絶縁体層が積層された積層体の内部に、インダクタが形成された積層型電子部品が、特許文献1(WO2016/152205A1号公報)に開示されている。
図16に、特許文献1に開示された積層型電子部品(ローパスフィルタ)1100を示す。ただし、図16は、特許文献1に開示された積層型電子部品1100の、インダクタが形成された部分を抜粋して示した要部分解斜視図であり、キャパシタ(コンデンサ)が形成された部分の図示を省略して示したものである。
積層型電子部品1100は、絶縁体層101a〜101iと、図示を省略した複数の他の絶縁体層とが積層された積層体102を備える。
上から1番目に積層された絶縁体層101aは、保護層である。
上から2番目に積層された絶縁体層101bの上側主面に、線路状導体パターン(インダクタ導体層)103a、104aが形成されている。なお、線路状導体パターン103aの一端と、線路状導体パターン104aの一端とが、相互に接続されている。
上から3番目に積層された絶縁体層101cの上側主面に、線路状導体パターン103b、104bが形成されている。なお、線路状導体パターン103bの一端と、線路状導体パターン104bの一端とが、相互に接続されている。
上から4番目に積層された絶縁体層101dの上側主面に、線路状導体パターン103c、104cが形成されている。
上から5番目に積層された絶縁体層101eの上側主面に、線路状導体パターン103d、104dが形成されている。
上から6番目に積層された絶縁体層101fの上側主面に、線路状導体パターン103e、104eが形成されている。
上から7番目に積層された絶縁体層101gの上側主面に、線路状導体パターン103f、104fが形成されている。
上から8番目に積層された絶縁体層101hの上側主面に、線路状導体パターン103g、104gが形成されている。
上から9番目に積層された絶縁体層101iの上側主面に、線路状導体パターン103h、104hが形成されている。
積層体102には、ビア導体(ビアホール導体)105a〜105f、および、その他、符号を付していないビア導体が形成されている。
積層型電子部品1100の内部には、線路状導体パターン103a〜103hを、ビア導体105a〜105cによって接続して、インダクタ106が形成されている。
なお、インダクタ106では、上下に隣接する2層の線路状導体パターンを1組として1つのターンを構成して、インダクタを形成している。具体的には、線路状導体パターン103aと103b、線路状導体パターン103cと103d、線路状導体パターン103eと103f、線路状導体パターン103gと103hを、それぞれ1組として1つのターンを構成し、各ターンをビア導体105a〜105dによって接続して、インダクタ106を形成している。2つの線路状導体パターンを1組として1つのターンを構成しているのは、内部抵抗を小さくして、インダクタ106のQ値を大きくするためである。インダクタ106の、より具体的な構成は次のとおりである。
線路状導体パターン103a、103bの他端と、線路状導体パターン103c、103dの一端とが、ビア導体105aによって接続されている。線路状導体パターン103c、103dの他端と、線路状導体パターン103e、103fの一端とが、ビア導体105bによって接続されている。線路状導体パターン103e、103fの他端と、線路状導体パターン103g、103hの一端とが、ビア導体105cによって接続されている。以上によって、インダクタ106が構成されている。
また、積層型電子部品1100の内部には、線路状導体パターン104a〜104hを、ビア導体105d〜105fによって接続して、もう1つのインダクタ107が形成されている。なお、インダクタ107も、上下に隣接する2つの線路状導体パターンを1組として1つのターンを構成して、インダクタを形成している。インダクタ107の、より具体的な構成は次のとおりである。
線路状導体パターン104a、104bの他端と、線路状導体パターン104c、104dの一端とが、ビア導体105dによって接続されている。線路状導体パターン104c、104dの他端と、線路状導体パターン104e、104fの一端とが、ビア導体105eによって接続されている。線路状導体パターン104e、104fの他端と、線路状導体パターン104g、104hの一端とが、ビア導体105fによって接続されている。以上によって、インダクタ107が構成されている。
積層型電子部品1100を積層体102の積層方向に透視したとき、インダクタ106を構成する線路状導体パターン103a〜103hは、重畳して配置されている。同様に、インダクタ107を構成する線路状導体パターン104a〜104hが、重畳して配置されている。
