JP2018104702A - 樹脂組成物 - Google Patents

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茂久 上村
Shigehisa Uemura
茂久 上村
浩二 大崎
Koji Osaki
浩二 大崎
知也 和田
Tomoya Wada
知也 和田
貢平 山田
Kohei Yamada
貢平 山田
大崎 和友
Kazutomo Osaki
和友 大崎
洋昭 岸本
Hiroaki Kishimoto
洋昭 岸本
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Abstract

【課題】靱性と剛性を両立する樹脂組成物及びその製造方法、並びに、該樹脂組成物の成形体及びその製造方法に関すること。【解決手段】熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとの混合粉砕物であって、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満のセルロース複合体(B)を含有してなる、熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物に関する。更に詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等として好適に使用し得る樹脂組成物及びその製造方法、ならびに、該樹脂組成物の成形体及びその製造方法に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた材料が注目されている。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂及び/又はスチレン系樹脂に結晶化度が50%未満のセルロースを配合させた組成物の成形体が強度及び可撓性を両立し、さらに耐衝撃性に優れるという優れた効果を奏することが報告されている。そして、ここで用いられるセルロースとしては、粉砕処理によって結晶化度を50%未満に低減して調製されることが開示されているが、得られる成形体の強度を維持しながら可撓性や耐衝撃性を更に向上させる観点から、当該結晶化度が低減したセルロースに対して、粉砕助剤を添加して粉砕処理することで平均粒径が30μm以下となるよう小粒径化処理させて用いることも開示されている。
また、特許文献2では、扁平セルロース粒子または繊維状微細セルロースを種々の母材(例えば、熱可塑性樹脂)に添加する際に、扁平セルロース粒子または繊維状微細セルロースを配向させることによって、その形状効果が有効に利用でき、さらには物性改善成分の添加、または物性改善成分による扁平セルロース粒子または繊維状微細セルロースの表面処理により、複合体の物性、例えば、寸法安定性、制振・防音特性、ガスバリア性、耐磨耗性、耐熱性、断熱性、表面平滑性、電気絶縁特性等が良好となることが開示されている。
特開2011−137094号公報 特開2004−231796号公報
しかし、近年、かかるセルロースをより広範な用途に使用することが期待されており、より優れた物性を有するものを調製する技術が求められている。
本発明は、靱性と剛性を両立する樹脂組成物及びその製造方法、ならびに、該樹脂組成物の成形体及びその製造方法に関する。
本発明は、下記〔1〕〜〔4〕に関する。
〔1〕 熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとの混合粉砕物であって、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満のセルロース複合体(B)を含有してなる、熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕 熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとが粉砕処理された、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満のセルロース複合体(B)を配合する、樹脂組成物の製造方法。
〔3〕 前記〔1〕記載の樹脂組成物を含有する成形体。
〔4〕 前記〔1〕記載の樹脂組成物を加工して成形体とする、成形体の製造方法。
本発明の樹脂組成物は、靱性及び剛性を両立するという優れた効果を奏するものである。さらに本発明の樹脂組成物は、ウェルド強度、低温での耐衝撃性及びソリの抑制に優れた効果を奏するものである。
図1は、成形体の最大高さ及び対角線長を示す模式図である。
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に対して、特定の処理により得られたセルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満のセルロース複合体を含有することを特徴とする。なお、本明細書において、「セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満」のセルロースのことを、低結晶性セルロースと記載する。
一般に、セルロースは結晶性が高いものである。しかしながら、かかるセルロースを該セルロースに対して親和性部位を有するポリマーと混合粉砕すると、該ポリマーがセルロースの内部まで浸透しやすくなって、セルロース表面だけでなくセルロース内部の強固な相互作用を抑制するために低結晶化が進行し、マトリックス樹脂とセルロース界面の安定化による弾性率の向上だけではなく、セルロースの樹脂中での分散状態が向上して破断歪が向上すると考えられる。加えて、セルロースはその表面水酸基による水素結合で凝集しやすいが、当該ポリマーによる立体斥力が得られるために、得られたセルロースの分散性がより向上して、該ポリマーとの相互作用による効果がより増強するものと考えられる。ただし、これらの推測は、本発明を限定するものではない。なお、本明細書において、セルロースの結晶化度とは、X線回折法による回折強度値からSegal法により算出したセルロースI型結晶化指数のことであり、下記計算式(A)により定義される。
セルロースI型結晶化指数(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5はアモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
[熱可塑性樹脂(A)]
本発明における熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではなく、飽和ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上の混合樹脂として用いても良い。なかでも、靱性を向上させる観点から、オレフィン系樹脂が好ましい。
オレフィン系樹脂としては、具体的には、ポリエチレン(PE樹脂)、ポリプロピレン(PP樹脂)、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリ酢酸ビニル(PVAc樹脂)、ポリ塩化ビニル(PVC樹脂)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC樹脂)、ポリアクリル酸(PA樹脂)、ポリアクリル酸エステル(PAE樹脂)、ポリブタジエン(PB樹脂)、ポリイソプレン(PIP樹脂)、ポリクロロプレン(PCP樹脂)等が例示される。これらのなかでも、樹脂組成物の剛性と靱性を両立させる観点から、ポリエチレン、ポリプロピレンを含有することが好ましく、ポリエチレンを含有することがより好ましい。熱可塑性樹脂におけるオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂組成物の剛性と靱性を両立させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。上限は特に限定されず、オレフィン系樹脂からなるもの、即ち、100質量%であってもよい。
本発明の樹脂組成物における熱可塑性樹脂の含有量は、得られる樹脂組成物の靱性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。また、得られる樹脂組成物の剛性を向上させる観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92.5質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
[低結晶性セルロース複合体(B)]
