JP2018090512A - ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法 - Google Patents

ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018090512A
JP2018090512A JP2016233689A JP2016233689A JP2018090512A JP 2018090512 A JP2018090512 A JP 2018090512A JP 2016233689 A JP2016233689 A JP 2016233689A JP 2016233689 A JP2016233689 A JP 2016233689A JP 2018090512 A JP2018090512 A JP 2018090512A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
isomer
trifluoropropene
reaction
chloro
catalyst
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2016233689A
Other languages
English (en)
Inventor
崇勝 北元
Takakatsu Kitamoto
崇勝 北元
覚 岡本
Satoru Okamoto
覚 岡本
昌彦 谷
Masahiko Tani
昌彦 谷
金井 正富
Masatomi Kanai
正富 金井
康平 住田
Kohei Sumida
康平 住田
佳 松永
Yoshi Matsunaga
佳 松永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Central Glass Co Ltd
Original Assignee
Central Glass Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Central Glass Co Ltd filed Critical Central Glass Co Ltd
Priority to JP2016233689A priority Critical patent/JP2018090512A/ja
Publication of JP2018090512A publication Critical patent/JP2018090512A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

【課題】 ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を触媒性能の低下を抑制することで効率的に異性化して対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、これを用いることで選択的にフルオロカーボンを製造する方法を提供することを課題とする。【解決手段】 水分濃度が100ppm以下の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を脱ハロゲン化し、3,3,3−トリフルオロプロピンを製造する方法を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンを製造する方法に関する。
多くのハイドロハロフルオロオレフィンは、二重結合の周囲にある置換基の配置に応じて、E/Z異性体で存在できる。E/Z異性体は、一般的には、異なった物理特性、化学特性を有する。そのため、特定の用途では、一方の異性体の方が、他方よりも好ましい場合がある。特に、一方の異性体を出発原料として選択的に反応を行って目的化合物を製造するとき、他方の異性体を用いて同様に実施しても反応が進行しない場合がある。このことから、一方のE/Z異性体を、他方のE/Z異性体に転化できることが望ましい場合がある。
このような背景のもと、ハイドロハロフルオロオレフィンの異性化による相互変換が試みられ、特許文献1には、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンにおけるシス異性体対トランス異性体の比を増減できることが記載されている。これは、AlF3上または炭素上に担持された触媒を使用することにより可能であるとされており、この触媒は、SbClw5-w、TiClx4-x、SnCly4-yおよびTaClz5-zから選択され、ここで、wは0〜4、xは0〜3、yは0〜3、zは0〜4である。さらに、特許文献2には、粉砕した酸化クロムゲルペレット触媒上での、E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンへの部分的異性化が記載されている。
特許文献3には、平衡反応を利用して、ルイス酸触媒、クロミア含有触媒などの触媒とE−(ヒドロ)ハロフルオロアルケンを接触させ、Z−(ヒドロ)ハロフルオロアルケンに異性化する方法が開示されている。
特許文献4には、金属を含む金属化合物などを触媒として用いて、E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法が開示されている。
特許文献5には、金属酸化物、その部分フッ素化物、あるいは全フッ素化物などを触媒として、Z−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンからE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する方法が開示されている。
国際公開2008/008351号公報 国際公開2008/030443号公報 特表2010−523635号公報 特開2014−28799号公報 特開2009−108049号公報
本発明は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を触媒性能の低下を抑制することで効率的に異性化して対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、これを用いることで選択的にフルオロカーボンを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、気相中、触媒との接触によるハイドロハロフルオロプロペンの異性化反応において、該ハイドロハロフルオロプロペンに含まれ得る水分濃度を所定濃度以下に管理することで、該触媒の性能低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の各発明を含む。
[発明1]
水分濃度が100ppm以下の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を脱ハロゲン化し、3,3,3−トリフルオロプロピンを製造する方法。
[発明2]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、または1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、発明1に記載の方法。
[発明3]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体であり、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はZ体である、発明1乃至3の何れか1に記載の方法。
[発明5]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化することによって製造される、発明4に記載の方法。
[発明6]
水分濃度が100ppm以下の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)をフッ素化し、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造する方法。
[発明7]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、発明6に記載の方法。
[発明8]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体であり、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はZ体である、発明7に記載の方法。
[発明9]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、発明7に記載の方法。
[発明10]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化し、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)および1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
水分濃度が100ppm以下の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する方法。
[発明11]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、発明10に記載の方法。
[発明12]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、発明11に記載の方法。
[発明13]
水分濃度が100ppm以下の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体2)を製造し、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体1)をフッ素化し、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造する
工程を含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造する方法。
[発明14]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化し、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造し、
発明13に記載の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造する方法を行う
工程をさらに含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造する方法。
[発明15]
発明14に記載の方法により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造し、
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造する
工程をさらに含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造する方法。
[発明16]
発明15に記載の方法により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造し、
1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する
工程をさらに含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を共製造する方法。
[発明17]
発明13に記載の方法により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造し、
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造する
工程をさらに含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造する方法。
[発明18]
発明17に記載の方法により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造し、
1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する
工程をさらに含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を共製造する方法。
[発明19]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体であり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はZ体である、発明13乃至18の何れかに記載の方法。
[発明20]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、発明13乃至18の何れかに記載の方法。
[発明21]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化し、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造し、
水分濃度が100ppm以下の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を脱塩化水素化し、3,3,3−トリフルオロプロピンを製造する
工程を含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、および3,3,3−トリフルオロプロピンを共製造する方法。
[発明22]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、発明21に記載の方法。
[発明23]
1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は蒸留する、もしくは脱水剤と接触させる、またはその両方により水分濃度を100ppm以下に調整する発明1、6、または10の何れか1に記載の方法。
[発明24]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は蒸留する、もしくは脱水剤と接触させる、またはその両方により水分濃度を100ppm以下に調整する発明13または21に記載の方法。
本明細書において開示するように、異性化の反応系に持ち込まれ得る水分量が、触媒性能の低下に大きく関与することが判明した。このことは、特許文献1〜5に記載も示唆もない。
本明細書において、「異性化」は、E体とZ体の比が、反応前後において変化すること(例えば、反応後のZ体の割合が反応前よりも増加すること)を意味する。
本明細書において、ハイドロハロフルオロプロペンとは、分子中に、水素原子を少なくとも1個有し、フッ素原子を少なくとも1個有し、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有する、不飽和炭化水素化合物を意味し、フッ素原子以外のハロゲン原子として塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を有していてもよい。すなわち、このハイドロハロフルオロプロペンには、一般的にハイドロフルオロプロペンと呼ばれる化合物も含まれる。
本明細書において、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)とは、本発明の方法に係る出発物質であり、E体またはZ体のハイドロハロフルオロプロペンを意味し、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)とは、本発明の方法に係る生成物質であり、該異性体1がE体の場合にはZ体のハイドロハロフルオロプロペンを意味し、該異性体1がZ体の場合にはE体のハイドロハロフルオロプロペンを意味する。
本明細書において、「金属フッ素化物」とは、金属とフッ素原子との結合を少なくとも有する化合物を指し、他の非金属原子を含むこともできる。
本発明によれば、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を触媒性能の低下を抑制することで効率的に異性化して対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、これを用いることで選択的にフルオロカーボンを製造する方法を提供することができる。
実施例1−1〜1−3および比較例1−1における、導入した原料であるE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの導入積算量と、目的物であるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率との関係を示す図である。 実施例1−4〜1−5および比較例1−2における、導入した原料であるE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの導入積算量と、目的物であるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率との関係を示す図である。 実施例1−6および比較例1−3における、導入した原料であるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの導入積算量と、目的物であるE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの収率との関係を示す図である。 実施例1−7および比較例1−4における、導入した原料であるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの導入積算量と、目的物であるE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの収率との関係を示す図である。 実施例1−8および比較例1−5における、導入した原料であるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの導入積算量と、目的物であるE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率との関係を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施の形態および実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
本発明は、(1)所定のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物を気相中、触媒と接触させることで、該触媒の性能低下を抑制し、対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を効率的に製造し、(2)これを用いることで選択的にフルオロカーボンを製造する方法である。
(1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)の製造方法
本発明のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化して、対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する方法は、以下の工程1を少なくとも含む:
工程1: 水分濃度を100ppm以下に調整した、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物を、気相中で触媒と接触させて、生成物を得る工程。
[ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)]
本発明の方法により異性化するのに好適なハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1〜5個のフッ素原子を有し、H、ClおよびBrから選択される1〜5個の原子を有し、少なくとも1個のHを有するものが好ましく、3〜5個のフッ素原子を有し、H、ClおよびBrから選択される1〜3個の原子を有し、少なくとも1個のHを有するものが特に好ましい。
したがって、本発明の方法により異性化するのに好適なハイドロハロフルオロプロペンの好ましい群は、下記一般式(1)で表すことができる。
(CX123)CX4=CX56 (1)
一般式(1)中、X1〜X6はそれぞれ独立してH、F、ClまたはBrであり、X1〜X6のうち、1〜5個はFであり、残りはH、ClまたはBrであり、少なくとも1個はHである。
本発明の方法により異性化するハイドロハロフルオロプロペンは、下記一般式(2)で表されるハイドロハロフルオロプロペンであってもよい。
(CFX23)CX4=CX56 (2)
一般式(2)中、X2〜X6はそれぞれ独立してH、F、ClまたはBrであり、X2〜X6のうち少なくとも1個はFであり、少なくとも1個はHである。
特に好ましいハイドロハロフルオロプロペンとしては、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3CH=CHCl)および1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3CCl=CHCl)から選択されるトリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CF3CH=CHF)、1−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CF3CH=CClF)、2−クロロ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CF3CCl=CHF)および1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CF3CF=CHCl)から選択されるテトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(CF3CF=CHF)から選択されるペンタフルオロプロペンが挙げられる。
さらに好ましいハイドロハロフルオロプロペンとしては、下記一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン、すなわち、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CF3CH=CHCl)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(CF3CH=CHF)が挙げられる。
(CF3)CH=CHX7 (3)
一般式(3)中、X7はFまたはClである。
本発明に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物(以下、「本発明に係る組成物」と称することがある。)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも5質量%以上含み、好ましくは30重量%以上含み、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を主成分として含むことがさらに好ましい。ここで、「ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を主成分として含む」とは、組成物中にハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を50質量%以上含むことをいい、70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。また、本発明に係る組成物は、実質的にハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)のみからなることが特に好ましい。ここで、「実質的にハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)のみからなる」とは、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)が、本発明に係る組成物中に、95質量%以上含まれることを意味する。
本発明に係る組成物には、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の他に、対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)が含まれていてもよい。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は目的物であり、その含有量は特に限定されない。また、本発明に係る組成物には、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)と対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)以外に、「その他の成分」が含まれていてもよい。ここで、「その他の成分」の種類は特に限定されず、種々の化合物であってもよく、単種類でもよいし、複数種類であってもよい。「その他の成分」の具体例としては、ハイドロハロフルオロプロペンがフッ素化されたハイドロハロフルオロカーボンもしくはハイドロフルオロカーボンなどが挙げられるが、これらに限定されない。「その他の成分」が含まれる場合のその含有量は、ハイドロハロフルオロオレフィン異性体(異性体1)に対して、50質量%以下であってもよく、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。ただし、その他の成分が水分である場合については、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物が所定の水分濃度であることを要する。
本発明に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物は、水分濃度が100ppm以下であるものを用い、70ppm以下のものが好ましく、50ppm以下のものが特に好ましく、30ppm以下のものがさらに好ましい。水分濃度の下限値は特に限定されない。すなわち、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物の水分濃度は0〜100ppmであってもよく、0〜70ppmが好ましく、0〜50ppmが特に好ましく、0〜30ppmがさらに好ましい。
ここで、本発明に係る組成物の水分濃度(水分含有量)は、カールフィッシャー水分計によって測定することができる。試料が沸点の高い物質である場合には、液体試料を注射器で一定量採取して、カールフィッシャー水分計の滴定液中にそのまま導入して測定することが好ましい。試料が沸点の低い物質である場合には、液体試料が気化することがあるため、試料が直接導入されるように、試料容器と水分計の導入部をチューブで予め接続しておき、試料が途中で気化してもそのまま導入できる仕様にして測定することが好ましい。また市販の気化装置を用いて、試料を導入して測定することもできる。
本発明に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)は、Z体またはE体であってもよい。また、本発明に係る組成物には、本発明に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の他に、その他の成分として、対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)が含まれてもよく、ハイドロハロフルオロプロペンがフッ素化されたハイドロハロフルオロカーボンもしくはハイドロフルオロカーボンを含むことがある。また、その他の成分として、ハイドロクロロカーボン、例えば、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)や1,3,3,3−テトラクロロプロペン(1230zd)など、が含まれてもよいが、その他の成分はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る組成物の水分濃度を100ppm以下、好ましくは70ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下に調整するために、本発明に係る組成物に脱水処理を施して水分濃度を低減させてもよい。
この脱水処理の方法は特に限定されない。例えば、蒸留による方法や脱水剤による方法が適用できる。蒸留を施すことで、本発明に係る組成物を脱水処理することができるとともに、本発明に係る組成物におけるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の含有割合を高めることもできる。
この脱水剤による方法では、本発明に係る組成物を脱水剤と接触させてその水分濃度を低減させる。この脱水剤の種類は特に限定されない。例えば、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アロフェンなどが挙げられる。ゼオライトの形状としては、例えば、粉状、顆粒状、ペレット状、球状、棒状等のものを使用することができ、成形・焼成した球状または棒状のものが取り扱い易く好ましい。また、ゼオライト、モレキュラーシーブの細孔径は特に限定されず、種々の細孔径のゼオライト、モレキュラーシーブを使用することができる。中でも、本発明に係る組成物から水を選択的に分離しやすいことから2.0〜6.0Å程度が好ましい。本発明に係る組成物と脱水剤との接触方法については特に限定されない。本発明に係る組成物と脱水剤との静置による接触であってもよく、脱水剤を充填した容器に本発明に係る組成物をガス状または液状で流通させて、該脱水剤と接触させるのが効率的で好ましい。さらに、アロフェンの場合、脱水性能と共に脱酸性能も併せ持つため、水洗の工程を経ることなく、ガス状または液状で流通させて、脱酸を行うことが可能であるアロフェンを用いた脱酸方法では、水を接触させないプロセス、ドライプロセスの構築・操業が可能である。アロフェンの場合、例えば、粉状、粒状、顆粒状、ペレット状等の形状で使用することができ、市販製品の具体例として、品川化成株式会社製のセカードが挙げられる。
また、本発明に係る組成物の脱水処理の方法として、より高い脱水能を示すことから、蒸留による方法と脱水剤による方法を併用してもよく、本発明に係る組成物に蒸留を施し、かつ、その蒸留の前、後もしくは前後において、上述の脱水剤と接触させる方法を採用することが好ましい。これにより、本発明に係る組成物の水分濃度をより低く調整することができる。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の種類によっては、水と共沸組成物もしくは共沸様組成物を形成する場合がある(例えば、E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(特開2013−525486号公報参照)や、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(特開2012−506944号公報参照)など)。そのため、本発明に係る組成物の脱水処理の方法として、本発明に係る組成物を蒸留し、かつ、該蒸留の少なくとも前に、本発明に係る組成物を脱水剤と接触させる方法を採用することが特に好ましく、その蒸留の後にさらに脱水剤と接触させる方法を採用することがさらに好ましい。
所望の水分濃度に調整された本発明に係る組成物は、その後、異性化反応系に供給される。なお、本発明に係る組成物が所定の水分濃度であることが確認できれば、上述のような脱水処理を施すことは必ずしも必要ではなく、そのまま異性化反応系に供給することができる。このような態様も、本発明の一態様として当然に含まれる。
本発明に係る異性化の反応形式は、気相反応、液相反応のいずれも採用することができる。また、処理形式は流通式、半バッチ式もしくはバッチ式であってもよく、これらの反応形式および処理形式を組み合わせた形式を適宜採用できる。反応に関与する化学物質の沸点が低い場合、実用的には気相流通形式が最も好ましい。気相流通形式では、触媒の保持方法は固定床、流動床、移動床などいずれの形式でもかまわないが、固定床で行うのが簡便であるので、好ましい。
[触媒]
本発明において使用する触媒は、気相中、本発明に係る組成物をその触媒と接触させることで本発明に係る組成物中のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化することができるものであればよい。触媒は、非担持触媒であってもよく、担持触媒であってもよい。
非担持触媒としては、金属酸化物、一部または全てがフッ素化された金属フッ素化物などの金属化合物が好ましい。これらの金属化合物に含まれる金属の種類は特に限定されない。例えば、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属が挙げられ、中でも、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属が好ましい。金属は単独であってもよく、二種以上の金属が複合した複合金属であってもよい。
金属フッ素化物を調製するための材料は特に限定されず、例えば、金属酸化物などを用いてもよい。この金属酸化物の種類は特に限定されない。例えば、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物が挙げられ、中でも、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物が好ましい。金属酸化物に含まれる金属は単独であってもよく、二種以上の金属が複合した複合金属の酸化物として使用されてもよい。金属フッ素化物は、これらの金属酸化物などにフッ素化処理を行うことによって得られる。金属フッ素化物を得る際の材料として用いる金属酸化物には、結晶系の異なるものが存在するが、何れも使用できる。
複合金属としては、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる一種の金属を主とし、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を副成分として含むものが好ましい。
このような複合金属の酸化物としては、例えば、アルミナとクロミア、アルミナとジルコニア、アルミナとチタニア、アルミナとマグネシアがそれぞれ複合したものが好ましいものとして挙げられ、いずれもアルミニウムを50原子%以上含むものが特に好ましく、80原子%以上含むものがより好ましい。50原子%以上であれば、異性化反応を良好な転化速度で進行させることができる。
金属フッ素化物の材料として用いられる金属酸化物は、一種以上の結晶形を取ることがあり、例えば、アルミナにはγ−アルミナとα−アルミナがあり、チタニアにはアナターゼとルチルの結晶形のものがある。金属酸化物の結晶形はいずれであってもよいが、アルミナではγ−アルミナは表面積が大きく好ましい。
