JP2018117550A - 被覆種子、被覆種子の製造方法及び被覆種子の播種方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る被覆種子は、25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiO2と、を少なくとも含有する製鋼スラグを含み、湛水しない状態で栽培される植物の種子の表面を被覆する被覆層を有する。
【選択図】なし
Description
湛水されない状態で栽培される植物は、湛水される植物に比べ水分が不足し易い状態に播種され、特に発芽時には水分供給が重要になる。鉄粉被覆されていると、緻密な被覆層によりさらに供給不足となり易いが、製鋼スラグで被覆された層は、気孔率が大きく、水分供給され易く、且つ気孔における保水効果も期待できる。
上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
(2)前記被覆層の気孔率は、17〜50%である、(1)に記載の被覆種子。
(3)前記製鋼スラグは、孔径600μmの篩を通過する製鋼スラグである、(1)又は(2)に記載の被覆種子。
(4)前記製鋼スラグは、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグである、(1)〜(3)の何れか1つに記載の被覆種子。
(5)前記製鋼スラグは、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl2O3、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のP2O5からなる群から選択される少なくとも1種を更に含む、(1)〜(4)の何れか1つに記載の被覆種子。
(6)前記製鋼スラグは、脱リンスラグ又は脱炭スラグの少なくとも何れか一方である、(1)〜(5)の何れか1つに記載の被覆種子。
(7)前記被覆層は、石炭灰、石膏、鉄粉、セメント、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、(1)〜(6)の何れか1つに記載の被覆種子。
(8)前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、(1)〜(7)に記載の被覆種子。
(9)前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、マメ科植物、タデ科植物、食用草本植物、又は、有用植物の種子である、(1)〜(7)に記載の被覆種子。
(10)前記イネ科植物の種子は、陸稲種子、トウモロコシ種子、又は、麦種子である、(8)に記載の被覆種子。
(11)前記マメ科植物の種子は、ダイズ種子、又は、アズキ種子であり、前記タデ科植物の種子は、ソバ種子であり、前記食用草本植物の種子は、ニンジン種子、トマト種子、又は、甜菜種子であり、前記有用植物の種子は、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、又は、花木種子である、(9)に記載の被覆種子。
(12)前記被覆層の表面に、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着している、(1)〜(11)の何れか1つに記載の被覆種子。
(13)前記被覆層は、更に、アルギン酸化合物を含有する、(1)〜(12)の何れか1つに記載の被覆種子。
(14)前記種子は、でんぷんで被覆された種子である、(1)〜(13)の何れか1つに記載の被覆種子。
(15)25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiO2と、を少なくとも含有する製鋼スラグと、水と、を混合して得られた混合物により、湛水しない状態で栽培される植物の種子を被覆する、被覆種子の製造方法。
(16)前記製鋼スラグは、孔径600μmの篩を通過する製鋼スラグである、(15)に記載の被覆種子の製造方法。
(17)前記製鋼スラグは、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグである、(15)又は(16)に記載の被覆種子の製造方法。
(18)前記混合物における前記水の割合は、前記混合物の全体質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、(15)〜(17)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(19)前記混合物は、石炭灰、石膏、鉄粉、及び、セメントからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、(15)〜(18)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(20)前記水は、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、(15)〜(19)の何れか1つに記載の被覆種子の製造方法。
(21)(1)〜(14)の何れか1つに記載の被覆種子を、前記種子を栽培するための栽培地に対して直播する、被覆種子の播種方法。
まず、本発明の実施形態に係る被覆種子について、詳細に説明する。
本実施形態に係る被覆種子は、所定の成分を含有する製鋼スラグを含み、湛水されない状態で栽培される植物の種子の表面を被覆する被覆層を有している。
