JP2018122546A - 積層膜付き透明基体 - Google Patents

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怜子 日向野
Reiko Hyugano
怜子 日向野
山崎 和彦
Kazuhiko Yamazaki
和彦 山崎
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Abstract

【課題】可視光透過性及び赤外線遮蔽性が高く、電波透過性に優れ、膜硬度と耐摩耗性が高く、かつ化学的耐久性に優れる。
【解決手段】積層膜付き透明基体10は、透明基体11と、この透明基体上に赤外線遮蔽膜12とTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物により構成された保護膜14とが積層された積層膜16とを有する。赤外線遮蔽膜12は、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と酸化ケイ素を含むマトリックス中に、平均一次粒子径100nm以下の透明酸化物粒子が分散している層である。赤外線遮蔽膜12と保護膜14の間にZrO2を含む中間膜13を備えることもできる。
【選択図】図2

Description

本発明は、可視光透過性及び赤外線遮蔽性が高く、電波透過性に優れ、膜硬度と耐摩耗性が高く、かつ化学的耐久性に優れる積層膜付き透明基体に関する。
従来、可視光透過性及び赤外線遮蔽性が高く、電波透過性に優れる赤外線遮蔽膜として、ITOに代表される透明酸化物粒子を含む膜が知られている。しかしながら、この赤外線遮蔽膜のみを透明基体上に形成した赤外線遮蔽膜付き透明基体を遮熱のために車両用ガラスや建築用ガラス又はフィルムに用いた場合、酸性雨などに曝されたときには、赤外線遮蔽膜が酸性雨などに対して耐久性が低い問題があった。
そのため、可視光透過性及び赤外線遮蔽性が高く、化学的耐久性に優れた積層膜付き透明基体として、透明基板と、この透明基板上に、透明導電層と膜厚が10nm超の窒素含有光吸収層とが積層された積層膜とを有する積層膜付き透明基板が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。その一方、ガラス基板の表面上に、第1層と第2層とが隣接してなる赤外線遮蔽層(ただし、第1層がガラス基板側に存在する)を有する赤外線遮蔽層付きガラス板が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献1の発明は、低緯度から中緯度の暑熱地域における単板での使用に適した、適度な可視光透過率を有するとともに、高遮熱性及び高演色性に加えて耐久性に優れる積層膜付き透明基板を提供することを目的とする。特許文献1の透明基板では、積層膜は更に透明基板側と反対側の最表層に誘電体層を有することが示される。また上記透明導電層は、スズ等がドープされた酸化インジウム、アンチモン等がドープされた酸化スズ、インジウム、アルミニウム等がドープされた酸化亜鉛を主体とすることが示される。また特許文献1には、上記窒素含有光吸収層が、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化ハフニウム、酸窒化ジルコニウム、酸窒化クロム、酸窒化チタン、酸窒化ニオブ、酸窒化ハフニウム等を主体とすることが示され、上記誘電体層が、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミニウム及び/又はホウ素がドープされた窒化ケイ素又は酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、スズ亜鉛酸化物から選ばれる少なくとも1種を主体とすることが示される。上記誘電体層は、積層膜の機械的耐久性、化学的耐久性を向上させ、窒素含有光吸収層が雰囲気中の酸素によって酸化されることを抑制する機能を有することが記載されている。
特許文献2の赤外線遮蔽層付きガラス板は、第1層が、平均一次粒子径100nm以下のITO微粒子が酸化ケイ素と酸化チタンとを含む金属酸化物マトリックスで結合されている構成の、層厚0.2〜2μmの層であり、第2層が酸化ケイ素と酸化チタンとを含む、層厚0.02〜0.3μmの金属酸化物層である。特許文献2の発明は、可視光透過率が高く、赤外線透過率が低く、電波透過性が高く、かつ自動車用窓ガラス板などの機械的、化学的耐久性が高度に要求される部位へも適用が可能な赤外線遮蔽層付きガラス板を提供することを目的とする。特許文献2の赤外線遮蔽層付きガラス板の第2層は、赤外線遮蔽層の機械的耐久性の向上に寄与する構成因子であり、また高温での焼成時に、ITO微粒子中に酸素が供給されてITO微粒子が酸化されるのを防ぐ、酸素バリヤ層としての働きを有することが記載されている。
特開2016−079051号公報(請求項1〜5、段落[0008]、[0036]) 国際公開WO2006/112370号公報(請求項1、段落[0010]、[0023])
