実施の形態1
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係るドラム型変速装置1Aを備えたトランスミッション800の側面図を示す。
また、図2〜図4に、それぞれ、図1におけるII-II線、III-III線及びIV-IV線に沿った断面図を示す。
なお、図2は、下記サブ出力軸850を展開状態で示している。
前記ドラム型変速装置1Aは、トラクタやユーティリティビークル等の作業車輌の走行系伝動経路に好適に利用される。
前記ドラム型変速装置1Aは、第1及び第2伝動回転810、820軸の間で回転動力を変速伝達させ得るようになっている。
詳しくは、図1〜図4に示すように、前記ドラム型変速装置1Aは、第1伝動回転軸810に相対回転自在に支持された変速ギヤ10と、第2伝動回転軸820に相対回転不能に支持され且つ前記変速ギヤ810に直接又は間接的に噛合された伝動ギヤ20と、前記変速ギヤ20を選択的に動力伝達状態とさせるドラム型変速操作機構100Aとを備えている。
本実施の形態においては、前記変速ギヤ10は、前進高速用の変速ギヤ10Hと、前進低速用の変速ギヤ10Lと、後進用の変速ギヤ10Rとを有し、前記伝動ギヤ20は、前記変速ギヤ10Hに噛合して当該変速ギヤ10Hと共に前進高速ギヤ列を形成する伝動ギヤ20Hと、前記変速ギヤ10Lに噛合して当該変速ギヤ10Lと共に前進低速ギヤ列を形成する伝動ギヤ20Lと、前記変速ギヤ10Rに後進アイドルギヤ15(図3参照)を介して噛合して当該変速ギヤ10R及び後進アイドルギヤ15と共に後進ギヤ列を形成する伝動ギヤ20Rとを有している。
なお、本実施の形態においては、前記第2伝動回転軸820がエンジン等の駆動源(図示せず)から回転動力を作動的に入力する変速入力軸として作用し、前記第1伝動回転軸810が変速後の回転動力を駆動輪へ出力する変速出力軸として作用している。
即ち、図1及び図2に示すように、前記トランスミッション800は、ミッションケース805と、駆動源に作動連結されるように一端部が外方へ延在された状態で前記ミッションケース805に軸線回り回転自在に支持され、変速入力軸として作用する前記第2伝動回転軸820と、前記ミッションケース805に軸線回り回転自在に支持され変速出力軸として作用する前記第1伝動回転軸810と、前記第2伝動回転軸820から前記第1伝動回転軸810へ回転動力を多段変速伝達する前記ドラム型変速装置1Aとを備えている。
図1及び図2に示すように、前記トランスミッション800は、さらに、左右一対のメイン出力軸840と、前記変速出力軸(前記第1伝動回転軸810)から作動的に入力される回転動力を前記左右一対のメイン出力軸に差動伝達するディファレンシャルギヤ装置830と、前記変速出力軸の回転動力を前記メイン出力軸840とは別の伝動経路へ出力するサブ出力軸850とを備えている。
前記トランスミッション800を作業車輌の走行系伝動経路に適用する場合には、例えば、前記一対のメイン出力軸840を左右一対の後輪駆動軸として作用させ、前記サブ出力軸850を前輪駆動軸として作用させることができる。
前記ドラム型変速操作機構100Aは、前記複数の変速ギヤ20を選択的に動力伝達状態とさせて、前記変速装置1Aを所望変速段係合状態とさせるように構成されている。
詳しくは、図2〜図4に示すように、前記変速操作機構100Aは、前記第1伝動回転軸810に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向移動によって前記変速ギヤ820に選択的に凹凸係合するシフター部材110と、前記第1伝動回転軸810に平行なフォーク軸120と、前記フォーク軸120に軸線方向移動自在に支持されたシフトフォーク130と、前記第1伝動回転軸810に平行な軸線回りに回転操作されるドラム部材140とを備えている。
詳しくは、前記シフター部材110及び前記変速ギヤ10の対向端面には、それぞれ、変速用凹凸部112、12が設けられており、前記シフター部材110を前記変速ギヤ10に近接する方向へ軸線方向に沿って移動させることによって、前記シフター部材110の変速用凹凸部112が前記変速ギヤ10の変速用凹凸部12に係合し、これにより、前記変速ギヤ10が前記シフター部材110を介して前記第1伝動回転軸810と一体回転する動力伝達状態となる。
図2〜図4に示すように、本実施の形態においては、前記第1伝動回転軸810には、軸線方向第1側から第2側へ順に、変速ギヤ10H、変速ギヤ10R及び変速ギヤ10Lが配置されている。
前記変速操作機構100Aは、前記シフター部材110として、変速ギヤ10H及び変速ギヤ10Rの間において前記第1伝動回転軸810に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向第1側及び第2側への移動に応じて変速ギヤ10H及び変速ギヤ10Rにそれぞれ凹凸係合する第1シフター部材110(1)と、変速ギヤ10Lと対向する位置において前記第1伝動回転軸810に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持され、軸線方向に関し変速ギヤ10Lに近接する側(図示の形態においては軸線方向第1側)への移動に応じて変速ギヤ10Lに凹凸係合する第2シフター部材110(2)とを有している。
前記第1シフター部材110(1)は、変速ギヤ10Hと対向する軸線方向第1側の端面に、変速ギヤ10Hの変速用凹凸部12Hに凹凸係合可能な高速用凹凸部112Hを有し、且つ、変速ギヤ10Rと対向する軸線方向第2側の端面に、変速ギヤ10Rの変速用凹凸部12Rに凹凸係合可能な後進用凹凸部112Rを有している。
前記第2シフター部材110(2)は、変速ギヤ10Lと対向する軸線方向第1側の端面に、変速ギヤ10Lの変速用凹凸部12Lに凹凸係合可能な低速用凹凸部112Lを有している。
また、前記変速操作機構100Aは、図4に示すように、前記シフトフォーク130として、前記第1及び第2シフター部材110(1)、110(2)をそれぞれ軸線方向へ移動させる第1及び第2シフトフォーク130(1)、130(2)を有している。
図4等に示すように、前記第1シフトフォーク130(1)は、前記フォーク軸120に軸線方向移動可能に支持された第1ボス部132(1)と、前記ドラム部材140に形成された第1フォーク案内溝142(1)に係入される第1係合ピン部134(1)と、前記第1シフター部材110(1)に係合する第1フォーク部136(1)とを有しており、自己の前記フォーク軸120上での軸線方向移動に応じて前記第1シフター部材110(1)を前記第1伝動回転軸810上で軸線方向に移動させるようになっている。
詳しくは、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)は、軸線方向位置に関し、前記第1シフター部材110(1)が変速ギヤ10H及び変速ギヤ10Rの何れとも凹凸係合しない基準位置と、前記第1シフター部材110(1)が変速ギヤ10Hと凹凸係合する高速位置と、前記第1シフター部材110(1)が変速ギヤ10Rと凹凸係合する後進位置とを取り得る。
なお、図4は、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)が基準位置に位置している状態を示している。
前記第2シフトフォーク130(2)は、前記フォーク軸120に軸線方向移動可能に支持された第2ボス部132(2)と、前記ドラム部材140に形成された第2フォーク案内溝142(2)に係入される第2係合ピン部134(2)と、前記第2シフター部材110(2)に係合する第2フォーク部136(2)とを有しており、自己の前記フォーク軸120上での軸線方向移動に応じて前記第2シフター部材110(2)を前記第1伝動回転軸810上で軸線方向に移動させるようになっている。
詳しくは、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110(2)は、軸線方向位置に関し、前記第2シフター部材110(2)が変速ギヤ10Lとは凹凸係合しない基準位置と、前記第2シフター部材110(2)が変速ギヤ10Lと凹凸係合する低速位置とを取り得る。
図4は、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110(2)が基準位置に位置している状態を示している。
前記ドラム部材140は、変速操作に応じて軸線回りに回転されるようになっている。
本実施の形態においては、図4に示すように、前記ドラム型変速操作機構100Aには、変速操作を受ける操作軸150が設けられており、前記ドラム部材140は前記操作軸150に作動連結されている。
本実施の形態においては、前記操作軸150は、増速ギヤ列155を介して前記ドラム部材140に作動連結されている。
前記操作軸150は、一端部が外方へ延在された状態でハウジング(本実施の形態においてはミッションケース805)に軸線回り回転自在に支持されている。
図1及び図4に示すように、前記操作軸150は、例えば、電動モーター155によって軸線回りに回転される。
この場合、前記ドラム部材140の軸線回り位置を検出する角度センサ156が備えられる。
これに代えて、前記操作軸150を人為操作によって軸線回りに回転させることも可能である。この場合には、前記電動モーター155が取り外され、前記操作軸150の一端部に操作アーム(図示せず)が装着される。
図4に示すように、前記ドラム部材140は、フォーク案内溝(本実施の形態においては前記第1及び第2フォーク案内溝142(1)、142(2))が形成されたドラム本体141と、前記ドラム本体141と同軸上において前記ドラム本体141を支持するドラム軸148とを有している。
図4に示すように、前記ドラム型変速操作機構100Aは、さらに、前記第1ボス部132(1)を軸線方向第1側へ押動する第1シフトフォーク押動バネ160(1)と、前記第1ボス部132(1)に軸線方向移動可能に外挿支持されたスライダー部材170と、前記スライダー部材170を軸線方向第2側へ押動するスライダー部材押動バネ180とを備えている。
前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)は、前記第1シフトフォーク130(1)がフリーな状態では、前記第1シフター部材110(1)を変速ギヤ10Hと凹凸係合する高速位置まで移動させ得る付勢力で前記第1ボス部132(1)を軸線方向第1側へ押動するように設定されている。
詳しくは、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)は、軸線方向第2側の端部が前記フォーク軸120に設けられた係止部材126に係止された固定端部とされ、且つ、軸線方向第1側の端部が前記第1ボス部132(1)の軸線方向第2側の端面に係合された可動端部とされている。
前記スライダー部材170は、前記第1ボス部132(1)に設けられた停止部133によって軸線方向第2側への移動端が画された状態で前記第1ボス部132(1)に軸線方向移動可能に支持され、さらに、前記ドラム部材140に設けられたスライダー案内溝144によって軸線方向位置が規制されている。
詳しくは、前記スライダー部材170は、前記第1ボス部132(1)に軸線方向移動可能に外挿されたスライダー本体172と、前記スライダー案内溝144に係入されるスライダー係合ピン部174とを有している。