低結晶性セルロース複合体(B)は、セルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとの混合粉砕物であり、具体的には、例えば、セルロース含有原料をセルロース親和性部位を持つポリマーの存在下で粉砕処理を行うことで得られる。
〔セルロース含有原料〕
本発明で用いることができるセルロース含有原料は、特に限定はないが、セルロースI型結晶化指数が好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上のものであればよい。具体的には、木本系(針葉樹・広葉樹)、草本系(イネ科、アオイ科、マメ科の植物原料、ヤシ科の植物の非木質原料)、パルプ類(綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等)、紙類(新聞紙、段ボール、雑誌、上質紙等)が例示される。
本発明においては、後述するポリマー存在下での粉砕処理により低結晶性セルロース複合体を簡便に得ることができることから、セルロース含有原料の大きさや形状は特に限定がない。例えば、繊維状、粉末状、球状、チップ状、フレーク状のものを用いることができる。また、これらの混合物であってもよい。あるいは、必要により、シュレッダー等の裁断機を利用して予め前記形状に整えたものであってもよい。具体的には、例えば、0.1〜70mm角、好ましくは1〜50mm角、より好ましくは1〜30mm角のチップ状が例示される。なお、セルロース含有原料の大きさは、ノギスを用いて測定することができる。
セルロース含有原料の組成は、特に限定されず、例えば、原料中のセルロース含有量としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上のものが例示される。また、入手性の観点から、上限は100質量%であり、99質量%以下が例示される。ここで、セルロース含有原料中のセルロース含有量とは、セルロース系原料中の水分を除いた残余の成分中のセルロース含有量のことである。
また、セルロース含有原料中の水分含有量としては、特に制限はなく、入手性及びコストの観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上のものが例示される。また、取扱い性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下のものを用いることができる。
本発明で用いることができるセルロース含有原料は、取扱い性の観点から、乾燥処理を行なってもよい。その処理方法としては限定されず公知の乾燥方法を適宜選択すればよく、例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。これらの乾燥方法は、単独でも又は2種以上組み合わせて行ってもよく、乾燥装置も乾燥方法に応じて適宜選択することができる。また、乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能である。
乾燥処理における温度は、乾燥手段、乾燥時間等により一概には決定できないが、乾燥における処理能力の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは60℃以上である。また、乾燥におけるコストの観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは150℃以下である。処理時間としては、下限は0.01hr以上が好ましく、0.02hr以上がより好ましく、また、上限は2hr以下が好ましく、1hr以下がより好ましい。必要に応じて減圧下で乾燥処理を行ってもよく、圧力としては、1〜120kPa程度が例示される。
乾燥処理後のセルロース含有原料中の水分含有量としては、所望のセルロース繊維複合体を得る観点から、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。かかる水分量であれば、添加剤存在下での粉砕処理においても、ダマになることがなく良好に処理を行なうことができる。
なお、前記乾燥処理はセルロース含有原料の結晶性に影響しないため、乾燥処理後のセルロース含有原料の結晶化指数は、処理前の結晶化指数と比べて同程度の結晶化指数を有する。
〔セルロース親和性部位を持つポリマー〕
本発明で用いることができるポリマーは、セルロース親和性部位を有するものである。なお、セルロース親和性部位とは、セルロースと共有結合、イオン結合、又は水素結合を形成し得る官能基を意味する。
かかるセルロース親和性部位としては、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を挙げることができる。また、セルロース親和性部位を持つポリマーとしては、例えば、上記の官能基を有するオレフィン系ポリマーを挙げることができる。
オレフィン系ポリマーとしては、樹脂組成物の剛性と靱性を両立させる観点から、好ましくはエチレン系重合体[高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと他の1種以上のビニル化合物(例えばα−オレフィン、酢酸ビニル、メタアクリル酸、アクリル酸等)との共重合体等]、プロピレン系重合体[ポリプロピレン、プロピレンと他の1種以上のビニル化合物との共重合体等]、エチレンプロピレン共重合体、ポリブテン及びポリ−4−メチルペンテン−1等であり、より好ましくはエチレン系重合体、プロピレン系重合体である。
また、ポリオレフィン系樹脂における官能基、即ち、セルロース親和性部位は、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種であるが、樹脂組成物の剛性と靱性を両立させる観点から、好ましくは酸無水物基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、エポキシ基であり、より好ましくは酸無水物基である。具体的には、無水マレイン酸、マレイン酸、無水コハク酸、コハク酸、グリシジルメタクリレートが例示される。
セルロース親和性部位を持つポリマーにおけるセルロース親和性部位の含有質量は、樹脂組成物の剛性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、樹脂組成物の靱性を向上させる観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
かかる化合物は、公知の方法に従って調製してもよく、市販品を用いてもよい。好適な市販品としては、住友化学工業社製「ボンドファースト 7M」(エポキシ基を有するポリエチレンと(メタ)クリル酸との共重合体)、日本ポリエチレン社製「レクスパール」(エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂)、日本油脂社製「モディパー」(エポキシ基を有するポリオレフィン系樹脂)、三洋化成工業社製「ユーメックス」(無水マレイン酸を有するポリプロピレン)、アルケマ社製「オレヴァック」(無水マレイン酸を有するポリエチレン)、アルケマ社製「ロタダー」(酸無水物を有するポリオレフィン系樹脂)、住友化学工業社製「ボンダイン」(酸無水物を有するポリオレフィン系樹脂)、三井・デュポン・ポリケミカル社製「ニュクレル」(カルボキシル基を有するポリオレフィン系樹脂)、ダウケミカル社製「プリマコール」(カルボキシル基を有するポリオレフィン系樹脂)等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、樹脂組成物の剛性を向上させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,500以上、更に好ましくは10,000以上である。また、樹脂組成物の靱性を向上させる観点から、好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、更に好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。本明細書において高分子化合物の重量平均分子量は後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
ポリマーの融点(℃)は、得られるセルロースの剛性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上である。また、得られるセルロースの靱性の観点から、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下である。本明細書において融点は後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
