JP2018102303A - 幹細胞を用いた異種間胚胞キメラ動物の作製法 - Google Patents

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啓光 中内
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Toshihiro Kobayashi
俊寛 小林
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Tomoyuki Yamaguchi
智之 山口
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早苗 濱仲
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真澄 平林
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Megumi Kato
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Abstract

【課題】幹細胞を用いた異種間胚胞キメラ動物の作製法の提供。
【解決手段】(A)幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;および(B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程を包含する、方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、幹細胞を用いた異種動物間での胚胞キメラ動物の作製に関する基本技術を提供する。
異種動物間においてキメラ動物個体を作出する場合、通常は、胚発生初期の細胞塊を混合するいわゆるアグリゲーション法が用いられている。この方法では、その都度受精卵を用意し、それぞれが一定ステージまで分裂した胚を混合し、その後仮親に戻し、仔の発生に期待するという方法がとられている。このような手法に依存する限り、所望のキメラ動物を得ることは極めて煩雑であり、より簡便な異種間胚胞キメラの作出法が求められていた。
非特許文献1−3では、キメラ生成に関する研究に関するデータが報告されている。
非特許文献1は、ラットES細胞樹立を報告するものである。
非特許文献2は、非特許文献1での報告がマウスES細胞の混入であったことを認めるものであり、結果的にマウスES細胞によるラットとの胚胞キメラができたことを示すものである。すなわち、これらは異種間キメラ動物の作成を意図したものでないことは明らかである。
非特許文献3は、胸腺機能の研究においてキメラ作製が有用であることを記載しているが、マウス間でのキメラであり、異種間キメラの作成とは異なる。
Innaccone PM et al.、Development Biology、1994年、vol.163、288−292頁)(1997年にCorrection) Brenin D. et al.、Transplantation Proceedings、1997年、vol.29、1761−1765頁 Mueller S.M. et al.、PNAS、2005年、vol.102、no.30、10587−10592頁
本発明は、異種動物間において、胚胞キメラ動物を迅速かつ簡便に作出する技術を提供することを課題とする。したがって、本発明は、動物工学分野、有用な動物種の創出を非常に容易にする基本技術を提供することを課題とする。また、個人の特性に応じて皮膚などの体細胞から、「自分自身の臓器」を再生する技術にも応用できる技術を提供することを課題とする。また、iPS細胞を用いてキメラ動物を作出することができる技術が提供されれば、胚を壊すことなく、体細胞から、極めて容易に、キメラ動物を作製することが可能となる。したがって、本発明は、キメラ動物の作出において、iPS細胞を使用可能な技術を提供することをも課題とする。
本発明は、異種間の胚胞キメラ動物を作出する際の問題点を克服するため鋭意検討を行
った結果、ES細胞、iPS細胞等の幹細胞を異種動物の胚盤胞へ注入する方法、もしくは数回分裂した異種動物受精卵と混合し、その後この混合物を発生させる方法によって、異種間胚胞キメラ動物を作出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。ES細胞またはiPS細胞を用いることにより、受精卵を用意することなく、異種間胚胞キメラ動物を作出することに成功した。
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
(1)以下の工程を包含する、キメラ動物の作製方法:
(A)幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;および
(B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程
を包含する、方法。
(2)前記幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または誘導型幹(iPS)細胞である、上記項目に記載の方法。
(3)前記幹細胞は、iPS細胞である、上記項目に記載の方法。
(4)前記iPS細胞は、Klf4、Sox2およびOct3/4の3つの初期化因子を用いて初期化されたものである、上記項目に記載の方法。
(5)前記幹細胞は、iPS細胞であり、前記混合は、前記異種の動物の胚盤胞への注入によって行われる、上記項目に記載の方法。
(6)前記幹細胞の生物種は、マウスまたはラットである、上記項目に記載の方法。
(7)前記異種の動物の生物種は、マウスまたはラットである、上記項目に記載の方法。(8)前記幹細胞は、標識されたものである、上記項目に記載の方法。
(9)前記幹細胞は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子が組み込まれることにより標識されたものである、上記項目に記載の方法。
(10)前記幹細胞は、1000U/ml以下の白血病抑制因子(LIF)の存在下で維持されたものであることを特徴とする、上記項目に記載の方法。
(11)前記(A)工程において、前記幹細胞は、胚の卵割球または卵黄周囲腔の中心に注入されること、または前記胚胞盤の内部細胞塊(ICM)付近に注入されることを特徴とする、上記項目に記載の方法。
(12)前記(A)工程において、前記幹細胞はキメラ形成に適当な所定数注入されることを特徴とする、上記項目に記載の方法。
(13)前記(B)工程において使用される培地は、mR1ECM培地またはKSOM−AA培地である、上記項目に記載の方法。
(14)前記(B)工程は、前記細胞の混合物を前記異種動物である非ヒト宿主哺乳動物の母胎中に戻し、該混合物を成長させて、産仔を得る工程を包含する、上記項目に記載の方法。
(15)前記胚盤胞は、妊娠後4日後のラットまたはそれに該当する段階の動物から得られたものであり、前記母胎へ戻す工程は、擬似妊娠して3日目のラットまたはそれに該当する段階にて行われることを特徴とする、前記項目に記載の方法。
(16)項目1〜16に記載の方法によって生産されたキメラ動物。
(17)項目1〜16に記載の方法によって生産されたキメラ動物から得られた臓器またはその一部。
(18)所望のゲノム型を有するキメラ動物を生産するための、幹細胞。
(19)iPS細胞である、項目16に記載の幹細胞。
(20)以下の工程を包含する、所望のゲノム型を有する臓器を製造する方法:
(A)該所望のゲノム型を有する生物種の幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;
(B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動
物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程;および
(C)該キメラ動物から、所望のゲノム型を有する臓器を取り出す工程、
を包含する、方法。
本発明において異種動物となる胚の由来としての非ヒト動物の場合、ブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、サル、マーモセット、ボノボ等の、ヒト以外の動物であれば、どのような動物であってもよい。混合すべき幹細胞の動物種と成体のサイズが似ている非ヒト動物から胚を採取することが好ましい。
他方、移入または混合される幹細胞の由来となる哺乳動物は、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物、たとえばブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、サル、マーモセット、ボノボ等の、いずれであってもよい。ヒトについては、倫理面の問題がクリアできれば、その条件下で利用可能である。
本発明の1つの特徴は、レシピエントとなる胚と移植される細胞との関係が異種の関係であっても問題なく成功することができる点にある。
以上のようにして、移植される細胞を調製し、レシピエントとなる受精卵と混合し、または胚盤胞期の受精卵の腔内に移植し、胚盤胞期受精卵の内腔において、胚盤胞由来の内部細胞と移植される細胞とによるキメラの細胞塊を形成させ、これを成長させることにより、キメラ動物を産生することができる。
幹細胞を含む細胞塊を、仮親となる胚盤胞期受精卵の由来の種の偽妊娠または妊娠メス動物の子宮内に移植する。幹細胞を含む細胞塊(たとえば、胚盤胞期受精卵)を、仮親子宮内で発生させて、産仔を得る。このようにして、キメラ動物を生産することができる。また、この産仔から、哺乳動物細胞由来の目的とする臓器を取得することができる。