また、特許文献2(特開2003-309011号公報)にも、絶縁体層が積層された積層体の内部に、インダクタが形成された別の積層型電子部品が開示されている。
図17(A)、(B)に、特許文献2に開示された積層型電子部品(積層型インダクタ)1200を示す。ただし、図17(A)は、積層型電子部品1200の透視斜視図である。図17(B)は、積層型電子部品1200の要部分解斜視図である。
積層型電子部品1200は、積層体(絶縁積層体)201を備える。積層体201は、下から順に絶縁体層(絶縁性シート)202a〜202eが積層され、さらに最上層に図示しない保護層の絶縁体層が積層された構造からなる。
絶縁体層202aの上側主面に引出端子203が形成されている。また、絶縁体層202bの上側主面に線路状導体パターン(導体パターン)204a、絶縁体層202cの上側主面に線路状導体パターン204b、絶縁体層202dの上側主面に線路状導体パターン204c、絶縁体層202eの上側主面に線路状導体パターン204dが、それぞれ形成されている。
線路状導体パターン204a〜204dは、それぞれ、環状をなし、中心軸を同一にしている。しかしながら、線路状導体パターン204a〜204dは、径の大きさが相互に異なっている。
積層体201には、ビア導体(スルーホール)205a〜205dが形成されている。
引出端子203と線路状導体パターン204aとが、ビア導体205aによって接続されている。線路状導体パターン204aと204bとが、ビア導体205bによって接続されている。線路状導体パターン204bと204cとが、ビア導体205cによって接続されている。線路状導体パターン204cと204dとが、ビア導体205dによって接続されている。
以上の結果、積層型電子部品1200の内部に、線路状導体パターン204a、ビア導体205b、線路状導体パターン204b、ビア導体205c、線路状導体パターン204c、ビア導体205d、線路状導体パターン204dを順に繋ぐ導電路によって、インダクタが形成されている。
なお、積層型電子部品1200は、上述したとおり、線路状導体パターン204a〜204dの径の大きさが相互に異なっているため、積層体201の積層方向に透視したとき、線路状導体パターン204a〜204dは重畳していない。
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
[第1実施形態]
図1〜図4に、第1実施形態にかかる積層型電子部品100を示す。ただし、図1は積層型電子部品100の斜視図である。図2は積層型電子部品100の分解斜視図である。図3は積層型電子部品100の透視平面図である。図4は積層型電子部品100の等価回路図である。
積層型電子部品100は、積層体1を備える。積層体1は、たとえば、導体材料と同時焼成が可能なセラミックスによって作製されている。
積層体1の側面に、入出力端子2、3と、グランド端子4、5とが形成されている。入出力端子2、3、グランド端子4、5は、それぞれ、一端が積層体1の底面に延出され、他端が積層体1の天面に延出されている。入出力端子2、3、グランド端子4、5は、たとえば、Cuなどの導体材料によって作製され、表面に、Ni、Au、Snなどからなるめっき層が、単層または複数層形成されている。ただし、めっき層は、必須の構成ではない。
積層体1は、図2に示すように、9層の絶縁体層1a〜1iが下から順番に積層されたものからなる。
絶縁体層1aの下側主面に、入出力端子2、3、グランド端子4、5が形成されている。また、絶縁体層1aの側面にも、入出力端子2、3、グランド端子4、5が形成されている。なお、後述する絶縁体層1b〜1iにも、側面に入出力端子2、3、グランド端子4、5が形成されているが、特に必要ながない場合は、図面への符号の付与と、説明とを省略する場合がある。
絶縁体層1bの側面に、入出力端子2、3、グランド端子4、5が形成されている。また、絶縁体層1bの上側主面に、線路状導体パターン6a、7aが形成されている。そして、線路状導体パターン6aの一端がグランド端子4に接続され、線路状導体パターン7aの一端がグランド端子5に接続されている。
絶縁体層1cを貫通して、ビア導体8a、8bが形成されている。そして、ビア導体8aが線路状導体パターン6aの他端に接続され、ビア導体8bが線路状導体パターン7aの他端に接続されている。また、絶縁体層1cの上側主面に、線路状導体パターン6b、7bが形成されている。そして、線路状導体パターン6bの一端がビア導体8aに接続され、線路状導体パターン7bの一端がビア導体8bに接続されている。
