JP2018125407A - 積層構造体、積層構造体の製造方法、電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び電気機械変換素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明に係る積層構造体を備えた液体吐出ヘッドを搭載した液体を吐出する装置の一例である、インクジェット記録装置の一つ目の実施形態(実施形態1)について説明する。
図2は、実施形態1に係るインクジェット記録装置の一例(以下、「プリンタ200」と呼ぶ)の斜視図であり、図3は、プリンタ200の機構部を側面から見た説明図である。図2の斜視図では、プリンタ200の装置本体81の外装の内側にある各部材を便宜的に実線で示している。
図2中の矢印「α」で示す方向が主走査方向であり、図2及び図3中の矢印「β」で示す方向が副走査方向である。
図4は、記録ヘッド94の分解斜視図である。
図4では、図中の上側からノズル基板80、液室基板71及び保護基板72を示している。
フレキシブル基板73の振動板が振動することにより、加圧液室70の内部が加圧され、加圧液室70内のインクがノズル孔79から外部に吐出される。インクを吐出することによってインクが減少した加圧液室70は、共通液室76内のインクが流体抵抗部75を介して供給される。
密着層21、下部電極22及び配向性制御層23は、圧電体膜30の結晶性を左右する下地膜20として機能する。
上部電極40は、導電性酸化物層41と上部電極層42とにより構成されている。加圧液室70は、基体部10によって形成される隔壁部10aと、振動板11と、ノズル基板80とで囲まれるように形成され、ノズル基板80に設けられたノズル孔79に連通している。
基体部10上に、絶縁体で構成される振動板11が積層されている。さらに、その上に密着層21が形成され、白金族(Pt族)の材料からなる下部電極22が形成されている。密着層21はPt族の材料からなる下部電極22の膜の振動板11に対する密着性を向上させるために配置される。
同様にして、圧電体膜30をフォトリソグラフィーとエッチングとの技術により、必要な素子の形状に形成する。
密着層21の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。
酸化チタン膜は、その上に積層する圧電体膜30の作成時に塗布するゾルゲル液のPZTと反応して、TiリッチなPZT膜を生成することができる。TiリッチなPZT膜は、(100)面に優先配向するPZT膜の結晶源として働き、その上に積層されていくPZT膜の(100)または(001)の主配向を形成できる。
また、配向性制御層23としてチタン酸鉛を用いる場合には、(100)(100)面に優先配向するPZT膜の結晶源として直接的に働き、その上に積層されていくPZT膜の(100)または(001)の主配向を形成できる。
PZT膜は、下記(1)式を用いて得られる(100)面及び/または(001)面の配向度が85[%]以上であり、かつ、(110)面の配向度が5[%]以下であることが好ましい。さらに、(100)面及び/または(001)面の配向度が90[%]以上であることがより好ましい。この配向度が85[%]未満であると、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。
複数の薄膜ピエゾ素子にわたって共通電極として形成されている下電極において、下部電極を成膜した後の工程における洗浄工程など、物理的に膜へダメージを与える(剥す様な力が加わる)工程において、下部電極の角部から剥がれるおそれがある。このような不具合を防止する構成として、特許文献1には、下部電極の角部に丸み(ラウンド)を形成し、下部電極の角部へ加わる力を分散させて膜剥がれを防止する構成が記載されている。
しかし、必要な薄膜材料を成膜する技術を用いた積層成膜及び加工を繰り返す工法において、工程の順を追って白金膜の密着性を調査した所工程を進めるに従って密着性が落ちていっていることが後述するスクラッチ試験の結果明らかとなった。これは、成膜された膜の下地へのダメージを充分に配慮した工法及び材料選択がなされておらず、下部電極と密着層との界面の密着強度が、下部電極を成膜した後の工程で低下していくという問題があることが新たにわかってきた。
このような不具合に対する対策の一つとして、特許文献1には、下部電極の角部に丸み(ラウンド)を形成する方法が提案されている。しかし、この方法では、本質的な界面の状態の変化を改善しておらず、後工程の影響により、工程を経るに従い膜の密着性が劣化していくという問題は解消できていない。
次に、プロセスを経る毎に、徐々に白金膜からなる下部電極と、その下地にある密着層とのスクラッチ強度が落ちる状態を確認した実験例1について説明する。
図13は、実験例1で作成した電気機械変換素子(ピエゾ素子)の作成のフローチャートである。
図14は、図13中の「T1」〜「T7」の各タイミングで行ったスクラッチ試験の結果を示すグラフである。
