JP2018103092A - 酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法 - Google Patents

酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法 Download PDF

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寛篤 長谷川
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昭洋 小山
公浩 渡邉
Kimihiro Watanabe
公浩 渡邉
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Abstract

【課題】無機多孔質支持体のサイズと金属アルコキシド溶液の浸漬時間との関係に基づき、ガス分離性能及びガス処理量に優れたガス分離膜の製造方法を提供する。
【解決手段】無機多孔質支持体の有効長がL(40mm≦L≦60mm)であるものにおいて、浸漬工程における浸漬時間をTとし、コーティング工程におけるコーティング速度をVとしたとき、無機多孔質支持体の有効長Lが、2L≦L≦4Lの場合、コーティング速度がV=V×L/L、浸漬時間がT=Tとなるように、浸漬工程及びコーティング工程を実行し、無機多孔質支持体の有効長Lが、4L<L≦25Lの場合、コーティング速度がV=V、浸漬時間がT=T×L/Lとなるように、浸漬工程及びコーティング工程を実行する。
【選択図】なし

Description

本発明は、酸性ガス含有ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法に関する。
工業分野、医療分野、食品分野等において、高濃度のガスを得るための技術開発が盛んに行われている。例えば、工場や発電所から排出される排ガスには窒素と二酸化炭素とが含まれているが、この排ガスから二酸化炭素を選択的に分離できれば、処理ガスの利用価値が高まり、地球温暖化対策にも寄与できる。また、空気中には酸素が約20%含有されているが、空気から酸素を選択的に分離できれば、多くのエネルギーを消費する水の電気分解等の方法に依らなくても大量の酸素を効率的に得ることが可能となる。そこで、従来から、混合ガスから特定のガスを選択的に分離するガス分離膜に関する研究開発が行われてきた。
ガス分離性能及びガス処理量に優れたガス分離膜を得るためには、無機多孔質支持体へのガス分離層の成膜法を工夫する必要がある。ガス分離層の代表的な成膜法として、金属アルコキシドを原料としたゾル−ゲル法による膜形成法がある。例えば、特許文献1は、本出願人が開発した二酸化炭素又はメタンを分離する分離膜の製造方法に関する技術であり、無機多孔質支持体を金属アルコキシド溶液に浸漬し、これを引き上げた後に所定の乾燥工程を行うことで金属アルコキシドをゲル化させ、さらに焼成工程を行うものである。このようにして製造されたガス分離膜は、実験室レベルにおいては、窒素と二酸化炭素とを含む混合ガスから二酸化炭素を効率よく分離できることが確認されている。
特開2012−236189号公報
特許文献1のゾル−ゲル法を利用したガス分離膜の製造方法は、気相蒸着法等の他の膜形成法と比べて大掛かりな装置が不要であり、比較的簡単に実施できるものである。ところが、ガス分離膜の製造をラボスケールから実用スケールに移行した場合、実験室で知見されたガス分離膜の製造条件がそのまま適用できるとは限らない。特に、無機多孔質支持体の表面にガス分離層を形成する工程に際しては、ガス分離層の膜厚の制御が重要となるところ、特許文献1のガス分離膜の製造方法は、無機多孔質支持体を金属アルコキシド溶液に浸漬して分離層を形成するものであるため、無機多孔質支持体のサイズや金属アルコキシド溶液への浸漬条件によって分離層の形成メカニズムが異なり、これまで、どのような条件で浸漬を行えば、ガス分離性能及びガス処理量に優れた分離層が得られるのか把握できていなかった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、酸性ガス含有ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法において、無機多孔質支持体のサイズと金属アルコキシド溶液の浸漬時間との関係に基づき、ガス分離性能及びガス処理量に優れたガス分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法の特徴構成は、
酸性ガス含有ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法であって、
(a)アルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒を混合した混合液を調製する準備工程と、
(b)前記混合液に無機多孔質支持体を浸漬する浸漬工程と、
(c)前記無機多孔質支持体を前記混合液から引き上げて当該無機多孔質支持体の表面に前記混合液をコーティングする
コーティング工程と、
(d)前記無機多孔質支持体を熱処理して当該無機多孔質支持体の表面にポリシロキサン網目構造体を含む分離層を形成する形成工程と、
を包含し、
前記無機多孔質支持体の有効長がL(40mm≦L≦60mm)であるものにおいて、前記浸漬工程における浸漬時間をTとし、前記コーティング工程におけるコーティング速度をVとしたとき、
前記無機多孔質支持体の有効長Lが、2L≦L≦4Lの場合、コーティング速度がV=V×L/L、浸漬時間がT=Tとなるように、前記浸漬工程及び前記コーティング工程を実行し、