金属フッ素化物の調製方法は、特に限定されない。例えば、フッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と、前述した金属の酸化物又は複合金属の酸化物とを接触させることにより行ってもよい。このフッ素化処理は、通常、段階的に行うのが好ましい。フッ化水素を用いてフッ素化処理する場合、大きな発熱を伴うので、最初は希釈されたフッ化水素ガスにより比較的低温度で金属酸化物(複合金属酸化物)をフッ素化し、徐々に濃度および/または温度を高くしながら行うのが好ましい。最終段階は、異性化反応の反応温度以上で行うのが好ましいが、この条件に加えて、安定的に反応を進行させるために、フッ素化処理温度は200℃以上で行い、400℃以上、さらに好ましくは500℃以上においてフッ化水素でフッ素化処理するのが好ましい。温度の上限は特にないが、900℃を超えると、フッ素化処理装置の耐熱性の点から困難であり、実用的には600℃以下で行うのが好ましい。このように、安定的に反応を進行させるために、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤で金属酸化物(複合金属酸化物)をフッ素化処理した金属フッ素化物を触媒として用いることが好ましい。
本発明に用いる金属酸化物や金属フッ素化物などの触媒は、使用に際してフッ素化剤でフッ素化処理を施すことが好ましい。このフッ素化処理は、上述の金属フッ素化物の調製方法の例に準じて施すことができる。
本発明に係る触媒として、金属化合物を担持した担持触媒を用いてもよい。この担持触媒の担体としては、炭素または非担持触媒として上述した金属(複合金属を含む。)を使用してもよい。担体として用いられる金属は、非担持触媒として上述した金属酸化物であってもよいし、金属フッ素化物であってもよい。具体的には、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物、好ましくは、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物が、単独で担体として用いられてもよく、複合金属の酸化物が担体として用いられてもよいし、これらの一部または全てがフッ素化されたフッ素化物が担体として用いられてもよい。複合金属の酸化物としては、例えば、アルミニウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、チタンおよびマグネシウムからなる群より選ばれる一種の金属を主とし、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、銅、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタルおよびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属を副成分として含む酸化物が好ましい。
担持させる金属化合物に含まれる金属としては、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マグネシウム、ジルコニウム、モリブデン、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタル、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、クロム、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、ジルコニウム、亜鉛、スズ、ランタン、ニオブ、タンタル、アンチモンが好ましい。これらの金属はフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等として担持される。金属化合物は単独で担持させてもよいし、2種以上を併せて担持させてもよい。
担持させる金属化合物としては、具体的には、硝酸クロム、三塩化クロム、重クロム酸カリウム、三塩化チタン、硝酸マンガン、塩化マンガン、塩化第二鉄、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、五塩化アンチモン、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、硝酸ランタン、四塩化スズなどを用いることができるが、これらに限定されない。
担体に前述の金属化合物を担持して調製した触媒は、安定的に反応を進行させるために、使用の前にフッ素化処理を施してもよく、そうすることが好ましい。すなわち、本発明に係る触媒は、担体に、金属化合物を担持した担持触媒にフッ素化処理を施した触媒であってもよい。この場合、前述の金属酸化物のフッ素化処理と同様の方法により、使用の前に所定の反応温度以上の温度で予めフッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤で処理しておくことが好ましい。
ここで、担体が金属酸化物であり、且つ担持物である金属化合物の層が担体を全体的に覆っている場合は、フッ素化処理工程において、担体よりも担持物が主としてフッ素化処理され、担持物が主として異性化反応の触媒として作用する。担体が金属酸化物であり、担持物である金属化合物の層が担体を全体的に覆っていない場合は、フッ素化処理工程において、担持物とともに担体もフッ素化処理され、異性化反応において、担持物とともに担体も触媒として作用することもあり得る。このように、担体が担持物とともに触媒として作用する場合は、担持触媒としてではなく、複合金属のフッ素化物として、非担時触媒と同様に作用することがある。
本発明に係る異性化反応の触媒としては、フッ素化アルミナ、フッ素化ジルコニア、フッ素化クロミア、クロム担持活性炭が好ましい具体例として挙げられ、フッ素化アルミナ、フッ素化ジルコニア、フッ素化クロミアが特に好ましい。これらの触媒は反応の前に予めフッ素化処理をしておくことが好ましい。
担体及び担持物を含めた触媒の全質量に対する金属の質量の割合は、0.1〜80質量%、好ましくは1〜50質量%である。0.1質量%以上であれば良好な触媒効果が得られ、80質量%以下であれば安定に担持させることができる。なお、担持物が固体金属塩である場合、触媒の全質量に対する金属の質量の割合は、0.1〜40質量%、好ましくは1〜30質量%である。
[接触温度(反応温度)]
異性化反応における接触温度(反応温度)は、下限温度が反応原料の物性(沸点など)に依存するが、0〜600℃であってもよく、20〜550℃が好ましく、50〜500℃が特に好ましい。接触温度が600℃超の場合は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)や目的物であるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)が触媒上で分解したり、コーキングしたりすることがある。また、必要以上に接触温度を高く設定することはエネルギーの無駄であり、装置への負荷も大きくなる。接触温度が0℃未満の場合は、反応操作における取り扱いの観点から実用的ではない。
接触温度と、本発明に係る組成物を触媒に接触させる接触時間とはトレードオフの関係であり、接触温度が高い場合には接触時間が短いこと、接触温度が低い場合には接触時間が長いことが、本発明に係る組成物中のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の異性化効率の面でより好ましい。
[接触時間]
本明細書において、本発明に係る反応の「接触時間」を次のように定義する。すなわち、接触時間は触媒の容積A(mL)を原料供給速度B(mL/秒)で除した数値(秒)で表される。また、Bの値は「毎秒あたりに反応器に導入される原料気体の容積」を示すが、この場合、原料気体を理想気体とみなして、原料気体のモル数、圧力および温度からBの値を算出する。反応器中では、原料や目的物以外の他の化合物の副生や、モル数の変化も起こり得るが、「接触時間」の計算に際しては考慮しないものとする。
接触時間の決定に関しては、本発明に用いる反応原料、反応器の温度(接触温度)や形状、触媒の種類に依存する。そのため、反応原料、反応装置の設定温度、反応器の形状、触媒の種類ごとに、反応原料の供給速度を適宜調整し、接触時間を最適化することが望ましい。各異性体の比率は熱力学的な平衡に支配されるので、転化率はおおよそ決定されるが、通常は、未反応原料の回収、再利用の観点から10%以上の原料転化率が得られる接触時間の採用が好ましい。さらには15%以上の転化率となるように接触時間が最適化されるのが好ましい。
本発明における最適な接触時間は0.01〜500秒であり、好ましくは0.1〜250秒、より好ましくは、1〜150秒である。一般にこれらよりも接触時間が短いと熱力学的平衡組成から大きく乖離した転化率しか示さないことがある。逆に、これらよりも長い場合は、平衡組成に近い転化率を示しても、生産性が悪くなったり、タール化したりすることがある。尚、上記の接触時間は反応圧力に応じて適宜変更されてもよい。
本発明に係る異性化反応において、接触温度(反応温度)と接触時間との適切な組み合わせが重要な要素であり、反応温度が0℃以上600℃以下の場合、接触時間は0.01秒以上500秒以下が好ましく、20℃以上550℃以下の場合、0.1秒以上250秒以下が好ましく、50℃以上500℃以下の場合、1秒以上150秒以下とすることが好ましい。特に、副生物の生成を低減し、効率的に目的物を生成するという観点から、反応温度が高温度においては接触時間が短く、反応温度が低温度においては接触時間が長いことがより好ましい。
一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化して対応する一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する方法は、前述のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化して対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する方法に準じて説明することができる。すなわち、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)に置き換え、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)に置き換えることで、説明することができる。
異性化反応における接触温度(反応温度)についても同様であるが、一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)がE体(すなわち、E−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたはE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)である場合、接触温度は150〜600℃であってもよく、200〜550℃が好ましく、250〜500℃が特に好ましい。この場合の接触時間との適切な組み合わせとしては、接触温度が150℃以上600℃以下の場合、接触時間は0.01秒以上500秒以下が好ましく、200℃以上550℃以下の場合、0.1秒以上250秒以下が好ましく、250℃以上500℃以下の場合、1秒以上150秒以下が好ましい。特に、副生物の生成を低減し、効率的に目的物を生成するという観点から、反応温度が高温度においては接触時間が短く、反応温度が低温度においては接触時間が長いことがより好ましい。同様に、一般式(3)で表されるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)がZ体(すなわち、Z−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)である場合、接触温度は40〜500℃であってもよく、45〜400℃が好ましく、50〜300℃が特に好ましい。この場合の接触時間との適切な組み合わせとしては、接触温度が40℃以上500℃以下の場合、接触時間は5秒以上400秒以下が好ましく、45℃以上400℃以下の場合、10秒以上300秒以下が好ましく、50℃以上300℃以下の場合、15秒以上200秒以下が好ましい。特に、副生物の生成を低減し、効率的に目的物を生成するという観点から、反応温度が高温度においては接触時間が短く、反応温度が低温度においては接触時間が長いことがより好ましい。
尚、前述の反応条件は常圧近傍での操業を想定したものであるが、反応圧力に応じて接触温度や接触時間の範囲が変動することは十分に有り得る。
[その他、反応圧力など]
本発明に係る異性化反応において、反応圧力は特に制限が無いが、常圧近傍での操業が容易である。但し、1MPa以上の加圧反応は高価な耐圧性の装置が必要となるだけでなく、原料もしくは生成物の重合が懸念される。装置の加熱方法は特に制限されないが、電気ヒーターやバーナーなどで直接加熱する方法、あるいは、溶融塩、砂などを用いて間接的に加熱する方法が好ましい。
異性化反応後の生成物には、目的物であるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)が少なくとも含まれる。このハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、異性化反応後の生成物から分離することが好ましい。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を異性化反応後の生成物から分離する方法は特に限定されず、例えば蒸留によって異性化反応後の生成物からハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を分離することができる。
また、異性化反応後の生成物には、目的物であるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)の他に、触媒フッ素化処理、異性化反応の過程で、使用、生成し得る酸分が含まれることもある。生成物中の不純物の蓄積を防ぐため、ならびに装置・設備へのダメージを軽減するため、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を異性化反応後の生成物から分離する前に、この酸分を生成物中から除去することが好ましい。
異性化反応後の生成物から酸分を除去する方法は特に制限されない。例えば、水などを用いて洗浄処理を施して該生成物から酸分を除去してもよい。また、異性化反応後の生成物には、脱水処理を施して水分を除去してもよく、酸分を除去する方法と組み合わせて採用してもよい。この脱水処理の方法は特に限定されない。例えば、蒸留による方法や脱水剤による方法が適用でき、これらの方法を併用してもよいし、複数回行ってもよい。効率の面から脱水剤による方法が好ましい。脱水剤による方法では、異性化反応後の生成物と脱水剤とを接触させる。この脱水剤の種類は特に限定されないが、例えば、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アロフェンなどが挙げられる。ゼオライトの形状としては、例えば、粉状、顆粒状、ペレット状、球状、棒状等のものを使用することができ、成形・焼成した球状または棒状のものが取り扱い易く好ましい。また、ゼオライト、モレキュラーシーブの細孔径は、特に限定されないが、2.0〜6.0Å程度が好ましい。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を少なくとも含む組成物と脱水剤との接触方法については特に限定されないが、通常は脱水剤を充填した容器にハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を少なくとも含む組成物を、ガス状または液状で流通させるのが効率的に好ましい。さらに、アロフェンの場合、脱水性能と共に脱酸性能も併せ持つため、水洗の工程を経ることなく、ガス状または液状で流通させて、脱酸を行うことが可能である。アロフェンを用いた脱酸方法では、水を接触させないプロセス、ドライプロセスの構築・操業が可能である。アロフェンの場合、例えば、粉状、粒状、顆粒状、ペレット状等の形状で使用することができ、市販製品の具体例として、品川化成株式会社製のセカードが挙げられる。また、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を少なくとも含む組成物の水分濃度をより低く調整するため、本発明に係る組成物を蒸留し、かつ、該蒸留の少なくとも前に、本発明に係る組成物を脱水剤と接触させる方法を採用することが特に好ましく、その蒸留の後にさらに脱水剤と接触させる方法を採用することがさらに好ましい。また、この脱水処理における蒸留において、水分の除去を行うとともに、異性化反応後の生成物からハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)の分離を行ってもよい。
これらの酸分を除去する方法や水分を除去する方法は、それぞれ繰り返し行ってもよく、段階的に行ってもよい。最終的に、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を少なくとも含む組成物に含まれ得る酸分と水分を除去することが好ましく、分離・回収されたハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を含む原料組成物の水分濃度が所望の水分濃度になっていれば良い。
これらの反応後の後処理方法に基づいて、本発明の方法は、以下の工程2をさらに含んでいてもよい:
工程2: 工程1で得られた生成物から酸分を除去し、該酸分を除去した生成物からハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を分離する工程。
異性化反応後の生成物には、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)が含まれることがある。このハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化反応後の生成物から分離して、本発明に係る異性化反応の原料として再利用してもよい。この場合においても、触媒フッ素化処理、異性化反応の過程で、使用、生成し得る酸分が含まれることがあり、生成物中の不純物の蓄積を防ぐため、ならびに装置・設備へのダメージを軽減するため、この酸分を生成物中から除去してからハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を再利用することが好ましい。
異性化反応後の生成物から酸分を除去する方法は特に制限されない。例えば、水などを用いて洗浄処理を施して該生成物から酸分を除去してもよい。また、異性化反応後の生成物には、脱水処理を施して水分を除去してもよく、上述の酸分を除去する方法と組み合わせて採用してもよい。この脱水処理の方法は特に限定されない。例えば、上述の脱水処理の方法と同様の方法を採用することができ、この方法を採用することが好ましい。また、これらの酸分を除去する方法や水分を除去する方法は、それぞれ繰り返し行ってもよく、段階的に行ってもよい。最終的に、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)に含まれ得る酸分と水分が除去されることが好ましい。
本発明に係る異性化反応の原料として再利用するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)は、その他の成分と共存してもよい。すなわち、このハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物であってもよい。ここで言うハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物は、上述の本発明に係る組成物と同義であってもよい。このハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物は、この段階で所定の水分濃度に調整してもよいし、工程1に供してから調整してもよい。
このようなハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の再利用方法に基づいて、本発明の方法は、以下の工程3および工程4をさらに含んでいてもよい:
工程3: 工程1で得られた生成物から酸分を除去し、該酸分を除去した生成物からハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物を分離する工程、
工程4: 工程3で分離したハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物を、工程1のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を少なくとも含む組成物として再利用する工程。
[触媒の賦活]
本発明の製造方法を採用すれば、触媒の性能低下を抑制することができるが、経時的要素などに起因して、触媒の性能が低下することがある。このような場合、触媒を賦活させることで、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を効率的に製造することができる。性能が低下した触媒は通常、高温度下での焼成によって賦活させることができるが、性能の低下の原因が主として水分の影響によるものと推測される場合には、高温にて触媒をガス流通させて焼成することが効率的で好ましく、本発明に係る方法においては、この触媒の賦活方法を採用することが特に好ましい。焼成時のガスは限定されるものではないが、不活性ガス下で行うことが好ましく、窒素存在下で行うことが特に好ましい。焼成温度は異性化の反応温度よりも高いことが好ましいが、0℃以上で行ってもよく、200℃以上が好ましく、400℃以上が特に好ましく、500℃以上がさらに好ましい。また、性能の低下の原因がコーキングによるものと推測される場合には、高温にて空気焼成すると、コーキング物を除去することができる。この場合の焼成温度も異性化の反応温度よりも高いことが好ましいが、0℃以上で行ってもよく、200℃以上が好ましく、400℃以上が特に好ましく、500℃以上がさらに好ましい。空気焼成によって、触媒のフッ素化度が低下し、反応中の経時的な挙動変化など反応への影響が懸念される場合には、続いてフッ素化剤による触媒のフッ素化を行うことで、再度、異性化反応を安定的に行うことができる。触媒のフッ素化処理温度は異性化反応の反応温度以上で行うのが好ましいが、0℃以上で行ってもよく、200℃以上が好ましく、400℃以上が特に好ましく、500℃以上がさらに好ましい。温度の上限は特に限定されないが、900℃を超えると、フッ素化処理装置の耐熱性の点から困難であり、実用的には前記各温度を下限として600℃以下で行うのが好ましい。
(2) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた選択的なフルオロカーボンの製造方法
本発明のフルオロカーボンの製造方法は、上記(1)の方法において生成されたハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いること、または上記(1)の方法において用いたハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造することを特徴とする。
(2−1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた3,3,3−トリフルオロプロピンの製造方法
本発明の3,3,3−トリフルオロプロピンの製造方法は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)に、塩基を反応させ、脱ハロゲン化することを特徴とする。
[ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)]
本発明の方法に用いるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン、すなわち、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、および1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンが好ましい。中でも、本発明の方法は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを脱ハロゲン化するのに好適である。本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、Z体またはE体であってもよい。
なお、本発明で用いるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。したがってハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がE体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを意味する。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がZ体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを意味する。
[塩基]
本発明の方法において使用する塩基は、例えば、ナトリウムアミドまたはカリウムtert−ブトキシドを用いることができる。本発明で用いるナトリウムアミドの量は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対し、2モル以上が好ましく、より高くてもよいが、3モルを超える比はあまり有利ではなく、副反応がより多く出現する可能性がある。特に好ましいモル比は2.1〜2.2モルの範囲である。本発明で用いるカリウムtert−ブトキシドの量は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対し、1モル以上が好ましく、より高くてもよいが、3モルを超える比はあまり有利ではなく、副反応がより多く出現する可能性がある。特に好ましいモル比は1〜2モルの範囲である。
[溶媒]
本発明の方法において使用する溶媒は、アンモニア、ジエチルエーテル、又はテトラヒドロフラン(THF)などを用いることができる。また、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
[その他、反応圧力、反応温度など]
本発明において、反応圧力は特に限定はなく、常圧または加圧条件下で、0〜2MPa(絶対圧基準。以下同じ)、好ましくは0〜0.5MPaで操作できる。反応温度は5℃以下が好ましく、より好ましくは0℃〜−40℃である。本発明は、液相中で反応を行うことが特に好ましい。
本発明によれば、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、溶媒中において強塩基のナトリウムアミドと反応させ、これに塩酸を加えることで3,3,3−トリフルオロプロピンを得ることができる。
また、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)が1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである場合、溶媒中において強塩基のカリウムtert−ブトキシドと反応させることにより3,3,3−トリフルオロプロピンを得ることができる。
ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がZ−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンである場合、前述のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)に塩基を反応させ、脱ハロゲン化することで3,3,3−トリフルオロプロピンを製造する方法に準じて説明することができるが、さらに以下の塩基を用いる方法を適用することもできる。
Z−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンとしては、Z−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンおよびZ−1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンが挙げられる。中でも、本発明の方法は、Z−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを脱ハロゲン化するのに好適であり、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを脱ハロゲン化するのに特に好適である。
なお、本発明で用いられるZ−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体2)は、本発明の異性化反応において、E−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。
また、本発明で用いられるZ−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンのうち、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンについては、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをクロム触媒で気相においてフッ素化反応を行う又は無触媒で液相においてフッ素化反応を行うことにより得ることができる。また、両者の異性体は、蒸留により容易に分離することができる。
脱ハロゲン化反応において使用する塩基については、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がZ−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンである場合、有機塩基や、無機塩基を用いることもできる。経済性及び取り扱いが容易であることから、無機塩基のうちアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。具体的な化合物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが好ましく、さらに安価で工業的に大量に入手できることから、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが特に好ましい。なお、本発明で用いる塩基は、1種類又は2種類以上を併用して使用することもできる。
本発明で用いる塩基の量は、Z−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対し、少なくとも1モルを必要とし、通常1〜10モルの範囲を適宜選択できるが、好ましくは1〜4モルであり、更に好ましくは1〜2モルである。また、10モルより多く塩基を使用することも可能であるが、特に大量使用するメリットもない。なお、本発明において、Z−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対して、1モルより少ない塩基を用いた場合、反応の変換率が低下することがある。その際、反応後の精製操作の際に未反応のZ−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンを回収し、次の反応にリサイクルすることも可能である。
本発明において、溶媒を別途加えることができる。溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はない。本発明に使用される塩基の種類や常温・常圧における様態(固体・液体)に応じて、溶媒を入れずに無溶媒下で用いたり、少なくとも1種類以上の溶媒を別途加えて溶液として反応させることも可能であり、当業者が適宜選択することができる。
本発明において、反応圧力は特に限定はなく、常圧または加圧条件下で、0〜2MPa(絶対圧基準。以下同じ)、好ましくは0〜0.5MPaで操作できる。反応温度は特に限定することなく、反応圧力との関係で反応系として液相状態または気相状態を選択でき、0〜80℃、好ましくは常温付近の25℃〜40℃である。また、本発明は、液相中で反応を行うことが特に好ましい。
本発明によれば、Z−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、溶媒中において水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムなどの塩基と反応させることにより3,3,3−トリフルオロプロピンを得ることができる。
また、本発明によれば、Z−1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、常温・常圧下にて液体であるため、反応系に溶媒を共存させない条件下で反応させることにより、高選択率及び高収率で3,3,3−トリフルオロプロピンを得ることができる。
本発明の方法で得られた3,3,3−トリフルオロプロピンは、常温・常圧で気体として存在する。反応後に得られた気体を、冷却したコンデンサーに流通させた後、該気体を捕集容器で捕集させて液化させた後、後処理をすることなく、さらに精密蒸留することで高純度の3,3,3−トリフルオロプロピンを得ることができる。
なお、本発明では連続的、又は半連続的もしくはバッチ式で行っても良く、当業者が適宜調整することができる。
(2−2) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造方法
本発明の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造方法は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を、フッ素化することを特徴とする。
[ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)]
本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンが好ましい。中でも、本発明の方法は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ素化するのに好適である。本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、Z体またはE体であってもよい。
なお、本発明で用いるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。したがってハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がE体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを意味する。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がZ体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを意味する。
[触媒]