「T1」は、白金からなる下部電極22を成膜した後、「T2」は、PZT膜からなる圧電体膜30をエッチングした後、「T3」は、下部電極22をエッチングした後である。また、「T4」は、酸化アルミニウム(Al2O3)からなる第一保護層を形成した後であり、「T5」は、酸化ケイ素(SiO2)からなる第二保護層を形成した後である。さらに、「T6」は、配線層60を形成した後であり、「T7」は、作成した電気機械変換素子を駆動ICに接合した後である。
このとき、図15中の上方から下方に針を加圧しながら動かしたときに、所定の圧力まで加圧し続けても、試験対象の積層構造体が、層間の界面に関係なく上から少しずつ削り取られていくと、図15(a)に示すように、表面が線状に削り取られた状態となる。
「SiO2」膜の形成はTEOS(Tetraethoxysilane)ガスを有機ソースとして、プラズマプロセスを用いて形成したが、その形成の過程では、下記(2)式で示すように水が発生する。
(一般的に考えられているTEOS材料の分解の式)
この水がプロセス中の温度により水蒸気化し、酸化物保護層である「Al2O3」または堆積中の「SiO2」表面及び内部に、吸着または内蔵される。さらには、プラズマ状態であるため、イオン化するものも現れ活性度が上がる。その結果、「Al2O3」膜が形成されているにもかかわらず、白金と密着層である酸化物との間の界面の密着性を低下させるものと思われる。白金と密着層である酸化物との界面では、「Metal−O−Pt」のような結合が形成されてと考えられるが、進入した水またはその分解物により、以下の式で示すように、「Metal−O−Pt」の結合が切れるものと思われる。
または
Metal−O−H + H−O−Pt
また、圧電体膜30を機能層として用いた圧電体素子において、下側の電極に密着層21として酸化膜(具体的には酸化チタン)を用い、次に、白金族の材料からなる電極材料を積層する。このような下側の電極と、上側の電極とにより圧電体膜を挟持する構成の圧電体素子で、上部電極40を形成した後に、窒化物を含む保護層50を設ける。これにより、上部電極40を形成後、デバイス構造体形成完了に経る様々なプロセス下にて、密着性の劣化を起こさない下部電極22側の積層構造を実現できる。
図8に示す断面構造は、下部電極22まで積層した状態で、下部電極22と密着層21とをエッチングして、中央部を残す形状とし、その後、保護層50を積層する。これにより、図8に示す断面の状態となる。
次に、図1に示す断面構造の積層構造体において、保護層50として、窒化物を使用した場合(実施例1)と、酸化物を使用した場合(比較例1)とを比較した実験例2について説明する。
実施例1では、図1(a)に示す積層構造体を、次の(1)〜(5)に示す工程で形成した。
(1)シリコン基板(Si基板)(符号「10」及び「11」)上に、酸化チタン膜(符号「21」)を50[nm]の厚みで形成した。この酸化チタン膜は、スパッタ法により、チタン(Ti)を約35[nm]成膜し、その金属膜をRTA(Rapid Thermal Aneal)装置により、酸化雰囲気中で酸化し、酸化チタン(TiO2)の膜とした。
(3)その後、白金膜のみのレジストパターンを形成し、エッチングして、レジストを除去し、図1に示すような凸形の形状とした。
(4)そして、さらにその上からALD法により窒化アルミニウム(AlN)の膜を形成し、絶縁保護層(符号「50」)とした。
AlNの材料・成膜条件:
アルミニウム(Al)のソースとして、有機金属トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminum)を用い、窒素(N)のソースとしてアンモニア(NH3)を用いて、450〜500[℃]の温度で形成した。
酸化ケイ素(SiO2)膜の成膜条件は、TEOSを有機ソースとして、300〜350[℃]の温度条件にて、LPCVDにより形成した。
上記(5)の工程のように、酸化ケイ素膜を形成し、除去したのは、積層構造体の形成時におけるプロセスを経る毎の負荷を再現するためである。
装置:Keysight Technology社製 Nanoindenter G200
圧子:三角錐バーコビッチ圧子
設定条件
最大荷重:50[mN]
スクラッチ距離:200[μm]
スクラッチ速度:1[μm/s]
スクラッチ方向:三角稜の平面側にてスクラッチ
テープテストで用いたテープは、JIS Z 1522に準拠するもの(1.18[N/cm]以上の粘着力を持ったテープ)を使用し、45度の剥離角度で行った。表1に示すように、白金膜と酸化チタンの膜との界面のスクラッチ強度は低下したものの、平均値で15[%]の低下であり、後述する比較例1と比べ急激な変化は見られなかった。
比較例1では、実施例1でALD法で絶縁保護層を形成した材料が窒化アルミニウム(AlN)であったものを、酸化アルミニウム(Al2O3)とした点以外は、実施例1と同様に処理をして、比較例1の積層構造体とした。この比較例1についても同じ様にスクラッチ試験を実施した結果を表2に示す。