前記無機多孔質支持体の有効長Lが、4L<L≦25Lの場合、コーティング速度がV=V、浸漬時間がT=T×L/Lとなるように、前記浸漬工程及び前記コーティング工程を実行することにある。
本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、無機多孔質支持体の有効長に応じて、最適な分離層を形成することが可能となる。
すなわち、無機多孔質支持体の有効長がL(40mm≦L≦60mm)であるものにおいて、浸漬工程における浸漬時間をTとし、コーティング工程におけるコーティング速度をVとしたとき、
無機多孔質支持体の有効長Lが、2L≦L≦4Lの場合、コーティング速度に起因する無機多孔質支持体の表面上での膜厚増加よりも浸漬時間に起因する無機多孔質支持体の表面下での膜厚増加によるガス流量低下の影響が大きくなるため、コーティング速度がV=V×L/L、浸漬時間がT=Tとなるように、浸漬工程及びコーティング工程を実行すれば、膜厚の過剰な増加を防ぎながら十分な分離性能を発揮し得る分離層を無機多孔質支持体の表面に形成することができる。
一方、無機多孔質支持体の有効長Lが、4L<L≦25Lの場合、浸漬時間に起因する無機多孔質支持体の表面下での膜厚増加よりもコーティング速度に起因する無機多孔質支持体の表面上での膜厚増加によるガス流量低下の影響が大きくなるため、コーティング速度がV=V、浸漬時間がT=T×L/Lとなるように、浸漬工程及びコーティング工程を実行すれば、膜厚の過剰な増加を防ぎながら十分な分離性能を発揮し得る分離層を無機多孔質支持体の表面に形成することができる。
このように、本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、無機多孔質支持体の有効長に応じて、当該無機多孔質支持体のアルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒の混合液への浸漬時間及びコーティング速度を適切に設定することで、ガス分離性能及びガス処理量に優れた酸性ガス含有ガス処理用分離膜を得ることが可能となる。
本発明に係る酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法において、
前記アルコキシシランは、炭化水素基含有トリアルコキシシランを20〜100重量%含有することが好ましい。
本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、炭化水素基含有トリアルコキシシランを20〜100重量%含有するアルコキシシランを使用することで、分離層中に一定以上の炭化水素基が導入され、酸性ガスの選択性を向上させることができる。また、分離層中に存在する炭化水素基によって分離層の分子構造中に分子レベルの空隙が適度に形成されるため、分離層のガス透過率が向上し、ガス分離膜のガス分離性能とガス処理量とを両立させることができる。
本発明に係る酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法において、
前記準備工程において、前記混合液に、酸性ガスと親和性を有する金属塩をさらに混合することが好ましい。
本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、酸性ガスと親和性を有する金属塩が分離層中に含まれることになるため、元々分離層に含まれている炭化水素基による酸性ガス選択性と、金属塩による酸性ガスとの親和性とが相乗的に効果を発揮し、酸性ガス含有ガス処理用分離膜における酸性ガスの分離能をより高めることができる。
本発明に係る酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法において、
前記金属塩は、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ni、Fe、及びAlからなる群から選択される少なくとも一種の金属の酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩であることが好ましい。
本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、酸性ガスと親和性を有する金属塩として上記の有意な金属塩を選択しているため、酸性ガスの分離能をさらに高めることができる。
本発明に係る酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法において、
前記無機多孔質支持体は、細孔径分布が100〜300nmである微細孔を有することが好ましい。
本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、無機多孔質支持体の細孔径分布が適切な範囲に設定されているため、無機多孔質支持体の有効長Lが、2L≦L≦4Lの場合、あるいは、無機多孔質支持体の有効長Lが、4L<L≦25Lの場合のいずれにおいても、浸漬工程及びコーティング工程を適切に実行することができ、その結果、ガス分離性能及びガス処理量に優れた分離膜を得ることができる。
本発明に係る酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法において、
前記無機多孔質支持体は、α−アルミナを主成分とするものであることが好ましい。
本構成の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法によれば、無機多孔質支持体として適切な材質のものを使用しているため、ガス分離性能及びガス処理量だけでなく、耐久性や安定性にも優れた分離膜を得ることができる。