本発明によって、異種動物間において、胚胞キメラ動物を迅速かつ簡便に作出する技術がされた。本発明は、ES細胞またはiPS細胞を用いることで、受精卵を用意することなしに、異種間胚胞キメラ動物を作出するということに成功した。したがって、本発明は、動物工学分野、家畜の改良等において有用な動物種の創出を非常に容易にする基本技術を提供する。本発明はまた、個人の特性に応じて皮膚などの体細胞から、「自分自身の臓器」を再生する技術にも応用できる技術を提供する。iPS細胞を用いる場合、胚を壊すことなく、体細胞から、極めて容易に、キメラ動物を作製することができる。また、本技術を臓器再生に応用する場合、再生させたい臓器が、臓器を必要とする個体と全く同じ組織適合性抗原を有するので、臓器移植に際し拒絶反応が回避できる。このように、iPS細胞を用いた場合、ES細胞を用いた場合に比べ、多くの利点を有する。将来倫理面での規制が変わり、ヒトES細胞やiPS細胞を異種間胚胞キメラ動物の作成に応用することが可能となった場合においても、iPS細胞を用いる方がES細胞よりも実用上の利点は大きい。たとえば、目的のゲノムを有する細胞に基づいて誘導型多能性幹細胞(iPS細胞)を生産して本発明を実施することにより、種々のゲノム由来の臓器を用いた研究開発を行うことも可能となる。これは、従来技術ではまったく不可能であった技術であるといえる。
図1は、マウス/ラットキメラの作製を示す蛍光顕微鏡写真である。図中の(a)〜(b)は、マウスES細胞のラット8細胞期胚(a)および胚盤胞(b)へのインジェクションを示す。(c)〜(h)は、E15.5胎児におけるマウス/ラットキメラ(c、d)、E15.5におけるコントロール(e)、新生児(f、g;GFP陰性の産仔はコントロールである)および生後1週間(h)(すなわち、コントロールのキメラでないラット胎児)を示す。上のパネルは明視野の像であり、下のパネルは蛍光像である。これらのキメラは、DsRedで示されるES細胞(c)またはGFPで示されるiPS細胞(d、f〜h)に由来するものであった。 図2aは、胎児繊維芽細胞を用いたマウス/ラットキメラの解析を示す蛍光顕微鏡写真である。胎児繊維芽細胞は、mES細胞インジェクションにより作製したE15.5マウス/ラットキメラの仔から樹立した。上のパネルは明視野の像であり、下のパネルは赤色蛍光像である。 図2bは、胎児繊維芽細胞を用いたマウス/ラットキメラの解析を示す図である。キメラ胎児繊維芽細胞におけるrCD54陽性のラット由来の細胞およびDsRed陽性のマウス由来の細胞の個別の集団を示す。 図3は、ラット臓器におけるマウスiPS細胞の寄与を示す蛍光顕微鏡写真である。(a)は、ラット胚へのmiPSインジェクションにより作製した新生児を示す。左のパネルは明視野の像であり、右のパネルは緑色蛍光像である。(b)は、腕((a)における四角の枠内)の切片を示す。左側の1枚のパネルはHE染色したものであり、そして、右側の3枚のパネルは、抗GFP抗体(緑色)およびDAPI(青色;核)で免疫染色したものである。矢印は、血管(左)および骨格筋(右)におけるGFP陽性細胞を示す。(c)〜(f)は、キメラの臓器(心臓(c)、肝臓(d)、膵臓(e)および腎臓(f))の像を示す。(c)〜(f)の各々において、左上のパネルは顕微鏡像であり、右上のパネルはその蛍光像であり、左下のパネルはHE染色した切片であり、そして、右下のパネルは抗GFP抗体(緑色)およびDAPI(青色;核)で免疫染色した切片である。 (a)は、GFPマウス由来iPS細胞樹立のストラテジーを示す図である。GFPマウス尻尾由来繊維芽細胞(Tail tip fibroblast:TTF)の樹立を行った後、3因子(初期化因子)を導入し、25〜30日間ES細胞用培地にて培養し、iPSコロニーのピックアップおよびiPS細胞株を樹立した。(b)は、樹立されたiPS細胞の形態をその形態をカメラ付き顕微鏡にて撮影した写真である。左は、GFP−iPS細胞#2を、右には#3を示す。(c)は、アルカリフォスファターゼ活性の測定を示す蛍光顕微鏡写真である。iPS細胞を蛍光顕微鏡下で撮影し、およびアルカリフォスファターゼ染色キット(Vector社 Cat.No.SK−5200)により染色を施した。左から明視野像、GFP蛍光像およびアルカリフォスファターゼ染色を示す。(d)は、ゲノムDNAを用いたPCRによる導入された3因子(初期化因子)の特定を示す電気泳動写真である。iPS細胞よりゲノムDNAを抽出し、PCRを行った結果である。上からKlf4,Sox2,Oct3/4、c−MycおよびMyogの遺伝子の発現を示す。左から、GFP−iPS細胞#2、#3、Nanog−iPS(4因子のもの)、コントロールとしてES細胞(NC)のものを示す。一番右には蒸留水での結果を示す。本発明において用いたiPS細胞における3因子の挿入が確認された。(e)は、RT−PCRによる本発明で用いた細胞におけるES細胞に特徴的な遺伝子発現パターンの解析と導入遺伝子の発現確認を示す電気泳動写真である。上からKlf4,Sox2,Oct3/4、c−Mycである。Nanog、Rex1、Gapdhの遺伝子の発現を示す。一番下には、ネガティブコントロール(RT(−))を示す。Klf4,Sox2,Oct3/4については、Total RNAとトランスジェニック(Tg)とを分けて発現を確認した。左から、GFP−iPS細胞#2、#3、コントロールとしてES細胞(NC)およびさらにコントロールとしてのTTF(ネガティブコントロール)の発現の様子を示す。一番右には蒸留水での結果を示す。(f)は、iPS細胞を用いたキメラマウス作製を示す蛍光顕微鏡写真である。樹立されたiPS細胞をC57BL6とBDF1系統のマウスの交配により得られた胚盤胞に注入し、キメラマウスを作製した結果を示す。上には、胎生13.5日目の明視野像(左)GFP蛍光像(右)を示す。下には、新生児期のものを示す。NCと記載しているのはネガティブコントロールである。 図5は、ラットiPS細胞の特徴を示す図である。(a)は、ラットiPS細胞樹立に用いたレンチウイルスベクターの構造の概略図である。1種類のウイルス感染によりテトラサイクリン依存的に3因子(Oct3/4、Klf4、Sox2)を発現させるため(tet−onシステム)、rtTAの発現をUbCプロモーター下で、3因子の発現をTRE プロモーター下で行った。またウイルス感染細胞および樹立できたiPS細胞株の標識を行うため、rtTAの下流にIRESを介してEGFPを結合させ、UbCプロモーター下で全身に発現するようにした。(b)は、樹立されたラットiPS細胞(rWEi3.3−iPS細胞)の形態を示す蛍光顕微鏡写真である。 図6は、iPS細胞を用いたマウス−ラット異種間キメラの作製を示す図である。(a)は、異種間キメラの胎児期における解析の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。マウスiPS細胞をラットの胚盤胞に注入して得られたキメラ(胎生15日目:上)、およびラットiPS細胞をマウスの胚盤胞に注入して得られたキメラ(胎生13日目:下)を示す。図中のスケールバーは、2mmを示す。(b)は、(a)で得られたキメラから樹立した胎児繊維芽細胞を用いたFACS解析の結果を示すグラフである。両者ともに、EGFP陽性のピークが確認でき、iPS細胞由来の寄与が確認された。 図7は、マウス−ラット異種間キメラの作製を証明する図である。(a)は、異種間キメラの胎児肝臓を用いたFACSによるキメリズム解析の結果を示すグラフである。得られた胎児より肝臓を採取し、マウスおよびラットそれぞれに特異的なCD45抗体で胎児肝臓中の血液細胞を染め分けた。それぞれ単陽性の細胞が存在しているだけでなく、注入したiPS細胞由来の細胞は、ほぼ全てがEGFPを発現していた。(b)は、マウスおよびラットのOct3/4遺伝子座におけるエクソン−2およびエクソン−4間のイントロン鎖長の違いを示した模式図である。(c)は、マウスおよびラットのCD45陽性細胞の由来の確認を行った結果を示す電気泳動写真である。(a)のキメラのFACSパターンにおけるマウスCD45もしくはラットCD45陽性細胞を分取し、ゲノムDNA を抽出し、鎖長の違いをマウスとラットに共通のプライマー(b)の矢頭)を用いたPCRにより検出した。陽性対照には、マウス、ラットそれぞれの末梢血中のCD45陽性細胞から抽出したゲノムDNAを用いた。 図8は、新生児および成体におけるマウス−ラット異種間キメラを示す図である。(a)、(b)は、新生児におけるマウス−ラット異種間キメラを示す蛍光顕微鏡写真である。(a)は、マウスiPS細胞をラット胚盤胞に、(b)は、ラットiPS細胞をマウス胚盤胞にそれぞれ注入し得られた新生児で、EGFP 蛍光がそれぞれにおけるiPS細胞由来の細胞を示す。矢印で示した個体は、同腹仔の非キメラを示す。図中のスケールバーは、10mmを示す。(c)、(d)は、成体におけるマウス−ラット異種間キメラを示す写真である。(c)は、マウスiPS細胞(毛色:黒)をラット胚盤胞(毛色:白)に、(d)は、ラット iPS細胞(毛色:白)をマウス胚盤胞(毛色:黒)にそれぞれ注入し得られ発育した個体で、それぞれ斑な毛色を示す。(e)は、新生児および成体における異種間キメラの作製効率を示すグラフである。移植胚数を100%とした時の成体におけるキメラ率、新生児におけるキメラ率、非キメラ率、非着床もしくは流産率を示す。 図9は、新生児におけるマウス−ラット異種間キメラの全身のキメリズム解析の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。(a)、(c)は、新生児におけるマウス−ラット異種間キメラの全身のキメリズムを示す。(a)は、マウスiPS細胞をラット胚盤胞に、(c)は、ラットiPS細胞をマウス胚盤胞にそれぞれ注入して得られた新生児であり、EGFP蛍光がそれぞれにおけるiPS細胞由来の細胞を示す。破線は、各臓器を示し、Bは脳、Hは心臓、Luは肺、Liは肝臓、Pは膵臓、Aは副腎、Kは腎臓をそれぞれ示す。(b)、(d)は、代表的な臓器の組織切片を作製し、抗−EGFP抗体およびDAPIにより染色を施した結果を示す。(b)は、(a)のキメラから摘出した臓器、(d)は(c)のキメラから摘出した臓器を示す。図中のスケールバーは、(a)、(c)では2mm、(b)、(d)では100μmを示す。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(キメラ動物)
本明細書において「キメラ動物」とは、2つ以上の動物のゲノムに由来するゲノム型を含む、動物をいう。ゲノムは、同種異系であってもよく、異種であってもよい。
本明細書において、「幹細胞」は、多能性を有する任意の細胞をいい、代表例としては、胚性幹(ES)細胞または誘導型幹(iPS)細胞、卵細胞、多能性生殖幹細胞(mGS細胞)、内部細胞塊(ICM細胞)等が挙げられる。
本明細書において、「胚性幹(ES)細胞」とは、当該分野における通常の意味で用いられ、胚盤胞細胞から樹立された,多分化能をもつ培養細胞株をいう。