これは、以下の理由によるものと思われる。
すなわち、TEOSをソース材料としたプラズマ環境下で、水成分の影響を受け水成分との親和性のある酸化物材料(Al2O3)の表面及び内部に、水蒸気、水蒸気が水により分解した水素イオンまたは水酸イオンは発生する。これらの発生物が、白金膜と酸化チタン膜との界面の結合に何らかの作用をし、その密着性を低下させたものと思われる。
次に、図5及び図6に示す断面構造の積層構造体において、保護層50として、窒化物を使用した場合(実施例2)と、酸化物を使用した場合(比較例2)とを比較した実験例3について説明する。
比較例2では、シリコン基板(Si基板)からなる基体部10の表面に、熱酸化膜を形成後、CVDにより積層型の振動板11を形成した。
ここで、比較例2の振動板11の詳細について説明すると、シリコンウェハに熱酸化膜(膜厚が600[nm])を形成し、その上にLPCVD法により作製したものを用いる。
成膜前のプロセス室及び搬送室の真空度は、1.0×10−5[Pa]とした。プロセス条件は、基板温度(Si基板の温度)が400℃、RF投入パワーが500[W]、Arガス圧が0.16[Pa]とした。
これにより、下部電極22は(111)面が膜厚方向に配向した状態となった。
実験例3において、白金の金属膜を160[nm]とした理由は、白金膜の成膜温度条件が550[℃]以上の温度の場合、250[nm]を超えた膜厚では膜の白濁が観測されたため、160[nm]とすることで白濁とならずに作製できるからである。
上述した条件で、白金膜を成膜した後の状態での表面粗さSq(二乗平均平方根高さ)は平均で2.6[nm]であった。
形成条件は、基板温度を150[℃]、DC投入パワーを300[W]、Arガスをスパッタガスとしてそのガス圧を0.14[Pa]とした。
この際、スパッタ前のプロセス室及び搬送室の真空度は、1.0×10−5[Pa]とした。スパッタ法でチタンの金属膜を形成後、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置により、酸素雰囲気中で酸化処理し、酸化チタン(TiO2)膜として形成した。
続いて、二層目、三層目も同様にして固化焼成し、結晶化のための焼成として、670〜750[℃]、3[min]の条件により、「N2:O2=4:3」の組成のガス・フローで焼成した(二段階目及び三段階目の焼成)。
このときのX線回折の結果はPZT(100)のピーク強度150[kcps]以上(150〜200[kcps])、配向率は90〜99[%]であった。X線回折装置は、ブルカー社製D8 DISCOVERを用いた。
上部電極40も、フォトリソグラフィーの技術を用いて、感光性レジストパターンを形成し、今度は塩素系のエッチングガスにより上部電極40となる層をエッチングし、上部電極40の形成を行った。
各電極パターンの形成後、表面の保護層50として、ALD(Atomic Layer Deposition)法により酸化アルミニウム(Al2O3)膜を「60[nm]」の厚みで形成した。
これにより、積層構造の上から順に、保護層50、上部電極40、圧電体膜30、下地膜20及び振動板11からなる圧電体素子を作製した。この基本となる素子構造以外には、圧電体素子の構造としては、さらに、上下電極とコンタクトホールにより電気的に接続した配線電極パターンを形成し、圧電体素子駆動用の電源ラインの引き出しパターンを形成してある。
ここで、用いた寸法上のパラメータは、圧電体のピッチは85[μm]、圧電体幅は46[μm]、圧電体の長さは750[μm]、圧電体の厚みは2[μm]である。
また、加圧液室70としては、液室の幅は60[μm]、液室の長さは800[μm]、液室の深さは55[μm]とした。
実施例2では、比較例2でALD法による成膜で形成した保護層50が酸化アルミニウム(Al2O3)の膜であったものを、実施例1のALD製法による窒化アルミニウム(AlN)の膜とした。他は、全て比較例2と同じとして圧電体デバイスを形成した。
実施例2と比較例2とのスクラッチ試験の結果を表3に示す。
このような構成では、一般に密着性が低いといわれる白金族の膜を積層した構造体でも、その後の経過プロセスの多寡に寄らず、白金族の膜と隣接した膜との界面において、安定した密着性を確保することができる。特に、水あるいは水蒸気、または水の分解後に発生する活性なイオン類に対しても有効に白金族の薄膜の界面の密着強度を維持できる。
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例であるインクジェット記録装置の二つ目の実施形態(実施形態2)について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、実施形態2に係るインクジェット記録装置であるプリンタ200の要部平面説明図であり、図10は、実施形態2のプリンタ200の要部側面説明図である。
実施形態2のプリンタ200は、液体吐出ヘッドである記録ヘッド94と、記録ヘッド94に供給するインクを収容する液体収容部であるヘッドタンク96とを一体として、液体吐出ユニットであるインク吐出ユニット900を備える。
