JP2009280761A - 廃グリセリン添加エマルション燃料及びその製造方法 - Google Patents

廃グリセリン添加エマルション燃料及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バイオディーゼル燃料を生成する際に副生される廃グリセリンを利用した新たな燃料、すなわち、廃グリセリンを添加した廃グリセリン添加エマルション燃料とその製造方法を提供する。
【解決手段】自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を添加すると共に油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンを添加した水分散液を燃料油に混合する。または、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤と油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンとを添加した水分散液を燃料油に混合する。
【選択図】なし

Description

本発明は、植物等由来の油脂を原料としてバイオディーゼル燃料を製造するにあたり、油脂とアルコールのエステル化反応で副生される廃出物(グリセリンやグリセライド等の廃グリセリン)を添加したエマルション燃料、およびその製造方法に関する。
近年、菜種油、トウモロコシ油、向日葵油、大豆油、パーム油等種々の植物性油や廃食油などから得られる脂肪酸エステルは、ディーゼルエンジンにそのまま燃料(バイオディーゼル燃料(BDF:Bio Diesel Fuel))として利用することができ、また、京都議定書で義務づけられた炭酸ガスの排出量抑制に役立つことから、軽油代替燃料として積極的な利用が検討されている。
このようなバイオディーゼル燃料は、植物性油や廃食油などの油脂を、アルカリ触媒(水酸化カリウム等)の存在下でアルコール(メタノール等)と反応させてエステル化させることで生成されるが、このようなエステル化反応においては、BDF以外の廃出物(廃グリセリン)が原料油脂の10〜20%程度副生される。
この副生された廃グリセリンは、高純度のグリセリンに精製して再利用することも検討されているが、精製度合の差異により常温において高粘度の液体や流動性のない固形物であり、触媒や未反応の脂肪酸などの不純物が混入しているため、高純度のグリセリンに精製するには相当な時間と手間がかかり、コスト高になるという不都合がある。特に、バイオディーゼル燃料が大量に生産されるようになってくると、処理しきれない廃グリセリンが副生されることから、さらに有効な使い道を模索する必要があるが、現状においては、他に有効な使い道がないことから、廃棄物として処分されている。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、バイオディーゼル燃料を生成する際に副生される廃グリセリンを利用した新たな燃料、すなわち、廃グリセリンを添加した廃グリセリン添加エマルション燃料とその製造方法を提供することを主たる課題としている。
本発明者らは、バイオディーゼル燃料を生成する際に副生される廃グリセリンの有効利用について模索した結果、このような廃グリセリンも有機物であり、燃料油よりは劣るものの熱量を発生させることが十分に期待できることから、廃グリセリンを燃料の一部として利用する可能性について鋭意研究を重ねた結果、燃料油に添加する水を廃グリセリン水分散液で代替し、この水分散液を用いて燃料油を安定に乳化させることができれば、廃グリセリンを添加したエマルション燃料として使用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る廃グリセリン添加エマルション燃料は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を添加すると共に油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンを添加した水分散液を燃料油に混合して構成されることを特徴としている。
本発明者らは、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いた新規な乳化技術について先に提案している(特許3855203号、特許3858230号参照)。
従来の界面活性剤を用いた乳化法では、油と水との界面に界面活性剤が吸着し、その界面エネルギーを低下させることを乳化・分散法の基本としていたので、その界面張力を低下させるために多量の乳化分散剤を必要とするものであったが、本発明者らが採用する乳化技術は、油/両親媒性化合物/水系の中で独立相として存在する両親媒性化合物のナノ粒子をファンデルワールス力により燃料油に付着させることで乳化を行なうものであり、油や水の粒子に対して乳化分散剤相のナノ粒子を付着させ、これにより、水相―乳化分散剤相―油相の三相構造を形成し、従来の界面活性剤とは異なり、相溶性による油水界面の界面エネルギーを低下させることなく、熱衝突による合一を起こりにくくして乳化物の長期安定化を図るようにしたものである。