分離性能確認試験に使用した気体透過速度測定装置の概略構成図である。
以下、本発明の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法に関する実施形態について説明するが、便宜上、初めに酸性ガス含有ガス処理用分離膜について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
<酸性ガス含有ガス処理用分離膜>
本発明の酸性ガス含有ガス処理用分離膜は、ベースとなる無機多孔質支持体の表面に特定のガスに対して選択性を有する分離層を形成したものであり、酸性ガスとメタンガス及び/又は窒素ガスとを含有する混合ガス(以下、「酸性ガス含有ガス」と称する場合がある。)を処理対象とする。ここで、酸性ガスとは、水に溶解したときに酸性を示すガスであり、二酸化炭素や硫化水素等が例示される。本実施形態では、特に、酸性ガスとして二酸化炭素を想定し、以降の説明を行う。従って、本明細書では、酸性ガス含有ガス処理用分離膜について、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜として説明するが、メタンガスを分離するメタンガス分離膜、窒素ガスを分離する窒素ガス分離膜、あるいは二酸化炭素とメタンガス及び/又は窒素ガスとを同時に分離可能な二酸化炭素/(メタンガス及び/又は窒素ガス)分離膜とすることも可能である。以後、酸性ガス含有ガス処理用分離膜を、単純に「分離膜」と称する場合がある。
〔無機多孔質支持体〕
無機多孔質支持体は、例えば、シリカ系セラミックス、シリカ系ガラス、アルミナ系セラミックス、ステンレス、チタン、銀等の材料で構成される。これらのうち、アルミナ系セラミックスは、耐熱性に優れ、加工が容易であり、コスト的にも比較的安価であるため、無機多孔質支持体の材料として適している。無機多孔質支持体には、ガスが流入する流入部と、ガスが流出する流出部とが設けられる。例えば、ガス流入部は無機多孔質支持体に設けられた開口部であり、ガス流出部は無機多孔質支持体の外表面である。無機多孔質支持体の外表面をガス流入部とし、無機多孔質支持体に設けられた開口部をガス流出部とすることも可能である。無機多孔質支持体の外表面には無数の微細孔が形成されているため、外表面全体からガスが通流することができる。微細孔の細孔径分布は、100〜300nmが好ましい。無機多孔質支持体の構成例としては、内部にガス流路が設けられた円筒構造、円管構造、チューブラー構造、スパイラル構造、一本のエレメントにレンコンの穴のように多数の流路が設けられたモノリス構造、内部に複雑に入り組んだ連続孔が形成された連通構造、多孔質体を柱形に成形した中実多孔質構造、多孔質体を筒形に成形した中空多孔質構造、ハニカム構造体を管状に並べたハニカム構造などが挙げられる。また、無機多孔質材料で構成される中実の平板体やバルク体を用意し、その一部を刳り抜いてガス流路を形成することで、無機多孔質支持体を構成しても構わない。無機多孔質支持体の微細孔のサイズは、nmオーダーからμmオーダーまで、用途に応じて選択することができる。
〔分離層〕
分離層は、二酸化炭素とメタンガス及び/又は窒素ガスとを含む混合ガスから、二酸化炭素を選択的に誘引して分離する機能を有する。分離層は、テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシランのゾル−ゲル反応によって得られる。
テトラアルコキシシランは、下記の式(1)で表される四官能性アルコキシシランである。
Figure 2018103092
好ましいテトラアルコキシシランは、式(1)において、R〜Rが同一のメチル基であるテトラメトキシシラン(TMOS)又は同一のエチル基であるテトラエトキシシラン(TEOS)である。
炭化水素基を含有する炭化水素基含有トリアルコキシシランは、下記の式(2)で表される三官能性アルコキシシランである。
Figure 2018103092
好ましい炭化水素基含有トリアルコキシシランは、式(2)において、R〜Rが同一のメチル基であるトリメトキシシラン又は同一のエチル基であるトリエトキシシランのSi原子に炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基が結合したものである。例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが挙げられる。
式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとをゾル−ゲル反応させると、例えば、下記の式(3)で表される分子構造を有するポリシロキサン網目構造体が得られる。
Figure 2018103092
式(3)のポリシロキサン網目構造体の原材料の一つである式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランは、Rの違いにより特性が異なる。例えば、メチルトリメトキシシラン又はメチルトリエトキシシラン(炭化水素基の炭素数が1のもの)は主に二酸化炭素に対して親和性を有し、トリメトキシシラン又はトリエトキシシランのSi原子に炭素数2〜6のアルキル基又はフェニル基が結合したもの(炭化水素基の炭素数が2〜6のもの)は主にメタンガスに対して親和性を有する。そして、式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとの反応から、式(3)のポリシロキサン網目構造体を合成するにあたり、テトラアルコキシシラン(これをAとする)と、炭化水素基含有トリアルコキシシラン(これをBとする)とを最適な配合比率に設定すると、二酸化炭素又はメタンガスの分離性能に優れた分離層を形成することが可能となる。