本明細書において、「誘導型幹(iPS)細胞」とは、外来の因子(本明細書では「初期化因子」という)によって、分化細胞の分化状態を初期化して未分化状態にした細胞をいう。
本明細書において、「初期化因子」とは、分化細胞を未分化細胞にすることができる因子または因子群あるいはその一員をいう。代表例としては、Klf4、Sox2およびOct3/4が挙げられる。
本明細書において、「異種」とは、移植を意図される幹細胞に対して、動物種が異なることをいう。ラットとマウス、ブタとヒトなどは、異種の組み合わせの例である。本明細書では、動物における任意の種が対象となるべきことが理解される。本発明では、幹細胞とは異種の動物は、ホストとなるべき動物であるから、ホストの使用が企図される場合は、非ヒトである。
本明細書において「胚盤胞」とは、当該分野で通常使用される意味で用いられ、哺乳類の初期発生で,卵割期の終った胚をいう。代表的に、32細胞期に、胚盤胞は、集塊の外側を包む栄養芽層と、内側の内部細胞塊(inner cell massl;ICM)とに分かれ、集塊内に胞胚腔と呼ばれる腔所を生じる。
本明細書において「卵割球」とは、当該分野で通常使用される意味で用いられ、受精卵の卵割によって生じるおもに2細胞期より胞胚期にいたる間の形態的に未分化の細胞をいう。
本明細書において「卵黄周囲腔(perivitelline space)」とは、当該分野で通常使用される意味で用いられ、囲卵腔とも呼ばれ、動物卵の表面と卵を直接とりかこむ卵黄膜や受精膜との間にある隙間をいう。
本明細書において「分裂受精卵」とは、受精卵であって、細胞分裂を経たものをいう。代表的には、4細胞期、8細胞期、16細胞期などを挙げることができる。
本明細書において「注入」は、任意の適切な手段を使用して達成することができる。そのような手段としては、例えば、Nagy,A.,Gertsenstein,M.,Vintersten,K.& Behringer,R.Manipulating the Mouse Embryos.A Laboratory Manual,3rd
ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2003)に記載される手法が挙げられる。具体的な例としては、たとえば、以下が挙げられる。ピエゾ駆動のマイクロマニピュレーター(プライムテック製)を用いて、顕微鏡下で注意深く透明帯に穴を開けた後、8細胞期胚あるいは桑実胚であれば胚の卵割球の中心または卵黄周囲腔に、胚盤胞であれば内腔に、それぞれ約10個のmES/miPS細胞をインジェクションすることなどが挙げられるが、それに限定されない。
本明細書において「混合」は、任意の適切な手段を使用して達成することができる。そのような手段としては、例えば、上記のNagy,A.らの文献に記載される手法が挙げられる。具体的な例としては、たとえば、以下が挙げられる。酸性タイロード溶液により透明帯を除去した2種の胚 (桑実胚) 同士を同じ培養液中で隣接させ物理的に接着させることができる。翌日接着が起こっていれば1つの混合胚盤胞が形成される。
本明細書において「幹細胞の生物種と異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる」方法は、任意の適切な方法を用いることができる。代表的には、そのような方法としては、例えば、細胞の混合物を前記異種動物である非ヒト宿主哺乳動物の母胎中に戻し、該混合物を成長させて、産仔を得る方法があげられるがそれに限定されない。この方法のバラエティーまたは他の方法としては、上記のNagy,A.らの文献に記載される手法が挙げられる。具体的な例としては、仮親の偽妊娠交配後の適切な時期に子宮内へ外科的に混合胚を移植することが挙げられる。
本明細書において「標識」とは、キメラ動物において、一方を他方から識別することを可能にする任意の因子をいう。異なる遺伝子であれば、その遺伝子自体が標識にあたると考えることができるが、通常は、目視等のより簡便な認識手段で峻別を可能にするものを用いる。そのような標識の例としては、たとえば、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP),青色蛍光タンパク質(CFP),その他蛍光タンパク質およびLacZなどを挙げることができる。キメラ動物に用いる細胞は、一方を、混合または注入する前に、特異的に検出するための蛍光タンパク質を発現可能な状態で組み込んでもよい。たとえば、そのような検出用の蛍光タンパク質として、DsRedの遺伝子変異体、DsRed.T4(Bevis B.J.and Glick B.S.,Nature Biotechnology Vol.20,p.83−87,2002)を、CAGプロモーター(サイトメガロウイルスエンハンサーとニワトリアクチン遺伝子プロモーター)の制御によりほぼ全身臓器に発現するように配列設計し、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)により幹細胞に組み込むことができる。移植用の細胞に対し、蛍光による標識を行うことにより、産生した動物における各組織がキメラ動物のいずれの細胞に由来するのかを容易に検出することができる。
本明細書において「白血病抑制因子(LIF)」(Leukemia Inhibitory Factor)とは、白血病細胞の増殖を阻害し、マクロファージに分化誘導する因子として発見された因子をいう。ES細胞の未分化状態を維持するために細胞培養時に用いられる。
本明細書において「所望のゲノム型」とは、キメラ動物または臓器において作製を所望するゲノム型をいう。
本明細書において「臓器」とは、当該分野において通常の意味で用いられ、動物の身体を構成する器官一般または場合によってその一部を指す。
(キメラ動物の作製方法)
1つの局面において、本発明は、キメラ動物の作製方法を提供する。この方法は、以下の工程:(A)幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;および(B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程を包含する。倫理上の問題があることから、ホストとしての人体は除外される。
本発明の方法において、(A)工程は、幹細胞と胚盤胞期の受精卵または分裂受精卵とが混合するような様式で行われるのであれば、任意の手法を用いることができる。そのような手法としては、例えば、上記のNagy,A.らの文献に記載される手法がある。
本発明の方法において、(B)工程では、(A)工程で生産した細胞塊を一定期間培養した後、通常の胎仔の発生過程を経由させるか、またはそれに匹敵する手法を用いてキメラ動物へと成長させることができる。
1つの実施形態において、本発明において用いられる幹細胞は、ES細胞またはiPS細胞である。
好ましい実施形態において、本発明において用いられる幹細胞は、iPS細胞である。iPS細胞は、体細胞を材料にして所望のゲノムを有するものを作成することができる。このためiPS細胞を用いれば、所望のゲノムを有する異種キメラ動物を生産することができる。iPS細胞を用いる場合、胚を壊すことなく、体細胞から、極めて容易に、キメラ動物を作成することができる。また本技術を臓器再生に応用する場合、再生させたい臓器が、臓器を必要とする個体と全く同じ組織適合性抗原を有するので、臓器移植に際し拒絶反応が回避できる。このようにiPS細胞を用いた場合、ES細胞を用いた場合に比べ多くの利点を有する。将来倫理面での規制が変わり、ヒトES細胞やiPS細胞を異種間胚胞キメラ動物の作成に応用可能となった場合においても、iPS細胞を用いる方がES細胞よりも実用上の利点は大きい。iPS細胞の提供は、本明細書において記載されるような種々の手法を用いて生産することによって行うことができる。あるいは、すでに生産され維持されているiPS細胞を使用してもよい。
好ましい実施形態において、本発明において用いられるiPS細胞は、Klf4、Sox2およびOct3/4の3つの初期化因子を用いて初期化されたものである。理論に束縛されることを望まないが、この組み合わせが好ましい理由としては、たとえば、がん遺伝子であるc−Mycを使用しないことから、がん化が見られないことなどが挙げられる。しかしながら、本発明は、これら方法に限定されるものではない。iPS細胞の作成法は非常に多様化してきており、小分子化合物と2〜3種類の初期化遺伝子の組み合わせ、酵素阻害剤と2〜3種類の初期化遺伝子の組み合わせ等その他の因子でも樹立することが明らかになっており、これらのいずれの手法を用いても、本発明に利用することができることが理解される。
好ましい実施形態において、本発明において用いられる幹細胞は、iPS細胞であり、本発明において実施される混合工程は、前記異種の動物の胚盤胞への注入によって行われる。理論に束縛されることを望まないが、この組み合わせが好ましい理由としては、たとえば、iPS細胞は、体細胞を材料にして所望のゲノムを有するものを作成することがで
きることから、所望のゲノムを有する異種キメラ動物を生産することができることなどが挙げられる。
1つの実施形態において、本発明において用いられる幹細胞の生物種は、マウスまたはラットであるがこれらに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、近年のiPS細胞樹立により特定の転写因子の組み合わせにより体細胞を初期化する技術が確立された。これにより現在までに樹立あるいは維持が困難とされてきたマウス、サル以外のブタ、ウシなどの大型動物種においても同様の方法を適用することで胚発生に寄与が可能な多能性幹細胞を樹立しうる。これらを異種間キメラ作製に用いうる。またサルやヒトといった霊長類ではすでに多能性幹細胞の存在が認められていることからこれを用いての異種間キメラを作製しうる。
1つの実施形態において、本発明において用いられる異種の動物の生物種は、マウスまたはラットであるがこれらに限定されない。本発明は、ブタ、ウシなどの大型動物であっても、同様の作出が可能である。その理由としては、以下が挙げられる。理論に束縛されることを望まないが、実際にヤギ、ヒツジ間では異種キメラの作製報告がすでにあり、実験動物レベルから今回示したマウス−ラットのような染色体数も異なるような異種からもキメラ作出が可能であることが示唆された。また大型動物においてもヤギ−ヒツジ間でキメラ個体が作出であることから、ブタやウシであっても本件で示したような多能性幹細胞を胚の内側に取り込まれるような方法を用いればキメラ個体の作出は可能性としてあげられる。
