以下、本発明の実施の形態について、実施例及び図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する場合がある。
(実施の形態)
[1.概要]
[1−1.構成]
図1は、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xの構成図である。なお、同図には、後述する初段のフィルタ11a(第1弾性波フィルタ)及び後段のフィルタ13a(第2弾性波フィルタ)それぞれの一部構成図も併せて図示されている。
高周波フロントエンド回路2Xは、アンテナ素子(図示せず)とRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit、図示せず)との間で高周波信号を伝達する回路であり、例えば、マルチバンド対応の携帯電話のフロントエンド部に配置される高周波モジュールである。この高周波フロントエンド回路2Xは、複数の周波数帯域を同時に用いるCA等の通信方式に適用することができる。CA等の通信方式とは、複数の周波数帯域を同時に送信、受信、または送受信する通信方式である。
本実施の形態では、高周波フロントエンド回路2Xは、LTE(Long Term Evolution)に対応し、3GPP(Third Generation Partnership Project)にて規定されたBand(周波数帯域)の高周波信号を伝達する。具体的には、高周波フロントエンド回路2は、受信系に配置され、アンテナ素子で受信されてINPUT端子101Xに入力された高周波信号(ここでは高周波受信信号)を、所定の周波数帯域でフィルタリングして複数の個別端子(BandA1端子、BandA2端子、BandB1端子、BandB2端子、等)から増幅器(例えばローノイズアンプ、図示せず)を介してRFICに出力する。
なお、以下では、「3GPPで規定されるBand」を単に「Band」と称し、各Bandの受信帯域を、例えばBand**の受信帯域については「Band**」または「B**」のように、簡略化して称する場合がある。
以下、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路の概要について、適宜比較例を用いて説明する。なお、本実施の形態に係るフィルタの具体例については、実施例を挙げて後述する。
同図に示す高周波フロントエンド回路2Xは、フィルタ11a及び11b等の複数の初段のフィルタ(第1弾性波フィルタ)と、フィルタ13a〜13d等の複数の後段のフィルタ(第2弾性波フィルタ)と、初段のフィルタと後段のフィルタとの間に配置されたスイッチ21a及び21b等の複数のスイッチを備える。つまり、高周波フロントエンド回路2Xは、初段のフィルタ、スイッチ及び複数の後段のフィルタからなる組を複数組(例えば4組)備える。なお、上記の組の個数は2以上であれば特に限定されず、後段のフィルタの個数も各組に2以上であれば特に限定されない。ただし、以下では、簡明のために、高周波フロントエンド回路2Xを構成する構成要素のうち、フィルタ11aとスイッチ21aとフィルタ13a、13bとからなる組、及び、フィルタ11bとスイッチ21bとフィルタ13c、13dからなる組に着目して説明する。
フィルタ11a及び11b等の複数の初段のフィルタは、一方の端子(本実施の形態では入力端子)が共通接続され、かつ、互いに異なる通過帯域を有する弾性波フィルタである。これら複数の初段のフィルタは、高周波信号を分波または合波する(本実施の形態では分波する)、例えばCAの周波数割当に対応したマルチプレクサ14Xを構成する。複数の初段のフィルタは、マルチプレクサ14Xの共通接続点N(例えばマルチプレクサ14Xの共通端子)で共通接続され、共通接続点Nを介して高周波フロントエンド回路2XのINPUT端子に接続されている。
具体的には、フィルタ11aは、入力端子が共通接続点Nを介してINPUT端子101Xに接続され、出力端子がスイッチ21aに接続され、通過帯域としてBandAを有する。フィルタ11bは、入力端子が共通接続点Nを介してINPUT端子101Xに接続され、出力端子がスイッチ21bに接続され、通過帯域としてBandAと異なるBandBを有する。
ここで、「互いに異なる通過帯域」とは、周波数帯域が完全に離間した通過帯域だけでなく、周波数帯域の少なくとも一部が重複する通過帯域も含む。
なお、複数の初段のフィルタは、INPUT端子で共通接続されていてもかまわない。つまり、INPUT端子が共通接続点Nであってもかまわない。
フィルタ13a〜13d等の複数の後段のフィルタのそれぞれは、初段のフィルタの通過帯域内に通過帯域を有する弾性波フィルタである。これら複数の後段のフィルタは、本実施の形態では、マルチプレクサ14Xで分波された高周波信号を、マルチプレクサ14Xを構成する初段のフィルタの通過帯域よりも狭帯域の通過帯域でフィルタリングする。このような後段のフィルタは、例えば各Bandの周波数割当に対応したフィルタ回路15Xを構成する。複数の後段のフィルタそれぞれは、当該後段のフィルタと同一の組を構成する初段のフィルタの通過帯域内に通過帯域を有する。つまり、後段のフィルタの通過帯域は、スイッチによって当該後段のフィルタに接続され得る初段のフィルタの通過帯域に包含される。また、同一の組を構成する複数の後段のフィルタは、互いに異なる通過帯域を有する。
具体的には、フィルタ13aは、入力端子がスイッチ21aを介してフィルタ11aに接続され、出力端子がBandA1端子に接続され、通過帯域としてフィルタ11aの通過帯域BandAに包含されるBandA1を有する。フィルタ13bは、入力端子がスイッチ21aを介してフィルタ11aに接続され、出力端子がBandA2端子に接続され、通過帯域としてフィルタ11aの通過帯域BandAに包含されるBandA2(ただしBandA1とは異なる)を有する。フィルタ13cは、入力端子がスイッチ21bを介してフィルタ11bに接続され、出力端子がBandB1端子に接続され、通過帯域としてフィルタ11bの通過帯域BandBに包含されるBandB1を有する。フィルタ13dは、出力端子がBandB2端子に接続され、入力端子がスイッチ21bを介してフィルタ11bに接続され、通過帯域としてフィルタ11bに包含されるBandB2(ただしBandB1とは異なる)を有する。
これら初段のフィルタ及び後段のフィルタのそれぞれは、1以上の弾性波共振子によって構成され、例えば、弾性表面波、バルク波あるいは弾性境界波を用いた共振子によって構成される。
つまり、初段のフィルタ及び後段のフィルタは、SAW(Surface Accoustic Wave)フィルタやBAW(Bulk Accoustic Wave)フィルタであってもよい。
SAWフィルタの場合、圧電基板とIDT(Interdigital transducer)電極とによってフィルタを構成してもよいし、少なくとも一部に圧電性を有する積層型の基板とIDT電極とによってフィルタを構成してもよい。少なくとも1部に圧電性を有する積層型基板とは、圧電薄膜を伝搬する弾性波音速より伝搬するバルク波音速が高速である高音速支持基板と、高音速支持基板上に積層されており、圧電薄膜を伝搬する弾性波音速より伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜と、低音速膜上に積層された圧電薄膜と、で構成された基板をいう。ここで、高音速支持基板は、後述する、高音速膜と支持基板の双方を兼ねている。
また、上記の他に、少なくとも1部に圧電性を有する積層型基板として、支持基板と、支持基板上に形成されており、圧電薄膜を伝搬する弾性波音速より伝搬するバルク波音速が高速である高音速膜と、高音速膜上に積層されており、圧電薄膜を伝搬する弾性バルク波音速より伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜と、低音速膜上に積層された圧電薄膜と、で構成された積層体であってもよい。
