JP2018123035A - 嵩密度の高い次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子とその製造方法 - Google Patents

嵩密度の高い次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶形を制御することで、容器への嵩密度が高く、輸送効率の高くなる、嵩密度の高い次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】晶析工程において、晶析槽内の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の水溶液を攪拌またはポンプ循環させることによって、平均アスペクト比が2.5以下の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子および、その製造方法に関する。
次亜塩素酸ナトリウムは、一般的に質量濃度が5〜13質量%(有効塩素濃度5〜12%)程度の水溶液として市販されており、殺菌、漂白効果などに優れることから、例えば、上下水道用、温泉施設用、プール用、食品製造用、家庭用などの殺菌剤として、食品製造用、製紙工業用、繊維工業用の漂白剤として使用されている。また、各種工場のプラント冷却循環水系、循環水、廃水処理などで発生するスライム障害(藻類、細菌類などによるスライム発生により、熱効率の低下、通水配管の閉塞などの障害)を防止するスライム洗浄剤用途で使用されている。これら次亜塩素酸ナトリウムの殺菌、漂白効果はその酸化力に起因しており、この酸化力を有機合成の分野のみならず、広く食品添加物、電子材料、医薬品や農薬などの製造に利用している。
このように次亜塩素酸ナトリウムは多種多様な用途で広く利用されているが、工業規模での有機合成分野における酸化反応を行う場合、一般的な次亜塩素酸ナトリウム水溶液は容積効率が低く、生産性に乏しいこと、副生する排水が多い、等の欠点が挙げられる。これらの問題は、高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の利用で解決できるように思われるが、次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、常温で濃度が高いほど急速に分解が進むため、日本国内では13%以上の濃度では市販されていない。
一方、固体の次亜塩素酸ナトリウム結晶も知られており、1水和物、2.5水和物、5水和物、6水和物等が存在する事が報告されている(「ソーダハンドブック1998、p361」)。その中でも、次亜塩素酸ナトリウム5水和物は、理論上の次亜塩素酸ナトリウム質量濃度が45%と次亜塩素酸ナトリウム溶液と比較して3倍程高濃度であり、一般的な次亜塩素酸ナトリウム水溶液と比較して輸送量体積を大きく低減して、輸送コストなどを大幅に削減できるというメリットがあるため、これまでに数々の合成例や応用例が報告されている。
例えば、特許文献1には、工業的に次亜塩素酸ナトリウム5水和物を製造する方法が開示されており、特許文献2は次亜塩素酸ナトリウム5水和物中に含まれる塩素酸ナトリウムの含有量を低減した例も知られている。特許文献3には、次亜塩素酸ナトリウム5水和物を含む有効塩素25〜40%程度のスラリー溶液の製造方法が記載されている。
これらの文献にある従来の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶形は、いずれもアスペクト比の大きい針状(長い針の形状をした)結晶との記載がある。例えば、特許文献1の実施例で得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物はいずれもアスペクト比1.7〜10と、アスペクト比の高い針状結晶も含有している記述がある。
また、特許文献2の段落[0081]には、短軸に対する長軸の比が8以上の針状結晶が得られたとの記述がある。
特許文献3の段落[0008]に記載があるように、次亜塩素酸ナトリウム5水和物は、針状結晶を最も頻繁に形成する。次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のみから作られた次亜塩素酸ナトリウム組成物は、アスペクト比の高い針状結晶がランダムに配置してしまい、容器に密に充填できないことから、嵩密度が低くなり、輸送効率、貯蔵効率が低くなるという問題がある。
