JP2018124022A - 熱交換器、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、ブロック全てに銅材料を用いると、材料費のコストが格段に高くなることから、従来からアルミ鋳物にステンレスパイプを鋳込んだものが広く用いられている。このステンレスパイプをアルミ鋳物に鋳込んだものを用いてヒートシンクを形成した場合、コストを大幅に削減できるが、ステンレスの熱伝導率が低いため、熱交換効率が低下するという課題がある。
このような課題の下、全てに銅材料を用いる場合よりもコストを低減でき、且つステンレスよりも熱伝導率が良好なパイプ材料を用いたヒートシンクが求められていた。
前記課題を解決するものとして、ヒートシンクを構成する際に、配管には銅材料を用い、その周りを高純度のアルミニウムで鋳込んでブロック状とすることが考えられる。
特許文献1に開示された方法によれば、銅とアルミニウムとの直接的な接触がないためにコロージョンの発生を防止することができる。さらには、アルミニウム溶湯の熱により、銅パイプが軟化、変形することを防止することができる。
しかしながら、鉄の線膨張率とアルミニウムの線膨張率とは大きく異なるため、鉄メッキとアルミニウムの冷却ブロックとの間に亀裂が生じることがあり、密着性が悪いという課題があった。
尚、前記鉄メッキ層の厚さは、5μm〜100μmの範囲内であることが望ましい。
このように構成された熱交換器によれば、冷却配管として熱伝導性に優れる銅パイプを有し、銅パイプの周りには、熱交換機能を向上し、且つコストの上昇を抑えるためにアルミニウムからなる冷却ブロックが設けられる。ここで、銅パイプと冷却ブロックとの間には鉄メッキ層が設けられ、銅パイプと鉄メッキ層との間、及び鉄メッキ層と冷却ブロック(アルミニウム)との間はそれぞれ強固に密着している。
これにより、冷却ブロックと銅パイプとの間の伝熱効率が格段に向上し、熱交換器としての機能が最大限に発揮される。
尚、前記銅パイプの外周面を鉄メッキ層で被覆するステップにおいて、前記鉄メッキ層の厚さを5μm〜100μmに形成することが望ましい。
また、前記鉄メッキ層の外周面を銅メッキ層で被覆するステップにおいて、前記銅メッキ層の厚さを0.5μm〜10μmに形成することが望ましい。
また、鉄メッキ層を介して銅パイプと冷却ブロックとが接合した状態であるため、熱伝導性が高く、高性能な熱交換器を得ることができる。
また、冷却ブロック2を形成するアルミニウムは、熱伝導性をより高くするために成分の99%以上がAlにより形成された純アルミニウムが望ましい。
図2の拡大図に示すように銅パイプ3と冷却ブロック2との間には、膜厚が5〜100μmの鉄(Fe)メッキ層4が形成されている。
これは、銅パイプ3の周りにアルミニウムからなる冷却ブロック2を鋳込む際、アルミニウム溶湯と銅パイプ3との化学的反応(共晶、コロージョンなど)を抑制するために設けられている。また、鉄の融点(1538℃)は銅の融点(1085℃)よりも高いため、鉄メッキ層4が介在することで、アルミニウム溶湯の熱により銅パイプ3が溶解及び変形することを防止することができる。また、鉄メッキ層4は、銅パイプ3に対する密着性のよいメッキ被膜が得られ、他の金属との接合性もよい。
また、鉄メッキ層4とアルミニウムからなる冷却ブロック2との境界部においては、アルミニウムと銅との合金と、鉄とが混ざり合って機械的に結合する混合層6が形成され、それにより鉄メッキ層4と冷却ブロック2とが強固に密着している。この混合層6を形成して密着させる方法については、後述の本発明に係る製造方法の説明において行う。
これにより、冷却ブロック2と銅パイプ3との間の伝熱効率が格段に向上し、熱交換器1としての機能が最大限に発揮される。
図1に示した熱交換器1を製造する場合、先ず冷却配管とする銅パイプ3を形成する(図3のステップS1)。これは、例えば図4(a)に示すような直棒状の銅パイプ30(例えば銅管肉厚0.4mm、パイプ内径11mm)を用意し、これを湾曲成形し、例えば図4(b)に示すようなW字状の銅パイプ3を得る。