また、上記の他に、少なくとも1部に圧電性を有する積層型基板として、支持基板と、支持基板上に形成されており、圧電薄膜を伝搬する弾性波音速より伝搬するバルク波音速が高速である高音速膜と、高音速膜上に積層されており、圧電薄膜を伝搬する弾性波音速より伝搬するバルク波音速が低速である低音速膜と、低音速膜上に積層された圧電薄膜と、で構成された積層体であってもよい。
IDT電極としては、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Ti、Ni、Cr、Mo、Wまたはこれらの金属のいずれかを主体とする合金などの適宜の金属材料により形成することができる。また、IDT電極は、これらの金属もしくは合金からなる複数の金属膜を積層した構造を有していてもよい。
圧電薄膜としては、LiTaO3、LiNbO3、ZnO、AlN、または、PZTのいずれかの材料からなる。
低音速膜としては、酸化ケイ素、ガラス、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化ケイ素にフッ素または炭素またはホウ素を加えた化合物、または、上記各材料を主成分とする材料のいずれかからなる。
高音速支持基板としては、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリコン、サファイア、リチウムタンタレート、リチュウムニオベイト、水晶等の圧電体、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト等の各種セラミック、マグネシアダイヤモンド、または、上記各材料を主成分とする材料、上記各材料の混合物を主成分とする材料のいずれかからなる。
高音速膜としては、DLC膜、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、シリコン、サファイア、リチウムタンタレート、リチュウムニオベイト、水晶等の圧電体、アルミナ、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト等の各種セラミック、マグネシアダイヤモンド、または、上記各材料を主成分とする材料、上記各材料の混合物を主成分とする材料のいずれかからなる。
支持基板としては、サファイア、リチウムタンタレート、リチュウムニオベイト、水晶等の圧電体、アルミナ、マグネシア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト等の各種セラミック、ガラス等の誘電体またはシリコン、窒化ガリウム等の半導体及び樹脂基板等を用いることができる。
圧電薄膜の膜厚は、IDT電極の電極周期で定まる弾性波の波長をλとしたときに、3.5λ以下であることが望ましい。なぜならば、Q値が高くなるためである。また、2.5λ以下とすることで、温度特性(TCF)が良くなる。さらに、1.5λ以下とすることで、音速の調整が容易になる。
低音速膜の膜厚は、IDT電極の電極指周期で定まる弾性波の波長をλとすると、2.0λ以下であることが望ましい。低音速膜の膜厚を2.0λ以下とすることにより、膜応力を低減することができ、その結果、ウエハの反りを低減することが可能となり、良品率の向上及び特性の安定化が可能となる。また、低音速膜の膜厚が0.1λ〜0.5λの範囲内であれば、高音速膜の材質の如何に関わらず、電気機械結合係数はほとんど変わらない、という効果もある。
高音速膜の膜厚に関しては、弾性波を圧電薄膜及び低音速膜に閉じ込める機能を高音速膜が有するため、高音速膜の膜厚は厚いほど望ましい。高音速膜の膜厚を0.3λ以上にすることで、共振点でのエネルギー集中度を100%とすることができる。さらに、0.5λ以上とすることにより、反共振点でのエネルギー集中度も100%とすることができ、さらに良好なデバイス特性を得ることができる。
これに関し、図1の上段に示すように、初段のフィルタ(第1弾性波フィルタ)を構成する1以上の弾性波共振子のうち最もスイッチ側に配置された第1弾性波共振子、及び、後段のフィルタ(第2弾性波フィルタ)を構成する1以上の弾性波共振子のうち最もスイッチ側に配置された第2弾性波共振子は、いずれも直列腕共振子である。
例えば、フィルタ11aは上記の第1弾性波共振子として直列腕共振子s11を有し、フィルタ13aは上記の第2弾性波共振子として直列腕共振子s13を有する。つまり、直列腕共振子s11とスイッチ21aの共通端子とは、他の弾性波共振子を介することなく接続されている。また、スイッチ21aの一の選択端子と直列腕共振子s13とは、他の弾性波共振子を介することなく接続されている。よって、スイッチ21aよって共通端子と当該一の選択端子とが接続された場合、つまりフィルタ13aが選択された場合、フィルタ11aとフィルタ13aとは、他の弾性波共振子を介することなく直列腕共振子s11と直列腕共振子s13とで接続されることとなる。
これにより、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xによれば、フィルタ13aが選択された場合に、INPUT端子101Xから選択されたフィルタ13a側を見たときのフィルタ11aの通過帯域外(ここではBandA外)における反射係数を高めることができる。つまり、複数の初段フィルタによって構成されるマルチプレクサ14Xを共通接続点Nから見ると、ある後段フィルタが選択された場合に、当該後段フィルタに接続された初段フィルタの通過帯域外における反射係数を高めることができる。なお、このことの詳細については、実施例にて説明する。
また、初段のフィルタにおいて最もスイッチ側に配置された弾性波共振子(第1弾性波共振子)の容量値と後段のフィルタにおいて最もスイッチ側に配置された弾性波共振子(第2弾性波フィルタ)の容量値とは、略同等である。例えば、フィルタ11aの直列腕共振子s11の容量値とフィルタ13aの直列腕共振子s13の容量値とは、略同等である。
ここで、弾性波共振子の容量値とは、当該弾性波共振子の静電容量の値である。つまり、弾性波共振子の共振点及び反共振点から十分に離れた周波数における容量値である。弾性波共振子の静電容量の値は、例えば、弾性表面波を用いた弾性波共振子の場合には、IDT(Interdigital Transducer)電極の対数及び交叉幅等の設計パラメータによって調整することができる。また、「略同等」とは、完全に同じであることだけでなく、±10%程度の誤差を含む。
スイッチ21a、21b等の複数のスイッチのそれぞれは、初段のフィルタの他方の端子(本実施の形態では出力端子)に接続された共通端子、及び、後段のフィルタに接続された選択端子を含む複数の選択端子(本実施の形態では、同一の組を構成する2つの後段のフィルタに接続された2つの選択端子)を有する。これら複数のスイッチは、高周波フロントエンド回路2Xが伝達する高周波信号のBandを選択するBandセレクトスイッチであるスイッチ回路21Xを構成する。このスイッチ回路21Xは、RFIC等の制御部からの制御信号に応じて、共通端子と接続される選択端子を切り替えることにより、上記高周波信号のBandを切り替える。言い換えると、スイッチ回路21Xは、高周波フロントエンド回路2Xにおける高周波信号の伝送経路を切り替える。
本実施の形態では、スイッチ21a及び21bそれぞれは、1つの共通端子と2つの選択端子とを有する。なお、選択端子の個数は、これに限定されず、上述した同一の組を構成する後段のフィルタの個数と同数以上であればよい。
具体的には、スイッチ21aは、共通端子がフィルタ11aの出力端子に接続され、一方の選択端子がフィルタ13aの入力端子に接続され、他方の選択端子がフィルタ13bの入力端子に接続されている。スイッチ21bは、共通端子がフィルタ11bの出力端子に接続され、一方の選択端子がフィルタ13cの入力端子に接続され、他方の選択端子がフィルタ13dの入力端子に接続されている。
また、スイッチ回路21Xを構成する各スイッチは、共通端子が複数の選択端子のいずれとも接続されない非接続時において、初段のフィルタ側(第1弾性波フィルタ側)から見たインピーダンスが容量性を有し、スミスチャート上で右半分の領域に位置する。なお、このことの詳細については、実施例にて説明する。
