JP2018125407A - 積層構造体、積層構造体の製造方法、電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び電気機械変換素子の製造方法 - Google Patents

積層構造体、積層構造体の製造方法、電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び電気機械変換素子の製造方法 Download PDF

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【課題】基板と密着層と金属膜層と絶縁保護層とを備えた積層構造体において、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができる積層構造体を提供する。【解決手段】基板である振動板11の表面上に密着層である密着層21を介して形成される金属膜層である下部電極22と、下部電極22を挟んで振動板11とは反対側に、下部電極22を被覆するように形成された絶縁保護層である保護層50とを有する積層構造体であるフレキシブル基板において、保護層が窒化物である窒化アルミニウムを含有する。【選択図】図1

Description

本発明は、積層構造体、積層構造体の製造方法、電気機械変換素子、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び電気機械変換素子の製造方法に関するものである。
従来、インクジェット記録装置等の画像形成装置において、液室内の液体を吐出孔から吐出させるために液室の壁面を構成する基板である変位板を駆動信号に応じて変位させる電気機械変換素子を複数層からなる積層構造体で構成するものが知られている。
例えば、特許文献1には、変位板の上に形成する電極層として、高温環境化で安定的な金属である白金族を含む金属層を形成する構成で、この金属層と変位板との密着性を向上させる密着層を備える積層構造体が記載されている。この積層構造体は、金属層を被覆する絶縁保護層を備える。
金属層を覆う絶縁保護層を、酸化物を含む材料によって形成すると金属層と密着層との密着性が低下し、金属層と密着層との界面で剥離が生じることがあった。
上述した課題を解決するために、本発明は、基板の表面上に密着層を介して形成される金属膜層と、前記金属膜層を挟んで前記基板とは反対側に、前記金属膜層を被覆するように形成された絶縁保護層とを有する積層構造体において、前記絶縁保護層が窒化物を含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、基板と密着層と金属膜層と絶縁保護層とを備えた積層構造体において、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができる、という優れた効果がある。
記録ヘッドの図5中のB−B断面の上部の断面説明図。 実施形態1に係るプリンタの斜視図。 実施形態1に係るプリンタの側面図。 記録ヘッドの分解斜視図。 加圧液室の長手方向に平行な断面における記録ヘッドの断面説明図。 加圧液室の短手方向に平行な断面における記録ヘッドの断面説明図。 酸化物と窒化物との水の接触角の値を比較したグラフ。 図5中のB−B断面の上部の他の例の説明図。 実施形態2に係るプリンタの平面図。 実施形態2に係るプリンタの側面図。 インク吐出ユニットの他の例の平面図。 インク吐出ユニットのさらに他の例の正面図。 実験例1で作成した電気機械変換素子の作成のフローチャート。 実験例1のスクラッチ試験の結果を示すグラフ。 スクラッチ試験で下部電極に剥がれが生じなかった場合と、生じた場合とを示す説明図。
〔実施形態1〕
本発明に係る積層構造体を備えた液体吐出ヘッドを搭載した液体を吐出する装置の一例である、インクジェット記録装置の一つ目の実施形態(実施形態1)について説明する。
図2は、実施形態1に係るインクジェット記録装置の一例(以下、「プリンタ200」と呼ぶ)の斜視図であり、図3は、プリンタ200の機構部を側面から見た説明図である。図2の斜視図では、プリンタ200の装置本体81の外装の内側にある各部材を便宜的に実線で示している。
プリンタ200は、プリンタ200の装置本体81の内部に印字機構部82等を収納している。印字機構部82は、主走査方向に移動可能なキャリッジ93と、キャリッジ93に搭載したインクジェットヘッドである記録ヘッド94と、記録ヘッド94へ画像形成用の液体であるインクを供給する液体カートリッジとしてのインクカートリッジ95とを備える。
図2中の矢印「α」で示す方向が主走査方向であり、図2及び図3中の矢印「β」で示す方向が副走査方向である。
装置本体81の下方部には、多数枚の用紙Pを積載可能な給紙カセット(あるいは給紙トレイでもよい。)84を装置本体81の前方側(図3中の左側)から抜き差し自在に装着することができる。また、用紙Pを手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。そして、給紙カセット84または手差しトレイ85から給送される用紙Pを取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、装置本体81の左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持している。このキャリッジ93には、複数のインク吐出口としてのノズル孔(後述する図4〜図6中の符号「79」)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けるように、複数の記録ヘッド94が装着されている。複数の記録ヘッド94は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するヘッド(インクジェットヘッド)である。また、キャリッジ93には、記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各色それぞれのインクカートリッジ95を、交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する大気口、下方には記録ヘッド94へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。この多孔質体の毛管力により記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、本実施形態では各色に対応させて四個の記録ヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出する複数のノズル孔を有する一個のインクジェットヘッドを用いてもよい。
キャリッジ93は、後方側(用紙搬送方向下流側、図3中の右側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側、図3中の左側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100が張装されている。このタイミングベルト100は、キャリッジ93に固定されており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
プリンタ200は、給紙カセット84にセットした用紙Pを記録ヘッド94の下方に搬送する構成として、給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、給紙ガイド部材103と、用紙搬送ローラ104と、先端コロ106とを備える。給紙ローラ101及びフリクションパッド102は、給紙カセット84から用紙Pを分離給送し、給紙ガイド部材103は用紙Pを案内する。また、用紙搬送ローラ104は、給紙された用紙Pを反転させて搬送する。先端コロ106は、用紙搬送ローラ104の周面に押し付けられる用紙搬送コロ105及び用紙搬送ローラ104からの用紙Pの送り出し角度を規定する。用紙搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
また、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応する位置には、用紙搬送ローラ104から送り出された用紙Pを記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を備える。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙Pを排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、搬送拍車112を設けられている。さらに、用紙Pを排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び排紙拍車114と、排紙経路を形成する排紙下ガイド部材115及び排紙上ガイド部材116とを備える。
画像形成時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙Pにインクを吐出して一行分の画像を形成する。一行分の画像形成が終わったら、用紙Pを副走査方向に所定量搬送し、再び停止する。その後、停止している用紙Pに対して次の行の画像を形成する。画像形成終了信号または、用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、画像形成動作を終了させ用紙Pを排紙する。
プリンタ200は、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置に、記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を備える。回復装置117はキャッピング手段と吸引手段とクリーニング手段とを有する。プリンタ200では、画像形成を行わない印字待機中に、キャリッジ93を回復装置117側に移動し、回復装置117のキャッピング手段で記録ヘッド94をキャッピングし、ノズルを湿潤状態に保つことで、インク乾燥による吐出不良を防止する。また、画像形成の途中などに用紙P上に形成する画像とは関係しないインクをキャッピング手段内に吐出することにより、全てのノズルのインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド94のノズルを密封し、チューブを通して吸引手段でノズルからインクとともに気泡等を吸い出す。これにより、ノズル面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、装置本体81の下部に設置された廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、本実施形態のプリンタ200では、吐出不良を回復することができるので、振動板駆動不良によるインク滴の吐出不良を抑制でき、安定したインク滴吐出特性が得られて、画像品質が向上する。