分離層を形成するにあたっては、テトラアルコキシシラン(A1)と炭化水素基含有トリアルコキシシラン(B1)との配合比率(A1/B1)が重量比で0/100〜80/20、好ましくは0/100〜70/30、より好ましくは40/60〜70/30となるように、式(1)のテトラアルコキシシランと、式(2)の炭化水素基含有トリアルコキシシランとを配合する。この場合、分離層中に一定以上の炭化水素基が導入され、酸性ガスの選択性を向上させることができる。また、分離層中に存在する炭化水素基によって分離層の分子構造中に分子レベルの空隙が適度に形成されるため、分離層のガス透過率が向上し、ガス分離膜のガス分離性能とガス処理量とを両立させることができる。さらに、分離層は、炭化水素基含有トリアルコキシシランに由来する炭化水素基を含有するため、一般的な網目構造体よりも柔軟性を有するものとなり、テトラアルコキシシランによってある程度の剛性を維持しながら、全体の柔軟性やフレキシブル性を向上させることができる。式(3)のポリシロキサン網目構造体は、ポリシロキサンネットワーク構造中に炭化水素基Rが存在しており、ある種の有機−無機複合体を形成している。
なお、分離層の分離性能をさらに高めるため、上記式(3)のポリシロキサン網目構造体に二酸化炭素と親和性を有する金属塩を添加(ドープ)することが好ましい。金属塩としては、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ni、Fe、及びAlからなる群から選択される少なくとも一種の金属の酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩が挙げられる。これらのうち、硝酸マグネシウム又は酢酸マグネシウムが好ましい。硝酸マグネシウム等を初めとする上記金属塩は、二酸化炭素との親和性が良好であるため、二酸化炭素の分離効率向上に有効となる。金属塩を添加する方法は、例えば、ポリシロキサン網目構造体の原材料に金属塩を予め混合しておくことにより行われるが、ポリシロキサン網目構造体を、金属塩を含む水溶液に浸漬し、ポリシロキサン網目構造体の内部に金属塩を単独又は他の物質とともに含浸させる含浸法により行っても構わない。
<酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法>
本発明の酸性ガス含有ガス処理用分離膜は、以下の工程(a)〜(f)によって製造される。以下、各工程について詳細に説明する。
(a)準備工程
準備工程では、アルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒を混合した混合液を調製する。アルコキシシランは、テトラアルコキシシラン(A1)と炭化水素基含有トリアルコキシシラン(B1)との配合比率(A1/B1)を重量比で0/100〜80/20に調整することが好ましい。混合液におけるアルコキシシラン(テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシラン)、酸触媒、水、並びに有機溶媒の夫々の配合量は、テトラアルコキシシラン及び炭化水素基含有トリアルコキシシランの合計量1モルに対して、酸触媒0.005〜0.1モル、水0.017〜3モル、有機溶媒5〜60モルに調整することが好ましい。酸触媒の配合量が0.005モルより少ない場合、加水分解速度が小さくなり、分離膜の製造に要する時間が長くなる。酸触媒の配合量が0.1モルより多い場合、加水分解速度が過大となり、均一な分離膜が得られ難くなる。水の配合量が0.017モルより少ない場合、加水分解速度が小さくなり、後述のゾル−ゲル反応が十分に進行しない。水の配合量が3モルより多い場合、緻密で均一な分離膜が得られ難くなる。有機溶媒の配合量が5モルより少ない場合、混合液の濃度が高くなり、緻密で均一な分離膜が得られ難くなる。有機溶媒の配合量が60モルより多い場合、混合液の濃度が低くなり、混合液のコーティング回数(工程数)が増加して生産効率が低下する。酸触媒としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等が使用される。これらのうち、硝酸又は塩酸が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンゼン、トルエン等が使用される。これらのうち、メタノール又はエタノールが好ましい。混合液を調製する際、二酸化炭素と親和性を有する金属塩を配合することも可能である。金属塩の配合量は、上記の配合条件の場合、0.01〜0.3モルに調整される。二酸化炭素と親和性を有する金属塩としては、上述の「酸性ガス含有ガス処理用分離膜」の項目で説明したものを使用することができる。金属塩を添加する場合は、ゾル−ゲル反応時にポリシロキサンに取り込まれた金属塩はポリシロキサン結合中に略均等に分散すると考えられる。
混合液を調製すると、先ず、テトラアルコキシシランが加水分解及び重縮合を繰り返すゾル−ゲル反応が開始する。テトラアルコキシシランは、上述の「酸性ガス含有ガス処理用分離膜」の項目で説明したものを使用することができる。例えば、テトラアルコキシシランの一例としてテトラエトキシシラン(TEOS)を使用した場合、ゾル−ゲル反応は下記のスキーム1のように進行すると考えられる。なお、このスキーム1は、ゾル−ゲル反応の進行を表す一つのモデルであり、実際の分子構造をそのまま反映しているとは限らない。