低結晶性セルロース複合体(B)におけるポリマーの含有質量は、セルロース含有原料100質量部に対して、樹脂組成物の剛性と靱性を両立させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは12質量部以上であり、また、同様の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
〔混合粉砕〕
低結晶性セルロース複合体(B)は、例えば、セルロース含有原料をセルロース親和性部位を持つポリマーの存在下で粉砕処理を行うことで得られる。粉砕処理としては、例えば、前記したセルロース含有原料とポリマーを用いて、乾式で粉砕処理を行なう方法が挙げられる。本明細書において、添加剤存在下でセルロース含有原料を粉砕することを「混合粉砕」と称する。
乾式粉砕処理で用いる粉砕機としては、媒体式の粉砕機が好ましい。媒体式粉砕機には容器駆動式粉砕機と媒体攪拌式粉砕機とがある。容器駆動式粉砕機としては転動ミル、振動ミル、遊星ミル、遠心流動ミル等が挙げられる。また、媒体攪拌式粉砕機としてはタワーミル等の塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の攪拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機等が挙げられる。これらの粉砕機においては、ローターの周速度やサンプル供給スピード、攪拌時間等を調整することで得られるセルロースの結晶性を制御することができる。
また、用いることができる媒体の材質としては、特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、チッ化珪素、ガラス等が挙げられる。媒体の形状としては、特に制限はなく、ボール、ロッド、チューブ等が挙げられる。なお、ロッドとは棒状の媒体であり、ロッドの断面が四角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等のものを用いることができる。
媒体の充填率は、粉砕機の機種や媒体の形状により好適な充填率が異なるが、例えば、ロッドの場合、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。充填率がこの範囲内であれば、セルロース含有原料とロッドとの接触頻度が向上して、粉砕効率を向上させることができる。ここで充填率とは、粉砕機の攪拌部の容積に対する媒体の見かけの体積をいう。また、セルロース含有原料とロッドとの接触頻度を高め粉砕効率を向上させる観点から、ロッドは複数本使用することが好ましい。
処理時間としては、粉砕機の種類及び媒体の種類、大きさ、充填率等により、一概に決定できないが、結晶化度を低下させる観点から、好ましくは0.01hr以上、より好ましくは0.05hr以上、更に好ましくは0.1hr以上であり、好ましくは10hr以下、より好ましくは5hr以下、更に好ましくは2hr以下である。処理温度は、特に制限はないが、熱による劣化を防ぐ観点から、通常5〜250℃程度である。
上記処理方法によれば、粉砕されたセルロース粒子同士の強い凝集を抑制し、低結晶性セルロースを効率的に、生産性よく製造することができる。また、粉砕機処理の際に、粉砕機の内部に低結晶性セルロース原料が固着せずに、乾式にて処理することができる。
かくして、結晶化度が低減された、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満である低結晶性セルロース複合体が得られる。結晶化度の低減度合いは、粉砕処理の条件や粉砕処理に供した原料によって一概には決定することができないが、得られたセルロース複合体のセルロースI型結晶化指数は、処理に供した原料のセルロースI型結晶化指数よりも小さいものとなっており、セルロースI型結晶化指数としては、樹脂組成物の剛性を向上させる観点から、好ましくは−10%以上、より好ましくは0%以上であり、樹脂組成物の靱性を向上させる観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。
また、低結晶性セルロース複合体は、粒度分布がシャープなものであり、250μm以上の粒径を有する粒子の含有量は、全粉末中、30体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましく、20体積%以下が更に好ましい。また、32μm以下の粒径を有する粒子の含有量は、全粉末中、30体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましく、20体積%以下が更に好ましい。
低結晶性セルロース複合体の平均粒径は、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。また、樹脂組成物の強度と靱性を両立する観点から、40μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。なお、セルロースの平均粒径及び粒度分布は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の樹脂組成物における低結晶性セルロース複合体の含有量としては、熱可塑性樹脂100質量部に対して、得られる樹脂組成物の剛性の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、得られる樹脂組成物の靱性の観点から、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。
また、樹脂組成物中の低結晶性セルロース複合体含有量としては、得られる樹脂組成物の剛性を向上させる観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である。また、得られる樹脂組成物の靱性の観点から、好ましくは41質量%以下、より好ましくは33質量%以下、更に好ましくは29質量%以下、更に好ましくは23質量%以下である。
[結晶核剤]
また、本発明の樹脂組成物は、得られる成形体の剛性の観点から、前記成分以外に、更に、結晶核剤を用いることができる。
結晶核剤としては、無機系結晶核剤、有機系結晶核剤が挙げられる。無機系結晶核剤としては、天然又は合成珪酸塩化合物、酸化チタン、硫酸バリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ソーダ、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト、バーミュライト、マイカ等が挙げられる。有機系結晶核剤としては、アミド、有機酸金属塩、ソルビトール誘導体、ノニトール誘導体、などが挙げられ、剛性向上の観点から、有機酸金属塩及びソルビトール誘導体が好ましい。有機酸金属塩としては、安息香酸ナトリウム、アルミニウムジベンゾエート、カリウムベンゾエート、リチウムベンゾエート、ソジウムβ・ナフタレートソジウムシクロヘキシサンカルボキシレート、フェニルホスホン酸亜鉛、リン酸エステルの金属塩などが例示され、ソルビトール誘導体としては、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトールなどが例示され、剛性と靱性の両立の観点からソルビトール誘導体が好ましい。
結晶核剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、結晶化速度の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、樹脂物性の観点から、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である。
また、樹脂組成物中の結晶核剤の含有量は、結晶化速度の観点から、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、樹脂物性の観点から、好ましくは17質量%以下、より好ましくは11質量%以下、好ましくは9質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