絶縁体層1dを貫通して、ビア導体8c、8dが形成されている。そして、ビア導体8cが線路状導体パターン6bの他端に接続され、ビア導体8dが線路状導体パターン7bの他端に接続されている。また、絶縁体層1dの上側主面に、線路状導体パターン6c、7cが形成されている。そして、線路状導体パターン6cの一端がビア導体8cに接続され、線路状導体パターン7cの一端がビア導体8dに接続されている。
絶縁体層1eを貫通して、ビア導体8e、8fが形成されている。そして、ビア導体8eが線路状導体パターン6cの他端に接続され、ビア導体8fが線路状導体パターン7cの他端に接続されている。また、絶縁体層1eの上側主面に、キャパシタ導体パターン9a、10aが形成されている。そして、キャパシタ導体パターン9aがビア導体8eに接続され、キャパシタ導体パターン10aがビア導体8fに接続されている。
絶縁体層1fの側面に、入出力端子2、3、グランド端子4、5が形成されている。また、絶縁体層1fの上側主面に、キャパシタ導体パターン9b、10bが形成されている。そして、キャパシタ導体パターン9bが入出力端子2に接続され、キャパシタ導体パターン10bが入出力端子3に接続されている。
絶縁体層1gの上側主面に、キャパシタ導体パターン9c、10cが形成されている。
絶縁体層1hの上側主面に、キャパシタ導体パターン9d、10dが形成されている。キャパシタ導体パターン9dと10dとは、相互に接続されている。
なお、積層型電子部品100においては、キャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10dが、積層体1の片側(図2における左側)に偏在して配置されている。
絶縁体層1iの側面および上側主面に、入出力端子2、3、グランド端子4、5が形成されている。
線路状導体パターン6a〜6c、7a〜7c、キャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10d、ビア導体8a〜8fは、たとえば、Cuなどの導体材料によって作製されている。
積層型電子部品100においては、後述するとおり、ビア導体8eと、線路状導体パターン6cと、ビア導体8cと、線路状導体パターン6bと、ビア導体8aと、線路状導体パターン6aと、を順に繋ぐ導電路によって、インダクタL1が構成されている。また、ビア導体8fと、線路状導体パターン7cと、ビア導体8dと、線路状導体パターン7bと、ビア導体8bと、線路状導体パターン7aと、を順に繋ぐ導電路によって、インダクタL2が構成されている。
上述したとおり、図3は積層型電子部品100の透視平面図であり、積層体1(絶縁体層1a〜1i)を積層方向に透視して、インダクタL1の線路状導体パターン6a〜6c、および、インダクタL2の線路状導体パターン7a〜7cを示したものである。
積層体1の積層方向に透視したとき、インダクタL1では、下から1番目に配置された線路状導体パターン6aと、下から2番目に配置された線路状導体パターン6bとが、一点鎖線で示す、予め定められた環状の線路状導体パターン配置領域PE1内に重畳して配置されている。
しかしながら、下から3番目に配置された線路状導体パターン6cは、図3における左側の部分が、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE1から、内側に、ずらして形成され、残りの部分が環状の線路状導体パターン配置領域PE1内に配置されている。これは、線路状導体パターン6cと、下から1番目に配置された線路状導体パターン6aとの間に形成される容量を、小さくするために採用された配置構造である。
なお、下から3番目に配置された線路状導体パターン6cが、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE1から、内側に、ずらして形成されていると説明したが、下から1番目に配置された線路状導体パターン6aが、部分的に、線路状導体パターン配置領域(図示せず)から、外側に、ずらして形成されていると説明することもできる。
同様に、積層体1の積層方向に透視したとき、インダクタL2では、下から1番目に配置された線路状導体パターン7aと、下から2番目に配置された線路状導体パターン7bとが、一点鎖線で示す、予め定められた環状の線路状導体パターン配置領域PE2内に重畳して配置されている。
しかしながら、下から3番目に配置された線路状導体パターン7cは、図3における左側の部分が、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE2から、内側に、ずらして形成され、残りの部分が環状の線路状導体パターン配置領域PE2内に配置されている。これは、線路状導体パターン7cと、下から1番目に配置された線路状導体パターン7aとの間に形成される容量を、小さくするために採用された配置構造である。