本発明の方法において使用する液相フッ素化触媒としては、金属ハロゲン化物を用いることができる。具体的には、アルミニウム、錫、チタン、アンチモン、ビスマス、および鉄から選ばれる1種または2種以上の金属のハロゲン化物を用いることができる。さらに、これらの金属ハロゲン化物のハロゲンは、塩素、臭素、沃素またはフッ素のいずれかを用いることができる。また、本発明の方法において使用する気相フッ素化触媒としては、アルミニウム、クロム、マンガン、ニッケル、コバルト、およびアンチモンの中から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等を用いることができる。これらはまた、公知の担体に担持されていてもよい。担体としてはアルミニウムの酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等または活性炭などを用いることができる。金属担持量は0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%が適当である。
本発明の方法において、液相フッ素化触媒の濃度は1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンに対して5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。5モル%以下では1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンの反応率、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの収率が共に低下し、また50モル%以上では生産性が低いため好ましくない。
[フッ化水素]
本発明で用いるフッ化水素の量は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対し、1〜50モルを必要とし、好ましくは3〜30モル、特に好ましくは5〜20モルの範囲である。フッ化水素が過剰であると、有機物処理量の減少ならびに反応系から排出された未反応フッ化水素と生成物との混合物の分離に支障をきたし、フッ化水素が少ないと反応率が低下して、目的生成物の収率が低下する。
[溶媒]
本発明においては、反応の調節、触媒劣化の防止を目的として反応系に溶媒を別途加えることもできる。溶媒としては、1,4−ビストリフルオロメチルベンゼン、2,4−ジクロロベンゾトリフロライド等、または目的物である1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを使用してもよい。
[その他、反応圧力、反応温度など]
本発明において、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン、フッ化水素、フッ素化触媒等に含まれる水分や反応系内の水分はできうる限り除くことが望ましい。
本発明の方法におけるフッ素化反応は、液相の状態で行ってもよい。この場合、フッ素化触媒は、金属塩化物がより好ましく、五塩化アンチモンが特に好ましい。本発明の方法における反応温度は0〜150℃が好ましく、20〜130℃がより好ましい。0℃以下では1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンの反応率、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの収率が低下し、また150℃以上では反応系内の圧力が増加し、反応操作が難しいので好ましくない。反応に必要な圧力は反応温度にもよるが、反応器内で反応混合物を液相の状態に保てれば良く、0.1〜2MPaが好ましく、0.1〜1MPaがより好ましい。
しかしながらこれに限定されず、本発明の方法におけるフッ素化反応は、気相の状態で行ってもよい。この場合、フッ素化触媒は活性炭などの担体に担持させたものが好ましく、触媒は五塩化アンチモンがより好ましい。反応温度は20〜300℃が好ましく、40〜180℃がより好ましい。20℃以下では反応に関与する試剤が液化し、また反応は遅く実用的ではない。反応温度を高くすれば触媒寿命が短くなり、反応は速く進行するが分解生成物等が生成し、生成する1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの選択率が低下するので好ましくない。反応に必要な圧力は常圧でよいが、反応は平衡反応が推定されるので、反応を生成物側に偏らせるためには加圧系が有利となると考えられることから、一般的に常圧より高くすることがより好ましい。一方、反応器内で反応混合物が液化せず、触媒の力学的条件に適合することが望ましいことから、0〜1.0MPa程度の実質上常圧で行うのが好ましい。本発明の方法にかかる接触時間は、通常0.1〜300秒であり、生産性の面から好ましくは1〜60秒である。
本発明によれば、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、気相又は液相においてフッ化水素と反応させることにより1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを得ることができる。
本発明の方法で製造される1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンは、フッ素化反応生成物について公知の方法を適用して精製されるが、例えば、未反応のフッ化水素とともに反応器から液体または気体状態で取り出された後、過剰のフッ化水素が液相分離などの操作で除去され、ついで、水または塩基性水溶液で酸性成分を除かれた後、蒸留により目的とする高純度の1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンとされる。
なお、本発明では連続的、又は半連続的もしくはバッチ式で行っても良く、当業者が適宜調整することができる。
(2−3) 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
(2−3−1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
本発明の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を、塩素化することを特徴とする。
[ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)]
本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンが好ましい。中でも、本発明の方法は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを塩素化するのに好適である。本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、Z体またはE体であってもよい。
なお、本発明で用いるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。したがってハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることを意味する。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンであることを意味する。
[触媒]
本発明の方法において使用する塩素化のための触媒は、金属ハロゲン化物、金属酸化物または金属塩を用いることができる。触媒は、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、ニッケル、銅、コバルト、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、アンチモンまたはタンタルから選ばれる1種または2種以上の金属を用いることができるが、特にアルミニウムが好ましい。さらに、これらの金属ハロゲン化物のハロゲンは、塩素、臭素、沃素またはフッ素のいずれかを用いることができ、中でもフッ素、塩素が好ましく、特にフッ素が好ましい。これらはまた、公知の担体に担持されていてもよい。担体としては金属酸化物、金属塩、アルミナ(γアルミナ、αアルミナ等)、チタニア、ジルコニア、または活性炭などをあらかじめフッ素化したものを用いることができる。金属担持量は0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%が適当である。
[塩化水素]
本発明で用いる塩化水素の量は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン1モルに対し、0.1〜30モルを必要とし、好ましくは0.5〜20モルの範囲である。塩化水素が過剰であると、塩化水素の回収の負荷が大きく、塩化水素が少ないと転化率が不十分であったり、有機物のコーキングが促進されたり、触媒が経時的に低下することがあるので好ましくない。本発明で用いる塩化水素は、フッ化水素を含有するものであってもよい。好ましいフッ化水素の濃度は、全量に対して、0.001質量%以上、10質量%以下、さらに好ましくは、0.1質量%以上、5質量%以下である。しかしながらフッ化水素を含まない塩化水素も使用することができる。
[その他、反応圧力、反応温度など]
本発明の方法における塩素化反応は、気相の状態で行ってもよい。反応温度は、触媒の種類、状態、接触時間に依存するが、200〜500℃が好ましく、250〜400℃がより好ましい。200℃よりも低い場合は転化率が低くなる。また、400℃より高い場合は、好ましくない副反応が増加する、コーキングが発生する等の原因となる。本発明の方法にかかる接触時間は、原料の組成に依存するが、通常0.1秒以上、200秒以下が好ましく、さらに好ましくは2秒以上、150秒以下である。0.1よりも短い場合は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンへの転化率が低くなる、または反応器の圧損が大きくなることがある。
本発明によれば、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを、気相において塩化水素と反応させることにより1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることができる。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよく、E体が好ましい。
本発明の方法で製造される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、塩素化反応生成物について公知の方法を適用して精製されるが、例えば、未反応の塩化水素とともに反応器から液体または気体状態で取り出された後、過剰の塩化水素が液相分離などの操作で除去され、ついで、水または塩基性水溶液で酸性成分を除かれた後、蒸留により目的とする高純度の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとされる。
なお、本発明では連続的、又は半連続的もしくはバッチ式で行っても良く、当業者が適宜調整することができる。
(2−3−2) 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを用いた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
本発明の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、上記(2−2)の方法において生成された1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、塩化水素と反応させることによって、脱フッ化水素化および塩素化することを特徴とする。
[1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン]
本発明の方法に係る1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンは、上記(2−2)の方法においてハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を、フッ素化反応を行うことにより得ることができる。なお、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。
[触媒]
本発明の方法において使用する触媒は、金属酸化物、金属フッ素化酸化物または金属担持触媒を用いることができる。金属酸化物としては、アルミニウム、クロム、ジルコニウム、チタンまたはマグネシウムから選ばれる1種または2種以上の金属を用いることができるが、特にアルミニウムが好ましい。さらに、これらの酸化物は、その酸素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものが好ましい。特に活性アルミナをフッ化水素、フッ素含有有機化合物等でフッ素化したフッ素化アルミナが好ましい。これらはまた、公知の担体に担持されていてもよい。担体としては、アルミナ、クロミア、ジルコニア、チタニア、マグネシア等またはそれらの金属酸化物をフッ素化して酸素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したフッ素化酸化物もしくは活性炭を用いることができる。これらの担体に担持する金属としては、クロム、チタン、アルミニウム、マンガン、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、イリジウム、錫、ハフニウム、バナジウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンチモンの中から選ばれる1種または2種以上の金属が挙げられる。これらのうち、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、マグネシウム、ジルコニウムまたはアンチモンが好ましい。また、これらの金属のうちクロム単独またはクロムと含む複合系が好ましく、例えば、クロム/アルミニウム、クロム/チタン、クロム/鉄などが挙げられる。金属担持量は0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%が適当である。
[塩化水素]
本発明で用いる塩化水素の量は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン1モルに対し、0.1〜50モルを必要とし、好ましくは1〜10モルの範囲である。塩化水素が過剰であると、同一反応器内における有機物処理量の減少並びに反応系から排出された未反応塩化水素と生成物の分離に支障をきたすので好ましくない。塩化水素が少ないと化学量論的に反応が起こり難いため反応率が低下し、収率が低下するので好ましくない。
[その他、反応圧力、反応温度など]
本発明の方法における脱フッ化水素化および塩素化反応は、気相の状態で行ってもよい。反応温度は、80℃〜500℃、好ましくは150℃〜450℃であり、より好ましくは250〜400℃の範囲である。80℃よりも低い温度では反応が遅く実用的でない。500℃を越えると分解反応生成物が生成し、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンもしくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの選択率またはそれらの選択率の合計が低下するので好ましくない。本発明にかかる反応においては系内に存在する分子数が増加するため反応圧力は常圧あるいは減圧下で行うのが好ましいが通常は常圧付近、例えば、0.01〜1Mpaで行うことができる。反応器内で反応混合物が液化しないような温度、圧力条件を選ぶことが望ましい。本発明の方法にかかる接触時間は、通常0.01〜1000秒、好ましくは0.1〜100秒、より好ましくは1〜60秒である。
本発明によれば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、気相において塩化水素と反応させることにより1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることができる。なお、本発明で得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよい。
本発明の方法で製造される1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、公知の方法を適用して精製されるが、例えば、未反応の塩化水素とともに反応器から液体または気体状態で取り出された後、過剰の塩化水素が液相分離などの操作で除去され、ついで、水または塩基性水溶液で酸性成分を除かれた後、蒸留により目的とする高純度の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとされる。ただし、本発明の生成物のひとつであるE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンと共沸組成を形成し、蒸留精製が困難である。このため、該混合物を蒸留する際には、抽出剤として、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンよりも高沸点の塩化炭素、塩化炭化水素およびフッ化塩化炭化水素を加えて分離精製することもできる。抽出剤としては具体的には、塩化炭化水素系溶剤として1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、1,3,3,3−テトラクロロプロペンまたは1,1,3,3−テトラクロロプロペンが好ましく、またフッ化塩化炭化水素系溶剤として1−フルオロ−1,1,3,3−テトラクロロプロパン、1,1−ジフルオロ−1,3,3−トリクロロプロパン、1,3−ジフルオロ−1,1,3−トリクロロプロパン、1,1,1−トリフルオロ−3,3−ジクロロプロパン、1,1,3−トリフルオロ−1,3−ジクロロプロパンまたは1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパンなどを用いることが好ましい。また、他の好ましい抽出剤としては、3〜5個の塩素原子を有するエタン、3〜4個の塩素原子を有するエチレン、または2〜3個の塩素原子を有するメタンが好ましい。具体的には、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ジクロロメタンまたはクロロホルムなどを用いることが好ましい。これらは単独または2種類以上の混合物として用いることもできる。また、分離せずに、再び反応系に原料として戻すことにより、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの純度を上げることもできる。
(2−3−3) 1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを用いたE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
本発明の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを、フッ化水素と反応させることによって、脱塩化水素化およびフッ素化する。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンはZ体およびE体の混合物である。このため本発明のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことを特徴とする。また、本発明のZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことを特徴とする。
[1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法]
本発明の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、公知の方法をもちいることができる。
本発明に係る1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、気相の状態で行ってもよい。この場合、フッ素化触媒は、アルミニウム、クロム、チタン、マンガン、ニッケル、コバルトの中から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等を用いることができる。これらはまた、適宜の担体に担持されていてもよい。担体としてはアルミニウムの酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物等または活性炭などを用いることができる。中でもクロム担持アルミナは好ましく、金属担持量は0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%が適当である。また、フッ素化処理したアルミニウムの酸化物またはステンレス鋼などもフッ素化触媒として用いることができる。本発明で用いるフッ化水素の量は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン1モルに対し、1〜50モルを必要とし、好ましくは5〜30モルの範囲である。本発明の方法における反応温度は、200〜500℃、好ましくは300〜400℃である。反応温度が低ければ反応は遅く実用的ではない。反応温度を高くすれば触媒寿命が短くなり、反応は速く進行するが高フッ素化物が生成し1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの選択率が低下するので好ましくない。反応に必要な圧力は、特に限定されないが、反応器内で反応混合物が液化しないような条件を選ぶことが望ましく、0.1〜1MPaで行うのが好ましい。接触時間は、通常0.1〜300秒、好ましくは1〜150秒である。
しかしながらこれに限定されず、本発明に係る1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、液相の状態で行ってもよい。この場合、フッ素化触媒は、アンチモン、タンタル、ニオブ、モリブデン、スズ、チタン、鉄のハロゲン化物が挙げられ、具体的には、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化鉄、五塩化アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化タンタル、五塩化ニオブ、五塩化モリブデン等を用いることができる。本発明で用いるフッ化水素の量は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン1モルに対し、1〜50モルを必要とし、好ましくは5〜30モルの範囲である。本発明の方法における反応温度は50〜200℃が好ましく、反応圧力としては、反応混合物が反応器内で液化するのが好ましいことから0.5〜10MPaが好ましい。
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンとフッ化水素の液相反応、特に無触媒下での反応において、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの他に、中間生成物が副生することがある。この中間生成物を別途気相でフッ化水素と反応させることにより、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換することができる。
この中間生成物は、具体的には、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロ−3−フルオロプロパン、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン、1,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン、3,3,3−トリクロロ−1−フルオロプロペン、1,1,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン、3,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン、3,3−ジクロロ−1,1−ジフルオロプロペン、1,3−ジクロロ−1,3−ジフルオロプロペン、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,3−トリフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1,3,3−トリフルオロプロパン、1−クロロ−1,1,3,3−テトラフルオロプロパン、及び3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンなどが例示できる。
本発明で用いるフッ化水素の量は反応温度により変わりうるが、中間生成物1モルに対し、1〜20モルを必要とし、好ましくは1〜10モルの範囲である。過剰量のフッ化水素を使用することは中間生成物の転化率を高めることができるため好ましい。ただし、フッ化水素が中間生成物の20モル倍を超えると、同一反応器における有機物処理量の減少ならびに反応系から排出された未反応フッ化水素と生成物との混合物の分離に支障をきたす。一方、フッ化水素が中間生成物の1モル倍よりも少ないと反応率が低下し、選択率が低下するので好ましくない。
本発明で用いる塩素の量は反応温度により変わりうるが、中間生成物1モルに対し、0.001〜0.5モルを必要とし、好ましくは0.01〜0.1モルであり、最も好ましくは0.01〜0.03モルの範囲である。塩素が中間生成物の0.5モル倍を超えると過塩素化物の生成が増えるため好ましくない。一方、塩素が中間生成物の0.001モル倍よりも少ないと反応率が低下し、転化率が低下するので好ましくない。
本発明の方法における反応温度は特に限定されないが、150℃以上600℃以下であり、150℃以上500℃以下が好ましく、250℃以上400℃以下がさらに好ましい。反応温度が150℃よりも低いと反応が遅く実用的ではない。一方、反応温度が600℃を超えると、タール化、分解生成物の生成が多くなるので好ましくない。本発明の方法において、反応圧力については特に限定されない。常圧、すなわち、特に加圧又は減圧などの圧力調節をすることなく行うことができる。装置の面から0.01〜1MPaで行うのが好ましい。加圧すると付加反応の方向に平衡が傾くため、減圧で行うこともできる。圧力を決定する場合、系内に存在する原料などの有機物が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。本発明の方法に係る接触時間は、通常0.1〜500秒間、好ましくは10〜300秒間である。接触時間が短いと反応率が低下し、接触時間が長すぎると副反応が起こるので好ましくない。
本発明の方法に係る1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンは、公知の方法で製造することができるが、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン中に含まれうる金属可溶化剤、金属可溶化剤の塩酸塩、鉄錯体等の不純物を一定濃度以下に制限することにより、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造における、触媒寿命の短縮、反応抑制、装置スケーリングや腐食等の問題を改善することができる。これらの不純物は、例えば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造過程において、原料資材に含まれたり、副生したりして、製造物である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンに混入することがある。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン中の、金属可溶化剤、金属可溶化剤の塩酸塩、鉄錯体等の不純物は、公知の方法により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから分離除去することができる。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン中の不純物、特に、金属可溶化剤及び/又は金属可溶化剤の塩酸塩、及び鉄錯体の濃度はそれぞれ100ppm以下、より好ましくはそれぞれ10ppm以下に抑えたものを用いることが好ましい。この場合、本発明の方法におけるフッ素化反応は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを液相の状態で、触媒非存在下、フッ化水素と反応させることができる。本発明で用いるフッ化水素の量は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン1モルに対し、10モル以上を必要とし、好ましくは20モル以上、さらには40モル以上が好ましい。通常生成物に伴われる低フッ素化物、未反応物またはフッ化水素は生成物と分離されリサイクルされるのでフッ化水素の過大または過小は、大規模な製造では致命的ではない。本発明の方法における反応温度は100〜200℃が好ましく、反応圧力としては、反応混合物が反応器内で液化するのが好ましいことから0.5〜6.0MPaが好ましい。
金属可溶化剤、金属可溶化剤の塩酸塩、鉄錯体等の不純物は、吸着剤による吸着法、水による洗浄法、膜分離法、蒸留法等により、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから分離除去することができる。吸着法において、吸着剤としては、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性炭、セルロース繊維等が挙げられる。吸着法による不純物の除去は、例えば、吸着剤を充填した塔に連続的に有機物を導入し吸着除去する方法や、有機物の一定量を一定時間吸着剤にバッチ的に接触し除去する方法などにより行なうことができる。使用後の吸着剤は、吸着成分をアセトン、メタノール、酢酸エチル等の有機溶媒または水蒸気等により脱離し、乾燥後、再使用することができる。なお、吸着剤除去後、蒸留法を併用することは、更なる吸着剤の低減、不純物の低減などが期待できることからも、好ましい態様の一つとして挙げられる。蒸留法については特に制限はなく、当業者が適宜調整できる。
水による洗浄法において、鉄錯体等の不純物を含む有機物に対する水の量は、不純物濃度に依存するが、例えば0.1質量%の鉄錯体濃度および0.05質量%の金属可溶化剤濃度の有機物を洗浄する場合では、1/1〜1/4の範囲であればよい。水量は1/1以上であってもよいが、エマルジョンの発生が増加することや洗浄槽が大きくなるために操作上および経済的に不利であり、また1/4以下では水洗の効果が乏しい。不純物濃度が高く、洗浄が不十分な場合には数回水洗を繰り返すことが好ましい。水温は液体として取り扱える範囲で操作上支障がなければ何度でもよく、常圧下20〜80℃が好ましい。水洗後有機層を二層分離しゼオライト等の乾燥剤に接触して乾燥する。
以上のように、各種精製方法を採用することにより、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン中に含まれる金属可溶化剤、金属可溶化剤の塩酸塩、鉄錯体等の不純物を低減できる。
本発明によれば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを、気相または液相においてフッ化水素と反応させることにより1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることができる。なお、本発明で得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよい。得られたZ体、E体、またはその混合物である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることができる。
(2−3−4) 1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを用いたE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
本発明に係る方法は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン(1230za)から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を工業的規模で効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
本発明の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを、フッ素化剤と反応させることによって、フッ素化する。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンはZ体およびE体の混合物である。このため本発明のE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことを特徴とする。また、本発明のZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法は、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことを特徴とする。
本発明に係る方法は、(1)1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン(1230za)から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を製造する方法において、高沸点化合物の副生を抑制し、1233zdを工業的規模で効率的に製造する。
[1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法]
本発明の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を製造する方法は、以下の特徴を含む:
重合禁止剤の存在下で、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン(1230za)を含む組成物のフッ素化を行なって、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を得る。
本発明の方法においては、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物を、フッ素化剤と、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生じるように反応させる。この反応は、液相で行なうことが好ましい。また、本発明の方法に係る反応は流通式(連続式)、半バッチ式もしくはバッチ式で行なってもよい。また、本発明の方法に係る反応は、触媒の存在下で行なってもよいし、触媒の非存在下で行なってもよい。
本発明の方法において、フッ素化剤をフッ化水素とする場合、以下の反応が少なくとも含まれる。
[組成物]