本発明の樹脂組成物は、前記以外の他の成分として、可塑剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の高分子材料や他の樹脂組成物を添加することも可能である。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されても良いが、例えば、樹脂組成物中20質量%以下が好ましく、10質量%程度以下がより好ましく、5質量%程度以下がより更に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂に対して、前記した低結晶性セルロース複合体を含有するものであれば特に限定なく調製することができ、例えば、前記した成分の他、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、ヘンシェルミキサー等で攪拌、あるいは密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて溶融混練又は溶媒キャスト法により調製することができる。原料は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後に、溶融混練に供することも可能であり、本発明の樹脂組成物は、相溶化剤によって改質セルロースの分散性が向上することもあって、原料は予め別々に混合するのではなく、一度に混合して溶融混練することができる。なお、樹脂組成物を調製する際に熱可塑性樹脂の可塑性を促進させるため、超臨界ガスを存在させて溶融混合させてもよい。溶融混練後は、公知の方法に従って、溶融混練物を乾燥させてもよい。
溶融混練温度は、樹脂組成物の成形性及び劣化防止を向上する観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下である。溶融混練時間は、溶融混練温度、混練機の種類によって一概には決定できないが、15秒間以上900秒間以下が好ましい。
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明はまた、本発明の樹脂組成物の製造方法を提供する。
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、前記した熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記した低結晶性セルロース複合体を混合する工程を含むものであれば特に限定はない。例えば、熱可塑性樹脂及び低結晶性セルロース複合体の他、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下の温度で混合する態様が例示される。なお、混合に際しては、生産性の観点から、原料を一度に混合することが好ましい。混合時間は、原料の組成や混合温度に応じて一該には設定されず、例えば、15秒間以上900秒間以下である。なお、低結晶性セルロース複合体の調製方法は、本願発明の樹脂組成物の項を参照することができる。
本発明の樹脂組成物は、剛性及び靱性を両立することから、射出成形、押出成形、熱成形等の様々な成形加工方法を用いることにより、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等に好適に用いることができる。
〔成形体及び成形体の製造方法〕
本発明はまた、本発明の樹脂組成物を含有する成形体を提供する。
成形体は、本発明の樹脂組成物の成形体であれば特に限定はなく、例えば、前記樹脂組成物を押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって調製することができる。例えば、パッケージ型や成形型などに注入あるいは塗布した後、乾燥し硬化させることで用途に応じた成形体を得ることができる。
シート状の成形体を調製する場合、加工性の観点から、その厚さは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
かくして得られた本発明の樹脂組成物の成形体は、靱性及び剛性に優れることから、各種用途、例えば、日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイ等に好適に用いることができる。
上述した実施形態に関し、本発明は、さらに以下の組成物、製造方法、成形体、成形体の製造方法及び低結晶性複合体を開示する。
<1> 熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとの混合粉砕物であって、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満の低結晶性セルロース複合体(B)を含有してなる、熱可塑性樹脂組成物。
<2> 熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)の含有量が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である、前記<1>記載の熱可塑性樹脂組成物。
<3> 熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂(A)の含有量が、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92.5質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である、前記<1>又は<2>記載の熱可塑性樹脂組成物。
<4> 熱可塑性樹脂(A)が、好ましくは、飽和ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリスルホン系樹脂からなる群より選択される1種以上である、前記<1>〜<3>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<5> オレフィン系樹脂が、好ましくは、ポリエチレン(PE樹脂)、ポリプロピレン(PP樹脂)、ポリスチレン(PS樹脂)、ポリ酢酸ビニル(PVAc樹脂)、ポリ塩化ビニル(PVC樹脂)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC樹脂)、ポリアクリル酸(PA樹脂)、ポリアクリル酸エステル(PAE樹脂)、ポリブタジエン(PB樹脂)、ポリイソプレン(PIP樹脂)又はポリクロロプレン(PCP樹脂)である、前記<1>〜<4>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<6> 熱可塑性樹脂(A)におけるオレフィン系樹脂の含有量が、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である、前記<1>〜<5>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<7> 熱可塑性樹脂(A)におけるオレフィン系樹脂の含有量の好ましい上限が100質量%である、前記<1>〜<6>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<8> セルロース親和性部位を持つポリマーが、好ましくは、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有するオレフィン系ポリマーである、前記<1>〜<7>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<9> オレフィン系ポリマーが、好ましくは、エチレン系重合体[高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと他の1種以上のビニル化合物(例えばα−オレフィン、酢酸ビニル、メタアクリル酸、アクリル酸等)との共重合体等]、プロピレン系重合体[ポリプロピレン、プロピレンと他の1種以上のビニル化合物との共重合体等]、エチレンプロピレン共重合体及びポリブテン及びポリ−4−メチルペンテン−1である、前記<1>〜<8>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<10> セルロース親和性部位を持つポリマーにおけるセルロース親和性部位の含有質量が、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である、前記<1>〜<9>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<11> セルロース親和性部位を持つポリマーにおけるセルロース親和性部位の含有質量が、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である、前記<1>〜<10>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<12> セルロース親和性部位を持つポリマーの重量平均分子量(Mw)が、