1つの実施形態において、本発明において用いられる幹細胞は、標識されたものを使用することができる。このような標識としては、幹細胞自体が標識されたものであるか、標識されるように改変されたものであってもよい。例えば、実施例において使用されるGT3.2細胞は、CAG発現ユニットの制御下で、改良型緑色蛍光タンパク質(EGFP)をユビキタスに発現する細胞である。また、実施例で用いられる、EB3DR細胞は、EB3 ES細胞に由来し、そして、CAG発現ユニットの制御下でDsRed−T4遺伝子を持つ。このような細胞は、すでに、標識が発現するように改変された細胞であるといえる。これ以外の標識方法については、本明細書の他の部分における説明を参酌するか、当該分野において公知の技術を応用することができる。
1つの具体的な実施形態では、本発明において用いられる幹細胞は、蛍光タンパク質(たとえば、緑色蛍光タンパク質)をコードする遺伝子が組み込まれることにより標識されたものである。
1つの実施形態において、本発明において用いられる幹細胞は、1000U/ml以下の白血病抑制因子(LIF)の存在下で維持されたものであることを特徴とする。これは、非特許文献1では、従来技術と同様、比較的高濃度のLIFを用いてキメラが作製されるにいたっているが、本発明においては、低濃度のLIFでキメラ化が進むことが明らかになった。
このましいLIF濃度としては、例えば、1000U/ml以下、2000U/ml、3000U/ml以下、あるいは、500U/ml、300U/ml以下、200U/ml以下、100U/ml以下などを挙げることができる。下限としては、0U/ml以上、10U/ml以上、20U/ml以上、30U/ml以上、50U/ml以上、100U/ml以上、200U/ml以上、300U/ml以上などを挙げることができる。
1つの実施形態において、本発明の(A)工程における幹細胞は、胚の卵割球または卵黄周囲腔の中心に注入されること、または本発明において用いられる胚胞盤の内部細胞塊
(ICM)付近に注入されることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、胚盤砲に入れる場合も、アグリゲーションをさせる場合も、ドナー(つまり実施例1の場合はマウス)の方は宿主(実施例1の場合ラット)のかたまりのなるべく内側に入れることが好ましいことが明らかとなった。理論に束縛されることを望まないが、これは、ドナーが宿主の免疫系から多少なりとも逃れられるからであると考えられる。
1つの実施形態において、本発明の(A)工程における幹細胞は、キメラ形成に適当な所定数注入されることを特徴とする。前記キメラ形成に適当な所定数は1〜20個であり、好ましくは5〜15個、より好ましくは8〜12個である。
1つの実施形態において、本発明の(B)工程において使用される培地は、mR1ECM培地またはKSOM−AA培地である。マウスであれば、M16、CZB、KSOM、さらにKSOMにアミノ酸を加えたKSOM−AAを使用することができ、これらの中でも胚発生において一番よい条件であるKSOM−AAを選択することができる。
1つの実施形態において、(B)工程は、前記細胞の混合物を前記異種動物である非ヒト宿主哺乳動物の母胎中に戻し、該混合物を成長させて、産仔を得ることを包含する。
1つの実施形態において、本発明の(B)工程は、受精後4日もしくは5日目で行うことが好ましい。理論に束縛されることを望まないが、この日数が、キメラの成立および免疫抵抗性の排除のバランスから適切であると考えられるからである。したがって、これらのデータから、ブタ、ウシなどについても、本明細書における記載に基づいて実施することができる。
1つの実施形態では、胚盤胞は、妊娠後4日後のラットまたはそれに該当する段階の動物から得られたものであり、前記母胎へ戻す工程は、擬似妊娠して3日目のラットまたはそれに該当する段階にて行われることが有利でありうる。したがって、これらのデータから、ブタ、ウシなどの胚盤胞について、母胎へ戻す工程は、本明細書における記載に基づいて実施することができる。
別の局面において、本発明は、上記本発明の方法によって生産されたキメラ動物を提供する。本発明のキメラ動物の特徴は異種動物間の胚胞キメラであるということと、ES細胞もしくはiPS細胞などの幹細胞を用いているということにある。キメラ動物であることの証明は、体細胞を表面抗原による差別化、またはジェノタイピングもしくはマーカー遺伝子の検索により可能である。
(所望の臓器の製造)
別の局面において以下の工程を包含する、所望のゲノム型を有する臓器を製造する方法を提供する。この方法は、(A)該所望のゲノム型を有する生物種の幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;(B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程;および(C)該キメラ動物から、所望のゲノム型を有する臓器を取り出す工程、を包含する。
本方法の効果の確認は、各臓器に特異的なマーカー、酵素、機能などを測定する公知の技術を用いて行うことができる。
本発明の臓器を製造する方法において、製造すべき臓器としては、腎臓、心臓、膵臓、小脳、肺臓、甲状腺、毛および胸腺などの一定の形状を有する固形臓器であればいずれのものでもよいが、好ましくは、腎臓、すい臓、毛および胸腺が挙げられる。このような固
形臓器は、全能性細胞あるいは多能性細胞を、レシピエントとなる胚の中で発生させることにより、産仔の体内において製造する。全能性細胞あるいは多能性細胞は、胚の中で発生させることにより、すべての臓器を形成することができることから、使用する全能性細胞あるいは多能性細胞の種類に依存して製造することができる固形臓器が制約を受けることはない。
一方、本発明は、レシピエントとなる非ヒト胚由来の産仔個体の体内において、移植される細胞にのみ由来する臓器を形成することを特徴としており、レシピエントとなる非ヒト胚由来の細胞と移植される細胞とのキメラの細胞構成を有することは望ましくない。そのため、レシピエントとなる非ヒト胚としては、発生段階において製造すべき臓器の発生が生じず、出生児において当該臓器を欠損する異常を有する動物由来の胚を使用することが望ましい。このような臓器欠損を発生させる動物であれば、特定の遺伝子が欠損することにより臓器が欠損するノックアウト動物であっても、あるいは特定の遺伝子を組み込むことにより臓器が欠損するトランスジェニック動物であってもよい。
たとえば、臓器として腎臓を製造する場合、レシピエントとなる非ヒト胚として、発生段階において腎臓の発生が生じない異常を有するSall1ノックアウト動物(Nishinakamura,R.et al.,Development,Vol.128,p.3105−3115,2001)の胚等を使用することができる。また、臓器として膵臓を製造する場合、レシピエントとなる非ヒト胚として、発生段階において膵臓の発生が生じない異常を有するpdx−1ノックアウト動物(Offield,M.F.,et al.,Development,Vol.122,p.983−995,1996)の胚、臓器として小脳を製造する場合、レシピエントとなる非ヒト胚として、発生段階において小脳の発生が生じない異常を有するWnt−1(int−1)ノックアウト動物(McMahon,A.P.and Bradley,A.,Cell,Vol.62,p.1073−1085,1990)の胚、臓器として肺臓、甲状腺を製造する場合、レシピエントとなる非ヒト胚として、発生段階において肺臓と甲状腺の発生が生じない異常を有するT/ebpノックアウト動物(Kimura,S.,et al.,Genes and Development,Vol.10,p.60−69,1996)の胚等を、それぞれ使用することができる。また、腎臓,肺など複数臓器の欠損を引き起こす、線維芽細胞増殖因子(FGF)レセプター(FGFR)の細胞内ドメインの欠損型を過剰発現させるドミナントネガティブ型のトランスジェニック変異体動物モデル(Celli,G.,et al.,EMBO J.,Vol.17 pp.1642−655,1998)の胚を使用することもできる。あるいは、ヌードマウスを用いて、毛または胸腺の生産に使用することができる。
(キメラ動物生産用の幹細胞)
本発明は、所望のゲノム型を有するキメラ動物を生産するための、幹細胞を提供する。特に、本発明では、異種でのキメラ動物の生産が可能になったことが特徴である。このようなキメラ動物は、従来生産することができなかったことから、動物自体にも発明としての価値があると考えられる。理論に束縛されることは望まないが、このような動物がこれまで作製することができなかったのは、異種では、キメラ動物の産生の困難性から成功率が低いと考えられていたことが原因であると考えられる。
好ましい実施形態では、本発明の幹細胞は、iPS細胞である。
(iPS細胞)
iPS細胞は、初期に同定された、Oct3/4、Sox2、Klf4およびc−Mycの4因子を用いてもよく、他の方法によっても作製することができる。すなわち、iPS細胞は、体細胞に初期化因子(単数または複数の因子の組み合わせでありうる)を接触
させることによって初期化を誘導させて生産することができる。そのような初期化および初期化因子の例としては以下のようなものを挙げることができる。たとえば、本発明の実施例では、iPS細胞は3因子(Klf4、Sox2、Oct3/4;これらは本発明において使用される代表的な「初期化因子」である。)を、GFPトランスジェニックマウスの尻尾より採取した繊維芽細胞に導入することにより、本発明者らが独自に作製したが、このほかの組み合わせ、たとえば、Yamanaka因子とも呼ばれるOct3/4、Sox2、Klf4およびc−Mycの4因子を利用した方法を用いることもでき、その改良法を用いることもできる。遺伝子としては、c−Mycの代わりにn−Mycを用い、ベクターとしては、レトロウイルスベクターの一種であるレンチウイルスベクターを用いて、iPS細胞を樹立することも可能である(Blelloch R et al.,(2007).Cell Stem Cell 1:245−247)。また、OCT3/4・SOX2・NANOG・LIN28の4遺伝子を胎児肺由来の線維芽細胞や新生児包皮由来の線維芽細胞へ導入することで、ヒトiPS細胞を樹立することも可能である(Yu J,et al.,(2007).Science 318:1917−1920)。