1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物には、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンが成分として少なくとも含まれ、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン以外の成分が含まれてもよい。この組成物は、好ましくは1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを5質量%以上含み、より好ましくは30質量%以上含み、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを主生物として含むことがさらに好ましい。ここで、「1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを主成分として含む」とは、組成物中に1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを50質量%以上含むことをいい、70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。また、実質的に1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンのみからなることが特に好ましい。ここで、「実質的に1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンのみからなる」とは、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンが、組成物中に、95質量%以上含まれることを意味する。さらに、この組成物に含まれる成分は1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンのみであってもよい。1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン以外の成分は、特に限定されず、単種類であってもよく、複数種類であってもよいが、本発明の方法に係るフッ素化反応において1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンに変換されるものが好ましい。また、反応に活性なものであってもよいし、不活性なものであってもよいが、蒸留などの分離操作によって、反応後に1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンとの分離が可能なものが好ましい。この組成物に含まれうる成分としては、具体的には、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(240db)、1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン(230fa)、1,1,2,3−テトラクロロ−1−プロペン(1230xa)、2,3,3,3−テトラクロロプロペン(1230xf)、1,1,3,3,3−ペンタクロロプロペン(1220za)、1,3,3,3−テトラクロロプロペン(1230zd)などが挙げられるが、これらに限定されない。
[1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン]
なお、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンは、公知の化合物である。その合成方法としては、例えば、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を、液相中、塩化第二鉄(FeCl3)存在下で脱塩化水素化する方法等が知られている(例えば、US米国特許公開第2003/0028057号明細書参照)。
[フッ素化剤]
フッ素化剤としては、前記組成物から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生じさせることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、フッ化水素が好適に用いられる。
フッ素化剤の使用量は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生成すれば特に限定されないが、反応の選択率、目的物の収率等の観点から、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンから1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生成するために必要なフッ素化剤の理論量を少なくとも用いることが好ましい。すなわち、フッ素化剤の使用量の下限は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン1モルに対して通常3モル以上であり、好ましくは4モル以上であり、さらに好ましくは5モル以上である。また、フッ化水素の使用量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から反応に関与しないフッ化水素の量が少ない方が好ましい。フッ化水素の使用量の上限は20モル以下が好ましく、15モル以下がさらに好ましく、10モル以下が特に好ましい。このフッ化水素の使用量は、本発明の方法に係る反応をバッチ式で行なう場合には、使用される1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンの初期量に対して表され、連続式で行なう場合には、反応器に存在する1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンの定常量に対して表される。また、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンのほかにも、前記組成物中にフッ素化により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生成し得る成分が含まれる場合には、その成分から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを生成するために必要なフッ素化剤の理論量以上を、上記のフッ素化剤の使用量にさらに加えてもよい。本発明の一実施態様において、フッ化水素の使用量は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン1モルに対して、3〜20モルであり、4〜15モルが好ましく、5〜10モルがさらに好ましい。
[重合禁止剤]
本発明の方法においては、重合禁止剤が用いられる。これにより、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンのフッ素化反応により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生成する際に起こりうる、オリゴマー体などの高沸点化合物の副生を抑制することができる。この重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、フェノチアジン、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ジ−t−ブチルジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンおよびN−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を用いる。中でも、p−メトキシフェノール、フェノチアジンおよび2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が好適に使用される。
重合禁止剤の使用量は、特に限定されない。高沸点化合物の副生を抑制できればよく、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン1モルに対して、通常0.00001モル以上用い、好ましくは0.0001モル以上であり、さらに好ましくは0.001モル以上である。また、高沸点化合物の副生を抑制する能力に大きな差異がなければ、重合禁止剤の使用量が少ない方が経済的に好ましい。上限としては、0.1モル以下が好ましく、0.05モル以下がさらに好ましく、0.01モル以下が特に好ましい。本発明の一態様において、重合禁止剤の使用量は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン1モルに対して、通常0.00001〜0.1モルであり、好ましくは0.0001〜0.05モルであり、特に好ましくは0.001〜0.01モルである。
この重合禁止剤の使用量は、本発明の方法に係る反応をバッチ式で行なう場合には、使用される1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンの初期量に対するモル比で表され、連続式で行なう場合には、反応器に存在する1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンの定常量に対するモル比で表される。
本発明の方法において、重合禁止剤の反応系への導入方法は、特に限定されない。1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物とともに導入してもよいし、反応開始前にあらかじめ導入しておいてもよい。本発明の方法に係る反応を連続式で行なう場合、重合禁止剤を1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物とともに導入することが好ましく、重合禁止剤を1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物に溶解させて導入することが特に好ましい。本発明の方法に係る反応をバッチ式で行なう場合、反応開始前にあらかじめ重合禁止剤を導入しておくことが好ましい。
[温度・圧力]
本発明の方法は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物とフッ素化剤との反応により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生じるように、温度と圧力を適宜調整して実施される。本発明の一態様において、本発明の方法に係る反応を液相中で行なう場合、反応効率の観点から、温度は通常20℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上に調整される。上限は特に限定されないが、高沸点化合物の副生抑制の観点から、通常180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下に調整される。また、圧力は通常0.1MPaG(ゲージ圧をいう。本明細書において同じ。)以上、好ましくは0.5MPaG以上、より好ましくは1MPaG以上に調整される。上限は特に限定されないが、一般的な耐圧設計の反応装置でも実施が可能なように、通常10MPaG以下に、好ましくは6MPaG以下、より好ましくは2.5MPaG以下に調整される。本発明の一態様において、反応は、通常20〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃で実施される。また、本発明の一態様において、反応は、通常0.1〜10MPaG、好ましくは0.5〜6MPaG、より好ましくは1〜2.5MPaGで実施される。
[溶媒]
本発明の方法においては、溶媒の使用を必須とすることなく1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを効率的に製造することができるため、本発明の方法は、生産性、経済性の観点からも好適である。一方で、反応の均一性、反応後の操作性を考慮して溶媒を使用することもできる。使用する溶媒の種類は、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを少なくとも溶解させることができ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの沸点よりも高い沸点を有する有機化合物で、本反応中にフッ化水素によってフッ素化されない有機化合物が好ましい。このような溶媒の例としては、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、パーフルオロ化されたアルカン類及びアルケン類、ヒドロフルオロカーボン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、溶媒を使用する場合、その使用量は、通常、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン、フッ化水素、重合禁止剤および溶媒の総量に対して80質量%以下であり、40質量%以下が好ましい。
[触媒]
また、本発明の方法においては、触媒の使用を必須とすることなく1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを含む組成物から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを効率的に製造することができるため、本発明の方法は、生産性、経済性の観点からも好適である。もちろん、触媒を用いてもよく、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンから1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造するために使用されうる公知のものを採用することができる。
[反応器]
本発明の方法において、反応器(反応装置)は、フッ素化剤や副生し得る塩化水素などに対して実質的に不活性な材質で造られたものを用いることが好ましい。例えば、ステンレス鋼、ハステロイ(TM)、インコネル(TM)、モネル(TM)、インコロイ(TM)、白金、炭素、フッ素樹脂またはこれらをライニングした材質で造られたものが好ましい。
[反応時間]
本発明の方法に係る反応は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生じるのに十分な時間をかけて行なわれる。フッ素化剤としてフッ化水素を用いる場合には、塩化水素の副生が生じなくなった段階を終点とすることが好ましいが、必要に応じてその前後で適宜反応を終了してもよい。
[反応後の処理]
本発明の方法に係る反応後の生成物には、目的物である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが少なくとも含まれる。この1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、反応後の生成物から分離することが好ましい。1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを反応後の生成物から分離する方法は特に限定されず、例えば蒸留によって反応後の生成物から1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを分離することができる。
本発明によれば、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンから1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造する方法において、高沸点化合物の副生を抑制する方法を提供することができる。これにより、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンから1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを工業的規模で効率的に製造することができる。なお、本発明で得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよい。得られたZ体、E体、またはその混合物である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを得ることができる。
(2−4) 1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
(2−4−1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
本発明の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を、フッ素化することを特徴とする。
[ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)]
本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペンが好ましい。中でも、本発明の方法は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ素化するのに好適である。本発明の方法に係るハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、Z体またはE体であってもよい。
なお、本発明で用いるハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。したがってハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを意味する。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)がZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの場合には、異性化反応を行ったハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)はE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであることを意味する。
[反応条件など]
本発明の方法におけるフッ素化反応は、液相において1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを金属フッ化物と反応させてもよい。本発明の金属フッ素物は、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化セシウムまたはフッ化ルビジウムから選ばれる少なくとも一種であってもよく、中でも工業的に入手しやすいフッ化カリウムが特に好ましい。金属フッ素物は極力無水で使用されるが、1重量%未満の微量の水分は反応を阻害しない限り許容される。本発明の方法に用いる金属フッ化物の量は、原料の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対して1モル以上あればよいが、1〜10モル用いることができ、好ましくは1〜5モル、更に好ましくは1〜3モルの範囲である。金属フッ化物が1モルより少ない場合は反応の進行が遅く、10モルより多い場合は反応に関与しない金属化合物があるため原料の無駄である。本発明の方法における溶媒としては、反応を阻害しない限り特に限定されることはないが、スルホキシド類、アミド類、ニトリル類、塩素化合物、ピロリドン類、スルホラン類、ケトン類、カルビトール類またはグリコール類等から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。反応温度は25〜300℃、好ましくは50〜200℃であり、反応温度25℃よりも低ければ反応は遅く実用的ではない。反応温度が300℃を超えると反応は速く進行するが溶媒等の分解が起きるとともに、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの分解生成物等が生成し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの選択率が低下するので好ましくない。反応圧力は主として生成した1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの圧力に依存する。反応時間は、温度、圧力、反応活性等により規定される反応速度により適宜選択される。
しかしながらこれに限定されず、本発明の方法におけるフッ素化反応は、気相において1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンをフッ化水素と反応させてもよい。本発明の方法において使用するフッ素化触媒は、好ましくはクロム、チタン、アルミニウム、マンガン、ニッケル、コバルト、ジルコニウムの中から選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物、フッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物を担持した活性炭である。また、担体として、アルミナ、フッ素化アルミナ、フッ化アルミニウム、ジルコニア又はフッ素化ジルコニアを用いることもできる。金属担持量は0.1〜80質量%、好ましくは1〜40質量%が適当である。本発明で用いるフッ化水素の量は、反応温度により変わりうるが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1モルに対し、1〜60モル、好ましくは1〜30モルである。フッ化水素が60モルを超えると同一反応器における有機物処理量の減少ならびに反応系から排出された未反応フッ化水素と生成物との混合物の分離に支障をきたし、一方、フッ化水素が1モルよりも少ないと反応率が低下し、選択率が低下するので好ましくない。反応温度は200〜600℃、好ましくは300〜500℃であり、反応温度200℃よりも低ければ反応は遅く実用的ではない。反応温度が600℃を超えると触媒寿命が短くなり、また、反応は速く進行するが分解生成物等が生成し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの選択率が低下するので好ましくない。反応圧力は特に限定されないが、反応器内で反応混合物が液化しないような条件を選ぶことが望ましく、0.1〜1.0MPaで行うのが好ましい。接触時間は、通常0.1〜300秒、好ましくは5〜60秒である。
本発明によれば、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、気相または液相においてフッ素化させることにより1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得ることができる。なお、この1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよい。また、ここで得られる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよく、E体が好ましい。
(2−4−2) 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
本発明の1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法は、上記(2−2)の方法において生成された1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、脱フッ化水素化することを特徴とする。
[1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン]
本発明の方法に係る1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンは、上記(2−2)の方法においてハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を、フッ素化反応を行うことにより得ることができる。なお、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。
[触媒]
本発明の方法において使用する触媒は、金属ハロゲン化物もしくは金属オキシハロゲン化物を金属酸化物もしくは活性炭に担持した金属化合物担持触媒、又は金属酸化物を用いることができる。アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、ニッケル、銅、コバルト、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、スズ、アンチモン、及びタンタルから選ばれる1種または2種以上の金属のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、及びオキシフッ化塩化物などを用いることができる。これらは適宜、担体に担持されていてもよい。担体としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアなどの酸化物、または活性炭などを用いることができる。金属酸化物としてはアルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。金属担持量は0.1〜80質量%、好ましくは1〜40質量%が適当である。
[その他、反応圧力、反応温度など]
本発明の方法における脱フッ化水素反応は、気相の状態で行ってもよい。この場合、触媒としてはジルコニウム化合物担持触媒、もしくはジルコニアが好ましい。反応温度は200〜600℃、好ましくは200〜500℃であり、より好ましくは200℃〜400℃である。反応温度が200℃よりも低ければ反応が遅く、実用的ではない。一方、反応温度が600℃を超えると触媒寿命が短くなり、また、反応は速く進行するが分解生成物などが生成し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの選択率が低下することがある。このうち、反応温度を300〜350℃にすることは、副生成物を顕著に抑えられることから、特に好ましい。反応圧力は特に限定されないが、装置の面から0.01〜1MPaで行うのが好ましい。また、系内に存在する原料有機物とフッ化水素が、反応系内で液化しないような条件を選ぶことが望ましい。接触時間は、通常0.1〜300秒、好ましくは5〜200秒である。
しかしながらこれに限定されず、本発明の方法における脱フッ化水素反応は、さらに件下で行ってもよい。圧力としては通常、0.001kPa〜90kPaで行うが、好ましくは0.001kPa〜50kPaであり、更に好ましくは0.001kPa〜20kPaである。反応温度は通常、250〜600℃、好ましくは300〜500℃であり、より好ましくは300℃〜400℃である。反応温度が250℃よりも低い場合、特定の反応圧力であっても反応は遅くなり、実用的ではない。反応温度が600℃を超えると触媒寿命が短くなり、また、反応は速く進行するが分解生成物などが生成し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの選択率が低下することがある。本発明は、特定の圧力条件下(減圧条件下)で十分反応が進行することから、600℃を超える温度は特に必要ではない。なお、本発明にかかる反応の接触時間は、減圧条件下で行う為、接触時間が大幅に短くても十分反応は進行する。すなわち、上述した減圧条件下で通常0.01〜5秒であり、特に好ましくは0.01〜1秒である。
また、本発明の方法における脱フッ化水素反応は、気相中において、触媒存在下、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを塩化水素と反応させてもよい。この場合、触媒としては特に活性アルミナをフッ化水素、フッ素含有有機化合物等でフッ素化したフッ素化アルミナが好ましい。本発明で用いる塩化水素の量は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン1モルに対し、1〜50モルを必要とし、好ましくは1〜10モルの範囲である。塩化水素が50モルを越えると、一反応器内における有機物処理量の減少並びに反応系から排出された未反応塩化水素と生成物の分離に支障をきたすので好ましくない。一方、塩化水素が10モル以下の場合化学量論的に反応が起こり難いため反応率が低下し、収率が低下するので好ましくない。反応温度は80℃〜500℃、好ましくは150℃〜450℃であり、より好ましくは250〜400℃であり、反応温度80℃よりも低い温度では反応が遅く実用的でない。反応温度が500℃を越えると分解反応生成物が生成し、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンもしくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの選択率またはそれらの選択率の合計が低下するので好ましくない。本発明にかかる反応においては、反応器内で反応混合物が液化しないような条件を選ぶことが望ましく、通常は常圧(0.1Mpa)付近、例えば、0.01〜1Mpaで行うことができる。接触時間は通常0.01〜1000秒、好ましくは0.1〜100秒、より好ましくは1〜60秒である。
本発明によれば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、気相において脱フッ化水素化させることにより1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを得ることができる。なお、本発明で得られる1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、Z体、E体、またはその混合物であってもよい。
(2−5) 3,3,3−トリフルオロプロピンを用いた1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの製造方法
本発明の1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの製造方法は、上記(2−1)の方法において生成された3,3,3−トリフルオロプロピンから3,3,3−トリフルオロプロピニル金属を調製し、トリフルオロ酢酸エステルと反応させることで1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンまたはその等価体を経て1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物を製造することを特徴とする。
[3,3,3−トリフルオロプロピニル金属]
本発明の方法に係る3,3,3−トリフルオロプロピニル金属の金属としては、リチウム原子またはハロゲン化マグネシウム基を用いることができ、ハロゲンは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を用いることができる。中でも、リチウム原子、塩化マグネシウム基(MgCl)および臭化マグネシウム基(MgBr)が好ましく、リチウム原子が特に好ましい。3,3,3−トリフルオロプロピニル金属は、上記(2−1)の方法において生成された3,3,3−トリフルオロプロピンから調製することができる。具体的には、3,3,3−トリフルオロプロピンと、有機リチウム試薬またはグリニャール試薬を、後述する調製溶媒中で、−150〜+50℃で、12時間以内で反応させることにより、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属を調製することができる。この調製においては、市販の濃度調整された有機リチウム試薬またはグリニャール試薬の各種溶液を用いるのが簡便である。3,3,3−トリフルオロプロピンの使用量は、有機リチウム試薬またはグリニャール試薬1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、0.8〜1.6モルが好ましく、0.9〜1.3モルが特に好ましい。
なお本発明の方法に係る3,3,3−トリフルオロプロピンは、上記(2−1)の方法においてハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を、脱ハロゲン化することにより得ることができる。ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)は、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を出発原料として用いて、上記(1)の異性化反応を行うことにより得ることができる。
[トリフルオロ酢酸エステル]
本発明の方法に係るトリフルオロ酢酸エステルのアルキル基は、炭素数が1〜12の、直鎖状または分枝状の鎖式、もしくは炭素数が3〜12の環式を用いることができる。その中でも炭素数が1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基およびエチル基が特に好ましい。また、該アルキル基は、所望の反応に対して実質的に影響を与えることのない置換基を有していても良い。係る置換基としては、フッ素原子および塩素原子等のハロゲン原子、並びにメトキシ基およびエトキシ基等の炭素数が1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
本発明の方法に係るトリフルオロ酢酸エステルの使用量は、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、0.8〜5モルが好ましく、0.9〜3モルが特に好ましい。
[その他、反応圧力、反応温度など]
3,3,3−トリフルオロプロピニル金属とトリフルオロ酢酸エステルの反応では、反応溶媒を用いても良い。この反応溶媒としては、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系およびエーテル系が好ましく、エーテル系が特に好ましい。これらの反応溶媒は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。反応溶媒の使用量は、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属1モルに対して0.05L以上を用いれば良く、0.1〜30Lが好ましく、0.2〜20Lが特に好ましい。該使用量には、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属の溶液に伴う溶媒も含まれる。反応温度は、75℃以下で行えば良く、50〜−100℃が好ましく、+25〜−75℃が特に好ましく、0〜−50℃が極めて好ましい。反応時間は、48時間以内で行えば良く、原料基質および反応条件により異なるため、反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすれば良い。
反応の後処理として有機合成における一般的な操作を採用することにより、中間体である1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノン(CF3C≡CCOCF3)またはその等価体を得ることができる。該等価体は具体的には、金属ヘミケタール、水和物およびアルキルヘミケタール等が挙げられる。これらの中間体は、酸の存在下で水と接触させることで、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物を得ることができる。