具体的には、上記の非接続時において、初段のフィルタ側(第1弾性波フィルタ側)から当該スイッチを見たインピーダンスは、当該スイッチと接続される後段のフィルタの最もスイッチ側に配置された弾性波共振子(第2弾性波共振子)の容量値と略同等である。例えば、スイッチ21aは、非接続時において、フィルタ11aから見たインピーダンスが後段のフィルタ13a及び13bと略同等である。言い換えると、非接続時において、スイッチ21aのオフ容量値は、第2弾性波共振子の容量値と略同等である。つまり、非接続時において、スイッチ21aのインピーダンスをZとし、スイッチ21aの等価回路において抵抗値をRとしオフ容量値をCとすると、ZはR及びCを用いて次の式で表すことができる。
Z=R+(1/jωC)
このとき、|R|<<|1/jωC|であるため、スイッチ21aのインピーダンスはオフ容量値によって支配的に決定されることになる。このため、スイッチ21aについて、非接続時におけるフィルタ11aから見たインピーダンスとオフ容量値とは同等となる。
以上、高周波フロントエンド回路2Xの構成について説明したが、当該高周波フロントエンド回路2Xの構成はこれに限らない。例えば、高周波フロントエンド回路2Xは、送信系に設けられていてもよい。この場合、上記INPUT端子101Xは高周波信号(この場合には高周波送信信号)が出力されるOUTPUT端子となる。つまり、高周波フロントエンド回路2Xは、RFICから出力されて増幅器(例えばパワーアンプ)で増幅されて複数の個別端子(BandA1端子、BandA2端子、BandB1端子、BandB2端子、等)に入力された高周波信号を、所定の周波数帯域でフィルタリングしてOUTPUT端子からアンテナ素子に出力してもかまわない。
[1−2.動作]
次に、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xの動作について、スイッチ回路21Xを構成するスイッチの詳細な構成も含めて説明する。
高周波フロントエンド回路2Xは、RFIC等の制御部(図示せず)からの制御信号にしたがって、次のように動作する。
すなわち、スイッチ回路21Xによって、フィルタ回路15Xを構成する複数の後段フィルタのうち2以上の後段フィルタが選択される第1接続形態と、フィルタ回路15Xを構成する複数の後段フィルタのうち1つの後段フィルタのみが選択される第2接続形態とが切り替えられる。
[1−2−1.CA動作]
本実施の形態では、スイッチ回路21Xは、マルチプレクサ14Yを構成する複数の初段のフィルタのうち、一の初段のフィルタの通過帯域に含まれるBandと他の一の初段のフィルタの通過帯域に含まれるBandとのCAを行うときに、上記の第1接続形態となる。つまり、CA時には、スイッチ回路21Xを構成する複数のスイッチのうち2以上のスイッチにおいて共通端子がいずれかの選択端子と接続されることにより、2以上の後段フィルタが選択される。
図2Aは、実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2XにおけるCA時の状態を示す構成図である。なお、同図には、BandA1とBandB2とのCAにおけるBandB2の高周波信号(図中の「BandB2信号」)についても模式的に示されている。このことについては、図2Bについても同様である。
同図に示すように、このとき、スイッチ21aによってフィルタ13aが選択され、スイッチ21bによってフィルタ13dが選択されている。
上述したように、本実施の形態では、フィルタ11aの最もスイッチ21a側に直列腕共振子s11が配置され、フィルタ13aの最もスイッチ21a側に直列腕共振子s13が配置されている。このため、フィルタ13aが選択された場合に、INPUT端子101Xから選択されたフィルタ13a側を見たときのフィルタ11aの通過帯域外(ここではBandA外)における反射係数が高い。したがって、INPUT端子101Xに入力されたBandB2の高周波信号は、フィルタ11a側へ漏れにくく、主としてフィルタ11bを通過することとなる。
図2Bは、比較例1に係る高周波フロントエンド回路2Yにおいて、CA時の状態を示す構成図である。
比較例1に係る高周波フロントエンド回路2Yは、実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xに比べて、フィルタ11a及び13aに代わりフィルタ11y及び13yを備える。フィルタ11y及び13yの少なくとも一方は、最もスイッチ21a側に並列腕共振子が配置されている。
一方、上記の反射係数が低い比較例1の構成では、INPUT端子101Xに入力されたBandB2の高周波信号がフィルタ11a側に漏れてしまう。
このような構成では、INPUT端子101Xから選択されたフィルタ13a側を見たときのフィルタ11aの通過帯域外(ここではBandA外)における反射係数が低いため、INPUT端子101Xに入力されたBandB2の高周波信号がフィルタ11a側へ漏れてしまう。
したがって、比較例1に係る高周波フロントエンド回路2Yでは、フィルタ13yについては、通過帯域外のBandB2の高周波信号が漏れ込むことにより通過帯域外(BandA1外)の減衰量が小さくなるため、減衰特性が劣化してしまう。また、フィルタ13dについては、通過帯域のBandB2の高周波信号が漏れ出すことにより通過帯域内(BandB2内)の損失が大きくなるため、通過特性が劣化してしまう。その結果、比較例1に係る高周波フロントエンド回路2Yでは、CA時に高周波フロントエンド回路2Y全体の減衰特性及び通過特性の確保が難しい。
これに対して、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xによれば、フィルタ13aについては、通過帯域外のBandB2の高周波信号の漏れ込みが抑制されることにより通過帯域外(BandA1外)の減衰量を改善する(大きくする)ことができる。また、フィルタ13dについては、通過帯域のBandB2の高周波信号の漏れ出しが抑制されることにより通過帯域内(BandB2内)の損失を改善(抑制)することができる。したがって、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xによれば、比較例1に係る高周波フロントエンド回路2Yに比べて、CA時の減衰特性及び通過特性を改善することができる。
[1−2−2.非CA動作]
また、本実施の形態では、スイッチ回路21Xは、CAを行わないときに、上記の第2接続形態となる。つまり、非CA時には、スイッチ回路21Xを構成する複数のフィルタのうち1つのフィルタのみにおいて共通端子がいずれかの選択端子と接続され、他のフィルタにおいて共通端子がいずれの選択端子とも接続されない非接続となることにより、1つの後段フィルタのみが選択される。
ここで、実施の形態におけるスイッチ回路21Xを構成する各スイッチの構成について、スイッチ21aを例に説明する。なお、他のスイッチは、選択端子の個数が異なる場合がある点を除きスイッチ21aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
図3Aは、実施の形態におけるスイッチ21aの構成を示す回路図であり、同図の(a)には共通端子21acが選択端子211s、212sのいずれか(ここでは選択端子211s)と接続される接続時の状態が示され、同図の(b)には共通端子21acが選択端子211s、212sのいずれとも接続されない非接続時の状態が示されている。
同図に示すように、スイッチ21aは、オン及びオフにより、共通端子21acと選択端子211sとの接続(導通)及び非接続(非導通)を切り替えるSPST(Single-Pole,Single-Throw)型のメインスイッチ211を有する。また、スイッチ21aは、メインスイッチ211との排他的なオン及びオフにより、選択端子211sとグランドとの接続及び非接続を切り替えるSPST型のサブスイッチ211gを有する。また、スイッチ21aは、メインスイッチ211のオン及びオフに制約されないオン及びオフにより、共通端子21acと選択端子212sとの接続及び非接続を切り替えるSPST型のメインスイッチ212を有する。また、スイッチ21aは、メインスイッチ212SW2との排他的なオン及びオフにより、選択端子212sとグランドとの接続及び非接続を切り替えるSPST型のサブスイッチ212gを有する。