前記スライダー部材押動バネ180は、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)より大きな付勢力で前記スライダー部材170を軸線方向第2側へ押動するように構成されている。
即ち、前記スライダー部材押動バネ180は、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記スライダー部材110(1)がフリーな状態では、前記第1シフトフォーク130(1)を軸方向第1側へ付勢する前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力に抗して、前記第1シフター部材110(1)を変速ギヤ10Rと凹凸係合する後進位置まで移動させ得る付勢力で前記スライダー部材170を介して前記第1ボス部132(1)を軸線方向第2側へ押動するように設定されている。
詳しくは、前記スライダー部材押動バネ180は、軸線方向第1側の端部が前記フォーク軸に設けられた係止部材127に係止された固定端部とされ、且つ、軸線方向第2側の端部が前記スライダー部材170の軸線方向第1側の端面に係合された可動端部とされている。
本実施の形態においては、図4に示すように、前記ドラム型変速操作機構100Aは、さらに、前記第2シフター部材110(2)が変速ギヤ10Lに向けて押圧される方向へ前記第2ボス部132(2)を押動する第2シフトフォーク押動バネ160(2)を備えている。
前述の通り、本実施の形態においては、前記第2シフター部材110(2)の軸線方向第1側に変速ギヤ10Lが位置しており、従って、前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)は前記第2ボス部132(2)を軸線方向第1側へ押動する。
詳しくは、前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)は、軸線方向第2側の端部が前記フォーク軸120に設けられた係止部材128に係止された固定端部とされ、且つ、軸線方向第1側の端部が前記第2ボス部132(2)の軸線方向第2側の端面に係合された可動端部とされている。
前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)は、前記第2シフトフォーク130(29)がフリーな状態では、前記第2シフター部材110(2)を変速ギヤ10Lと凹凸係合する低速位置まで移動させ得る付勢力で前記第2ボス部132(2)を押動するように設定されている。
ここで、前記第1フォーク案内溝142(1)、前記第2フォーク案内溝142(2)及び前記スライダー案内溝144の溝形状について説明する。
図5に、前記ドラム部材140の展開図を示す。
前記ドラム部材140は、前記ドラム型変速装置1Aが取り得る変速段(中立段を含む)に対応した軸線回り操作位置をとるように構成されている。
本実施の形態においては、前記ドラム型変速装置1Aは、中立段、前進高速段、前進低速段及び後進段を取り得るように構成されており、従って、前記ドラム部材140は、軸線回りに、中立位置N、高速位置H、低速位置L及び後進位置Rをとるように構成されている。
詳しくは、本実施の形態においては、前記ドラム部材140は、中立位置Nから軸線回り一方側へ回転されると高速位置Hをとり、高速位置Hからさらに軸線回り一方側へ回転されると低速位置Lをとり、中立位置Nから軸線回り他方側へ回転されると後進位置Rをとるように構成されている。
なお、前記ドラム型変速装置1Aは、さらに、パーキング段を取り得るようになっており、前記ドラム部材140は、前記操作位置に加えて、パーキング位置Pを取り得るようになっている。
図5に示すように、本実施の形態においては、前記ドラム部材140は、後進位置Rからさらに軸線回り他方側へ回転されるとパーキング位置Pをとるように構成されている。
このパーキング状態を現出させる為の構成については後述する。
図5に示すように、前記第1フォーク案内溝142(1)、前記スライダー案内溝144及び前記第2フォーク案内溝142(2)は、前記ドラム部材140が中立位置N、高速位置H、低速位置L、後進位置R及びパーキング位置Pに位置された際に、それぞれ、対応する係合ピン部134(1)、174、134(2)と係合する中立時係合部位、高速時係合部位、低速時係合部位、後進時係合部位及びパーキング時係合部位を有している。
まず、前記第1フォーク案内溝142(1)の溝形状について説明する。
図5に示すように、前記第1フォーク案内溝142(1)の中立時係合部位142(1)Nは前記第1シフトフォーク130(1)を基準位置に固定するように前記第1係合ピン部134(1)を狭持する溝形状を有している。
高速時係合部位142(1)Hは前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端が高速位置となり且つ軸線方向第2側への移動端が基準位置となるように、前記第1係合ピン134(1)を案内する溝形状を有している。
中立時係合部位142(1)N及び高速時係合部位142(1)Hの間に位置する移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140の中立位置Nから高速位置Hへの回転に従って基準位置から高速位置へ変化させるような溝形状を有している。
低速時係合部位142(1)Lは、前記第1シフトフォーク130(1)を基準位置に固定するように前記第1係合ピン部134(1)を狭持する溝形状を有している。
高速時係合部位142(1)H及び低速時係合部位142(1)Lの間の移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140の高速位置Hから低速位置Lへの回転に従って高速位置から基準位置へ変化させるような溝形状を有している。
後進時係合部位142(1)Rは前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を基準位置とし且つ軸線方向第2側への移動端を後進位置とさせる溝形状を有している。
中立時係合部位142(1)N及び後進時係合部位142(1)Rの間に位置する移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140の中立位置Nから後進位置Rへの回転に従って基準位置から後進位置へ変化させるような溝形状を有している。
パーキング時係合部位142(1)Pは、前記第1シフトフォーク130(1)を基準位置に固定する溝形状を有している。
後進時係合部位142(1)R及びパーキング時係合部位142(1)Pの間の移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140の後進位置Rからパーキング位置Pへの回転に従って後進位置から基準位置へ変化させるような溝形状を有している。
次に、前記スライダー案内溝144の溝形状について説明する。
前記スライダー案内溝144は、前記第1ドラム部材140が高速位置Hに位置された際に前記第1フォーク案内溝142(1)の高速時係合部位142(1)Hによって許可される前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向移動範囲を制限しない退避位置に、前記スライダー部材170を固定するように構成されている。
詳しくは、前記スライダー部材170が前記停止部133に当接されたままで前記第1シフトフォーク130(1)が基準位置、高速位置及び後進位置に位置された際に前記スライダー部材170が位置する軸線方向位置を、それぞれ、基準位置、第1変位位置及び第2変位位置とする(図5参照)。
本実施の形態においては、図5に示すように、前記スライダー案内溝144の高速時係合部位144Hは、前記スライダー部材170を第1変位位置に固定するように構成されている。
即ち、本実施の形態においては、前記スライダー案内溝144は、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置された際に、前記スライダー部材170を前記退避位置として第1変位位置に固定するように構成されている。
本実施の形態においては、前記スライダー案内溝144は、さらに、下記溝形状を有している。
即ち、図5に示すように、中立時係合部位144Nは前記スライダー部材170を基準位置に固定するように前記スライダー係合ピン部174を狭持する溝形状を有している。
中立時係合部位144N及び高速時係合部位144Hの間の移行部位は、前記ドラム部材140の中立位置Nから高速位置Hへの回転に従って前記スライダー部材170を基準位置から第1変位位置に案内するような溝形状を有している。
低速時係合部位144Lは前記スライダー部材170を基準位置に固定するように前記スライダー係合ピン部174を狭持する溝形状を有している。
高速時係合部位144H及び低速時係合部位144Lの間の移行部位は、前記ドラム部材140の高速位置Hから低速位置Lへの回転に従って前記スライダー部材170を第1変位位置から基準位置に案内するような溝形状を有している。
後進時係合部位144Rは前記スライダー部材170の軸線方向第1側の移動端を基準位置とし且つ軸線方向第2側の移動端を第2変位位置とする溝形状を有している。
中立時係合部位144N及び後進時係合部位144Rの間の移行部位は、前記スライダー部材170の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、前記スライダー部材170の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140の中立位置Nから後進位置Rへの回転に従って基準位置から第2変位位置へ変化させるような溝形状を有している。
パーキング時係合部位144Pは前記スライダー部材170を基準位置に固定するような溝形状を有している。
後進時係合部位144R及びパーキング時係合部位144Pの間の移行部位は、前記スライダー部材170の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、前記スライダー部材170の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140の後進位置Rからパーキング位置Pへの回転に従って第2変位位置から基準位置へ変化させるような溝形状を有している。
次に、前記第2フォーク案内溝142(1)の溝形状について説明する。
前記第2フォーク案内溝142(1)は、前記ドラム部材140が低速位置Lに位置された際には第2シフトフォーク130(2)が基準位置及び低速位置の間で軸線方向に移動することを許容する一方で、前記ドラム部材140が低速位置L以外の操作位置に位置される際には第2シフトフォーク130(2)を基準位置に固定する溝形状を有している。
即ち、図5に示すように、高速時係合部位142(2)Hからパーキング時係合部位142(2)Pへ至る領域は、前記第2シフトフォーク130(2)を基準位置に固定するように前記第2係合ピン部134(2)を狭持する溝形状を有している。
一方、低速時係合部位142(2)Lは、前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第1側への移動端を低速位置とし且つ軸線方向第2側への移動端を基準位置とさせるような溝形状を有している。
