JP4502317B2 - 未分化細胞を選別する方法およびその利用 - Google Patents

未分化細胞を選別する方法およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、未分化細胞を細胞表面抗原に対する抗体により染色し、キメラ個体やクローン個体等を高率に形成する細胞のみを分取する未分化細胞の選別法に関する。
ES細胞あるいはEG細胞等の未分化細胞及び遺伝子組換えを施した未分化細胞は適切な培養条件で培養された後、酵素処理により単一細胞に分散される。キメラ胚は、分散した任意の細胞を5個から10個程度拾い、正常な胚盤胞や卵割期胚、4倍体の卵割期胚に注入したり、凝集させることにより作出される。キメラ胚は、仮親の卵管または子宮に胚移植することにより、正常に発生してキメラ産子が分娩される。得られたキメラ動物に含まれ、卵子や精子の元になる生殖系列細胞に凝集した未分化細胞が寄与すると、キメラ動物の交配によって得られた子孫に未分化細胞の遺伝子型が伝わる。そのため、これらの未分化細胞は、組換え動物の作出、とりわけ特定の遺伝子の機能を破壊したノックアウト動物作出の媒体として用いられている。
また、未分化細胞あるいは遺伝子組換えを施した未分化細胞は核移植のドナー細胞として用いることにより、直接動物個体を形成することができる。すなわち、あらかじめ染色体を除去した未受精卵子とES細胞を電気パルス等による細胞融合により、また、ピエゾドライブを用いた注入装置により、ES細胞の核を直接注入するとともに、適切な発生刺激を与えることで核移植卵子が形成され発生が開始する。この核移植卵子を仮親の卵管内に移植することにより、ES細胞に由来するクローン個体が得られる。得られたクローン個体の遺伝情報は全てドナー細胞となった未分化細胞に由来する。ドナー細胞が組換え体であれば、交配による子孫の産生を待つ必要はなく、それ自身が組換え個体となる。
技術的要因を除けば、ES細胞のキメラ産子が得られる割合は用いたES細胞株の性質に依存すると考えられており、全くキメラを形成しない株も多く存在する。比較的容易にキメラを形成する株でも、その割合は一般的には数%から十数%であった。また、ノックアウト動物の作出では、ES細胞が得られたキメラ動物の生殖細胞系列に寄与しなければならないが、その効率は極めて低いという問題があった。このため、特にノックアウト動物の作出などでは多大なコストが発生する。また、ES細胞由来のクローン個体の作出効率は数%と低く、得られたクローン個体の正常性が低いという問題があった。
マウス胚の操作マニュアル 山内一也ら訳 近代出版(1994) ジーンターゲッティング 相沢慎一著 羊土社(1995) 胚と個体の遺伝子操作法 近藤寿人編 シュプリンガー・フェアラーク東京(1997) ジーンターゲッティングの最新技術 八木 健編 羊土社(2000) 幹細胞・クローン研究プロトコール 中辻憲夫編 羊土社(2001)
そこで、本発明は、未分化細胞を用いたキメラ個体作出において、その作出効率を高めるとともに、キメラ個体における未分化細胞の寄与率を高め、生殖系列キメラを容易に得られるようにすることを目的としている。また、未分化細胞を核移植のドナー細胞として用いる場合において、正常なクローン個体を効率よく得られるようにすることを目的としている。
ES細胞(胚性幹細胞、embryonic stem cells)は胚盤胞の内部細胞塊から樹立される細胞で、高度の多分化能を維持した細胞である。ES細胞株は均一な細胞集団ではなく、キメラ形成能や分化能が異なる細胞が混在しているとの着想から、本発明者らは、これらの亜集団を分画することができれば、最も未分化な細胞と特定の系譜にわずかに分化した細胞を比較できる可能性があり、ES細胞の多分化能維持機構の解明や分化誘導因子の同定に役立つものと考えた。