特許文献1に示される積層膜付き透明基板は、適度な可視光透過率を有するとともに、低緯度から中緯度の暑熱地域における単板での使用に適した、高遮熱性及び高演色性を有することを主たる目的としているため、誘電体層に透明基板の化学的耐久性を向上させる機能があるとしても、誘電体層を構成する窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミニウムがドープされた窒化ケイ素では、厳しい耐環境試験による耐酸・耐アルカリ性などへの化学的耐性が十分ではなく、より一層化学的耐久性を向上させる技術が求められている。
特許文献2に示される赤外線遮蔽層付きガラス板は、その第2層が赤外線遮蔽層の機械的耐久性の向上と、高温での焼成時のITO微粒子の酸化防止を主たる目的としているため、第2層を構成する酸化ケイ素と酸化チタンとを含む金属酸化物層では、厳しい耐環境試験による耐酸・耐アルカリ性などへの化学的耐久性の観点での保護機能が十分でなかった。
また特許文献2の赤外線遮蔽膜付きガラスによれば、可視光透過率が高く、赤外線透過率が低く、電波透過性が高く、かつ自動車用窓ガラスなどの機械的耐久性が要求される部位へも適用が可能であるとされているけれども、近年、酸性雨などが降る環境下で利用される場合には、これらの特性に加えて、更に化学的耐久性に優れた赤外線遮蔽膜が要求されてきている。
本発明の目的は、可視光透過性及び赤外線遮蔽性が高く、電波透過性に優れ、膜硬度と耐摩耗性が高く、かつ化学的耐久性に優れる積層膜付き透明基体を提供することにある。
本発明の第1の観点は、図1に示すように、透明基体11と、この透明基体11上に赤外線遮蔽膜12とTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物により構成された保護膜14とが積層された積層膜16とを有し、赤外線遮蔽膜12が、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と酸化ケイ素を含むマトリックス中に、平均一次粒子径100nm以下の透明酸化物粒子が分散している層である積層膜付き透明基体10である。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、図2に示すように、赤外線遮蔽膜12と保護膜14の間にZrO2を含む中間膜13を備えた積層膜付き透明基体20である。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記透明酸化物粒子が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AlZO)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物粒子である積層膜付き透明基体である。
本発明の第1の観点の積層膜付き透明基体では、赤外線遮蔽膜の可視光透過性及び赤外線遮蔽性(以下、分光特性ということもある。)に悪影響を及ぼさないエポキシ樹脂と酸化ケイ素を含むマトリックス中に、平均一次粒子径100nm以下の透明酸化物粒子が分散しているため、透明基体表面の赤外線遮蔽膜の可視光透過性及び赤外線遮蔽性が高く、電波透過性に優れる。また赤外線遮蔽膜がTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物により構成された保護膜で保護されるため、厳しい耐環境試験による耐酸・耐アルカリ性などへの化学的耐久性に優れる。更にマトリックスが分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を含むため、積層膜は、膜硬度と耐摩耗性が高く、また透明基体表面への接着強度が高い。
本発明の第2の観点の積層膜付き透明基体では、赤外線遮蔽膜と保護膜の間にZrO2を含む中間膜を備えるため、中間膜が、マトリックス中のエポキシ樹脂のナフタレン骨格と保護膜のTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物との反応を防止し、積層膜の経時的変化を抑制することができる。
本発明の第3の観点の積層膜付き透明基体では、透明酸化物粒子が特定の金属酸化物粒子であるため、赤外線遮蔽膜の分光特性を優れたものにすることができる。
本実施形態の中間膜を有しない積層膜付き透明基体の断面図である。 本実施形態の中間膜を有する積層膜付き透明基体の断面図である。
次に本発明を実施するための形態を説明する。
〔積層膜付き透明基体〕
図1に示すように、本実施形態の積層膜付き透明基体10は、透明基体11と、この透明基体11上に赤外線遮蔽膜12とTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物により構成された保護膜14とが積層された積層膜16とを有する。本実施形態の別の形態では、図2に示すように、赤外線遮蔽膜12と保護膜14の間に中間膜13が設けられる。この中間膜を設けることにより、積層膜の変色、劣化などの経時的変化が抑制されるため、好ましい。
〔透明基体〕