針状結晶のアスペクト比を小さくするために、従来の製造工程において、結晶をすり潰す等の工程を入れることでアスペクト比の低い結晶を作成できるが、たとえば、強力に粉砕することで短径が100μm以下のように微粉化しすぎると嵩密度を上げることが難しくなる。また、このような粉砕工程を導入する場合には粉砕機等の導入が必要で、手間が増えるだけでなく、粉砕中の摩擦熱等により次亜塩素酸ナトリウム5水和物が分解する可能性もあるため、現実的な案とは言い難い。特許文献3では嵩密度の問題を解決する為に次亜塩素酸ナトリウム5水和物を含む次亜塩素酸ナトリウム水溶液スラリーを作成する事で問題解決を図っているが、当該方法では、使用時に不必要な塩化ナトリウム、塩素酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを含有しており、これらの成分が反応への影響してしまう問題点がある。
特開2000−290003号公報 特開2014−169215号公報 特表2015−533775号公報 特開平11−255503号公報
本発明の課題は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶粒子形状を制御することで、容器への嵩密度が高く、輸送効率の高くなる、嵩密度の高い次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子とその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、これまでの次亜塩素酸ナトリウム5水和物の製造方法の製造工程を増やさず、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の晶析時に、析出する結晶を粉砕しながら結晶成長させることで、アスペクト比が低く、嵩密度が高い、球状に近い形の次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶粒子の製造が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
(1) 平均アスペクト比が2.5以下の平均短径で0.1mm以上1.5mm以下の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子。
(2) 嵩密度が0.80g/cm3以上である前記(1)に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子。
(3) 嵩密度が0.80g/cm3以上である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子。
(4) 40〜48質量%水酸化ナトリウム水溶液に塩素を導入して反応温度15〜32℃で塩素化する第1工程と、
析出した副生塩化ナトリウムの結晶を分離除去して次亜塩素酸ナトリウム濃度24〜34質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を回収する第2工程と、
冷却器と晶出器とが一体となった晶析槽において、前記第2工程で回収された次亜塩素酸ナトリウム5水和物を含む水溶液を冷却温度0〜26℃まで冷却して次亜塩素酸ナトリウム5水和物を析出させる第3工程であって、晶析槽内の前記水溶液を攪拌もしくはポンプ循環させる、または攪拌およびポンプ循環させる、第3工程と、
前記第3工程で析出した次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を固液分離して次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子を得る第4工程と
を含むことを特徴とする次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の製造方法。
(5) 前記第3工程での、攪拌が、攪拌翼先端速度を2.1〜7.5m/秒で行われる前記(4)に記載の製造方法。
(6) 前記第3工程での、ポンプ循環が、1時間に、前記晶析槽中の水溶液量に対して0.5〜4.0倍の液量を循環させることで行われる前記(4)に記載の製造方法。
(7) 前記第3工程での、ポンプ循環が、1時間に、前記晶析槽中の水溶液量に対して0.5〜4.0倍の液量を循環し、尚且つ撹拌が、攪拌翼先端速度を2.1〜7.5m/秒で行われる前記(4)に記載の製造方法。
本発明のアスペクト比が低い丸み状の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子は、嵩密度が高く、従来品と比較して、袋や容器への充填量すなわち、容積効率が著しく向上する。これにより、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、あるいは従来製造されている次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶と比較して、輸送時の容積を低下させることで輸送効率化と容器等の削減を達成できる。