次に、プリンタ200が備える液体吐出ヘッドである記録ヘッド94について説明する。
図4は、記録ヘッド94の分解斜視図である。
図4では、図中の上側からノズル基板80、液室基板71及び保護基板72を示している。
ノズル基板80には、記録ヘッド94内のインクを吐出するノズル孔79が形成されている。液室基板71は、共通液室76、流体抵抗部75及び加圧液室70が形成された基体部10と、圧電素子の駆動のための駆動回路が搭載されたフレキシブル基板73とを備える。保護基板72は、フレキシブル基板73を保護する圧電素子保護空間74と、インク供給路33とが形成されている。
インクカートリッジ95から記録ヘッド94に供給されたインクは、インク供給路33を通って共通液室76に供給され、流体抵抗部75を通って加圧液室70に供給される。
フレキシブル基板73の振動板が振動することにより、加圧液室70の内部が加圧され、加圧液室70内のインクがノズル孔79から外部に吐出される。インクを吐出することによってインクが減少した加圧液室70は、共通液室76内のインクが流体抵抗部75を介して供給される。
図4では、記録ヘッド94におけるノズル孔79の開口が形成されたノズル面79fを図中の上側に示している。このノズル面79fは、記録ヘッド94をプリンタ200に取り付けたときに記録ヘッド94の下面となり、画像形成時には記録媒体である用紙Pの上面とノズル面79fとが対向する。
図5及び図6は、記録ヘッド94が備える液室基板71とノズル基板80との加圧液室70近傍の概略を示す断面図である。図5は、加圧液室70の長手方向に平行な断面でノズル孔79を設けた位置における断面説明図である。図6は、加圧液室70の短手方向に平行な断面でノズル孔79を設けた位置における断面説明図であり、図5中のA−A断面の断面説明図である。
液室基板71は、シリコン基板からなる基体部10の上に、フレキシブル基板73が形成されている。フレキシブル基板73は、下層から順に振動板11、密着層21、下部電極22、配向性制御層23、圧電体膜30及び上部電極40からなる積層構造と、この積層構造を覆う保護層50とを有する積層構造体を備えている。
基体部10の上に積層される振動板11は、絶縁体から構成されている。
密着層21、下部電極22及び配向性制御層23は、圧電体膜30の結晶性を左右する下地膜20として機能する。
上部電極40は、導電性酸化物層41と上部電極層42とにより構成されている。加圧液室70は、基体部10によって形成される隔壁部10aと、振動板11と、ノズル基板80とで囲まれるように形成され、ノズル基板80に設けられたノズル孔79に連通している。
また、フレキシブル基板73は、上部電極層42と電源とを接続する配線層60と、配線層60と保護層50との間に配置された層間絶縁層51と、配線層60を覆う配線保護層61とを備える。
次に、本実施形態のフレキシブル基板73の構造について具体的に説明する。
基体部10上に、絶縁体で構成される振動板11が積層されている。さらに、その上に密着層21が形成され、白金族(Pt族)の材料からなる下部電極22が形成されている。密着層21はPt族の材料からなる下部電極22の膜の振動板11に対する密着性を向上させるために配置される。
下部電極22のさらに上層には圧電体膜30の結晶性の配向性を制御するための配向性制御層23を形成する。白金族の材料は、成膜(111)配向となりやすいので、そのまま(111)配向の圧電体膜30を得る場合は、配向性制御層23は必要ない。しかし、本実施形態のフレキシブル基板73では、(100)配向の圧電体膜30を得るために配向性制御層23を用いている。配向性制御層23の上には圧電体膜30が形成されている。
圧電体膜30の上層にはさらに電極として導電性酸化物層41、及び白金族の材料の金属膜からなる上部電極層42を形成する。ここで、白金族の材料の金属膜からなる上部電極層42と圧電体膜30との間に導電性酸化物層41を設けたのは上部電極層42の圧電体膜30に対する密着性を確保するためである。
次に、圧電体素子を形成するために、導電性酸化物層41と白金族の材料の金属膜からなる上部電極層42とからなる上部電極40を、フォトリソグラフィーとエッチングとの技術により、必要な形状に形成する。
同様にして、圧電体膜30をフォトリソグラフィーとエッチングとの技術により、必要な素子の形状に形成する。
次に、耐候性を確保するため保護層50を形成する。本実施形態では、保護層50は、窒化物を含む絶縁体層である。
フレキシブル基板73の作成時には、配線層60を形成する前に、層間絶縁の目的でとして層間絶縁層51を形成した後、フォトリソグラフィーとエッチングとの技術により、層間絶縁層51を必要な形状に形成する。必要な形状の形成としては、配線形状として必要の無い部分のエッチングを行い、このエッチングと同時に上部電極40と配線層60とのコンタクトを取るためのスルーホール62の形成を行う。続いて、配線層60を成膜後、フォトリソグラフィーとエッチングとの技術により、配線層60を必要な形状に形成する。
さらに、配線保護層61を成膜し、フォトリソグラフィーとエッチングの技術により、配線保護層61を必要な形状に形成する。配線が形成された素子部分は、駆動手段へと電気的な接続ができるように引き回す。図5では、上部電極40と電源とを接続する配線保護層61を示しているが、下部電極22に関しても上部電極40と同様に、層間絶縁層を形成し、層間絶縁層に設けたスルーホールを介して接続される配線電極を形成する。そして、この配線電極を駆動手段へと電気的な接続ができるように引き回し、素子部分の構造が完成する。
次に、フレキシブル基板73の各層について具体的に説明する。
基体部10としては、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常、100〜600[μm]の厚みを持つことが好ましい。シリコン単結晶の面方位としては、(100)、(110)及び(111)の三種がある。半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本実施形態の基体部10では、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用する。
フレキシブル基板73の作成時に、加圧液室70を形成する際に、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していく。このエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは、シリコン単結晶基板の結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えば、KOH(水酸化カリウム)等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。
よって、(100)では約54.74[°]の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対し、(110)の面方位では深い溝を掘ることができる。このため、高い剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることが可能である。このため、本実施形態では、 (110)の面方位を持った単結晶基板を基体部10に使用することも可能である。ただし、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうということが挙げられるため、この辺りも留意して利用している。
振動板11は、圧電体膜30によって発生した力を受けて変形変位し、加圧液室70を加圧し、これにより、加圧液室70内のインクがインク滴としてノズル孔79から吐出する。このような吐出動作を実現するうえでは、振動板11は所定の強度を有したものであることが好ましい。振動板11は、単一材料からなる単層構造の振動板でも良いし、複数の膜を積層した復層構造のものでも良い。
振動板11の形成方法としては、スパッタ法、スパッタ法と熱酸化法との組み合わせ、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等が挙げられる。本実施形態の振動板11は、基体部10を形成するシリコン単結晶基板に振動板11の材料を積層して作成するものであり、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により作製したものを用いた。
振動板11の表面粗さとしては、算術平均粗さで4[nm]以下であることが好ましい。この範囲を超えると、その後に成膜されるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜(圧電体膜30)の絶縁耐圧が非常に悪く、リークし易くなってしまうおそれがある。
振動板11の材料としては、ポリシリコン、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。LPCVD法で成膜される膜で構成される振動板11は、半導体やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスで一般的に従来から適用されている膜である。このような膜は、加工もし易いことから、新たなプロセス課題を持ち込まず、SOI(Silicon On Insulator)等の高価な基板を用いることなく、安定した振動板11が得られる。