そこで、本発明者らはまず、ROSA26×CBA系マウス由来ES細胞を、種々の細胞表面マーカー抗体で染色してフローサイトメトリーで解析した。その結果、PECAM-1とSSEA-1の発現に大きなばらつきがあることが判明した。そこで、本発明者らは、次に、PECAM-1とSSEA-1の二重染色を行い、FACSによってPECAM-1-SSEA-1-、PECAM-1+SSEA-1-およびPECAM-1+SSEA-1+を示す細胞に分画し、各亜集団よりRNAを精製し、定量的RT-PCRによって遺伝子発現のプロファイルを比較した。また、それぞれの画分の細胞を1個ずつ8細胞期胚に注入し、キメラ胚におけるβ-gal陽性細胞の局在を調べた。その結果、SSEA-1陽性細胞はそのほとんどがPECAM-1陽性を示した。遺伝子の発現を比較したところ、PECAM-1陰性の細胞は原始内胚葉(primitive endoderm)、外胚葉(ectoderm)や中胚葉(mesoderm)の分化マーカーの発現が増加しており、逆にOct3/4の遺伝子発現は減少していた。胚盤胞におけるES由来細胞の局在を調べた結果、PECAM-1陽性細胞は原始外胚葉(epiblast)に取り込まれる頻度が高かったのに対し、PECAM-1陰性細胞は原始内胚葉あるいは栄養外胚葉(trophectoderm)に局在する頻度が高かった。さらに6.0-7.0日胚では、PECAM-1+SSEA-1+の細胞のみが高い頻度で原始外胚葉に分化しているのが観察された。これら事実から、PECAM-1とSSEA-1の発現レベルがES細胞の多能性と密接に関わっていることが示唆された。
即ち、本発明者らは、単一のES細胞株には、細胞表面マーカーにより分画される性質の異なる細胞亜集団が存在し、ES細胞株によるキメラ形成率の相違は、細胞株としての性質によるのではなく、それらに含まれる亜集団の構成の違いを反映したものであることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明によれば、適切な細胞表面マーカーを選択し、これを利用してES細胞を分画して高率にキメラを形成する細胞集団を分取することが可能となる。
本発明は、キメラ形成能の高い、核移植により正常個体を形成する等の特徴を持った未分化細胞を選別する方法に関し、より詳しくは、以下に掲げられた発明に関する。
(1) 未分化細胞を細胞表面抗原に対する抗体により染色し、その染色の有無により該未分化細胞を選別する、未分化細胞の選別方法。
(2) 細胞表面抗原がPECAM-1、SSEA-1、SSEA-3およびSSEA-4からなる群より選択される、(1)に記載の方法。
(3) 未分化細胞が哺乳動物由来の胚性幹細胞(ES細胞)または生殖幹細胞(EG細胞)である、(1)に記載の方法。
(4) 未分化細胞が遺伝子組換体である、(1)に記載の方法。
(5) PECAM-1、SSEA-1、SSEA-3およびSSEA-4からなる群より選択される細胞表面抗原のうち、少なくともPECAM-1が陽性の未分化細胞を分取する、(1)に記載の方法。
(6) PECAM-1およびSSEA-1が陽性の未分化細胞を分取する、(5)に記載の方法。
(7) PECAM-1、SSEA-3およびSSEA-4が陽性の未分化細胞を分取する、(5)に記載の方法。
(8) (5)から(7)のいずれかに記載の方法により分取された未分化細胞。
(9) (8)に記載の未分化細胞の、受精胚への注入または受精胚との凝集により構築されるキメラ胚。
(10) (8)に記載の未分化細胞の、染色体を除去した未受精胚への注入または該未受精胚との融合により構築される核移植胚。
(11) (8)に記載の未分化細胞を、体外培養あるいは生体内移植により分化誘導することにより構築される分化組織複合体。
(12) (10)に記載の核移植胚が移植された仮腹動物。
(13) (12)に記載の仮腹動物から取得される胎子、産子またはそれらの子孫。
本発明により、未分化細胞を細胞表面マーカーを指標に選別することで、高率にキメラを形成する細胞集団を分取することが可能となった。未分化細胞は、組換え動物の作出の媒体として用いられているが、本発明の方法により分取された未分化細胞を用いれば、効率的に組み換え動物を作出することが可能となる。また、これにより組換え動物の作出までのコストを削減することも可能となる。