そして、高速時係合部位142(2)H及び低速時係合部位142(2)Lの間の移行部位は、前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140の高速位置Hから低速位置Lへの回転に従って基準位置から低速位置へ変化させるような溝形状を有している。
斯かる構成を備えた前記ドラム型変速操作機構100Aは、変速動作時に待ち受け作用を奏することができる。
まず、高速段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140が中立位置Nに位置されている際には、前述のように、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第2シフトフォーク130(2)は基準位置に固定されている(図5参照)。
従って、前記第1及び第2シフター部材110(1)、110(2)は共に基準位置に位置され、前記ドラム型変速装置1Aは中立段となる(図4参照)。
前記ドラム部材140が中立位置Nから高速位置Hへ操作される際には、前述の通り、前記第1フォーク案内溝142(1)によって規制される前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側の移動端は、前記ドラム部材140の中立位置Nから高速位置Hへの回転に従って基準位置から高速位置へ変化し、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)は基準位置及び高速位置の間で軸線方向に移動可能な状態とされる。
一方、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置された際に、前記スライダー部材170は、前記スライダー案内溝144によって退避位置(本実施の形態においては第1変位位置)に固定されている。
この状態においては、前記スライダー部材押動バネ180が前記スライダー部材170を軸線方向第2側へ押動する力は前記第1ボス部132(1)には作用せず、前記第1ボス部132(1)には前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)による軸線方向第2側への付勢力だけが作用する。
従って、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)は前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力によって高速位置まで移動され得る状態となる。
ここで、前記ドラム部材140を高速位置Hに位置させた際に、前記第1シフター部材110(1)の高速用凹凸部112Hと前記変速ギヤ10Hの変速用凹凸部12Hとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記高速用凹凸部112H及び前記変速用凹凸部12Hが直ちに凹凸係合して前記変速ギヤ10Hが伝動状態となり、前記ドラム型変速装置1Aが直ちに高速段係合状態となる。
しかしながら、前記第1シフター部材110(1)及び前記変速ギヤ10Hの軸線回り相対位置によっては、前記第1シフター部材110(1)の高速用凹凸部112Hの凸部及び前記変速ギヤ10Hの変速用凹凸部12Hの凸部同士が突き合わされる事態が生じ得る(図6参照)。
この場合、前記第1シフター部材110(1)は直ちには高速位置まで移動することはできない。
このような事態が生じたとしても、本実施の形態においては、前記ドラム部材140を高速位置Hまで先行回転させることができ(図7参照)、その後に前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)による付勢力によって前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)を高速位置まで移動させて、前記ドラム型変速装置1Aの高速段への変速動作を完了させることができる。
即ち、前記凸部同士の突き合わせ事態が生じた場合、前記第1シフター部材110(1)及び前記第1シフトフォーク130(1)は、図6及び図7に示すように、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)による軸線方向第1側への付勢力を受け続けている状態で、前記凸部同士の突き合わせによって基準位置に固定されることになる。
従って、前記第1シフター部材110(1)及び前記変速ギヤ10Hが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力によって前記第1シフター部材110(1)が前記第1シフトフォーク130(1)を介してが高速位置まで押動されて前記変速ギヤ10Hに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Aの高速段への変速動作が完了する(高速段への待ち受け作用)。
なお、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置された際には、前述の通り、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110(2)は基準位置に固定されており、前記変速ギヤ10Lは非伝動状態とされている。
次に、低速段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140が低速位置Lに位置されると、前記第2シフトフォーク130(2)(及び前記第2シフター部材110(2))は、前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)によって軸線方向第2側の低速位置へ向けて付勢された状態で、基準位置及び低速位置の間で軸線方向に移動可能な状態とされる。
ここで、前記ドラム部材140を低速位置Lに位置させた際に、前記第2シフター部材110(2)の低速用凹凸部112Lと前記変速ギヤ10Lの変速用凹凸部12Lとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記低速用凹凸部112L及び前記変速用凹凸部12Lが直ちに凹凸係合して前記変速ギヤ10Lが伝動状態となり、前記ドラム型変速装置1Aが直ちに低速段係合状態となる。
これに対し、前記第2シフター部材110(2)の低速用凹凸部112Lの凸部及び前記変速ギヤ10Lの変速用凹凸部12Lの凸部同士が突き合わされる事態が生じた場合には(図8参照)、前記第2シフター部材110(2)(及び前記第2シフトフォーク130(2))は前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)による軸線方向第1側への付勢力を受け続けている状態で基準位置に固定されることになり(図8参照)、前記ドラム部材140だけを低速位置Lへ先行回転させることができる(図9参照)。
そして、前記第2シフター部材110(2)及び前記変速ギヤ10Lが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)の付勢力によって前記第2シフター部材110(2)が低速位置まで押動されて前記変速ギヤ10Lに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Aの低速段への変速動作が完了する(低速段への待ち受け作用)。
なお、前記ドラム部材140が低速位置Lに位置された際には、前述の通り、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)は基準位置に固定されており、前記変速ギヤ10H及び前記変速ギヤ10Rは非伝動状態とされている。
次に、後進段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140が後進位置Rに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)は、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)によって軸線方向第1側へ向けて付勢された状態で、基準位置及び後進位置の間で軸線方向移動可能な状態とされる。
一方、前記スライダー部材170は、前記スライダー部材押動バネ180によって軸線方向第2側へ向けて付勢された状態で、基準位置及び第2変位位置の間で軸線方向移動可能な状態とされる。
前述の通り、前記スライダー部材押動バネ180の付勢力が前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力より大とされており、従って、前記ドラム部材140が後進位置Rに位置された際には、前記第1シフトフォーク130(1)は、前記スライダー部材押動バネ180の付勢力と前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力との差異に応じた大きさの付勢力で軸線方向第2側の後進位置まで移動され得る状態となっている。
ここで、前記ドラム部材140を後進位置Rに位置させた際に、前記第1シフター部材110(1)の後進用凹凸部112Rと前記変速ギヤ10Rの変速用凹凸部12Rとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記後進用凹凸部112R及び前記変速用凹凸部12Rが直ちに凹凸係合して前記変速ギヤ10Rが伝動状態となり、前記ドラム型変速装置1Aが直ちに後進段係合状態となる。
これに対し、前記第1シフター部材110(1)の後進用凹凸部112Rの凸部及び前記変速ギヤ10Rの変速用凹凸部12Rの凸部同士が突き合わされる事態が生じた場合には、前記第1シフター部材110(1)(及び前記第1シフトフォーク130(1))は前記スライダー部材押動バネ180の付勢力と前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力との差異に応じた大きさの付勢力で軸線方向第2側へ付勢された状態のままで基準位置に固定され(図10参照)、前記ドラム部材140だけを後進位置Rへ先行回転させることができる(図11参照)。
そして、前記第1シフター部材110(1)及び前記変速ギヤ10Rが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記スライダー部材押動バネ180の付勢力と前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力との差異に応じた大きさの付勢力によって前記第1シフター部材110(1)が前記第1シフトフォーク130(1)を介して後進位置まで押動されて前記変速ギヤ10Rに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Aの後進段への変速動作が完了する(後進段への待ち受け作用)。
このように、前記ドラム型変速操作機構100Aにおいては、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)によって前記第1シフトフォーク130(1)を軸線方向第1側の高速位置へ向けて付勢し、且つ、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)より大きな付勢力の前記スライダー部材押動バネ180によって軸線方向第2側へ付勢される前記スライダー部材170を介して前記第1シフトフォーク130(1)を軸線方向第2側の後進位置へ向けて付勢するように構成した上で、前記ドラム部材140が高速位置に位置された際には前記スライダー部材押動バネ180の付勢力が前記第1シフトフォーク130(1)に作用しないように前記ドラム部材140の前記スライダー案内溝144によって前記スライダー部材180を退避位置に固定させることで、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力によって高速段への待ち受け作用を現出させている。