図9中の矢印「α」で示す方向が主走査方向であり、図9及び図10中の矢印「β」で示す方向が副走査方向である。
そして、主走査モータ97によって、駆動プーリ98と従動プーリ99と間に架け渡したタイミングベルト100を介して、キャリッジ93は主走査方向に往復移動される。
キャリッジ93には、記録ヘッド94とヘッドタンク96とを一体にしたインク吐出ユニット900を搭載している。
インク吐出ユニット900の外部に貯留されているインクをインク吐出ユニット900の記録ヘッド94に供給するためのインク供給機構494により、インクカートリッジ95に貯留されているインクがヘッドタンク96に供給される。
インクカートリッジ95はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク96には、送液ユニット452によって、インクカートリッジ95から送液チューブ456を介してインクが送液される。
用紙搬送ベルト412は、副走査モータ107によって用紙搬送タイミングベルト417及び用紙搬送タイミングプーリ418を介してベルト駆動ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
回復装置117は、記録ヘッド94のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
このような構成のプリンタ200では、用紙Pが用紙搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、用紙搬送ベルト412の周回移動によって用紙Pが副走査方向に搬送される。
図11に示すインク吐出ユニット900における例えば、第二側板491bに、上述した回復装置117、及びインク供給機構494の少なくとも何れかをさらに取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
図12に示すインク吐出ユニット900は、流路部品444が取付けられた記録ヘッド94と、流路部品444に接続された送液チューブ456で構成されている。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、図11で示した液体吐出ユニット(インク吐出ユニット900)のように、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。
また、液体吐出ユニットとして、図12で示した液体吐出ユニット(インク吐出ユニット900)のように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構とが一体化されているものがある。供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
振動板11等の基板の表面上に密着層21等の密着層を介して形成される下部電極22等の金属膜層と、金属膜層を挟んで基板とは反対側に、金属膜層を被覆するように形成された保護層50等の絶縁保護層とを有するフレキシブル基板73等の積層構造体において、絶縁保護層が窒化アルミニウム等の窒化物を含有する。
本発明者らは、上述した実施形態について説明したように、絶縁保護層に窒化物を含有するものを用いることにより、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができることを見出した。これは、以下の理由によるものと考える。
すなわち、従来の積層構造体のように、絶縁保護層に酸化物を含有するものを用いると、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることがあった。これは、酸化物は親水性が高く、酸化物で絶縁保護層を形成すると、その層の表面や内側に、水素イオン、水酸化イオン及び水といった水や水に由来する成分が発生し、これらの成分が金属膜層と密着層との界面での結合を切断する反応が生じるためと考える。これに対して、態様Aのように、絶縁保護層として酸化物よりも親水性が低い窒化物を含むものを用いることにより、絶縁保護層の周辺に水や水に由来する成分が発することを抑制できる。よって、これらの成分が金属膜層と密着層との界面での結合を切断する反応が生じることを抑制でき、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができる。
態様Aにおいて、下部電極22等の金属膜層は白金等の白金族元素を含む材料によって構成される。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、他の物質との反応性が低い白金族元素を金属膜層に用いた構成であっても、密着層を備えることで振動板11等の基板と金属膜層との密着性を確保することができる。さらに、保護層50等の絶縁保護層として、窒化物を含有するものを用いることにより、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができ、金属膜層と基板とのに接着を安定させることができる。