このような新規な乳化法(三相乳化法)を採用して廃グリセリン水分散液に前記閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を添加して調製することで、相分離が生じない安定した廃グリセリン水分散液を形成し、これを燃料油に混合させることで廃グリセリン水分散液を燃料油に均一且つ安定に混合させることができることを確認できた。この廃グリセリン水分散液を燃料油に添加していた水の代わりに用いることで、バイオディーゼル燃料を生成する際に副生される廃グリセリンを燃料油の一部として組み込むことが可能となり、今まで廃棄物として扱われていた廃グリセリンを燃料として有効利用することが可能となる。
ここで、前記両親媒性物質は、下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100である誘導体を用いてもよい。
Figure 2009280761
また、上記廃グリセリン添加エマルション燃料を構成する両親媒性物質、廃グリセリン、燃料油、水の割合は、両親媒性物質0.1〜2.0wt%、廃グリセリン5wt%以上40wt%未満、燃料油30〜70wt%、水バランスにするとよい。
乳化される燃料としては、ディーゼル燃料として用いられる軽油の代替燃料としての要請が高いので、軽油に代表されるが、A−重油、ガソリン、鉱油、灯油等を用いてもよい。
尚、上述の廃グリセリン添加エマルション燃料は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を水の中に添加して分散させる工程と、この分散液中に、油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンを添加して溶解させる工程と、前記廃グリセリンを溶解した分散液を燃料に混合させる工程とを経て生成するとよい。
この際、分散液中への廃グリセリンの溶解を促進するために、分散液に廃グリセリンを添加する際に加熱するようにしてもよい。
また、本発明に係る廃グリセリン添加エマルション燃料は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤と油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンとを添加した水分散液を燃料油に混合して構成するようにしてもよい。
ここで、糖ポリマーは、アルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースよりなる群から選ばれた1又は2以上のものを用いるとよい。
この廃グリセリン添加エマルション燃料を構成する糖ポリマー、廃グリセリン、燃料油、水の割合は、糖ポリマー0.02〜1.0wt%、廃グリセリン1wt%以上40wt%未満、燃料油10〜80wt%、水バランスにするとよい。
尚、上述の廃グリセリン添加エマルション燃料は、アルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉,カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロースよりなる群から選ばれた1又は2以上の糖ポリマーを単粒子化させる工程と、前記単粒子化した糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤に水を添加して所望濃度の糖ポリマー水分散液を生成する工程と、この糖ポリマー水分散液中に、油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンを添加して溶解させる工程と、前記廃グリセリンを溶解した糖ポリマー水分散液を燃料に混合させる工程とを経て生成するとよい。
以上述べたように、本発明によれば、燃料油に添加する水の代わりに、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤と廃グリセリンとを添加した廃グリセリン水分散液を燃料油に混合し、又は、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤と廃グリセリンとを添加した廃グリセリン水分散液を燃料油に混合するようにしたので、前記廃グリセリン水分散液を燃料油に均一且つ安定に混合させることができ、バイオディーゼル燃料を生成する際に副生される廃グリセリンを燃料として有効利用することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
本発明に係る廃グリセリン添加エマルション燃料は、廃グリセリンと乳化分散剤とを水に添加した廃グリセリン水分散液を燃料油に混合させて、燃料油を廃グリセリン水分散液で乳化するようにしたものである。