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,500以上、更に好ましくは10,000以上である、前記<1>〜<11>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<13> セルロース親和性部位を持つポリマーの重量平均分子量(Mw)が、好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、更に好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である、前記<1>〜<12>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<14> セルロース親和性部位を持つポリマーの融点が、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは80℃以上である、前記<1>〜<13>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<15> セルロース親和性部位を持つポリマーの融点が、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下である、前記<1>〜<14>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<16> 低結晶性セルロース複合体(B)における、セルロース親和性部位を持つポリマーの含有質量が、セルロース(即ち、セルロース含有原料)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは12質量部以上である、前記<1>〜<15>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<17> 低結晶性セルロース複合体(B)における、セルロース親和性部位を持つポリマーの含有質量が、セルロース(即ち、セルロース含有原料)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である、前記<1>〜<16>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<18> セルロース含有原料(即ち、セルロース親和性部位を持つポリマーと粉砕処理に供されるセルロース)のセルロースI型結晶化指数が、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である、前記<1>〜<17>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<19> セルロース含有原料中のセルロース含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である、前記<1>〜<18>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<20> セルロース含有原料中のセルロース含有量の上限が好ましくは100質量%である、前記<1>〜<19>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<21> セルロース含有原料中の水分含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上である、前記<1>〜<20>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<22> セルロース含有原料中の水分含有量が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である、前記<1>〜<21>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<23> 乾燥処理後のセルロース含有原料中の水分含有量が、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である、前記<1>〜<22>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<24> 低結晶性セルロース複合体(B)のセルロースI型結晶化指数が、好ましくは−10%以上、より好ましくは0%以上である、前記<1>〜<23>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<25> 低結晶性セルロース複合体(B)のセルロースI型結晶化指数が、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である、前記<1>〜<24>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<26> 低結晶性セルロース複合体(B)の250μm以上の粒径を有する粒子の含有量が、全粉末中、30体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましく、20体積%以下が更に好ましい、前記<1>〜<25>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<27> 低結晶性セルロース複合体(B)の32μm以下の粒径を有する粒子の含有量が、全粉末中、30体積%以下が好ましく、25体積%以下がより好ましく、20体積%以下が更に好ましい、前記<1>〜<26>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<28> 低結晶性セルロース複合体(B)の平均粒径が、40μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい、前記<1>〜<27>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<29> 低結晶性セルロース複合体(B)の平均粒径が、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい、前記<1>〜<28>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<30> 熱可塑性樹脂組成物における低結晶性セルロース複合体(B)の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である、前記<1>〜<29>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<31> 熱可塑性樹脂組成物における低結晶性セルロース複合体(B)の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である、前記<1>〜<30>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<32> 熱可塑性樹脂組成物における低結晶性セルロース複合体(B)の含有量が、好ましくは4質量%以上、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは13質量%以上である、前記<1>〜<31>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<33> 熱可塑性樹脂組成物における低結晶性セルロース複合体(B)の含有量が、好ましくは41質量%以下、より好ましくは33質量%以下、更に好ましくは29質量%以下、更に好ましくは23質量%以下である、前記<1>〜<32>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<34> 熱可塑性樹脂組成物が、好ましくはさらに結晶核剤が用いられたものであり、結晶核剤が、好ましくは、天然又は合成珪酸塩化合物、酸化チタン、硫酸バリウム、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ソーダ、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト、バーミュライト、マイカ等の無機系結晶核剤、アミド、有機酸金属塩、ソルビトール誘導体、ノニトール誘導体、などの有機系結晶核剤である、前記<1>〜<33>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<35> 