このようなスイッチ21aを構成する各スイッチ(メインスイッチ211及び212、サブスイッチ211g及び212g)としては、例えば、FET(Field Effect Transistor)スイッチ、または、ダイオードスイッチが挙げられる。また、スイッチ21aは、複数のスイッチを有するスイッチIC(Integrated Circuit)として構成されていてもかまわない。また、各スイッチは、半導体基板に形成された半導体スイッチに限らず、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で構成された機械式スイッチであってもかまわない。
このように構成されたスイッチ21aによれば、同図の(a)に示す接続時、すなわちメインスイッチ211がオンの時には、サブスイッチ211gがオフとなることにより、共通端子21acと選択端子211sとの間の接続を得る。一方、メインスイッチ211がオフの時、サブスイッチ211gがオンとなることにより、共通端子21acと選択端子211sとの間が非接続になると共に、共通端子21acと選択端子211sとの間のアイソレーションを得る。これらの事項は、選択端子211sに接続されているメインスイッチ211及びサブスイッチ211gに限らず、選択端子212sに接続されているメインスイッチ212及びサブスイッチ212gについても同様である。
また、同図の(b)に示す接続時、すなわちメインスイッチ211、212のいずれもオフの時には、サブスイッチ211g、212gのいずれもオンとなることにより、共通端子21acを選択端子211s、212sのいずれとも非接続とすると共に、共通端子21acと選択端子211s、212sとの間のアイソレーションを得る。
このとき、共通端子21acはグランドに接続されないOPEN状態となっている。つまり、共通端子21acの電位は、グランドから浮いたフロート電位となっている。これにより、本実施の形態におけるスイッチ21aは、初段のフィルタ側(すなわちマルチプレクサ14X側)から見て容量性を有することとなる。
これに対して、非接続時において、共通端子21acがグランドに接続されるSHORT状態となる比較例2のスイッチ21zを図3Bに示す。
図3Bは、比較例2におけるスイッチ21zの構成を示す回路図であり、同図の(a)には共通端子21acが選択端子211s、212sのいずれか(ここでは選択端子211s)と接続される接続時の状態が示され、同図の(b)には共通端子21acが選択端子211s、212sのいずれとも接続されない非接続時の状態が示されている。
同図に示す比較例2におけるスイッチ21zには、実施の形態におけるスイッチ21aと比べて、オン及びオフにより、共通端子21acとグランドとの接続及び非接続を切り替えるSPST型のサブスイッチ213gが設けられている。このサブスイッチ213gは、スイッチ21zの外部に設けられている。
このようなスイッチ21zによれば、同図の(a)に示す接続時、すなわちメインスイッチ211がオンの時には、サブスイッチ213gがオフとなる。一方、同図の(b)に示す接続時、すなわちメインスイッチ211、212のいずれもオフの時には、サブスイッチ213gがオンとなることにより、共通端子21acをグランドに接続するSHORT状態とする。
以下、非CA時の動作について、上記のスイッチ21aを備える実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xと上記のスイッチ21zを備える比較例2に係る高周波フロントエンド回路2Zとで比較して説明する。
図4Aは、実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xにおいて、非CA時の状態を示す構成図である。図4Bは、比較例2に係る高周波フロントエンド回路2Zにおいて、非CA時の状態を示す構成図である。なお、これらの図には、BandB2の非CAにおけるBandB2の高周波信号(図中の「BandB2信号」)についても模式的に示されている。つまり、ここでは、スイッチ21a及び21zは非接続となっており、スイッチ21bによってフィルタ13dが選択されている。
図4Aに示すように、実施の形態では、スイッチ21aの共通端子21acがOPEN状態となっている(図3A参照)ことにより、INPUT端子101Xから選択されたフィルタ13a側を見たときのフィルタ11aの通過帯域外(ここではBandA外)における反射係数が高くなっている。したがって、INPUT端子101Xに入力されたBandB2の高周波信号は、フィルタ11a側へ漏れにくく、主としてフィルタ11bを通過することとなる。
一方、図4Bに示すように、比較例2では、スイッチ21zの共通端子21acがSHORT状態となっている(図3B参照)ことにより、INPUT端子101Xに入力されたBandB2の高周波信号が共通端子21acからグランドに漏れ出してしまう。言い換えると、比較例では、共通端子21acがSHORT状態となっていることにより、INPUT端子101Xから選択されたフィルタ13a側を見たときのフィルタ11aの通過帯域外(ここではBandA外)における反射係数が低くなってしまう。
したがって、比較例2に係る高周波フロントエンド回路2Zでは、フィルタ13dについては、通過帯域のBandB2の高周波信号が漏れ出すことにより通過帯域内(BandB2内)の損失が大きくなるため、通過特性が劣化してしまう。その結果、比較例2に係る高周波フロントエンド回路2Zでは、非CA時に高周波フロントエンド回路2Y全体の通過特性の確保が難しい。
これに対して、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xによれば、フィルタ13dについては、通過帯域のBandB2の高周波信号の漏れ出しが抑制されることにより通過帯域内(BandB2内)の損失を改善(抑制)することができる。したがって、本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xによれば、比較例2に係る高周波フロントエンド回路2Zに比べて、非CA時の通過特性を改善することができる。
なお、スイッチ21aの外部には、比較例のスイッチ21zと同様にサブスイッチ213gが設けられていてもかまわない。このような構成であっても、非CA時にサブスイッチ213gがオフとなることにより、上記説明と同様の効果を奏することができる。
[2.実施例]
[2−1.構成]
次に、以上説明した本実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xの具体的な構成例について、実施例を挙げて説明する。
図5は、実施の形態の実施例に係る通信装置3の回路構成図である。同図に示す通信装置3は、実施例に係る高周波フロントエンド回路2と、高周波信号処理回路(RFIC)40とで構成されている。
高周波フロントエンド回路2は、アンテナ共通端子101と、ダイプレクサ10と、マルチプレクサ14と、スイッチ回路21および22と、フィルタ回路15と、増幅回路30とを備える。
ダイプレクサ10は、マルチプレクサ14の前段に設けられるマルチプレクサの一例であり、一方の端子が共通接続されかつ互いに異なる通過帯域を有する2つのフィルタを有する。当該2つのフィルタそれぞれの通過帯域は、後段に設けられるマルチプレクサ等を構成する複数のフィルタの通過帯域を包含する。具体的には、ダイプレクサ10は、高周波フロントエンド回路2のアンテナ共通端子101に接続され、ローパスフィルタ10A(通過帯域:699−960MHz)およびハイパスフィルタ10B(通過帯域:1475.9−2690MHz)で構成されている。