以下では、まず、本実施形態に係る被覆種子に用いられる種子について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子では、湛水しない状態で栽培される植物の種子が用いられる。ここで、「湛水しない状態で栽培される種子」とは、湛水されて土壌の表面が水中に没することがない状態で栽培される種子を意味する。
続いて、以上説明したような種子の表面に形成される被覆層について、詳細に説明する。
上記のような種子の表面に形成される本実施形態に係る被覆層は、所定の成分を有する製鋼スラグを含有する。以下、かかる被覆層に含有される製鋼スラグについて、詳細に説明する。
鉄鋼製造プロセスで副生する製鋼スラグは、その成分が分析及び管理されており、Ca、Si、Mg、Mn、Fe、Pなどの様々な肥料有効元素を含んでいるため、従来、肥料原料として用いられている。我が国では、製鋼スラグを原料とする肥料として、肥料取締り法により定められた、鉱さいケイ酸質肥料、鉱さいリン酸肥料、副産石灰肥料、特殊肥料(含鉄物)の各規格に属する肥料がある。また、我が国だけで年間1000万トン程度の製鋼スラグが生成されるため、製鋼スラグは安価に入手可能であって、資材コストを抑制することができる。そのため、かかる製鋼スラグを用いて水稲種子を被覆することが行われている。本実施形態に係る被覆種子においても、上記のような各種の種子の表面を被覆する被覆層の主成分として、製鋼スラグを用いる。
まず、Caについて説明する。
製鋼スラグは、水に接すると、Caと後述するSiやAlとが溶出して化学結合することにより、水硬性を示す。本発明は、この水硬性を利用して、製鋼スラグを各種種子に付着及び固結させて、各種種子を被覆するものである。従って、本発明において、Caは、重要な元素である。また、Caは、植物に必須な肥料元素でもある。肥料や製鋼スラグでCaの含有量を表記する際には、酸化物のCaOに換算して含有量が表記されるため、以下、CaOとしてCaの含有量を表わす。
続いて、Siについて説明する。
Siは、CaやAlと共に、製鋼スラグの水硬性に寄与する元素である。従って、本発明において、Siも重要な元素である。また、Siは、植物の必須要素ではないものの、特に陸稲等の稲種子にとって、非常に重要な肥料効果元素である。稲の植物体の乾燥重量の約5%をケイ酸(SiO2)が占める。肥料や製鋼スラグでは、Siの含有量を表記する際には、酸化物のSiO2に換算して含有量が表記されるため、以下、SiO2としてSiの含有量を表わす。
本実施形態に係る被覆層が含有する製鋼スラグは、上記CaO及びSiO2に加えて、以下の成分を含有する、所定の成分を含有する製鋼スラグであってもよい。すなわち、本実施形態に係る製鋼スラグは、上記CaO及びSiO2に加えて、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl2O3、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のP2O5からなる群から選択される少なくとも1種を更に含有していてもよい。
一般に、製鋼スラグのMgO含有量は、CaO含有量よりかなり低い値となる。これは、製鋼スラグが溶銑に主に石灰を加えて発生するスラグであることに起因する。製鋼スラグに含まれるMgは、主に転炉の炉壁の耐火レンガから溶出するMgに起因する。Mgは、Ca、Si、Alと共に、製鋼スラグの水硬性に関わる元素である。ただし、製鋼スラグに含まれるCaO含有量とMgO含有量との違いなど、Mgの水硬性への寄与はCaと比較すると小さい。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグはCaOを25質量%以上含有することから、水硬性は、製鋼スラグに含有されるCaOにより基本的にはまかなうことができると考えられる。ただし、MgOが更に存在することで、水硬性をより良く発現することが期待できる。肥料や製鋼スラグでは、Mgの含有量を表記する際には、酸化物のMgOに換算して含有量が表記されるため、以下、MgOとしてMgの含有量を表わす。
続いて、Alについて説明する。
Alは、CaやSiと共に、製鋼スラグの水硬性に重要な元素である。肥料や製鋼スラグでは、Alの含有量を表記する際には、酸化物のAl2O3に換算して含有量が表記されるため、以下、Al2O3としてAlの含有量を表わす。
続いて、Feについて説明する。
Feは、製鋼スラグにおいて、不可避的に含有される元素である。ただし、製鋼スラグは、鉄分を含むものの、ほとんどが既に酸化した酸化鉄であり、金属鉄をほとんど含有しない。Feは、植物の必須要素ではないが、肥料取締り法で定められた特殊肥料に含鉄物があるように、鉄も植物に対して有効な元素である。Feの含有量が5質量%未満である製鋼スラグ、及び、Feの含有量が35質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのFeの含有量は、5質量%以上35質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグのFeの含有量は、より好ましくは、10質量%以上25質量%以下である。
次に、Mnについて説明する。
Mnは、植物に対して肥料効果がある元素である。Mnの含有量が1質量%未満である製鋼スラグ、及び、Mnの含有量が8質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのMnの含有量は、1質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
次に、Pについて説明する。