本発明は、キメラ形成能の高い、核移植により正常個体を形成する等の特徴を持った未分化細胞を選別する方法に関する。本発明の方法に用いる未分化細胞としては、ES細胞及びEG細胞等が挙げられるが、それらの細胞の起源となる動物種は限定されない。また、遺伝子組み換え動物を作出するために用いた遺伝子組換体(例えば、相同組換えにより遺伝子がゲノム上に導入された未分化細胞)であってもよい。未分化細胞の選別は、細胞表面抗原を指標として行う。通常、細胞表面抗原に対する抗体により細胞を染色し、その染色の有無により細胞を選別する。細胞表面抗原は、キメラ形成能の高いあるいは核移植により正常個体を形成する等の個体の再生能の高い未分化細胞を選別しうる限り特に制限はないが、好ましくはPECAM-1、SSEA-1、SSEA-3およびSSEA-4からなる群より選択される細胞表面抗原である。例えば、特異抗体により染色される細胞表面マーカーはマウスの場合、PECAM-1およびSSEA-1が好適に用いられる。他の動物種では、たとえばヒトでは未分化細胞においてSSEA-1は検出されないことから、SSEA-1に代えて、SSEA-3およびSSEA-4が好適に用いられる。特異抗体により染色された未分化細胞の分取法は特に限定されるものではなく、主として蛍光励起細胞分取装置が用いられるが、簡便には免疫磁気ビーズを用いた分取装置やそれに類した分取装置の利用も可能である。
蛍光励起細胞の分取は、例えば、次のようにして行うことができる。培養中の細胞を、PBSで4倍希釈した酵素溶液、Accutase(Innovative Cell Technologies, La Jolla, CA, USA)で処理して単一細胞に分散する。細胞を遠心分離して集め、0.2% Bovine Serum Albmin 添加PBSに再浮遊させ、抗体染色処理を行う。例えば、PECAM-1とSSEA-1の二重染色においては、まず、R-phycoerythrin標識抗マウスPECAM-1抗体と抗SSEA-1抗体を細胞浮遊液に添加し、氷冷下、30分間インキュベートする。次いで、0.2% Bovine Serum Albmin を添加したPBSで洗浄後、再浮遊させ、これにFluorescein Isothiocyanate (FITC)標識抗マウスIgM抗体を加え、氷冷下、30分間インキュベートする。そして、0.2% Bovine Serum Albminを添加したPBSで洗浄後、再浮遊させて蛍光励起細胞分取を行う。一方、免疫磁気ビーズを用いた分取においては、例えば、まず、一次抗体として標識抗マウスPECAM-1抗体あるいは抗SSEA-1抗体を細胞に結合させる。次いで、それぞれ、抗マウスIgG抗体結合磁気ビーズあるいは抗マウスIgM抗体結合磁気ビーズを結合させる。
分取された未分化細胞は、キメラ胚の構築に利用することができる。分取された未分化細胞を利用してキメラ胚を構築する手法は、ホストとなる胚の発生段階に応じて大きくは2つの方法に分かれる(マウス胚の操作マニュアル 山内一也ら訳 近代出版(1994)、ジーンターゲッティング 相沢慎一著 羊土社(1995)、胚と個体の遺伝子操作法 近藤寿人編 シュプリンガー・フェアラーク東京(1997)、ジーンターゲッティングの最新技術 八木 健編 羊土社(2000)参照のこと)。すなわち、ホストが胚盤胞の場合、マイクロマニピュレーターを用い、1個から10個のES細胞をガラス製インジェクションピペットで胞胚腔(胚盤胞に形成られる空胞)に注入する(所謂注入法)。ホストが胚盤胞以前の発育段階の胚(ほとんどは8細胞期胚)を用いる場合、酸性タイロード液で処理して透明帯を除去した胚とES細胞を集合接着させる(所謂集合法)。また、透明帯を除去せず、透明帯と胚の間の空間(囲卵腔)にES細胞を注入する方法がとられる場合もある。
