JP2018114969A - 車両用構造部材 - Google Patents
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Abstract
Description
このような要望に対し、例えば残留オーステナイトを活用した耐衝突性に優れる鋼板が提案されている(特許文献1)。また部材断面のコーナー部を焼入れ強化した、耐衝突性に優れる鋼板が提案されている(特許文献2)。
このような車両用構造部材は、2つの部材の幅方向端部を、長手方向(軸方向)に沿ってスポット溶接にて接合することで閉断面構造とすることで衝撃吸収能を具備させている。このため、スポット溶接性が要求される。
これに対し、特許文献3や4には、非溶接の接合として、従来のスポット溶接による接合に替えて接着剤を用いた接合技術が開示されている。
ここで、第1の部材を構成する第1の鋼板の厚さは、0.8mm以上3.0mm以下の範囲が好ましい。
またこのとき、接合部をヘミング加工部とすることで、車両用構造部材に形成される外向きフランジの厚さが増加する。これによって、衝突時の変形箇所の曲げRが大きくなるため、衝突時に発生するワレ抑制の効果が増大するという効果もある。
以上のように、本発明の一態様によれば、衝突時に発生する接合部の破断や割れを抑制可能な接合部を有した衝撃吸収能の高い車両用構造部材を提供することが可能となる。
(構成)
本実施形態の車両用構造部材は、図1に示すように、第1の鋼板からなり且つハット形断面形状の第1の部材1と、第2の鋼板からなり上記第1の部材1の開口部を塞ぐように第1の部材1に沿って配置される第2の部材2とを備える。そして、第1の部材1のフランジ部1Cと第2の部材2の幅方向端部2Aとが接合されることで閉断面構造の部材となっている。第1の部材1の断面形状は、ハット形断面形状以外であっても構わない。第1の部材1と第2の部材2とで閉断面形状が構成可能であれば、本発明を適用することが出来る。
第1の鋼板は、例えば引張強度が980MPa以上の高強度材からなり、第1の鋼板の引張強度は、第2の鋼板の引張強度よりも高い。
第1の部材1は、図1や図2に示すように、高強度鋼板からなるブランク材をハット形断面にプレス加工することで作製されたハット形断面鋼板部材であり、且つ長手方向に延在する構造部材である。第1の部材1は、必ずしも長手方向(軸方向)に直線状に延びている必要はなく、例えば、左右方向に湾曲した形状であっても良いし、長手方向に沿って高さや幅が変化するようなハット形断面形状の部材であっても良い。但し、第1の部材1は、長手方向が想定される衝撃吸収方向に沿って延在した形状の部材であることが好ましい。
この第1の部材1となる第1の鋼板は、軽量化と衝突安全性能(衝撃吸収能)の両方を確保するために、引張強度が980MPa以上の高強度材が好ましい。より好ましくは、1180Mpa以上の高強度材である。また、第1の部材1は、例えば厚さが0.8mm以上3.0mm以下の範囲の薄鋼板からなる。
このような、高強度材からなり、且つ厚さが上記のような厚さ範囲であれば、想定される衝突時の衝突エネルギーを吸収可能な車両用構造部材を提供可能となる。
第2の部材2は、図1に示すように、ハット形断面を有する第1の部材1の開口部側に配置され、当該第1の部材1の長手方向に沿って延在している。第2の鋼板の幅方向寸法は、第1の部材1の幅方向寸法よりも広い板形状からなる。
第2の部材2は、例えば普通鋼からなり、その厚さが、例えば0.8mm以上3.0mm以下の薄鋼板である。
図1のように、第1の部材1のフランジ部1Cの下面(開口部側の面)には、第2の鋼板(第2の部材2)の幅方向端部2Aが対向して配置される。第2の鋼板の幅方向端部2Aにおける、第1の部材1のフランジ部1Cよりも幅方向に張り出した部分がフランジ部1C側に折り曲げられることで、図2のような折り曲げ部2Cが形成されると共に、その折り曲げ部2C内にフランジ部1Cが挟み込まれて、ヘミング加工部による接合部が形成される(図2参照)。なお、フランジ部1Cの全幅が折り曲げ部2C内に挟み込まれる必要はない。
使用する接着剤3としては、エポキシ系やアクリル樹脂系などの樹脂製の硬化型接着剤が好ましい。硬化成分として光硬化成分と熱硬化成分とあるが、接着剤3を折り曲げ部2C内に塗布し、折り曲げてから硬化させるため、熱硬化成分の方が好ましい。
剥離強度としては、例えば1500N/m以上、好ましくは2000N/m以上、更に好ましくは5000N/m以上である。せん断強度としては、例えば20MPa以上、好ましくは30MPa以上である。
なお、接着剤3の剥離強度向上のために、接着剤3を塗布して接着する面部分を予め粗面にしておいても良い。