本実施形態の透明基体11としては、透明なガラス基板、透明な樹脂基板、透明な樹脂フィルム等が挙げられる。ガラス基板のガラスとしては、クリアガラス、高透過ガラス、ソーダライムガラス、グリーンガラス等の高い可視光透過率を有するガラスが挙げられる。樹脂基板又は樹脂フィルムの樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂やポリフェニレンカーボネート等の芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステル系樹脂等の樹脂が挙げられる。積層膜付き透明基体の一例として、透明なガラス基板上に赤外線遮蔽膜と中間膜と保護膜がこの順に積層された積層膜を有する積層膜付きガラスが挙げられる。別の例として、透明な樹脂フィルム上に赤外線遮蔽膜と中間膜と保護膜がこの順に積層された積層膜を有する積層膜付き樹脂フィルムが挙げられる。
〔赤外線遮蔽膜〕
本実施形態の赤外線遮蔽膜12は、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と酸化ケイ素を含むマトリックス中に、平均一次粒子径100nm以下の透明酸化物粒子が分散している層である。上記マトリックス中のエポキシ樹脂と酸化ケイ素の含有割合は、質量比で[エポキシ樹脂]:[酸化ケイ素]=40:60〜90:10であることが好ましい。
〔透明酸化物粒子〕
本実施形態の赤外線遮蔽膜12のマトリックス中に分散している透明酸化物粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO:Indium doped Tin Oxide)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony doped Tin Oxide)、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO:Antimony doped Zinc Oxide)又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AlZO:Aluminum doped Zinc Oxide)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物粒子を用いることができる。特に、ITO粒子がより優れた透明性を示すため好ましい。透明酸化物粒子の平均一次粒子径は100nm以下であり、好ましくは10〜50nmである。100nmを超えると、粒子表面で光が散乱し、白濁する等の理由で、可視光線透過率が低下する。この粒子径は走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 型式名:SU−8000)を用いて、ソフトウェア(品名:PC SEM)により測定される。倍率5000倍で、300個の粒子を測定し、それぞれの平均を算出することで平均値を得る。
〔赤外線遮蔽膜形成用塗料〕
本実施形態の赤外線遮蔽膜12を形成するための塗料は、上記透明酸化物粒子とバインダを含有する。このバインダは、赤外線遮蔽膜のマトリックス中で上記透明酸化物粒子を分散した状態で固定するためのもので、樹脂組成物と溶剤を含む。樹脂組成物は、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を含む。
〔分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂〕
本実施形態の赤外線遮蔽膜12のマトリックスを構成する、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とは、1分子内に少なくとも1個以上のナフタレン環を含んだ骨格を有するエポキシ樹脂であり、ナフトール系、ナフタレンジオール系等が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂としては、1,3−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,4−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,5−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,6−ジグリシジルエーテルナフタレン、2,6−ジグリシジルエーテルナフタレン、2,7−ジグリシジルエーテルナフタレン、1,3−ジグリシジルエステルナフタレン、1,4−ジグリシジルエステルナフタレン、1,5−ジグリシジルエステルナフタレン、1,6−ジグリシジルエステルナフタレン、2,6−ジグリシジルエステルナフタレン、2,7−ジグリシジルエステルナフタレン、1,3−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,4−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,5−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,6−テトラグリシジルアミンナフタレン、1,8−テトラグリシジルアミンナフタレン、2,6−テトラグリシジルアミンナフタレン、2,7−テトラグリシジルアミンナフタレン等が例示される。分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、上記したナフタレン型エポキシ樹脂を含むものであればよく、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、液状の2官能ナフタレン型エポキシ樹脂が低粘度である点から好ましい。液状の上記エポキシ樹脂と固形のエポキシ樹脂を併用してもよい。分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を用いることで、膜硬度と耐摩耗性が高く、かつ耐熱性に優れた赤外線遮蔽膜12を形成することができる。