中間体(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンまたはその等価体)を水と接触させるときの酸の種類としては、特に制限はないが、無機酸が好ましく、硫酸が特に好ましい。酸の使用量は特に制限はなく、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属1モルに対して0.01〜200モルを用いれば良い。水の使用量は、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属1モルに対して0.03L以上を用いれば良く、0.04〜30Lが好ましく、0.05〜15Lが特に好ましい。また中間体と水との接触が2相系になることがある。この様な2相系の接触は、相間移動触媒の存在下で行うことにより、所望の水との接触が円滑に進行する場合がある。中間体は、そのまま酸の存在下で水と接触させることができるが、新たに接触溶媒を用いても良い。ここで用いる接触溶媒の種類としては、上述の反応において使用可能な反応溶媒から選ばれることが好ましい。接触溶媒の使用量は反応溶媒と合計して、3,3,3−トリフルオロプロピニル金属1モルに対して0.05L以上を用いれば良く、0.1〜30Lが好ましく、0.2〜20Lが特に好ましい。
中間体を酸の存在下で水と接触させる際の接触温度は、150℃以下で行えば良く、125〜10℃が好ましく、100〜20℃が特に好ましく、75〜30℃が極めて好ましい。接触時間は、48時間以内で行えば良く、中間体および接触条件により異なるため、接触の進行状況を追跡し、中間体の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすれば良い。
中間体と水との接触の後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することにより、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物を得ることができる。1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン水和物の水の数は、正の整数を表し、上限は特に設定されないが、1および2水和物が好ましく、2水和物が特に好ましい。また、このとき1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物から分離したそれぞれの工程由来の反応溶媒、副生成物、未反応原料資材等は、回収して、それぞれ精製して本発明に再利用することができる。
1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物は、エーテル系の抽出溶媒で、水層から効率良く回収することができる。回収された生成物は、必要に応じて活性炭処理、分別蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、高い純度に精製することができる
本発明の方法によって得られた1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物は、脱水することで1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンを得ることができる。
脱水の方法は、特に制限はなく、例えば、熱分解する方法、共沸脱水する方法、脱水剤を用いる方法が例示できる。その中でも脱水剤を用いる方法が好ましい。脱水剤としては、濃硫酸、無水酢酸、五酸化二リン、ソーダ石灰、塩化カルシウム、無水塩化亜鉛、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、無水硫酸カルシウム、アルミナ、シリカゲルおよび合成ゼオライト等を用いることができる。
本発明によれば、3,3,3−トリフルオロプロピンから3,3,3−トリフルオロプロピニル金属を調製し、トリフルオロ酢酸エステルと反応させることで1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンまたはその等価体を経て、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物または1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンを得ることができる。
(3) フルオロカーボンの共製造の方法
本発明のフルオロカーボンの共製造の方法は、上記(1)の異性化の反応と、上記(2)のフルオロカーボンを製造する反応を連続して行うことで、単一原料から複数のフルオロカーボンを統合的に共製造することを特徴とする。ここでいう連続とは、前の反応の生成物と次の反応の原料との少なくとも一部が同一の化合物であることを示す。したがって、物理的(時間、場所、量など)な連続性はあってもよいし、なくてもよい。また共製造とは、複数種類の化合物を別々に分離して製造する方法を意味する。
(3−1) 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を共製造する方法
本発明の方法は、全体として5つの工程から構成される。5つの工程の反応を連続して行うことで、単一原料である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、5つのフルオロカーボンである1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer4)を連続的かつ経済的に共製造する方法を下記に示す。
本発明の第1の工程においては、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を、フッ化水素と反応させることによって、上記(2−3−3)の脱塩化水素化およびフッ素化反応を行う。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)はZ体、E体、またはその混合物であってもよい。
本発明の第2の工程においては、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)を用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行う。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)がZ体であればE体であり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)がE体であればZ体であることを意味する。
本発明の第3の工程においては、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)を用いて、さらに上記(2−2)のフッ素化反応を行うことで、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を得ることができる。
本発明の第4の工程においては、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を用いて、さらに上記(2−4−2)の脱フッ化水素化を行う。ここで得られる1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)はZ体、E体、またはその混合物であってもよい。
本発明の第5の工程においては、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)を用いて、さらに異性化反応を行う。異性化反応は上記(1)の反応であってもよいし、他の公知の1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体の異性化反応であってもよい。ここで得られる1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer4)は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)がZ体であればE体であり、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)がE体であればZ体であることを意味する。
それぞれの工程における生成物は公知の方法によって分離、精製してもよく、また未反応の原材料は再度使用してもよい。
本発明によれば、連続した5工程の反応を行うことで、単一原料である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、5つのフルオロカーボンである1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer4)を共製造することができる。
本発明においては、連続した5つの工程の反応を行うことで、単一原料から、5つの生成物を共製造する方法を例示した。上記5つの工程は、記載の順番で連続して行われればよい。ここでいう連続とは、前の反応の生成物と次の反応の原料との少なくとも一部が同一の化合物であることを示す。したがって、物理的(時間、場所、量など)な連続性はあってもよいし、なくてもよい。例えば、第2の工程は第1の工程の後であれば、記載の順番でなくてもよい。すなわち、第1の工程で得た生成物の一部を、第3の工程から第5の工程に進めてそれぞれの生成物を得た後に、第1の工程で得た生成物の別の一部を、第2の工程に進めてもよい。さらにこれらに限定されず、上記5つの工程は、出発原料によって途中の工程から開始することもでき、また目的生成物によって途中の工程で終了することもできる。例えば、第1の工程から第3の工程までを用いて、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、3つのフルオロカーボンである1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を共製造することもできる。第1の工程から第4の工程までを用いて、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、4つのフルオロカーボンである1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)を共製造することもできる。第2の工程から第3の工程までを用いて、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)から、2つのフルオロカーボンである、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を共製造することもできる。第2の工程から第4の工程までを用いて、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)から、3つのフルオロカーボンである、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)を共製造することもできる。第2の工程から第5の工程までを用いて、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer1)から、4つのフルオロカーボンである、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(isomer2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer3)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(isomer4)を共製造することもできる。
何れの共製造の方法においても、それぞれの工程における生成物は公知の方法によって分離、精製することができ、商業的に利用することができる。本発明の方法によって、単一の原料から複数のフルオロカーボンを統合的に共製造することができ、また出発原料および目的生成物によって柔軟に対応できることから経済的な有利性を示す。
(3−2) 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、3,3,3−トリフルオロプロピン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物、および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンを共製造する方法
本発明は全体として4つの工程から構成される。4つの工程の反応を連続して行うことで、単一原料である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、5つのフルオロカーボンであるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdE)、3,3,3−トリフルオロプロピン(TFPy)、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(HFAc・(H2O)n)、および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)を連続的かつ経済的に共製造する方法を下記に示す。
本発明の第1の工程においては、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)を、フッ化水素と反応させることによって、上記(2−3−3)の脱塩化水素化およびフッ素化反応を行う。ここで得られるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)は、E体との混合物であってもよい。
本発明の第2の工程においては、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)を用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdE)を得ることができる。
本発明の第3の工程においては、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)を用いて、さらに上記(2−1)の脱塩化水素化反応を行うことで、3,3,3−トリフルオロプロピン(TFPy)を得ることができる。
本発明の第4の工程においては、3,3,3−トリフルオロプロピン(TFPy)を用いて、さらに上記(2−5)の反応を行うことで、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(HFAc・(H2O)n)および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)を得ることができる。第4の工程に関しては、目的生成物によって1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(HFAc・(H2O)n)の脱水を行わなくてもよい。
それぞれの工程における生成物は公知の方法によって分離、精製してもよく、また未反応の原材料は再度使用してもよい。
本発明によれば、連続した4工程の反応を行うことで、単一原料である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、5つのフルオロカーボンであるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdE)、3,3,3−トリフルオロプロピン(TFPy)、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(HFAc・(H2O)n)、および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)を共製造することができる。
本発明においては、連続した4つの工程の反応を行うことで、単一原料から、5つの生成物を共製造する方法を例示した。上記4つの工程は記載の順番で連続して行われればよい。ここでいう連続とは、前の反応の生成物と次の反応の原料との少なくとも一部が同一の化合物であることを示す。したがって、物理的(時間、場所、量など)な連続性はあってもよいし、なくてもよい。例えば、第2の工程は第1の工程の後であれば、記載の順番でなくてもよい。すなわち、第1の工程で得た生成物の一部を、第3の工程から第4の工程に進めてそれぞれの生成物を得た後に、第1の工程で得た生成物の別の一部を、第2の工程に進めてもよい。さらにこれらに限定されず、上記4つの工程は、出発原料によって途中の工程から開始することもでき、また目的生成物によって途中の工程で終了することもできる。例えば、第1の工程から第3の工程までを用いて、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)から、3つのフルオロカーボンであるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdE)、および3,3,3−トリフルオロプロピン(TFPy)を共製造することもできる。第2の工程から第4の工程までを用いて、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdZ)から、4つのフルオロカーボンE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(1233zdE)、3,3,3−トリフルオロプロピン(TFPy)、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(HFAc・(H2O)n)、および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)を共製造することもできる。また共製造の方法に含まれる第4の工程に関しては、目的生成物によって1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(HFAc・(H2O)n)の脱水を行わなくてもよい。
何れの共製造の方法においても、それぞれの工程における生成物は公知の方法によって分離、精製することができ、商業的に利用することができる。本発明の方法によって、単一の原料から複数のフルオロカーボンを統合的に共製造することができ、また出発原料および目的生成物によって柔軟に対応できることから経済的な有利性を示す。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施態様に限られない。ここで、組成分析値の「%」とは、反応混合物を直接ガスクロマトグラフィー(特に記述のない場合、検出器はFID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。
以下、組成分析値に係る「GC%」は、反応混合物をガスクロマトグラフィー(検出器:FID)によって測定して得られた組成の「面積%」を表す。なお、表示桁数以下は四捨五入した。例えば、表1中の0.01GC%は、0.005面積%以上、0.015面積%未満であることを示している。
(1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)の製造
本発明のハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化して、対応するハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する方法において、ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)の水分濃度を検討した。
[調製例1]
電気炉を備えた直径2cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に、50mLの粒状ジルコニア(サンゴバン社製、型番:SZ−31163)を充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで反応管内を昇温した。反応管内から水の留出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素(HF)を同伴させ、その濃度を徐々に高めた。充填された粒状ジルコニアのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで、反応管内温度を100℃刻みで段階的に昇温し、各段階温度で1時間ずつ保持し、最終的に500℃に上げ、その状態を1時間保持した。このようにして、フッ素化処理を施した粒状ジルコニア(以下、「触媒1」と称することがある。)を調製した。
[調製例2]
粒状ジルコニアの代わりに、γ−アルミナ(住化アルケム社製、型番:KHS−46)を充填した以外は、調製例1と同様にして、フッ素化処理を施したγ−アルミナ(以下、「触媒2」と称することがある。)を調製した。
[実施例1−1]
脱水剤として200gのゼオラムA−3(東ソー社製)を充填した乾燥塔に、20kgのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンをポンプで送液・循環させて脱水処理を行った。脱水処理後のE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンについて、気化装置を備えたカールフィッシャー水分計で水分濃度を測定したところ、水分濃度は1ppm未満であった。ここで、カールフィッシャー水分計には、微量水分測定装置(三菱化学アナリテック社製、CA−200型)を使用し、試料導入部には液化ガス気化装置(同社製、型番:VG−200型)を接続し、予め設定した量の試料を気化させて、水分計に自動注入した。
続いて、調製例1で調製した50mLの触媒1を、電気炉を備えた直径2cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に充填し、約100mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、反応管内の温度を300℃に昇温した。
次に、前述の脱水処理後のE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1ppm未満)を予め気化させて、触媒との接触時間(15秒間)に基づいて計算された速度で反応管への供給を開始した。有機物の流量が安定したところで、窒素ガスの導入は停止した。
反応管出口から流出するガス混合物を水中に吹き込んで、酸性ガスを除去した後、得られた生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。これらの結果を表1に示す。表中、1234ze(E)はE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを、1234zcは1,1,3,3−テトラフルオロプロペンを、245faは1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、1234ze(Z)はZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを表す。以下同じ。
[実施例1−2]
脱水処理したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1ppm未満)の代わりに、水分調整したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:37ppm)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして異性化反応を行った。その結果を表2に示す。
[実施例1−3]
脱水処理したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1ppm未満)の代わりに、水分調整したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:61ppm)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして異性化反応を行った。その結果を表3に示す。
[比較例1−1]
脱水処理したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1ppm未満)の代わりに、脱水処理を施していないE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:133ppm)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして異性化反応を行った。その結果を表4に示す。
[実施例1−4]
実施例1−1と同様にして脱水処理したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1.5ppm)を用い、触媒1の代わりに、調製例2で調製した触媒2を用いた以外は、実施例1−1と同様にして異性化反応を行った。その結果を表5に示す。
[実施例1−5]
脱水処理したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1.5ppm)の代わりに、水分調整したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:47ppm)を用いる以外は実施例1−4と同様にして異性化反応を行った。その結果を表6に示す。
[比較例1−2]
脱水処理したE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:1.5ppm)の代わりに、脱水処理を施していないE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:129ppm)を用いる以外は実施例1−4と同様にして異性化反応を行った。その結果を表7に示す。
実施例1−1〜1−3および比較例1−1について、一定量の原料を導入した時点(原料導入積算量)におけるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率をプロットした結果を図1に示す。実施例1−4〜1−5および比較例1−2についても同様にしてプロットした結果を図2に示す。
図1に示すように、水分濃度が1ppm未満のE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを原料として用いると、目的物であるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率低下は見られず、触媒の失活は見られなかった。水分濃度が37ppm、61ppmのものを用いた場合も、原料導入積算量が増えるに連れて若干の収率低下が見られるものの、触媒の性能は維持されていた。しかしながら、水分濃度が133ppmのものを用いた場合には、原料導入開始後、早期の段階から収率低下が見られ、触媒性能が著しく低下した。
同様に、図2に示すように、水分濃度が1.5ppmのE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを原料として用いると、目的物であるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率低下は見られず、触媒の失活は見られなかった。水分濃度が47ppmのものを用いた場合も、目的物であるZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率低下はほとんど見られず、触媒の性能は維持されていた。しかしながら、水分濃度が129ppmのものを用いた場合には、原料導入開始後、早期の段階から収率低下が見られ、触媒性能が著しく低下した。
[実施例1−6]
脱水剤として1kgのゼオラムA−3(東ソー社製)を、10kgのZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを充填した密閉容器に入れ1日静置することで脱水処理を行った。脱水処理後のZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンについて、カールフィッシャー水分計で水分濃度を測定したところ、水分濃度は2.0ppmであった。ここで、カールフィッシャー水分計は、微量水分測定装置(三菱化学アナリテック社製、CA−200型)を使用し、所定量の液体試料を注射器で水分計に注入した。
続いて、調製例2で調製した50mLの触媒2を、電気炉を備えた直径2cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に充填し、約20mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、反応管内の温度を60℃に昇温した。
次に、前述の脱水処理後のZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(水分濃度:2.0ppm)を予め気化させて、触媒との接触時間(180秒間)に基づいて計算された速度で反応管への供給を開始した。有機物の流量が安定したところで、窒素ガスの導入は停止した。
反応管出口から流出するガス混合物を水中に吹き込んで、酸性ガスを除去した後、得られた生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。これらの結果を表8に示す。表中、1233zd(Z)はZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、244faは3−クロロ−1,1,1,3−テトラフルオロプロパンを、1233zd(E)はE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、その他は前記3種の化合物を除く微量の化合物を表す。以下同じ。
[比較例1−3]
脱水処理したZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(水分濃度:2.0ppm)の代わりに、脱水処理を施していないZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(水分濃度:120ppm)を用いる以外は、実施例1−6と同様にして異性化反応を行った。その結果を表9に示す。
[実施例1−7]
調製例2で調製した50mLの触媒2を、電気炉を備えた直径2cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に充填し、約20mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、反応管内の温度を200℃に昇温した。
次に、前述の脱水処理後のZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(水分濃度:4.5ppm)を予め気化させて、触媒との接触時間(60秒間)に基づいて計算された速度で反応管への供給を開始した。有機物の流量が安定したところで、窒素ガスの導入は停止した。
反応管出口から流出するガス混合物を水中に吹き込んで、酸性ガスを除去した後、得られた生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。これらの結果を表10に示す。
[比較例1−4]
脱水処理したZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(水分濃度:4.5ppm)の代わりに、脱水処理を施していないZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(水分濃度:130ppm)を用いる以外は、実施例1−7と同様にして異性化反応を行った。その結果を表11に示す。
実施例1−6および比較例1−3について、一定量の原料を導入した時点(原料導入積算量)におけるE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの収率をプロットした結果を図3に示す。実施例1−7および比較例1−4についても同様にしてプロットした結果を図4に示す。
図3に示すように、水分濃度が2.0ppmのZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを原料として用いた場合、原料導入積算量が増えるに連れて目的物であるE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの若干の収率低下が見られるものの、触媒の性能は維持されていた。しかしながら、水分濃度が120ppmのものを用いた場合には、原料導入開始後、早期の段階から収率低下が見られ、触媒性能が大きく低下した。
同様に、図4に示すように、水分濃度が4.5ppmのZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを原料として用いると、目的物であるE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの収率低下は見られず、触媒の失活は見られなかった。しかしながら、水分濃度が130ppmのものを用いた場合には、原料導入開始直後では収率が維持されていたものの、その後収率低下が見られ、触媒性能が著しく低下した。
[実施例1−8]
脱水剤として200gのゼオラムA−3(東ソー社製)を充填した乾燥塔に、20kgのZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンをポンプで送液・循環させて脱水処理を行った。脱水処理後のZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンについて、気化装置を備えたカールフィッシャー水分計で水分濃度を測定したところ、水分濃度は2.4ppmであった。ここで、カールフィッシャー水分計は、微量水分測定装置(三菱化学アナリテック社製、CA−200型)を使用し、試料導入部には液化ガス気化装置(同社製、型番:VG−200型)を接続し、予め設定した量の試料を気化させて、水分計に自動注入した。
続いて、調製例2で調製した50mLの触媒2を、電気炉を備えた直径2cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に充填し、約20mL/分の流量で窒素ガスを流しながら、反応管内の温度を200℃に昇温した。
次に、前述の脱水処理後のZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:2.4ppm)を予め気化させて、触媒との接触時間(60秒間)に基づいて計算された速度で反応管への供給を開始した。有機物の流量が安定したところで、窒素ガスの導入は停止した。
反応管出口から流出するガス混合物を水中に吹き込んで、酸性ガスを除去した後、得られた生成物をガスクロマトグラフィーで分析した。これらの結果を表12に示す。表中、1234ze(E)はE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを、1234zcは1,1,3,3−テトラフルオロプロペンを、245faは1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、1234ze(Z)はZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを表す。以下同じ。
[比較例1−5]
脱水処理したZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:2.4ppm)の代わりに、脱水処理を施していないZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(水分濃度:148ppm)を用いる以外は、実施例1−8と同様にして異性化反応を行った。その結果を表13に示す。