次に、本実施形態に用いる液体吐出ヘッド(記録ヘッド94)の製造方法の一例について説明する。 まず、(100)の面方位を持つシリコン単結晶基板(基体部10)上に、振動板構成膜として、例えば、LPCVD法(あるいは熱処理製膜法)でシリコン酸化膜(例えば厚さ200[nm])を成膜する。その後、ポリシリコン膜(例えば厚さ500[nm])を成膜する。ポリシリコン膜の厚さは、0.1[μm]以上、3[μm]以下の範囲内であるのが好ましく、ポリシリコン膜の表面粗さは、算術平均粗さで5[nm]以下であることが好ましい。その後、振動板構成膜として、LPCVD法でシリコン窒化膜を成膜し、複数の膜からなる復層構造の振動板11を形成する。
このように形成した振動板11の上には、下部電極22となる下部電極材料膜を形成する。このとき、下部電極22の材料として白金を使用する場合、上述した振動板11の上に下部電極材料膜を直接形成すると、振動板11と下部電極22との密着性が悪くなるおそれがある。このため、本実施形態では、Ti(チタン)、TiO(酸化チタン)、Ta(タンタル)、Ta(酸化タンタル)、Ta(窒化タンタル)等からなる密着層21を下部電極材料膜の前に積層する。
密着層21の作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。
本実施形態の下部電極22を形成する下部電極材料としては、(111)配向性が高い白金(Pt)を用いている。これにより、下部電極22となる下部電極材料膜をX線回折によって白金の結晶性を評価した場合に、ピーク強度の高い下部電極材料膜を得ることができる。
次に、下部電極22となる下部電極材料膜(Pt膜)の上に配向性制御層23を成膜する。配向性制御層23の材料としては、酸化チタンまたはチタン酸鉛が好ましい。
酸化チタン膜は、その上に積層する圧電体膜30の作成時に塗布するゾルゲル液のPZTと反応して、TiリッチなPZT膜を生成することができる。TiリッチなPZT膜は、(100)面に優先配向するPZT膜の結晶源として働き、その上に積層されていくPZT膜の(100)または(001)の主配向を形成できる。
また、配向性制御層23としてチタン酸鉛を用いる場合には、(100)(100)面に優先配向するPZT膜の結晶源として直接的に働き、その上に積層されていくPZT膜の(100)または(001)の主配向を形成できる。
密着層21の膜厚は、0.02[μm]以上、0.5[μm]以下の範囲が好ましく、0.03[μm]以上、0.1[μm]以下の範囲がさらに好ましい。
圧電体膜30としては、PZTを主に使用した。PZTは、鉛、チタン及びジルコニウムを少なくとも含むペロブスカイト型構造を有する複合酸化物からなる圧電体である。このようなPZTは、ジルコン酸鉛(PbTiO)とチタン酸鉛(PbTiO)との固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成は、PbZrOとPbTiOとの比率が、53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53Ti0.47)O,一般的にはPZT(53/47)と示される。
圧電体膜30の材料としては、チタン酸バリウム等のPZT以外の複合酸化物を用いることができる。圧電体膜30の材料にチタン酸バリウムを用いる場合は、バリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることで、チタン酸バリウム前駆体溶液を作製することができ、これを用いてチタン酸バリウムからなる圧電体膜を形成できる。
圧電体の材料は、一般式「ABO」で記述され、「A=Pb,Ba,Sr」、「B=Ti,Zr,Sn,Ni,Zn,Mg,Nb」を主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述としては、例えば、「(Pb1−X,Ba)(Zr1−Y,Ti)O」、「(Pb1−X,Sr)(Zr1−Y,Ti)O」などがあり、これらはAサイトの「Pb」の一部を「Ba」や「Sr」で置換した場合である。このような置換は二価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
PZTの圧電体膜30の作製方法としては、スパッタ法もしくはSol−gel法を用いて、スピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニングが必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。PZTの圧電体膜30をSol−gel法により作製する場合、酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ることにより、PZT前駆体溶液を作製する。金属アルコキシド化合物は、大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、PZT前駆体溶液には安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地膜20の全面(配向性制御層23の上面全域)に圧電体膜30となるPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100[nm]以下の膜厚が得られるようにPZT前駆体溶液の濃度調整が必要になる。
圧電体膜30の膜厚としては、0.5[μm]以上、5[μm]以下の範囲であることが好ましく、1[μm]以上、2[μm]以下の範囲であることがさらに好ましい。圧電体膜30の膜厚がこの範囲より小さいと、圧電効果による十分な歪変位を発生することができなくなり、この範囲より大きいと積層数が過大となり、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
本実施形態の圧電体膜30では、Sol−gel法により作製したPZT前駆体溶液を用いてスピンコートにより2[μm]のPZT膜を成膜した後、このPZT膜をX線回折装置により評価した。その結果、PZT膜として、(100)面が非常に優先配向した膜が確認された。
PZT膜は、下記(1)式を用いて得られる(100)面及び/または(001)面の配向度が85[%]以上であり、かつ、(110)面の配向度が5[%]以下であることが好ましい。さらに、(100)面及び/または(001)面の配向度が90[%]以上であることがより好ましい。この配向度が85[%]未満であると、連続駆動後の変位劣化については十分な特性が得られない。
ρ = I(hkl) / ΣI(hkl) ・・・(1)
式(1)は、X線回折により得られた(100)面、(010)面、(001)面、(011)面、(101)面、(110)面、(111)面の各配向のピーク強度の総和を1としたときのそれぞれの配向の比率を算出する。そして、各配向についての平均配向度を示す。なお、式(1)の右辺分母は各配向のピーク強度の総和であり、分子は任意の配向のピーク強度である。
(100)面及び/または(001)面と記載しているのは、次の理由による。すなわち、PZT(100)面とPZT(001)面とのX線回折(XRD:X‐ray diffraction)のピーク強度の値が近接しているため、重なったピークとして観察され、これらを区別して把握することが困難だからである。また、特性上も、PZT自体が擬似的に正方晶と考えられるため、(100)面及び/または(001)面を区別して把握する必要がない。
本実施形態では、上部電極40には特に制限はなく、Al、Cuなどの半導体プロセスで一般的に用いられる材料及びその組み合わせを用いることができる。本実施形態では、PZT膜との密着性がよく、同じペロブスカイト系の構造を持つSRO(SrRuO)を導電性酸化物層41として先に形成し、その上に白金からなる上部電極層42を形成した。 上部電極層42は、通常、成膜後に必要な素子ビットとなるようにフォトエッチングの技術を用いてパターニングされ、その上に、信頼性上必要な保護層50が形成される。その後、電源供給や信号供給のための配線層60、層間絶縁層51及び配線保護層61が設けられ、電気機械変換素子として形成される。
高温環境化で安定的な金属である白金族は、融点が高く他の物質との反応性が低いため、MEMS分野の金属電極としてよく用いられている。難点としては、他の物質との反応性が低いことにも起因するが、積層構造としたときに近接する膜との密着性が低い点が挙げられる。このため、通常は、白金族からなる金属層は、密着層を介して積層されることが多い。密着層の材料としては、チタンなどの金属、チタンを酸化させた酸化チタン、同じ白金族のイリジウムを酸化させた酸化イリジウム、LNO(LaNiO(ニッケル酸ランタン))、SRO(SrRuO(ルテニウム酸ストロンチウム))等の酸化物などが用いられる。
密着性の向上のみならこれらの物質で良いが、その後に用いられるプロセスの温度での相互拡散の起こり易さや、さらに白金族の上に積層させる機能膜の結晶性の制御をさせようとすると、用密着層にいられる材料は限られてくる。このような観点から密着層の材料としては、酸化物を用いることができ、本実施形態では酸化チタンを用いている。
また、具体的なMEMSデバイスとして、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置及び液体吐出ヘッド等がある。液体吐出ヘッドは、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧室(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される。)と、エネルギー発生手段とを備える。エネルギー発生手段としては、加圧室内のインクを加圧する圧電素子などの電気機械変換素子、ヒータなどの電気熱変換素子、インク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極とからなる素子がある。液体吐出ヘッドは、エネルギー発生手段で発生したエネルギーで、加圧室内のインクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる。