なお、マルチプレクサ14の前段に設けられるマルチプレクサは、ダイプレクサ10に限定されず、トリプレクサ、クアッドプレクサ、ペンタプレクサ以上のマルチプレクサでもよい。トリプレクサの場合、699−960MHzを通過帯域とするLBフィルタ、1427−2200MHzを通過帯域とするMBフィルタ、2300−2690MHzを通過帯域とするHBフィルタから構成される。クアッドプレクサの場合、699−960MHzを通過帯域とするLBフィルタ、1427−2200MHzを通過帯域とするMBフィルタ、2300−2400MHzを通過帯域とするHB1フィルタ、2496−2690MHzを通過帯域とするHB2フィルタから構成される。マルチプレクサAを構成するフィルタは、LCフィルタ、弾性波フィルタ、弾性波共振子とL、C、またはその両方とから構成されるハイブリッドフィルタであってもよい。
マルチプレクサ14は、ハイパスフィルタ10Bに接続され、MLB/LMBフィルタ11A(1475.9−2025MHz)、MBフィルタ11B(2110−2200MHz)、MHBフィルタ11C(2300−2400MHz)、およびHBフィルタ11D(2496−2690MHz)で構成されている。
スイッチ回路21は、スイッチ21A、21C、および21Dで構成されている。スイッチ回路22は、スイッチ22A、22B、22C、および22Dで構成されている。
フィルタ回路15は、フィルタ13A、13B、13C、13D、13E、13F、13G、13H、13J、および13Kで構成されている。
増幅回路は、LNA31、32、33、34、35、および36で構成されている。
マルチプレクサ14は、高周波信号の周波数帯域を、4つの周波数帯域群に分割する。より具体的には、MLB/LMBフィルタ11AはBa(バンドa)、Bb(バンドb)、Bc(バンドc)、Bd(バンドd)、およびBe(バンドe)の信号を通過させ、MBフィルタ11BはBp(バンドp)の信号を通過させ、MHBフィルタ11CはBf(バンドf)およびBg(バンドg)の信号を通過させ、HBフィルタ11DはBh(バンドh)、Bj(バンドj)、およびBk(バンドk)の信号を通過させる。ここで、BaはB3(Band3)に相当し、BcはB25(Band25)に相当し、BjはB7(Band7)に相当する。
スイッチ21Aは、共通端子がMLB/LMBフィルタ11Aに接続され、各選択端子が、フィルタ13A(Ba)、13B(Bb)、13C(Bc)、13D/13E(Bd/Be)に接続されている。
スイッチ21Cは、共通端子がMHBフィルタ11Cに接続され、各選択端子が、フィルタ13F(Bf)および13G(Bg)に接続されている。
スイッチ21Dは、共通端子がHBフィルタ11Dに接続され、各選択端子が、フィルタ13H(Bh)、13J(Bj)、および13k(Bk)に接続されている。
スイッチ22Bは、共通端子がLNA31に接続され、各選択端子がMBフィルタ11Bおよびフィルタ13dに接続されている。
スイッチ22Aは、共通端子がLNA32に接続され、各選択端子がフィルタ13c、13b、および13eに接続されている。
スイッチ22Dは、共通端子がLNA33に接続され、各選択端子がフィルタ13K、13H、および13Jに接続されている。
スイッチ22Cは、共通端子がLNA34に接続され、各選択端子がフィルタ13fおよび13gに接続されている。
ここで、MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)は、フィルタ13A(Ba)、13B(Bb)、13C(Bc)、13D/13E(Bd/Be)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。MBフィルタ11B(2110−2200MHz)は、Bpの各通過帯域を包含している。MHBフィルタ11C(2300−2400MHz)は、フィルタ13F(Bf)および13G(Bg)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。HBフィルタ11D(2496−2690MHz)は、フィルタ13H(Bh)、13J(Bj)、および13K(Bk)の各通過帯域よりも広く、当該各通過帯域を包含している。
高周波信号処理回路(RFIC)40は、LNA31〜36の出力端子に接続され、アンテナ素子から各バンドの受信信号経路を介して入力された高周波受信信号を、ダウンコンバートなどにより信号処理し、当該信号処理して生成された受信信号を、後段のベースバンド信号処理回路へ出力する。RF信号処理回路40は、例えば、RFICである。また、高周波信号処理回路(RFIC)40は、使用されるバンドに応じて、制御信号S1A、S1C、S1D、S2A、S2B、S2C、およびS2Dを、それぞれ、スイッチ21A、21C、21D、22A、22B、22C、および22Dに出力する。これにより、各スイッチは信号経路の接続を切り替える。
上記構成を有する通信装置3において、例えば、スイッチ21A、21Cおよび21Dを切り替えることにより、MLB/LMB(1475.9−2025MHz)、MB(2110−2200MHz)、MHB(2300−2400MHz)、およびHB(2496−2690MHz)から、それぞれ1バンドを選択することにより、CA動作が可能である。
ここで、実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xの構成を、本実施例に係る高周波フロントエンド回路2に適用することができる。つまり、本実施例におけるマルチプレクサ14を構成する各フィルタ(MLB/LMBフィルタ11A、MBフィルタ11B、MHBフィルタ11C、およびHBフィルタ11D)は、最もスイッチ回路21側に直列腕共振子が配置された弾性波フィルタである。また、フィルタ回路15を構成する各フィルタ(フィルタ13A〜13H、13J及び13K)は、最もスイッチ回路21側に直列腕共振子が配置された弾性波フィルタである。また、スイッチ回路21を構成する各スイッチ(スイッチ21A、21B、21D)は、非接続時に初段のフィルタ側(すなわちマルチプレクサ14側)から見たインピーダンスが容量性を有する。
これにより、例えば、Band3とBand7とのCA時には、MLB/LMBフィルタ11Aの2496−2690MHz(HBフィルタ11Dの通過帯域)における反射係数を高めることができる。具体的には、当該反射係数をHBフィルタ11Dの2496−2690MHz(HBフィルタ11Dの通過帯域)における反射係数よりも高めることができる。
また、例えば、Band3の非CA時には、MBフィルタ11B、MHBフィルタ11C及びHBフィルタ11Dそれぞれについて、1475.9−2025MHz(MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域)における反射係数を高めることができる。具体的には、当該反射係数をMLB/LMBフィルタ11Aの1475.9−2025MHz(MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域)における反射係数よりも高めることができる。
以上の構成によれば、CAの対象となるバンドの数が多くなっても、例えば3GPP規格に規定されている全てのCA組み合わせに対応させることが可能となる。また、フィルタ回路15に対応するバンドを容易に変更することが可能となる。よって、仕向け地ごとに最適なバンド構成のモジュールを簡素化された回路設計で提供できる。
[2−2.特性]
以下、このように構成された実施例に係る高周波フロントエンド回路2に関する特性について、実施例の比較例と比較しながら説明する。
図6Aは、本実施例におけるマルチプレクサ14の出力インピーダンスを示すスミスチャートである。具体的には、同図には、MLB/LMBフィルタ11Aの出力インピーダンスが示されている。図6Bは、実施例の比較例におけるマルチプレクサの出力インピーダンスを示すスミスチャートである。ここで、比較例におけるマルチプレクサは、直列腕共振子で終わる(すなわち各フィルタの最もスイッチ回路21側に直列腕共振子が配置されている)実施例におけるマルチプレクサ14に比べて、並列腕共振子で終わる(すなわち最もスイッチ回路21側に並列腕共振子が配置されている)点のみ異なる。このため、比較例におけるマルチプレクサの詳細な説明については省略する。