実施例1の本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子のデジタルマイクロスコープ写真画像を示す。 実施例2の本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子のデジタルマイクロスコープ写真画像を示す。 比較例1の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のデジタルマイクロスコープ画像を示す。 比較例2の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のデジタルマイクロスコープ画像を示す。 比較例3の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のデジタルマイクロスコープ画像を示す。 実施例1の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子のアスペクト比の分布を示す。 実施例2の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子のアスペクト比の分布を示す。 比較例1の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のアスペクト比の分布を示す。 比較例2の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のアスペクト比の分布を示す。 比較例3の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のアスペクト比の分布を示す。 次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶のアスペクト比の模式図を示す。
本発明は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の平均アスペクト比が2.5以下で球状に近い形状を有しており、嵩密度が0.80g/cm3以上であるために、輸送時の容積効率を高めることができる次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子とその製造方法提供することである。
(平均アスペクト比の測定)
本発明の丸み状の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子は、粒子の長径Lと短径Sの比(L/S)で表されるアスペクト比の平均値が、デジタルマイクロスコープ(株式会社テック社製、秀マイクロン3)画像を用いた測定において1≦L/S≦2.5の範囲である。アスペクト比が小さいほど嵩密度が高くなる傾向がある為、アスペクト比が1.0≦L/S≦2.3の範囲にあることがより好ましく、1.0≦L/S≦2.0の範囲にあることがさらに好ましい。このような本発明の目的物質である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子は、製品として容器に充填した際に、従来品と比較して嵩密度が著しく向上している事を示す。
本発明において、アスペクト比は、結晶粒子の長径(L)に対する短径(S)の比(以下、L/S比という)として決定する。なお、短径とは、図11に示されるように、測定対象となる粒子の観察画像を対象領域の外接矩形のうち、ある一辺の長さが最小となる矩形の短辺である。一方、長径とは、上記対象領域の外接矩形のうち、ある一辺の長さが最大となる矩形の長辺である。これらは一般的に入手可能な画像解析ソフト(例えば「Image−J」)を用いて測定することができる。平均アスペクト比の値は、300個以上の粒子のアスペクト比(L/S)を上記方法により測定し、その個数平均として算出する。また、また、平均短径はSの個数平均として算出する。ただし、デジタルマイクロスコープで観測できない0.01mm以下の短径をもつ結晶粒子に関しては本発明の内容には考慮に入れない。
本発明の丸み状の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の晶析中に晶析槽内を循環および/または撹拌したことで角が取れて丸みに近い形状とした。これにより、粉体の安息角は、60度以下と、原料投入時に問題とならない範囲となっている。また、ポンプを用いる場合は、強力なポンプによる循環が強すぎると成長した結晶粒子が崩壊してしまい、0.1mm以下の微細な結晶が形成され、嵩密度が低下する為、ポンプの循環流量を制御して平均短径で0.1mm以上1.5mm以下の結晶を形成させる事が好ましい。より好ましくは、結晶粒の大きさは、平均短径で0.3mm〜0.7mmである。
(嵩密度の測定)
本発明の嵩密度は重装かさ密度として測定した。具体的には、JIS R 9301−2−3:1999(アルミナ粉末−第2部:物性測定方法−3:軽装かさ密度及び重装かさ密度)に従って、試料を規定の容器に規定の方法で充填した後、試料の入ったシリンダーを約30mmの高さから100回落下させて試料を圧縮し、圧縮後の試料の質量と容積から計算した。