ピエゾ式の液体吐出ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長及び収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、ベンドモードの圧電アクチュエータを使用したものとの二種類がある。後者のベンドモード圧電アクチュエータをさらに薄膜化した薄膜ピエゾアクチュエータは、圧電素子の駆動力が弱いためにアクチュエータの変位効率の良い構造を作り込むことが非常に重要であり、効率を向上するためのさまざまな工夫がなされている。アクチュエータの十分な変位を得ながら、かつ長期耐久性を確保するためにピエゾ膜の膜質改善も行われてきている。
また、半導体技術である薄膜技術を転用した工法を多用して駆動部品であるアクチュエータを形成しているため、駆動部の構造強度を確保する膜の密着性を如何に確保するかによって、耐久性が異なるため、最適な工法の選択が重要である。
複数の薄膜ピエゾ素子にわたって共通電極として形成されている下電極において、下部電極を成膜した後の工程における洗浄工程など、物理的に膜へダメージを与える(剥す様な力が加わる)工程において、下部電極の角部から剥がれるおそれがある。このような不具合を防止する構成として、特許文献1には、下部電極の角部に丸み(ラウンド)を形成し、下部電極の角部へ加わる力を分散させて膜剥がれを防止する構成が記載されている。
下部電極に白金を設けた構成であっても、密着層を設けて基板と白金層との密着性を確保したり、絶縁保護膜を形成したりすることにより、初期及び構造形成後において密着性が低いと言われている白金の膜の保護を実施することができると思われていた。
しかし、必要な薄膜材料を成膜する技術を用いた積層成膜及び加工を繰り返す工法において、工程の順を追って白金膜の密着性を調査した所工程を進めるに従って密着性が落ちていっていることが後述するスクラッチ試験の結果明らかとなった。これは、成膜された膜の下地へのダメージを充分に配慮した工法及び材料選択がなされておらず、下部電極と密着層との界面の密着強度が、下部電極を成膜した後の工程で低下していくという問題があることが新たにわかってきた。
詳しくは、薄膜積層デバイスの製造の過程において、様々な工程が用いられる。電極、半導体、バリア層、その他機能性の材料層による積層膜の形成、レジスト材料のパターン形成やその剥離、エッチング、保護層(パッシベーション膜)の形成などの工程がある。これらの工程で、プラズマ状態のイオン性の粒子、特に、励起状態の水素イオン(H)、水の分解物である水酸化イオン(OH)、ラジカルが発生する。また、上述した工程で、水自体の発生や付着、進入ということも起こる。
これらの成分(水素イオン、水酸化イオン、ラジカル及び水)の透過やマイグレーションなどが原因の一つとなり、積層膜界面の密着性の低下が起こる。特に、白金族の膜を用いる積層膜構造体では白金族と密着層との界面において、密着性の低下が見られた。
このような不具合に対する対策の一つとして、特許文献1には、下部電極の角部に丸み(ラウンド)を形成する方法が提案されている。しかし、この方法では、本質的な界面の状態の変化を改善しておらず、後工程の影響により、工程を経るに従い膜の密着性が劣化していくという問題は解消できていない。
上述した成分の透過は、次のように生じる。すなわち、下部電極を構成する白金族の層は、柱状の結晶構造の結晶粒界に隙間が生じ、上述した成分がこの隙間を通過することで、下部電極を透過する。上述したマイグレーションは、分子の末端基が置き換わる現象である。
〔実験例1〕
次に、プロセスを経る毎に、徐々に白金膜からなる下部電極と、その下地にある密着層とのスクラッチ強度が落ちる状態を確認した実験例1について説明する。
図13は、実験例1で作成した電気機械変換素子(ピエゾ素子)の作成のフローチャートである。
実験例1で形成した電気機械変換素子は、図5に示す本実施形態の記録ヘッド94が備える電気機械変換素子と保護層50が異なる点以外は同様の構成を備える。具体的には、実験例1の構成では、保護層50が酸化アルミニウム(Al)からなる層と酸化ケイ素(SiO)からなる層との二層構造となっている。
図13示すフローチャートをついて順に説明すると、まず、シリコン単結晶基板からなる基体部10の表面に振動板11を形成し(S1)、その上に、酸化チタン(TiO)からなる密着層21を形成する。次に、白金(Pt)からなる下部電極22を形成し(S3)、その上に、PZT膜からなる圧電体膜30を形成し(S4)、さらに、上部電極40を形成する(S5)。次に、上部電極40をエッチングし(S6)、圧電体膜30をエッチングし(S7)、さらに、下部電極22をエッチングする(S8)。次に、酸化アルミニウム(Al)からなる第一保護層を成膜し(S9)、さらに、酸化ケイ素(SiO)からなる第二保護層を成膜した(S10)後、第一保護層と第二保護層とからなる保護層50をエッチングする(S11)。その後、アルミニウム(Al)からなる配線層60を形成し(S12)、配線層60をエッチングして(S13)駆動ICに接合する。
図13中の「T1」〜「T7」スクラッチ試験を行ったタイミングを示している。
図14は、図13中の「T1」〜「T7」の各タイミングで行ったスクラッチ試験の結果を示すグラフである。
「T1」は、白金からなる下部電極22を成膜した後、「T2」は、PZT膜からなる圧電体膜30をエッチングした後、「T3」は、下部電極22をエッチングした後である。また、「T4」は、酸化アルミニウム(Al)からなる第一保護層を形成した後であり、「T5」は、酸化ケイ素(SiO)からなる第二保護層を形成した後である。さらに、「T6」は、配線層60を形成した後であり、「T7」は、作成した電気機械変換素子を駆動ICに接合した後である。
図14では、各タイミングについて、棒グラフと「I」字のグラフとを示している。スクラッチ試験は各タイミングで十箇所行っている。図14中の「I」字のグラフは、縦線で結ばれた上下二つの横線でスクラッチ強度の最大値と最小値とを示す。詳しくは、「I」字の上の横線が、十箇所の中で剥がれ発生時の強度が最大となった箇所のスクラッチ強度を示し、下の横線が、十箇所の中で剥がれ発生時の強度が最小となった箇所のスクラッチ強度を示す。また、棒グラフは、十箇所のスクラッチ強度の平均値を示す。
図15は、スクラッチ試験で、下部電極22に剥がれが生じなかった場合と、生じた場合とを示す説明図である。スクラッチ試験では、試験対象の表面に対して試験用の針(圧子)を上から加圧しながら表面に沿って動かしていく。
このとき、図15中の上方から下方に針を加圧しながら動かしたときに、所定の圧力まで加圧し続けても、試験対象の積層構造体が、層間の界面に関係なく上から少しずつ削り取られていくと、図15(a)に示すように、表面が線状に削り取られた状態となる。
一方、所定の圧力に到達する前に、層間の界面に剥がれが生じると図15(b)に示すように、除去される幅が大きくなる。図15(b)中の矢印は剥がれが生じ始めた開始点を示している。層間の界面における密着力が弱いと、上から削ったときに、界面よりも上側の層を針で削り取る前に、界面の部分で剥がれてしまい、その後は、剥がれが広がって図15(b)の状態となる。
図14に示すように、下部電極22(Pt膜)を成膜した後は、プロセスを経るごとに徐々に下部電極22とその下地の層である密着層21とのスクラッチ強度は落ちている。特に、酸化物である「Al」からなる第一保護層形成後と、同じく酸化物である「SiO」からなる第二保護層の形成後の間で、そのスクラッチ強度が低下しているのが判る。両方とも絶縁保護層としての機能を持たせるために成膜した膜であるが、特に「Al」の膜が、その後のプロセスでのダメージを充分に防止できていないと想定することができる。
その理由について、以下の様に考えられる。
「SiO」膜の形成はTEOS(Tetraethoxysilane)ガスを有機ソースとして、プラズマプロセスを用いて形成したが、その形成の過程では、下記(2)式で示すように水が発生する。
Si(OC → SiO + 2HO +4C (2)
(一般的に考えられているTEOS材料の分解の式)
この水がプロセス中の温度により水蒸気化し、酸化物保護層である「Al」または堆積中の「SiO」表面及び内部に、吸着または内蔵される。さらには、プラズマ状態であるため、イオン化するものも現れ活性度が上がる。その結果、「Al」膜が形成されているにもかかわらず、白金と密着層である酸化物との間の界面の密着性を低下させるものと思われる。白金と密着層である酸化物との界面では、「Metal−O−Pt」のような結合が形成されてと考えられるが、進入した水またはその分解物により、以下の式で示すように、「Metal−O−Pt」の結合が切れるものと思われる。
Metal−O−Pt → Metal−O−H +Pt
または
Metal−O−H + H−O−Pt
酸化物の絶縁層では、少なからずその表面は水成分の吸着が起きたり、少なくとも「−OH」基の形成されたりすることが想定される。同様に膜の内部に到ってもその水分または水酸基の内包が考えられる。
圧電体デバイスの製造では、500[℃]以上の高温のプロセスを用いるため白金(pt)やイリジウム(Ir)など高温での変化が少なく他の物質との反応性が低い白金族の金属電極を用いることが一般に行われている。白金族を電極として用いた場合、隣接する積層膜との密着性の確保が課題となる。隣接する積層膜として振動板等の基板との密着性を確保するために、密着層を介して白金族金属を用いるという工夫がされている。
しかしながら、このような場合でも、半導体プロセスでは、使用するガス成分、プラズマやプラズマ中の水分及び成膜温度などの複合的な作用により、密着層と白金族電極との界面での密着性が劣化しているケースがある。具体的には、酸化物からなる密着層とその上に形成された白金族電極との構造の上に、さらに、絶縁層として、TEOSを用いて「SiO」絶縁層を形成しようとした場合、次のようなことが生じることが分かった。すなわち、有機ソースであるTEOSの分解反応で発生する「HO」、または、プラズマにより「HO」が分解した成分により、密着層と白金族電極との界面の密着性が低下するということが起きることが判った。この現象は、酸化物の絶縁層を白金族金属電極の上に設けた場合も同様に、半導体プロセス中に劣化が起きていたことが判った。