態様AまたはBにおいて、密着層21等の密着層は酸化チタン等の酸化物を含む材料によって構成される。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、下部電極22等の金属膜層を積層するときに、白金等の金属膜層の材料の結晶における粒界に隙間が生じることを抑制できる。よって、密着層と金属膜層との界面の結合を分離させる成分が、隙間を介して界面に進入することを抑制し、振動板11等の基板と金属膜層との密着性を確保することができる。
態様A乃至Cの何れかの態様において、保護層50等の絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、積層膜をエッチングし、凹凸があるパターン構造物上にも均一に緻密な膜を形成することができる。このため、絶縁保護層の内側に水や水に由来する成分が進入することを抑制し、振動板11等の基板と下部電極22等の金属膜層との密着性を確保することができる。
振動板11等の基板の表面上に少なくとも密着層21等の密着層、下部電極22等の第一電極層、圧電体膜30等の圧電体層及び上部電極40等の第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、積層部を覆う保護層50等の絶縁保護層とを備え、駆動信号に応じた電圧を第一電極層と第二電極層との間に印加して圧電体層を変形させるフレキシブル基板73等の電気機械変換素子において、絶縁保護層が窒化物を含有する。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができ、基板と金属膜層との密着性を確保することが可能となる。
インク等の液体を吐出するノズル孔79等の吐出孔に連通する加圧液室70等の液室の少なくとも一つの壁を構成する振動板11等の変位板を駆動信号に基づいて変位させるフレキシブル基板73等の電気機械変換素子を備えた記録ヘッド94等の液体吐出ヘッドにおいて、電気機械変換素子として、態様Eに係る電気機械変換素子を用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、下部電極22等の第一電極層と変位板との密着性を確保することができるため、安定した吐出動作が可能な液体吐出ヘッドを実現できる。
駆動信号に基づいてノズル孔79等の吐出孔からインク等の液体を吐出させる記録ヘッド94等の液体吐出ヘッドと、ヘッドタンク96等の少なくとも一つの外部部品とを一体化したインク吐出ユニット900等の液体吐出ユニットにおいて、液体吐出ヘッドとして、態様Fに係る液体吐出ヘッドを用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、安定した吐出動作が可能な液体吐出ヘッドを備えた液体吐出ユニットを実現できる。
駆動信号に基づいてノズル孔79等の吐出孔からインク等の液体を吐出させる記録ヘッド94等の液体吐出ヘッドを備えたプリンタ200等の液体を吐出する装置において、液体吐出ヘッドとして、態様Fに係る液体吐出ヘッドを用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、安定した吐出動作が可能な液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置を実現できる。
振動板11等の基板の表面上に少なくとも密着層21等の密着層、下部電極22等の第一電極層、圧電体膜30圧電体層及び上部電極40等の第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、積層部を覆う保護層50等の絶縁保護層とを備え、駆動信号に応じた電圧を第一電極層と第二電極層との間に印加して圧電体層を変形させるフレキシブル基板73等の電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法において、絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、積層膜をエッチングし、凹凸があるパターン構造物上にも均一に緻密な膜を形成することができる。このため、絶縁保護層の内側に水や水に由来する成分が進入することを抑制し、基板と金属膜層との密着性を確保することができ、変形板の安定した変形動作が可能な電気機械変換素子の製造を実現できる。
10a 隔壁部
11 振動板
20 下地膜
21 密着層
22 下部電極
23 配向性制御層
30 圧電体膜
33 インク供給路
40 上部電極
41 導電性酸化物層
42 上部電極層
50 保護層
51 層間絶縁層
60 配線層
61 配線保護層
62 スルーホール
70 加圧液室
71 液室基板
72 保護基板
73 フレキシブル基板
74 圧電素子保護空間
75 流体抵抗部
76 共通液室
79 ノズル孔
79f ノズル面
80 ノズル基板