Pは、植物の必須要素である。肥料や製鋼スラグでは、Pの含有量を表記する際には、酸化物のP2O5に換算して含有量が表記されるため、本実施形態において各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグに関しても、P2O5として含有量を表わす。Pは、根の生長点に作用し、根の生長に効果がある元素である。Pが不足すると、根の生長が抑制される。ただし、P2O5の含有量が0.1質量%未満である製鋼スラグ、及び、P2O5の含有量が5質量%超過である製鋼スラグは、通常の製鉄プロセスでは生成されず、入手が困難である。本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグは、大量に安定供給できることが好ましく、通常の製鋼プロセスで生成するものであることが好ましい。したがって、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグのP2O5の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる製鋼スラグとしては、上記のような所定の成分を含有する製鋼スラグの他に、鉄鋼製造プロセスから副生される製鋼スラグの一種である、脱リンスラグや、脱炭スラグ等を用いることも可能である。脱リンスラグとは、溶銑に含まれるリンを除くために、溶銑に脱リン剤として石灰及び酸化鉄等を加えた上で酸素等のガスを吹き込むことにより副生される、リンを含むスラグであり、製鋼スラグの一種である。また、脱炭スラグは、溶銑に含まれる炭素を除いて鋼とするために、溶銑に酸素を吹き込むことにより副生されるスラグであり、製鋼スラグの一種である。
先だって説明したように、本実施形態において、各種種子の被覆に用いられる各種製鋼スラグにおける各成分の含有量は、蛍光X線分析法により測定することが可能である。より詳細には、着目する成分について、含有量が既知である標準サンプルを利用して、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を予め測定することで、検量線を作成しておく。含有量が未知のサンプルについては、着目する成分に関係する蛍光X線のピーク強度を測定し、予め作成しておいた検量線を用いることで、着目する成分の含有量を特定することができる。
本実施形態では、上記のような製鋼スラグを、粉砕等により所定の粒径に調整したものを、そのままで各種種子の被覆に用いることが可能である。これらの製鋼スラグの粉砕には、例えば、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、ロールミル、ローラーミルなどの公知の手段を用いることができる。
本実施形態に係る被覆層には、上記のような製鋼スラグに加えて、石炭灰、石膏、鉄粉、セメント、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種が更に含有されていてもよい。
石炭灰(フライアッシュ)は、石炭を燃焼させる際に生じる灰の一種であり、SiO2及びAl2O3を主成分とする物質である。一般的な石炭灰は、40質量%〜75質量%のSiO2と、15質量%〜35質量%のAl2O3と、2質量%〜20質量%のFe2O3と、1質量%〜10質量%のCaOと、の少なくとも何れかを、合計が100質量%以下となるように含有していることが多く、更に、MgO等の他の成分を含有していることもある。かかる構成成分からも明らかなように、石炭灰は、製鋼スラグと類似した成分を含有しており、固結性を補助する物質である。かかる石炭灰を被覆層に含有させることで、石炭灰が結合材として機能し、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
石膏及びセメントは、固結性を有する物質であり、結合材として機能する。従って、かかる石膏又はセメントの少なくとも何れかを被覆層に含有させることで、被覆層をより確実に固結させることが可能となる。
鉄粉は、比重が大きい物質である。そのため、被覆層に鉄粉を含有させることで、被覆種子の重量を増加させ、種子を流亡しにくくさせることが可能となる。被覆層に含有されうる鉄粉の含有量は、製鋼スラグの質量に対して50質量%以下であることが好ましい。製鋼スラグに対する鉄粉の割合が50質量%を超える場合、金属鉄の酸化による発熱で種子のダメージが大きくなる可能性が高く、また、鉄粉から溶出した二価鉄イオンが酸化して三価鉄イオンとなり、水酸化物として沈殿する際に酸性を示すことで、発芽や幼根の生長に悪影響を及ぼす可能性がある。また、鉄粉は高価であるため、鉄粉の割合が高くなると、コスト的に不利となる。
廃糖蜜は、サトウキビ等の搾り汁から砂糖を精製する際に副産される黒褐色の液体であり、糖分を70〜80%程度含むほか、ミネラルやビタミンも含有している。また、廃糖蜜は、副産物であることから安価に入手可能である。廃糖蜜は、特に、植物の細胞生長に必要なカリウムを2%程度含んでいる。カリウムは、植物の根から吸収され、植物細胞の生長に必要な成分である。従って、被覆層に廃糖蜜を含有させることで、被覆層から廃糖蜜由来のカリウムを供給することが可能となり、幼植物の生長を更に促進することも期待できる。また、廃糖蜜は粘着性を有することから、廃糖蜜を被覆層に含有させることで、被覆層の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、製鋼スラグによる肥料効果に加えて、より促すことが可能となる。
本実施形態に係る被覆層は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム等といった、アルギン酸由来の化合物(アルギン酸化合物)を含有していてもよい。