Figure 2018103092
スキーム1によれば、初めに、テトラエトキシシランの一部のエトキシ基が加水分解され、脱アルコール化することによりシラノール基が生成する(加水分解反応)。テトラエトキシシランの一部のエトキシ基は加水分解されず、そのまま残存し得る。次いで、一部のシラノール基が近傍のシラノール基と会合し、脱水することにより重縮合する。その結果、シラノール基又はエトキシ基が残存したシロキサン骨格が形成される。上記の加水分解反応、及び脱水・重縮合反応は混合液系内で略均等に進行するため、シラノール基又はエトキシ基はシロキサン骨格中に略均等に分散した状態で存在する。この段階では、シロキサンの分子量はそれほど大きいものではなく、ポリマーよりもむしろオリゴマーの状態にある。従って、シラノール基又はエトキシ基含有シロキサンオリゴマーは、有機溶媒を含む混合液に溶解した状態にある。
次に、シロキサンオリゴマーと炭化水素基含有トリアルコキシシランとの反応が開始する。炭化水素基含有トリアルコキシシランは、上述の「酸性ガス含有ガス処理用分離膜」の項目で説明したものを使用することができる。例えば、炭化水素基含有トリアルコキシシランの一例としてメチルトリエトキシシランを使用した場合、反応は下記のスキーム2のように進行すると考えられる。なお、このスキーム2は、反応の進行を表す一つのモデルであり、実際の分子構造をそのまま反映しているとは限らない。
Figure 2018103092
スキーム2によれば、シロキサンオリゴマーのシラノール基又はエトキシ基と、メチルトリエトキシシランのエトキシ基とが反応し、脱アルコール化することによりポリシロキサン結合が生成する。ここで、シロキサンオリゴマーのシラノール基又はエトキシ基は、上述のようにシロキサン骨格中に略均等に分散しているため、シロキサンオリゴマーのシラノール基又はエトキシ基とメチルトリエトキシシランのエトキシ基との反応(脱アルコール化)も略均等に進行すると考えられる。その結果、生成したポリシロキサン結合中にはメチルトリエトキシシラン由来のシロキサン結合が略均等に生成し、従って、メチルトリエトキシシラン由来のメチル基もポリシロキサン結合中に略均等に存在する。そして、反応がさらに進行すると、微細化されたポリシロキサン網目構造体が液中に分散した懸濁液の状態となる。
以上のように準備工程が行われるが、混合液の調製においては、水を複数回に分けて混合することが好ましい。この場合、加水分解反応を確実に進行させることができるため、無機多孔質支持体の表面をより安定化させることができる。また、混合液の調製においては、酸触媒を複数回に分けて混合したり、加水分解し易い炭化水素基含有トリアルコキシシランを最後に混合する等の工夫を行うことが好ましい。例えば、混合液のpHが常に0.8〜2.5の範囲に収まるように、組成を調製する。この場合、混合液のpHが大きく変動しないため、炭化水素基含有トリアルコキシシランの加水分解が急激に進行せず、安定した状態でゾル−ゲル反応を進行させることができる。
(b)浸漬工程
浸漬工程として、準備工程で得られた混合液(微細化されたポリシロキサン網目構造体の懸濁液)に無機多孔質支持体を浸漬する。無機多孔質支持体の浸漬時間は、無機多孔質支持体の表面に混合液が十分に付着するように5秒〜10分とすることが好ましい。浸漬時間が5秒より短いと十分な膜厚にならず、10分を超えると膜厚が大きくなり過ぎてしまう。なお、浸漬時間については、後述の「無機多孔質支持体のサイズと金属アルコキシド溶液の浸漬条件との関係」の項目で詳しく説明する。
(c)コーティング工程
コーティング工程は、混合液から無機多孔質支持体を引き上げることにより行われる。これにより、無機多孔質支持体の表面に混合液がコーティングされる。無機多孔質支持体への混合液のコーティング速度(引き上げ速度)は、0.1〜10mm/秒が好ましい。コーティング速度が0.1mm/秒より遅くなると膜厚が大きくなり過ぎてしまい、10mm/秒より速いと十分な膜厚にならない。なお、コーティング速度については、後述の「無機多孔質支持体のサイズと金属アルコキシド溶液の浸漬条件との関係」の項目で詳しく説明する。コーティング工程では、必要に応じて、混合液から引き上げた無機多孔質支持体を乾燥させてもよい。乾燥条件は、15〜40℃で0.5〜3時間とすることが好ましい。乾燥時間が0.5時間未満では十分な乾燥ができず、3時間を超えても乾燥状態は殆ど変化しない。コーティング工程が完了すると、無機多孔質支持体の表面(一部の微細孔の内面を含む)に微細化されたポリシロキサン網目構造体が付着したものが得られる。
なお、上記浸漬工程及びコーティング工程を複数回繰り返すことにより、無機多孔質支持体への微細化されたポリシロキサン網目構造体の付着量を増加させることができる。また、一連の手順を繰り返すことで、無機多孔質支持体に混合液を均一に塗布することができるため、最終的に得られる酸性ガス含有ガス処理用分離膜をより安定させることができる。
(d)形成工程
形成工程は、混合液(ポリシロキサン網目構造体)でコーティングされた無機多孔質支持体を熱処理し、当該無機多孔質支持体の表面にポリシロキサン網目構造体を固着又は融着させてポリシロキサン網目構造体を主材とした分離層を形成する。熱処理は、例えば、焼成器等の加熱手段が用いられる。熱処理の具体的な手順について説明する。