なお、下から3番目に配置された線路状導体パターン7cが、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE2から、内側に、ずらして形成されていると説明したが、下から1番目に配置された線路状導体パターン7aが、部分的に、線路状導体パターン配置領域(図示せず)から、外側に、ずらして形成されていると説明することもできる。
以上の構造からなる積層型電子部品100は、従来から積層型電子部品において一般的に実施されている製造方法によって製造することができる。
積層型電子部品100は、図4に示す等価回路を備えている。
積層型電子部品100は、1対の入出力端子2、3を備える。
入出力端子2と3との間に、3つのキャパシタC1、C2、C3が、この順番で接続されている。
キャパシタC1とC2との接続点と、グランドとの間に、キャパシタC4とインダクタL1とで構成される第1の直列共振器が接続されている。なお、第1の直列共振器は、グランド端子4を経由してグランドに接続されている。
キャパシタC2とC3との接続点と、グランドとの間に、キャパシタC5とインダクタL2とで構成される第2の直列共振器が接続されている。なお、第2の直列共振器は、グランド端子5を経由してグランドに接続されている。
以上の等価回路からなる積層型電子部品100は、積層型LCフィルタであり、所望の周波数特性を備えたハイパスフィルタを構成している。
次に、積層型電子部品100の等価回路と構造との関係について説明する。
キャパシタC1は、キャパシタ導体パターン9bと9cとの間に形成される容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン9bは、入出力端子2に接続されている。
キャパシタC2は、キャパシタ導体パターン9cと9dとの間に形成される容量、および、キャパシタ導体パターン10dと10cとの間に形成される容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン9dと10dとは、相互に接続されている。
キャパシタC3は、キャパシタ導体パターン10cと10bとの間に形成される容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン10bは、入出力端子3に接続されている。
キャパシタC4は、キャパシタ導体パターン9cと9aとの間に形成される容量によって構成されている。
インダクタL1は、上述したとおり、ビア導体8eと、線路状導体パターン6cと、ビア導体8cと、線路状導体パターン6bと、ビア導体8aと、線路状導体パターン6aと、を順に繋ぐ導電路によって構成されている。なお、ビア導体8eは、キャパシタ導体パターン9aに接続されている。また、線路状導体パターン6aは、グランド端子4に接続されている。
キャパシタC5は、キャパシタ導体パターン10cと10aとの間に形成される容量によって構成されている。
インダクタL2は、上述したとおり、ビア導体8fと、線路状導体パターン7cと、ビア導体8dと、線路状導体パターン7bと、ビア導体8bと、線路状導体パターン7aと、を順に繋ぐ導電路によって構成されている。なお、ビア導体8fは、キャパシタ導体パターン10aに接続されている。また、線路状導体パターン7aは、グランド端子5に接続されている。
以上の関係により、積層型電子部品100は、積層体1の内部に、キャパシタC1〜C5およびインダクタL1、L2を使って、図4に示す等価回路からなるハイパスフィルタ回路が構成されている。
積層型電子部品100は、積層体1の積層方向に透視したとき、インダクタL1の線路状導体パターン6cが、線路状導体パターン配置領域PE1から、内側に、ずらして形成されているため、線路状導体パターン6aと6cとが完全に重畳している場合よりも、線路状導体パターン6aと6cとの間に形成される容量が小さくなっており、インダクタL1のQ値が大きくなっている。
同様に、積層型電子部品100は、積層体1の積層方向に透視したとき、インダクタL2の線路状導体パターン7cが、線路状導体パターン配置領域PE2から、内側に、ずらして形成されているため、線路状導体パターン7aと7cとが完全に重畳している場合よりも、線路状導体パターン7aと7cとの間に形成される容量が小さくなっており、インダクタL2のQ値が大きくなっている。
そして、積層型電子部品100は、インダクタL1およびL2のQ値が、それぞれ大きいため、挿入損失が小さくなっている。
また、積層型電子部品100は、線路状導体パターン6a〜6c、7a〜7cの周囲に無駄なデッドスペースがないため、平面方向の大きさが小さい。