ここで、廃グリセリンは、油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成されるもので、具体的には、植物由来の油脂、即ち、菜種油、大豆油、パーム油、廃食油、トウモロコシ油、食物用油、ジャトラファ、向日葵油、ヒマシ油などの植物から抽出した油脂で、グリセライド型の油脂を用いてバイオディーゼル燃料用のために化学処理した[アルカリ触媒(水酸化カリウム等)の存在下でアルコール(メタノール等)とエステル化反応させた]結果として副生される廃出物(主としてグリセリンや、モノアルキル又はジアルキルグリセライドも含まれる)と定義する。
また、乳化分散剤は、油や水の粒子に対して乳化分散剤相のナノ粒子を付着させ、これにより、水相―乳化分散剤相―油相の三相構造を形成し、従来の界面活性剤と異なり、相溶性による油水界面の界面エネルギー低下を必要条件とすることなく、熱衝突による合一を起こりにくくするものが用いられる。
このような乳化分散剤としては、自己組織能を有する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を用いることが有効であり、特許3855203号又は特許3858230号に示されるような下記の一般式(化2)で表される(ポリオキシエチレン)硬化ひまし油誘導体を採用するとよい。硬化ひまし油の誘導体としては、エチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100である誘導体が使用可能である。
Figure 2009280761
廃グリセリン水分散液を添加する燃料油としては、軽油、A−重油、灯油、ガソリン、又は鉱油等が利用可能である。
このような燃料は、図1に示されるような工程を経て生成される。先ず、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成される閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を水の中に添加して分散させておく(ステップS01)。
そして、乳化分散剤を分散させた分散液中に廃グリセリンを添加して完全に溶解させて廃グリセリン水分散液を形成する。この際、分散液への溶解を促進するために、分散液を40〜50℃に加熱するとよい(ステップS02)。
その後、廃グリセリン水分散液を燃料油に混合させて、燃料油を廃グリセリン水分散液で乳化する(ステップS03)。
以上のようにして生成された廃グリセリン添加のエマルション燃料を、乳化剤の添加量(1wt%)を固定して、水、廃グリセリン、燃料油の割合を変化させたときの乳化状態と、常温(20℃)及び50℃でのエマルション燃料の流動性を調べた結果を図2に示す。
この図2に示す結果から判るように、C重油を除いて安定した乳化状態が得られ、常温においては廃グリセリンの添加量が多くなると流動性が損なわれる傾向にあるが、50℃では、いずれのエマルション燃料も、良好な流動性が得られている。
また、ポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)を変化させた場合の乳化状態を調べた結果を図3に示す。エチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100の誘導体で長期に亘って良好な乳化状態を確認できた。図中、HCOは、ポリオキシエチレン硬化ひまし油であり、(HCO−n)は、原料のひまし油の二重結合を飽和するために水素を添加してからnモルのエチレンオキシド(EO)を付加したものである。また、(CO−n)は、原料のひまし油を水素化しないでnモルのEOを付加したものである。
また、乳化剤としてHCO−20を用い、廃グリセリンを10wt%、軽油を60wt%に固定し、乳化剤の濃度(添加量)を変化させた場合の廃グリセリン添加の軽油エマルション燃料の乳化状態と常温(20℃)及び50℃でのエマルション燃料の流動性を調べた結果を図4に示す。
この図4に示す結果から判るように、乳化剤の添加量を変化させても、安定した乳化状態が得られ、常温においては乳化剤の添加量が多くなると流動性が損なわれる傾向にあるが、50℃では、いずれのエマルション燃料も、良好な流動性が得られている。このことから、乳化剤の添加量を多くしなくても、良好な乳化状態および流動性を確保できることがわかる。
さらに、得られたエマルション燃料の熱量測定試験を行った結果を図5に示す。この結果から明らかなように、乳化剤を1wt%で固定し、乳化剤と水の占める割合が同じになるように燃料油の一部を廃グリセリンに置き換えた場合について見ると(AとBとD、Fと1と8、Eと9と12と18)、燃料油を廃グリセリンに置換することにより発熱量は減少してくる。