実施例1−8および比較例1−5について、一定量の原料を導入した時点(原料導入積算量)におけるE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率をプロットした結果を図5に示す。
図5に示すように、水分濃度が2.4ppmのZ−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを原料として用いると、目的物であるE−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの収率低下は見られず、触媒の失活は見られなかった。しかしながら、水分濃度が148ppmのものを用いた場合には、原料導入開始直後では収率が維持されていたものの、その後収率低下が見られ、触媒性能が著しく低下した。
以上の実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−5の結果から、原料とともに反応系に導入される水分が一定濃度を超えると、基質の種類および異性体比によらず、顕著な触媒性能の低下をもたらすことは明らかであった。以下の実施例においては、上記実施例の製造方法に基づいて生成されたハイドロハロフルオロプロペン異性体を用いる、または上記実施例の製造方法において用いたハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造することを特徴とする。
(2−1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた3,3,3−トリフルオロプロピンの製造
ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)に、塩基を反応させ、脱ハロゲン化することで3,3,3−トリフルオロプロピンを製造した。
[実施例2−1]
−20℃の冷媒を循環させたガラス製冷却器と−40℃に調整したジュワー瓶型凝縮器からなる2段冷却搭および熱電対投入用ガラス製保護管を取り付けた500mlガラス製三口丸底フラスコに、水酸化カリウム61.7g(1.1モル)、水92.6g、およびメタノール92.6gを仕込み、冷却しながらマグネチックスターラーにて撹拌溶解させた後、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを入れた滴下漏斗を取り付け、水浴にて内温を38℃まで加熱し、保持した。内温が安定したところで、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン130.5g(1.0モル)を2時間かけて滴下した。反応で発生した高濃度の3,3,3−トリフルオロプロピンガスは、凝縮器出口に導かれた回収トラップ(メタノール+ドライアイスで冷却)に液化して捕集した。(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン滴下終了後、さらに30分加熱を続けてから反応器を冷却し、反応を終了した。
反応終了後、回収トラップ側で捕集液92.6gを得た。
一方、フラスコ内の釜残液は二層分離およびフラッシュ蒸留操作を実施し、使用溶媒以外の有機物を回収したところ、未反応原料および高沸物を2.9g得た。これらの回収液をガスクロマトグラフで分析したところ、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの変換率は99.2%であり、3,3,3−トリフルオロプロピンの選択率は98.4%、3,3,3−トリフルオロプロピンの収率は97.6%であった。
[実施例2−2]
圧力計および抜き出しバルブを取り付けた、500ml容量のSUS−316反応器に、粉砕した水酸化カリウム16.80g(0.3モル)および(Z)−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン26.10g(0.2モル)を仕込み、密閉後、マグネチックスターラーにて撹拌しつつ、70℃で9時間加熱した。その時の最終圧力は0.5MPaであった。反応終了後、抜き出しバルブを開き、有機物を回収トラップ(メタノール+ドライアイスで冷却)に液化して捕集した。回収した有機物は21.44gであった。これらの回収液をガスクロマトグラフで分析したところ、(Z)−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの変換率は64.5%、3,3,3−トリフルオロプロピンの選択率は98.4%であり、3,3,3−トリフルオロプロピンの収率は63.5%であった。
このように、実施例2−1及び実施例2−2の結果から、シス体であるZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いることで、良好に反応が進行し、高選択的に該目的物を得ることが可能であることがわかる。
(2−2) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの製造
ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)をフッ素化することで、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造した。
[実施例2−3]
還流冷却器と攪拌機を備えたSUS317製1lオートクレーブに触媒として五塩化アンチモン0.053モル(15.9g)、フッ化水素5.0モル(100g)及び、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン0.265モル(34.6g)を仕込み、攪拌しながら反応温度を71℃に昇温し、反応中71〜74℃に保った。反応の進行と共に発生する塩化水素により圧力は上昇するが、10Kg/cm2になった時点で還流冷却器を通して塩化水素の抜出しを開始し、その後反応圧力を10Kg/cm2に保った。
反応開始3時間後、反応器を室温まで冷却し、圧力を常圧まで下げることにより反応器から流出したガスを水層に通した上で、ドライアイス−メタノールで冷却されたトラップに捕集した。この捕集物とオートクレーブの内容物を塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄して得られた28.7gの有機物をガスクロマトグラフにより分析し、反応生成物組成を求めた。結果を表14に示す。
[実施例2−4]
還流冷却器と攪拌機を備えたSUS317製1lオートクレーブに触媒として五塩化アンチモン0.1モル(29.9g)、フッ化水素5.0モル(100g)、1,1,2,2−テトラクロロエタン0.3モル(50.4g)及び、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン1.0モル(130.5g)を仕込み、攪拌しながら反応温度を65℃に昇温し、反応中65〜70℃に保った。反応の進行と共に発生する塩化水素により圧力は上昇するが、8.5Kg/cm2になった時点で還流冷却器を通して塩化水素の抜出しを開始し、その後反応圧力を8.5Kg/cm2に保った。
反応開始3時間後、反応器を室温まで冷却し、圧力を常圧まで下げることにより反応器から流出したガスを水層を通した上で、ドライアイス−メタノールで冷却されたトラップに捕集した。この捕集物とオートクレーブの内容物を塩酸で洗浄し、さらに水で洗浄して得られた149gの有機物をガスクロマトグラフにより分析し、反応生成物組成を求めた。35%の溶媒が含まれていたが、溶媒を除いた結果を表14に示す。
実施例2−3及び実施例2−4の結果から、高収率で1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造することが可能であることがわかる。
[調製例3]
活性アルミナ(住友化学製NKH3−24:粒径2〜4mm、比表面積340m2/g)300gを計り取り水で表面に付着した粉を洗浄除去した。フッ化水素(無水フッ酸)115gを水1035gに溶解し10%フッ化水素水溶液を調製した。洗浄した活性アルミナに調製した10%フッ化水素水溶液を徐々に入れ撹拌後3時間放置し、水洗後、濾過し、次いで電気炉において200℃で2時間乾燥を行った。乾燥した活性アルミナを内径2.5cm長さ30cmのSUS316L製反応管に150ミリリットル入れ窒素を流しながら電気炉を200℃まで昇温し、さらにフッ化水素を窒素に同伴させながらフッ化水素処理を行った。処理を行うにつれ温度が上昇するが400℃を越えないように窒素とフッ化水素の量を調整した。発熱が収まった時点でさらに電気炉の設定を400℃のままで2時間保ち触媒の調製を行った。
[調製例4]
30gの特級試薬Cr(NO33・9H2Oを100ミリリットルの純水に解した溶液に、直径4〜6mm、表面積1200m2/g、平均細孔径18オングストロームの粒状活性炭(武田薬品工業、粒状白鷺GX)180ミリリットルを浸漬し、一昼夜放置した。次いで濾過して活性炭を取り出し、熱風循環式乾燥器中で100℃に保ち、さらに一昼夜乾燥した。得られたクロム担持活性炭150ミリリットルを加熱装置を備えた直径2.5cm、長さ30cmの円筒形SUS316L製反応管に充填し、窒素ガスを流しながら300℃まで昇温し、水の排出が見られなくなった時点でフッ化水素ガスを同伴させ、その濃度を徐々に高め、反応温度を350℃に上げ、その状態を1時間保ち触媒の調製を行った。
[調製例5]
1リットルガラス製フラスコに、表面積1150〜1250m2/g、細孔径15〜20オングストロームの粒状活性炭(東洋カルゴンPCB、4×10メッシュ)0.25リットルを入れ130〜150℃に加温した後真空ポンプにより水分を除去した。水分の留出が認められなくなった時点でフラスコ内に窒素を導入して常圧とし、125gの五塩化アンチモンを滴下ロートにて1時間にわたり撹拌しながら活性炭層に導入した。五塩化アンチモンを含浸した活性炭は約1時間、150℃に保持して熟成した。
[調製例6]
1リットルガラス製フラスコに、表面積1150〜1250m2/g、細孔径15〜20オングストロームの粒状活性炭(東洋カルゴンPCB、4×10メッシュ)0.25リットルを入れ130〜150℃に加温した後真空ポンプにより水分を除去した。水分の留出が認められなくなった時点でフラスコ内に窒素を導入して常圧とした。
[調製例7]
1リットルガラス製丸底フラスコに、平均表面積1200m2/g、平均細孔径18オングストロームの粒状活性炭(武田薬品工業 粒状白鷺G2X、4〜6メッシュ)0.5リットルを入れ130〜150℃に加温した後真空ポンプにて水分を除去した。水分の留出が認められなくなった時点で、フラスコ内に窒素を導入し常圧とし、250gの五塩化アンチモンを滴下ロートにより攪拌しながら滴下し、その後約1時間150℃に保持、熟成した。
[実施例2−5]
第一反応器と第二反応器が配管により直列に接続されたフッ素化反応装置を用い、有機物の原料を供給する前に触媒の安定化を図るための準備をそれぞれの反応器について互いに独立に行った。第一反応器は電気炉を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径2.5cm、長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例3で調製した触媒を150ミリリットル充填し、約160ミリリットル/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を300℃に上げ、その後フッ化水素を約0.2g/分の速度で窒素ガスに同伴しながら反応管温度を350℃まで昇温し1時間保った。次に反応管温度を250℃に下げ、フッ化水素の供給速度を0.2g/分として反応準備を完了した。一方、第二反応器は電気炉を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径4.0cm、長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例5で調製した触媒を250ミリリットル充填し、約25ミリリットル/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を100℃に上げ、その後窒素ガスを停止しフッ化水素を約0.2g/分の速度で供給しながら100℃で6時間保った。次に反応管温度を80℃に下げ、反応準備を完了した。
その後、第一反応器と第二反応器を接続し、反応装置全体に、フッ化水素が0.2g/分、塩素が1.3mg/分の供給量として、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを予め気化させて0.43g/分の速度で第一反応器に供給し、同時に、第二反応器にフッ化水素を0.32g/分の速度で供給し反応を開始した。
反応開始直後に第一反応器出口の生成ガス(反応ガス)をサンプリングし、塩化水素を含む酸性ガスの除去後ガスクロマトグラフで分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体のモル比は9/1)97.9%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン1.2%および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン0.9%の組成であった。
そのまま反応を続け、反応開始2時間後には反応は安定したので、その後4時間にわたって第二反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み塩化水素やフッ化水素の酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで有機物を捕集した。捕集した有機物の重量は59.8gでありこれをガスクロマトグラフィーで分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス)0.2%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン96.2%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス)0.1%、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン1.5%であった。
[実施例2−6]
第一反応器の気相フッ素化触媒として調製例4で調製した触媒を用い、第二反応器の温度を60℃とした以外は実施例2−5と同様にして反応を実施した。
第一反応器出口から生成ガス(反応ガス)をサンプリングし、塩化水素を含む酸性ガスの除去後ガスクロマトグラフで分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体のモル比は9/1)98.2%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン1.0%および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン0.7%の組成であった。
そのまま反応を継続し、反応開始2時間後には反応は安定したので、その後4時間にわたって第二反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み塩化水素やフッ化水素の酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで捕集した。捕集した有機物の重量は58.5gでありこれをガスクロマトグラフィーで分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス)0.4%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン91.6%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス)0.1%、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン5.1%であった。
[実施例2−7]
第一反応器は、電気炉を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径2.5cm、長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例6で調製した活性炭150mlを充填したものを用い、20ml/分で窒素を流しながら250℃まで昇温した。
第二反応器は、電気炉を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径2.5cm、長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例7で調製した触媒を充填したものを用い、20ml/分で窒素を流しながら100℃まで昇温した。つづいてフッ化水素を0.25g/分の流量で1時間、塩素を0.3g/分の流量で1時間流した後、80℃に降温した。
反応は第一反応器からフッ化水素0.37g/分、1,1,1,3,3−ヘキサクロロプロパン0.2g/分の流量で導入し(HF/有機物モル比=20/1)、生成した中間生成物を第二反応器にそのまま連続的に導入して行った。2時間後に反応は安定したので、そのまま反応を4時間継続し反応生成物を実施例2−5と同様に回収、分析をした。
有機物回収量は29.2gであり、ガスクロマトグラフィーで分析した結果は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス)0.1%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン95.6%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス)0.5%、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン0.6%、1,1,1−トリフルオロ−3、3−ジクロロプロパン0.1%、その他3.1%であった。
なお、第一反応器からの中間生成物の組成は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス/シス体モル比ほぼ10/1)94.5%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン0.4%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス/シス)1.4%、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン0.1%、1,1,1−トリフルオロ−3、3−ジクロロプロパン0.1%、その他3.5%であった。
[実施例2−8]
実施例2−5の第二反応器を単独で反応器として、調製例5で調製した触媒を0.25リットル充填した。約25ml/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を100℃に上げ、フッ化水素を約0.22g/分の速度で導入すると同時に窒素ガスの導入を停止した。そのまま反応管の温度を100℃で6時間保った。次に反応器の温度を80℃に下げ、塩化水素を0.15g/分、塩素を1.3mg/分、またフッ化水素を0.30g/分の速度で反応器へ供給し、さらに1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体のモル比は89/11)を予め気化させて0.13g/分の速度で反応器へ供給開始した(フッ化水素/有機物モル比=15/1)。
反応開始1時間後には反応は安定したので、その後4時間にわたって反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み塩化水素やフッ化水素の酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで捕集した。捕集した有機物の重量は30.9gでありこれをガスクロマトグラフィーで分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス)0.2%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン96.5%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス)0.1%、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン1.2%であった。
この反応をさらに継続したところ350時間以上にわたり触媒の活性は保持された。
[実施例2−9]
後部に調圧弁を備え、加熱装置により加熱する円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径4.0cm・長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例5と同様の方法で調製した触媒を0.25リットル充填した。約25ml/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を100℃に上げ、フッ化水素を約0.22g/分の速度で導入するとともに窒素ガスの導入を停止した。そのまま反応管の温度を100℃で6時間保った。次に反応管の温度を180℃に上げ、フッ化水素を0.20g/分の供給速度とし、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体のモル比は89/11)を予め気化させて0.13g/分の速度で反応器へ供給開始した(フッ化水素/有機物モル比=10/1)。
反応開始1時間後には反応は安定したので、反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで捕集した。捕集した有機物をガスクロマトグラフィーで分析した結果を表15に示した。
CTFP(t):1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス)
CTFP(c):1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(シス)
PFP : 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンTFP(t): 1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス)
TFP(c): 1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(シス)
TeFP: 1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン
[実施例2−10]
実施例2−9の後反応を終了し反応器を室温まで下げた。再び実施例2−5と同様の準備段階の後、後部調圧弁にて0.1MPa(ゲージ圧)とした以外は表15に示す条件で実施例2−5と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表15に示す。
[実施例2−11]
実施例2−10の後反応を終了し反応器を室温まで下げた。再び同様の準備段階の後、後部調圧弁にて0.3MPa(ゲージ圧)とした以外は表15に示す条件で実施例2−5と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表15に示す。
[実施例2−12]
実施例2−11の後反応を終了し反応器を室温まで下げた。再び同様の準備段階の後、反応系中に塩素を1.3ミリグラム/分を同伴し、後部調圧弁にて0.1MPa(ゲージ圧)とした以外は表15に示す条件で実施例2−5と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表15に示す。
[実施例2−13]
実施例2−12の後反応を終了し反応器を室温まで下げた。再び同様の準備段階の後、反応系中に、フッ化水素を0.30g/分ならびに1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを予め気化させて0.13g/分の速度で反応器へ供給し(フッ化水素/有機物モル比=15/1)、さらに塩素を1.3ミリグラム/分の供給速度で同伴させ、反応圧力を0.1MPa(ゲージ圧)とした以外は表15に示す条件で実施例2−5と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表15に示す。
[実施例2−14]
実施例2−13の後反応を終了し反応器を室温まで下げた。再び同様の準備段階の後、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの代わりに1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス体シス体のモル比は80/20)を0.12g/分の速度で反応器へ供給とした以外は表15に示す条件で実施例2−5と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表15に示す。実施例2−8〜2−12の反応を通じて原料有機物の処理時間は200時間以上であり、この間にわたり触媒の活性は保持された。
本発明にかかるフッ素化プロペンをフッ化水素と反応させてフッ素化プロパンに転換する際の高原子価ハロゲン化物担持活性炭触媒が(1)低温において活性を有する、(2)高圧を必要とする液相反応とは異なり低圧において活性を有する、(3)長寿命である、(4)不飽和化合物ではなく飽和化合物であるフッ素化プロパン、特に1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを得ることができる、(5)反応の目的生成物、例えば1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの選択率が高い、(6)塩化水素を伴った反応系においてもフッ素化反応が進行する、等の少なくとも何れかの特徴を有することを挙げることができる。その結果、(7)目的生成物であるフッ素化プロパンの精製工程の負荷を減らし、簡略化することができ、(8)未反応原料のリサイクルによるプロセスの複雑化およびエネルギーコストの上昇を避けることができ、(9)液相均一反応とは異なり、有機物と触媒の分離が容易であるので、不活性化した触媒の再活性化または廃棄が容易である、(10)液相反応で著しい金属反応器の腐食が少ない、等の少なくとも何れかの工業的な製造方法として有利な特徴を示す。
また、第一工程および第二工程からなる二段階反応によりハロゲン化プロパンをフッ化水素と反応させてフッ素化プロパンに転換する方法は、第二工程に高原子価ハロゲン化物担持活性炭触媒を使用することによる効果に加えて、(11)第一工程で生成した反応ガスを処理することなくそのまま第二工程の反応試剤とすることができるので、中間精製に関するプロセスを省略または簡略化できる、(12)気相反応であることから、反応装置の構造が単純であり、工学的な設計が容易である、(13)原料として製造方法の確立した塩素化物を使用することができる、(14)二段反応であることから、反応のコントロールが容易でプロセスの最適化も容易である、等の少なくとも何れかの工業的な製造方法として有利な効果を示す。
[実施例2−15]
攪拌機、−30℃に保った還流冷却器ならびに調圧弁を備えた500mlのSUS304製オートクレーブに、触媒として五塩化アンチモン6.0g(0.02モル)、フッ化水素100g(5.0モル)を仕込み30分間攪拌し、触媒の活性化を行った。発生塩化水素を還流冷却器の後部に備えられた調圧弁より排出し、圧力を常圧に戻した後、調圧弁を閉じ、ドライアイス−メタノールでオートクレーブを冷却し1,3,3,3−テトラフルオロプロペン114g(1.0モル)を入れ、攪拌しながら反応温度を50℃に昇温した。反応開始3.5時間後、反応器を室温まで冷却し、圧力を常圧に下げることにより反応器から留出したガスを水層および濃硫酸層を通した上で、ドライアイス−メタノールで冷却されたトラップに捕集した。回収された有機物の重量は123gであり、ガスクロマトグラフにより分析した生成物組成は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)98.5%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFC−1234ze)0.4%ならびに1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFC−1233zd)0.1%であった。結果を表16に示す。
[実施例2−16〜2−19]
実施例2−15と同様の反応操作にて、表16に示す条件で反応を行った。結果を表16に示す。
本発明の方法は高収率で1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造することができるという効果を奏する。
[調製例8]
活性アルミナ(住友化学製NKH3−24:粒径2〜4mm、比表面積340m2/g)300gを計り取り水で表面に付着した粉を洗浄除去した。フッ化水素(無水フッ酸)115gを水1035gに溶解し10%フッ化水素水溶液を調製した。洗浄した活性アルミナに調製した10%フッ化水素水溶液を徐々に入れ撹拌後3時間放置し、水洗後、濾過し、次いで電気炉において200℃で2時間乾燥を行った。乾燥した活性アルミナを内径2.5cm長さ30cmのSUS316L製反応管に150ミリリットル入れ窒素を流しながら電気炉を200℃まで昇温し、さらにフッ化水素を窒素に同伴させながらフッ化水素処理を行った。処理を行うにつれ温度が上昇するが400℃を越えないように窒素とフッ化水素の量を調整した。発熱が収まった時点でさらに電気炉の設定を400℃のままで2時間保ち触媒の調製を行った。
[調製例9]
1リットルガラス製フラスコに、表面積1150〜1250m2/g、細孔径15〜20オングストロームの粒状活性炭(東洋カルゴンPCB、4×10メッシュ)0.25リットルを入れ130〜150℃に加温した後真空ポンプにより水分を除去した。水分の留出が認められなくなった時点でフラスコ内に窒素を導入して常圧とし、125gの五塩化アンチモンを滴下ロートにて1時間にわたり撹拌しながら活性炭層に導入した。五塩化アンチモンを含浸した活性炭は約1時間、150℃に保持して熟成した。
[実施例2−20]
第一反応器と第二反応器が配管により直列に接続されたフッ素化反応装置を用い、有機物の原料を供給する前に触媒の安定化を図るための準備をそれぞれの反応器について互いに独立に行った。第一反応器は電気炉を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径2.5cm、長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例8で調製した触媒を150ミリリットル充填し、約160ミリリットル/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を300℃に上げ、その後フッ化水素を約0.2g/分の速度で窒素ガスに同伴しながら反応管温度を350℃まで昇温し1時間保った。次に反応管温度を250℃に下げ、フッ化水素の供給速度を0.2g/分として反応準備を完了した。一方、第二反応器は電気炉を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径4.0cm、長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例9で調製した触媒を250ミリリットル充填し、約25ミリリットル/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を100℃に上げ、その後窒素ガスを停止しフッ化水素を約0.2g/分の速度で供給しながら100℃で6時間保った。次に反応管温度を80℃に下げ、反応準備を完了した。
その後、第一反応器と第二反応器を接続し、反応管の温度を180℃に上げ、反応装置全体に、フッ化水素が0.2g/分、塩素が1.3mg/分の供給量として、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス体シス体のモル比は80/20)を予め気化させて0.12g/分の速度で第一反応器に供給し、同時に、第二反応器にフッ化水素を0.32g/分の速度で供給し反応を開始した。
反応開始2時間後には反応は安定したので、その後4時間にわたって第二反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み塩化水素やフッ化水素の酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで有機物を捕集した。捕集した有機物の回収率は94.6%でありこれをガスクロマトグラフィーで分析したところ、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン87.4%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス)10.2%、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(シス)1.3%、1,1,1,3−テトラフルオロ−3−クロロプロパン1.0%であった。
本発明にかかるフッ素化プロペンをフッ化水素と反応させてフッ素化プロパンに転換する際の高原子価ハロゲン化物担持活性炭触媒が(1)低温において活性を有する、(2)高圧を必要とする液相反応とは異なり低圧において活性を有する、(3)長寿命である、(4)不飽和化合物ではなく飽和化合物であるフッ素化プロパン、特に1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを得ることができる、(5)反応の目的生成物、例えば1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンの選択率が高い、(6)塩化水素を伴った反応系においてもフッ素化反応が進行する、等の少なくとも何れかの特徴を有することを挙げることができる。その結果、(7)目的生成物であるフッ素化プロパンの精製工程の負荷を減らし、簡略化することができ、(8)未反応原料のリサイクルによるプロセスの複雑化およびエネルギーコストの上昇を避けることができ、(9)液相均一反応とは異なり、有機物と触媒の分離が容易であるので、不活性化した触媒の再活性化または廃棄が容易である、(10)液相反応で著しい金属反応器の腐食が少ない、等の少なくとも何れかの工業的な製造方法として有利な特徴を示す。
また、第一工程および第二工程からなる二段階反応によりハロゲン化プロパンをフッ化水素と反応させてフッ素化プロパンに転換する方法は、第二工程に高原子価ハロゲン化物担持活性炭触媒を使用することによる効果に加えて、(11)第一工程で生成した反応ガスを処理することなくそのまま第二工程の反応試剤とすることができるので、中間精製に関するプロセスを省略または簡略化できる、(12)気相反応であることから、反応装置の構造が単純であり、工学的な設計が容易である、(13)原料として製造方法の確立した塩素化物を使用することができる、(14)二段反応であることから、反応のコントロールが容易でプロセスの最適化も容易である、等の少なくとも何れかの工業的な製造方法として有利な効果を示す。