さらに、積層型電子部品100は、積層体1の内部において、インダクタL1を構成する線路状導体パターン6a〜6cが重畳しており、線路状導体パターン6a〜6c相互間に、適度な容量が形成されている。同様に、積層体1の内部において、インダクタL2を構成する線路状導体パターン7a〜7cが重畳しており、線路状導体パターン7a〜7c相互間に、適度な容量が形成されている。積層型電子部品100は、これらの容量も活用して所望の周波数特性が形成されており、共振周波数が高すぎることがない。
図5に、第1実施形態にかかる積層型電子部品100の周波数特性を示す。
また、比較のために、比較例にかかる積層型電子部品1300を作製した。図6、図7に、積層型電子部品1300を示す。図6は積層型電子部品1300の分解斜視図、図7は積層型電子部品1300の透視平面図である。なお、積層型電子部品1300においては、積層型電子部品100から変更していない構成要素については積層型電子部品100と同じ符号を付し、積層型電子部品100から変更した構成要素についてのみ積層型電子部品100と異なる符号を付した。
積層型電子部品1300は、積層型電子部品100に部分的な変更を加えたものである。具体的には、積層型電子部品100では、絶縁体層1dの上側主面に形成された線路状導体パターン6c、7cを、それぞれ、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2から、内側に、ずらして形成していた。これに対し、積層型電子部品1300では、絶縁体層1dの上側主面に形成された線路状導体パターン306c、307cを、それぞれ、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2の範囲内に形成した。すなわち、積層型電子部品1300では、線路状導体パターン306c、307cを、部分的に、ずらすことをしていない。積層型電子部品1300の他の構成は、積層型電子部品100と同じである。
図8に、比較例にかかる積層型電子部品1300の周波数特性を示す。
図5、図8に示すように、積層型電子部品100、積層型電子部品1300、それぞれについて、通過帯域内の5.150GHz(M01)、5.950GHz(M04)と、通過帯域外の4.960GHz(M02)、2.940GHz(M05)とにおいて、S(2、1)特性における減衰量を測定した。また、積層型電子部品100、積層型電子部品1300、それぞれについて、S(1、1)特性に形成された極(M03)の減衰量を測定した。
図5、図8から分かるように、通過帯域内の5.150GHz(M01)における減衰量は、積層型電子部品1300が−3.006dBであるのに対し、積層型電子部品100は−3.000dBであり、積層型電子部品100の方が積層型電子部品1300よりも小さかった。一方、通過帯域外の4.960GHz(M02)における減衰量は、積層型電子部品1300が−12.806dBであるのに対し、積層型電子部品100は−13.541dBであり、積層型電子部品100の方が積層型電子部品1300よりも大きかった。このように、積層型電子部品100は、積層型電子部品1300よりも、優れたフィルタ特性を備えており、挿入損失も小さかった。これは、積層型電子部品100が、線路状導体パターン6cをずらして形成し、線路状導体パターン6aと線路状導体パターン6cとの間に形成される不要な容量を小さくして、インダクタL1のQ値を大きくしたこと、および、線路状導体パターン7cをずらして形成し、線路状導体パターン7aと線路状導体パターン7cとの間に形成される不要な容量を小さくして、インダクタL2のQ値を大きくしたことに起因しているものと考えられる。
[第2実施形態]
図9、図10に、第2実施形態にかかる積層型電子部品200を示す。ただし、図9は積層型電子部品200の分解斜視図である。図10は積層型電子部品200の透視平面図である。なお、積層型電子部品200においては、第1実施形態にかかる積層型電子部品100から変更していない構成要素については積層型電子部品100と同じ符号を付し、積層型電子部品100から変更した構成要素についてのみ積層型電子部品100と異なる符号を付した。
積層型電子部品200は、第1実施形態にかかる積層型電子部品100に部分的な変更を加えたものである。具体的には、積層型電子部品100では、図2、図3に示すように、絶縁体層1dの上側主面に形成された線路状導体パターン6c、7cを、それぞれ、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2から、内側に、ずらして形成していた。これに対し、積層型電子部品200では、絶縁体層1dの上側主面に形成された線路状導体パターン26c、27cは、それぞれ、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2から、ずらさずに形成し、代わりに、絶縁体層1bの上側主面に形成された線路状導体パターン26a、27aを、それぞれ、部分的に、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2から、内側に、ずらして形成した。