また、分取された未分化細胞は、核移植胚の構築に利用することもできる。未分化細胞を利用して核移植胚の構築する手法としては、以下が挙げられる(ジーンターゲッティングの最新技術 八木 健編 羊土社(2000)、幹細胞・クローン研究プロトコール 中辻憲夫編 羊土社(2001)参照のこと)。まず、マウスの成熟卵子からマイクロマニピュレーターを用いて、第2減数分裂中期の染色体をガラスピペットで吸引して除去する。次に、ES細胞の核をピエゾドライブに接続した注入ピペットに吸引し、染色体を除去した卵子の細胞質に注入する。別の方法として、1個のES細胞を不活化したHVJウイルス粒子とともに染色体を除去した卵子の囲卵腔に注入して、細胞融合によりES細胞の核を卵子の細胞質に移植してもよい。また、HVJの代わりに、電気パルス刺激によりES細胞と卵子との細胞融合を誘導してもよい。このようにして調製された核移植胚は、仮腹動物に移植することにより、発生させて胎子や産子を得ることができる。本発明には、このように核移植胚が移植された仮腹動物および該仮腹動物から取得される胎子、産子またはそれらの子孫が含まれる。
また、分取された未分化細胞を、体外培養あるいは生体内移植を利用して分化誘導することにより分化組織複合体(未分化細胞に由来する様々な分化組織を含む細胞構造体)を構築することができる(幹細胞・クローン研究プロトコール 中辻憲夫編 羊土社(2001))。例えば、ES細胞は、免疫不全マウスの皮下や腎臓皮膜下に注入することにより、様々な筋、心や骨など様々な分化組織を含む奇形腫を形成させることができる。
分化組織複合体は、このような生体内移植のみならず、体外培養(生体内に移植することなく、培養皿の上で分化誘導すること)により構築することもできる。例えば、通常のES細胞培養系からフィーダー細胞やLIF等、細胞の分化を抑制する因子を取り除き、非細胞接着状態で培養することにより、3胚葉性に分化した組織が含まれる胚様体と呼ばれる比較的単純な構造の分化組織複合体を形成させることができる。これを、ラミニンやフィブロネクチン等の基質上で、レチノイン酸やアクチビン等の分化誘導物質を添加した培地を用いて培養を継続することにより、神経系や血球系の細胞等分化した細胞が得られる。また、このように胚様体を経由した分化誘導だけでなく、特殊なフィーダー細胞と増殖因子等の組合せにより、ES細胞から直接目的の分化細胞を得ることもできる。さらに、ES細胞を、コラーゲンゲルやガーゼを用いた多機能性の3次元培養基質等を用いて培養することにより、ES細胞を生体内に移植した場合に得られ奇形腫と同様の分化組織複合体を得ることが可能となる。
EG細胞を利用した、キメラ胚の構築、核移植胚の構築、分化組織複合体の構築についても、ES細胞と同様に行うことができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
[実施例1] ES細胞にはPECAM-1とSSEA-1の発現量が異なる亜集団が存在する
ES細胞(ROSA26xCBAF1系マウス胚盤胞由来)とEG(TM1)細胞はフィーダー細胞(STO)上で培養し、培地には20%KSR添加ES培地を用いた。EC(F9)細胞はゼラチンコートディッシュ上で2-ME、NEAA添加高グルコースDME培地で培養した。細胞をAccutase (Innovative Cell Technologies)で分散し、PE標識抗PECAM-1抗体(40ng/106 cells, Pharmingen)および抗SSEA-1抗体(200ng/106 cells, Kyowa Medex)で染色した。FITC標識2次抗体(抗マウスIgM, 100ng/106 cells, Pharmingen)で染色後、フローサイトメトリーによる解析を行った。
このようにしてES細胞を種々の細胞表面マーカーで染色したところ、PECAM-1とSSEA-1の発現に大きなばらつきがあることがわかった(図1)。 ES、EG(TM1)およびEC(F9)細胞のPECAM-1とSSEA-1の二重染色パターンを示した。ES細胞では約80%がPECAM-1陽性を示し、そのうち15.2%がSSEA-1陽性であった。興味深いことに、SSEA-1陽性細胞のほとんどがPECAM-1陽性を示した。EG細胞はES細胞と似た染色パターンを示したが、全体にPECAM-1の発現が高く、SSEA-1陽性細胞の割合が低かった。EC細胞は他の2株と比較しPECAM-1の発現が低く、逆にSSEA-1陽性細胞の割合が高かった。