(安息角の測定)
安息角は、具体的にはJIS R 9301−2−2(アルミナ粉末−第2部:物性測定方法−2:安息角)に従って、計算した。
本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の製造方法は、塩素化工程(第1工程)と、塩化ナトリウム分離工程(第2工程)と、晶析工程(第3工程)と、固液分離工程(第4工程)とを含む。ただし、第1〜第4工程に限定するものではなく、これら以外の工程が入っても構わない。たとえば第二工程の分離液や、第四工程で得られた分離液を塩素化工程へ一部リサイクルする工程が入っても構わない。析出効果を上げるために水酸化ナトリウムを添加することも可能である。以下、各工程について詳しく説明する。
塩素化工程(第1工程)
塩素化工程では、水酸化ナトリウム水溶液と塩素ガスを反応させて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得る。本発明の反応工程はバッチ処理でも連続処理でも構わないが、塩化ナトリウムの粒子を粗大化させ、かつ生産性を高めるためには連続的に水酸化ナトリウムと塩素を供給することが望ましい。その反応槽は、単槽でも構わないが、塩素との接触での局所的な発熱で塩素酸ナトリウムが生成することを防ぐため2槽、3槽等の複数槽を連結した連続槽型反応器で、塩素をそれぞれの反応槽へ分割して供給して反応させることが望ましい。また、塩素ガスはそのまま反応に供給しても良いが、窒素や空気で希釈して供給することで、局所的な発熱を抑えることができる。原料の水酸化ナトリウム水溶液は濃度40〜48質量%のものを用いる事が好ましく、反応温度は、特に限定されないが、15〜32℃とすることが好ましい。この範囲であれば、不均化反応に伴う塩素酸ナトリウム等の生成を抑制することができ、不純物の少ない次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子を製造することが出来る。具体的に、例えば、特許文献4に記載されている製造方法により次亜塩素酸ナトリウムの反応溶液を得る事が好ましい。反応工程では、次亜塩素酸ナトリウム濃度が23〜27質量%、塩化ナトリウム濃度が22〜27質量%、水酸化ナトリウム濃度が1.0〜2.0質量%に成るまで塩素化を進める。仕上がった液は過飽和分の塩化ナトリウムが析出しているスラリーである。
塩化ナトリウム分離工程(第2工程)
塩化ナトリウム分離工程では、塩素化終了液から塩化ナトリウムを固液分離したものを、次の晶析工程での母液とする。具体的には、塩素化されて生成した次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、副生した塩化ナトリウム結晶を多量に含有する。そこで塩化ナトリウム分離工程では、特に限定されないが、例えば、遠心分離機または濾過機等によって固液分離する。得られた濾液を次工程の晶析装置に送液する際には予冷することが望ましい。予冷により、次工程の晶析槽での除熱量を低減することが目的であり、濾液温度が晶析開始温度+2℃以内、より好ましくは晶析開始温度+0〜+1℃以内となるようにするのが好ましい。予冷温度を晶析開始温度以下とすると、熱交換器内で結晶が析出し、ライン凍結が発生しやすい状況となる。具体的には、特許文献4に記載されている製造方法により固液分離を行い、次亜塩素酸ナトリウム溶液(母液)を得る事が好ましい。
次工程で行う晶析効率の関係から、塩化ナトリウム分離後の次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は24質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上34質量%以下が好ましい。34質量%以上の場合には、次亜塩素酸ナトリウム溶液が過飽和となることにより冷却器表面でスケーリングし、伝熱効率の悪化を招くことがある。
晶析工程(第3工程)
晶析工程では、第2工程で得られた次亜塩素酸ナトリウム水溶液(母液)を晶析装置に導入して晶析を行う。晶析槽については特に限定しないが、タンク式晶析装置が望ましく、さらには晶析槽内の流体を循環させるためのポンプ及び冷却器を備えていることが好ましい。前工程で得られた次亜塩素酸ナトリウムの分離液に、必要に応じて軟水を投入して次亜塩素酸ナトリウムの濃度を調整する。希釈濃度については特に規定しないが、晶析効率の関係から次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は28%以上が好ましく、28%以上34%以下がさらに好ましい。
希釈調整された分離液を、続く晶析工程にて冷却する事で次亜塩素酸ナトリウム5水和物を得る。この操作はバッチ処理で行う場合、種結晶を入れなくても問題はないが、結晶形状を制御するために、種結晶を添加することが好ましい。