エマルション化して得られる熱量は燃料として使用した有機物の組成に依存するので、エマルション化で燃焼性が向上することを意図した場合に、測定した発熱量が有機物の組成から計算される論理的な発熱量を下回らない場合を有効とすると、図6の測定発熱量と理論計算値との差異から判るように、乳化剤と水の占める割合が30wt%である場合には、廃グリセリンが40wt%になると測定された発熱量が理論値より下回り、乳化剤と水の占める割合が20wt%の場合では、廃グリセリンが60wt%になると理論値より下回る。このことから、乳化剤を1wt%とした場合においては、軽油が30wt%より多く廃グリセリンを40wt%未満の範囲にすれば実用的であることが分かる。
次に、乳化分散剤として、単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤を用いた場合について説明する。
本研究において、天然及び半合成系糖ポリマー誘導体として,以下の8種類を使用した。
・ アルカリゲネス産生多糖類(分子量 約150万)
アルカリゲネス産生多糖類は伯東株式会社から提供されたものをそのまま用いた。アルカリゲネス産生多糖類はAlcaligenes latus B−16菌株が産出した糖ポリマーで、下式で示されるように、高分子成分と低分子成分の混合物構成成分(高分子量成分:低分子量成分=約7:1)である。
Figure 2009280761
(2)Locust Bean Gum
ローカストビーンガムは地中海沿岸に生育するマメ科の植物であるローカストビーン(イナゴマメ)の種子の胚乳部分を原料に作られる。ガラクトマンナン多糖で,下式に基本的な構造式を示す。
Figure 2009280761
・ Carrageenan
カラギーナンは,紅藻類の細胞間粘質物質を原料とする硫酸基を含有する直鎖状の構造の酸性多糖類である。その基本的な構造を下式に示す。
Figure 2009280761
(4)Xanthan Gum(Keruzan)
キサンタンガム(ケルザン)は、下式に示される構成を有し、Xanthomonas campestrisが菌体外に生産する酸性多糖類である。
Figure 2009280761
・ HEC(Hydroxyethylcellulose)
HEC(ヒドロキシエチルセルロース)は、下式に示される構成を有し、植物から抽出される天然食物繊維のセルロースから作られるノニオン性の水溶性の高分子物質。
Figure 2009280761
(6)片栗粉(Mix starch)
片栗粉はユリ科の多年草である片栗の地下茎から製した白色の澱粉。近時,市販の多くは馬鈴薯澱粉である。下式に示されるように、α-グルコースが直鎖状につながった高分子のアミロースとα-グルコースが多数の分岐を以て鎖状につながった高分子のアミロペクチンからなる。
Figure 2009280761
(7)カルボキシメチルセルロース(CMC)
CMC(カルボキシメチルセルロース)は、天然パルプを原料として、セルロースの水酸基を部分的にカルボキシチル基で置換(エーテル化)して得られるアニオン系水溶性高分子である。基本構造を下式に示す。
Figure 2009280761
(8)カチオン化セルロース
ヒドロキシエチルセルロースのカチオン化反応により生成したカチオン化ヒドロキシエチルセルロースである。ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテルなどと表されることもある。
糖ポリマー分散液の調製法
以上の糖ポリマーを利用して、先ず、糖ポリマー水分散液を調製する。糖ポリマー水分散液の調製は、図7に示されるように、まず所定の質量比 (糖ポリマー:水)になるように量り取った糖ポリマーを水に加え(ステップS11)、卓上ホモミキサー(みづほ工業株式会社 QUICK HOMOMIXIER LR-1型)(3000rpm)で攪拌して単粒子化させ(ステップS12)、一日熟成させて糖ポリマー水分散液を調製した(ステップS13)。分散液の調製は室温(25℃)、80℃,90℃で行なった。
燃料油としてA重油を用いた場合において、A重油と上述の手法で得られた糖ポリマー水分散液とを50wt%ずつ混合させて糖ポリマー水分散液で調製したA重油エマルションの乳化状態を見ると、図8に示されるようになった。安定状態及びコアセルベーションの状態までが許容範囲とすると、油(A重油)の濃度が50wt%である場合には、アルカリゲネス産生多糖類では0.05wt%以上の濃度が必要であり、Locust Bean Gumでは0.05wt%以上の濃度が必要であり、Carrageenanでは0.4wt%以上の濃度が必要であり、Xanthan Gumでは0.2wt%以上の濃度が必要であり、HECでは0.05wt%以上の濃度が必要であり、片栗粉では0.2wt%、以上の濃度が必要であり、CMCでは0.05wt%以上の濃度が必要であり、HPMCでは0.4wt%以上の濃度が必要であり、カチオン化セルロースでは0.05wt%以上の濃度が必要となる。