結晶核剤の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である、前記<1>〜<34>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<36> 結晶核剤の含有量が、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1.5質量部以下である、前記<1>〜<35>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<37> 熱可塑性樹脂組成物中の結晶核剤の含有量が、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である、前記<1>〜<36>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<38> 熱可塑性樹脂組成物中の結晶核剤の含有量が、好ましくは17質量%以下、より好ましくは11質量%以下、好ましくは9質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である、前記<1>〜<37>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<39> 熱可塑性樹脂組成物が、好ましくはさらに任意の添加剤として可塑剤;充填剤(無機充填剤、有機充填剤);加水分解抑制剤;難燃剤;酸化防止剤;炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;防曇剤;光安定剤;顔料;防カビ剤;抗菌剤;発泡剤;界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤;他の高分子材料や他の樹脂組成物を含有する、前記<1>〜<38>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<40> 熱可塑性樹脂組成物における任意の添加剤の含有割合が、20質量%以下が好ましく、10質量%程度以下がより好ましく、5質量%程度以下がより更に好ましい、前記<1>〜<39>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<41> 日用雑貨品、家電部品、自動車部品等に好適に用いられる、前記<1>〜<40>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物。
<42> 熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとが粉砕処理された、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満の低結晶性セルロース複合体(B)を配合する、樹脂組成物の製造方法。
<43> 熱可塑性樹脂(A)及び低結晶性セルロース複合体(B)の他、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、更に好ましくは200℃以上の温度で混合する、前記<42>記載の製造方法。
<44> 熱可塑性樹脂(A)及び低結晶性セルロース複合体(B)の他、さらに必要により各種添加剤を含有する原料を、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下、更に好ましくは280℃以下の温度で混合する、前記<42>又は<43>記載の製造方法。
<45> 原料の混合時間が、好ましくは15秒間以上である、前記<42>〜<44>いずれか記載の製造方法。
<46> 原料の混合時間が、好ましくは900秒間以下である、前記<42>〜<45>いずれか記載の製造方法。
<47> 前記<1>〜<41>いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する成形体。
<48> 成形体が好ましくはシート状であり、その厚さは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい、前記<47>記載の成形体。
<49> 成形体が好ましくはシート状であり、その厚さは1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい、前記<47>又は<48>記載の成形体。
<50> 日用品、化粧品、家電製品などの包装材として、ブリスターパックやトレイ、お弁当の蓋等の食品容器、工業部品の輸送や保護に用いる工業用トレイ等に好適に用いることができる、前記<47>〜<49>いずれか記載の成形体。
<51> セルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとの混合粉砕物であって、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満である低結晶性セルロース複合体(B)。
<52> セルロース親和性部位を持つポリマーの重量平均分子量(Mw)が、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,500以上、更に好ましくは10,000以上である、前記<51>記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
<53> セルロース親和性部位を持つポリマーの重量平均分子量(Mw)が、好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、更に好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である、前記<51>又は<52>記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
<54> 低結晶性セルロース複合体(B)のセルロースI型結晶化指数が、好ましくは−10%以上、より好ましくは0%以上である、前記<51>〜<53>いずれか記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
<55> 低結晶性セルロース複合体(B)のセルロースI型結晶化指数が、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である、前記<51>〜<54>いずれか記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
<56> 低結晶性セルロース複合体(B)における、セルロース親和性部位を持つポリマーの含有質量が、セルロース(即ち、セルロース含有原料)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、更に好ましくは12質量部以上である、前記<51>〜<55>いずれか記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
<57> 低結晶性セルロース複合体(B)における、セルロース親和性部位を持つポリマーの含有質量が、セルロース(即ち、セルロース含有原料)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは75質量部以下、更に好ましくは55質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である、前記<51>〜<56>いずれか記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
<58> セルロース含有原料(即ち、セルロース親和性部位を持つポリマーと粉砕処理に供されるセルロース)のセルロースI型結晶化指数が、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である、前記<51>〜<57>いずれか記載の低結晶性セルロース複合体(B)。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧(大気圧)」とは101.3kPaを、「常温(室温)」とは25℃を示す。
〔セルロースの平均粒径及び粒度分布〕
平均粒径及び粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いて測定する。測定条件は、測定前に超音波で1分間処理し、測定時の分散媒体として水を用い、体積基準のメジアン径を温度25℃にて測定する。
〔セルロースの結晶構造の確認〕