即ち、鉄(Fe)をアノードとして、電解液に浸し、前記鉄に電流を流す。そして鉄(Fe)原子を酸化し、電解液に溶け出させる。カソードである銅パイプ3では、電解液に溶解した鉄(Fe)の金属イオンが電解液と銅パイプ3の接する面で還元され、銅パイプ3の外周面に鉄(Fe)がメッキされる。
この鉄メッキ層4の膜厚は、5〜100μmに形成する。これは、鉄メッキ層4の厚さが100μmよりも大きいと、鉄メッキ層4が厚すぎて、熱伝導率が低下するためである。また、鉄メッキ層4の厚さが5μmよりも小さいと、鉄メッキ層4が薄すぎて、アルミニウム溶湯と銅パイプ3とが化学反応し、銅パイプ3が溶解する虞があるためである。
即ち、電気メッキ法において、銅(Cu)をアノードとし、金属イオン濃度が薄い電解液を形成する。銅パイプ3の外周面に形成された鉄メッキ層4をカソードとし、比較的高い電流密度で比較的短時間のメッキ処理を行う。これにより鉄メッキ層4の外周面に、膜厚0.5〜10μm程度の比較的薄い銅ストライクメッキ層5が形成される。
このように銅パイプ3の外周面には、鉄メッキ層4と銅ストライクメッキ層5の2重の薄膜が形成される。
また、銅ストライクメッキ層5の厚さが10μmよりも厚いと、銅とアルミニウムとの化学反応(コロージョン)が強くなり過ぎ、鉄メッキ層4と冷却ブロック(アルミニウム)との間に隙間が生じる虞があるためである。
具体的には、先ず図8(a)に示すように下型12内に銅パイプ3を配置する。このとき、銅パイプ3の先端部3aを図8(b)に示すように下型12の係止凹部10a(下半分の形状)に置く。そして、図8(c)のように下型12の上に上型11を載せて、型締め処理により上型11と下型12とを密着させる。このとき、銅パイプ3の先端部3aは、上型11側の係止凹部10a(上半分の形状)と下型12の係止凹部10aとにより周囲を覆われ係止される。それにより銅パイプ3の略全体が鋳型空間Rの中空内に保持される。
ここで、流し込まれたアルミニウム溶湯に、銅パイプ3の最外周面に形成された銅ストライクメッキ層5が化学反応(コロージョン)し、銅ストライクメッキ層5が溶融する。そして、アルミニウムと銅との合金が形成されるとともに、鉄メッキ層4の表面が前記化学反応に巻き込まれる。そして、後述の冷却処理後には鉄メッキ層4と冷却ブロック2との境界面において、前記合金と鉄メッキ層4表面の鉄とが混ざり合う混合層6が形成される。混合層6により、鉄メッキ層4と冷却ブロック2とが機械的に結合し強固に密着する。
また、銅パイプ3の外周面が鉄メッキ層4に被覆されることにより、銅パイプ3はアルミニウム溶湯の熱から保護され、溶融や変形が生じることがない。
冷却処理後、鋳物成形型10の鋳型空間Rから冷却ブロック2を取り出し、銅パイプ3の先端3aを冷却ブロック2の形状に合わせて切断し、熱交換器1が得られる。
また、鉄メッキ層4を介して銅パイプ3と冷却ブロック2とが強固に密着した状態であるため、熱伝導性が高く、高性能な熱交換器1を得ることができる。
実施例1では、前記実施形態に示した図3のフローに従い、熱交換器を製造した。銅パイプの肉厚は、0.4mm、内径は11mmとし、鉄メッキ層の厚さは10μmとし、銅ストライクメッキ層の厚さは5μmとした。
熱交換器の製造後、これをパイプの長さ方向に直交する方向に切断し、その断面において、銅パイプと鉄メッキ層とアルミニウムからなる冷却ブロックとのそれぞれの界面をマイクロスコープにより拡大し観察した。
図9にその拡大した断面写真を示す。
図9の写真に示すように銅パイプと鉄メッキ層との間、及び鉄メッキ層とアルミニウム層との間には、隙間や亀裂は確認されなかった。また、鉄メッキ層とアルミニウム層との界面は、互いの金属が混合する混合層が形成され、強固に密着していることが確認できた。
実施例2では、鉄メッキ層の厚さをパラメータとして複数の条件を設定し、熱交換器の製造後、実施例1と同様に断面において金属間の界面を観察した。また、製造した熱交換器の冷却性能を評価した。