密着層と白金族電極との界面での密着性を確保するために、白金族電極の密着層とは逆側の面に、「HO」またはプラズマにより「HO」が分解した成分との親和性の小さな層を設ける。これにより、半導体プロセス中に発生する密着層と白金族電極との界面での密着性の劣化を防止する。具体的には、白金族電極の密着層とは逆側の面に、少なくとも窒化物を含む層を設けることで、酸化物を保護層とする場合よりも水との親和性が小さくなり、「HO」またはプラズマにより「HO」が分解した成分の進入を防ぐことができる。これにより、密着層と白金族電極との界面での密着性の劣化を抑制できる。
本発明者らは、このような想定の元に、水成分との親和性の小さい窒化膜を含んでなる保護層材料により白金を保護する保護層として用いることを試行した。保護層として、酸化物である二酸化ケイ素(SiO)を用いた場合、シラノール構造を表面に形成するため、親水性表面となりやすい。また、酸化チタンや酸化アルミニウム等の二酸化ケイ素以外の酸化物の場合もシラノール構造と同様に親水性表面になることが考えられる。一方、窒化物ではそのような構造とならないため酸化物と比較すると水分を取り込みにくい。
図7は、酸化物と窒化物との水の接触角の値を比較したグラフである。図7に示すグラフは、ケイ素(Si)、チタン(Ti)及びアルミニウム(Al)のそれぞれについて、酸化物及び窒化物に対する水の接触角を調べたものである。図7に示すように、何れの場合も酸化物よりも窒化物の方が水の接触角が高いことがわかる。すなわち、窒化物の方が酸化物よりも水との親和性が低いことを意味している。
一般に白金族とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の総称で言われる。本実施形態の下部電極22に用いる材料としては、白金族の中でも電極として実用的に用いられている白金、イリジウム、ロジウム、これらの単体または合金が好ましい。
密着層21の材料としては、上述したように、チタン、酸化チタン、タンタル、酸化タンタル、窒化タンタル等を用いることができる。密着層21の材料として、酸化チタンや酸化タルタンを用いると、白金を含む下部電極材料を積層したときに、白金の柱状構造の結晶における粒界に隙間が生じることをチタンやタルタンよりも抑制できる。この結晶の粒界の隙間が生じることを抑制することで、密着層21と下部電極22との密着性の向上を図ることができるため、密着層21の材料としては酸化チタンや酸化タルタン等の酸化物を用いることが好ましい。
本実施形態の積層構造体では、白金族の材料からなる金属膜層(下部電極22)と周辺の膜(密着層21)との剥がれを防止することで、白金族の層を含む積層構造体の密着性を多くのプロセスの下でも確保することができる。
また、圧電体膜30を機能層として用いた圧電体素子において、下側の電極に密着層21として酸化膜(具体的には酸化チタン)を用い、次に、白金族の材料からなる電極材料を積層する。このような下側の電極と、上側の電極とにより圧電体膜を挟持する構成の圧電体素子で、上部電極40を形成した後に、窒化物を含む保護層50を設ける。これにより、上部電極40を形成後、デバイス構造体形成完了に経る様々なプロセス下にて、密着性の劣化を起こさない下部電極22側の積層構造を実現できる。
本実施形態のフレキシブル基板73は、白金族の材料からなる金属電極膜の表面にPZT膜を形成した薄膜ピエゾ素子である。本実施形態のフレキシブル基板73は、その製造工程中におけるプロセスの影響により白金(上層)と酸化チタン(下層)との界面の密着性が低下し、膜剥がれが発生することを防止できる。具体的には、製造工程中に発生すると考えられる水素分子、イオン、ラジカル等からピエゾ素子を保護し、白金の触媒効果による密着層酸化チタンの劣化(分解)を防止し、下部電極の密着性低下を防止することができる。
図1は、図5に示す記録ヘッド94の図5中のB−B断面の上部の断面説明図である。図1に示すでは、シリコン基板からなる基体部10の上に、振動板11、密着層21、下部電極22及び保護層50が形成されている。下部電極22まで積層した状態で、下部電極22のみをエッチングして中央部を残す形状とし、その後、保護層50を積層することで、図1に示す断面の状態となる。
図5中のB−B断面の上部の断面構造としては、図1に示す構造に限らず、図8に示す構造でもよい。
図8に示す断面構造は、下部電極22まで積層した状態で、下部電極22と密着層21とをエッチングして、中央部を残す形状とし、その後、保護層50を積層する。これにより、図8に示す断面の状態となる。
〔実験例2〕
次に、図1に示す断面構造の積層構造体において、保護層50として、窒化物を使用した場合(実施例1)と、酸化物を使用した場合(比較例1)とを比較した実験例2について説明する。
〔実施例1〕
実施例1では、図1(a)に示す積層構造体を、次の(1)〜(5)に示す工程で形成した。
(1)シリコン基板(Si基板)(符号「10」及び「11」)上に、酸化チタン膜(符号「21」)を50[nm]の厚みで形成した。この酸化チタン膜は、スパッタ法により、チタン(Ti)を約35[nm]成膜し、その金属膜をRTA(Rapid Thermal Aneal)装置により、酸化雰囲気中で酸化し、酸化チタン(TiO)の膜とした。
(2)その後、白金膜(符号「22」)を500[℃]で150[nm]形成した。
(3)その後、白金膜のみのレジストパターンを形成し、エッチングして、レジストを除去し、図1に示すような凸形の形状とした。
(4)そして、さらにその上からALD法により窒化アルミニウム(AlN)の膜を形成し、絶縁保護層(符号「50」)とした。
窒化アルミニウム(AlN)の形成方法は、ALD法を用い材料・プロセスとしては以下の通りである。
AlNの材料・成膜条件:
アルミニウム(Al)のソースとして、有機金属トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminum)を用い、窒素(N)のソースとしてアンモニア(NH)を用いて、450〜500[℃]の温度で形成した。
(5)このように形成した図1に示す構造を備えた積層構造体に対して、TEOSをソース材料として、酸化ケイ素(SiO)膜を500[nm]成膜後、再び、その膜厚分除去を行い、再び図1に示す積層構造と同じ形状とした。
酸化ケイ素(SiO)膜の成膜条件は、TEOSを有機ソースとして、300〜350[℃]の温度条件にて、LPCVDにより形成した。
上記(5)の工程のように、酸化ケイ素膜を形成し、除去したのは、積層構造体の形成時におけるプロセスを経る毎の負荷を再現するためである。
上述した実施例1の積層構造体と同じ工程で、白金膜までの形成した基板(上記(1)〜(2)の工程のみ)と、上述した実施例1の絶縁保護層まで形成した基板(上記(1)〜(5)の工程)とを、スクラッチ試験を行った。このスクラッチ試験により、白金膜と酸化チタンの膜との界面のスクラッチ強度の比較を行ったところ、表1の結果を得た。
スクラッチ強度の値は、各サンプルの十箇所のスクラッチ強度の平均値を示す。
スクラッチ試験の条件を以下に示す。
装置:Keysight Technology社製 Nanoindenter G200
圧子:三角錐バーコビッチ圧子
設定条件
最大荷重:50[mN]
スクラッチ距離:200[μm]
スクラッチ速度:1[μm/s]
スクラッチ方向:三角稜の平面側にてスクラッチ
スクラッチ試験後のサンプルに対して、テープテストを実施して観察したところ、表1に示すどちらの基板のサンプルも、白金膜と酸化チタンの膜との界面で剥がれることは無く、テープテストの範囲で密着性が保たれていることが確認できた。
テープテストで用いたテープは、JIS Z 1522に準拠するもの(1.18[N/cm]以上の粘着力を持ったテープ)を使用し、45度の剥離角度で行った。表1に示すように、白金膜と酸化チタンの膜との界面のスクラッチ強度は低下したものの、平均値で15[%]の低下であり、後述する比較例1と比べ急激な変化は見られなかった。
〔比較例1〕
比較例1では、実施例1でALD法で絶縁保護層を形成した材料が窒化アルミニウム(AlN)であったものを、酸化アルミニウム(Al)とした点以外は、実施例1と同様に処理をして、比較例1の積層構造体とした。この比較例1についても同じ様にスクラッチ試験を実施した結果を表2に示す。
表2に示すように、比較例2では、上記(1)〜(5)と同様の工程を行った絶縁保護層まで形成した基板は、上記(1)〜(2)と同じ工程を行った白金膜まで形成した基板に比べて、80[%]近くスクラッチ強度が低下していた。
これは、以下の理由によるものと思われる。
すなわち、TEOSをソース材料としたプラズマ環境下で、水成分の影響を受け水成分との親和性のある酸化物材料(Al)の表面及び内部に、水蒸気、水蒸気が水により分解した水素イオンまたは水酸イオンは発生する。これらの発生物が、白金膜と酸化チタン膜との界面の結合に何らかの作用をし、その密着性を低下させたものと思われる。
また、次に実施例1と同じ方法及び同じテープにてテープテストを行った。この結果では、絶縁保護層まで形成した基板のサンプルでは、白金膜の剥離が発生し、後日、その界面の分析をSEMのEDXで行ったところ、剥離面にはチタン(Ti)が検出された。この検出結果より、剥離界面が白金膜と酸化チタンの膜との界面であることがわかった。
〔実験例3〕
次に、図5及び図6に示す断面構造の積層構造体において、保護層50として、窒化物を使用した場合(実施例2)と、酸化物を使用した場合(比較例2)とを比較した実験例3について説明する。
〔比較例2〕
比較例2では、シリコン基板(Si基板)からなる基体部10の表面に、熱酸化膜を形成後、CVDにより積層型の振動板11を形成した。
ここで、比較例2の振動板11の詳細について説明すると、シリコンウェハに熱酸化膜(膜厚が600[nm])を形成し、その上にLPCVD法により作製したものを用いる。
まず、ポリシリコン膜を200[nm]成膜する。その後、シリコン酸化膜を厚さ100[nm]成膜し、次にLPCVD法でシリコン窒化膜を150[nm]成膜した。さらに、シリコン酸化膜を厚さ150[nm]成膜し、シリコン窒化膜を150[nm]、シリコン酸化膜を100[nm]、及び、ポリシリコン膜を200[nm]成膜する。最後に、再度、シリコン酸化膜を600[nm]を形成し、積層膜全膜で振動板11とした。図5及び図6では、この基板である振動板11は一層として示してある。