そして、前記ドラム部材140が後進位置に位置された際には前記スライダー部材押動バネ180及び前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の双方が前記第1シフトフォーク130(1)に作用した状態で前記第1シフター部材110(1)及び前記第1シフトフォーク130(1)が基準位置及び後進位置の間で軸線方向移動可能となるように前記ドラム部材140の前記スライダー案内溝144及び前記第1フォーク案内溝142(1)を形成しており、これにより、前記両押動バネ180、160(1)の付勢力の差異によって後進段への待ち受け作用を現出させている。
従って、フォーク軸自体を軸線方向に移動させることで待ち受け作用を得るように構成されている従来構成に比して、軸線方向に関する小型化及び操作力の低減を図ることができる。
なお、本実施の形態においては、前記スライダー案内溝144は、前記ドラム部材140が中立位置Nに位置された際には前記スライダー部材170を基準位置に固定し、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置された際には前記スライダー部材170を第1変位位置に固定し、前記ドラム部材140が低速位置Lに位置された際には前記スライダー部材170を基準位置に固定し、前記ドラム部材140が後進位置Rに位置された際には前記スライダー部材170を基準位置及び第2変位位置の間で軸線方向移動可能とし、前記ドラム部材140がパーキング位置Pに位置された際には前記スライダー部材170を基準位置に固定するように構成されているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
例えば、前記ドラム部材140が高速位置Hに位置された際には前記スライダー部材170を退避位置(例えば第1変位位置)に固定する一方で、前記ドラム部材140が高速位置H以外に位置された際には、前記スライダー部材押動バネ180によって軸線方向第2側へ付勢されている前記スライダー部材170が、前記停止部133に当接された状態のままで、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向移動に追従して軸線方向へ移動することを許容するように形成されたスライダー案内溝145を採用することも可能である。
図12に、前記スライダー案内溝145の一例を備えたドラム部材140の展開図を示す。
図12に示す例においては、前記スライダー案内溝145の高速時係合部位145Hは前記スライダー部材170を退避位置(例えば第1変位位置)に固定し、その他の中立時係合部位145N、低速時係合部位145L、後進時係合部位145R及びパーキング時係合部位145Pは前記スライダー部材170が第1変位位置及び第2変位位置の間で軸線方向に移動することを許容するような溝形状を有している。
前記ドラム型変速操作機構100Aは、さらに、前記ドラム部材140を前記操作位置のそれぞれに係止するディテント機構700を備えている。
図13に、図4におけるXIII-XIII線に沿った断面図を示す。
図4及び図13に示すように、前記ディテント機構700は、前記ドラム部材140に相対回転不能に支持されたディテントプレート710と、前記ドラム部材140と平行なディテント軸725回り回転自在に支持されたディテントアーム720と、ディテントバネ730とを有している。
前記ディテントプレート710は、径方向外方に開き、前記ドラム部材140が取り得る操作位置に対応した複数のディテント凹部712を有している。
前述の通り、本実施の形態においては、前記ドラム部材140は、中立位置Nと、中立位置Nから軸線回り一方側へ操作された際に位置する高速位置Hと、高速位置Hが軸線回り一方側へ操作された際に位置する低速位置Lと、中立位置Nから軸線回り他方側へ操作された際に位置する後進位置Rと、後進位置Rから軸線回り他方側へ操作された際に位置するパーキング位置Pとを取り得るようになっている。
従って、前記複数のディテント凹部712は、中立位置用凹部712N、高速位置用凹部712H、低速位置凹部712L、後進位置用凹部712R及びパーキング位置用凹部712Pを含む。
前記複数のディテント凹部712は、前記ドラム部材140の操作位置に対応する凹部が、軸線回りに関し前記ディテントアーム712の自由端部と対向するディテント位置715に位置するように、周方向に配列されている。
図13は、前記ドラム部材140が中立位置Nに位置されている状態を示しており、従って、対応する中立位置用凹部712Nがディテント位置715に位置している。
詳しくは、中立位置用凹部712N、高速位置用凹部712H、低速位置用凹部712L、後進位置用凹部712R及びパーキング位置用凹部712Pは、それぞれ、前記ドラム部材140が中立位置N、高速位置H、低速位置L、後進位置R及びパーキング位置Pに位置された際にディテント位置715に位置するように配置されている。
前記ディテントアーム720は、基端部が前記ディテント軸725に回動可能に支持され且つ自由端部に前記ディテント位置715に位置するディテント凹部712に係入可能な係合部722を有している。
本実施の形態においては、前記ディテントアーム720は、自由端部に前記ディテント軸712と平行な回動軸回り回動可能なローラーを有しており、前記ローラーが前記係合部722として作用している。
前記ディテントバネ730は、前記ディテントアーム720の係合部722がディテント位置715に位置するディテント凹部712へ向けて押圧されるように、前記ディテントアーム720を前記ディテント軸725回りに付勢している。
前記ディテント機構700を備えることにより、前記ドラム部材140が意に反して操作位置から回転することを有効に防止することができる。
以下、前記ドラム型変速装置1Aのパーキング構造について説明する。
図14に、図4におけるXIV-XIV線に沿った断面図を示す。
なお、図14には、図4におけるA1-A1線矢視図及びA2-A2線矢視図を併せて示している。
図4及び図14に示すように、前記ドラム型変速装置1Aにおいては、シフトフォーク(前記第2シフトフォーク130(2))によって軸線方向に移動されて、対応する変速ギヤ(前記変速ギヤ10L)に凹凸係合することで当該変速ギヤを動力伝達状態とするシフター部材(前記第2シフター部材110(2))に、径方向外方を向くパーキング用凹凸部112Pが設けられている。
その上で、前記ドラム型変速装置1Aには、前記パーキング用凹凸部112Pに凹凸係合して前記シフター部材(前記第2シフター部材130(2))を強制的に回転停止状態とさせるロック機構500が備えられている。
このように、前記ドラム型変速装置1Aは、対応する変速ギヤ(前記変速ギヤ10L)による動力伝達を係脱させるシフター部材(前記第2シフター部材110(2))をパーキングギヤとして兼用するように構成されており、これにより、部品点数削減によるコスト低廉化及び軸線方向に関する小型化を図り得るようになっている。
即ち、従来、第1伝動回転軸に相対回転自在に支持された変速ギヤと、第2伝動回転軸に相対回転不能に支持され且つ前記変速ギヤに直接又は間接的に噛合された伝動ギヤと、前記第1伝動回転軸に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されたシフター部材と、軸線回りに回転操作されるドラム部材と、前記ドラム部材と平行なフォーク軸と、前記フォーク軸に軸線方向移動可能に支持されたシフトフォークとを備え、前記ドラム部材に形成されたフォーク案内溝によって軸線方向位置が規制された前記シフトフォークを前記ドラム部材の回転に応じて軸線方向に移動させて前記シフター部材を前記変速ギヤに凹凸係合させ、これにより、前記変速ギヤ及び前記伝動ギヤを介して前記第1及び第2伝動回転軸間で動力伝達を行うように構成されたドラム型変速装置においてパーキング段を得る為の構造としては、前記第1伝動回転軸に前記シフター部材とは別部材のパーキングギヤを相対回転不能に設け、前記パーキングギヤを強制的に回転停止状態とさせるように構成することが一般的であった。
しかしながら、この従来構成においては、前記変速ギヤ及び前記シフター部材とは別体とされた前記パーキングギヤを前記変速ギヤ及び前記シフター部材とは軸線方向に変位された位置で前記第1伝動回転軸に設ける必要があり、軸線方向に関し大型化を招くことになる。
これに対し、本実施の形態に係るドラム型変速装置1Aにおいては、前記シフター部材(前記第2シフター部材110(2))とは別部材のパーキングギヤを備える必要が無く、従って、軸線方向に関し装置の小型化を図ることができると共に、パーキングギヤの不要化による部品点数の削減によってコスト低廉化も図ることができる。
図14に示すように、前記ロック機構500は、前記第2シフター部材110(2)を支持する前記第1伝動回転軸810と平行な揺動軸線505回り揺動可能とされ且つ自由端部に前記パーキング用凹凸部112Pに係合可能な係合部515を有するパーキング用作動アーム510と、前記揺動軸線505回りパーキング解除方向へ前記パーキング用作動アーム510を付勢するパーキング解除バネ520(図3参照)と、パーキング用押動部材530とを有している。
前記パーキング用作動アーム510は、前記揺動軸線505回りに、前記係合部515が前記パーキング用凹凸部112Pに係合されて前記第2シフター部材110(2)を強制的に回転停止状態とさせるパーキング位置及び前記係合部515が前記パーキング用凹凸部112Pから径方向外方へ離間されるパーキング解除位置を取り得る。
前記パーキング用押動部材530は、前記ドラム部材140がパーキング位置Pへ軸線回りに回転する動きを利用して、前記パーキング解除バネ520の付勢力に抗して前記パーキング用作動アーム510をパーキング位置へ向けて押動する。
本実施の形態においては、図4及び図14に示すように、前記パーキング用押動部材530は、前記ドラム部材140に支持された本体部532と、前記本体部532から径方向外方へ延在されたカム押動部535とを有している。
図15及び図16に、図14と同一断面の断面図であって、それぞれ、前記ドラム部材140が変速位置(後進位置R)及びパーキング位置Pに位置された状態の断面図を示す。
図17に、図4と同一断面の断面図であって、パーキング段に係合している状態の断面図を示す。
また、図18に、前記ドラム部材140がパーキング位置Pに位置された状態の展開図を示す。
前記カム押動部530は、図14及び図15に示すように、前記ドラム部材140が中立位置N及び変速位置(図示の形態においては後進位置R)に位置する際には前記パーキング用作動アーム510に対して作用せず、且つ、図16に示すように、前記ドラム部材140のパーキング位置Pへの回転動作を利用して前記パーキング解除バネ520(図3参照)の付勢力に抗して前記パーキング用作動アーム510をパーキング位置へ向けて押動するように構成されている。