先ず、無機多孔質支持体を後述の熱処理温度に達するまで昇温する。昇温時間は、1〜24時間が好ましい。昇温時間が1時間より短いと急激な温度変化により均一な膜が得られ難く、24時間より長いと長時間の加熱により膜が劣化する虞がある。昇温後、一定時間で熱処理(焼成)を行う。熱処理温度は、30〜300℃が好ましく、50〜200℃がより好ましい。熱処理温度が30℃より低いと十分な熱処理を行えないため緻密な膜が得られず、300℃より高いと高温の加熱により膜が劣化する虞がある。熱処理時間は、0.5〜6時間が好ましい。熱処理時間が0.5時間より短いと十分な熱処理を行えないため緻密な膜が得られず、6時間より長いと長時間の加熱により膜が劣化する虞がある。熱処理が終わったら、無機多孔質支持体を室温まで冷却する。冷却時間は、5〜10時間が好ましい。冷却時間が5時間より短いと急激な温度変化により膜に亀裂や剥離が発生する虞があり、10時間より長いと膜の生産性が悪化する。冷却後の無機多孔質支持体の表面(一部の微細孔の内面を含む)には分離層が形成される。分離層は、目付量が0.1〜3.0mg/cmに調整され、好ましくは0.3〜1.5mg/cmに調整される。なお、形成工程の後、上述した浸漬工程及びコーティング工程に戻り、両工程をセットとして、これを複数回繰り返すと、無機多孔質支持体の表面に、より緻密で且つ均一な膜質の分離層を形成することができる。
以上の工程(a)〜(d)を実施することにより、本発明の酸性ガス含有ガス処理用分離膜が完成する。なお、初めに無機多孔質支持体の表面に分離層と同様の手法で中間層を形成しておき、当該中間層の上に分離層を形成することも可能である。
<無機多孔質支持体の有効長と分離層の成膜条件との関係>
無機多孔質支持体の表面に金属アルコキシド溶液をコーティングしてガス分離層を形成するに当たっては、無機多孔質支持体の有効長Lに応じて、上記浸漬工程における浸漬時間T、及び上記コーティング工程におけるコーティング速度Vを適切に設定する必要があることが、本発明者らの研究により明らかとなった。ここで、無機多孔質支持体の有効長Lとは、無機多孔質支持体の全長のうち分離層が形成される領域の軸方向の長さである。
具体的には、無機多孔質支持体の有効長がL(40mm≦L≦60mm)であるものにおいて、浸漬工程における浸漬時間をTとし、コーティング工程におけるコーティング速度をVとする。これは、実験室レベルで使用した基準となる無機多孔質支持体への分離層の成膜条件である。
ここで、無機多孔質支持体の有効長Lを2L≦L≦4Lに設定すると、上記の基準となる有効長Lの無機多孔質支持体と比較して、コーティング速度に起因する無機多孔質支持体の表面上での膜厚増加よりも浸漬時間に起因する無機多孔質支持体の表面下での膜厚増加によるガス流量低下の影響が大きくなるため、コーティング速度がV=V×L/L、浸漬時間がT=Tとなるように、浸漬工程及びコーティング工程を実行する。これにより、膜厚の過剰な増加を防ぎながら十分な分離性能を発揮し得る分離層を無機多孔質支持体の表面に形成することができる。
一方、無機多孔質支持体の有効長Lを4L<L≦25Lに設定すると、上記の基準となる有効長Lの無機多孔質支持体と比較して、浸漬時間に起因する無機多孔質支持体の表面下での膜厚増加よりもコーティング速度に起因する無機多孔質支持体の表面上での膜厚増加によるガス流量低下の影響が大きくなるため、コーティング速度がV=V、浸漬時間がT=T×L/Lとなるように、浸漬工程及びコーティング工程を実行する。これにより、膜厚の過剰な増加を防ぎながら十分な分離性能を発揮し得る分離層を無機多孔質支持体の表面に形成することができる。
このように、無機多孔質支持体の有効長Lに応じて、当該無機多孔質支持体のアルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒の混合液への浸漬時間T、及びコーティング速度Vを適切に設定することで、ガス分離性能及びガス処理量に優れた酸性ガス含有ガス処理用分離膜を得ることが可能となる。
上記の無機多孔質支持体の有効長と分離層の成膜条件との関係に基づいて、有効長Lが異なる無機多孔質支持体の表面に、金属アルコキシド溶液を異なる条件でコーティングして分離層を形成し、得られた夫々の酸性ガス含有ガス処理用分離膜についてガス分離性能確認試験を実施した。
<無機多孔質支持体>
無機多孔質支持体としてα−アルミナを主成分とするアルミナ系セラミックス管状体(細孔径分布:100〜300nm)を使用した。無機多孔質支持体の有効長Lは、基準を50mm(=L)とし、試験例1,2として有効長Lが150mm(3L)のもの、及び試験例3,4として有効長Lが800mm(16L)のものを夫々準備した。
なお、分離層の原材料の混合物(金属アルコキシド溶液)を無機多孔質支持体の表面に塗布すると、塗布初期の溶液が無機多孔質支持体の表面の微細孔から内部に浸透する結果、分離層の膜厚が増大してガス処理量の低下をもたらす可能性がある。そこで、本実施例では、無機多孔質支持体への溶液の過剰な浸透を抑制するため、無機多孔質支持体の表面に中間層を予め形成したものを使用した。
<金属アルコキシド溶液の調製>
分離層の原材料には、以下の試薬を使用した。
(a)テトラアルコキシシラン:テトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 信越シリコーンLS−2430)
(b)炭化水素基含有トリアルコキシシラン:メチルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 信越シリコーンLS−1890)
(c)酸触媒:硝酸(和光純薬工業株式会社製 試薬特級)
(d)有機溶媒:エタノール(和光純薬工業株式会社製 試薬特級99.5%)
(e)金属塩:硝酸マグネシウム六水和物(アルドリッチ社製)