(2−3−1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を塩素化することで、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。
[調製例10]
長さ240mm×内径3/4インチのステンレス鋼(SUS316)製反応管にγ−アルミナビーズ(住化アルケム株式会社製、品番、KHS−46)を36g充填した。ジャケットの温度を50℃に制御し、窒素を供給速度50cc/minで流通させながら、気化器経由でフッ化水素を供給速度0.4g/minで流通させた。アルミナへのフッ化水素の吸着熱および反応熱によって、特に入り口部に発熱が観測され、その発熱帯は徐々に出口方向に移動した。この時、温度が最も高いヒートスポットが400℃を超えた場合、フッ化水素の供給速度を0.1g/minに下げて、局所発熱を抑制した。発熱帯が出口に達した後、ジャケットの設定温度を50℃ずつ350℃まで上げて、上記と同じ作業を繰り返した。
この後、ジャケットの温度を350℃に維持し、フッ化水素の流量をゆっくりと0.7g/minまで上げた。この時のヒートスポットの温度が400℃を超えた場合は、同様にフッ化水素の流量を0.1g/minに下げた。ジャケットの温度350℃、フッ化水素の流量0.4g/minの条件で、実質的にヒートスポットが観測されなくなった時点から、さらに同じ条件で2時間、同条件で触媒の活性化処理を継続し、その後、窒素だけを流通させながら、ヒーターの電源を切り、冷却し、フッ化水素と接触させることで活性化処理したアルミナ触媒を充填した反応管を得た。
[実施例2−21](原料:トランス体(1234zeE))
アルミナ触媒を充填した前記反応管に窒素を15ml/分で流しながら電気炉で加熱した。反応管および触媒の温度が350℃に達した時、フッ化水素を2.3質量%含む塩化水素を166ml/分の導入速度で気化器を通して反応管に導入した。塩化水素を流通させたまま、1000mlのシリンダーに充填したトランス体(1234zeE)(99.9GC%、表17に詳細な原料組成を記載)を0.14g/min(27.5ml/min)の供給速度で気化器を通して反応管に導入した。反応管の温度が360℃で定常を確認した後、窒素の導入を止め、出口ガスの分析を行った。サンプリング方法は、下記の通りである。水(10g)を入れた容量100ccのポリエチレン製バッグに出口ガスサンプルを採取し、振って酸を水で吸収した後、オーブンで50℃に加熱し、気相部分をFID検出器のガスクロマトグラフで分析した。反応条件を表17に、結果を表18に示す。
[実施例2−22〜2−24]
実施例2−21と同様の手順で、表17に示す反応条件でトランス体(1234zeE)の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)への変換操作を行った。なお、使用する塩化水素は、純度99.99%の塩化水素を使用した。反応条件を表17に、結果を表18に示す。
表18の実施例2−21〜2−24に示すように、本発明の製造方法により、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を高い収率で得られた。
[実施例2−25〜2−29](原料:シス体(1234zeZ))
使用する原料をシス体(1234zeZ)とし、実施例2−21と同様の手順で、表17に示す反応条件でシス体(1234zeZ)の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)への変換操作を行った実験を行った。実施例2−25〜2−29では99.99%の高純度塩化水素を使用し、実施例2−26では実施例2−21と同様にフッ化水素を含有する塩化水素を用いた。反応条件を表17に、結果を表18に示す。
表18の実施例2−25〜2−29に示すように、本発明の製造方法によれば、原料としてシス体(1234zeZ)を使用した場合、実施例2−21〜2−24と同様に、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)が高い収率で得られた。
[実施例2−30]
45gのオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)と5gの五塩化ニオブ(NbCl5)を400mlのエタノールに溶かした。この溶液に直径5mm、粒状γ−アルミナ(住化アルケム株式会社製、品名、KHS−46)500mlを浸漬し、一昼夜放置した。次にエタノールをロータリーエバポレーター留去し150℃にて減圧下乾燥した。次いで、調製例10と同様の方法でフッ素化処理を行い、触媒を得た、実施例2−26と同様の実験を行った。反応条件を表19に、結果を表20に示す。
[実施例2−31]
粒状クロミア(日揮触媒化成株式会社製 品名、E01W−1)を用いた以外は、実施例2−30と同じ実験を行った。粒状クロミアに調製例10と同様の方法でフッ素化処理を行い、触媒を得た。反応条件を表19に、結果を表20に示す。
表20の実施例2−30,2−31に示すように、本発明の製造方法によれば、触媒の種類を変更しても、実施例2−21〜2−29と同様に、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd)を高い収率で得られた。
(2−3−2) 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを用いた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
上記(2−2)の方法において生成された1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを塩化水素と反応させることによって、脱フッ化水素化および塩素化することで、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。
[調製例11]
活性アルミナ(住友化学製NKHD−24:粒径2〜4mm、比表面積340m2/g)300gを計り取り、表面に付着した粉を水洗した。フッ化水素115gを水1035gに溶解し、10%フッ酸を調製した。洗浄した活性アルミナに10%フッ酸を徐々に加え、攪拌後3時間静置した。ついで水洗し、ろ過した後、電気炉にて200℃で2時間乾燥した。乾燥した活性アルミナ400mlを、熱媒循環装置に接続した外套を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径3.8cm、長さ42cm)に充填し、窒素を流し、熱媒温度を200℃に設定した。次いで、フッ化水素を窒素に同伴させて導入しフッ化水素/窒素モル比を1/10〜1/5としてフッ化水素処理を行った。処理を行うにつれ活性アルミナの温度が上昇するが350℃を越えないようにフッ化水素と窒素の流量、比率を調節した。フッ素化による発熱が終了した時点で、熱媒温度を350℃に設定し、さらに2時間フッ化水素と窒素の流量を維持して、フッ素化アルミナ触媒の調製を完了した。
[調製例12]
300gの特級試薬Cr(NO3)・9H2Oを1リットルの水に溶かして水溶液とし、これに直径4〜8mm、比表面積1200m2/g、細孔径18Aの粒状活性炭(日本エンバイロケミカル製、粒状白鷺G2X)1.8リットルを浸漬し、一昼夜放置した。ついで活性炭をろ過した後、熱風循環式乾燥機中で100℃に保ち、さらに一昼夜乾燥した。得られたクロム担持活性炭のうち400mlを、熱媒循環装置に接続した外套を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径3.8cm、長さ42cm)に充填し、窒素を流しながら熱媒温度を300℃まで昇温した。水の排出が見られなくなった時点で、フッ化水素を窒素に同伴させながらフッ化水素/窒素モル比を1/10〜10/1としてフッ化水素処理を行った。熱媒温度を350℃まで上げ、さらにフッ化水素と窒素による処理状態を1時間維持しクロム担持活性炭触媒の調製を完了した。
[調製例13]
300gの特級試薬Cr(NO3)・9H2Oを1リットルの水に溶かして水溶液とし、これに調製例11の方法でフッ酸浸漬後乾燥させた活性アルミナ1.8リットルを浸漬し、一昼夜放置した。ついで活性アルミナをろ過した後、熱風循環式乾燥機中で100℃に保ち、さらに一昼夜乾燥した。得られたクロム担持アルミナ400mlを、熱媒循環装置に接続した外套を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径3.8cm、長さ42cm)に充填し、窒素を流しながら300℃まで昇温した。水の排出が見られなくなった時点で、フッ化水素を窒素に同伴させながらフッ化水素/窒素モル比を1/10〜10/1としてフッ化水素処理を行った。熱媒温度を350℃まで上げ、さらにフッ化水素と窒素による処理状態を1時間維持しクロム担持アルミナ触媒の調製を完了した。
〔実施例2−32〕
熱媒循環装置に接続した外套を備えた円筒形反応管(SUS316L製、直径3.8cm、長さ42cm)からなる気相反応装置に、調製例12で調製したクロム担持活性炭触媒400mlを充填して反応を行った。約200ml/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を反応温度の280℃に設定し、反応管の温度が安定するまで待機した。温度が安定した後、塩化水素および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンをそれぞれ0.8g/分および0.5g/分の供給速度で反応管へ供給した。
供給開始2時間後には反応が安定したので、その時から2時間にわたって、反応管から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトンで冷却した容器に通じ52gの生成物を捕集した。捕集した生成物をガスクロマトグラフィー(FID検出器)で分析した結果、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン0.7%(面積%。以下同じ。)、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン0.2%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン1.8%、トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン85.3%およびシス−1−クロロー3,3,3−トリフルオロプロペン10.0%の組成であった。
[実施例2−33]
触媒として調製例13で調製したクロム担持アルミナ触媒400mlを用い、反応温度を350℃とした以外は、実施例2−32と同様にして反応を行った。
供給開始2時間後には反応が安定したので、その時から2時間にわたって、反応管から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトンで冷却した容器に通じ49gの生成物を捕集した。捕集した生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン2.7%、シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン0.5%、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン0.8%、トランス−1−クロロー3,3,3−トリフルオロプロペン84.5%およびシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン10.1%の組成であった。
(2−3−3) 1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを用いたE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを、フッ化水素と反応させることによって脱塩化水素化およびフッ素化することで1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンはZ体およびE体の混合物である。このためZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。また、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。
なお、「鉄錯体」とは、「FeCl2・2FeCl3・6DMAC」のことを言う。
[調製例14]
活性アルミナ(住友化学製NKH3−24:粒径2〜4mm、比表面積340m2 /g)300gを計り取り水で表面に付着した粉を洗浄除去した。フッ化水素(無水フッ酸)115gを水1035gに溶解し10%フッ化水素水溶液を調製した。洗浄した活性アルミナに調製した10%フッ化水素水溶液を徐々に入れ撹拌後3時間静置し、水洗後、ろ過し、次いで電気炉において200℃で2時間乾燥を行った。乾燥した活性アルミナを内径1インチ長さ30cmのステンレス製反応管に150cc入れ窒素を流しながら電気炉を200℃まで昇温し、更にフッ化水素を窒素に同伴させながらフッ化水素処理を行った。処理を行うにつれ温度が上昇するが400℃ を越えないように窒素とフッ化水素の流量を調整した。発熱が収まった時点で更に電気炉の設定を400℃ のままで2時間維持し触媒調製を終了した。
[実施例2−34]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造
攪拌機を備えた1000mlの硝子製オートクレーブに、四塩化炭素3.2モル、クロロホルム0.8モル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)0.06モル(1.25モル%対四塩化炭素)、鉄粉0.02モル(0.625モル%対四塩化炭素)を仕込み、反応器内の空気を窒素ガスで置換した後、密封して250rpmで攪拌を行いながら140℃に加熱し30分間保持した。このときの圧力は0.25MPaG(ゲージ圧、以下本明細書にて同じ。)になった。30分後塩化ビニルを圧入して圧力をほぼ0.33MPaGとし、反応の進行にともない圧力を保つように塩化ビニルを添加し2モル加えた。反応時間は160分間であった。
反応終了後反応器を放冷し、内容物を取りだして金属塩を除去した後、これをガスクロマトグラフで分析した。
仕込みの四塩化炭素に対する目的物である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンへの収率は、55.1モル%であった。また残った四塩化炭素は1.35モル(仕込み量に対し42.2%)であった。一方、そのときの塩化ビニル反応率および1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン選択率はそれぞれ97.6%および92.7%であった。
[実施例2−35]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造
DMACの代わりにヘキサメチルホスホリックトリアミド0.06モルを用いたほかは、実施例2−34と同様に反応、回収、分析を行った。反応に要した時間は180分間であった。その結果、仕込みの四塩化炭素に対する目的物である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンへの収率は、54.4モル%であった。また残った四塩化炭素は1.22モル(仕込み量に対し38.1%)であった。一方、そのときの塩化ビニル反応率および1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン選択率はそれぞれ96.8%および93.1%であった。
[参考例2−1]
100mlSUS304製容器[Ni(8〜10.5%)、Cr(18〜20%)]に、SUS317L製テストピース[Ni (11〜15%)、Cr (18〜20%)、Mo (3〜4%)、極低炭素鋼]と1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン10gおよび所定量の鉄錯体を封入し、脱気後150℃、24時間加熱した。腐食速度およびスケーリング速度(テストピース単位表面積あたりに付着する固形物量の増加速度)はテストピースの試験前後の重量を測定して算出した。結果を表21に示す。
鉄換算の鉄錯体濃度94ppmでは、SUS317Lに対し、腐食およびスケーリングが少ないことがわかる。
[実施例2−36]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
攪拌機を備えた300mlのSUS316製オートクレーブにSUS317L製テストピースを入れ、反応器を冷却脱気後、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン50g(0.23モル)、無水フッ化水素100g(5モル)および所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)を仕込み、250rpmで攪拌を行いながら160℃に加熱した。反応圧力が4.2MPaGになった後、5時間保持した。
反応終了後反応器を氷冷し、テストピースおよび有機物を取りだしてガスクロマトグラフで分析した。有機物の分析結果では、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの転化率は99.9%以上、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体生成比:約10/1)の選択率は90〜95%であった。
腐食速度およびスケーリング速度(テストピース単位表面積あたりに付着する固形物量の増加速度)はテストピースの試験前後の重量を測定して算出した。結果を表22に示す。
本反応はフッ化水素過剰の高温高圧反応であり、腐食及びスケーリングが極力少ないことが望ましく、DMAC100ppm以下であることが好ましい。
[参考例2−2]
100mlスクリューキャップ付きガラス瓶に、所定量のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)および吸着剤を仕込み、30分間室温に放置した。有機物をガスクロマトグラフで分析し、それらの結果を表23に示す。
[実施例2−37]
500mlフッ素樹脂(PFA)製分液ロートにイオン交換水200g、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン200g、鉄錯体0.2gおよびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)0.1gを仕込み、5分間、室温にて激しく振とう撹拌し、二層分離するまで静定した。ガスクロマトグラフにより有機層を分析した結果、DMACは検知されなかった。また有機物中の鉄分は検知されなかった。
この結果、鉄錯体並びにDMACは水洗により除去可能であることが判明した。
[実施例2−38]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径1インチ・長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例14で調製した触媒を150cc充填した。約320cc/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を300℃に上げ、フッ化水素を約0.40g/分の速度で窒素ガスに同伴させた。そのまま反応管の温度を最高触媒処理温度350℃まで昇温し1時間保った。次に反応管の温度を250℃に下げ、フッ化水素を0.4g/分の供給速度とし、実施例2−36の実験番号1に示した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを予め気化させて1.0g/分の速度で反応器へ供給開始した。
反応開始1時間後には反応は安定したので、その後2時間にわたって反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで捕集したところ、65.2gの有機物が捕集された。捕集された有機物をガスクロマトグラフで分析した。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン転化率は99.9%以上、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体生成比:10/1)の選択率は92.4%であった。
[比較例2−1]
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
続いて、実施例2−38と同様の条件で、フッ化水素を約0.4g/分の供給速度とし、実施例2−36の実験番号4に示したDMAC塩酸塩1140ppm混入した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを予め気化させて1.0g/分の速度で反応器へ供給開始した。反応開始1時間経過後、2時間にわたって反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで80.2g捕集した。捕集した有機物をガスクロマトグラフィーで分析した。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン転化率は79.3%、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体生成比:10/1)の選択率は91.3%であった。
この実験から、DMAC塩酸塩が混入した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを原料として用いると急速に触媒活性が低下することがわかる。
[実施例2−39]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造
攪拌機を備えた1000mlの硝子製オートクレーブに、四塩化炭素3.2モル、クロロホルム0.8モル、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)0.06モル(1.25モル%対四塩化炭素)、鉄粉0.02モル(0.625モル%対四塩化炭素)を仕込み、反応器内の空気を窒素ガスで置換した後、密封して250rpmで攪拌を行いながら140℃に加熱し30分間保持した。このときの圧力は0.25MPaGになった。30分後塩化ビニルを圧入して圧力をほぼ0.33MPaGとし、反応の進行にともない圧力を保つように塩化ビニルを添加し2モル加えた。反応時間は160分間であった。
反応終了後反応器を放冷し、これをガスクロマトグラフで分析した。
仕込みの四塩化炭素に対する目的物である1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンへの収率は、55.1モル%であった。また残った四塩化炭素は1.35モル(仕込み量に対し42.2%)であった。一方、そのときの塩化ビニル反応率および1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン選択率はそれぞれ97.6%および92.7%であった。
なお、当該目的物には、DMAC塩酸塩が500ppm、鉄錯体が1100ppm含まれていた。
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン中に含まれているDMAC塩酸塩の吸着剤を用いた分離除去
続けて、100mlスクリューキャップ付きガラス瓶に、DMAC塩酸塩を500ppm、鉄錯体を1100ppm含む1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンに、吸着剤(活性アルミナ(住友化学社製))を仕込み、30分間室温に放置した。その後、乾燥後、蒸留・精製を行い、得られた有機物をガスクロマトグラフで分析したところ、鉄錯体を99ppm、DMAC塩酸塩濃度が90ppm以下であることを確認した。
DMAC塩酸塩、鉄錯体等を吸着除去した後に、減圧蒸留等により未反応四塩化炭素等を分離除去し、得られた1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを、続く1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造における原料として用いた。
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
次に、電気炉を備えた円筒形反応管からなる気相反応装置(SUS316L製、直径1インチ・長さ30cm)に気相フッ素化触媒として調製例14で調製した触媒を150cc充填した。約320cc/分の流量で窒素ガスを流しながら反応管の温度を300℃に上げ、フッ化水素を約0.40g/分の速度で窒素ガスに同伴させた。そのまま反応管の温度を最高触媒処理温度350℃まで昇温し1時間保った。次に反応管の温度を250℃に下げ、フッ化水素を0.4g/分の供給速度とし、鉄錯体を99ppm、DMAC塩酸塩を90ppm含む1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを予め気化させて1.0g/分の速度で反応器へ供給開始した。
反応開始1時間後には反応は安定したので、その後2時間にわたって反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで捕集したところ、65.2gの有機物が捕集された。捕集された有機物をガスクロマトグラフで分析した。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン転化率は99.9%以上、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体生成比:10/1)の選択率は92.4%であった。
[比較例2−2]
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造
1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンの製造は、実施例2−39と同様の仕込み量、反応条件で行い、DMAC塩酸塩が1500ppm、鉄錯体が500ppm混入した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを得た。なお、ここでは当該プロパンに対し、吸着剤、水洗等を用いてのDMAC塩酸塩の分離除去操作を行わずに、減圧蒸留等により未反応四塩化炭素等を分離除去しそのまま1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造における出発原料として使用した。
1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
フッ化水素を約0.4g/分の供給速度とし、DMAC塩酸塩が1500ppm、鉄錯体が500ppm混入した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを予め気化させて1.0g/分の速度で反応器へ供給開始した。反応開始1時間経過後、2時間にわたって反応器から流出する生成ガスを水中に吹き込み酸性ガスを除去した後、ドライアイス−アセトン−トラップで80.2g捕集した。捕集した有機物をガスクロマトグラフィーで分析した。1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン転化率は68.5%、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(トランス体/シス体生成比:10/1)の選択率は92.1%であった。
この実験から、DMAC塩酸塩が1500ppm、鉄錯体が500ppm混入した1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを原料として用いると急速に触媒活性が低下することがわかる。
本発明の対象である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、農薬、医薬、冷媒、作動流体、発泡剤、噴射剤および機能性材料並びにフッ素化炭化水素等の中間体として利用できる。
[調製例15]
100℃の冷却液を循環させた凝縮器を備えた2000mlのステンレス鋼製オートクレーブに1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(240fa)4.1g/minとフッ化水素3.4g/min(モル比:240fa/フッ化水素=約1/9)を導入し、オートクレーブを150℃に加熱した。圧力が約4MPaを超えたところで約4MPaを維持するように凝縮器出口のニードルバルブから反応生成ガスを抜き出した。抜き出したガスは、氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通して酸を吸収し、ドライアイスアセトン浴のガラストラップで反応生成有機物を回収した。オートクレーブ内の液量が約1000mlに達したところで約1000mlを維持するようにデップ管からニードルバルブを通して反応液を抜き出した。抜き出した反応液は氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に回収した。反応を24時間継続後、オートクレーブ内の反応液をすべて氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に回収した。凝縮器出口から回収した反応生成有機物は、合計2923gであり、デップ管から抜き出した反応液は、合計1871gであった。ガスクロマトグラフィーによって、分析した結果を表24に示した。表24中、1233Eはトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zdE)を表し、1233Zはシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))を表す。
[実施例2−40]
電気炉を備えた内径2.7cm、長さ40cmの円筒形ステンレス鋼(SUS316L)製反応管に窒素を10ml/minの速度で流しながら、昇温した。反応管の温度が320℃に達したところで、反応原料として、気化させた調製例15の反応液(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):約0.32g/min、フッ化水素:約0.12g/min、塩素:約0.8ml/minの流量でそれぞれ供給し(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/3.4/0.02、接触時間:約50秒間)、流量が安定したところで窒素の供給を停止した。反応器から流出する生成ガスを氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通し、未反応のフッ化水素及び塩化水素を吸収し、反応生成物を捕集した。捕集した反応生成物をガスクロマトグラフで分析した結果を表26に示す。表26中、1234Eはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze(E))を表し、1234Zはシス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234ze(Z))を表し、1233Eはトランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(E))を表し、1233Zはシス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(1233zd(Z))を表す。
[実施例2−41]
反応原料の供給量を、気化させた調製例15の反応液(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):約0.47g/min、フッ化水素:約0.10g/min、塩素:約0.8ml/minの流量で供給(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素/塩素=1/2.0/0.02、接触時間:約50秒間)した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示す。
[実施例2−42]
反応管の温度が150℃に達したところで反応原料を供給した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示す。
[実施例2−43]
反応管の温度が250℃に達したところで反応原料を供給した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示す。
[実施例2−44]
反応原料の供給量を、気化させた調製例15の反応液(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):約0.32g/min、フッ化水素:約0.12g/min、塩素:約0.4ml/minの流量で供給(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素のモル比/塩素=1/3.4/0.01、接触時間:約50秒間)した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示す。
[実施例2−45]
反応原料の供給量を、気化させた調製例15の反応液(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):約0.32g/min、フッ化水素:約0.12g/min、塩素:約1.2ml/minの流量で供給(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素のモル比/塩素=1/3.4/0.03、接触時間:約50秒間)した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示す。
実施例2−40〜2−45及び後述の比較例2−3〜2−4における反応温度、接触時間及び反応原料の供給量についてまとめたものを表25に示す。
[比較例2−3]
反応原料の供給量を、気化させた調製例15の反応液(炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物):約0.32g/min、フッ化水素:約0.12g/minの流量で供給(モル比:炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物/フッ化水素のモル比=1/3.4、接触時間:約50秒間)した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示した。
[比較例2−4]
反応管の温度が100℃に達したところで反応原料を供給した以外は実施例2−40と同様に反応を実施した。その結果を表26に示した。
比較例2−3により、反応原料として塩素を供給しない場合には、高温で加熱しても242faや241faは1233zd(E)にはほとんど変換されないことがわかる。比較例2−4により、反応原料として塩素を供給する場合でも、加熱温度が100℃程度では、十分に反応が進行せず、242faや241faが残存してしまうことがわかる。