種結晶を投入する場合は、母液に種結晶を添加しても次亜塩素酸ナトリウム5水和物および塩素酸ナトリウムが析出しない冷却開始温度の±2℃以内に温度調整した母液に、種結晶を投入することが好ましい。具体的には、冷却開始温度(母液の温度)が10〜26℃の範囲にあるときに種結晶を投入することが好ましい。連続処理で行う場合は、種結晶の存在下、冷却しながらで母液を連続的に投入する。晶析するまでに種結晶が若干溶解することを考慮すると、種結晶を添加する冷却開始温度は、12〜24℃の範囲がより好ましく、さらに好ましくは16〜24℃である。種結晶となる次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶を、シード添加比Cs=0.04〜0.08(Cs=Ws/Wth:Wsシード量、Wth:理論析出量)となるよう投入した。この時、種結晶を入れなくても特に問題はないが、晶析が晶析槽壁面で起こるのを抑制し晶析速度を上げる目的で、上記のような少量の種結晶を使用することも可能である。
本発明の製造方法では、晶析温度を特に限定はしないが、一定温度で冷却しても、一定の冷却速度で冷却しても構わない。一定の冷却速度で冷却する場合、1〜4℃/時とするのが好ましい。この設定速度の場合、晶析タンクの壁面に付着する結晶スケールを防止でき、微細結晶生成による攪拌動力増大および固液分離の際の脱液性の悪化などを防止できるだけでなく、生産性に影響を及ぼすことなく母液を冷却できる。
本発明の製造方法では、晶析工程で、晶析槽内を攪拌するか、晶析槽内の液をポンプで循環させることが重要である。ポンプ循環と撹拌を単独で行っても組み合わせて行っても構わない。ポンプの種類は特に限定しないが、回転ポンプ等が望ましい。この時、晶出しているアスペクト比の高い次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶は、ポンプ内で破砕され、球状に近い細かい粒子となる。破砕された細かい粒子は、表面積が大きいため、凝集したり、再溶解して大きな結晶の周りで再析出することで、粒子が粗大化される。また、ポンプの循環流量が多すぎると粗大化された粒子を粉砕してしまい微細な結晶となる為、むやみに循環流量を増やすことは望ましくない。よって、ポンプでの循環流量は、1時間に、晶析槽にある次亜塩素酸ナトリウム水溶液量に対して0.5〜4.0倍程度の液量を循環させる事が好ましく、更に好ましくは1.0〜3.0倍程度の液量を循環させる事が好ましい。
また、晶析の際に晶析槽内を攪拌する場合は、攪拌翼先端速度を2.1〜7.5m/秒とすることが好ましい。この範囲を選択することにより、晶析槽壁面に付着する結晶スケールを防止でき、そして十分な冷却速度を確保することで、過剰な結晶化熱発生による次亜塩素酸ナトリウム5水和物の分解を抑制でき、結晶形を制御することができる。攪拌翼の先端速度を2.0m/秒以下のような緩やかな攪拌だとアスペクト比が高い結晶が生成してしまう。これらの最適なバランスをとるために、攪拌翼先端速度は、3.0〜7.0m/秒とすることが特に好ましい。また、上記二つの撹拌とポンプ循環と撹拌を同時に行い、ポンプでの循環流量を1時間に、晶析槽にある次亜塩素酸ナトリウム水溶液量に対して0.5〜4.0倍程度の液量を循環させながら、攪拌翼先端速度を2.1〜7.5m/秒として撹拌しながら晶析しても構わない。
晶析工程において最終到達する温度(冷却終了温度)は、次亜塩素酸ナトリウム5水和物が析出するが、塩化ナトリウムは析出しない温度が好ましい。具体的には母液中の塩化ナトリウム濃度によるが、4〜8%程度の塩化ナトリウムを含む母液の場合、本工程において最終到達する温度(冷却終了温度)は、0〜16℃が好ましい。この温度であれば、適度なスラリー濃度を維持でき、次工程の固液分離(第4工程)が容易になる。到達温度が低いと、塩化ナトリウム結晶の副生が増加し、また冷却に要するエネルギーが過剰になる。一方、冷却終了温度が高いと、次亜塩素酸ナトリウム5水和物の生成量が不十分で、生産効率が低下する。このバランスから、冷却終了温度は、2〜14℃であることがより好ましく、4〜12℃であることがさらに好ましい。また、晶析時間については特に規定しないが、生産性を考慮すると、12時間以内が好ましく、10時間以内が特に好ましい。
次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶分離工程(第4工程)
第4工程の分離工程では、晶析工程で得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を遠心分離機などの固液分離装置を用いて分離し、次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子を得る。