〔酸化ケイ素〕
本実施形態の赤外線遮蔽膜12のマトリックスを構成する酸化ケイ素は、赤外線遮蔽膜形成用塗料のバインダ中のケイ素アルコキシドの加水分解縮合物から湿式法で作られる。
〔ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物〕
上記ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物とは、下記化学式(1)に示すケイ素アルコキシドの加水分解(縮合)によって生成したものである。
Si(OR)4 (1)
(但し、式(1)中、Rは1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を表す。)
上記ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物は、反応性の速さと、樹脂組成物から得られる膜の硬度を保持するために使用される。例えば、炭素原子数が6以上のアルキル基を有するケイ素アルコキシドの加水分解縮合物では、加水分解反応が遅く、製造に時間がかかり、また得られた組成物を塗布して得られる膜の硬度が下がるおそれがある。
上記式(1)に示すケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。このうち、硬度が高い膜が得られることから、テトラメトキシシランが好ましい。また、加水分解縮合物を得るには、上記ケイ素アルコキシドを単一種類で利用してもよいし、2種類のケイ素アルコキシドを所定の割合で混合し、これらの加水分解(縮合)によって生成させたものを含有させることもできる。
2種類のケイ素アルコキシドを混合して加水分解縮合物を生成する場合には、一例を挙げれば、あるケイ素アルコキシド(例えば、テトラメトキシシラン:TMOS)と別のケイ素アルコキシド(例えば、メチルトリメトキシシラン:MTMS)の混合割合は、質量比でTMOS:MTMS=1:0.5にする。
単一種類のケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を生成する場合には、有機溶媒中において、単一種類のケイ素アルコキシドを加水分解(縮合)させる。具体的には、単一種類のケイ素アルコキシド1質量部に対して、好ましくは水を0.5〜2.0質量部、無機酸又は有機酸を0.005〜0.5質量部、有機溶媒を1.0〜5.0質量部の割合で混合し、単一種類のケイ素アルコキシドの加水分解反応を進行させることで、ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を得ることができる。また2種類のケイ素アルコキシドを混合した加水分解縮合物を生成する場合には、有機溶媒中において、これらを加水分解(縮合)させる。具体的には、2種類のケイ素アルコキシドの合計量1質量部に対して、好ましくは水を0.5〜2.0質量部、無機酸又は有機酸を0.005〜0.5質量部、有機溶媒を1.0〜5.0質量部の割合で混合し、2種類のケイ素アルコキシドの加水分解反応を進行させることで、ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を得ることができる。ここで、水の割合を0.5〜2.0質量部の範囲とするのが好ましい理由は、水の割合が下限値未満ではケイ素アルコキシドの加水分解縮合反応が乏しく、膜硬度が不十分となるためである。一方、上限値を越えると加水分解反応中に反応液がゲル化する等の不具合が生じる場合があるからである。また、基体との密着性が低下する場合がある。このうち、水の割合は0.8〜3.0質量部が特に好ましい。水としては、不純物の混入防止のため、イオン交換水や純水等を使用するのが望ましい。
無機酸又は有機酸としては、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸又は酢酸等の有機酸が例示される。このうち、ギ酸を使用するのが特に好ましい。無機酸又は有機酸は加水分解反応を促進させるための酸性触媒として機能するが、触媒としてギ酸を用いることによって、より透明性に優れた膜を形成しやすいからである。ギ酸は、他の無機酸又は有機酸を使用した場合に比べ、成膜後の膜中において不均一なゲル化の促進を防止する効果がより高い。また、無機酸又は有機酸の割合を上記範囲とするのが好ましい理由は、無機酸又は有機酸の割合が下限値未満では反応性に乏しいために膜の硬度が十分に上がらないからであり、一方、上限値を越えても反応性に影響はないが、残留する酸による基材の腐食等の不具合が生じる場合があるからである。このうち、無機酸又は有機酸の割合は0.008〜0.2質量部が特に好ましい。
