JP2018118917A - スクラブ剤及び皮膚洗浄用組成物 - Google Patents
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Description
本開示のスクラブ剤は、多孔質セルロース粒子からなるものである。ここで、スクラブ剤とは、角質、皮脂、埃等の毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等を除去して、身体、顔、頭皮等の皮膚及び爪等を美しくするための化粧料をいう。
本開示の多孔質セルロース粒子は、セルロースII型結晶構造を有し、粒子径がメジアン径で100μm以上1,000μm以下、窒素法BET比表面積測定法により得られる比表面積が10m2/g以上100m2/g以下、かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下であり、かつ、生分解性速度が10日以内に50重量%以上である。
本開示の多孔質セルロース粒子は、セルロースII型結晶構造を有するものである。そして、セルロースII型結晶構造を有していることは、CuKα(λ=1.542184Å)を用いたX線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=11〜13°付近、2θ=19〜21°付近及び2θ=21〜23°付近の3か所の位置に典型的なピークを有することにより同定することができる。
本開示の多孔質セルロース粒子は、粒子径がメジアン径で100μm以上1,000μm以下である。そのメジアン径は、100μm以上900μm以下が好ましく、100μm以上800μm以下がより好ましく、100μm以上700μm以下がさらに好ましく、100μm以上600μm以下が最も好ましい。
本開示の多孔質セルロース粒子は、窒素法BET比表面積測定法により得られる比表面積が10m2/g以上100m2/g以下である。その比表面積の上限値としては、50m2/g以下であることが好ましく、40m2/g以下であることがより好ましい。また、下限値としては、10.6m2/g以上であることが好ましく、11m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が10m2/g以上100m2/g以下であることにより、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等をこすり落としてまたは削り落として除去する能力及び保油性が高く、優れた洗浄力を有すると共に、十分な使用感を有する。比表面積が10m2/g未満であると、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等を除去する能力及び保油性が低いため洗浄力に劣る。比表面積は、洗浄力が向上するためより大きい方が好ましいが、大きすぎると、吸油性が高すぎるため、必要以上に皮膚の油分を吸い取り、乾燥を引き起こす。また、空間容積が大きすぎ、形状が保持できないため脆くなり、スクラブ剤として必要な十分な使用感が得られない。
本開示の多孔質セルロース粒子は、かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下である。そのかさ比重は、0.38g/ml以上0.54g/ml以下であることが好ましく、0.38g/ml以上0.53g/ml以下であることがより好ましい。かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下であることにより、当該粒子の表面から内側に向かってより深い孔を形成するため、毛穴や皮膚表面(肌)の老廃物や汚れ等をこすり落としてまたは削り落として除去する能力が高く、優れた洗浄力を有する。かさ比重が小さすぎると(特に、0.1g/ml程度になると)、当該粒子が空気中に舞いやすくハンドリング性に劣る。かさ比重が大きすぎると、硬すぎるため使用感が悪くなる。
平均見掛比重=(ゆるみ見掛比重+固め見掛比重)/2
本開示の多孔質セルロース粒子は、生分解性速度が10日以内に50重量%以上である。その生分解性速度は、10日以内に55重量%以上であることが好ましく、58重量%以上であることがより好ましい。本開示の多孔質セルロース粒子をスクラブ剤として使用した後、排水として河川や海へ流入した場合に、スクラブ剤への微量の有害化学物質等の汚染物質の吸着を防ぐと共に、さらに河川や海で生息する生物(サンゴ、貝、プランクトン等)が汚染物質を吸着したスクラブ剤を飲み込む可能性を小さくできる結果、汚染物質による生態系への影響を小さくできることから、生分解性速度はより高い方が好ましい。したがって、上限値は特に限定されないが、生態系への影響を十分に小さくできるため、上限値としては例えば、10日以内に90重量%以下、または85重量%以下であってもよい。生分解性速度が10日以内に50重量%以上であると、天然の果物の種子及びヤシ殻等と同程度の生分解性を有することとなり、微生物や光によって自然に分解される。生分解性速度が50重量%未満であると、河川や海洋に長期間留まることとなり、スクラブ剤が環境中の有害化学物質等の汚染物質を吸着する結果、その汚染物質による生態系への影響が大きくなる。
本開示の多孔質セルロース粒子は、以下の製造方法により得られる。
およそ粒子径120μm以上1,000μm以下でありアセチル置換度2.0以上の酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けて膨潤させると共に、過剰量の強塩基によりけん化する工程(I)、前記けん化した酢酸セルロースフレークを中和剤により中和する工程(II)、前記中和の後、得られるセルロース粒子を含むスラリーを固液分離して固相のセルロース粒子を得る工程(III)、前記セルロース粒子を水で洗浄した後、有機溶媒で洗浄する工程(IV)、さらに、前記洗浄したセルロース粒子を乾燥する工程(V)を含むものである。