マウスiPS細胞樹立で使用されたマウス遺伝子のヒト相同遺伝子であるOCT3/4・SOX2・KLF4・C−MYCを用いて線維芽様滑膜細胞、および新生児包皮由来の線維芽細胞からヒトiPS細胞を生産することもできる(Takahashi K,et
al.,(2007).Cell 131: 861−872.)。OCT3/4・SOX2・KLF4・C−MYCの4遺伝子にhTERT・SV40 large Tを加えた6遺伝子を用いてヒトiPS細胞樹立することもできる(Park IH,et al.,(2007).Nature 451:141−146.)。また、c−Mycの遺伝子導入をせずにOct−4、Sox2およびKlf4の3因子だけでも、低効率ながらマウスおよびヒトにおいてiPS細胞の樹立が可能であることが示されており、iPS細胞が癌細胞に変化するのを抑えることに成功していることから、本発明においてこれを利用することもできる(Nakagawa M,et al.,(2008).Nat
Biotechnol 26:101−106.;Wering M,et al.,(2008).Cell Stem Cell 2:10−12)。
(ノックアウト動物)
本発明の技術は、ノックアウト動物と組み合わせて実施することができる。ノックアウト動物は、概ね、以下の手順で作製される。まず、ターゲッティングベクター(組換えDNA)を調製した後、エレクトロポレーション法などにより、そのターゲッティングベクターを幹細胞(たとえば、ES細胞、iPS細胞など)に導入する。そして、相同的遺伝子組換えの生じたES細胞株を選別する。次に、8細胞期胚又は胚盤胞期胚の中に、その組換えES細胞、iPS細胞などを、インジェクション法により注入し、キメラ胚を作製する。次に、そのキメラ胚を偽妊娠動物の子宮に移植し、産仔(キメラ動物)を得る。次に、作製したキメラ動物と野生型動物を交配し、生殖細胞が組換えES細胞、iPS細胞などに由来する細胞により形成されているか否かを確認する。そして、生殖細胞が組換えES細胞、iPS細胞などに由来する細胞により形成されていることが確認された動物同士を交配し、得られた産仔の中からノックアウト動物を選別する。
(遺伝子)
本明細書において、本発明において使用される遺伝子(たとえば、Sall1、pdx−1などの欠損遺伝子、またはiPS細胞を生産するのに必要な遺伝子であるKlf4、Sox2、Oct3/4など)には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種に
おける所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子(例えば、sall1)に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、ヒトの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
(種々の動物を使用する場合の留意点)
マウス以外の動物を使用する場合は、以下の点に留意することで、本明細書の実施例に記載した手法を応用して実施することができる。たとえば、他種の動物におけるキメラ作製に関して、マウス以外の種ではキメラ形成能をもつような多能性幹細胞樹立の報告よりは、胚もしくは胚の中でもES細胞の起源となる内部細胞塊を注入したキメラの報告(ラット:(Mayer,J.R.Jr.&Fretz,H.I.The culture of preimplantation rat embryos and the prosuction of allophenic rats.J.Reprod.Fertil.39,1−10(1974));ウシ:(Brem,G.et al.Production of cattle chimerae through embryo microsurgery.Theriogenology.23,182(1985));ブタ:(Kashiwazaki N et.al Production of chimeric pigs by the blastocyst injection method Vet.Rec.130,186−187(1992)))が多いが、内部細胞塊を注入したキメラを用いても、本明細書に記載した方法を応用することができる。これらのように内部細胞塊を用いることで欠損動物の失われた臓器を補うことは事実上可能である。すなわち、たとえば、上記細胞をいずれも胚盤胞までin vitroで培養し、得られた胚盤胞から内部細胞塊を物理的に一部剥離し、それを胚盤胞へインジェクションすることができる。途中の8細胞期あるいは桑実胚同士を凝集させキメラ胚を作製することができる。そして、このような技術が異種間のキメラ動物の作出において利用される。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et
al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biol
ogy,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional
Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
本実施例では、動物愛護の精神にのっとり、東京大学において規定される動物の取り扱いに関する規準に基づいて、以下の実験を行った。
(参考文献)
本実施例において、以下の文献を参考にした:
Hooper M,Hardy K,Handyside A et al.HPRT−deficient(Lesch−Nyhan)mouse embryos derived from germline colonization by cultu
red cells.Nature 1987;326:292−295.
Niwa H,Miyazaki J,Smith AG.Quantitative
expression of Oct−3/4 defines differentiation,dedifferentiation or self−renewal
of ES cells.Nat Genet 2000;24:372−376.
Nagy,A.,Gertsenstein,M.,Vintersten,K.& Behringer,R.Manipulating the Mouse Embryos.A Laboratory Manual,3rd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2003)
Qi−Long Ying, Marios Stavridis, Dean Griffiths, Meng Li, Austin Smith.Conversion of embryonic stem cells into neuroectodermal precursors in adherent monoculture.Nature Biotechnology 2003;21:183−186.
Shyoso Ogawa, Kahei Satoh,Hajime Hashimoto.In vitro Culture of Rabbit Ova from the Single Cell to the Blastocyst Stage.Nature 1971;233:422−424.
Oh,S.H.,K.Miyoshi H.Funahashi.Rat oocytes fertilized in modified rat 1−cell embryo culture medium containing a high sodium chloride concentration and bovine serum albumin maintain developmental ability to the blastocyst stage.Biology Reproduction 1998;59:884−889.
(実施例1)
本実施例では、マウスのES細胞およびiPS細胞を幹細胞として用いてラットの受精卵または胚盤胞との混合実験または注入を行いキメラ動物が生産されることを実証した。
(1)マウスiPS細胞の調製
本発明者らは、誘導型多能性幹(iPS)細胞は3因子(Klf4、Sox2、Oct3/4)でGFPトランスジェニックマウスの尻尾より採取した繊維芽細胞を使って生産した。そのプロトコールは以下のとおりである。そのスキームは図1および詳細には図4aに示した。
GFPトランスジェニックマウスより尻尾を約1cm採取し、皮を剥ぎ2〜3片に刻んだ。それをMF−start medium(TOYOBO,日本)中に置き、5日間培養した。そこで出現してきた繊維芽細胞を新たな培養皿に撒きなおし数継代し、これを尻尾由来繊維芽細胞(TTF)とした。
目的遺伝子およびウイルスエンベロープタンパク質を導入し作製したウイルス産生細胞株(293gpもしくは293GPG細胞株)より上清を回収し、遠心濃縮後凍結保存しておいたウイルス液を前日に1×10細胞/6ウェルプレートになるよう継代したTTF細胞の培養液中に加え、これを3因子(初期化因子)の導入とした。
3因子(初期化因子)導入後、翌日ES培養用の培養液に置換し25〜30日間培養した。この際、毎日培養液の置換を行った。
培養後出現してきたiPS細胞様コロニーをイエローチップ(たとえば、Watson
から入手可能)にてピックアップし、0.25%トリプシン/EDTA(Invitrogen社)で単一細胞にまでバラバラにし、新たに用意したマウス胎児繊維芽細胞(MEF)上に撒いた。
上記方法により樹立されたiPS細胞株は、以下に示すように、iPS細胞としての特徴すなわち未分化性と全能性とを有していることが証明された(図4b−f)。
樹立されたiPS細胞株2株について、その形態をカメラ付き顕微鏡にて撮影した。ピックアップ後のiPS細胞を継代後、ディッシュ上でセミコンフルエントになった段階で観察および撮影を行った。その結果、図4bに示すように、形態的にES細胞様の未分化コロニーを形成することがわかった。