なお、これらの図には、スミスチャート中にマーカーを付加している。また、スミスチャートの右には、スミスチャート中のマーカー(ここではマーカーm*、*はグラフ中のmに続く数値)における周波数が示されている。このことは、以降のスミスチャートでも同様である。
図6Aに示すように、実施例では、MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)外における出力インピーダンスは、MLB/LMBフィルタ11Aが弾性波フィルタであることにより、概ね容量性を示す。また、当該出力インピーダンスは、MLB/LMBフィルタ11Aの最もスイッチ回路21側に直列腕共振子が配置されていることにより、OPEN寄りに位置する。ここで、OPEN寄りとは、スミスチャート上で右半分の領域に位置することである。
なお、一般的に、弾性波フィルタの入力インピーダンスは、周波数に依存する周波数特性を有する。このため、通過帯域内もしくは通過帯域外等ある程度の周波数範囲について特性を説明する場合、その特性が当該周波数範囲全体にわたって成立しているとは限らない。よって、例えば、MLB/LMBフィルタ11Aの出力インピーダンスが通過帯域外でOPEN寄りに位置するとは、通過帯域外全体にわたって当該出力インピーダンスがOPEN寄りに位置する場合だけでなく、通過帯域外の少なくとも一部において当該出力インピーダンスがOPEN寄りに位置する場合も含む。
具体的には、図6Aでは、MLB/LMBフィルタ11Aの出力インピーダンスは、マルチプレクサ14を構成するMLB/LMBフィルタ11A以外のいずれかのフィルタ(同図ではMHBフィルタ11C)の通過帯域においてOPEN寄りの容量性を示す。
一方、図6Bに示すように、比較例では、MLB/LMBフィルタの通過帯域外における出力インピーダンスは、実施例と同様に概ね容量性を示す。しかし、当該出力インピーダンスは、MLB/LMBフィルタの最もスイッチ回路21側に並列腕共振子が配置されていることにより、SHORT寄りに位置する。ここで、SHORT寄りとは、スミスチャート上で左半分の領域に位置することである。
具体的には、図6Bでは、MLB/LMBフィルタの出力インピーダンスは、比較例におけるマルチプレクサを構成するMLB/LMBフィルタ以外のいずれかのフィルタ(同図ではMHBフィルタ)の通過帯域においてSHORT寄りの容量性を示す。
図7は、本実施例におけるフィルタ回路15を構成するフィルタ(すなわち直列腕共振子で始まる後段のフィルタ)の入力インピーダンスを示すスミスチャートである。具体的には、同図には、フィルタ13C(Bc、すなわちB25)の入力インピーダンスが示されている。
同図に示すように、フィルタ13Cの通過帯域(1850−1915MHz)外における入力インピーダンスは、フィルタ13Cが弾性波フィルタであることにより、概ね容量性を示す。つまり、フィルタ13Cの入力インピーダンスは、スイッチ回路21によって当該フィルタ13Cと接続される初段のフィルタ(ここではMLB/LMBフィルタ11A)の通過帯域外において、容量性を示し、具体的にはOPEN寄りの容量性に位置する。言い換えると、本実施例では、初段のフィルタの出力端子(第1弾性波フィルタの他方の端子)におけるインピーダンス、及び、後段のフィルタの入力端子(第2弾性波フィルタのスイッチ側の端子)におけるインピーダンスは、いずれも初段のフィルタの通過帯域外においてスミスチャート上で右半分の領域に位置し、容量性を有する。
ここで、スイッチ回路21によって初段のフィルタ(すなわちマルチプレクサを構成するフィルタ)と後段のフィルタ(すなわちフィルタ回路15を構成するフィルタ)とが接続されると、後段のフィルタの入力側から初段のフィルタを見たインピーダンスは、初段のフィルタと後段のフィルタとを接続する高周波フロントエンド回路内の配線及びスイッチ回路21の影響により、初段のフィルタの出力インピーダンスよりもスミスチャート上を右回りに位相がシフトしたインピーダンスとなる。
比較例では、初段のフィルタの出力インピーダンスが当該初段のフィルタの通過帯域外においてスミスチャート上でSHORT寄りの容量性領域に位置している。このため、スイッチ回路21により初段のフィルタと後段のフィルタとが接続されると、引き回しの配線等によって、後段のフィルタの入力側から初段のフィルタを見た初段のフィルタの通過帯域外インピーダンスが誘導性に位置し得る。ここで、図7に示したように、後段のフィルタの入力インピーダンスは、初段のフィルタの通過帯域外において容量性を示す。したがって、後段のフィルタの入力側から初段のフィルタを見た初段のフィルタの通過帯域外インピーダンスが誘導性に位置すると、後段のフィルタの当該通過帯域外における入力インピーダンスと反転関係となる。よって、比較例の構成では、後段のフィルタについて、初段のフィルタの通過帯域外における減衰特性が劣化し得る。
これに対して、実施例では、初段のフィルタの出力インピーダンスが当該初段のフィルタの通過帯域外においてスミスチャート上でOPEN寄りの容量性領域に位置している。このため、スイッチ回路21により初段のフィルタと後段のフィルタとが接続されても、後段のフィルタの入力側から初段のフィルタを見た初段のフィルタの通過帯域外インピーダンスが容量性に位置しやすくなる。よって、実施例の構成では、比較例に比べて、初段のフィルタの通過帯域外における減衰特性を改善することができる。
言い換えると、実施例では、比較例に比べて、スイッチ回路21により初段のフィルタと後段のフィルタとが接続されたときに、初段のフィルタを入力側から見た(すなわち初段のフィルタを共通接続点側から見た)初段のフィルタの通過帯域外における反射係数を高めることができる。これにより、CA時には、他の初段のフィルタの経路の通過特性を改善しつつ、一の初段のフィルタの経路の減衰特性を改善することができる。
図8Aは、スイッチ回路21を構成するスイッチの入力インピーダンスを示すスミスチャートである。具体的には、同図には、スイッチ21Aの共通端子がOPEN状態となっているとき、すなわちスイッチ21Aの非接続時における当該スイッチ21Aの入力インピーダンスが示されている。
同図に示すように、このときのスイッチ21Aの入力インピーダンスは、スイッチ21Aの共通端子がOPEN状態となっていることにより、OPEN寄りの容量性を示す。つまり、スイッチ21Aが接続されるMLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)外におけるスイッチ21Aの入力インピーダンスは、OPEN寄りの容量性を示す。
よって、このような入力インピーダンスを有するスイッチ21Aをマルチプレクサ14の出力端子から見たインピーダンス(図5中のスイッチ入力インピーダンス@MPX)は、図8Bのようになる。
図8Bは、マルチプレクサ14の出力端子からスイッチ21A側を見たときのインピーダンスを示すスミスチャートである。
同図に示すように、マルチプレクサ14の出力端子からスイッチ21A側を見たインピーダンスは、図8Aに示すインピーダンスから、マルチプレクサ14とスイッチ21Aとを接続する配線によって位相がシフトする。具体的には、スミスチャート上を右回りにシフトする。本実施例では、シフト前のインピーダンスがOPEN寄りの容量性であったため、シフト後のインピーダンスがスミスチャート上で誘導性領域まで変化するには十分なマージンがある。このため、シフト後のインピーダンスは容量性を示す。つまり、MLB/LMBフィルタ11Aの出力端子からスイッチ21A側を見たインピーダンスは、当該MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)外において容量性を示す。
このように、スイッチ回路21を構成するスイッチが非接続のとき、マルチプレクサ14を構成する初段のフィルタの出力端子から当該スイッチ側を見たインピーダンスは、当該初段のフィルタの通過帯域外において容量性を示す。
ここで、図6Aに示したように、マルチプレクサ14を構成する初段のフィルタの出力インピーダンスは、当該初段のフィルタの通過帯域外において容量性を示す。したがって、実施例によれば、非接続時に共通端子がSHORT状態となる構成に比べて、初段のフィルタの通過帯域外における高周波信号の漏れこみを抑制することができる。