エタノール142.10重量部、硝酸0.10重量部、水5.55重量部を混合して30分間攪拌し、次いでテトラエトキシシラン19.27重量部を添加して1時間攪拌し、次いでメチルトリエトキシシラン11.00重量部を添加して2.5時間攪拌し、次いで硝酸マグネシウム(六水和物)1.98重量部を添加して2時間撹拌し、分離層の原材料となる金属アルコキシド溶液を調製した。
<分離膜の作製>
〔基準分離膜〕
無機多孔質支持体の表面に、金属アルコキシド溶液を浸漬法(ディッピング)によって塗布した。無機多孔質支持体として、有効長Lが50mm(=L)のものを使用し、金属アルコキシド溶液への浸漬時間Tを10秒(=T)とし、コーティング速度Vを5mm/s(=V)とした。なお、コーティング速度Vは、金属アルコキシド溶液からの無機多孔質支持体の引き上げ速度に相当する。金属アルコキシド溶液のコーティングが完了した無機多孔質支持体は、室温で1時間乾燥させた後、焼成器で熱処理を行った。熱処理条件は、室温(25℃)から150℃まで5時間かけて加熱し、150℃で2時間保持し、25℃まで5時間かけて冷却した。これにより、無機多孔質支持体の表面に分離層が形成された基準分離膜が得られた。
〔試験例1〕
無機多孔質支持体の表面に、金属アルコキシド溶液を浸漬法(ディッピング)によって塗布した。無機多孔質支持体として、有効長Lが150mm(=3L)のものを使用し、金属アルコキシド溶液への浸漬時間Tを30秒(=3T)とし、コーティング速度Vを5mm/s(=V)とした。分離膜の作製手順及び作製条件については、基準分離膜と同様とした。
〔試験例2〕
無機多孔質支持体の表面に、金属アルコキシド溶液を浸漬法(ディッピング)によって塗布した。無機多孔質支持体として、有効長Lが150mm(=3L)のものを使用し、金属アルコキシド溶液への浸漬時間Tを10秒(=T)とし、コーティング速度Vを15mm/s(=3V)とした。分離膜の作製手順及び作製条件については、基準分離膜と同様とした。
〔試験例3〕
無機多孔質支持体の表面に、金属アルコキシド溶液を浸漬法(ディッピング)によって塗布した。無機多孔質支持体として、有効長Lが800mm(=16L)のものを使用し、金属アルコキシド溶液への浸漬時間Tを160秒(=16T)とし、コーティング速度Vを5mm/s(=V)とした。分離膜の作製手順及び作製条件については、基準分離膜と同様とした。
〔試験例4〕
無機多孔質支持体の表面に、金属アルコキシド溶液を浸漬法(ディッピング)によって塗布した。無機多孔質支持体として、有効長Lが800mm(=16L)のものを使用し、金属アルコキシド溶液への浸漬時間Tを10秒(=T)とし、コーティング速度Vを80mm/s(=16V)とした。分離膜の作製手順及び作製条件については、基準分離膜と同様とした。
<分離性能確認試験>
基準分離膜、及び試験例1〜4の分離膜について、二酸化炭素の分離性能に関する確認試験を行った。この確認試験では、分離膜に窒素を透過させたときの気体透過速度〔P(N)〕、及び同じ分離膜に二酸化炭素を透過させたときの気体透過速度〔P(CO)〕を測定した。ここで、窒素の気体分子径は3.64Åであり、二酸化炭素の気体分子径は3.3Åである。このため、窒素よりも気体分子径が小さい二酸化炭素は分離膜を透過し易い。従って、このような気体によって異なる性質を利用し、さらに膜の構成を適切に設定すれば、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離することが可能となる。なお、この確認試験では、分離膜にメタンガスを透過させたときの気体透過速度〔P(CH)〕の測定は行っていないが、メタンガスの気体分子径(3.8Å)は窒素の気体分子径(3.64Å)よりも若干大きいため、本発明の分離膜によって二酸化炭素と窒素との分離が可能であることが確認できれば、二酸化炭素とメタンガスとの分離も可能であると推定される。
図1は、分離性能確認試験に使用した気体透過速度測定装置10の概略構成図である。気体透過速度測定装置10は、ガスシリンダー1、圧力ゲージ2、チャンバー3、及び質量流量計4を備える。分離膜5は、チャンバー3の内部に設置される。
測定ガスである二酸化炭素又は窒素をガスシリンダー1に予め充填しておく。ここでは、二酸化炭素をガスシリンダー1に充填したものとして説明する。ガスシリンダー1から排出された二酸化炭素は、圧力ゲージ2によって圧力が調整され、下流側のチャンバー3に供給される。本確認試験では、二酸化炭素の供給圧を室温で0.1MPaに調整した。管状体である分離膜5は、一端(先端側)5aが封止され、他端(基端側)5bに耐熱ガラス管6が接続される。耐熱ガラス管6は、コーニング社製のパイレックス(登録商標)管(外径8mm、内径6mm)を使用した。ただし、耐熱ガラス管6の一端側は、分離膜5(内径7mm)に内挿できるように、外径が7mm以下に縮径加工されている。分離膜5と耐熱ガラス管6との接続箇所は、接着剤(セメダイン株式会社製の接着剤「セメダイン(登録商標)C」)で接着し、さらにエポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製の二液性エポキシ系接着剤「AV138」及び「HV998」)によってシールした。チャンバー3が二酸化炭素で充満されると、二酸化炭素は管状体である分離膜5の表面から管内に透過し、耐熱ガラス管6を通過して質量流量計4に流入する。質量流量計4には、コフロック社製の熱式質量流量計(マスフローメーター「5410」)を使用した。測定条件は、流量レンジを10mL/分、フルスケール(FS)最大流量に対する精度は±1%(20℃)とした。質量流量計4で測定した二酸化炭素の流量〔mL/min〕から、二酸化炭素の透過量〔P(CO)〕(mol/(m×s(秒)×Pa))を算出した。窒素についても上記と同様の手順によ透過量〔P(N)〕(mol/(m×s(秒)×Pa))を算出した。そして、二酸化炭素の透過量〔P(CO)〕と窒素の透過量〔P(N)〕との比率である透過量比〔α(CO/N)〕から二酸化炭素の分離性能を評価した。分離性能確認試験の結果を以下の表1に示す。