有機溶媒としては、アルコール、ケトン、グリコールエーテル、又はグリコールエーテルアセテートを使用するのが好ましい。有機溶媒として、これらアルコール、グリコールエーテル又はグリコールエーテルアセテートを使用するのが好ましい理由は、最終的に得られる赤外線遮蔽膜形成用塗料の塗布性を向上させるためであり、また、例えば2種類以上のケイ素アルコキドの加水分解縮合物を使用する際に、これらの混合がしやすいためである。また、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂との混合がしやすいためである。
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)等が例示される。また、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等が例示される。また、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が例示される。また、グリコールエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が例示される。このうち、加水分解反応の制御がしやすく、また膜形成時に良好な塗布性が得られることから、エタノール、IPA、MEK、MIBK、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
また、上記有機溶媒は、下限値以下ではケイ素アルコキシドの加水分解物で形成されるバインダ組成物がゲル化する不具合が生じやすく、透明で均一な膜が得られにくい。透明基体との密着性も低下する場合がある。一方、上限値を越えると加水分解の反応性が低下等に繋がり、膜の硬化性に不具合が生じることで、硬度及び耐摩耗性に優れた膜が得られないからである。このうち、有機溶媒の割合は1.5〜3.5質量部が特に好ましい。
〔バインダの調製方法〕
本実施形態のバインダは、上記分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と上記ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を含む樹脂組成物に、溶剤を添加して均一に混合して調製される。上記エポキシ樹脂と上記ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の混合割合は、樹脂組成物100質量%中、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を40〜90質量%、好ましくは40〜70質量%とケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を10〜60質量%、好ましくは30〜60質量%含むように決められる。上記エポキシ樹脂の含有量が40質量%未満であって、上記加水分解縮合物の含有量が60質量%を超えると、この樹脂組成物で形成された赤外線遮蔽膜では、膜が焼成硬化する際の応力によりクラックが入り易くなるために、膜硬度が低く、かつ可視光線透過率が低い。また上記エポキシ樹脂の含有量が90質量%を超え、かつ上記加水分解縮合物の含有量が10質量%未満であると、この樹脂組成物で形成された赤外線遮蔽膜では、焼成時の膜硬度が十分に上がらないために、膜硬度が低く、かつ耐摩耗性に劣る。
上記樹脂組成物に添加する溶剤は、ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物との相溶性の観点から、上記有機溶媒と同一であることが好ましい。この溶剤の添加量は、最終的に得られる赤外線遮蔽膜形成用塗料をガラス基板表面又は樹脂フィルム表面に塗布するときに、前述した透明酸化物粒子を分散させる分散媒の含有量及び上記有機溶媒の含有量も考慮して、塗布に適した粘度とするように決められる。
〔赤外線遮蔽膜形成用塗料の調製方法〕
本実施形態の赤外線遮蔽膜形成用塗料は、上記透明酸化物粒子、好ましくはこの透明酸化物粒子を分散媒に分散させた状態の透明酸化物粒子分散液と上記バインダを混合して調製される。得られる赤外線遮蔽膜の分光特性と膜強度と膜の耐摩耗性を考慮して、透明酸化物粒子に対するバインダの乾燥硬化後固形分(以下、バインダ固形分という。)の質量比(透明酸化物粒子/バインダ固形分)が5/95〜80/20、好ましくは20/80〜60/40となるように混合される。この質量比が5/95より小さいと、透明酸化物粒子の割合が少なすぎ、近赤外線カット率が低く、かつ膜硬度が高くならない。また80/20を超えると、透明酸化物粒子の割合が多すぎ、近赤外線カット率には優れるが、バインダが少なすぎ、耐摩耗性が低くなる。
〔赤外線遮蔽膜の形成方法〕
赤外線遮蔽膜12は、透明基体11上に上記塗料を塗布し、所定の温度で乾燥した後、加熱処理して透明基体11上に0.1〜2.5μm、好ましくは0.5〜2.0μmの膜厚で形成される。この赤外線遮蔽膜形成用塗料は、上記透明酸化物粒子と上記バインダを混合して調製される。このとき、透明酸化物粒子を分散媒に分散させた状態で上記バインダと混合して調製することが好ましい。この分散媒は、上述したバインダの溶剤との相溶性の観点から、バインダの溶剤と同一であることが好ましい。透明基体が透明なガラス基板である場合には、加熱処理を酸化雰囲気下、50〜300℃の温度で5〜60分間保持することにより行う。この温度と保持時間は要求される膜硬度に応じて決められる。また透明基体が透明な樹脂フィルムである場合には、加熱処理を酸化雰囲気下、40〜120℃の温度で5〜120分間保持することにより行う。この温度と保持時間は要求される膜硬度と、下地フィルムの耐熱性に応じて決められる。赤外線遮蔽膜12の膜厚が0.1μm未満では、透明酸化物粒子の量が少なく、十分な赤外線カット性能が出ない等の不具合があり、2.5μmを超えると、膜内部に応力が集中しクラックが発生する等の不具合がある。