本実施の形態においては、図3及び図14〜図16に示すように、前記パーキング用作動アーム510は、前記揺動軸線505を画する枢支軸506に相対回転自在に外挿されるボス部512と、前記ボス部512から径方向外方へ延びるアーム部514とを有しており、前記アーム部514の自由端部のうち前記パーキング用凹凸部112Pと対向する側に前記係合部515が設けられ、前記アーム部514の前記パーキング用凹凸部112Pとは反対側に前記カム押動部535が係合する受圧面516が設けられている。
図3及び図14〜図16中の符号508は前記ボス部512を前記枢支軸506に相対回転自在とさせるブッシュである。
なお、本実施の形態においては、図3に示すように、後進ギヤ列を形成する前記後進アイドルギヤ15を支持するアイドル軸16が前記パーキング用作動アーム510を揺動可能に支持する前記枢支軸506として利用されている。
前記パーキング解除バネ520は、図3等に示すように、一端側が前記パーキング用作動アーム510に作動連結され且つ他端側が(本実施の形態においてはピン522を介して)前記枢支軸506に作動連結された状態で、前記枢支軸506に外挿されたコイルバネとされている。
本実施の形態においては、前述の通り、前記ドラム部材140は、中立位置Nから軸線回り他方側へ回転されると後進位置Rをとり、後進位置Rからさらに軸線回り他方側へ回転されるとパーキング位置Pをとるようになっている。
従って、前記カム押動部535は、前記ドラム部材140が中立位置N(図14)及び後進位置R(図16)に位置される際には前記受圧面516に係合せず、且つ、前記ドラム部材140が後進位置Rからパーキング位置Pへ向けて回転される際に前記受圧面516と係合して、前記パーキング解除バネ520の付勢力に抗して前記パーキング用作動アーム510をパーキング位置へ向けて押動する。
このように、本実施の形態においては、前記パーキング用押動部材530を前記ドラム部材140に支持させており、これにより、前記ドラム部材140のパーキング位置Pへの回転を利用して前記パーキング用作動アーム510をパーキング位置へ向けて押動する前記ロック機構500のコンパクト化を図ることができる。
本実施の形態に係るドラム型変速装置1は、パーキング段への変速動作における待ち受け作用を奏する為にさらに下記構成を備えている。
即ち、本実施の形態においては、前記パーキング用押動部材530の本体部532は、前記ドラム部材140に相対回転自在に外挿されている。
その上で、前記パーキング用押動部材530と前記ドラム部材140とは、図4及び図14〜図16に示すように、一端側が前記パーキング用押動部材530に作動連結され且つ他端側が(本実施の形態においてはピン542を介して)前記ドラム部材140に作動連結された状態で前記ドラム部材140に外挿されたパーキング用コイルバネ540を介して連結されている。
前記パーキング用コイルバネ540は、前記カム押動部535に掛かる周方向負荷が所定値以下の場合には前記ドラム部材140の軸線回りの回転に伴って前記パーキング用押動部材530が一体回転するように両者を相対回転不能に連結させる一方で、前記カム押動部535に掛かる周方向負荷が所定値を越える場合には弾性変形して前記ドラム部材140が前記パーキング用押動部材530に対して軸線回りに先行相対回転することを許容するように構成されている。
なお、本実施の形態においては、前記パーキング用コイルバネ540は、前記ドラム部材140を前記パーキング用押動部材530に対して先行相対回転させる際に縮径方向に弾性変形するように構成されている。
斯かる構成を備えることにより、パーキング段への変速動作において待ち受け作用を得ることができる。
即ち、前記ドラム部材140のパーキング位置Pへの回転に応じて前記カム押動部535が前記パーキング用作動アーム510をパーキング位置へ向けて揺動させる際に、前記パーキング用作動アーム510の係合部515が前記第2シフター部材110(2)のパーキング用凹凸部112Pの凸部に突き合わされて、前記パーキング用作動アーム510がパーキング位置まで揺動できない事態が生じたとする(図19参照)。
この場合、前記カム押動部535には前記所定値を越える周方向負荷が掛かることになる。
従って、前記ドラム部材140は、図19に示すように、前記パーキング用コイルバネ540を弾性変形させつつ、前記パーキング用押動部材530に対して軸線回りにパーキング位置Pまで先行相対回転する。
この弾性変形状態の前記パーキング用コイルバネ540は、前記パーキング用押動部材530を前記ドラム部材140に追従させる方向へ付勢する弾性力を保有しており、前記係合部515及び前記パーキング用凹凸部112Pが位置合わせされた段階で前記弾性力によって前記パーキング解除バネ520の付勢力に抗して前記パーキング用作動アーム510がパーキング位置まで揺動され、前記係合部515及び前記パーキング用凹凸部112Pが凹凸係合して、パーキング段への変速動作が完了する(図16参照)。
本実施の形態においては、図16に示すように、前記カム押動部535が前記パーキング用作動アーム510をパーキング位置に位置させて前記ドラム型変速装置1Aがパーキング段係合状態となった際に、前記受圧面516から前記カム押動部535に作用する反力の方向が、前記ドラム部材140の軸線を基準にして前記カム押動部535が径方向外方へ延びる方向に略対向するように構成されている(以下、カム押動部535による「つっかえ」構成という)。
カム押動部535による「つっかえ」構成を備えることにより、前記パーキング用作動アーム510の前記係合部515及び前記パーキング用凹凸部112Pの凹凸係合が意に反して解除されることを有効に防止乃至は低減することができる。
詳しくは、前記ドラム型変速装置1Aが作業車輌の走行系伝動経路に用いられている場合において、前記作業車輌が坂道上に位置している状態で前記ドラム部材140をパーキング位置Pに位置させて前記ドラム型変速装置1Aをパーキング段係合状態とさせたと仮定する。
このような状況では、前記作業車輌に掛かる重力が駆動輪から前記第1伝動回転軸810に逆伝達され、前記第1伝動回転軸810には軸線回りの回転駆動力が作用する。
一般的に、凹凸係合構造の凹部(本実施の形態においては前記パーキング用凹凸部112Pの凹部)の横断面視形状を径方向内方へ行くに従って幅狭となるテーパ状とし、前記凹部に係入される凸部(本実施の形態においては前記パーキング用作動アーム510の係合部515)の横断面視形状を前記凹部に対応したテーパ状とすることで、凹凸係合の「し易さ」を確保することができる。
その反面で、前記パーキング用凹凸部112Pの凹部及び前記係合部515の横断面視形状をテーパ状とすると、前記第1伝動回転軸810に駆動輪からの逆駆動力が伝達された際に、この逆駆動力が前記パーキング用作動アーム510をパーキング解除方向へ揺動させる力として作用することになり、パーキング位置に位置している前記パーキング用作動アーム510が意に反してパーキング解除方向へ揺動されて、前記パーキング用作動アーム510及び前記パーキング用凹凸部112Pの凹凸係合が解除する事態が生じ得る。
この点に関し、カム押動部535による「つっかえ」構成を備えていれば、前記パーキング用作動アーム510が意に反してパーキング位置から解除方向へ揺動する事態を有効に防止乃至は低減できる。
また、本実施の形態においては、図14及び図15等に示すように、前記カム押動部535が前記パーキング用作動アーム510に係合していない状態、即ち、前記ドラム部材140が低速位置Lから後進位置Rまでの操作位置に位置されている状態において、前記フォーク軸120が、前記パーキング解除バネ520によって揺動軸線505回りパーキング解除方向へ付勢されている前記パーキング用作動アーム510に当接して、前記パーキング用作動アーム510のパーキング解除方向の揺動端を画するように構成されている。
斯かる構成を備えることにより、追加部材を備えること無く、前記ドラム部材140が低速位置L及び後進位置Rの間の操作位置に位置されている状況下において、前記パーキング解除バネ520によってパーキング解除方向へ付勢されている前記パーキング用作動アーム510が前記パーキング用押動部材530に押し付けられて、前記パーキング解除バネ520の付勢力が前記ドラム部材140の軸線回りの操作に対して影響することを有効に防止することができる。
なお、前記ドラム部材140に支持された前記パーキング用押動部材530と、前記第1伝動回転軸810と平行な揺動軸線505回り揺動可能で、自由端部に前記係合部515を有する前記パーキング用作動アーム510と、前記パーキング用作動アーム510を前記揺動軸線505回り解除方向へ付勢するパーキング解除バネ520とを備え、前記ドラム部材140のパーキング位置Pの回転動作を利用して前記パーキング用押動部材530によって前記パーキング用作動アーム510を揺動させてパーキング段係合状態を現出させる前記ロック機構500は、前記シフター部材(前記第2シフター部材110(2))にパーキング用凹凸部112Pが設けられている形態にのみ適用されるものでは無く、前記第1伝動回転軸510に前記シフター部材(前記第2シフター部材110(2))とは別部材の専用パーキングギヤ10Pを設けた形態にも適用可能である。
図20に、前記シフター部材(前記第2シフター部材110(2))とは別部材のパーキングギヤ10Pを備えた形態に前記ロック機構500を適用した変形例の断面図を示す。
実施の形態2
以下、本発明の他の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図21に、本実施の形態に係るドラム型変速装置1Bの断面図であって、前記実施の形態1の図4に対応した断面図を示す。
なお、図中、前記実施の形態1におけると同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明を適宜省略する。
本実施の形態に係るドラム型変速装置1Bは、前記ドラム型変速操作機構100Aに代えてドラム型変速操作機構100Bを備えている点において、前記実施の形態1に係るドラム型変速装置1Aと相違している。
図21に示すように、前記ドラム型変速操作機構100Bは、前記第1シフター部材110(1)と、第2シフター部材110B(2)と、前記フォーク軸120と、前記第1シフトフォーク130(1)と、前記第2シフトフォーク130(2)と、ドラム部材140Bとを備えている。
前記第1シフター部材110(1)は、変速ギヤ10H及び変速ギヤ10Rの間で前記第1伝動回転軸810に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されており、前記第1シフトフォーク130(1)によって軸線方向に移動される。
前記第1シフター部材110(1)は、変速ギヤ10Hと対向する軸線方向一方側の端面に変速ギヤ10Hの変速用凹凸部12Hに凹凸係合可能な高速用凹凸部112Hを有し、且つ、変速ギヤ10Rと対向する軸線方向他方側の端面に変速ギヤ10Rの変速用凹凸部12Rに凹凸係合可能な後進用凹凸部112Rを有している。
前記第1シフター部材110(1)及び前記第1シフトフォーク130(1)は、軸線方向に関し、前記第1シフター部材110(1)が変速ギヤ10H及び変速ギヤ10Rの何れとも凹凸係合しない基準位置(図21参照)と、前記第1シフター部材110(1)が変速ギヤ10Hと凹凸係合する高速位置と、前記第1シフター部材110(1)が変速ギヤ10Rと凹凸係合する後進位置とを取り得る。