粒子径120μm以上1,000μm以下でありアセチル置換度2.0以上の酢酸セルロースフレークを、有機溶媒/水混合溶液に浸けて膨潤させると共に、過剰量の強塩基によりけん化する工程(I)について詳述する。なお、けん化は、脱アセチル化と言い換えることができる。
前記けん化した酢酸セルロースフレークを中和剤により中和する工程(II)について詳述する。
前記中和の後、得られるセルロース粒子を含むスラリーを固液分離して固相のセルロース粒子を得る工程(III)について詳述する。
前記セルロース粒子を水で洗浄した後、有機溶媒で洗浄する工程(IV)について詳述する。
前記洗浄したセルロース粒子を乾燥する工程(V)について詳述する。
本開示の皮膚洗浄用組成物は前記スクラブ剤を含有する。皮膚洗浄用組成物は、身体、顔、頭皮等の皮膚を洗浄するための組成物をいう。皮膚洗浄用組成物としては、洗顔剤組成物、頭皮洗浄用組成物(シャンプー)及び身体洗浄用組成物(ボディシャンプー)等が挙げられる。
メジアン径は、動的光散乱法を用いて測定した。まず、純水を用いサンプルを100ppm濃度とし、超音波振動装置を用いて純水懸濁液とした。その後、レーザー回折法(株式会社セイシン企業製「SKレーザーマイクロンサイザーLMS−2000e」、超音波処理1分、屈折率1.52)により、体積頻度粒度分布を測定することによりメジアン径を測定した。ここでいうメジアン径は、粒度分布における散乱強度の積算50%に対応する粒子径の値(μm)とした。
予め試料をMasterPrep脱気装置(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社)を用いて、温度100℃下にて約1時間の間、加熱真空排気した後、比表面積測定装置(カンタクローム・インスツルメンツ社製「Autosorb iQ Station 2」)を用いて、窒素ガス吸着法により相対圧0.05〜0.28の範囲においてBET式(1)を求めた。
ここで、Pは吸着平衡における吸着質の気体の圧力、P0は吸着平衡における吸着質の飽和蒸気圧、Wは吸着平衡圧Pにおける吸着量、Wmは単分子吸着量、CはBET定数である。x軸を相対圧力P0/P、y軸を1/[W・{(P0/P)−1}]としてプロット(BETプロット)すると線形となる。このプロットは7点行ったものであり、その直線の勾配と切片の和の逆数から単分子吸着量Wmを得た。
Ss=(Wm・N・Acs・M)/w
ここで、Nはアボガドロ数、Mは分子量、Acsは吸着断面積、wはサンプル重量である。窒素ガス分子の吸着断面積Acsを0.162nm2(16.2Å2)として、固体試料1gあたりの表面積である比表面積を求めた。
かさ比重は、以下のとおり平均見掛比重として算出した。パウダテスタ(ホソカワミクロン株式会社製、TYPE PT−E)を用いて、ゆるみ見掛比重及び固め見掛比重の測定を行い、平均見掛比重を算出した。ゆるみ見掛比重は、ふるいを振動させて、サンプルをシュートを通じ落下させ、規定の容器に受け、測定した。固め見掛比重は、規定の容器にサンプルを入れ、一定の高さから規定回数落下させ、落下の衝撃で固めた後、測定した。そして、平均見掛比重は下記式にて算出した。
平均見掛比重=(ゆるみ見掛比重+固め見掛比重)/2
生分解性速度は、JIS K6950に準じた活性汚泥を使用する方法により測定した。
活性汚泥は下水処理場から入手した。その活性汚泥を1時間程度放置して得られる上澄み液(活性汚泥濃度:約360ppm)を1培養瓶あたり約300mL使用した。サンプル0.03gを当該上澄み液中で撹拌した時点を測定開始とし、その24時間後から1回目の測定をし、さらにその後24時間おきに21回測定した。測定開始から240時間後までを10日以内とする。測定の詳細は以下のとおりである。大倉電気(株)製クーロメータ OM3001を用いて、各培養瓶中の生物化学的酸素要求量(BOD)を測定し、各試料の化学組成を元に生分解性(%)を算出した。
固形分濃度は、加熱重量減法で求めた。すなわち、次のようにして測定した。試料をアルミ皿に約10g秤量し(W2)、60℃の減圧乾燥機で3時間乾燥し、デシケーター中で室温まで冷却した後に秤量(W3)し、下記式に従って固形分濃度を求めることができる。
固形分濃度(%)=(W3−W1)/(W2−W1)×100
W1はアルミ皿の重量(g)、W2は乾燥前の試料を入れたアルミ皿の重量(g)、W3は乾燥後の試料を入れたアルミ皿の重量(g)
反応器に、イソプロピルアルコール(IPA)351.4重量部及び純水411.1重量部(IPA濃度46.08重量%)、並びに48重量%の水酸化ナトリウム水溶液74.7重量部を入れた。さらに、酢酸セルロースフレークとして、(メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレーク)50重量部を添加し、反応器の設定温度を30℃にして6時間撹拌混合を行った。
酢酸セルロースフレークとして、メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークに代えて、メジアン径277μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。なお、得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