晶析工程にて冷却した次亜塩素酸ナトリウム5水和物を含む水溶液から晶出した次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶を、連続またはバッチの遠心分離機型を用いて、遠心効果1000〜3500Gにて固液分離を実施。必要に応じて、結晶表面を水や無機物を含んだ溶液で洗浄し、表面処理を施すことにより次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子が得られる。
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお以下の実施例および比較例において、%は特に断らない限り質量基準である。
実施例1(発明例)
塩素化工程(第1工程)では、撹拌器、スクラバーおよび外部循環型冷却器を備えた2段CSTR(continuous stirred tank reactor)反応槽(容量3.5m3×2槽)を用いた。これに、原料として48質量%の水酸化ナトリウム水溶液を860kg/hrで投入すると共に、残水酸化ナトリウム濃度が2質量%となるように、スクラバーに空気で1/2濃度に希釈した塩素ガスを、供給量を調整しながら導入し、反応温度が24〜30℃となるように冷却しながら塩素化を行った。この際、反応槽内での滞留時間は約720分であった。
塩化ナトリウム分離工程(第2工程)では、塩素化工程の反応槽から1188kg/hrで抜き出した反応物スラリーを、遠心分離器で固液分離した。これにより、析出した塩化ナトリウム254kg/hrと、濃度が35質量%である次亜塩素酸ナトリウムと、濃度が5.4質量%である塩化ナトリウムから成る次亜塩素酸ナトリウム水溶液(濾液1)934kg/hrを得た。
濾液1に軟水を添加し、次亜塩素酸ナトリウム濃度を31.9質量%、塩化ナトリウム濃度4.9質量%、水酸化ナトリウム濃度1.5質量%に調整した。
晶析工程(第3工程)では、撹拌器、ジャケット、コイル冷却器および外部循環ポンプを備えたチタン製晶析槽(容量7m3)へ、温度を22℃に調整しながら、前記濾液1を8942kg投入し、この時、渦巻き型ポンプを用いて1.5回/hrで循環、攪拌機を用いて先端速度4.5m/秒で撹拌しながら濾液1の温度と冷媒温度の温度差ΔTが3〜4℃となるように冷却を開始し、12℃に成るまで4時間かけて冷却した。晶析槽内では19℃から結晶の生成が観察された。
分離工程(第4工程)では、晶析槽の温度を14℃に保ちながら晶析工程(第3工程)の晶析槽から抜き出したスラリーを1500Gにて遠心分離器で固液分離した。これにより、高純度次亜塩素酸ナトリウム5水和物次亜塩素酸ナトリウム5和物結晶を2850kg得た。得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の組成と性状を表1に示した。平均アスペクト比は1.65であった。
得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物のアスペクト比の分布を図6に示す。
実施例2(発明例)
実施例1の塩素化工程(第1工程)、塩化ナトリウム分離工程(第2工程)工程と同様の操作を行い、次亜塩素酸ナトリウム濃度を32.2質量%、塩化ナトリウム濃度5.1質量%、水酸化ナトリウム濃度1.3質量%の濾液2を得た。
得られた濾液に対し、晶析工程(第3工程)では、撹拌器、ジャケット、コイル冷却器および外部循環ポンプを備えたチタン製晶析槽(容量7m3)へ、温度を22℃に調整しながら、前記濾液2を8781kg投入し、この時、攪拌機を用いて先端速度7.5m/秒で撹拌しながら濾液2の温度と冷媒温度の温度差ΔTが3〜4℃となるように冷却を開始し、12℃に成るまで4時間かけて冷却した。晶析槽内では17℃から結晶の生成が観察された。
分離工程(第4工程)では、晶析槽の温度を14℃に保ちながら晶析工程(第3工程)の晶析槽から抜き出したスラリーを1500Gにて遠心分離器で固液分離した。これにより、高純度次亜塩素酸ナトリウム5水和物次亜塩素酸ナトリウム5和物結晶を2790kg得た。得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の組成と性状を表1に示した。平均アスペクト比は2.16であった。
得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物のアスペクト比の分布を図7に示す。
比較例1
循環・撹拌の効果を確認する為に、第3工程で循環を行なわず、撹拌速度も遅くした比較例を検討した。