本実施の形態に係るドラム型変速装置1Bは、前記変速ギヤ10として、変速ギヤ10H、変速ギヤ10L及び変速ギヤ10Rに加えて、パーキング段を形成するパーキングギヤ(変速ギヤ10P)を有している。
前記パーキングギヤ(変速ギヤ10P)はミッションケース805等の固定部材に回転不能に固定されている。
即ち、本実施の形態においては、前記パーキングギヤ(変速ギヤ10P)はシフター部材とは別部材とされている。
斯かる構成において、前記第2シフター部材110B(2)は、変速ギヤ10L及び変速ギヤ10Pの間で前記第1伝動回転軸810に相対回転不能且つ軸線方向移動可能に支持されており、前記第2シフトフォーク130(2)によって軸線方向に移動される。
前記第2シフター部材110B(2)は、変速ギヤ10Lと対向する軸線方向一方側の端面に変速ギヤ10Lの変速用凹凸部12Lに凹凸係合可能な低速用凹凸部112Lを有し、且つ、変速ギヤ10Pと対向する軸線方向他方側の端面に変速ギヤ10Pの変速用凹凸部12Pに凹凸係合可能なパーキング用凹凸部112Pを有している。
前記第2シフター部材110B(2)及び前記第2シフトフォーク130(2)は、軸線方向に関し、前記第2シフター部材110B(2)が変速ギヤ10L及び変速ギヤ10Pの何れとも凹凸係合しない基準位置(図21参照)と、前記第2シフター部材110B(2)が変速ギヤ10Lと凹凸係合する低速位置と、前記第2シフター部材110B(2)が変速ギヤ10Pと凹凸係合するパーキング位置とを取り得る。
図21に示すように、前記ドラム型変速操作機構100Bは、さらに、前記第1シフトフォーク130(1)の第1ボス部132(1)を軸線方向第2側へ押動する第1シフトフォーク押動バネ160(1)と、前記第2シフトフォーク130(2)の第2ボス部132(2)を軸線方向第1側へ押動する第2シフトフォーク押動バネ160(2)と、前記第1ボス部132(1)に設けられた第1停止部133(1)によって軸線方向第1側への移動端が画された状態で前記第1ボス部132(1)に軸線方向移動可能に支持された第1スライダー部材170(1)と、前記第2ボス部132(2)に設けられた第2停止部133(2)によって軸線方向第2側への移動端が画された状態で前記第2ボス部132(2)に軸線方向移動可能に支持された第2スライダー部材170(2)と、前記第1スライダー部材170(1)を軸線方向第1側へ押動する第1スライダー部材押動バネ180(1)と、前記第2スライダー部材170(2)を軸線方向第2側へ押動する第2スライダー部材押動バネ180(2)とを備えている。
前記第1スライダー部材170(1)は、前記ドラム部材140Bに設けられた第1スライダー案内溝144B(1)によって軸線方向位置が規制されている。
即ち、前記第1スライダー部材170(1)は、前記第1ボス部132(1)に軸線方向移動可能に外挿された第1スライダー本体172(1)と、前記ドラム部材140Bの第1スライダー案内溝144Bに係入される第1スライダー係合ピン部174(1)とを有している。
前記第2スライダー部材170(2)は、前記ドラム部材140Bに設けられた第2スライダー案内溝144B(2)によって軸線方向位置が規制されている。
即ち、前記第2スライダー部材170(2)は、前記第2ボス部132(2)に軸線方向移動可能に外挿された第2スライダー本体172(2)と、前記ドラム部材140Bの第2スライダー案内溝144B(2)に係入される第2スライダー係合ピン部174(2)とを有している。
前記第1スライダー部材押動バネ180(1)は、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)より大きな付勢力を有している。
前記第2スライダー部材押動バネ180(2)は、前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)より大きな付勢力を有している。
図21に示すように、本実施の形態においては、前記第1及び第2スライダー部材押動バネ180(1)、180(2)は、一端側が前記第1スライダー部材170(1)に係合され且つ他端側が前記第2スライダー部材170(2)に係合された単一バネ210によって形成されている。
ここで、前記ドラム部材140Bに形成された案内溝について説明する。
図22に、前記ドラム部材140Bの展開図を示す。
図22に示すように、前記ドラム部材140Bには、前記第1シフトフォーク130(1)の第1係合ピン部134(1)が係入される第1フォーク案内溝142B(1)と、前記第2シフトフォーク130(2)の第2係合部134(2)が係入される第2フォーク案内溝142B(2)と、前記第1スライダー部材170(1)の第1スライダー係合ピン部174(1)が係入される第1スライダー案内溝144B(1)と、前記第2スライダー部材170(2)の第2スライダー係合ピン部171(2)が係入される第2スライダー案内溝144B(2)とが設けられている。
まず、前記第1フォーク案内溝142B(1)の溝形状について説明する。
図22に示すように、前記第1フォーク案内溝142B(1)の中立時係合部位142B(1)Nは前記第1シフトフォーク130(1)を基準位置に固定するように前記第1係合ピン部134(1)を狭持する溝形状を有している。
高速時係合部位142B(1)Hは前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端が高速位置となり且つ軸線方向第2側への移動端が基準位置となるように、前記第1係合ピン134(1)を案内する溝形状を有している。
中立時係合部位142B(1)N及び高速時係合部位142B(1)Hの間に位置する移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140Bの中立位置Nから高速位置Hへの回転に従って基準位置から高速位置へ変化させるような溝形状を有している。
低速時係合部位142B(1)Lは、前記第1シフトフォーク130(1)を基準位置に固定するように前記第1係合ピン部134(1)を狭持する溝形状を有している。
高速時係合部位142B(1)H及び低速時係合部位142B(1)Lの間の移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140B(1)の高速位置Hから低速位置Nへの回転に従って高速位置から基準位置へ変化させるような溝形状を有している。
後進時係合部位142B(1)Rは前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端が基準位置となり且つ軸線方向第2側への移動端が後進位置となるように、前記第1係合ピン134(1)を案内する溝形状を有している。
中立時係合部位142B(1)N及び後進時係合部位142B(1)Rの間に位置する移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140Bの中立位置Nから後進位置Rへの回転に従って基準位置から後進位置へ変化させるような溝形状を有している。
パーキング時係合部位142B(1)Pは、前記第1シフトフォーク130(1)を基準位置に固定するように前記第1係合ピン部134(1)を狭持する溝形状を有している。
後進時係合部位142B(1)R及びパーキング時係合部位142B(1)Pの間の移行部位は、前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140Bの後進位置Rからパーキング位置Pへの回転に従って後進位置から基準位置へ変化させるような溝形状を有している。
次に、前記第1スライダー案内溝144B(1)の溝形状について説明する。
前記第1スライダー案内溝144B(1)の高速時係合部位144B(1)Hは、前記第1スライダー部材170(1)が前記第1シフトフォーク130(1)を軸線方向第1側へ押圧した状態で前記第1シフトフォーク130(1)が前記第1フォーク案内溝142B(1)によって規制された基準位置及び第1変速位置間の軸線方向移動を行えるように前記第1スライダー部材170(1)の軸線方向移動可能範囲を画している。
詳しくは、前記第1スライダー部材170(1)が前記第1停止部133(1)に当接されたままで前記第1シフトフォーク130(1)が基準位置、高速位置及び後進位置に位置された際に前記第1スライダー部材170(1)が位置する軸線方向位置を、それぞれ、基準位置、第1変位位置及び第2変位位置とする。
本実施の形態においては、図22に示すように、前記第1スライダー案内溝144B(1)の高速時係合部位144B(1)Hは、前記第1スライダー部材170(1)が基準位置及び第1変位位置の間で移動可能なように前記第1スライダー部材170(1)を案内する。
後進時係合部位144B(1)Rは、前記ドラム部材140Bが後進位置Rに位置された際に前記第1シフトフォーク案内溝142B(1)の後進時係合部位142B(1)Rによって許可される前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向移動範囲を制限しない退避位置に、前記第1スライダー部材170(1)を固定する。
本実施の形態においては、図22に示すように、前記第1スライダー案内溝144B(1)の後進時係合部位144B(1)Rは、前記第1スライダー部材170(1)を第2変位位置に固定するように構成されている。
即ち、本実施の形態においては、前記第1スライダー案内溝144B(1)は、前記ドラム部材140Bが高速位置に位置された際に、前記第1スライダー部材170(1)を前記退避位置として第2変位位置に固定するように構成されている。
本実施の形態においては、前記スライダー案内溝144B(1)は、さらに、下記溝形状を有している。
即ち、図22に示すように、中立時係合部位144B(1)Nは前記第1スライダー部材170(1)を基準位置に固定するように前記第1スライダー係合ピン部174(1)を狭持する溝形状を有している。
中立時係合部位144B(1)N及び高速時係合部位144B(1)Hの間の移行部位は、前記第1スライダー部材170(1)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、前記第1スライダー部材170(1)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140Bの中立位置Nから高速位置Hへの回転に従って基準位置から第1変位位置へ変化させるような溝形状を有している。
低速時係合部位144B(1)Lは前記第1スライダー部材170(1)を基準位置に固定するように前記第1スライダー係合ピン部174(1)を狭持する溝形状を有している。
高速時係合部位144B(1)H及び低速時係合部位144B(1)Lの間の移行部位は、前記第1スライダー部材170(1)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、前記第1スライダー部材170(1)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部140B材の高速位置Hから低速位置Lへの回転に従って第1変位位置から基準位置へ変化させるような溝形状を有している。
中立時係合部位144B(1)N及び後進時係合部位144B(1)Rの間の移行部位は、前記ドラム部材140Bの中立位置Nから後進位置Rへの回転に従って前記第1スライダー部材170(1)を基準位置から第2変位位置に案内するような溝形状を有している。