積層型電子部品200においても、線路状導体パターン26aと26cとの重畳している面積は小さくなっており、線路状導体パターン26aと26cとの間に形成される容量は小さくなっている。そのため、インダクタL1のQ値は大きくなっている。同様に、線路状導体パターン27aと27cとの重畳している面積は小さくなっており、線路状導体パターン27aと27cとの間に形成される容量は小さくなっている。そのため、インダクタL2のQ値は大きくなっている。
図11に、積層型電子部品200の周波数特性を示す。
図11と、積層型電子部品100の周波数特性を示す図5とを比較して分かるように、通過帯域内の5.950GHz(M04)における減衰量が、積層型電子部品100が−0.666dBであったのに対し、積層型電子部品200は−0.640dBになっており、積層型電子部品200の方が積層型電子部品100よりも小さくなっている。積層型電子部品200も、優れた周波数特性を備えており、かつ、挿入損失が小さい。
[第3実施形態]
図12、図13に、第3実施形態にかかる積層型電子部品300を示す。ただし、図12は積層型電子部品300の分解斜視図である。図13は積層型電子部品300の透視平面図である。なお、積層型電子部品300においては、第1実施形態にかかる積層型電子部品100から変更していない構成要素については積層型電子部品100と同じ符号を付し、積層型電子部品100から変更した構成要素についてのみ積層型電子部品100と異なる符号を付した。
積層型電子部品300も、第1実施形態にかかる積層型電子部品100に部分的な変更を加えたものである。
積層型電子部品100では、図2に示すように、キャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10dが、積層体1の片側(図2における左側)に偏在して配置されていた。積層型電子部品300においても、この構成に変更はなく、図12に示すように、キャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10dが、積層体1の片側(図12における左側)に偏在して配置されている。
積層型電子部品100では、図2、図3に示すように、絶縁体層1dの上側主面に形成された線路状導体パターン6c、7cを、それぞれ、積層体1のキャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10dが偏在して配置された側(図2における左側)において、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2から、内側に、ずらして形成していた。これに対し、積層型電子部品300では、絶縁体層1dの上側主面に形成された線路状導体パターン36c、37cを、それぞれ、積層体1のキャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10dが偏在して配置されていない側(図12における右側)において、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2から、内側に、ずらして形成した。なお、線路状導体パターン36c、37cは、キャパシタ導体パターン9a〜9d、10a〜10dが偏在して配置された側(図12における左側)においては、ずらされておらず、線路状導体パターン配置領域PE1、PE2内に形成されている。
積層型電子部品300においては、線路状導体パターン6bと36cとの重畳している面積が小さくなっており、線路状導体パターン6bと36cとの間に形成される容量が小さくなっている。そのため、インダクタL1のQ値が大きくなっている。同様に、線路状導体パターン7bと37cとの重畳している面積が小さくなっており、線路状導体パターン7bと37cとの間に形成される容量が小さくなっている。そのため、インダクタL2のQ値が大きくなっている。
図13に、積層型電子部品300の周波数特性を示す。
図13と、積層型電子部品100の周波数特性を示す図5とを比較して分かるように、積層型電子部品300では、S(1、1)特性に形成される極(M03)の周波数が、積層型電子部品100のものよりも、高周波側にシフトしている。具体的には、積層型電子部品100のS(1、1)特性に形成される極(M03)の周波数が5.740GHzであったのに対し、積層型電子部品100のS(1、1)特性に形成される極(M03)の周波数は5.820GHzになっている。