次に、下地膜20を形成する。まず、振動板11となるCVD積層膜の上に、CVD積層膜に密着させて下部電極22の密着層21を成膜した。密着層21の形成方法は、スパッタ法でチタンの金属膜を形成後、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置により、酸素雰囲気中で酸化処理し、酸化チタンの膜として形成した。チタンの金属膜を成膜する装置は、アルバック社製スパッタリング装置SME−200Eを用いた。
密着層21の形成条件は、基板温度(Si基板の温度)が150[℃]、DC投入パワーが300[W]、Arガス圧が0.14[Pa]、形成した膜厚は50[nm]である。このTiの金属膜に対して、730[℃](昇温速度を30[℃/秒])、酸素流量が1[sccm](標準状態(1[atm](大気圧:1013[hPa])、0[℃])で、一分間に1[cc]流れる流量)酸素が100[%]の雰囲気で3分間熱酸化焼成した。焼成後の膜厚は83[nm]〜86[nm]であった。
次に、下部電極22としての白金電極を160[nm]の膜厚で形成した。
成膜前のプロセス室及び搬送室の真空度は、1.0×10−5[Pa]とした。プロセス条件は、基板温度(Si基板の温度)が400℃、RF投入パワーが500[W]、Arガス圧が0.16[Pa]とした。
これにより、下部電極22は(111)面が膜厚方向に配向した状態となった。
実験例3において、白金の金属膜を160[nm]とした理由は、白金膜の成膜温度条件が550[℃]以上の温度の場合、250[nm]を超えた膜厚では膜の白濁が観測されたため、160[nm]とすることで白濁とならずに作製できるからである。
上述した条件で、白金膜を成膜した後の状態での表面粗さSq(二乗平均平方根高さ)は平均で2.6[nm]であった。
次に、下部電極22上に、配向性制御層23として、チタン(Ti)の膜を5[nm]の膜厚で形成した。
形成条件は、基板温度を150[℃]、DC投入パワーを300[W]、Arガスをスパッタガスとしてそのガス圧を0.14[Pa]とした。
この際、スパッタ前のプロセス室及び搬送室の真空度は、1.0×10−5[Pa]とした。スパッタ法でチタンの金属膜を形成後、RTA(Rapid Thermal Anneal)装置により、酸素雰囲気中で酸化処理し、酸化チタン(TiO)膜として形成した。
次に、圧電体膜30(PZT膜)を形成した。圧電体材料としては最も一般的なPZT(焼成後Zr/Ti=52/48となる組成、Pb過剰量は15[atomic%])の原材料を選択した。PZTを構成する金属元素、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)及びチタン(Ti)を成分とするアルコキシドを出発原料として形成した。アルコキシドとしてはメトキシエトキシドを用いた。
上述した原材料を用いたゾルゲル液を、配向性制御層23上にスピンコートにより塗布した。一層目をスピンコートした後の圧電体膜の固化焼成としては、ホットプレート、RTA装置を使用し、温度が350〜500[℃]、5[min]の条件で、酸素雰囲気中で焼成した。この固化焼成の目的は、出発原材料中の有機性成分の放出にある(一段階目の焼成)。
続いて、二層目、三層目も同様にして固化焼成し、結晶化のための焼成として、670〜750[℃]、3[min]の条件により、「N:O=4:3」の組成のガス・フローで焼成した(二段階目及び三段階目の焼成)。
この三層(M=3)を積層した際の膜厚は250[nm]であった。この三層の積層を同じ手順で繰り返して八層(M=8)(「三層構造」×「八層」の二十四層)とし、総膜厚2[μm]の圧電体膜30を形成した。
圧電体膜作製後、この圧電体膜の結晶性の評価を行った。
このときのX線回折の結果はPZT(100)のピーク強度150[kcps]以上(150〜200[kcps])、配向率は90〜99[%]であった。X線回折装置は、ブルカー社製D8 DISCOVERを用いた。
PZT(200)ピークの位置は「2θ」で46.229[°]であり、この位置で「ω軸」を振りロッキングカーブを測定した。その結果、ロッキングカーブは二山に分かれた形状をしていて、さらにロッキングカーブの半値幅は11.3[°]であった。
次に、上部電極40を形成した。作製条件は、導電性酸化物層41として、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)からなる層を40[nm]の膜厚で作成し、次に、上部電極層42として白金膜電極からなる層を300[℃]の基板温度で、100〜150[nm]の膜厚で形成した。プロセス条件は、RF投入パワーが500[W]、Arガス圧が0.5[Pa]である。
上部電極40も、フォトリソグラフィーの技術を用いて、感光性レジストパターンを形成し、今度は塩素系のエッチングガスにより上部電極40となる層をエッチングし、上部電極40の形成を行った。
さらに、強誘電体パターン及び上部電極パターンより広いパターン部分として、下部電極22のフォトリソ・パターニングを感光性レジストで実施し、上述した圧電体素子の形成及び上部電極40の形成と同様にして、下地膜20の形成を行った。
各電極パターンの形成後、表面の保護層50として、ALD(Atomic Layer Deposition)法により酸化アルミニウム(Al)膜を「60[nm]」の厚みで形成した。
これにより、積層構造の上から順に、保護層50、上部電極40、圧電体膜30、下地膜20及び振動板11からなる圧電体素子を作製した。この基本となる素子構造以外には、圧電体素子の構造としては、さらに、上下電極とコンタクトホールにより電気的に接続した配線電極パターンを形成し、圧電体素子駆動用の電源ラインの引き出しパターンを形成してある。
次に、振動板11における圧電体素子とは反対側に、加圧液室70の加工を行った。感光性レジストを用いて、図5及び図6のような形状となるように、まず基体部10(Si基板)側にパターン形成してエッチングし、加圧液室70となる空洞を形成した。このとき、振動板11における酸化ケイ素(SiO)の膜がエッチングストップ層となる。
次に、加工した基体部10に保護基板72(サブフレーム)を接合する。そして、圧電体膜30側を同様に感光性レジストを用いて、マスク層を作製した後、ICP(Inductively Coupled Plasma)により加工した。ICP加工後、感光性レジストにより形成したマスク層は除去した。
その後、加圧液室70の圧電体素子と反対側には、SUS316(板厚が50[μm])に加圧液室70に対応したノズル孔79を形成したノズル基板80を、エポキシ樹脂により接合して、図4、図5及び図6に示す液体吐出ヘッド(記録ヘッド94)を作製した。
ここで、用いた寸法上のパラメータは、圧電体のピッチは85[μm]、圧電体幅は46[μm]、圧電体の長さは750[μm]、圧電体の厚みは2[μm]である。
また、加圧液室70としては、液室の幅は60[μm]、液室の長さは800[μm]、液室の深さは55[μm]とした。
〔実施例2〕
実施例2では、比較例2でALD法による成膜で形成した保護層50が酸化アルミニウム(Al)の膜であったものを、実施例1のALD製法による窒化アルミニウム(AlN)の膜とした。他は、全て比較例2と同じとして圧電体デバイスを形成した。
実施例2と比較例2とのスクラッチ試験の結果を表3に示す。
実験例3のおける実施例2では、スクラッチ試験の結果は、PZT膜の形成及びエッチング等の工程が入っているので実施例1よりは低下したが、30[mN]でありPZT膜のエッチング後と同等のスクラッチ強度を保っていることがわかった。これはTEOS材料をソースとした水分の影響以外のエッチングでの影響、温度、フォトリソ工程での処理の影響が考えられる。そして、比較例2のスクラッチ試験の結果よりも高い20[mN]のスクラッチ強度を最終工程でも保たれており、最終工程後でのテープテストでも白金膜と酸化チタン膜との界面(下部電極22と密着層21との界面)での剥離等の問題が無かった。
実施例1では、基板(符号「10」及び「11」)上に密着層(符号「21」)を介して白金族の材料を含んで構成された金属膜(符号「22」)を形成し、その上に、これらの複数層からなる積層構造を被覆する絶縁保護層(符号「50」)を備える。そして、絶縁保護層が少なくとも窒化物を含む構成となっている。
このような構成では、一般に密着性が低いといわれる白金族の膜を積層した構造体でも、その後の経過プロセスの多寡に寄らず、白金族の膜と隣接した膜との界面において、安定した密着性を確保することができる。特に、水あるいは水蒸気、または水の分解後に発生する活性なイオン類に対しても有効に白金族の薄膜の界面の密着強度を維持できる。
実施例2では、実施例1の構造を含むピエゾ素子構造において、ピエゾ焼成の700[℃]近傍に及ぶ高温プロセス、鉛(Pb)のマイグレーションの発生下においても実施例1の構成と同様に白金族の薄膜の界面の密着強度を維持できる。
また、窒化物を含む絶縁保護層をALD(Atomic Layer Deposition)という製法によって形成する。これにより、積層膜をエッチングし、凹凸があるパターン構造物上にも均一に緻密な絶縁保護層の膜を形成することができる。これにより、白金族の薄膜の界面の密着強度を維持できる効果を向上することが可能となる。
〔実施形態2〕
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例であるインクジェット記録装置の二つ目の実施形態(実施形態2)について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、実施形態2に係るインクジェット記録装置であるプリンタ200の要部平面説明図であり、図10は、実施形態2のプリンタ200の要部側面説明図である。
実施形態2のプリンタ200は、液体吐出ヘッドである記録ヘッド94と、記録ヘッド94に供給するインクを収容する液体収容部であるヘッドタンク96とを一体として、液体吐出ユニットであるインク吐出ユニット900を備える。
図9中の矢印「α」で示す方向が主走査方向であり、図9及び図10中の矢印「β」で示す方向が副走査方向である。