パーキング時係合部位144B(1)Pは前記第1スライダー部材170(1)を基準位置に固定するように前記スライダー係合ピン部174(1)を狭持する溝形状を有している。
後進時係合部位144B(1)N及びパーキング時係合部位144(1)Pの間の移行部位は、前記ドラム部材140Bの後進位置Rからパーキング位置Pへの回転に従って前記第1スライダー部材170(1)を第2変位位置から基準位置に案内するような溝形状を有している。
次に、前記第2フォーク案内溝142B(2)の溝形状について説明する。
前記第2フォーク案内溝142B(2)は、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置された際には第2シフトフォーク130(2)が基準位置及び低速位置の間で軸線方向に移動することを許容し且つ前記ドラム部材140Bがパーキング位置Pに位置された際には第2シフトフォーク130(2)が基準位置及びパーキング位置の間で軸線方向に移動することを許容する一方で、前記ドラム部材140Bがそれ以外の操作位置に位置される際には第2シフトフォーク130(2)を基準位置に固定する溝形状を有している。
即ち、図22に示すように、高速時係合部位142B(2)Hから後進時係合部位142B(2)Rへ至る領域は、前記第2シフトフォーク130(2)を基準位置に固定するように前記第2係合ピン部134(2)を狭持する溝形状を有している。
一方、低速時係合部位142B(2)Lは前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第1側への移動端が低速位置となり且つ軸線方向第2側への移動端が基準位置となるように、前記第2係合ピン部134(2)を案内する溝形状を有している。
そして、高速時係合部位142B(2)H及び低速時係合部位142B(2)Lの間の移行部位は、前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第2側への移動端を基準位置に固定しつつ、第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第1側への移動端を前記ドラム部材140Bの高速位置Hから低速位置Lへの回転に従って基準位置から低速位置へ変化させるような溝形状を有している。
パーキング時係合部位142B(2)Pは、前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第1側への移動端が基準位置となり且つ軸線方向第2側への移動端がパーキング位置となるように、前記第2係合ピン部134(2)を案内する溝形状を有している。
そして、後進時係合部位142B(2)R及びパーキング時係合部位142B(2)Pの間の移行部位は、前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第1側への移動端を基準位置に固定しつつ、第2シフトフォーク130(2)の軸線方向第2側への移動端を前記ドラム部材140Bの後進位置Rからパーキング位置Pへの回転に従って基準位置からパーキング位置へ変化させるような溝形状を有している。
次に、前記第2スライダー案内溝144B(2)の溝形状について説明する。
前記第2スライダー案内溝144B(2)の低速時係合部位144B(2)Lは、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置された際に前記第2シフトフォーク案内溝142B(2)の低速時係合部位142B(2)Lによって許可される前記第2シフトフォーク130(2)の軸線方向移動範囲を制限しない退避位置に、前記第2スライダー部材170(2)を固定する。
詳しくは、前記第2スライダー部材170(2)が前記第2停止部133(2)に当接されたままで前記第2シフトフォーク130(2)が基準位置、低速位置及びパーキング位置に位置された際に前記第2スライダー部材170(2)が位置する軸線方向位置を、それぞれ、基準位置、第3変位位置及び第4変位位置とする。
本実施の形態においては、図22に示すように、前記第2スライダー案内溝144B(2)の低速時係合部位144B(2)Lは、前記第2スライダー部材170(2)を第3変位位置に固定するように構成されている。
即ち、本実施の形態においては、前記第2スライダー案内溝144B(2)は、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置された際に、前記第2スライダー部材170(2)を前記退避位置として第3変位位置に固定するように構成されている。
前記第2スライダー案内溝144B(2)のパーキング時係合部位144B(2)Pは、前記第2スライダー部材170(2)が前記第2シフトフォーク130(2)を軸線方向第2側へ押圧した状態で前記第2シフトフォーク130(2)が前記第2フォーク案内溝142B(2)によって規制された基準位置及びパーキング位置間の移動を行えるように、前記第2スライダー部材170(2)の軸線方向移動可能範囲を画している。
本実施の形態においては図22に示すように、前記第2スライダー案内溝144B(2)のパーキング時係合部位144B(2)Pは、前記第2スライダー部材170(2)が基準位置及び第4変位位置の間で移動可能なように前記第2スライダー部材170(2)を案内する。
斯かる構成の前記ドラム型変速装置1Bは、変速動作において待ち受け作用を奏することができる。
まず、高速段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140Bが中立位置Nに位置されている際には、前述のように、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第2シフトフォーク130(2)は基準位置に固定されている(図22参照)。
従って、前記第1及び第2シフター部材110(1)、110B(1)は共に基準位置に位置することになり、前記ドラム型変速装置1Bは、中立状態となる(図21参照)。
前記ドラム部材140Bが中立位置Nから高速位置Hへ操作される際には、前述の通り、前記第1フォーク案内溝142B(1)によって規制される前記第1シフトフォーク130(1)の軸線方向第1側の移動端は、前記ドラム部材140Bの中立位置Nから高速位置Hへの回転に従って基準位置から高速位置へ変化し、前記ドラム部材140Bが高速位置Hに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)は基準位置及び高速位置の間で軸線方向に移動可能な状態とされる。
前述の通り、前記第1スライダー部材170(1)を軸線方向第1側へ付勢する前記第1スライダー部材押動バネ180(1)(本実施の形態においては前記単一バネ210)の付勢力が、前記第1シフトフォーク130(1)を軸線方向第2側へ付勢する前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力より大とされているから、前記ドラム部材140Bが高速位置Hに位置された際には、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材170(1)は、前記第1スライダー部材押動バネ180(1)及び前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力の差異に応じた大きさの付勢力で軸線方向第1側の高速位置まで移動され得る状態となる。
ここで、前記ドラム部材140Bを高速位置Hに位置させた際に、前記第1シフター部材110(1)の高速用凹凸部112Hと前記変速ギヤ10Hの変速用凹凸部12Hとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記高速用凹凸部112H及び前記変速用凹凸部12Hに直ちに凹凸係合して前記変速ギヤ10Hが伝動状態となり、前記ドラム型変速装置1Bが直ちに高速段係合状態となる。
これに対し、前記第1シフター部材110(1)の高速用凹凸部112Hの凸部と前記変速ギヤ10Hの変速用凹凸部12Hの凸部同士が突き合わされる事態が生じた場合には、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)が基準位置に位置されたままで、前記ドラム部材140Bだけを高速位置Hへ先行回転させることができる。
この前記ドラム部材140Bの高速位置Hへの先行回転状態においては、前記第1シフトフォーク130(1)は基準位置及び高速位置の間で軸線方向移動可能とされ且つ前記第1スライダー部材110(1)は基準位置及び第1変位位置の間で軸線方向移動可能とされている。
従って、前記第1シフター部材110(1)及び前記変速ギヤ10Hが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記第1スライダー部材押動バネ180(1)(本実施の形態においては前記単一バネ210)及び前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力の差異に応じた大きさの付勢力によって前記第1シフトフォーク130(1)を介して前記第1シフター部材110(1)が高速位置まで押動されて前記変速ギヤ10Hに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Bの高速段への変速動作が完了する(高速段への待ち受け作用)。
なお、前記ドラム部材140Bが高速位置Hに位置された際には、前述の通り、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110B(2)は基準位置に固定されており、前記第2シフター部材110B(2)は変速ギヤ10L及び変速ギヤ10Pの何れとも凹凸係合しない状態とされている。
次に、低速段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)は基準位置に固定され、前記第1シフター部材110(1)は高速ギヤ10H及び後進ギヤ10Rの何れとも凹凸係合しない状態となる。
一方、前記第2シフトフォーク110(2)は基準位置及び低速位置の間で軸線方向移動可能な状態とされており、前記第2スライダー部材110B(2)は退避位置(本実施の形態においては第3変位位置)に固定されている。
この状態においては、前記第2スライダー部材押動バネ180(2)の付勢力は前記第2シフトフォーク110(2)には作用せず、前記第2シフトフォーク110(2)には前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)による軸線方向第2側への付勢力だけが作用する。
従って、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置されると、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110B(2)は前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)によって低速位置まで移動され得る状態となる。