また、iPS細胞を蛍光顕微鏡下で撮影し、およびアルカリフォスファターゼ染色キット(Vector 社 Cat.No.SK−5200)により染色を施した。明視野像、GFP蛍光像をカメラを付属した顕微鏡にて観察・撮影後、培養液を除きリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄したiPS細胞の培養ディッシュに10%ホルマリン・90%メタノールからなる固定液を、添加し、1〜2分固定処理を施した。これを洗浄液(0.1M Tris−HCl(pH9.5))で一度洗浄した後、上記キットの染色液を添加し、暗所にて15分間静置した。その後、再び洗浄液で洗浄後、観察・撮影した。その結果、図4cに示すように、本実施例で作製したiPS細胞は、GFPマウス由来であるため、GFPを恒常的に発現し、未分化細胞に特徴的である高いアルカリフォスファターゼ活性を示すことがわかった。
また、iPS細胞樹立の際にゲノムDNA上に挿入された3因子の同定のため、iPS細胞よりゲノムDNAを抽出し、PCRを行った。ゲノムDNAはDNAmini Kit(Qiagen 社)を用い製造業者のプロトコールに従い、1x10個の細胞からDNAを抽出した。そのDNAを鋳型とし、以下のプライマーを用いPCRを行った。
Oct3/4
Fw(mOct3/4−S1120): CCC TGG GGA TGC TGT GAG CCA AGG(配列番号1)
Rv(pMX/L3205): CCC TTT TTC TGG AGA CTA AAT AAA(配列番号2)

Klf4
Fw(Klf4−S1236): GCG AAC TCA CAC AGG CGA GAA ACC(配列番号3)
Rv(pMXs−AS3200): TTA TCG TCG ACC ACT GTG
CTG CTG(配列番号4)

Sox2
Fw(Sox2−S768): GGT TAC CTC TTC CTC CCA CTC CAG(配列番号5)
Rv(pMX−AS3200): 上記と同じ(配列番号4)

c−Myc
FW(c−Myc−S1093): CAG AGG AGG AAC GAG CTG
AAG CGC(配列番号6)
Rv(pMX−AS3200): 上記と同じ(配列番号4)
その結果、図4dに示すように、3因子の挿入が確認された。
また、ES細胞に特徴的な遺伝子発現パターンおよび導入された遺伝子の発現を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法により確認した。1x10個のGFP陽性細胞をフローサイトメーターを用いTrizol−LS Reagenet(invitrogen社)に分取し、そこから抽出したmRNAよりThermoScript RT−PCR Systemキット(invitrogen社)を用い付属のプロトコールに従いcDNA合成をおこなった。合成されたcDNAを鋳型としPCR反応を行った。用いたプライマーはトランスジーンの発現(図中Tgと表記)は上記dと同様のプライマー、それ以外の遺伝子発現についてはTakahashi K & Yamanaka S
の報告(Cell 2006 Aug 25;126(4):652−5.)等に基づきプライマーを合成したものを用いた。その結果、図4eに示すように、いずれの株もES細胞とほぼ同様の発現パターンを示し、また導入された遺伝子(Tg)はiPS細胞の高い遺伝子サイレンシング活性によりその発現が抑えられていることがわかった。
また、樹立されたiPS細胞を胚盤胞に注入し、キメラマウスを作製した。PMSGおよびhCGホルモンの投与により過排卵誘起処理を施したBDF1系統のマウス(♀,8週齢)より採取した卵子とC57BL/6由来の精子を用いインビトロ受精(IVF;in vitro fertilizaiton)を行い、受精卵を得た。それを8細胞期/桑実胚まで培養した後、凍結保存し、胚盤胞注入を行う前日に起こした。iPS細胞はセミコンフルエントになったものを0.25% Trypsin/EDTAにより剥がし、注入用にES細胞培養液に縣濁した。胚盤胞注入は胚盤胞補完での手法同様に顕微鏡下でマイクロマニピュレーターを用いて行い、注入後の培養を経て、ICR系統の仮親子宮に子宮移植を施した。解析では、胎生13日目および出生後1日目に蛍光実体顕微鏡下で観察および撮影した。その結果、図4fに示すように、胎児期および新生児期でiPS細胞由来の細胞(GFP陽性)が確認でき、樹立されたiPS細胞株が高い多分化能を有していることが示唆された。
(2)mES/miPS細胞の培養
未分化のマウス胚性幹(mES)細胞(EB3DR)(RIKEN CDBの丹羽仁史先生より供与)を、ゼラチンコートディッシュにおいて、10%胎仔ウシ血清(FBS;ニチレイバイオサイエンス製)、0.1mM 2−メルカプトエタノール(Invitrogen,San Diego,CA)、0.1mM非必須アミノ酸(Invitrogen)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen)、1% L−グルタミン ペニシリン ストレプトマイシン(Sigma)および1000U/mlの白血病抑制因子(LIF;Millipore,Bedford,MA)を補充したGlasgow改変イーグル培地(GMEM;Sigma,St.Louis,MO)中で、フィーダー細胞なしで維持した。このEB3DR細胞は、EB3 ES細胞に由来し、そして、CAG発現ユニットの制御下でDsRed−T4遺伝子を持つ。EB3 ES細胞は、E14tg2a ES細胞(Hooper M.et al.,1987)に由来する下位系統の細胞であり、Oct−3/4プロモーター制御下で薬剤耐性遺伝子であるブラストサイジンを発現するように構築したOct−3/4−IRES−BSD−pAベクターの組み込みを、Oct−3/4対立遺伝子に標的化することによって樹立されたものである(Niwa H.et al.,2000)。
未分化のマウス人工多能性幹(miPS)細胞(GT3.2)を、15%ノックアウト血清代替添加物(KSR;Invitrogen)、0.1mM 2−メルカプトエタノール(Invitrogen)、0.1mM 非必須アミノ酸(Invitrogen)、1mM HEPES緩衝溶液(Invitrogen)、1% L−グルタミン ペニシリン ストレプトマイシン(Sigma)および1000U/mlの白血病抑制因子(LIF;Millipore)を補充したDulbecco改変イーグル培地(DMEM;Invitrogen)中で、マイトマイシン−C処理したマウス胎児繊維芽細胞(M
EF)上に維持した。GT3.2細胞は、オスのEGFPトランスジェニックマウス(大阪大学の岡部勝先生より寄与)の尾から採取した繊維芽細胞にKlf4、Sox2、Oct3/4の3つの初期化因子をレトロウイルスベクターで導入することにより樹立した細胞であり、CAG発現ユニットの制御下で改良型緑色蛍光タンパク質(EGFP)をユビキタスに発現する。
(3)マウス8細胞/桑実胚または胚盤胞の調製
これらの胚の調製は、公表されたプロトコール(Nagy A.et al.,2003)に従って行った。簡単に述べると、オスC57BL/6マウスとの交配後2.5日(2.5dpc)のメスBDF1マウスの卵管および子宮から、マウスの8細胞/桑実胚期の胚をM2培地(Millipore)中に採卵した。これらの胚をKSOM−AA培地(Millipore)滴中に移し、そして、胚盤胞期まで24時間培養した。
(4)ラット8細胞/桑実胚または胚盤胞の調製
オスWistar系統ラットとの交配後3.5日(本明細書において3.5dpcとも称する)のメスWistar系統ラットの卵管および子宮からラット8細胞/桑実胚期の胚を、そして、交配後4.5日(本明細書において4.5dpcとも称する)のメスWistar系統ラットの子宮からラット胚盤胞を、それぞれ、A 液(HAM F−12 (SIGMA) 1.272g, NaHCO (SIGMA)( 0.192g) + B液(RPMI1640 (SIGMA) 0.416g, NaHCO (SIGMA) 0.056g)+ C液(EARLE (SIGMA) 0.344g, EAGLE MEM(SIGMA) 0.0352g, NaHCO3 0.064g) + Penicillin G (SIGMA) 0.015g, Streptomycin (SIGMA) 0.010gを含むHERs培地中に採卵した。これらの胚を、80mM NaCl(和光純薬工業製)および0.1%ポリビニルアルコール(PVA;Sigma)を含む改変ラット1細胞胚培養培地(mR1ECM;Oh et al.,1998)中に移し、そして、胚盤胞期まで24時間培養した。
(5)ラット8細胞/桑実胚または胚盤胞期胚へのmES/miPS細胞のインジェクション
mES/miPS細胞をトリプシン処理し、そして、1mM HEPES緩衝溶液を加えた培養培地中に懸濁した。8細胞/桑実胚期で、胚をHEPES緩衝mES/miPS培養培地を含む微小滴内に移した。ピエゾ駆動のマイクロマニピュレーター(プライムテック製)を用いて、顕微鏡下で注意深く透明帯に穴を開けた後、胚の卵割球または卵黄周囲腔の各々の中心に、10個のmES/miPS細胞をインジェクションした。インジェクション後、胚を胚盤胞期まで24時間mR1ECM培地中で培養し、その後、3.5dpcの偽妊娠交配させた仮親メスWistar系統ラットの子宮に胚移植した。
胚盤胞期で、これらの胚を同じ微小滴内に移し、そして、内部細胞塊(ICM)付近の胚盤胞腔内に10個のmES/miPS細胞をインジェクションした。インジェクション後、胚をmR1ECM培地中で1〜2時間培養し、その後、仮親に胚移植した。コントロールとして、mES/miPS細胞をまた、同じ方法でマウスの胚にインジェクションした。インジェクション後、これらの胚を、胚盤胞期までKSOM−AA培地中で培養し、その後、2.5dpcの偽妊娠交配させた仮親メスICRマウスの子宮に胚移植した。移植後の産仔率およびキメラ形成率を表1に示す。
(6)キメラの解析
キメラの解析は胎児期15.5〜16.5日目、新生児期および成体で行った。それぞれの解析時期の割り振りは表1に示す。胎児期の解析では、仮親への移植から12日目で開腹して胎児を摘出し、蛍光実体顕微鏡下で、ES細胞であればDsRed、iPS細胞であればEGFPの蛍光を指標に、キメラの存在とその寄与率を肉眼的に確認した(表1)。新生児期の解析では、妊娠満期である移植後18日に自然分娩もしくは帝王切開により産仔を得て、それを胎児期同様、肉眼的に蛍光を観察した。
(7)胎児繊維芽細胞のフローサイトメトリーによる解析