また、ES細胞を3つの亜集団に分けて培養し、4日後に再び回収して他の集団の細胞の出現頻度を調べた。その結果、いずれの集団の細胞からも他の2つの集団の細胞が出現し、PECAM-1とSSEA-1の発現はどちらも可逆的であることが分かった。しかしながら、PECAM-1陰性細胞は陽性細胞と比較して極端に増殖が遅く、陽性細胞の出現頻度も低いことから、一部の集団のみから再構成された可能性が示唆された。
[実施例2] PECAM-1陰性細胞は分化マーカーの発現が上昇している
ソーティングした細胞より全RNAを精製し、DNase処理後、常法によりcDNAを合成した。定量的PCRにはLightCycler(Roche社)を用いた。最初に増幅が認められたサイクル数をもとに、PECAM-1+SSEA-1-の値を100とし、Hprtの値で補正した相対値を示した。これにより、PECAM-1-SSEA-1-、PECAM-1+SSEA-1-およびPECAM-1+SSEA-1+の各ポピュレーション間で、分化を制御・反映する遺伝子の発現に差があるかを調べた(図2)。
その結果、PECAM-1陰性の細胞はGata4(原始内胚葉、心臓、平滑筋)、Collagen typeIV (原始内胚葉)、Activin (原始外胚葉)、Brachyury (中胚葉)などの分化マーカー遺伝子の発現が増加していた。逆にOct3/4やRex1遺伝子の発現は減少しており、分化傾向にある細胞集団であることが確認された。PECAM-1+SSEA-1-とPECAM-1+SSEA-1+の細胞はほぼ同じ値を示したが、Gata4、Brachyury、Bmp4およびTnfRIIなど一部のマーカーで発現に差が認められた。
[実施例3] Oct3/4はPECAM-1の発現制御に直接関与していない
ZHBTc4は20%FCS添加ES培地を用い、ゼラチンコートディッシュで常法に従って培養した。Dox(1mg/ml)を添加後、12時間おきに48時間後まで細胞を経時的に回収し、フローサイトメトリーによってPECAM-1の発現量を調べた。さらに全RNAを採取し、定量的RT-PCRによって遺伝子発現の経時変化を調べた。誘導前の発現量を100とし、Hprtで補正した値を示した。フローサイトメトリー及び定量的RT-PCRの条件は実施例1および2と同様である。
テトラサイクリンによってOct3/4の発現をコントロールできるES細胞株、ZHBTc4株(Niwa, H., Miyazaki, J. & Smith, A. G. Nat Genet 24, 372-6 (2000))(理研・丹羽博士より供与)を用い、PECAM-1の発現制御にOct3/4が関わっているかを調べた(図3)。
PECAM-1の発現の経時変化を検出した結果、誘導前は高いPECAM-1の発現が認められた。ZHBTc4株はOct3/4のアリルがどちらも破壊されており、PECAM-1の高発現はPECAM-1がOct3/4の発現制御に関与していないことを示している。誘導開始後約36時間後に減少が確認され、48時間後には完全にピークがシフトした。これは細胞の接着性や形態の変化と一致した。
Oct3/4、Pecam-1、Rex1及びHand1の遺伝子発現の経時変化を検出したところ、Oct3/4の発現量は誘導開始後12時間で、すでに1/200以下まで減少しており、Oct4の直接の制御を受けているRex1やHand1も著しい変化が認められた。それに対してPecam-1は12時間後では全く変化が認められず、差が認められるのは24時間後からであった。この結果から、ES細胞におけるPECAM-1の発現はOct3/4の直接的な支配を受けていないことが示唆された。
[実施例4] PECAM-1陽性細胞は原始外胚葉に取り込まれる