上記のような各種の製鋼スラグを含有する被覆層の気孔率は、17〜50%とすることが好ましい。かかる被覆層の気孔率は、被覆層に含有される製鋼スラグの粒径を調整することで、所望の値に制御することが可能であり、気孔率の具体的な値は、種子の適正に応じて適宜調整すればよい。酸素供給性や保水性を好適に維持するためには、被覆層の気孔率は、好ましくは20〜40%であり、更に好ましくは20〜30%である。
まず、被覆層を有する種子を各種の樹脂に埋め込み、公知の方法により研磨することで、測定サンプルを準備する。次に、得られた測定サンプルにおける被覆層の断面を、所定の倍率に設定された光学顕微鏡により観察し、視野中の種子被覆物の面積に占める気孔の面積を算出して、気孔率とする。なお、観察は複数の視野(例えば、5視野程度)で実施し、各視野において得られた気孔率の複数視野間での平均値を求め、被覆層の気孔率とする。
本実施形態に係る被覆層の表面には、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着していてもよい。被覆層の表面に付着したこれらの薬剤により、被覆種子が播種される土壌や被覆種子そのものに対して、該当する薬剤の薬効が実現される。
固体担体としては、例えば粘土類(カオリンクレー、珪藻土、ベントナイト、フバサミクレー、酸性白土等)、合成含水酸化ケイ素、タルク、セラミック、その他の無機鉱物(セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウム、水和シリカ等)、化学肥料(硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等)等の微粉末及び粒状物、並びに、合成樹脂(ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−66等のナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−プロピレン共重合体等)が挙げられる。
また、液体担体としては、例えば水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノキシエタノール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン、メチルナフタレン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、シクロヘキサン、灯油、軽油等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、ニトリル類(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等)、酸アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、炭酸プロピレン及び植物油(大豆油、綿実油等)が挙げられる。
続いて、以上説明したような製鋼スラグを用いて、本実施形態に係る被覆種子を製造する方法について、詳細に説明する。
ここで、製鋼スラグ等と水との混合物により種子を被覆する際に、製鋼スラグ等に対して混合する水であるが、純水のほか、水道水、地下水、農業用水等を使用することも可能であるが、廃糖蜜を含有する水を用いることがより好ましい。廃糖蜜を含有する水を用いることで、廃糖蜜の粘着性を利用して被覆層の固化と種子への付着の安定性を補強できると共に、廃糖蜜に含まれる成分が発芽後の幼根の生長を、製鋼スラグによる肥料効果に加えて、より促すことができる。
先だって言及したように、製鋼スラグ等を含む被覆層の表面にアルギン酸ナトリウム水溶液を付加することによって、ゲル化が起こり、製鋼スラグ等を含む被覆層の種子への付着の安定性を補強することが可能となる。
先だって言及したように、製鋼スラグ等を含む被覆層の表面に、除菌剤、除虫剤、又は、除草剤の少なくとも何れかを付着させることが可能である。
続いて、以上説明したような被覆種子の播種方法について、簡単に説明する。
本実施形態に係る被覆種子の播種方法では、以上説明したような被覆種子を、当該種子を栽培するための栽培地に対して直播する。
以下の表1に示す組成の製鋼スラグを粉砕し、異なる孔径の篩を使って、粉砕後の製鋼スラグを、A(0〜22μm)、B(22μm〜180μm)、C(180μm〜600μm)、D(600μm〜2mm)の4種類に分級した。AからDの各製鋼スラグを用いて、稲種子、及び、トウモロコシ種子を被覆した。
以下の表3に示す組成の製鋼スラグを粉砕して、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグを分級し、得られた製鋼スラグを用いて、稲種子、及び、トウモロコシ種子を被覆した。
表1に示した組成の製鋼スラグを粉砕し、異なる孔径の篩を使って、粉砕後の製鋼スラグを分級したB(孔径180μmの篩を通過し、孔径22μmの篩を通過しない)の製鋼スラグを用いて、稲種子、及び、トウモロコシ種子を被覆した。
実施例3に記載の方法で作製したB(孔径180μmの篩を通過し、孔径22μmの篩を通過しない)の製鋼スラグで被覆した稲種子及びトウモロコシ種子を50粒ずつプラスチック製皿に分散させて配置し、かかるプラスチック製皿を、風の影響を受けないよう囲いで覆った条件で、野外に載置した。2週間後、鳥に食べられずに残存した種子数を数え、種子残存率を算出した。対照として、無被覆の稲種子及びトウモロコシ種子に関しても、同様の試験を並行して行なった。得られた残存率の結果を、以下の表6に示した。
