイン水溶液の反応速度を、●は三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションの反応速度を示す。また、(b)は、三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションと三相乳化法で形成されたαアミラーゼのW/O/W型エマルションとを混合させた場合のパパインの反応速度の測定結果を追加したものであり、□はパパイン水溶液の反応速度を、●は三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションでのパパインの反応速度を、▲は三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションと三相乳化法で形成されたαアミラーゼのW/O/W型エマルションとを混合させた場合のパパインの反応速度をそれぞれ示す。
この結果から分かるように、パパインをW/O/W型エマルションの一番内側の水相に入れても反応速度は通常のパパイン水溶液とほぼ同じであり、また、混合エマルションとしてもパパインの反応速度がαアミラーゼによって阻害されていないことが確認できた。
図4は、パパインの反応速度を測定したもので、(a)はパパイン単独での反応曲線であり、反応開始から30分までの経過を示しており、□はパパイン水溶液の反応速度を、●は三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションの反応速度を示す。また、(b)は、三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションと三相乳化法で形成されたαアミラーゼのW/O/W型エマルションとを混合させた場合のパパインの反応速度の測定結果を追加したものであり、□はパパイン水溶液の反応速度を、●は三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションでのパパインの反応速度を、▲は三相乳化法で形成されたパパインのW/O/W型エマルションと三相乳化法で形成されたαアミラーゼのW/O/W型エマルションとを混合させた場合のパパインの反応速度をそれぞれ示す。
この結果から分かるように、パパインをW/O/W型エマルションの一番内側の水相に入れても反応速度は通常のパパイン水溶液とほぼ同じであり、また、混合エマルションとしてもパパインの反応速度がαアミラーゼによって阻害されていないことが確認できた。
また、αアミラーゼW/O/W型エマルションの反応を図5(a)に示し、αアミラーゼW/O/W型エマルションとパパインW/O/W型エマルションとを混合させた混合エマルションの反応を図5(b)に示す。
この図から明らかなように、両者の間には差異が認められないので、両エマルションを混合させてもαアミラーゼの活性が阻害されていないことが分かる。本来であれば、αアミラーゼとパパインを水溶液で混合させた場合には、αアミラーゼが大きく失活するはずであるので、それぞれの油剤をW/O/W型エマルションにしてから混合することには意味があることが分かる。
この図から明らかなように、両者の間には差異が認められないので、両エマルションを混合させてもαアミラーゼの活性が阻害されていないことが分かる。本来であれば、αアミラーゼとパパインを水溶液で混合させた場合には、αアミラーゼが大きく失活するはずであるので、それぞれの油剤をW/O/W型エマルションにしてから混合することには意味があることが分かる。
Claims (3)
- 自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤の粒子を、複数の被乳化油性成分に対して被乳化油性成分毎に付着させ、前記複数の被乳化油性成分の熱衝突による合一を防ぐことで、前記乳化分散剤により乳化された前記被乳化油性成分毎のエマルション組成物を混合した混合エマルション組成物を安定化させることを特徴とする混合エマルション組成物の安定化方法。
- 前記両親媒性物質は、下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100である誘導体である請求項1記載の混合エマルション組成物の安定化方法。
- 前記糖ポリマーは、アルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉,カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロースよりなる群から選ばれた1又は2以上のものであることを特徴とする請求項1記載の混合エマルション組成物の安定化方法。
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