言い換えると、実施例では、比較例に比べて、スイッチ回路21を構成するスイッチの非接続時において、初段のフィルタを入力側から見た(すなわち初段のフィルタを共通接続点側から見た)初段のフィルタの通過帯域外における反射係数を高めることができる。これにより、非CA時には、他の初段のフィルタの経路の通過特性を改善することができる。
以下、実施例に係る高周波フロントエンド回路2によって奏される通過特性の改善効果について、具体的な数値例を挙げて説明する。
図9は、実施例におけるマルチプレクサ14の入力側の反射特性を示すグラフである。具体的には、同図には、マルチプレクサ14の出力側を次の(i)〜(iii)とした場合のマルチプレクサ14の入力端子における反射係数が示されている。
(i)50Ωで終端
(ii)後段フィルタ(ここではフィルタ13J(B7))を接続
(iii)共通端子がOPEN状態のスイッチ21Dを接続
ここで、上記の(ii)及び(iii)とした場合には、上記の(i)とした場合に比べて、マルチプレクサ14を構成するHBフィルタ11Dに後段フィルタあるいはスイッチ21Dが接続された点のみ異なる。
なお、同図には、マーカーを付加している。また、グラフの下には、グラフ中のマーカー(ここではマーカーM*、*はグラフ中のMに続く数値)における周波数及び反射係数を示す表が示されている。
同図に示すように、マルチプレクサ14の出力側に(ii)後段フィルタを接続した場合、及び、(iii)共通端子がOPEN状態のスイッチ21Dを接続した場合のいずれにおいても、マルチプレクサ14の出力側を(i)50Ωで終端した場合に比べて、HBフィルタ11Dの通過帯域(2496−2690MHz)外における反射係数が高められている。このことは、MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)において特に顕著である。
したがって、このようなマルチプレクサ14に対して、通過帯域がMLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域に包含されるフィルタ13A(すなわち通過帯域がBand3のフィルタ)を接続すると、次のような特性が得られる。
図10は、実施例の比較例における高周波フロントエンド回路に関する特性を示すグラフである。具体的には、同図には、上から順に、この通過特性が得られたときの高周波フロントエンド回路の構成図、マルチプレクサ14単体の通過特性(具体的にはMLB/LMBフィルタ11Aの通過特性)、フィルタ13A(Band3のフィルタ)単体の通過特性、及び、比較例における高周波フロントエンド回路全体の通過特性が示されている。
なお、通過特性を示すグラフには、マーカーを付加している。また、グラフの右には、グラフ中のマーカー(ここではマーカーM*またはm*、*はグラフ中のMまたはmに続く数値)における周波数及び挿入損失(I.L.:Insertion Loss)が示されている。このことは、図11についても同様である。
図11は、実施例における高周波フロントエンド回路2に関する特性を示すグラフである。具体的には、同図には、上から順に、この通過特性が得られたときの高周波フロントエンド回路2の構成図、及び、高周波フロントエンド回路2全体の通過特性が示されている。
なお、通過特性のグラフ中には、実線で示す実施例における通過特性に加えて、破線で示す図10に示した比較例の通過特性も併せて示されている。また、同図の構成図では、フィルタ13A以外の後段フィルタについてBand**フィルタとして示しているが、これらの後段フィルタは、直列腕共振子で始まる弾性波フィルタであり、具体的にはフィルタ13F〜13H、13J及び13Kに適宜対応する。
ここで、実施例における高周波フロントエンド回路2は、比較例における高周波フロントエンド回路に比べて、マルチプレクサ14の出力側の構成のみ異なる。よって、実施例におけるマルチプレクサ14単体の特性及びフィルタ13A単体の特性は、比較例と同じである。
図12は、実施例における高周波フロントエンド回路2の通過特性の改善効果を、比較例と比較して示す表である。具体的には、この表には、図11及び図12においてマーカーが付加された周波数における、マルチプレクサ14単体のロス(挿入損失)、フィルタ13A(Band3のフィルタ)単体のロス、高周波フロントエンド回路全体のロス、および、比較例に対する実施例の高周波フロントエンド回路全体のロスの改善、が示されている。
図10〜図12から明らかなように、本実施例における高周波フロントエンド回路2によれば、マルチプレクサ14及びフィルタ13Aを通過する高周波信号の経路におけるロスを、マルチプレクサ14単体のロスとフィルタ13A単体のロスとの合計(図12中の比較例)よりも改善する(抑制する)ことができる。
つまり、比較例では、マルチプレクサ14を構成する複数のフィルタ(MLB/LMBフィルタ11A、MBフィルタ11B、MHBフィルタ11C、HBフィルタ11D)のうちフィルタ13Aと接続されたMLB/LMBフィルタ11A以外の他のフィルタの出力側が50Ωで終端されている。このため、マルチプレクサ14の入力側から他のフィルタを見たときのMLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)における反射係数が低くなっている。
これに対して、本実施例では、マルチプレクサ14を構成する複数のフィルタのうちフィルタ13Aと接続されたフィルタ11A以外のMLB/LMBフィルタ11A以外の他のフィルタの出力側に直列腕共振子で始まる弾性波フィルタが接続されている。このため、マルチプレクサ14の入力側から他のフィルタを見たときのMLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域における反射係数を比較例よりも高めることができる。よって、マルチプレクサ14に入力されたMLB/LMB帯の高周波信号について、MLB/LMBフィルタ11A以外の他のフィルタへの漏れを抑制することができる。言い換えると、他のフィルタの減衰特性を改善することにより、MLB/LMBフィルタ11Aの通過特性を改善することができる。よって、高周波フロントエンド回路2全体では、MLB/LMBフィルタ11Aの通過帯域(1475.9−2025MHz)に包含されるBand3について、通過特性を改善することができる。
[3.まとめ]
以上、実施の形態に係る高周波フロントエンド回路2Xについて、実施例に係る高周波フロントエンド回路2を用いて説明した。以下、高周波フロントエンド回路2Xによって奏される効果について、図1を参照して説明する。ここで、高周波フロントエンド回路2Xは、初段のフィルタ(第1弾性波フィルタ)、スイッチ及び複数の後段のフィルタ(第2弾性波フィルタ)からなる組を複数組備えるが、各組は対応する通過帯域が異なる点に関する事項を除き、同様の構成を有する。そこで、簡明のため、以下では、フィルタ11a(初段のフィルタ)、スイッチ21a(スイッチ)及び2つのフィルタ13a、13b(後段のフィルタ)からなる組によって奏される効果について説明し、他の組によって奏される同様の効果については、説明を省略する。
上述したように、本実施の形態によれば、マルチプレクサ14Xを構成するフィルタ11a(第1弾性波フィルタ)の最もスイッチ21a側に配置された弾性波共振子(第1弾性波共振子)、及び、フィルタ13a、13b(第2弾性波フィルタ)の最もスイッチ21a(スイッチ)側に配置された弾性波共振子(第2弾性波共振子)は、いずれも直列腕共振子である。
これにより、フィルタ11aをスイッチ21a側から見ると、フィルタ11aの通過帯域外におけるインピーダンスはスミスチャート上でOPEN寄りの容量性を示す。また、フィルタ13a、13bをスイッチ21a側から見ると、フィルタ11aの通過帯域外におけるインピーダンスは容量性を示す。