ここで、前記ドラム部材140Bを低速位置Lに位置させた際に、前記第2シフター部材110B(2)の低速用凹凸部112Lと前記変速ギヤ10Lの変速用凹凸部12Lとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記低速用凹凸部112L及び前記変速用凹凸部12Lが直ちに凹凸係合して前記変速ギヤ10Lが伝動状態となり、前記ドラム型変速装置1Bが直ちに低速段係合状態となる。
これに対し、前記第2シフター部材110B(2)の低速高速用凹凸部112Lの凸部と前記変速ギヤ10Lの変速用凹凸部12Lの凸部同士が突き合わされる事態が生じた場合には、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110B(2)は基準位置に保持されたままで、前記ドラム部材140Bだけが低速位置Lまで先行回転される。
従って、前記第2シフター部材110B(2)及び前記変速ギヤ10Lが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)の付勢力によって前記第2シフター部材110B(2)が低速位置まで押動されて前記変速ギヤ10Lに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Bの低速段への変速動作が完了する(低速段への待ち受け作用)。
次に、後進段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140Bが後進位置Rに位置されると、前記第2シフトフォーク130(2)は基準位置に固定され、前記第2シフター部材110B(2)は変速ギヤ10L及び変速ギヤ10Pの何れとも凹凸係合しない状態となる。
一方、前記第1シフトフォーク130(1)は、基準位置及び後進位置の間で軸線方向移動可能な状態とされ、前記第1スライダー部材110(1)は退避位置(本実施の形態においては第2変位位置)に固定される。
この状態においては、前記第1スライダー部材押動バネ180(1)の付勢力は前記第1シフトフォーク130(1)には作用せず、前記第1シフトフォーク130(1)には前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)による軸線方向第2側への付勢力だけが作用する。
従って、前記ドラム部材140Bが後進位置Rに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)は前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)によって後進位置まで移動され得る状態となる。
ここで、前記ドラム部材140Bを後進位置Rに位置させた際に、前記第1シフター部材110(1)の後進用凹凸部112Rと前記変速ギヤ10Rの変速用凹凸部12Rとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記後進用凹凸部112R及び前記変速用凹凸部12Rが直ちに凹凸係合して前記変速ギヤ10Rが伝動状態となり、前記ドラム型変速装置1Bが直ちに後進段係合状態となる。
これに対し、前記第1シフター部材110(1)の後進用凹凸部112Rの凸部と前記変速ギヤ10Rの変速用凹凸部12Rの凸部同士が突き合わされる事態が生じた場合には、前記第1シフトフォーク130(1)及び前記第1シフター部材110(1)は基準位置に保持されたままで、前記ドラム部材140Bだけが後進位置Rまで先行回転される。
そして、前記第1シフター部材110(1)及び前記変速ギヤ10Rが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記第1シフトフォーク押動バネ160(1)の付勢力によって前記第1シフター部材110(1)が後進位置まで押動されて前記変速ギヤ10Rに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Bの後進段への変速動作が完了する(後進段への待ち受け作用)。
最後に、パーキング段への変速動作における待ち受け作用について説明する。
前記ドラム部材140Bがパーキング位置Pに位置されると、前記第1シフトフォーク130(1)は基準位置に固定され、前記第1シフター部材110(1)は変速ギヤ10H及び変速ギヤ10Rの何れとも凹凸係合しない状態となる。
一方、前記第2シフトフォーク130(2)は基準位置及びパーキング位置の間で軸線方向移動可能な状態とされ、前記第2スライダー部材110B(2)は基準位置及び第4変位位置の間で軸線方向移動可能な状態となる。
前述の通り、前記第2スライダー部材110B(2)を軸線方向第2側へ付勢する前記第2スライダー部材押動バネ180(2)(本実施の形態においては前記単一バネ210)の付勢力が、前記第2シフトフォーク130(2)を軸線方向第1側へ付勢する前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)の付勢力より大とされているから、前記ドラム部材140Bがパーキング位置Pに位置された際には、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110B(2)は、前記第2スライダー部材押動バネ180(2)及び前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)の付勢力の差異に応じた大きさの付勢力で軸線方向第2側のパーキング位置まで移動され得る状態となる。
ここで、前記ドラム部材140Bをパーキング位置Pに位置させた際に、前記第2シフター部材110B(2)のパーキング用凹凸部112Pと前記変速ギヤ10Pの変速用凹凸部12Pとの軸線回り相対位置が凹凸係合可能な位置であったとすると、前記パーキング用凹凸部112P及び前記変速用凹凸部12Pが直ちに凹凸係合して、前記ドラム型変速装置1Bが直ちにパーキング段係合状態となる。
これに対し、前記第2シフター部材110B(2)のパーキング用凹凸部112Pの凸部と前記変速ギヤ10Pの変速用凹凸部12Pの凸部同士が突き合わされる事態が生じた場合には、前記第2シフトフォーク130(2)及び前記第2シフター部材110B(2)が基準位置に位置されたままで、前記ドラム部材140Bだけがパーキング位置Pへ先行回転される。
そして、前記第2シフター部材110B(2)及び前記変速ギヤ10Pが軸線回りに相対回転して前記凸部同士の突き合わせが解消した時点で、前記第2スライダー部材押動バネ180(2)及び前記第2シフトフォーク押動バネ160(2)の付勢力の差異に応じた大きさの付勢力によって前記第2シフター部材110B(2)がパーキング位置まで押動されて前記変速ギヤ10Pに凹凸係合し、前記ドラム型変速装置1Bのパーキング段への変速動作が完了する(パーキング段への待ち受け作用)。
このように、本実施の形態に係る前記ドラム型変速装置1Bもパーキング段を含む全変速段に対して待ち受け作用を奏することができる。
さらに、前記第1シフトフォーク130(1)の第1ボス部132(1)及び前記第2シフトフォーク130(2)の第2ボス部132(2)にそれぞれ移動可能に支持された前記第1及び第2スライダー部材170(1)、170(2)、並びに、前記第1及び第2シフトフォーク130(1)、130(2)を軸線方向に移動させることで、待ち受け作用を現出させている。
従って、フォーク軸を軸線方向に移動させることで待ち受け作用を得るように構成された従来構成に比して、軸線方向の小型化及び操作力の低減を図ることができる。
なお、本実施の形態においては、前記第1スライダー案内溝144B(1)は、前記ドラム部材140Bが中立位置Nに位置された際には前記第1スライダー部材110(1)を基準位置に固定し、前記ドラム部材140Bが高速位置Hに位置された際には前記第1スライダー部材110(1)を基準位置及び第1変位位置の間で軸線方向移動可能とし、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置された際には前記第1スライダー部材110(1)を基準位置に固定し、前記ドラム部材140Bが後進位置Rに位置された際には前記第1スライダー部材110(1)を第2変位位置に固定し、前記ドラム部材140Bがパーキング位置Pに位置された際には前記第1スライダー部材110(1)を基準位置に固定するように構成されているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
例えば、前記ドラム部材140Bが後進位置Rに位置された際には前記第1スライダー部材110(1)を退避位置(例えば第2変位位置)に固定する一方で、前記ドラム部材140B(1)が後進位置R以外に位置された際には、前記第1スライダー部材押動バネ180(1)によって軸線方向第1側へ付勢されている前記第1スライダー部材170(1)が、前記第1停止部133(1)に当接された状態のままで、第1シフトフォーク130(1)の軸線方向移動に追従して軸線方向へ移動することを許容するように形成された第1スライダー案内溝145B(1)を採用することも可能である。
図23に、前記第1スライダー案内溝145B(1)を備えたドラム部材140Bの展開図を示す。
図23に示すように、前記第1スライダー案内溝145B(1)の後進時係合部位145B(1)Rは前記第1スライダー部材170(1)を退避位置(例えば第2変位位置)に固定し、その他の中立時係合部位145B(1)N、高速時係合部位145B(1)H、低速時係合部位145B(1)L及びパーキング時係合部位145B(1)Pは前記第1スライダー部材110(1)が第1変位位置及び第2変位位置の間で軸線方向に移動することを許容するような溝形状を有している。
また、前記第2スライダー案内溝144B(2)も本実施の形態における溝形状に限定されるものでは無い。
即ち、本実施の形態においては、前記第2スライダー案内溝144B(2)は、前記ドラム部材140Bが中立位置N、高速位置H及び後進位置Rに位置された際には前記第2スライダー部材110B(2)を基準位置に固定し、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置された際には前記第2スライダー部材110B(2)を第3変位位置に固定し、前記ドラム部材140Bがパーキング位置Pに位置された際には前記第2スライダー部材110B(2)が基準位置及び第4変位位置の間で軸線方向移動可能となるように構成されている。
これに代えて、前記ドラム部材140Bが低速位置Lに位置された際には前記第2スライダー部材110B(2)を退避位置(例えば第3変位位置)に固定する一方で、前記ドラム部材140Bが低速位置L以外に位置された際には、前記第2スライダー部材押動バネ180(2)によって軸線方向第2側へ付勢されている前記第2スライダー部材170(2)が、前記第2停止部133(2)に当接された状態のままで、第2シフトフォーク130(2)の軸線方向移動に追従して軸線方向へ移動することを許容するように形成された第2スライダー案内溝145B(2)を採用することも可能である。
図23に、前記第2スライダー案内溝145B(2)を示す。
図23に示すように、前記第2スライダー案内溝145B(2)の低速時係合部位145B(2)は前記第2スライダー部材110B(2)を退避位置(例えば第3変位位置)に固定し、その他の中立時係合部位145B(2)N、高速時係合部位145B(2)H、後進時係合部位145B(2)R及びパーキング時係合部位145B(2)Pは前記第2スライダー部材110B(2)が第3変位位置及び第4変位位置の間で軸線方向に移動することを許容するような溝形状を有している。