Figure 2018103092
無機多孔質支持体の有効長を基準(L)の3倍とした試験例1と試験例2とを比較すると、ガス処理量の点において、試験例2の方が試験例1よりも二酸化炭素の透過量が一桁大きくなり、実用化のためには好ましい結果となった。ガス分離性能については、試験例1と試験例2との間であまり差は見られなかった。この結果より、無機多孔質支持体の有効長Lが基準(L)の3倍程度の場合は、コーティング速度については基準(L)の3倍程度に増大してコーティング工程を実施し、浸漬時間については基準(L)と同程度で浸漬工程を実施することが有効であることが判明した。なお、本試験結果のように、無機多孔質支持体の有効長に応じてコーティング速度を増大させることが有効な無機多孔質支持体の有効長は、基準(L)の2倍以上且つ4倍以下であることが、本発明者らによる追加試験から明らかとなっている(データ省略)。
無機多孔質支持体の有効長を基準(L)の16倍とした試験例3と試験例4とを比較すると、ガス処理量の点において、試験例3の方が試験例4よりも二酸化炭素の透過量が一桁大きくなり、実用化のためには好ましい結果となった。ガス分離性能については、試験例3と試験例4との間であまり差は見られなかった。この結果より、無機多孔質支持体の有効長Lが基準(L)の16倍程度の場合は、コーティング速度については基準(L)と同程度でコーティング工程を実施し、浸漬時間については基準(L)の16倍程度に増大して浸漬工程を実施することが有効であることが判明した。なお、本試験結果のように、無機多孔質支持体の有効長に応じて浸漬時間を増大させることが有効な無機多孔質支持体の有効長は、基準(L)の4倍超且つ25倍以下であることが、本発明者らによる追加試験から明らかとなっている(データ省略)。
本発明の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法は、都市ガスの製造設備、燃料電池への水素供給設備、工場排ガスの浄化設備、及び液化炭酸ガス製造設備等において使用される分離膜の製造方法として利用可能である。また、地球温暖化対策として検討されているCCSにおいても利用可能である。
1 ガスシリンダー
2 圧力ゲージ
3 チャンバー
4 質量流量計
5 分離膜
6 耐熱ガラス管
10 気体透過速度測定装置

Claims (6)

  1. 酸性ガス含有ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法であって、
    (a)アルコキシシラン、酸触媒、水、及び有機溶媒を混合した混合液を調製する準備工程と、
    (b)前記混合液に無機多孔質支持体を浸漬する浸漬工程と、
    (c)前記無機多孔質支持体を前記混合液から引き上げて当該無機多孔質支持体の表面に前記混合液をコーティングするコーティング工程と、
    (d)前記無機多孔質支持体を熱処理して当該無機多孔質支持体の表面にポリシロキサン網目構造体を含む分離層を形成する形成工程と、
    を包含し、
    前記無機多孔質支持体の有効長がL(40mm≦L≦60mm)であるものにおいて、前記浸漬工程における浸漬時間をTとし、前記コーティング工程におけるコーティング速度をVとしたとき、
    前記無機多孔質支持体の有効長Lが、2L≦L≦4Lの場合、コーティング速度がV=V×L/L、浸漬時間がT=Tとなるように、前記浸漬工程及び前記コーティング工程を実行し、
    前記無機多孔質支持体の有効長Lが、4L<L≦25Lの場合、コーティング速度がV=V、浸漬時間がT=T×L/Lとなるように、前記浸漬工程及び前記コーティング工程を実行する酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法。
  2. 前記アルコキシシランは、炭化水素基含有トリアルコキシシランを20〜100重量%含有する請求項1に記載の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法。
  3. 前記準備工程において、前記混合液に、酸性ガスと親和性を有する金属塩をさらに混合する請求項1又は2に記載の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法。
  4. 前記金属塩は、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ni、Fe、及びAlからなる群から選択される少なくとも一種の金属の酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、又はリン酸塩である請求項3に記載の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法。
  5. 前記無機多孔質支持体は、細孔径分布が100〜300nmである微細孔を有する請求項1〜4の何れか一項に記載の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法。
  6. 前記無機多孔質支持体は、α−アルミナを主成分とするものである請求項1〜5の何れか一項に記載の酸性ガス含有ガス処理用分離膜の製造方法。
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