鉄メッキ層の厚さ寸法の条件(条件1〜条件7)と結果を表1に示す。表1の界面観察結果において、○は隙間なしを示し、△は隙間、亀裂箇所有りを示し、×は銅パイプ溶解、変形有りを示す。また、冷却性能評価において、○は期待される温度以下に十分に冷却されたもの、△は期待される温度まで冷却されるもの、×は期待される温度まで冷却されないものを示す。
[表1]
また、鉄メッキ層の厚さが5μmよりも小さい条件1、2では、銅パイプに溶解及び変形がみられた。これは、鉄メッキ層が薄すぎて、アルミニウム溶湯と銅ストライクメッキ層との化学反応(コロージョン)に、鉄メッキ層だけでなく銅パイプの銅が巻き込まれたものと考えられた。
したがって、鉄メッキ層の厚さが5μm〜100μmであれば、銅パイプの溶解及び変形は抑制され、また、層間に隙間や亀裂が生じず、熱伝導率が良好なものとなることを確認した。
実施例3では、銅ストライクメッキ層の厚さをパラメータとして複数の条件を設定し、熱交換器の製造後、実施例1と同様に断面において金属間の界面を観察した。
鉄メッキ層の厚さ寸法の条件(条件8〜条件14)と結果を表2に示す。表2において、○は隙間なしを示し、△は隙間、亀裂箇所有りを示し、×は銅パイプ溶解、変形有りを示す。
[表2]
したがって、銅ストライクメッキ層の厚さが0.5μm〜10μmであれば、鉄メッキ層と冷却ブロックとの界面に隙間や亀裂が生じず、銅パイプも溶解及び変形しないことを確認した。
比較例1では、銅パイプ(肉厚0.4mm、内径11mm)の上に鉄メッキ層(厚さ20μm)を形成し、これを鋳物成形型(図7と同形)内にセットして、この鋳物成形型内にアルミニウム溶湯を流しこんで冷却後、熱交換器を得た。
この熱交換器パイプの長さ方向に直交する方向に切断し、その断面において、銅パイプと鉄メッキ層とアルミニウムからなる冷却ブロックとのそれぞれの界面をマイクロスコープにより拡大し観察した。
図10にその拡大した断面写真を示す。
図10の写真に示すように鉄メッキ層とアルミニウム層との間に亀裂が生じていることを確認した。
2 冷却ブロック
3 銅パイプ
4 鉄メッキ層
5 銅ストライクメッキ層(銅メッキ層)
10 鋳物成形型
10a 係止凹部
11 上型
12 下型
13 溶湯口
R 鋳型空間
Claims (5)
- アルミニウムからなる冷却ブロックに銅パイプを埋設した熱交換器であって、
前記銅パイプと、前記銅パイプの外周面を被覆する鉄メッキ層と、前記銅パイプを埋設し、前記鉄メッキ層と接するアルミニウムからなる冷却ブロックと、を備え、
前記鉄メッキ層と前記冷却ブロックとの境界面には、前記鉄メッキ層の鉄と、銅とアルミニウムの合金とが混ざり合う混合層が形成され、前記混合層により前記鉄メッキ層と前記冷却ブロックとが機械的に結合し密着していることを特徴とする熱交換器。 - 前記鉄メッキ層の厚さは、5μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載された熱交換器。
- アルミニウムからなる冷却ブロックに銅パイプを埋設した熱交換器の製造方法であって、
前記銅パイプを形成するステップと、
前記銅パイプの外周面を鉄メッキ層で被覆するステップと、
前記鉄メッキ層の外周面を銅メッキ層で被覆するステップと、
前記鉄メッキ層と前記銅メッキ層とが形成された銅パイプを、鋳物成形型に配置するステップと、
前記鋳物成形型にアルミニウム溶湯を流し込むステップと、
前記鋳物成形型を冷却して熱交換器を取り出すステップと、
を備えることを特徴とする熱交換器の製造方法。 - 前記銅パイプの外周面を鉄メッキ層で被覆するステップにおいて、
前記鉄メッキ層の厚さを5μm〜100μmに形成することを特徴とする請求項3に記載された熱交換器の製造方法。 - 前記鉄メッキ層の外周面を銅メッキ層で被覆するステップにおいて、
前記銅メッキ層の厚さを0.5μm〜10μmに形成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載された熱交換器の製造方法。
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