JP2018125547A - コンデンサ素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサ素子の製造方法であって、厚さ1〜6μmの二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの片面に、金属蒸着膜を形成して金属化ポリプロピレンフィルムを作製する工程、金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回した後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製する工程、及び、フィルムコンデンサ素子に対し、80〜115℃の温度で30時間を超える熱処理を施す工程、を含む方法。
【選択図】図1
Description
また、金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサ素子において、コンデンサを作製する際の素子巻きを容易にする目的、さらには加工する際の滑り性を向上させる目的、また、油含浸型コンデンサの場合には油含浸性を向上させる目的で、ポリプロピレンフィルム表面を適度に微細粗面化することが行われる。しかし、微細粗面化されたフィルムを巻回してコンデンサ素子を作製するとフィルム間に空隙が生じることがあった。この状態で電極間に高電圧を印加すると、空隙でコロナ放電が発生し、フィルムに放電劣化が起こってしまうことがあり、結果としてコンデンサとしての性能低下などの著しい悪影響を招き、さらには素子破壊にまで至るものもあった。
そこで、本発明の目的は、小型かつ大容量型のフィルムコンデンサ素子であって、例えば高温下で高い直流電圧を長時間負荷し続けても静電容量の減少が少ないような、高温下での高い耐電圧性及び高温下での長期耐用性を有する、金属化ポリプロピレンフィルムに基づくフィルムコンデンサ素子の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサ素子の製造方法であって、
厚さ1〜6μmの二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの片面に、金属蒸着膜を形成して金属化ポリプロピレンフィルムを作製する工程、
金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回した後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製する工程、及び、
フィルムコンデンサ素子に対し、80〜115℃の温度で30時間を超える熱処理を施す工程、
を含む方法。
〔2〕フィルムコンデンサ素子を作製する前記工程において、得られた巻回物に対し、10×104〜450×104Paの圧力下、100〜120℃の温度で5時間以上の熱処理を施す、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、
・重量平均分子量Mwが25万以上45万以下、
・重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比から計算される分子量分布Mw/Mnが5以上12以下、及び
・分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が8.0%以上18.0%以下
であるポリプロピレン樹脂Aを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、
・重量平均分子量Mwが30万以上40万以下、
・重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比から計算される分子量分布Mw/Mnが7以上9以下、
・分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が1.0%以上8.0%未満
であるポリプロピレン樹脂Cをさらに含む、前記〔3〕に記載の方法。
本発明の方法によって得られるコンデンサ素子は、高電圧及び耐熱性が要求される自動車や電力の用途に用いられる小型かつ大容量型のコンデンサに好ましく利用できる。
厚さ1〜6μmの二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの片面に、金属蒸着膜を形成して金属化ポリプロピレンフィルムを作製する工程、
金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回した後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製する工程、及び、
フィルムコンデンサ素子に対し、80〜115℃の温度で30時間を超える熱処理を施す工程、
を含む。
ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、一種のみのポリプロピレン樹脂であってよいが、二種以上のポリプロピレン樹脂であってもよい。
ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のうち、主要ポリプロピレン樹脂としてのポリプロピレン樹脂Aと共に好適に用いられるポリプロピレン樹脂としては、長鎖分岐ポリプロピレン樹脂(以下、「添加ポリプロピレン樹脂B」とも称する)や、ポリプロピレン樹脂Aとはその分子量微分分布曲線が異なるポリプロピレン樹脂(以下、「添加ポリプロピレン樹脂C」とも称する)などが挙げられる。これらの樹脂は、その重合粉あるいはペレットをミキサー等によってドライブレンドする方法、その重合粉あるいはペレットを混練機によって溶融混練してブレンド樹脂を得る方法などを含む非限定的な任意の混合方法に従って混合してよい。
実施例における各特性値の評価方法は以下の通りである。
(1)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、および微分分布値
二軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、分布曲線の微分分布値の評価は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で測定し行った。検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC
HLC−8121GPC−HT型カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結
カラム温度:140℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/分
ポリプロピレンフィルムを以下の溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で、メソペンタッド分率([mmmm])を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH3(mmmm)=21.7ppm
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考とした。
フィルムの厚みは、シチズンセイミツ株式会社製の紙厚測定器MEI−11を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
コンデンサ素子に対する高温でのステップアップ試験を以下の手順で行った。
予めコンデンサ素子を、試験環境温度(105℃)で15時間予熱した後、試験前の初期の静電容量を日置電機株式会社製のLCRハイテスター3522−50にて測定した。次に、高圧電源を用いて、105℃の恒温槽中にて、コンデンサ素子に直流600Vの電圧を1分間印加した。電圧印加後のコンデンサ素子の静電容量を上記テスターで測定し、電圧印加前後の容量変化率を算出した。次いで、このコンデンサ素子を恒温槽内に戻し、直流700Vの電圧を1分間印加後、上記と同様に容量変化率(累積)を算出した。同様に、1000Vに達するまでは100V毎、1000Vに達した後は50V毎に、1分間の電圧印加と容量変化率(累積)の算出を繰り返した。コンデンサ素子の容量変化率が−95%を超えた段階で、試験を終了した。コンデンサ素子の容量変化率が−5%及び−95%となる電圧を、コンデンサ素子3個の平均値により評価した。