〔中間膜の形成方法〕
本実施形態の中間膜13は、上記赤外線遮蔽膜12と上記保護膜14との間に形成される。この中間膜13は、赤外線遮蔽膜のマトリックス中のエポキシ樹脂のナフタレン骨格と保護膜のTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物との反応を防止するために設けられる。このため、紫外線カット機能付き基材を用いる等、強い紫外線が積層膜に当たることが想定されない等の場合には、積層膜中に中間膜を設けなくてもよい。この中間膜13は、ZrO2、Al23、Cr2O3等の金属酸化物層からなる。これらの金属酸化物は強い紫外線に対しての安定性が高い等の理由でエポキシ樹脂のナフタレン骨格と保護膜のTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物との反応を防止することができる。この中間膜13は、乾式法であるスパッタリング法や、湿式法であるZrO2、Al23、Cr23等を含むゾルゲル液をコーティングする方法又はZrO2、Al23、等のナノ粒子を含むコーティング液をコーティングする方法等により、0.01〜2.0μm、好ましくは0.05〜1.0μmの膜厚で形成される。中間膜13の膜厚が0.01μm未満では、エポキシ樹脂のナフタレン骨格と保護膜のTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物との反応防止効果がなく、2.0μmを超えると、膜応力の集中によりクラックが入り、クラックにより化学的耐久性が低下する等の不具合がある。
〔保護膜の形成方法〕
本実施形態の保護膜14は、TiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物により構成される。この保護膜14は、積層膜16に化学的耐久性を付与するために、中間膜13がない場合には、赤外線遮蔽層12上に直接形成され、中間膜13がある場合には、中間膜13上に形成される。TiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物は厳しい耐環境試験による耐酸・耐アルカリ性などへの化学的耐久性が高い等の理由で、積層膜16に化学的耐久性を付与することができる。この保護膜14は、乾式法であるスパッタリング法や、湿式法であるTiO2及び/又はNb25を含むゾルゲル液をコーティングする方法又はTiO2及び/又はNb25のナノ粒子を含むコーティング液をコーティングする方法等により、0.01〜2.0μm、好ましくは0.05〜1.0μmの膜厚で形成される。TiO2及びNb25の双方を含む場合には、TiO2とNb25の含有割合は、質量比で[TiO2]:[Nb25]=50:50〜10:90であることが好ましい。保護膜14の膜厚が0.01μm未満では、積層膜16に化学的耐久性を付与することができず、2.0μmを超えると、膜応力の集中によりクラックが入り、クラックにより化学的耐久性が低下する等の不具合がある。
〔積層膜付き透明基体の製造方法〕
以上の工程を経て、積層膜付き透明基体が製造される。赤外線遮蔽膜と中間膜と保護膜のすべての膜が湿式法で行われる場合には、赤外線遮蔽膜形成用のコーティング液を塗布し乾燥し、次いで中間膜形成用コーティング液を塗布し乾燥し、続けて保護膜形成用コーティング液を塗布し乾燥した後で、一括して熱処理してもよい。この方法によれば、赤外線遮蔽膜に用いる透明酸化物粒子の性能低下を抑制し、また作業の短縮化が図れる等の効果がある。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
〔7種類の樹脂〕
本発明の実施例1〜11及び比較例1に用いられる5種類の樹脂と、比較例2、3に用いられる樹脂とを、表1にそれぞれ示す。表1には、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂として、J1:EXA−4700(DIC社製)、J2:HP−4700(DIC社製)、J3:HP−4710(DIC社製)、J4:HP−6000(DIC社製)、J5:HP−4032SS(DIC社製)を示し、ナフタレン骨格を有しないエポキシ樹脂として、J6:EPICLON 850(DIC社製)を示し、エポキシ樹脂でないアクリル樹脂として、J7:アクリディックA−9585(DIC社製)を示す。
〔4種類のケイ素アルコキシド〕
本発明の実施例1〜11及び比較例1〜3に用いられる4種類のケイ素アルコキシドを表2に示す。表2には、A:テトラメトキシシラン、B:テトラエトキシシラン、C:フェニルトリメトキシシラン、D:テトラメトキシシランとメチルトリメトキシシランの併用を示す。この2種類のケイ素アルコキシドを併用する場合、テトラメトキシシラン(TMOS)とメチルトリメトキシシラン(MTMS)の質量比をTMOS:MTMS=1:0.5にしている。