積層型電子部品300の構造をとれば、S(1、1)特性に形成される極(M03)の周波数を高周波側にシフトさせることができる。S(1、1)特性の極(M03)は、主に、入力側の直列共振器の容量によって形成されているが、積層型電子部品300は、インダクタL1の線路状導体パターン6bと36cとの間の容量と、インダクタL2の線路状導体パターン6bと36cとの間の容量とが小さくなったことにより、高周波側にシフトしたものと考えられる。
また、積層型電子部品300の通過帯域内の5.950GHz(M04)における減衰量は−0.606dBであり、積層型電子部品100の−0.666dBよりも小さくなっている。
積層型電子部品300も、優れた周波数特性を備えており、かつ、挿入損失が小さい。
[第4実施形態]
図15に、第4実施形態にかかる積層型電子部品400を示す。ただし、図15は積層型電子部品400の要部分解斜視図である。なお、図15では、絶縁体層1eから上に積層された、絶縁体層1e〜1iの図示を省略している。また、積層型電子部品400においては、第1実施形態にかかる積層型電子部品100から変更していない構成要素については積層型電子部品100と同じ符号を付し、積層型電子部品100から変更した構成要素についてのみ積層型電子部品100と異なる符号を付した。
積層型電子部品400は、第1実施形態にかかる積層型電子部品100に、構成を追加したものである。具体的には、積層型電子部品100の絶縁体層1bと1cとの間に、絶縁体層1bと同じ構成からなる絶縁体層41bを追加した。同様に、絶縁体層1cと1dとの間に、絶縁体層1cと同じ構成からなる絶縁体層41cを追加し、絶縁体層1dと1eとの間に、絶縁体層1dと同じ構成からなる絶縁体層41dを追加した。すなわち、積層型電子部品400は、特許文献1に開示された積層型電子部品1100と同じように、インダクタL1を構成する線路状導体パターン6a〜6cを、それぞれ2層を1組として構成するとともに、インダクタL2を構成する線路状導体パターン7a〜7cを、それぞれ2層を1組として構成した。接続関係を、さらに詳しく説明すると、次のとおりである。
インダクタL1は、2層を1組として構成された線路状導体パターン6aの他端と、2層を1組として構成された線路状導体パターン6bの一端とが、ビア導体8aによって接続され、2層を1組として構成された線路状導体パターン6bの他端と、2層を1組として構成された線路状導体パターン6cの一端とが、ビア導体8cによって接続されたものからなる。同様に、インダクタL2は、2層を1組として構成された線路状導体パターン7aの他端と、2層を1組として構成された線路状導体パターン7bの一端とが、ビア導体8bによって接続され、2層を1組として構成された線路状導体パターン7bの他端と、2層を1組として構成された線路状導体パターン7cの一端とが、ビア導体8dによって接続されたものからなる。
積層型電子部品400は、インダクタL1を構成する線路状導体パターン6a〜6cを、それぞれ2層を1組として構成し、内部抵抗を小さくしているため、インダクタL1のQ値がさらに大きくなっている。また、インダクタL2を構成する線路状導体パターン7a〜7cを、それぞれ2層を1組として構成し、内部抵抗を小さくしているため、インダクタL2のQ値がさらに大きくなっている。なお、2層を1組とするのに代えて、3層以上を1組として構成しても良い。
以上、第1実施形態〜第4実施形態にかかる積層型電子部品100、200、300、400について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
たとえば、積層型電子部品100、200、300、400は、積層型LCフィルタ(積層型LCハイパスフィルタ)であったが、本発明の積層型電子部品は、積層型LCフィルタには限られず、他の種類の積層型電子部品であっても良い。また、インダクタを備えていれば良く、キャパシタを備えている必要はなく、たとえば積層型インダクタであっても良い。また、積層型LCフィルタである場合であっても、積層型LCハイパスフィルタには限られず、積層型LCローパスフィルタ、積層型LCバンドパスフィルタなど、他の種類の積層型LCフィルタであっても良い。
また、積層型電子部品100、200、300、400は、内部に2つのインダクタL1、L2が形成されていたが、インダクタの数は任意であり、1つであっても良く、3つ以上であっても良い。さらに、インダクタのターン数も任意であり、上述した内容には限定されない。