胚移植後11日目または12日目の仔から、胎児繊維芽細胞を樹立した(図2a)。具体的には、胎児を顕微鏡下で解剖し、頭部および臓器を取り出し、そして、20分間トリプシン処理を行った。トリプシン処理の後、この懸濁物をフィルターに通し、その後、ゼラチンコートディッシュに蒔いた。24時間インキュベートした後、接着した細胞を回収した。図2aは、胎児繊維芽細胞を用いたマウス/ラットキメラの解析のうち、mES細胞インジェクションにより作製したE15.5マウス/ラットキメラの仔から樹立した胎児繊維芽細胞を示す。図2a上のパネルは明視野の像であり、図2a下のパネルは赤色蛍光像である。そして、3%FBSを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(染色用培地;SM)中に懸濁し、そして、氷上にて1時間、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)を結合させた抗ラットCD54抗体(BD Pharmingen,San Diego,CA)で免疫染色を行った。SMで洗浄した後、蛍光強度を高めるために、細胞懸濁物にAlexa647を結合させた抗マウスIgG抗体(Invitrogen)を加え、氷上にて1時間免疫染色を行った。ヨウ化プロピジウム(PI)を含むSM中に懸濁させた後、これらの細胞を、ES細胞由来のマウス細胞(DsRed)およびラット細胞(rCD54+Alexa647)の分布について、MoFlo(Dako,Carpinteria,CA)およびFlow−Joソフトウェアにより解析した。結果を図2bに示す。
図2bは、胎児繊維芽細胞を用いたマウス/ラットキメラの解析のうち、キメラ胎児繊維芽細胞におけるrCD54陽性のラット由来の細胞およびDsRed陽性のマウス由来の細胞の個別の集団を示す。
(8)マウス/ラットのキメラ臓器および組織の免疫組織化学
マウス/ラットのキメラ新生児からの臓器および組織(腕、心臓、肝臓、膵臓および腎臓)を、4%パラホルムアルデヒドで6時間固定し、そして、パラフィン中に包埋した。包埋した臓器を薄切し、室温にて1時間、抗GFP抗体(Invitrogen)で免疫染色を行った。PBSで洗浄した後、これらの切片を、室温にて1時間、Alexa488を結合させた抗ウサギIgG抗体(Invitrogen)で免疫染色を行った。染色
した切片を、DAPIを含む封入溶液(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,CA)で覆い、蛍光実体顕微鏡下で解析した。この切片をまた、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色して、光学顕微鏡下で解析した。
結果を図3に示す。図3から明らかなように、ラット臓器におけるマウスiPS細胞の寄与が示される。a.ラット胚へのmiPSインジェクションにより作製した新生児。左のパネルは明視野の像であり、右のパネルは緑色蛍光像である。b.腕(a.における四角の枠内)の切片。左側の1枚のパネルはHE染色したものであり、そして、右側の3枚のパネルは、抗GFP抗体(緑色)およびDAPI(青色;核)で免疫染色したものである。矢印は、血管(左)および骨格筋(右)におけるGFP陽性細胞を示す。c〜f.キメラの臓器(心臓(c)、肝臓(d)、膵臓(e)および腎臓(f))の像。c〜fの各々において、左上のパネルは顕微鏡像であり、右上のパネルはその蛍光像であり、左下のパネルはHE染色した切片であり、そして、右下のパネルは抗GFP抗体(緑色)およびDAPI(青色;核)で免疫染色した切片である。
以上の結果から、以下のことが言える。すなわち、マウスのiPS細胞がラットの全身に寄与し、体形成を担っていることが示唆される。
(実施例2)
マウスーラットキメラ動物の成立を実証するため、マウスiPS細胞をラット胚に注入する方法と、ラットiPS細胞をマウス胚に注入する方法の双方を実施した。
(1)キメラ形成能を持ったラットiPS細胞の樹立
iPS細胞樹立のためのソースとして Wistarラット胎児(雄)から繊維芽細胞を樹立した。iPS細胞の誘導にはマウスiPS細胞の樹立時に用いたレトロウイルスではなく、テトラサイクリン依存的に3因子の発現を誘導できるシステムを組み込んだレンチウイルスベクターを用いた(図5a)。本ベクターではユビキチン−C(UbC)プロモーター下でrtTAとEGFPがIRES配列を介して共に発現する。よって誘導時にレンチウイルスの感染が認められた細胞は恒常的にEGFP蛍光を示すため、樹立したiPS細胞自体の標識も同時に行うことが可能となる。このレンチウイルスを介して3因子を導入しラットiPS細胞を誘導した。導入後しばらくは繊維芽細胞の増殖に必要な血清を含む培地で培養後、途中から阻害剤を含むラットES細胞用の培地に切り替え培養を継続したところ、ラットのiPS細胞様コロニーが得られた。ピックアップ後の継代培養においても自発的に分化することなく維持でき、iPS細胞株として株化することに成功した。ここでできた細胞株のひとつをラットiPS細胞(rWEi3.3−iPS細胞)とした(図5b)。
なお、iPS細胞の培養の条件は、以下の通りである。マウスiPS細胞の未分化維持にはDulbecco’s modified Eagle’s medium(Sigma)に15% ノックアウト血清リプレースメント(Invitrogen)、0.1mM 2−メルカプトエタノール、0.1mM 非必須アミノ酸、1mM HEPES緩衝液 (Invitrogen)、1% L−グルタミン−ペニシリン−ストレプトマイシン、1000U/ml マウス LIFを加えた培地を用い、マイトマイシン−C処理を施したマウス胎児繊維芽細胞上に播種した。
ラットiPS細胞の未分化維持には N2B27培地(Ying et al., 2003)に1μM MEK阻害剤PD0325901(Axon, Groeningen, Netherland)、3μM GSK3阻害剤CHIR99021(Axon)、FGF受容体阻害剤SU5402(Calbiochem, La Jolla, CA) と1000U/ml ラットLIF(Millipore)を加えた培地を用い
、マイトマイシン−C処理を施したマウス胎児繊維芽細胞上に播種した。
いずれのiPS細胞の培養も、5% CO存在下、37℃で行った。
(2)マウス−ラット異種間キメラの胎児期における解析
異種間キメラ作製のため、マウスiPS細胞をラット胚盤胞に、もしくは逆にラットiPS細胞をマウス胚盤胞に注入した。マウスiPS細胞としては、実施例1で樹立したEGFP−Tgマウス由来のmGT3.2−iPS細胞を用いた。胚培養および胚操作は、以下の通りである。マウス交配後の胚の採取および培養、マイクロインジェクション等は既報のプロトコールに従って行った (Nagy et al., 2003)。簡単に
述べると、まずマウスの8細胞期/桑実胚期の胚は交配後2.5日後の卵管および子宮から、M2培地(Millipore)に回収した。回収した胚は、アミノ酸を含むKSOM培地(KSOM−AA培地:Millipore)に移し、8細胞期/桑実胚期の胚への注入に用いる場合は注入操作に用いるまでの1〜2時間、胚盤胞への注入に用いる場合は一晩、5%CO存在下、37℃で培養した。
ラットの8細胞期/桑実胚期の胚は交配後3.5日後の卵管および子宮から、胚盤胞は交配後4.5日後の子宮からそれぞれHER培地(Ogawa et al., 1971)に回収した。回収した胚は、mR1ECM培地(Oh et al., 1998)に移し、胚への注入に用いる場合は注入操作に用いるまでの1〜2時間、5% CO存在下、37℃で培養した。
マイクロマニピュレーションのため、iPS細胞は、0.25% トリプシン/EDTA(Invitrogen)処理によりディッシュより剥がし、それぞれの培地に懸濁した。ピエゾマイクロマニピュレーター(Primetech, Tokyo, Japan)を用いて、顕微鏡下で胚の透明帯および栄養外胚葉に穴を開け、約10個のiPS細胞を8細胞期/桑実胚期の胚の囲卵腔内、もしくは胚盤胞の内部細胞塊近傍に注入した。注入後、8細胞期/桑実胚期の胚は胚盤胞期まで一晩、胚盤胞は、1〜2時間、それぞれの培地で培養後、胚移植を行った。ラット胚盤胞は偽妊娠ラット子宮へ、マウス胚盤胞は偽妊娠マウス子宮へそれぞれ移植した。移植のレシピエントにはマウスの胚を用いた場合は精管結紮雄マウスとの交配後、2.5日目のICR系統の雌マウス、ラットの胚を用いた場合は精管結紮ラットとの交配後、3.5日目のWistar系統の雌ラットを用いた。解析時期は、妊娠満期に達するまでの期間がラットの方が2日間遅いため、ほぼ同じステージの胎児を解析できるように両者の間を2日分ずらし、ラットをホスト胚とした場合は胎生15日目、マウスをホスト胚にした場合は胎生13日目とした。解析の結果、マウスiPS細胞を注入したラット胎児、またその逆においてもEGFPの蛍光が認められた(図6a)。得られた胎児から繊維芽細胞を樹立し、フローサイトメーターを用いて解析したところ、両キメラともに、EGFP陽性のピークが確認でき、iPS細胞の寄与によるキメラの成立を支持する結果となった(図6b)。
また、同胎児より肝臓を摘出しマウスおよびラットそれぞれに特異的なCD45抗体(APC 標識抗−マウスCD45抗体とPE標識抗−ラットCD45抗体)で血球系を特異的に染色しフローサイトメーターで解析した。その結果、胎児肝臓中にマウスCD45陽性細胞およびラットCD45陽性細胞それぞれの単独分画が存在していた(図7a)。
さらに、マウスおよびラットそれぞれのCD45陽性細胞を分取し、遺伝的に両者の由来を確認するためゲノムDNAを抽出し、PCRを試みた。異種間の遺伝子型の判定には、QIAamp DNA Mini Kitを用いて抽出した DNAを用い、PCR反応には、以下のプライマーセットを用いた。
マウスおよびラットOct3/4
Fw : 5’− CAGTTTGCCAAGCTGCTGAA−3’(配列番号:10)
Rv : 5’− AGGGTCTCCGATTTGCATAT−3’ (配列番号:1
1)
由来の判定には、両者のゲノムDNAにおけるOct3/4遺伝子座の第2 エクソンと第4エクソン間にあるイントロン鎖長の差異に着目した。この部分の鎖長はラットの方が約100塩基ほど長くなっており、エクソンに存在する共通配列を元に設計したプライマーでPCR反応を行うことで、両者の由来を判定できる (図7b)。PCR反応の結果、マウスCD45陽性細胞のゲノムDNAはマウスOct3/4遺伝子座の鎖長を、ラットCD45陽性細胞ではラットOct3/4遺伝子座の鎖長を示した(図7c)。よって表面抗原を用いた解析結果、あるいは遺伝的な解析結果においても、キメラ胎児肝臓中には両者の細胞が混在していることが分かった。以上のことから、マウス−ラット間における異種間キメラの成立が証明された。