Figure 2018122546
Figure 2018122546
<実施例1>
ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物として、単一種類のケイ素アルコキシド、即ち、A:テトラメトキシシランを用い、テトラメトキシシラン1質量部に対して、水1.2質量部、ギ酸を0.02質量部、有機溶媒としてIPAを2.0質量部添加して、55℃で1時間撹拌することによりケイ素アルコキシドの加水分解縮合物を得た。この加水分解縮合物に対して、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂として、J1:EXA−4700(DIC社製)を混合した。具体的には、樹脂組成物中の固形分を100質量%としたときに、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂由来の固形分を50質量%、ケイ素アルコキシドの加水分解縮合物由来の固形分を50質量%となる比率で混合した。次に、透明酸化物粒子である平均一次粒子径が100nmのITO粒子をIPAに分散させたITO粒子分散液を調製し、バインダの固形質量比(透明酸化物粒子/バインダ固形分)が10/90となるように、ITO粒子分散液と、上記混合により得られたバインダとを混合した後、塗布に適した粘度とするため、有機溶媒としてIPAを加えて赤外線遮蔽膜形成用塗料を調製した。IPAは赤外線遮蔽膜形成用塗料の35質量%の割合になるように添加した。
続いて、得られた赤外線遮蔽膜形成用塗料を50×50mm□の厚さ0.7mmの透明なソーダライムガラス基板上に1000rpmの回転速度で60秒間スピンコートし、130℃で20分間乾燥して赤外線遮蔽膜を形成した。次に赤外線遮蔽膜上に中間膜としてZrO2の膜を膜厚0.02μmでスパッタリング法により成膜した後、この中間膜上に保護膜として、Nb25膜を膜厚約0.15μmでスパッタリング法により形成した。これにより、実施例1の積層膜付き透明基体を得た。
<実施例2〜11、比較例1〜3>
実施例2〜11、比較例1〜3の透明酸化物粒子として、表3に示す種類であって、表3に示す平均一次粒子径を有する透明酸化物粒子を、またバインダとして、表1及び表2に示す種類の樹脂とケイ素アルコキシドを、更に表3に示す種類の溶剤を、それぞれ選定した。その上で、表3に示すように、透明酸化物粒子に対するバインダの固形質量比(透明酸化物粒子/バインダ固形分)で透明酸化物粒子とバインダとを混合した。バインダ中の樹脂、ケイ素アルコキシド及び溶剤の含有量は表3に示す割合にした。溶剤において、EtOHはエタノールを、MEKはメチルエチルケトンを、PGMEはプロピレングリコール1−モノメチルエーテルを、PGMEAはプロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテートを、MIBKはメチルイソブチルケトンをそれぞれ意味する。
また中間膜の種類及び保護膜の種類を表3に示すように選定して、実施例1と同様にスパッタリング法により中間膜及び保護膜を形成し、表3に示す膜厚を得た。
Figure 2018122546
<比較試験及び評価>
実施例1〜11及び比較例1〜3で得られた14種類の評価用の積層膜付き透明基体のガラス基板表面に形成された14種類の赤外線遮蔽膜について、膜厚と、可視光線透過率と、近赤外線透過率(近赤外線カット率)と、膜硬度と、膜の耐摩耗性と、赤外線遮蔽膜中の透明酸化物粒子の平均一次粒子径と、赤外線遮蔽膜のマトリックス成分中のナフタレン骨格の有無と、赤外線遮蔽膜上に中間膜及び保護膜を積層した積層膜の耐薬品性(耐酸性及び耐アルカリ性)について、以下に示す方法でそれぞれ評価した。これらの結果を表4に示す。
(1) 膜厚
膜厚は、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製SU−8000)による断面観察により測定した。
(2) 可視光線及び近赤外線の透過率
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U−4100)を用い、規格(JIS R 3216−1998)に従い、波長450nmの可視光線透過率と、波長1300nmの近赤外線透過率を測定した。可視光透過率の評価は、赤外線遮蔽膜付きガラスの波長450nmにおける透過率が90%以上のときを「良」とし、85%以上90%未満のときを「可」とし、85%未満を「不良」とした。近赤外線カット率の評価は、赤外線遮蔽膜付きガラスの波長1300nmにおける透過率が5%以上のときを「不良」とし、5%%未満2%以上のときを「良」とし、2%未満のときを「優」とした。
(3) 膜硬度
JIS−S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS−K5400が規定する鉛筆硬度評価法に従い、750gのおもりを用いて各硬度の鉛筆で所定の表面を3回繰り返し引っ掻き、傷が1本できるまでの硬度を測定した。数字か高いほど、高硬度を示す。4H以上を膜硬度が優れていて、4H未満を膜硬度が劣っていると評価した。
(4) 膜の耐摩耗性