ホスト胚にはICRマウスの8細胞期胚 (2.5d.p.c.)を用いた。注入後、10%FCS添加M16培地で培養し、18あるいは36時間後に0.2% NP-40,0.1% glutaraldehyde-PBSで固定してX-gal染色に供した。一部の胚はレシピエントマウス(ICR)の子宮に移植し、4日後(6.0-7.0d.p.c.)に胚を回収してx-gal染色を行った(ES細胞注入後、36時間目の胚のX-gal染色像を図4に示す)。
その結果、PECAM-1陽性細胞はEPに取り込まれる率が高いのに対し(PECAM-1+SSEA-1-,40.5%;PECAM-1+SSEA-1-,50%)、PECAM-1陰性細胞はPE(25.7%)あるいはTE(65.7%)に局在する傾向がみられた(表1)。
[実施例5] PECAM-1+SSEA-1+細胞は高頻度に原始外胚葉へ分化する
6.0-7.0日胚におけるES由来細胞の寄与率および寄与部位を調べた。その結果、PECAM-1+SSEA-1+の細胞は、β-gal陽性細胞が検出されたすべての胚(16.7%)において原始外胚葉への分化が認められ、そのほとんどを占有していた(iv,v)。一方、PECAM-1-/+SSEA-1-の細胞はβ-gal陽性となる胚が少なく、発生が進む過程で細胞が脱落している可能性が示唆された。原始外胚葉に分化した1例でも占有率が低く、また、臓側内胚葉(viceral endoderm)や壁側内胚葉(pariental endoderm)など、原始外胚葉以外の組織への分化が認められた。6.0および7.0日マウス胚の組織の模式図を図5に、移植後4日目に回収した胚のX-gal染色像を図6に、β-gal陽性細胞の出現頻度を表2に示す。
〔実施例6〕 ES細胞分画の性質の違いがキメラ個体の形成に反映する
ES細胞の応用を考える上で、キメラ個体の形成効率の向上は大きなメリットとなる。そこで実際に分画濃縮したPECAM-1+SSEA-1+細胞を用いてキメラ個体を作出し、その効率を調べた。
ES細胞にはTT2株 (C57BL/6xCBAF1系マウス胚盤胞由来)用い、セルソーターによってPECAM-1+SSEA-1+を示す細胞を分画した。濃縮をかけない細胞集団(生細胞、PI-画分)を対照区とした。ホスト胚(ICRマウス8細胞期胚、2.5d.p.c.)1個当たりES細胞を5個注入し、10%FCS添加M16培地で培養した。18-36時間後、胚盤胞期まで発生した胚をレシピエントマウスの子宮に移植し、自然分娩によりキメラ産子を得た。また、得られたキメラマウスについて、ES細胞が生殖系列に寄与しているか否かを交配試験により調べた。
その結果、分画しない対照ES細胞のキメラ形成率は10%(3/30)であった。これに対してPECAM-1+SSEA-1+細胞を用いた場合は35%(8/23)で、明らかな形成率の向上が認められた。また、PECAM-1+SSEA-1+細胞より得られたキメラマウス6頭のうち2頭(33.3%)が生殖系列キメラであることが確認された(表3)。この結果は対照区と変わらなかったが、育成中に事故死した2頭についても、ES細胞の寄与率が極めて高い個体であったことから、実際の生殖系列キメラの割合は33.3%よりも高いと推察される。
このように、PECAM-1とSSEA-1の2種類の細胞表面マーカーでソートしたES細胞分画の性質の違いが、キメラ個体の形成に反映することが示された。
Aは、ES、EG(TM1)およびEC(F9)細胞のPECAM-1とSSEA-1の二重染色パターンを示した図である。Bは、ES細胞を3つの亜集団に分けて培養し、4日後に再び回収して他の集団の細胞の出現頻度を調べた結果を示す図である。 PECAM-1-SSEA-1-、PECAM-1+SSEA-1-およびPECAM-1+SSEA-1+の各ポピュレーションにおいて、分化を制御・反映する遺伝子の発現を検出した結果を示す図である。 Aは、ES細胞株におけるPECAM-1の発現の経時変化を検出した結果を示す図である。Bは、Oct3/4、Pecam-1、Rex1及びHand1の遺伝子発現の経時変化を検出した結果を示す図である。 ES細胞注入後、36時間目の胚のX-gal染色像の写真である。 6.0および7.0日マウス胚の組織の模式図である。 移植後4日目に回収した胚のX-gal染色像の写真である。 PECAM-1+SSEA-1+分画ES細胞由来キメラマウスの例を示す写真である。