81 装置本体
82 印字機構部
84 給紙カセット
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
90 ガイドロッド
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 記録ヘッド
95 インクカートリッジ
96 ヘッドタンク
97 主走査モータ
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 給紙ガイド部材
104 用紙搬送ローラ
105 用紙搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モータ
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112 搬送拍車
113 排紙ローラ
114 排紙拍車
115 排紙下ガイド部材
116 排紙上ガイド部材
117 回復装置
200 プリンタ
412 用紙搬送ベルト
413 ベルト駆動ローラ
414 テンションローラ
417 用紙搬送タイミングベルト
418 用紙搬送タイミングプーリ
421 キャップ部材
422 ワイパ部材
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
451 カートリッジホルダ
452 送液ユニット
456 送液チューブ
491a 第一側板
491b 第二側板
491c 背板
494 インク供給機構
495 用紙搬送機構
900 インク吐出ユニット
P 用紙
Claims (9)
- 基板の表面上に密着層を介して形成される金属膜層と、
前記金属膜層を挟んで前記基板とは反対側に、前記金属膜層を被覆するように形成された絶縁保護層とを有する積層構造体において、
前記絶縁保護層が窒化物を含有することを特徴とする積層構造体。 - 請求項1の積層構造体において、
前記金属膜層は白金族元素を含む材料によって構成されることを特徴とする積層構造体。 - 請求項1または2の積層構造体において、
前記密着層は酸化物を含む材料によって構成されることを特徴とする積層構造体。 - 請求項1乃至3の何れか一に記載の積層構造体を製造する積層構造体の製造方法において、
前記絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いたことを特徴とする積層構造体の製造方法。 - 基板の表面上に少なくとも密着層、第一電極層、圧電体層及び第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、
前記積層部を覆う絶縁保護層とを備え、
駆動信号に応じた電圧を前記第一電極層と前記第二電極層との間に印加して前記圧電体層を変形させる電気機械変換素子において、
前記絶縁保護層が窒化物を含有することを特徴とする電気機械変換素子。 - 液体を吐出する吐出孔に連通する液室の少なくとも一つの壁を構成する変位板を駆動信号に基づいて変位させる電気機械変換素子を備えた液体吐出ヘッドにおいて、
前記電気機械変換素子として、請求項5に記載の電気機械変換素子を用いたことを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 駆動信号に基づいて吐出孔から液体を吐出させる液体吐出ヘッドと、少なくとも一つの外部部品とを一体化した液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項6に記載の液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とする液体吐出ユニット。 - 駆動信号に基づいて吐出孔から液体を吐出させる液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置において、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項6に記載の液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とする液体を吐出する装置。 - 基板の表面上に少なくとも密着層、第一電極層、圧電体層及び第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、前記積層部を覆う絶縁保護層とを備え、駆動信号に応じた電圧を前記第一電極層と前記第二電極層との間に印加して前記圧電体層を変形させる電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法において、
前記絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いたことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
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