膜の耐摩耗性は、スチールウール#0000で膜表面を約100g/cm2の強さで摺動しながら20回往復した後の膜表面のキズの有無で評価した。キズがないときを「良」とし、キズがあるときを「不良」とした。
(5) 赤外線遮蔽膜中の透明酸化物粒子の平均一次粒子径
赤外線遮蔽膜内の透明酸化物粒子の平均一次粒子径は、透明基体表面に形成された膜を有する試験片を垂直に立て樹脂埋め用のエポキシ樹脂を用いて硬化させる。その後試料の観察位置まで断面研磨を実施し、凹凸の無い断面加工面を得た後に、透明酸化物粒子を含む層を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 型式名:SU−8000)を用いて、ソフトウェア(品名:PC SEM)により測定される。倍率5000倍で、300個の粒子を測定し、それぞれの平均を算出することで平均値を得る。
(6) 赤外線遮蔽膜のマトリックス成分中のナフタレン骨格の有無
赤外線遮蔽膜のマトリックス成分の分析は、主に赤外分光分析法(IR法)により行う。焼成により得られた赤外線遮蔽膜形成用塗料は、透明酸化物粒子とバインダ固形物とを含む。そのうちバインダ成分のみを粉末化したものを用いて測定を行う。塗膜そのものを用いて分析する場合には全反射法(ATR法)を行う。更に詳しい分析を要する場合には熱分解ガスクロマトグラフ法(PyGC法)を用い、熱分解生成物の定性・定量による膜内のマトリックス成分の特定を行う。上記18種類の赤外線遮蔽膜については熱分解ガスクロマトグラフ法で膜のマトリックス成分中のナフタレン骨格を調べた。
(7) 積層膜の耐薬品性
JIS R 3221に従い、1N−NaOHおよび1N−HClのそれぞれに積層膜付き透明基体を温度23℃で6時間浸積した後、純水で洗浄する試験を行った。試験前後の透過率の変化が2%未満のときを「優」、2〜4%のときを「良」、4%以上のときを「不良」とした。
Figure 2018122546
表4から明らかなように、平均一次粒子径が110nmの透明酸化物粒子(ITO粒子)を用いて形成された比較例1の赤外線遮蔽膜では、膜中におけるITO粒子の平均一次粒子径が110nmと大きすぎ、可視光線透過率が不良であった。また樹脂としてナフタレン骨格を有しないエポキシ樹脂を用いて形成された比較例2及びアクリル樹脂を用いて形成された比較例3の各赤外線遮蔽膜では、膜中にナフタレン骨格を有しないため膜表面の強度が低く、膜硬度が3H及びHであって劣り、かつ膜の耐摩耗性が不良であった。また、赤外線遮蔽膜と中間膜との密着性が不十分となり、耐薬品性が不良であった。また透明酸化物粒子/バインダ固形分が4/96の割合で形成された比較例4の赤外線遮蔽膜では、透明酸化物粒子の割合が少なすぎ、近赤外線カット率が不良であり、かつ膜硬度が3Hであって劣っていた。
これに対して、平均一次粒子径が10〜100nmの透明酸化物粒子を用いて、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂とケイ素アルコキシドの加水分解縮合物の各含有量が40〜90質量%と10〜60質量%の範囲にあって、透明酸化物粒子/バインダ固形分の質量比が5/95〜80/20の範囲にある実施例1〜11の赤外線遮蔽膜では、膜中におけるITO粒子の平均一次粒子径が15〜100nmであるため、可視光線透過率がすべて良であり、近赤外線カット率がすべて良又は優であり、膜硬度はすべて4H以上であって優れ、膜中にナフタレン骨格を有するため、膜の耐摩耗性はすべて良であった。特に実施例3、4、8、9の積層膜では、バインダ成分となるナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂組成物とケイ素アルコキシドの配合比及び中間膜と保護膜との組合せがが良好であり、耐薬品性評価が全て「優」であった。
本発明の積層膜付き透明基体は、車両用ガラスや建築用ガラス又はフィルムに利用され、車内や建物内に入射する赤外線を遮蔽し、内部の温度上昇、冷房負荷を軽減するとともに酸性雨などへの耐久性が求められる用途に供される。
10、20 積層膜付き透明基体
11 透明基体
12 赤外線遮蔽膜
13 中間膜
14 保護膜
16 積層膜

Claims (3)

  1. 透明基体と、この透明基体上に赤外線遮蔽膜とTiO2及び/又はNb25を含む金属酸化物により構成された保護膜とが積層された積層膜とを有し、
    前記赤外線遮蔽膜が、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂と酸化ケイ素を含むマトリックス中に、平均一次粒子径100nm以下の透明酸化物粒子が分散している層である積層膜付き透明基体。
  2. 前記赤外線遮蔽膜と前記保護膜の間にZrO2を含む中間膜を備えた請求項1記載の積層膜付き透明基体。
  3. 前記透明酸化物粒子が、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)又はアルミニウムドープ酸化亜鉛(AlZO)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物粒子である請求項1又は2記載の積層膜付き透明基体。
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