実施形態2のプリンタ200は、実施形態1のプリンタ200と同様に、記録ヘッド94を備えたキャリッジ93が印字機構部82によって主走査方向に往復移動するシリアル型装置である。印字機構部82は、キャリッジ93が主走査方向に移動するように案内するガイドロッド90、主走査モータ97、タイミングベルト100等を含む。ガイドロッド90は、装置本体81の左右の第一側板491aと第二側板491bとに架け渡されて、キャリッジ93を移動可能に保持している。
そして、主走査モータ97によって、駆動プーリ98と従動プーリ99と間に架け渡したタイミングベルト100を介して、キャリッジ93は主走査方向に往復移動される。
キャリッジ93には、記録ヘッド94とヘッドタンク96とを一体にしたインク吐出ユニット900を搭載している。
インク吐出ユニット900の記録ヘッド94は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。また、記録ヘッド94は、主走査方向に複数のノズル孔(吐出口)が並んだノズル列を、主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けるようにキャリッジ93に装着されている。
インク吐出ユニット900の外部に貯留されているインクをインク吐出ユニット900の記録ヘッド94に供給するためのインク供給機構494により、インクカートリッジ95に貯留されているインクがヘッドタンク96に供給される。
インク供給機構494は、インクカートリッジ95を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、送液チューブ456、送液ユニット452等で構成される。送液ユニット452は、送液ポンプを備える。
インクカートリッジ95はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク96には、送液ユニット452によって、インクカートリッジ95から送液チューブ456を介してインクが送液される。
実施形態2のプリンタ200は、用紙Pを搬送するための用紙搬送機構495を備えている。用紙搬送機構495は、記録媒体搬送手段である用紙搬送ベルト412、用紙搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ107を含む。
用紙搬送ベルト412は用紙Pを吸着して記録ヘッド94に対向する位置で搬送する。用紙搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、ベルト駆動ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
用紙搬送ベルト412は、副走査モータ107によって用紙搬送タイミングベルト417及び用紙搬送タイミングプーリ418を介してベルト駆動ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
プリンタ200におけるキャリッジ93の移動方向である主走査方向の一方の端部には、用紙搬送ベルト412の側方に記録ヘッド94の維持回復を行う回復装置117が配置されている。
回復装置117は、記録ヘッド94のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
印字機構部82、インク供給機構494、回復装置117、用紙搬送機構495は、第一側板491a、第二側板491b及び背板491cを含むプリンタ200の筐体に取り付けられている。
このような構成のプリンタ200では、用紙Pが用紙搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、用紙搬送ベルト412の周回移動によって用紙Pが副走査方向に搬送される。
副走査方向に搬送される用紙Pが、キャリッジ93の記録ヘッド94の下方に到達すると、用紙搬送ベルト412の周回移動を停止させる。そこで、キャリッジ93を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙Pにインクを吐出して一行分の画像を形成する。一行分の画像形成が終わると用紙Pを副走査方向に所定量搬送し、再び停止する。その後、停止している用紙Pに対して次の行の画像を行い、この動作を繰り返すことで、用紙P上に所望の画像を形成する。
上述した実施形態2のプリンタ200でも、液体吐出ヘッドである記録ヘッド94として、実施形態1と同様のものを備えている。このため、記録ヘッド94の振動板11と下部電極22との間に剥がれが生じにくく、振動板11を安定的に駆動させることができるので、高画質画像を安定して形成することができる。
次に、上述した実施形態の積層構造体を有する液体吐出ヘッドである記録ヘッド94を備える液体吐出ユニットの他の例について図11を参照して説明する。図11は、他の例の液体吐出ユニットであるインク吐出ユニット900の要部平面説明図である。図11中の矢印「α」で示す方向が主走査方向である。
図11に示すインク吐出ユニット900は、図9及び図10に示した液体を吐出する装置(実施形態2のプリンタ200)を構成している部材のうち、次の部材を一体的に構成する。すなわち、第一側板491a、第二側板491b及び背板491cで構成される筐体部分と、印字機構部82と、キャリッジ93と、記録ヘッド94とで構成されている。
図11に示すインク吐出ユニット900における例えば、第二側板491bに、上述した回復装置117、及びインク供給機構494の少なくとも何れかをさらに取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
次に、上述した実施形態の積層構造体を有する液体吐出ヘッドである記録ヘッド94を備える液体吐出ユニットのさらに他の例について図12を参照して説明する。図12はさらに他の例の液体吐出ユニットであるインク吐出ユニット900の正面説明図である。
図12に示すインク吐出ユニット900は、流路部品444が取付けられた記録ヘッド94と、流路部品444に接続された送液チューブ456で構成されている。
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク96を含む構成とすることもできる。また、流路部品444の上部には記録ヘッド94と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
本明細書において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上述した「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。この「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、または、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズル孔を介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品や機構などの外部部品が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
例えば、液体吐出ユニットとして、図10で示した液体吐出ユニット(インク吐出ユニット900)のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、図11で示した液体吐出ユニット(インク吐出ユニット900)のように、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、図12で示した液体吐出ユニット(インク吐出ユニット900)のように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構とが一体化されているものがある。供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
上述した実施形態では、基板の上に密着層を挟んで白金層を形成する積層構造を、窒化物を含有する絶縁保護層で覆う積層構造体がMEMSデバイスのピエゾ素子に用いられる構成について説明した。窒化物を含有する絶縁保護層を備えた積層構造体としては、MEMS分野に限らず、指輪やネックレスなどのアクセサリーの分野、または、照明や食器等の装飾品の分野でも同様に用いることができる。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
振動板11等の基板の表面上に密着層21等の密着層を介して形成される下部電極22等の金属膜層と、金属膜層を挟んで基板とは反対側に、金属膜層を被覆するように形成された保護層50等の絶縁保護層とを有するフレキシブル基板73等の積層構造体において、絶縁保護層が窒化アルミニウム等の窒化物を含有する。
本発明者らは、上述した実施形態について説明したように、絶縁保護層に窒化物を含有するものを用いることにより、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができることを見出した。これは、以下の理由によるものと考える。
すなわち、従来の積層構造体のように、絶縁保護層に酸化物を含有するものを用いると、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることがあった。これは、酸化物は親水性が高く、酸化物で絶縁保護層を形成すると、その層の表面や内側に、水素イオン、水酸化イオン及び水といった水や水に由来する成分が発生し、これらの成分が金属膜層と密着層との界面での結合を切断する反応が生じるためと考える。これに対して、態様Aのように、絶縁保護層として酸化物よりも親水性が低い窒化物を含むものを用いることにより、絶縁保護層の周辺に水や水に由来する成分が発することを抑制できる。よって、これらの成分が金属膜層と密着層との界面での結合を切断する反応が生じることを抑制でき、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができる。
(態様B)