本実施形態における、車両荷重を負担する閉断面形状の車両用構造部材は、荷重を受ける主要部品である第1の部材1用の鋼板(第1の鋼板)としてハイテン材を使用することで、軽量化を図りつつ耐衝撃性を向上させることができる。
この車両用構造部材が、その軸を、車両前後方向に沿った方向で車体に組み込まれ、且つ前面衝突など車両前側に車両前後方向に向かう所定以上の大きさの衝突力が入力された場合を想定する。この場合、車両用構造部材が軸方向に座屈変形することで衝突エネルギーを吸収する。この変形による軸圧壊では、車両用構造部材の断面全周が内側、外側と交互に折り畳まれる、いわゆる蛇腹状に変形が進行することで衝撃を吸収する。
また接着剤だけでの接合では、要求される衝突荷重に対する接着強度が十分とは言えず、接着面の剥離による衝突性能の低下を招くおそれがある。
またヘミング加工部を形成する際に、荷重を受ける主要部品である第1の部材1側ではない、第2の部材2側の端部を折り曲げることで、確実にヘミング加工部のための折り曲げを確実に確保しながら、車両用構造部材としての強度が担保される。
さらに、フランジ部1Cと折り曲げ部2C内面とを接着する接着剤3は、接合部補強の役割を果たし、接合部の接合にヘミング加工部を採用しても、衝突の際の衝撃力による座屈変形で、接合部が外れることを抑制する。ここで、発明者らは、ヘミング加工部で接合しただけの接合部の場合、すなわち接着剤3を設けない場合は、衝突時の衝撃による座屈変形により、折り曲げ部2Cが開いて接合部が外れ、その分、衝突性能が低下するという知見を得ている。
なお、上記の車両用構造部材は、例えば、上記の接合部や第1の部材の天板部などが、他の部材と結合して組み付けられる。
ここで、図3では、折り曲げ部2C内に差し込まれたフランジ部1Cの両面に接着剤3が介在する場合を例示しているが、図4に示すように、折り曲げ部2C内に差し込まれたフランジ部1Cの片面側だけに接着剤3を介在させても良い。但し、図3のように両面に接着剤3を設けた方が、接合部補強効果が高い。
(実施例)
実施形態で説明したもの(図1〜図3参照)と同様な形状に、第1の部材1および第2の部材2で閉断面を形成し、且つ接合部を、ヘミング加工部と接着剤での接着構造とで構成して実施例(表2のNO.1)の車両用構造部材を作製した。
接着剤3の塗布位置は、図3と同じ位置である。そして、接着剤3を塗布後し、ヘム構造に加工後、熱処理を施して接着剤3を硬化させた。熱処理条件は、170℃×20分である。
また、第1の部材1のフランジ部1Cと第2の部材2の幅方向端部2Aとを従来と同様にスポット溶接にて接合して接合部を形成した。スポット溶接は45mm間隔で実施した。その他は実施例と同様にして比較例1(表2のNO.2)の車両用構造部材を作製した。
接合部に接着剤3を使用しない以外は実施例と同様にして比較例2(表2のNO.3)の車両用構造部材を作製した。
(衝突性能評価)
実施例および各比較例の車両用構造部材に対し、図7のような、所定の衝突速度(10mm/min)で軸方向荷重を負荷したときの最大荷重を測定した。
表2および図9から分かるように、接合部をヘム構造(ヘミング加工部)だけで構成したNo.3の比較例2では、接合部をスポット溶接で構成したNo.1の比較例1と比較して、同等の最大荷重になっていると共に、平均荷重が高くなっていることから衝撃吸収性が良いことが分かる。
ここで、上記の実施例及び比較例では、車両用構造部材を構成する第1の部材の引張強度を1250MPaで実施した場合であるが、第1の部材の引張強度を980MPaに変更して同様の評価をしても、実施例の方が良好であったことを別に確認している。
1A 天板部
1B 側壁部
1C フランジ部
2 第2の部材
2A 幅方向端部
2C 折り曲げ部
3 接着剤
Claims (3)
- 第1の鋼板からなる第1の部材と、第2の鋼板からなる第2の部材とを備え、第1の部材の幅方向両側にある各フランジ部と第2の部材の幅方向端部とを接合する接合部を有することで閉断面形状を形成する車両用構造部材であって、
上記第1の鋼板の引張強度は、上記第2の鋼板の引張強度よりも高く、
上記接合部の接合構造を、上記第2の部材の幅方向端部を折り曲げ、その折り曲げ部で上記第1の部材のフランジ部を挟み込むヘミング加工部とし、且つ、上記折り曲げ部内において上記フランジ部と上記折り曲げ部内面とを接着剤で接着させた構造としたことを特徴とする車両用構造部材。 - 上記接着剤は、熱硬化型樹脂を有することを特徴とする請求項1に記載した車両用構造部材。
- 上記第1の鋼板は、引張強度が980MPa以上の高強度材からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車両用構造部材。
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