表1に組成を示した、孔径180μmのふるいを通過する製鋼スラグと、鉄粉(純度>99%)と、をそれぞれ用意した。製鋼スラグと水との混合物、及び、鉄粉と水との混合物をそれぞれトウモロコシ種子と混合して、トウモロコシ種子の表面に、製鋼スラグと水との混合物、又は、鉄粉と水との混合物を付着させた。これらトウモロコシ種子を乾燥させて、種子表面に製鋼スラグからなる被覆層、又は、鉄粉からなる被覆層を形成させた。
より詳細には、90mm径のプラスチック製シャーレにろ紙を敷き、シャーレ1枚につき、孔径180μmの篩を通過した製鋼スラグで被覆したトウモロコシ種子、及び、孔径180μmの篩を通過した鉄粉で被覆したトウモロコシ種子をそれぞれ20粒載置し、蒸留水を加えて、28℃で静置して発芽試験を行なった。この際、種子が湛水された状態とならないように、蒸留水の添加量を調整した。得られた発芽試験の結果を、以下の表8に示した。
Claims (21)
- 25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiO2と、を少なくとも含有する製鋼スラグを含み、湛水しない状態で栽培される植物の種子の表面を被覆する被覆層を有する、被覆種子。
- 前記被覆層の気孔率は、17〜50%である、請求項1に記載の被覆種子。
- 前記製鋼スラグは、孔径600μmの篩を通過する製鋼スラグである、請求項1又は2に記載の被覆種子。
- 前記製鋼スラグは、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグである、請求項1〜3の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記製鋼スラグは、1質量%以上20質量%以下のMgO、1質量%以上25質量%以下のAl2O3、5質量%以上35質量%以下のFe、1質量%以上8質量%以下のMn、及び、0.1質量%以上5質量%以下のP2O5からなる群から選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記製鋼スラグは、脱リンスラグ又は脱炭スラグの少なくとも何れか一方である、請求項1〜5の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層は、石炭灰、石膏、鉄粉、セメント、及び、廃糖蜜からなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項1〜6の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、イネ科植物の種子である、請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記湛水しない状態で栽培される植物の種子は、マメ科植物、タデ科植物、食用草本植物、又は、有用植物の種子である、請求項1〜7の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記イネ科植物の種子は、陸稲種子、トウモロコシ種子、又は、麦種子である、請求項8に記載の被覆種子。
- 前記マメ科植物の種子は、ダイズ種子、又は、アズキ種子であり、
前記タデ科植物の種子は、ソバ種子であり、
前記食用草本植物の種子は、ニンジン種子、トマト種子、又は、甜菜種子であり、
前記有用植物の種子は、芝種子、牧草種子、緑肥用植物種子、又は、花木種子である、請求項9に記載の被覆種子。 - 前記被覆層の表面に、除菌剤、除虫剤又は除草剤の少なくとも何れが付着している、請求項1〜11の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記被覆層は、更に、アルギン酸化合物を含有する、請求項1〜12の何れか1項に記載の被覆種子。
- 前記種子は、でんぷんで被覆された種子である、請求項1〜13の何れか1項に記載の被覆種子。
- 25質量%以上50質量%以下のCaOと、8質量%以上30質量%以下のSiO2と、を少なくとも含有する製鋼スラグと、水と、を混合して得られた混合物により、湛水しない状態で栽培される植物の種子を被覆する、被覆種子の製造方法。
- 前記製鋼スラグは、孔径600μmの篩を通過する製鋼スラグである、請求項15に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記製鋼スラグは、孔径180μmの篩を通過し、かつ、孔径22μmの篩を通過しない製鋼スラグである、請求項15又は16に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記混合物における前記水の割合は、前記混合物の全体質量に対して、10質量%以上80質量%以下である、請求項15〜17の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記混合物は、石炭灰、石膏、鉄粉、及び、セメントからなる群より選択される少なくとも1種を更に含む、請求項15〜18の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
- 前記水は、廃糖蜜を10質量%以上50質量%以下含有する水である、請求項15〜19の何れか1項に記載の被覆種子の製造方法。
- 請求項1〜14の何れか1項に記載の被覆種子を、前記種子を栽培するための栽培地に対して直播する、被覆種子の播種方法。
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