態様Aにおいて、下部電極22等の金属膜層は白金等の白金族元素を含む材料によって構成される。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、他の物質との反応性が低い白金族元素を金属膜層に用いた構成であっても、密着層を備えることで振動板11等の基板と金属膜層との密着性を確保することができる。さらに、保護層50等の絶縁保護層として、窒化物を含有するものを用いることにより、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができ、金属膜層と基板とのに接着を安定させることができる。
(態様C)
態様AまたはBにおいて、密着層21等の密着層は酸化チタン等の酸化物を含む材料によって構成される。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、下部電極22等の金属膜層を積層するときに、白金等の金属膜層の材料の結晶における粒界に隙間が生じることを抑制できる。よって、密着層と金属膜層との界面の結合を分離させる成分が、隙間を介して界面に進入することを抑制し、振動板11等の基板と金属膜層との密着性を確保することができる。
(態様D)
態様A乃至Cの何れかの態様において、保護層50等の絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、積層膜をエッチングし、凹凸があるパターン構造物上にも均一に緻密な膜を形成することができる。このため、絶縁保護層の内側に水や水に由来する成分が進入することを抑制し、振動板11等の基板と下部電極22等の金属膜層との密着性を確保することができる。
(態様E)
振動板11等の基板の表面上に少なくとも密着層21等の密着層、下部電極22等の第一電極層、圧電体膜30等の圧電体層及び上部電極40等の第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、積層部を覆う保護層50等の絶縁保護層とを備え、駆動信号に応じた電圧を第一電極層と第二電極層との間に印加して圧電体層を変形させるフレキシブル基板73等の電気機械変換素子において、絶縁保護層が窒化物を含有する。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、金属膜層と密着層との界面で剥離が生じることを抑制することができ、基板と金属膜層との密着性を確保することが可能となる。
(態様F)
インク等の液体を吐出するノズル孔79等の吐出孔に連通する加圧液室70等の液室の少なくとも一つの壁を構成する振動板11等の変位板を駆動信号に基づいて変位させるフレキシブル基板73等の電気機械変換素子を備えた記録ヘッド94等の液体吐出ヘッドにおいて、電気機械変換素子として、態様Eに係る電気機械変換素子を用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、下部電極22等の第一電極層と変位板との密着性を確保することができるため、安定した吐出動作が可能な液体吐出ヘッドを実現できる。
(態様G)
駆動信号に基づいてノズル孔79等の吐出孔からインク等の液体を吐出させる記録ヘッド94等の液体吐出ヘッドと、ヘッドタンク96等の少なくとも一つの外部部品とを一体化したインク吐出ユニット900等の液体吐出ユニットにおいて、液体吐出ヘッドとして、態様Fに係る液体吐出ヘッドを用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、安定した吐出動作が可能な液体吐出ヘッドを備えた液体吐出ユニットを実現できる。
(態様H)
駆動信号に基づいてノズル孔79等の吐出孔からインク等の液体を吐出させる記録ヘッド94等の液体吐出ヘッドを備えたプリンタ200等の液体を吐出する装置において、液体吐出ヘッドとして、態様Fに係る液体吐出ヘッドを用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、安定した吐出動作が可能な液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置を実現できる。
(態様I)
振動板11等の基板の表面上に少なくとも密着層21等の密着層、下部電極22等の第一電極層、圧電体膜30圧電体層及び上部電極40等の第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、積層部を覆う保護層50等の絶縁保護層とを備え、駆動信号に応じた電圧を第一電極層と第二電極層との間に印加して圧電体層を変形させるフレキシブル基板73等の電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法において、絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いる。
これによれば、上述した実施形態について説明したように、積層膜をエッチングし、凹凸があるパターン構造物上にも均一に緻密な膜を形成することができる。このため、絶縁保護層の内側に水や水に由来する成分が進入することを抑制し、基板と金属膜層との密着性を確保することができ、変形板の安定した変形動作が可能な電気機械変換素子の製造を実現できる。
10 基体部
10a 隔壁部
11 振動板
20 下地膜
21 密着層
22 下部電極
23 配向性制御層
30 圧電体膜
33 インク供給路
40 上部電極
41 導電性酸化物層
42 上部電極層
50 保護層
51 層間絶縁層
60 配線層
61 配線保護層
62 スルーホール
70 加圧液室
71 液室基板
72 保護基板
73 フレキシブル基板
74 圧電素子保護空間
75 流体抵抗部
76 共通液室
79 ノズル孔
79f ノズル面
80 ノズル基板
81 装置本体
82 印字機構部
84 給紙カセット
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
90 ガイドロッド
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 記録ヘッド
95 インクカートリッジ
96 ヘッドタンク
97 主走査モータ
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 給紙ガイド部材
104 用紙搬送ローラ
105 用紙搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モータ
109 印写受け部材
111 搬送コロ
112 搬送拍車
113 排紙ローラ
114 排紙拍車
115 排紙下ガイド部材
116 排紙上ガイド部材
117 回復装置
200 プリンタ
412 用紙搬送ベルト
413 ベルト駆動ローラ
414 テンションローラ
417 用紙搬送タイミングベルト
418 用紙搬送タイミングプーリ
421 キャップ部材
422 ワイパ部材
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
451 カートリッジホルダ
452 送液ユニット
456 送液チューブ
491a 第一側板
491b 第二側板
491c 背板
494 インク供給機構
495 用紙搬送機構
900 インク吐出ユニット
P 用紙
特開2016−013651号公報

Claims (9)

  1. 基板の表面上に密着層を介して形成される金属膜層と、
    前記金属膜層を挟んで前記基板とは反対側に、前記金属膜層を被覆するように形成された絶縁保護層とを有する積層構造体において、
    前記絶縁保護層が窒化物を含有することを特徴とする積層構造体。
  2. 請求項1の積層構造体において、
    前記金属膜層は白金族元素を含む材料によって構成されることを特徴とする積層構造体。
  3. 請求項1または2の積層構造体において、
    前記密着層は酸化物を含む材料によって構成されることを特徴とする積層構造体。
  4. 請求項1乃至3の何れか一に記載の積層構造体を製造する積層構造体の製造方法において、
    前記絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いたことを特徴とする積層構造体の製造方法。
  5. 基板の表面上に少なくとも密着層、第一電極層、圧電体層及び第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、
    前記積層部を覆う絶縁保護層とを備え、
    駆動信号に応じた電圧を前記第一電極層と前記第二電極層との間に印加して前記圧電体層を変形させる電気機械変換素子において、
    前記絶縁保護層が窒化物を含有することを特徴とする電気機械変換素子。
  6. 液体を吐出する吐出孔に連通する液室の少なくとも一つの壁を構成する変位板を駆動信号に基づいて変位させる電気機械変換素子を備えた液体吐出ヘッドにおいて、
    前記電気機械変換素子として、請求項5に記載の電気機械変換素子を用いたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  7. 駆動信号に基づいて吐出孔から液体を吐出させる液体吐出ヘッドと、少なくとも一つの外部部品とを一体化した液体吐出ユニットにおいて、
    前記液体吐出ヘッドとして、請求項6に記載の液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とする液体吐出ユニット。
  8. 駆動信号に基づいて吐出孔から液体を吐出させる液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置において、
    前記液体吐出ヘッドとして、請求項6に記載の液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とする液体を吐出する装置。
  9. 基板の表面上に少なくとも密着層、第一電極層、圧電体層及び第二電極層が順次積層されて形成される積層部と、前記積層部を覆う絶縁保護層とを備え、駆動信号に応じた電圧を前記第一電極層と前記第二電極層との間に印加して前記圧電体層を変形させる電気機械変換素子を製造する電気機械変換素子の製造方法において、
    前記絶縁保護層を形成する成膜方法として、原子層堆積法を用いたことを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
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