酢酸セルロースフレークとして、メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークに代えて、メジアン径400μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。なお、得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
酢酸セルロースフレークとして、メジアン径130μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークに代えて、メジアン径700μm、アセチル置換度(DS):2.45の酢酸セルロースフレークを用いた以外は実施例1と同様にして、多孔質セルロース粒子を得た。得られた多孔質セルロース粒子について、メジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。なお、得られた多孔質セルロース粒子のX線回析で測定したセルロースの結晶構造はセルロースII型結晶構造であった。
セルロース粒子、旭化成株式会社セオラス(登録商標)FD101について、実施例1と同様にメジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。この粒子は結構構造I型であった。結果は表1に示す。
ポリエチレン粒子、DSP五協フード&ケミカル株式会社MSC50PCについて、実施例1と同様にメジアン径を求めた。結果は表1に示す。
セルロース粒子、レンゴー株式会社ビスコパールミニ(登録商標)について、実施例1と同様にメジアン径、比表面積及びかさ比重を求めた。結果は表1に示す。この粒子は結構構造II型であった。結果は表1に示す。
(1)スクラブ剤を含有する洗浄用組成物の調製
イオン交換水に、ラウリル酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、グリセリン、プロピレングリコール及びヒドロキシプロピルセルロースを配合し、60℃で加熱溶解した。その後、ジステアリン酸エチレングリコールを添加し、さらに、スクラブ剤として実施例2で製造された多孔質セルロース粒子を添加し、均一に混合した。これを室温まで冷却し、スクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得た。各配合成分の配合量は、表2に示すとおりである。
(1)で得られた洗浄用組成物について、下記の方法で使用感を評価した。
5人のパネリストが、それぞれ手の甲に少量の(1)で得られた洗浄用組成物を塗布し、指による摩擦洗浄を行った。その評価を下記の3段階で評価した。なお、5人中最も多かった評価を評価結果とした。その結果を表2に示す。
○:滑らかな感触と適度な刺激があり、心地よい。
△:刺激が強い傾向にあり、少し違和感がある。
×:刺激が強く、痛い。
(1)で得られた洗浄用組成物について、下記の方法で洗浄力を評価した。
カーボンブラックで着色したモデル皮脂を手の甲に少量塗布し乾燥した後、(1)で得られた洗浄用組成物を塗布し、指による摩擦洗浄を行い、水洗した。さらに、乾燥後、手の甲に残ったモデル皮脂の度合いを光学顕微鏡で観察し、下記の3段階で評価した。その結果を表2に示す。
○:汚れがほぼ全量除去されており、洗浄力が高い。
△:汚れが7割程度除去できており、洗浄力は中程度。
×:汚れ除去が不十分であり、洗浄力が低い。
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、実施例3で製造された多孔質セルロース粒子を用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、セルロース粒子、旭化成株式会社セオラス(登録商標)FD101を用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、ポリエチレン粒子、DSP五協フード&ケミカル株式会社MSP50PCを用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
スクラブ剤として、実施例2で製造された多孔質セルロース粒子に代えて、セルロース粒子、レンゴー株式会社ビスコパールミニ(登録商標)を用いた以外は、実施例5と同様にしてスクラブ剤を含有する洗浄用組成物(液剤)を得、使用感の評価及び洗浄力の評価を行った。その結果を表2に示す。
Claims (5)
- 多孔質セルロース粒子からなるスクラブ剤であって、
前記多孔質セルロース粒子は、
セルロースII型結晶構造を有し、
粒子径がメジアン径で100μm以上1,000μm以下、
窒素法BET比表面積測定法により得られる比表面積が10m2/g以上100m2/g以下、
かさ比重が0.38g/ml以上0.55g/ml以下であり、
かつ、生分解性速度が10日以内に50重量%以上である、スクラブ剤。 - 前記多孔質セルロース粒子の粒子径がメジアン径で100μm以上900μm以下である、請求項1に記載のスクラブ剤。
- 前記多孔質セルロース粒子の窒素法BET比表面積測定法により得られる比表面積が10m2/g以上50m2/g以下である、請求項1に記載のスクラブ剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクラブ剤を含有する皮膚洗浄用組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクラブ剤を含有する洗顔剤組成物。
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