セルロースの結晶構造は、リガク社製の「RigakuRINT 2500VC X−RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定することにより確認する。測定条件は、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kv、管電流:120mA、測定範囲:回折角2θ=5〜45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルは面積320mm×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式(A)に基づいて算出する。
セルロースI型結晶化指数(%)=[(I22.6−I18.5)/I22.6]×100 (A)
〔式中、I22.6はX線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5はアモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
〔セルロースの水分含有量〕
赤外線加熱乾燥質量測定装置(島津製作所製、MOC−120H)を用いて、サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、直前の測定値からの重量減少が0.1%以下となった時点での、初期値からの重量減少値を水分含有量とする。
〔ポリマーの融点〕
融点は、DSC装置(パーキンエルマー社製、ダイアモンドDSC)を用い、昇温速度10℃/分で20℃から500℃まで昇温して測定を行う。
〔ポリマーの重量平均分子量〕
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記の測定条件で測定する。
<測定条件>
カラム:昭和電工社製 Shodex HT−806M×1本+Shodex HT−803×2本
カラム温度:130℃
検出器:RI
溶離液:o−ジクロロベンゼン
流速:1.0mL/min
サンプル濃度:1mg/mL
注入量:0.1mL
換算標準:ポリスチレン
実施例1
〔裁断処理〕
セルロース含有原料であるシート状木材パルプ〔テンベック社製「HV+」、800mm×600mm×1.0mm、結晶化指数82%、α−セルロース含有量96質量%、水分含量8.0質量%〕を、スリッターカッターであるシートペレタイザ〔ホーライ社製「SG(E)−220」〕にかけ、約3mm×1.5mm×1.0mmの大きさの直方体に裁断した。
〔乾燥処理〕
裁断処理により得られたチップ状のセルロース含有原料を、2軸横型攪拌乾燥機〔奈良機械製作所社製、2軸パドルドライヤー「NPD−1.6W(1/2)」〕を用いて乾燥した。乾燥温度は140℃とし、あらかじめ前記原料を8kg仕込み、大気圧下において60分間バッチ処理で乾燥して、前記原料の水分含量を0.8質量%とした。その後、装置を2°傾け、連続処理にて前記原料を乾燥した。このとき前記原料の供給速度は18kg/hであった。連続処理で得られた乾燥した前記原料の水分含量も0.8質量%であった。得られた乾燥処理後の前記原料は、保管中の吸湿を防ぐため、粉砕処理の直前までアルミニウム製の袋で保管した。X線回折強度から算出した乾燥処理後の前記原料のセルロースのI型結晶化指数は81%であった。
〔粉砕処理〕
バッチ式振動ミル〔中央化工機社製「MB−1」、容器内径142mm、容器内部の円柱形の空間の軸方向長さ220mm、容器容量3.6L〕の容器内部に、直径30mm、長さ211mmのステンレス製の円柱状媒体を13本配置し粉砕を行った。乾燥処理により得られたチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)を67g、添加剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成工業社製「ユーメックス1001」、MA−PP、重量平均分子量40,000、融点142℃)33gを添加し、30分粉砕した。振動ミルは振幅8mm、振動数20Hzの条件で運転し、ポリマーとセルロースとの混合粉砕物である低結晶性セルロース複合体を得た。
(樹脂組成物)
得られた低結晶性セルロース複合体25質量部と熱可塑性樹脂100質量部とを混練機(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて、回転数90rpm、200℃で8分間溶融混練して、樹脂組成物を得た。
(シート)
得られた樹脂組成物ペレットを21cm×21cm×0.4mmのスペーサーと共に金属板で挟みオートプレス機(東洋精機製)を用いて200℃、0.5MPaで2分間プレスした後、200℃、20MPaで2分間プレスする事によりプレスシートを得た。
実施例2
セルロース粉砕処理時のチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)を80g、添加剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ユーメックス1001)を20gに変更した以外、実施例1と同様にして、低結晶性セルロース複合体を得た。また、樹脂組成物及びそのシートを実施例1と同様にして調製した。
実施例3
セルロース粉砕処理時のチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)を86g、添加剤として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(ユーメックス1001)を14gに変更した以外、実施例1と同様にして、低結晶性セルロース複合体を得た。また、樹脂組成物及びそのシートを実施例1と同様にして調製した。
実施例4
セルロース粉砕処理時のチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)を80g、添加剤としてポリ(エチレン−グリシジルメタクリレート)共重合体(住友化学社製「ボンドファーストE」、BF−E、重量平均分子量35,000、融点103℃)を20gに変更した以外、実施例1と同様にして、低結晶性セルロース複合体を得た。また、樹脂組成物及びそのシートを実施例1と同様にして調製した。
実施例5〜7及び比較例1〜4
表1に示す原料を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物及びそのシートを調製した。
実施例8
実施例5と同様にして低結晶セルロース複合体を得た。なお、実施例8において、セルロースがフィラーに該当する。
(樹脂組成物)
得られた低結晶性セルロース複合体及び熱可塑性樹脂(並びに比較例10〜11においては更に無機フィラー)を、表2に示す質量部で二軸混練機(日本製鋼所製TEX28)を用いて、回転数250rpm、ヒーター温度200℃、吐出18kg/hで溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて、試験例2及び試験例3に従って成形体を得た。
比較例5及び6
バッチ式振動ミル〔中央化工機社製「MB−1」、容器内径142mm、容器内部の円柱形の空間の軸方向長さ220mm、容器容量3.6L〕の容器内部に、直径30mm、長さ211mmのステンレス製の円柱状媒体を13本配置し、次に示す粉砕を行った。即ち、実施例1の乾燥処理により得られたチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)を50g添加し、40分粉砕した。振動ミルは振幅8mm、振動数20Hzの条件で運転し、低結晶性セルロースを得た。次いで、低結晶性セルロース100質量部に対して10質量部のユーメックス1010をこのミルに添加して、同じ運転条件で15分間運転し、低結晶セルロース複合体を得た。樹脂組成物及びそのシートは実施例1と同様に調製した。
比較例7及び8
実施例1の乾燥処理により得られたチップ状のセルロース含有原料(見かけ比重(固め)0.18g/mL)の50gに、1gのステアリン酸を添加した。まず、40℃での減圧乾燥により、セルロース含有原料の吸着水分を0.1質量%以下まで除去した。その試料(51g)を、遊星ボールミル〔FRITSCH社製、Φ5mmジルコニア製ビーズ〕を用いて小粒径化した。遊星ボールミルの回転数200rpmにて10分間粉砕−10分間休止を1サイクルとし、連続して72サイクル繰り返し運転し、低晶化セルロース複合体を得た。樹脂組成物及びそのシートは実施例1と同様に調製した。
比較例9〜11
低結晶セルロース複合体を使用しないこと(比較例9)、又は低結晶セルロース複合体の代わりに表2に示すタルクを用いること(比較例10〜11)以外は、実施例8と同様にして樹脂組成物及びその成型体を調製した。
比較例12及び13
溶融混練を行う際に、低結晶セルロース複合体の代わりにガラス繊維をサイドフィーダーを用いて添加した以外は実施例8と同様にして樹脂組成物及びその成形体を調製した。