(3)マウス−ラット異種間キメラにおける新生児および成体までの発育
次に我々はマウス−ラット間の異種間キメラが妊娠満期、あるいは産後成体まで発育可能かを確認した。方法は前項で用いたマウスmGT3.2−iPS細胞をラット胚盤胞へ、ラットrWEi3.3−iPS細胞をマウス胚盤胞へそれぞれ注入し、子宮内に移植後、妊娠満期に自然分娩もしくは帝王切開により産仔を摘出した。その結果、新生児において蛍光顕微鏡下で観察したところ、両産仔ともにモザイク状のEGFP蛍光を示した(図8a、8b)。また産後それらを成体まで発育させ毛色によりキメラ形成を判定した。マウスiPS細胞は黒毛のC57BL/6系統を背景にもつEGFP−Tgマウス由来であるため、白毛のWistarラット胚由来と区別がつき、また逆にラットiPS細胞は白毛のWistar由来であるため、黒毛のC57BL/6×BDF1のF1胚由来と区別ができる。その結果、成体においても異種間キメラ形成が確認できた(図8c、8d)。
以上より、異種間キメラは妊娠満期まで発生が進み、産後も正常に発育することがわかった。(図8e)。
また、異種間キメラにおけるキメリズムの判定を行った。方法は、生体における溶血後の末梢血を、APC 標識 抗−マウス CD45 抗体、 PE 標識 抗−ラット CD45 抗体、PE 標識 抗−Gr−1 抗体、PE 標識 抗−Mac−1 抗体(ラット IgG : BD Bioscience
Pharmingen)、PE−Cy7 標識 抗−B220 抗体 (ラット IgG : BD Bioscience Pharmingen)、APC 標識 抗−CD4 抗体、APC−Cy7 標識 抗−CD8 抗体で染色し、Mo−floとFACSCanto(BD bioscience)を用いて、分取及び解析を行った。
(4)異種間キメラの各組織における細胞の由来
キメラ個体内において異種のiPS細胞由来の細胞がどの程度寄与しているか、蛍光実体顕微鏡下で新生児個体を解析した。マウスiPS細胞をラット胚盤胞に注入して得られた異種間キメラ個体においてはほぼ全ての臓器でEGFP陽性のマウスiPS細胞由来の細胞が観察された(図9a)。代表的な臓器について(心臓、肝臓、膵臓、腎臓)組織切片を作製し、抗EGFP抗体を用いてマウスiPS細胞由来の細胞の局在を確認したところ、全ての組織にモザイク状のEGFP蛍光が見られ、キメラになっていることが分かった(図9b)。また、ラットiPS細胞をマウス胚盤胞に注入して得られた異種間キメラ個体においても同様の結果が得られた(図9c及び図9d)。このことから両者のiPS細胞は異種の環境下においても全身のほぼ全ての組織・臓器に分化可能であることが示唆される。
以上より、iPS細胞を用いることで異種間キメラを作製することは可能であり、注入されたiPS細胞は異種の環境においても正常に胚発生を経て全身の機能的な細胞に分化できることが示された。
(実施例3)
近年の報告(例えば、Cell Stem Cell 4, 16−19, December 18, 2008=Rat iPS Cell 135,1287−1298, December 26, 2008=Rat ES Cell 135, 1299−1310, December 26, 2008=RatESなど)におけるラットの ES 細胞、iPS細胞樹立による臓器欠損を目的としたノックアウトラット作製に関する技術に基づき、これらのノックアウトラットホストに用いる。
そして、実施例1に準じてこのホストにマウスの幹細胞を注入することにより、キメラ動物を作製する。そして、ノックアウトした臓器について、異種臓器が再生されることを確認することができる。
(実施例4)
また、他方、実施例3とは逆にラットの幹細胞株を既存の臓器欠損マウスに注入し同様の成果を得ることもできる。実験としては、実施例1に準じてキメラを作製し、そして、ノックアウトした臓器について、異種臓器が再生されることを確認することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、動物工学分野、家畜の改良等において有用な動物種の創出を非常に容易にする基本技術を提供する。本発明はまた、個人の特性に応じて皮膚などの体細胞から、「自分自身の臓器」を再生する技術にも応用できる技術を提供する。
配列番号1:Oct3/4用フォワードプライマー、Fw(mOct3/4−S1120): CCC TGG GGA TGC TGT GAG CCA AGG
配列番号2:Oct3/4用リバースプライマー、Rv(pMX/L3205): CCC TTT TTC TGG AGA CTA AAT AAA
配列番号3:Klf4用フォワードプライマー、Fw(Klf4−S1236): GCG AAC TCA CAC AGG CGA GAA ACC
配列番号4:Klf4、Sox2、c−Myc用リバースプライマー、Rv(pMXs−AS3200): TTA TCG TCG ACC ACT GTG CTG CTG配列番号5:Sox2用フォワードプライマー、Fw(Sox2−S768): GGT
TAC CTC TTC CTC CCA CTC CAG
配列番号6:c−Myc用フォワードプライマー、FW(c−Myc−S1093): CAG AGG AGG AAC GAG CTG AAG CGC
配列番号7 注入された胚由来の細胞同定用のフォワード(Fw)プライマー:TTC ATG CGA CGG TTT TGG AAC
配列番号8 注入された胚由来の細胞同定用のリバース1(Rv1)プライマー:TTC
AAC ATC ACT GCC AGC TCC
配列番号9 注入された胚由来の細胞同定用のリバース(Rv2)プライマー:TGT
GAG CGA GTA ACA ACC
配列番号10 注入された胚由来の細胞同定用のOct3/4用フォワード(Fw)プライマー:CAG TTT GCC AAG CTG CTG AA
配列番号11 注入された胚由来の細胞同定用のOct3/4用リバースプライマー:AGG GTC TCC GAT TTG CAT AT

Claims (20)

  1. 以下の工程を包含する、キメラ動物の作製方法:
    (A)幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;および
    (B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程
    を包含する、方法。
  2. 前記幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または誘導型幹(iPS)細胞である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記幹細胞は、iPS細胞である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記iPS細胞は、Klf4、Sox2およびOct3/4の3つの初期化因子を用いて初期化されたものである、請求項3に記載の方法。
  5. 前記幹細胞は、iPS細胞であり、前記混合は、前記異種の動物の胚盤胞への注入によって行われる、請求項1に記載の方法。
  6. 前記幹細胞の生物種は、マウスまたはラットである、請求項1に記載の方法。
  7. 前記異種の動物の生物種は、マウスまたはラットである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記幹細胞は、標識されたものである、請求項1に記載の方法。
  9. 前記幹細胞は、蛍光タンパク質をコードする遺伝子が組み込まれることにより標識されたものである、請求項1に記載の方法。
  10. 前記幹細胞は、1000U/ml以下の白血病抑制因子(LIF)の存在下で維持されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  11. 前記(A)工程において、前記幹細胞は、胚の卵割球または卵黄周囲腔の中心に注入されること、または前記胚胞盤の内部細胞塊(ICM)付近に注入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  12. 前記(A)工程において、前記幹細胞はキメラ形成に適当な所定数注入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  13. 前記(B)工程において使用される培地は、mR1ECM培地またはKSOM−AA培地である、請求項1に記載の方法。
  14. 前記(B)工程は、前記細胞の混合物を前記異種動物である非ヒト宿主哺乳動物の母胎中に戻し、該混合物を成長させて、産仔を得る工程を包含する、請求項1に記載の方法。
  15. 前記胚盤胞は、妊娠後4日後のラットまたはそれに該当する段階の動物から得られたものであり、前記母胎へ戻す工程は、擬似妊娠して3日目のラットまたはそれに該当する段階にて行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
  16. 請求項1〜15に記載の方法によって生産されたキメラ動物。
  17. 請求項1〜15に記載の方法によって生産されたキメラ動物の臓器またはその一部。
  18. 以下の工程を包含する、所望のゲノム型を有する臓器を製造する方法:
    (A)該所望のゲノム型を有する生物種の幹細胞を、該幹細胞に対して異種の動物の胚盤胞期の胚盤胞腔内に注入するか、または該幹細胞に対して異種の動物の分裂受精卵と混合する工程;
    (B)(A)工程で作製した該幹細胞を含む細胞塊を、該幹細胞の生物種と該異種の動物の生物種とのキメラ動物へと成長させる工程;および
    (C)該キメラ動物から、所望のゲノム型を有する臓器を取り出す工程、
    を包含する、方法。
  19. 所望のゲノム型を有するキメラ動物を生産するための、幹細胞。
  20. iPS細胞である、請求項19に記載の幹細胞。
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