コンデンサ素子に対するライフ試験を以下の手順で行った。
予めコンデンサ素子を、試験環境温度(105℃)で15時間予熱した後、試験前の初期の静電容量を日置電機株式会社製のLCRハイテスター3522−50にて測定した。次に、高圧電源を用いて、105℃の恒温槽中にて、コンデンサ素子に直流750Vの電圧を7時間印加し続けた。7時間経過後のコンデンサ素子の静電容量を上記テスターで測定し、電圧印加前後の容量変化率を算出した。7時間経過後のコンデンサ素子の容量変化率を、コンデンサ素子3個の平均値により評価した。
実施例及び比較例のポリプロピレンフィルムを製造するために使用したポリプロピレン樹脂を、以下に示す。
表1に示す樹脂A1はプライムポリマー株式会社製のアイソタクチックポリプロピレン樹脂であり、樹脂C1は大韓油化社製のポリプロピレン樹脂(商品名「HPT−1」)である。ポリプロピレン樹脂A1はポリプロピレン樹脂Aに該当し、ポリプロピレン樹脂C1はポリプロピレン樹脂Cに該当する。また、長鎖分岐ポリプロピレン(ポリプロピレン樹脂B)として、ボレアリス社製長鎖分岐ポリマー(商品名「WB135HMS」)(以下「ポリプロピレン樹脂B1」という)を使用した。
なお、これらの値は、原料樹脂ペレットの形態での値である。また、ポリプロピレン樹脂A1及びC1はいずれも、酸化防止剤(1次剤)として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(一般名称:BHT)を2000ppm、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)として、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)を5000〜6500ppm含有する。
<二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの製造>
原料ポリプロピレン樹脂Aとして表1に記載の樹脂A1(重量平均分子量Mw=3.4×105、分子量分布Mw/Mn=10.0)と、添加ポリプロピレン樹脂Bとして表1に記載の樹脂B1(重量平均分子量Mw=7.0×104、分子量分布Mw/Mn=2.0)とを、97.5対2.5(質量比)の比率にて連続的に計量混合したドライブレンド体を、押出成形機にて樹脂温度が250℃となるように加熱溶融した後、Tダイから押し出し、表面温度92℃に保持した金属ドラムに巻き付けて固化させて、厚さ125μmのキャスト原反シートを作製した。このキャスト原反シートを140℃まで加熱して、流れ方向に5倍に延伸し、次いで、テンターにて165℃の温度で横方向に10倍に延伸して、厚さ2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
こうして得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、Tマージン蒸着パターンを12Ω/□にてアルミニウム蒸着を施し、金属化ポリプロピレンフィルムを得た。パターン蒸着はワイヤー方式による真空蒸着法に従って行い、ヘビーエッジ蒸着はるつぼ方式による真空蒸着法に従って行った。
得られた金属化ポリプロピレンフィルムを小幅(620mm幅)にスリットした後、金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせ、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW−N2型を用い、巻取り張力200gにて、1360ターン巻回を行った。
素子巻きした素子(巻回物)に対して、100×104Paの圧力をかけながら120℃で12時間の熱処理(熱プレス)を施した後、その両端面に亜鉛金属を溶射することによって一対のメタリコン電極を形成し、扁平形のフィルムコンデンサ素子を得た。
得られたフィルムコンデンサ素子を、大気雰囲気下の恒温槽に入れ、105℃の温度で35時間の熱処理を施した。
添加ポリプロピレン樹脂Bに代えて、添加ポリプロピレン樹脂Cとして表1に記載の樹脂C1(重量平均分子量Mw=3.5×105、分子量分布Mw/Mn=8.0)を用い、原料ポリプロピレン樹脂Aと添加ポリプロピレン樹脂Cの混合率を65対35(質量比)の比率としたこと以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子に対するステップアップ試験及びライフ試験の結果を表2にまとめる。
熱処理(熱エージング)の時間を50時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、コンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子に対するステップアップ試験及びライフ試験の結果を表2にまとめる。
熱処理(熱エージング)の時間を1500時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、コンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子に対するステップアップ試験及びライフ試験の結果を表2にまとめる。
熱処理(熱エージング)の時間を2時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子に対するステップアップ試験及びライフ試験の結果を表2にまとめる。
熱処理(熱エージング)の時間を20時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、コンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子に対するステップアップ試験及びライフ試験の結果を表2にまとめる。
熱処理(熱エージング)の時間を15時間に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、金属化ポリプロピレンフィルムコンデンサ素子を得た。
得られたコンデンサ素子に対するステップアップ試験及びライフ試験の結果を表2にまとめる。
2 金属蒸着部
3 ヘビーエッジ
Claims (4)
- 金属化ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサ素子の製造方法であって、
厚さ1〜6μmの二軸延伸されたポリプロピレンフィルムの片面に、金属蒸着膜を形成して金属化ポリプロピレンフィルムを作製する工程、
金属化ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回した後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサ素子を作製する工程、及び、
フィルムコンデンサ素子に対し、80〜115℃の温度で30時間を超える熱処理を施す工程、
を含む方法。 - フィルムコンデンサ素子を作製する前記工程において、得られた巻回物に対し、10×104〜450×104Paの圧力下、100〜120℃の温度で5時間以上の熱処理を施す、請求項1に記載の方法。
- ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、
・重量平均分子量Mwが25万以上45万以下、
・重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比から計算される分子量分布Mw/Mnが5以上12以下、及び
・分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が8.0%以上18.0%以下
であるポリプロピレン樹脂Aを含む、請求項1又は2に記載の方法。 - ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、
・重量平均分子量Mwが30万以上40万以下、
・重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnの比から計算される分子量分布Mw/Mnが7以上9以下、
・分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が1.0%以上8.0%未満
であるポリプロピレン樹脂Cをさらに含む、請求項3に記載の方法。
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