よって、スイッチ21aによってフィルタ11aとフィルタ13a、13bとが接続されたとき、マルチプレクサ14Xを構成するフィルタが共通接続された点(本実施の形態では共通接続点N)側から見ると、フィルタ11aの通過帯域外における反射係数を高めることができる。したがって、フィルタ11a(具体的にはフィルタ11aが設けられた経路)について、減衰特性を改善することができる。また、フィルタ11aとともにマルチプレクサ14Xを構成する他のフィルタ11b(具体的には他のフィルタ11bが設けられた経路)について、通過特性を改善することができる。
したがって、減衰特性及び通過特性を改善できる高周波フロントエンド回路2Xを実現することができる。
また、本実施の形態によれば、フィルタ11aの出力端子(第1弾性波フィルタの他方の端子)におけるインピーダンス、及び、フィルタ13a、13bの入力端子(第2弾性波フィルタのスイッチ側の端子)におけるインピーダンスは、いずれもフィルタ11aの通過帯域外においてスミスチャート上で右半分の領域に位置する。
これにより、スイッチ21aによってフィルタ11aとフィルタ13a、13bとが接続されたときに、フィルタ11aの出力端子からフィルタ13a、13b側を見たフィルタ11aの通過帯域外におけるインピーダンスについて、フィルタ11aとフィルタ13a、13bとを接続する配線及びスイッチ21aの影響による誘導性へのシフトを抑制することができる。つまり、当該インピーダンスについて容量性に収めやすくなる。同様に、フィルタ13a、13bの入力端子からフィルタ11a側を見たフィルタ11aの通過帯域外におけるインピーダンスについても、誘導性へのシフトを抑制することができる。
ここで、弾性波フィルタは、入力インピーダンス及び出力インピーダンスがいずれも容量性を示す。このため、フィルタ11aの出力インピーダンス(第1弾性波フィルタの他方の端子におけるインピーダンス)、及び、フィルタ13a、13bの入力インピーダンス(第2弾性波フィルタのスイッチ側の端子におけるインピーダンス)は、フィルタ11aの通過帯域外において、いずれも容量性を示す。
よって、上記の構成により、フィルタ11aの出力端子(第1弾性波フィルタの他方の端子)からフィルタ13a、13b側を見たインピーダンスとフィルタ13a、13bの入力インピーダンスとは、フィルタ11aの通過帯域外において、いずれも容量性を示すこととなる。同様に、フィルタ13a、13bの入力端子(第2弾性波フィルタのスイッチ側の端子)からフィルタ11a側を見たインピーダンスとフィルタ11aの出力インピーダンスとは、フィルタ11aの通過帯域外において、いずれも容量性を示すこととなる。
つまり、上記の構成により、フィルタ11aの通過帯域外における減衰特性の劣化を招く要因である、一方のインピーダンスが誘導性かつ他方のインピーダンスが容量性を示す反転関係となりにくくなる。
したがって、上記の構成によれば、減衰特性及び通過特性のさらなる改善を図ることができる。
また、本実施の形態によれば、スイッチ21aは、非接続時においてフィルタ11a(第1弾性波フィルタ)側から見たインピーダンスが容量性を有する。
これにより、非接続時、すなわちスイッチ21aによってフィルタ11aとフィルタ13a、13bとが接続されないとき(実施の形態では非CA時)であっても、これらが接続されるとき(実施の形態ではCA時)と同様に、減衰特性及び通過特性を改善することができる。
なお、スイッチ21aは、非接続時においてフィルタ11a(第1弾性波フィルタ)側から見たインピーダンスが誘導性を有してもかまわない。このような構成であっても、接続時には減衰特性及び通過特性を改善することができる。
また、本実施の形態によれば、非接続時において、スイッチ21aのオフ容量値は、フィルタ13a、13bの最もスイッチ21a側に配置された弾性波共振子(第2弾性波共振子)の容量値と略同等である。
これにより、非接続時であっても、フィルタ11aとともにマルチプレクサ14Xを構成する他のフィルタ11b(具体的には他のフィルタ11bが設けられた経路)について、接続時と比べて略同等に通過特性を改善することができる。
なお、非接続時において、フィルタ11a側からスイッチ21aを見たインピーダンスは、フィルタ13a、13bの最もスイッチ21a側に配置された弾性波共振子(第2弾性波共振子)の容量値と異なっていてもかまわない。このような構成であっても、接続時には減衰特性及び通過特性を改善することができる。
また、本実施の形態によれば、フィルタ11aにおいて最もスイッチ21a側に配置された弾性波共振子(第1弾性波共振子、ここでは直列腕共振子s11)の容量値とフィルタ13a、13bにおいて最もスイッチ21a側に配置された弾性波共振子(第2弾性波フィルタ、ここでは直列腕共振子s13)の容量値とは、略同等である。
これにより、フィルタ11aをスイッチ21a側から見たインピーダンスとフィルタ13a、13bをスイッチ21a側から見たインピーダンスとを、フィルタ11aの通過帯域外において、スミスチャート上で略同等の領域に位置させることができる。よって、スイッチ21aによってフィルタ11aとフィルタ13a、13bとが接続されたとき、マルチプレクサ14Xを構成するフィルタが共通接続された点(本実施の形態では共通接続点N)側から見て、フィルタ11aの通過帯域外における反射係数をさらに高めることが可能となる。よって、減衰特性及び通過特性のさらなる改善を図ることができる。
なお、直列腕共振子s11の容量値と直列腕共振子s13の容量値とは、異なっていてもかまわない。このような構成によれば、これらの容量値が同等の場合に比べて減衰特性及び通過特性の改善効果は多少劣るものの、直列腕共振子s11及びs13の少なくとも一方に代わり並列腕共振子が設けられた構成に比べると減衰特性及び通過特性を改善することができる。
また、本実施の形態によれば、スイッチ21aに接続された複数のフィルタ13a、13b(複数の第2弾性波フィルタ)を備える。これにより、減衰特性及び通過特性を改善しつつ、より多くのバンドに対応することができる。
また、本実施の形態によれば、マルチプレクサ14Xを構成するフィルタ、当該フィルタに接続されるスイッチ、及び、当該スイッチに接続される複数のフィルタからなる組を複数組備える。これにより、減衰特性及び通過特性を改善しつつ、より多くのバンドに対応することができる。
(変形例)
以上、本発明の実施の形態に係る高周波フロントエンド回路について、実施の形態および実施例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態および実施例に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る高周波フロントエンド回路を内蔵した通信装置等の各種機器も本発明に含まれる。
このような通信装置によれば、高周波フロントエンド回路を内蔵することにより、減衰特性及び通過特性を改善することができる。
また、例えば、マルチプレクサを構成する複数のフィルタ(初段のフィルタ)の少なくとも1つは、弾性波フィルタでなくてもよく、例えば、誘電体フィルタまたはLCフィルタであってもよい。同様に、後段のフィルタの少なくとも1つは、弾性波フィルタでなくてもよい。
また、マルチプレクサを構成する複数のフィルタの少なくとも1つの出力側には、スイッチ及びフィルタが接続されていなくてもよい。
また、例えば、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタにおいて、さらに、入出力端子および接地端子などの各端子の間に、インダクタやキャパシタが接続されていてもよいし、抵抗素子などのインダクタおよびキャパシタ以外の回路素子が付加されていてもよい。
また、例えば、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタを構成する1以上の弾性波共振子のうち、少なくとも1つの弾性波共振子を容量で置き換えたハイブリッドフィルタを、第1弾性波フィルタ、第2弾性波フィルタ、またはその両方として用いてもよい。あるいは、例えば、第1弾性波フィルタ及び第2弾性波フィルタとして、インダクタ、キャパシタ、またはその両方から構成されるLCフィルタに1以上の弾性波共振子を組み合わせたハイブリッドフィルタを用いてもよい。このようなフィルタを用いた場合、広い帯域と急峻な減衰の両立が可能となる。