尚、表1及び表2における原料は以下の通りである。
<熱可塑性樹脂>
ポリエチレン樹脂:日本ポリエチレン社製、ノバテックLL UF641
ポリプロピレン樹脂(EA9):日本ポリプロ社製、ノバテックPP EA9
ポリプロピレン樹脂(MA3):日本ポリプロ社製、ノバテックPP MA3
<結晶性セルロース粒子>
KCフロック:日本製紙ケミカル社製、結晶性セルロース粒子、セルロースI型結晶化指数78.5%、メジアン径 28μm
<無機フィラー>
タルク:日本タルク社製、ミクロエースP6
ガラス繊維:日本電気硝子社製、T−480
<相溶化剤>
ユーメックス1001:三洋化成工業社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、重量平均分子量40000、融点142℃、セルロース親和性部位の含有質量5質量%
ボンドファースト−E(BF−E):住友化学社製、ポリ(エチレン−ポリグリシジルメタクリレート)共重合体、重量平均分子量35000、融点103℃、セルロース親和性部位の含有質量12質量%
ユーメックス1010:三洋化成工業社製、マレイン酸変性ポリプロピレン、重量平均分子量30000、融点141℃
ステアリン酸:Aldrich社製、分子量284.48
上記相溶化剤の中で、ユーメックス1001及びボンドファースト−Eが、本明細書における「セルロース親和性部位を持つポリマー」に該当する。
<結晶核剤>
ゲルオールMDLM30G:新日本理化社製、1,3:2,4−ビス−O−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール
NA−11:ADEKA社製、リン酸エステルの金属塩「アデカスタブNA−11」
シート又は成形体の特性を、下記の試験例1〜4の方法に従って評価した。結果を表1及び表2に示す。
試験例1(破断歪向上率、弾性率向上率)
25℃の恒温室において、得られたシートをJIS K7127に基づき5号試験片を5個作製して、引っ張り試験を行い、引張弾性率(GPa)と引張破断歪(%)を調べ、破断歪向上率と弾性率向上率を以下の式(I)及び(II)から求めた。引っ張り試験には、SHIMADZU社製 オートグラフ精密万能試験機(AGS−10kNX)を用い、JIS K7127に従って、1サンプルにつき5点試験を行った。破断歪向上率は数値が大きいほど靱性に優れる事を示し、弾性率向上率は数値が大きいほど剛性に優れていることを示す。また、引張弾性率は0.9GPa以上であれば、優れた強度を示すものである。なお、破断歪向上率を算出する際のコントロール試験片としては、実施例1〜4及び比較例5、7に対しては比較例2、実施例5〜7及び比較例6、8に対しては比較例4の樹脂組成物の試験片をそれぞれ用いた。
破断歪向上率(%)=(ES/EB)×100 (I)
ES:サンプル試験片5個の引張破断歪の平均値
EB:コントロール試験片5個の引張破断歪の平均値
コントロール試験片とは、サンプル樹脂組成物から相溶化剤のみを除いた組成の樹脂組成物の試験片のことである。
弾性率向上率(%)=(MS/MB)×100 (II)
MS:サンプル試験片5個の引張弾性率の平均値
MB:ブランク試験片5個の引張弾性率の平均値
ブランク試験片とは、添加剤を含有しない樹脂組成物の試験片のことである。
試験例2(ウェルド強度)
得られた樹脂組成物を、25℃の恒温室において、ASTM D638 TypeIに基づいて射出成形して、成形体を作製した。ウェルドが発生している成形体は両末端ゲートから、ウェルドが無い成形体は方末端ゲートから樹脂組成物を供給して、各実施例及び比較例あたり、それぞれ3個の成形体を作製した。ウェルドが発生している成形体については、ウェルド(中央)部を中心として断面積39mm、長さ60mmに切り出し、ウェルドが無い成形体については、断面積39mm、長さ60mmに切り出し、それぞれの試験片を得た。
試験片について、支点間距離48mm、速度1mm/secとして、JIS K 7171の規格と同様に曲げ試験を行い、曲げ強度(MPa)と曲げ弾性率(MPa)を調べ、ウェルド強度保持率を以下の式より求めた。
ウェルド強度保持率(%)=曲げ強度(ウェルド有)/曲げ強度(ウェルド無)×100
ウェルド強度保持率(%)の保持率が高いほど、ウェルド強度が高く、優れた成形体であるということができる。
さらに、曲げ弾性率が高いほど、振動の初期振幅が小さいと判断でき、耐振性を有する優れた成形体であるということができる。
試験例3(低温での耐衝撃強度)
得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(日本製鋼所社製 J110AD−180H、シリンダー温度設定6箇所)を用いて射出成形した。シリンダー温度をノズル先端側から5ユニット目までを200℃、残りの1ユニットを180℃、ホッパー下を45℃に設定した。金型温度を80℃に設定して試験片を成形し、樹脂組成物の成形体を得た。
射出成形し得られた成形体(100×100×1.5mm)を、−10℃の恒温槽に一晩静置し、−10℃の恒温室において、落球衝撃試験機を用いて1kgのナス型重りを所定高さから落下させ、2回連続破砕しない高さを低温での耐衝撃強度とした。
破砕しない高さが高いほど、低温での耐衝撃強度が強い、優れた成形体であるということができる。
試験例4(ソリの抑制)
試験例3の方法で射出成形して得られた成形体(100×100×1.5mm)を25℃の恒温室にて一晩静置し、ソリを以下の式により求めた。
ソリ=最大高さ/対角線長
成形体の最大高さ及び対角線長に関しては、図1に示されるように、成形体を直角三角形の斜辺に見立てた場合に直角を挟む2辺のうちの短い方を最大高さとし、長い方を対角線長とする。ソリが小さいほど、変形が小さな優れた成形体であるということができる。
Figure 2018104702
なお、表中の結晶化指数とは、セルロースI型結晶化指数のことである。
表1より、実施例と比較例の対比より、樹脂組成物の構成原料が同じであっても、ポリマーと予め粉砕処理を行なったセルロース複合体を含有する実施例の方が、剛性が高く、かつ、靱性にも優れることが分かる。特に、比較例5、6は、背景技術の欄に記載の特許文献1の非晶質セルロースIに相当するものであるが、これらの比較例に対して、実施例の方が、顕著に剛性が高く、かつ、靱性にも優れることが分かる。
Figure 2018104702
表2より、実施例と比較例の対比より、ポリマーと予め粉砕処理を行なったセルロース複合体を含有する実施例の方が、ウェルド強度、低温での耐衝撃強度、ソリ抑制に優れる事が分かる。
本発明の製造方法により得られるセルロースは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。
A 最大高さ
D 対角線長

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとの混合粉砕物であって、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満のセルロース複合体(B)を含有してなる、熱可塑性樹脂組成物。
  2. セルロース親和性部位を持つポリマーと混合粉砕に供されるセルロースのセルロースI型結晶化指数が10%以上である請求項1記載の樹脂組成物。
  3. セルロース親和性部位を持つポリマーの重量平均分子量(Mw)が5000以上500000以下である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
  4. セルロース親和性部位が、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基である請求項1〜3いずれかに記載の樹脂組成物。
  5. 樹脂組成物におけるセルロース複合体(B)の含有量が熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、5質量部以上、70質量部以下である、請求項1〜4いずれかに記載の樹脂組成物。
  6. 熱可塑性樹脂(A)、及びセルロース親和性部位を持つポリマーとセルロースとが粉砕処理された、セルロースI型結晶化指数が−20%以上50%未満のセルロース複合体(B)を配合する、樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物を含有する成形体。
  8. 請求項1〜5いずれかに記載の樹脂組成物を加工して成形体とする、成形体の製造方法。
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