Claims (12)

  1. 以下の工程を含む、マウスのキメラ胚を製造する方法:
    (a)PECAM-1 及びSSEA-1 のES細胞、PECAM-1 及びSSEA-1 のES細胞、並びにPECAM-1 及びSSEA-1 のES細胞を含むマウスES細胞の集団を得る工程;
    (b)工程(a)のES細胞の集団を選別して、PECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞の分画を得る工程;
    (c)工程(b)のPECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞を、マウスの胚に導入し、該胚を発育させる工程;及び
    (d)工程(c)の発育した胚からキメラ胚を選択する工程。
  2. 工程(c)におけるPECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞のマウスの胚への導入が、該ES細胞のマウスの胚への注入による、請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程(c)におけるPECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞のマウスの胚への導入が、該ES細胞と透明帯を除去したマウスの胚との凝集による、請求項1に記載の製造方法。
  4. マウスES細胞が、C57BL/6マウス由来である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. マウスES細胞が、TT2株である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. マウスの胚が、ICRマウス由来の胚である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 以下の工程を含む、キメラマウスを製造する方法:
    (a)PECAM-1 及びSSEA-1 のES細胞、PECAM-1 及びSSEA-1 のES細胞、並びにPECAM-1 及びSSEA-1 のES細胞を含むマウスES細胞の集団を得る工程;
    (b)工程(a)のES細胞の集団を選別して、PECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞の分画を得る工程;
    (c)工程(b)のPECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞を、マウスの胚に導入し、該胚を発育させる工程;
    (d)工程(c)の発育した胚を、仮腹マウスの子宮に移植する工程;及び
    (e)仮腹マウスからの産子からキメラマウスを選択する工程。
  8. 工程(c)におけるPECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞のマウスの胚への導入が、該ES細胞のマウスの胚への注入による、請求項7に記載の製造方法。
  9. 工程(c)におけるPECAM-1 及びSSEA-1 のマウスES細胞のマウスの胚への導入が、該ES細胞と透明帯を除去したマウスの胚との凝集による、請求項7に記載の製造方法。
  10. マウスES細胞が、C57BL/6マウス由来である請求項7乃至9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. マウスES細胞が、TT2株である請求項7乃至10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. マウスの胚が、ICRマウス由来の胚である請求項7乃至11のいずれか一項に記載の製造方法。
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