実施例1と同様にして、第1工程の水酸化ナトリウムの塩素化によって得られ、第2工程を経て得られた表1の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、22℃(冷却開始温度)から240分間かけて12℃(冷却終了温度)に到達するまで循環せずに、攪拌機を用いて先端速度2.0m/秒で撹拌しながら冷却し(第3工程)、得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶を500Gにて遠心分離濾過を実施する事で次亜塩素酸ナトリウム5水和物の結晶粒子を得た(第4工程)。得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物の物性を表1に示した。得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の組成と性状を表1に示した。平均アスペクト比は9.51であった。
得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子のアスペクト比の分布を図8に示す。アスペクト比9.0以上の結晶体が全体の6割を占めており、細い針状が得られた。
比較例2
ナカライテスク株式会社製の次亜塩素酸ナトリウム5水和物固形タイプ(製品コード15591−65)を用いて、アスペクト比と嵩密度の測定を実施した。その組成と性状を表1に示した。平均アスペクト比は4.29であった。
比較例2の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶体のアスペクト比の分布を図9に示す。アスペクト比2.5〜6.0の範囲で分布した細い針状が得られた。
(比較例3)
和光純薬工業株式会社の次亜塩素酸ナトリウム5水和物(規格:和光一級品、コードナンバー199−17215)特を用いて、アスペクト比と嵩密度の測定を実施した。その組成と性状を表1に示した。平均アスペクト比は2.81であった。
得られた次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶体のアスペクト比の分布を図10に示す。アスペクト比2.0〜3.0の範囲で結晶が全体の6割を占められた針状が得られた。
上記結果から明らかなとおり、本発明の次亜塩素酸ナトリウム5水和物は従来の製法と比較して、アスペクト比が低い丸み状の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子が得られ、嵩密度が著しく改善されている、従来品と比較して、輸送時の容積を低下させることで輸送効率化と容器等の削減を達成できる。

Claims (7)

  1. 平均アスペクト比が2.5以下であって、平均短径が0.1mm以上1.5mm以下である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子。
  2. 嵩密度が0.80g/cm3以上である請求項1に記載の次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子。
  3. 嵩密度が0.80g/cm3以上である次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子。
  4. 40〜48質量%水酸化ナトリウム水溶液に塩素を導入して反応温度15〜32℃で塩素化する第1工程と、
    析出した副生塩化ナトリウムの結晶を分離除去して次亜塩素酸ナトリウム濃度24〜34質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を回収する第2工程と、
    冷却器と晶出器とが一体となった晶析槽において、前記第2工程で回収された次亜塩素酸ナトリウム5水和物を含む水溶液を冷却温度0〜26℃まで冷却して次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を析出させる第3工程であって、晶析槽内の前記水溶液を攪拌もしくはポンプ循環させる、または攪拌およびポンプ循環させる、第3工程と、
    前記第3工程で析出した次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶を固液分離して次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子を得る第4工程と
    を含むことを特徴とする次亜塩素酸ナトリウム5水和物結晶粒子の製造方法。
  5. 前記第3工程での、攪拌が、攪拌翼先端速度を2.1〜7.5m/秒で行われる請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記第3工程での、ポンプ循環が、1時間に、前記晶析槽中の水溶液量に対して0.5〜4.0倍の液量を循環させることで行われる請求項4に記載の製造方法。
  7. 前記第3工程での、ポンプ循環が、1時間に、前記晶析槽中の水溶液量に対して0.5〜4.0倍の液量を循環し、尚且つ撹拌が、攪拌翼先端速度を2.1〜7.5m/秒で行われる請求項4に記載の製造方法。
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