次に、それぞれの糖ポリマーにおいて、代表する分散液濃度(アルカリゲネス産生多糖類では0.1wt%、Locust Bean Gumでは0.3wt%、Carrageenanでは0.5wt%、Xanthan Gumでは0.3wt%、HECでは0.15wt%、片栗粉では0.5wt%)、CMCでは0.3wt%、HPMCでは0.3wt%、カチオン化セルロースでは0.2wt%)において、燃料油の濃度を変化させた場合の乳化状態を調べた結果を図9に示す。
この図9の結果に基づき、A重油の濃度を大きくしていった場合に安定した乳化状態が得られる糖ポリマーの最低濃度を計算すると、アルカリゲネス産生多糖類では、燃料油の濃度が80wt%まで安定しているので、このときの糖ポリマー分散液の濃度(20wt%)から、安定した乳化状態を得るための糖ポリマーの最低濃度は0.02wt%(0.1×0.2)となり、Locust Bean Gumでは、油の濃度が70wt%まで安定しているので、このときの糖ポリマー分散液の濃度(30wt%)から、安定した乳化状態を得るための糖ポリマーの最低濃度は0.09wt%(0.3×0.3)となる。同様に、Carrageenanでは、油の濃度が60wt%まで安定しているので、安定した乳化状態を得る糖ポリマーの最低濃度は0.2wt%(0.5×0.4)となり、Xanthan Gumでは、油の濃度が70wt%まで安定しているので、安定した乳化状態を得る糖ポリマーの最低濃度は0.09wt%(0.3×0.3)となり、HECでは、油の濃度が70wt%まで安定しているので、安定した乳化状態を得る糖ポリマーの最低濃度は0.045wt%(0.15×0.3)となり、片栗粉では、油の濃度が60wt%まで安定しているので、安定した乳化状態を得る糖ポリマーの最低濃度は0.2wt%(0.5×0.4)となり、CMCでは、油の濃度が70wt%まで安定しているので、安定した乳化状態を得る糖ポリマーの最低濃度は0.09wt%(0.3×0.3)となり、HPMCでは安定している油の濃度が低いことからこれを除外し、カチオン化セルロースでは、油の濃度が80wt%まで安定しているので、安定した乳化状態を得る糖ポリマーの最低濃度は0.04wt%(0.2×0.2)となる。
このことから、各種糖ポリマー分散液によるA重油乳化で必要となる糖ポリマーの最低濃度を、図10に示されるように、アルカリゲネス産生多糖類では0.03wt%、Locust Bean Gumでは、0.1wt%、Carrageenanでは、0.3wt%、Xanthan Gumでは0.1wt%、HECでは0.05wt%、片栗粉では0.3wt%、CMCでは0.1wt%、カチオン化セルロースでは0.05wt%と決定した。したがって、糖ポリマーの必要濃度の下限を0.03wt%とした。
また、分散液中の糖ポリマー濃度を徐々に高めて糖ポリマー分散液の粘度を測定した結果を図11に示す。
この結果から、粘度が4000mP・sを超えると流動性が保てなくなるため、この範囲を除外すると、図12に示されるように、アルカリゲネス産生多糖類では0.3wt%まで、Locust Bean Gumでは1.0wt%まで、Carrageenanでは0.5wt%まで、Xanthan Gumでは0.5wt%まで、HECでは0.5wt%まで、片栗粉では1.0wt%までとなる。また、CMC及びカチオン化セルロースにおいては、1.0wt%でも流動性が十分に保てるため、1.0wt%までとした。
したがって、糖ポリマー分散液中の糖ポリマーの濃度の上限(各種糖ポリマー分散液によるA重油乳化で使用できる濃度)は1.0wt%とした。
糖ポリマー水分散液による乳化
次に、上述のようにして調製された糖ポリマー水分散液を用い、各所定の濃度の糖ポリマー水分散液に所定濃度となるように廃グリセリンを加熱(40〜50℃)しながら溶解して廃グリセリン水分散液を生成した(ステップS14)。そして、次に燃料油を加え,ホモミキサー(株式会社アーンスト・ハンセン商会 DIAX900 18F シャフト径 18 mm/25 mm)(16000 rpm)を用い室温で10分間攪拌し,三相乳化エマルションを調製した(ステップS15)。
前述したA重油において、A重油65wt%、廃グリセリン5wt%、糖ポリマー分散液30wt%とした場合の乳化状態および流動性について調べた結果を図13に示す。
糖ポリマーの濃度は、アルカリゲネス産生多糖類の場合は0.1wt%とし、Locust Bean Gumの場合は0.3wt%とし、Carrageenanの場合は0.5wt%とし、Xanthan Gumの場合は0.3wt%とし、HECの場合は0.15wt%とし、片栗粉の場合は0.5wt%、CMCの場合では0.3wt%、カチオン化セルロースの場合では0.2wt%を代表濃度として設定した。
乳化状態は概ね良好であり、常温(20℃)においても流動性の点で問題はなかった。
図1は、乳化剤としてポリオキシエチレン硬化ひまし油(HCO)を用いた場合の廃グリセリン添加エマルション燃料の製造方法を示すフローチャートである。 図2は、乳化剤の量を一定(1wt%)とし、水、廃グリセリン、燃料油の混合割合を変化させて乳化状態と流動性を調べた結果を示す表である。 図3は、乳化剤のエチレンオキシドの平均付加モル数を変化させた場合の乳化状態を調べた結果を示す表である。 図4は、乳化剤(HCO−20)の濃度を変化させた場合の廃グリセリンを添加した軽油エマルションの物性を示す表である。 図5は、廃グリセリンを添加しない場合と添加した場合との燃料の発熱量を測定した結果を示す表である。 図6は、それぞれの試料において測定した発熱量と、発熱量の理論値との示す表である。 図7は、乳化剤として糖ポリマーを用いた場合の廃グリセリン添加エマルション燃料の製造方法を示すフローチャートである。 図8は、A重油と糖ポリマー分散液とを50wt%ずつとし、A重油を糖ポリマー分散液で乳化したA重油エマルション燃料の乳化状態を示す表である。 図9は、各種糖ポリマー分散液によるA重油エマルションの乳化状態を示す表である。 図10は、各種糖ポリマー分散液によるA重油乳化で必要とする最低濃度(下限の濃度)を示す表である。 図11は、各種糖ポリマー分散液の粘度を分散液中の糖ポリマー濃度を変化させて調べた結果を示す表である。 図12は、各種糖ポリマー分散液によるA重油乳化で使用できる濃度(上限の濃度)を示す表である。 図13は、A重油65wt%、廃グリセリン5wt%、糖ポリマー分散液30wt%での乳化状態と流動性との結果を示す表である。

Claims (8)

  1. 自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤と油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンとを添加した水分散液と燃料油を混合して構成されることを特徴とする廃グリセリン添加エマルション燃料。
  2. 前記両親媒性物質は、下記の一般式(化1)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油の誘導体のうちエチレンオキシドの平均付加モル数(E)が5〜100である誘導体である請求項1記載の廃グリセリン添加エマルション燃料。
    Figure 2009280761
  3. 前記両親媒性物質0.1〜2.0wt%、前記廃グリセリン5wt%以上40wt%未満、前記燃料油30〜70wt%、水バランスで組成されることを特徴とする請求項1又は2記載の廃グリセリン添加エマルション燃料。
  4. 自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成されて油性基材表面に付着する閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤を水の中に添加して分散させる工程と、
    この分散液中に、油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンを添加して溶解させる工程と、
    前記廃グリセリンを溶解した分散液を燃料に混合させる工程と
    を有することを特徴とする廃グリセリン添加エマルション燃料の製造方法。
  5. 単粒子化された糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤と油脂をアルコールとエステル化反応する過程で生成される廃グリセリンとを添加した水分散液を燃料油と混合して構成されることを特徴とする廃グリセリン添加エマルション燃料。
  6. 前記糖ポリマーは、アルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉,カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロースよりなる群から選ばれた1又は2以上のものであることを特徴とする請求項5記載の廃グリセリン添加エマルション燃料。
  7. 前記糖ポリマー0.02〜1.0wt%、前記廃グリセリン1wt%以上40wt%未満、前記燃料油10〜80wt%、水バランスで組成されることを特徴とする請求項5又は6記載の廃グリセリン添加エマルション燃料。
  8. アルカリゲネス産生多糖類、ローキアストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、片栗粉,カルボキシメチルセルロース,カチオン化セルロースよりなる群から選ばれた1又は2以上の糖ポリマーを単粒子化させる工程と、
    前記単粒子化した糖ポリマーを主成分とする乳化分散剤に水を添加して所望濃度の糖ポリマー水分散液を調製する工程と、
    この糖ポリマー水分散液中に、油脂をアルコールとエステル化反応する過程で調製される廃グリセリンを添加して溶解させる工程と、
    前記廃グリセリンを溶解した糖ポリマー水分散液を燃料に混合させる工程と
    を有することを特徴とする廃グリセリン添加エマルション燃料の製造方法。

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