(2−3−4) 1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを用いたE−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンまたはZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造
1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを、フッ素化剤と反応させることによって、フッ素化することで1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。ここで得られる1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンはZ体およびE体の混合物である。このためZ−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。また、E−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて、さらに上記(1)の異性化反応を行うことで、Z−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを製造した。
[実施例2−46] バッチ式による反応
20℃の冷却液を循環させた凝縮器と圧力計を備えた300mLのステンレス鋼製オートクレーブに1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン(1230za)120g(0.67モル)と、フッ化水素93.3g(4.67モル、1230za/フッ化水素=約1/7)と、重合禁止剤として2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)0.9g(0.0026モル)とを導入した後、オートクレーブを120℃に加熱した。圧力が約2MPaGを超えたところで2.0〜2.5MPaGを維持するように凝縮器出口のニードルバルブから反応生成ガスを抜き出した。抜き出したガスは、氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通して酸を吸収し、ドライアイスアセトン浴のガラストラップで反応生成有機物を回収した。圧力の上昇が観察されなくなったことを確認した後、反応器をパージし、抜き出したガスは氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶及びドライアイスアセトン浴のガラストラップに回収した。反応器を冷却後、オートクレーブ内の反応液とドライアイスアセトン浴のガラストラップ回収物を氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶にすべて混合し、併せた混合溶液をフッ素樹脂製分液ロートにて有機物を水相から分離した。回収した有機物の収量は、79.6gであった。ガスクロマトグラフィーにより組成を分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが96.7%、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンが0.5%、高沸点化合物が0.1%、その他が2.7%であった。収率は88.0%であった。
[比較例2−5]
1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを90g(0.50モル)導入し、フッ化水素を100g(5.00モル、1230za/フッ化水素モル比=約1/10)導入し、重合禁止剤を導入しない以外は、実施例2−46と同様の操作を行ない、有機物を回収した。回収した有機物の収量は、59.5gであった。ガスクロマトグラフィーにより組成を分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが90.7%、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンが0.1%、高沸点化合物が6.2%、その他が3.0%であった。収率は81.9%であった。
[比較例2−6]
1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンを90g(0.50モル)導入し、フッ化水素を70g(3.50モル、1230za/フッ化水素モル比=約1/7)導入し、重合禁止剤を導入しないで、溶媒としてテトラメチレンスルホン(スルホラン)を25g(0.21モル、反応混合物の全量に対して約13.5%)導入した以外は、実施例2−46と同様の操作を行ない、有機物を回収した。回収した有機物の収量は、41.5gであった。ガスクロマトグラフィーにより組成を分析したところ、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが88.8%、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンが0.2%、高沸点化合物が1.5%、その他が9.5%であった。収率は55.8%であった。
[実施例2−47] 連続式による反応
20℃の冷却液を循環させた凝縮器と圧力計を備えた2000mLのステンレス鋼製オートクレーブを110℃に加熱した後、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール20.2g(0.16モル)を溶解させた1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペン(1230za)10.1kg(56.1モル)を7.4g/minの導入速度で、フッ化水素5.62kg(280.8モル)を4.1g/min(1230za/フッ化水素=約1/5)の導入速度で、反応器にそれぞれ連続的に導入した。圧力が約2MPaGを超えたところで2.0〜2.5MPaGを維持するように凝縮器出口のニードルバルブから反応生成ガスを抜き出した。抜き出したガスは、氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶に通して酸を吸収し、ドライアイスアセトン浴のガラストラップで反応生成有機物を回収した。圧力の上昇が観察されなくなったことを確認した後、反応器をパージし、抜き出したガスは氷水浴中で冷却した氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶及びドライアイスアセトン浴のガラストラップに回収した。反応器を冷却後、オートクレーブ内の反応液とドライアイスアセトン浴のガラストラップ回収物を氷水入りのフッ素樹脂製ガス洗浄瓶にすべて混合し、併せた混合溶液をフッ素樹脂製分液ロートにて有機物を水相から分離した。回収した有機物の収量は、7.16kgであった。ガスクロマトグラフィーにより組成を分析したところ、目的物である1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが94.8%、1,1,3,3−テトラクロロ−2−プロペンが0.01%、高沸点化合物が0.14%、その他が5.1%であった。収率は92.3%であった。
実施例2−46、2−47、比較例2−5,2−6における反応条件と結果を簡単にまとめたものを表27に示す。表27中、「―」は未添加であることを示す。
比較例2−5,2−6のいずれにおいても、反応終了時の目的物の収率及び選択率は、実施例2−46、2−47よりも低く、構造の特定されない高沸点化合物の副生が多かった。
(2−4) 1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造
(2−4−1) ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)を用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造
ハイドロハロフルオロプロペン異性体(異性体2)をフッ素化することによって、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造した。
[実施例2−48]
100ml耐圧反応器(SUS304製)に、ジメチルスルホキシド50ml、フッ化カリウム(森田化学工業株式会社製クロキャットF)23.2g(0.4mol)および1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン26.1g(0.2mol)を充填した。反応器を密閉後、オイルバス浴にて反応器内温が150℃以上になるようにバス温度を上昇した。バス温が170℃になったところで内温が150℃となったので、このまま放置し反応を継続した。
反応開始18時間後に内温155℃、反応圧力0.8MPa(G)となったところで、反応を停止した。反応器から生成ガスを抜き出し、ドライアイス−アセトン−トラップに20.1gの有機物を回収した。捕集した有機物をガスクロマトグラフィー(GC)で分析した結果を表28に示した。
[実施例2−49]
溶媒としてN−メチルピロリドン50ml用い、実施例2−48と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表28に示す。
[実施例2−50]
溶媒としてアセトニトリル50ml用い、反応温度を80℃、反応時間を24時間とした以外は実施例2−48と同様の反応操作、回収操作、分析を行った。結果を表28に示す。
このように、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを用いて金属フッ化物でフッ素化した場合、目的物である1,3,3,3−テトラフルオロプロペンが高選択的に得られることが確認できる。
[フッ素化触媒の調製]
トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの生成反応に用いるフッ素化触媒を下記の手順で調製した。
[調製例16]
活性アルミナにフッ化水素を接触させフッ素化アルミナとし、そのフッ素化アルミナにクロムを担持させることにより、フッ素化触媒を得た。詳細な手順は以下の通りである。
粒径、2mm〜4mmの活性アルミナ(住友化学工業株式会社製、商品名、NKHD−24、比表面積、340m2/g)を、1200g計り取り洗浄した。次いで、水4140gにフッ化水素460gを溶解し、10質量%濃度のフッ酸を調製した。10質量%のフッ酸を攪拌しつつ、洗浄した活性アルミナを徐々に加え、その後、3時間静置した。再度、活性アルミナを水洗し、ろ過した後、電気炉にて、200℃に加熱して2時間、乾燥させた。乾燥した活性アルミナ、1600ml(1600cm3)を、気相反応装置に充填した。直径5cm、長さ90cmの、熱媒循環装置に接続した外套を備えたステンレス鋼(SUS316L)製の円筒形反応管からなる気相反応器に窒素を流しながら、熱媒循環装置を作動させ、200℃の熱媒を循環させ円筒型反応管を加熱した。次いで、質量比、HF/N2=1/10〜1/5にて、フッ化水素を窒素に同伴させて導入した。フッ化水素を導入するにつれて活性アルミナの温度が上昇する。その際、活性アルミナの温度が350℃を越えないように、フッ化水素と窒素の流量、およびフッ化水素と窒素の比率を調節した。発熱が終了した時点で、熱媒の設定温度を450℃に変更し、さらに2時間フッ化水素と窒素を導入して、フッ素化アルミナを調製した。次いで、市販の特級試薬、CrCl3・6H2O、2016gを純水に溶かして、1L(1000cm3)の水溶液を得た。当該水溶液に、調製したフッ素化アルミナ1500ml(1500)を浸漬し、一昼夜静置した。次に濾過してフッ素化アルミナを取り出し、さらに、100℃に加熱した熱風循環式乾燥器中で一昼夜乾燥させ、クロム担持フッ素化アルミナを得た。得られたクロム担持フッ素化アルミナを、直径5cm、長さ90cmの円筒形SUS316L製反応管に充填した後、窒素ガスを流しながら、反応管を300℃に昇温し、反応管より水の留出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素を同伴させ反応管内に導入し、フッ化水素の濃度を徐々に高めた。充填されたクロム担持アルミナのフッ素化の吸着により、周囲より高温になっている部位であるホットスポットが反応管出口端に達したところで、反応管を450℃に昇温した後、450℃で1時間保ち、フッ素化触媒を得た。
[調製例17]
4×10メッシュアンダーの椰子殻破砕炭(カルゴンカーボンジャパン株式会社製、製品名、PCB)100gを純水150gに浸漬し、別途、CrCl3・6H2O(特級試薬)40gを純水100gに溶かした溶液と混合し攪拌した後、一昼夜静置した。次いで、静置後の液を濾過して活性炭を取り出し、電気炉中で200℃に加熱し、2時間焼成した。得られた塩化クロム担持活性炭を、直径5cm、長さ30cmのSUS316L製円筒形反応管に充填し、窒素ガスを流しながら、反応管を200℃に過熱し、円筒管より水の留出が見られなくなった時点で、窒素ガスにフッ化水素を同伴させ、フッ化水素の濃度を徐々に高くした。充填されたクロム担持活性炭へのフッ化水素の吸着により、周囲より高温になっている部位であるホットスポットが反応管出口端に達したところで、450℃に昇温した後、450℃で1時間保ち、フッ素化触媒を得た。
[1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの生成(反応工程)]
[実施例2−51]
次いで、調製例16および調製例17で得たフッ素化触媒を用い、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)をフッ化水素(HF)と反応させて、トランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(トランス−TFP)を得る反応を気相反応器中で行った。その際、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)の供給量を一定にして、フッ化水素(HF)の供給量を0.25g/minまたは0.49g/min、温度を360℃または380℃、反応器内圧力を0.1MPaまたは0.2MPaとした。以下に詳細な手順を示す。
直径、1インチ(約2.54cm)、長さ、30cmの円筒形反応管からなるステンレス鋼(SUS316L)製の管型の気相反応器に、調製例16または調製例17で調製したフッ素化触媒を50ml(50cm3)充填した。
次いで、窒素を30ml/min(30cm3/min)の流量で流しながら、気相反応器の反応管を200℃に加熱し、次いで、フッ化水素を0.10g/minの流量で流し、反応管中、窒素と同伴させつつ、反応管を450℃に昇温し、1時間保った。
次いで、反応管の温度を360℃または380℃に下げ、フッ化水素(HF)を0.25g/minまたは0.49g/minの速度で供給し、予め気化させた1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)を0.16g/minの速度で気相反応器へ供給した。
反応開始から1時間経過後に反応は安定し、その後、2時間、気相反応器から留出する反応生成物Aとしての生成ガスを、水中に吹き込み酸性ガスを分離除去した後、ドライアイス−アセトントラップで6.0〜8.0gの有機物を捕集し、捕集した有機物のGC分析を行った。
尚、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)の供給速度が0.16g/min、フッ化水素(HF)の供給速度0.25g/minである場合の供給量のモル比は、CTFP:HF=1:8であり、尚、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CTFP)の供給速度が0.16g/min、フッ化水素(HF)の供給速度0.49g/minである場合の供給量のモル比は、CTFP:HF=1:20である。
GCでFID検出器を用い測定した反応条件に対する反応生成物Aの割合(選択率)を表29に示す。単位はモル%であり、ガスクロマトグラフィーのピークの総面積を100%とした面積百分率法を用いて、FID検出器によるGCチャートの各有機物に対する面積より求めたものである。
(2−4−2) 1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを用いた1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造
上記(2−2)の方法において生成された1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを、脱フッ化水素化することで、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造した。
[調製例18]
塩化ジルコニル50gをイオン交換水450gに溶解した。ついで、あらかじめ気相においてフッ素化したγ―アルミナ(住化アルケム製KHS46)500gを先に調製した溶液に浸漬した。2日後、ブフナー漏斗にあけて液切りをした後に、表面が乾くまで風乾し、ロータリーエバポレーターに移して減圧乾燥を行った。調製した触媒を、熱媒を通ずることができるYUS270製(ステンレス鋼)ジャケット付き反応管(内径27.2mm*長さ700mm)に触媒を350ml充填した。窒素を200ml/minで流しながら熱媒を昇温していき、300℃で水が出なくなるまで乾燥した。ついで、HFを1〜2g/minで反応管に導入し、発熱がある場合には窒素量を増やして触媒が350℃を超えないように調整した。発熱がなくなったところで350℃まで昇温して発熱がないことを確認できたら触媒調製を終了とした。
[調製例19]
日本化学産業製の40%塩化クロム水溶液300gに水300gを加えて20%塩化クロム水溶液にした。1リットルのビーカーに白鷺活性炭G2X(日本エンバイロケミカル製)500mlを入れた。先に調製した20%塩化クロム溶液を入れて気泡が出なくなるまでゆっくり攪拌し、24時間静定した。ブフナー漏斗にあけて液切りをした後に、表面が乾くまで風乾し、ロータリーエバポレーターに移して減圧乾燥を行った。調製した触媒を、熱媒を通ずることができるYUS270製(ステンレス鋼)ジャケット付き反応管(内径27.2mm*長さ700mm)に触媒を350ml充填した。窒素を200ml/minで流しながら熱媒を昇温していき、300℃で水が出なくなるまで乾燥した。ついで、HFを1〜2g/minで反応管に導入し、発熱がある場合には窒素量を増やして触媒が350℃を超えないように調整した。発熱がなくなったところで350℃まで昇温して発熱がないことを確認できたら触媒調製を終了とした。
[調製例20]
日本化学産業製の40%塩化クロム水溶液300gに水300gを加えて20%塩化クロム水溶液にした。ついで、あらかじめ気相においてフッ素化したγ―アルミナ(住化アルケム製KHS46)500gを先に調製した溶液に浸漬した。2日後、ブフナー漏斗にあけて液切りをした後に、表面が乾くまで風乾し、ロータリーエバポレーターに移して減圧乾燥を行った。調製した触媒を、熱媒を通ずることができるYUS270製(ステンレス鋼)ジャケット付き反応管(内径27.2mm*長さ700mm)に触媒を350ml充填した。窒素を200ml/minで流しながら熱媒を昇温していき、300℃で水が出なくなるまで乾燥した。ついで、HFを1〜2g/minで反応管に導入し、発熱がある場合には窒素量を増やして触媒が350℃を超えないように調整した。発熱がなくなったところで350℃まで昇温して発熱がないことを確認できたら触媒調製を終了とした。
[実施例2−52]
調製例18で調製した、触媒が充填された反応管を345℃に加熱して真空ポンプで反応管内を0.6kPaにし、安定したところで1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC245fa)を2.4g/minで反応管に導入し、窒素の供給を止めた。接触時間を計算すると約0.1秒であった。2時間後、温度分布が安定していることを確認したらサンプリングし、水洗して酸分を除去した後にガスクロマトグラフィーで分析を行った。
[実施例2−53]
調製例19で調製した、触媒が充填された反応管を300℃に加熱して真空ポンプで反応管内を0.6kPaにし、安定したところで1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を6.1g/minで反応管に導入し、窒素の供給を止めた。接触時間を計算すると約0.1秒であった。2時間後、温度分布が安定していることを確認したらサンプリングし、水洗して酸分を除去した後にガスクロマトグラフィーで分析を行った。
[実施例2−54]
調製例20で調製した、触媒が充填された反応管を300℃に加熱して真空ポンプで反応管内を0.6kPaにし、安定したところで1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を6.1g/minで反応管に導入し、窒素の供給を止めた。接触時間を計算すると約0.1秒であった。2時間後、温度分布が安定していることを確認したらサンプリングし、水洗して酸分を除去した後にガスクロマトグラフィーで分析を行った。
以上の結果を表30に示す。
このように、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)を塩基と反応させ、続いて蒸留操作を行うことにより、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)が取り除かれ、高純度のシス−、またはトランス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HCFC−1234ze)を得ることが可能である。
本発明で対象とする1,3,3,3−テトラフルオロプロペンは、医農薬、機能性材料の中間原料あるいは冷媒、作動流体、溶融マグネシウム/マグネシウム合金製造防燃保護ガスなどとして利用できる。
(2−5) 3,3,3−トリフルオロプロピンを用いた1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの製造
上記(2−1)の方法において生成された3,3,3−トリフルオロプロピンから3,3,3−トリフルオロプロピニル金属を調製し、トリフルオロ酢酸エステルと反応させることで1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンまたはその等価体を経て1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物を製造した。
[実施例2−55]
tert−ブチルメチルエーテル36kgに、3,3,3−トリフルオロプロピン6.5kg(69mol、1.0eq)を−98〜−44℃で加え、さらにn−ブチルリチウムのn−ヘプタン溶液(25wt%)17kg(66mol、1.0eq)を−103〜−28℃で加え、−30℃で30分撹拌した。さらに、トリフルオロ酢酸エチル9.5kg(67mol、1.0eq)を−38〜−33℃で加え、−30℃で2時間撹拌した(反応終了液)。ここまでの操作は、窒素ガス雰囲気下で行った。硫酸水溶液64kg[濃硫酸16kg(160mol、2.4eq)と水48kgから調製]に、反応終了液を3℃で加え、5℃で30分攪拌した(2相系)。2相分離し、回収有機層の19F−NMR分析より内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンのエチルヘミケタールが37molと、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンの水和物が29mol含まれていた。該等価体の合算収率は、定量的であった。1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−3−ペンチ−2−ノンのエチルヘミケタールと水和物の、19F−NMRを以下に示す。
19F−NMR(基準物質;CFCl3、重溶媒;使用せず、回収有機層のままで測定)
エチルヘミケタール/δppm;−85.05(3F)、−52.52(3F)。
水和物/δppm;−86.37(3F)、−52.52(3F)。
得られた回収有機層に、新たに硫酸水溶液29kg[濃硫酸0.29kg(3.0mol、0.045eq)と水29kgから調製]を加え、52℃で10時間撹拌した(2相系)。2相分離し、回収有機層の19F−NMR分析より内部標準法(内部標準物質;α,α,α−トリフルオロトルエン)で定量したところ、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの2水和物が58mol含まれていた。目的生成物の収率は、88%であった。回収有機層を水40kgで洗浄し、減圧濃縮(油浴温度:〜29℃、減圧度:〜6.2kPa)し、残渣にn−ヘプタン30kgを加え、再び減圧濃縮(油浴温度:〜33℃、減圧度:〜5.5kPa)し、さらにn−ヘプタン45kgを加え、4℃で2時間撹拌し、析出した結晶を濾過し、減圧乾燥することにより、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物(2水和物:1水和物=92:8)が13kg得られた。トータル収率は、82%であった。
濃硫酸4.0kg(41mol、2.6eq)に、得られた1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの水和物4.0kg(16mol、1.0eq)を15〜20℃で加え、同温度で3時間30分撹拌した(2相系)。脱水終了液を2相分離することにより、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの粗体が3.3kg得られた。回収率は、定量的であった。粗体のガスクロマトグラフィー純度は、99.7%であった。粗体3.2kg(15mol、1.0eq)に、濃硫酸0.33kg(3.4mol、0.23eq)を加え、分別蒸留(留出温度69℃/大気圧)することにより、上記式で示される1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンの精製品が2.6kg得られた。回収率は、81%であった。精製品のガスクロマトグラフィー純度は、100.0%であった。

Claims (24)

  1. 水分濃度が100ppm以下の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
    前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を脱ハロゲン化し、3,3,3−トリフルオロプロピンを製造する方法。
  2. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、または1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体であり、前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はZ体である、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の方法。
  5. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化することによって製造される、請求項4に記載の方法。
  6. 水分濃度が100ppm以下の1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
    前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)をフッ素化し、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造する方法。
  7. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体であり、前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はZ体である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、請求項7に記載の方法。
  10. 1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化し、1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)および1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
    水分濃度が100ppm以下の前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する方法。
  11. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、請求項10に記載の方法。
  12. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、請求項11に記載の方法。
  13. 水分濃度が100ppm以下の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体2)を製造し、
    前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(異性体1)をフッ素化し、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを製造する
    工程を含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造する方法。
  14. 1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化し、前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造し、
    請求項13に記載の1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)および前記1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造する方法を行う
    工程をさらに含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造する方法。
  15. 請求項14に記載の方法により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造し、
    前記1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造する
    工程をさらに含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造する方法。
  16. 請求項15に記載の方法により1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造し、
    前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する
    工程をさらに含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を共製造する方法。
  17. 請求項13に記載の方法により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを共製造し、
    前記1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを脱フッ化水素化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造する
    工程をさらに含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造する方法。
  18. 請求項17に記載の方法により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を共製造し、
    前記1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)を異性化し、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造する
    工程をさらに含む、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)から、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体1)、および1,3,3,3−テトラフルオロプロペン異性体(異性体2)を共製造する方法。
  19. 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はE体であり、前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はZ体である、請求項13乃至18の何れか1項に記載の方法。
  20. 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、請求項13乃至18の何れか1項に記載の方法。
  21. 1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンをフッ素化し、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を製造し、
    水分濃度が100ppm以下の前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を、気相中で触媒と接触させて異性化し、対応する1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)を製造し、
    前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)を脱塩化水素化し、3,3,3−トリフルオロプロピンを製造する
    工程を含む、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンから、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)、および3,3,3−トリフルオロプロピンを共製造する方法。
  22. 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)はZ体であり、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体2)はE体である、請求項21に記載の方法。
  23. 前記1−ハロゲノ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は蒸留する、もしくは脱水剤と接触させる、またはその両方により水分濃度を100ppm以下に調整する請求項1、6、または10の何れか1項に記載の方法。
  24. 前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン異性体(異性体1)は蒸留する、もしくは脱水剤と接触させる、またはその両方により水分濃度を100ppm以下に調整する請求項13または21に記載の方法。
JP2016233689A 2016-11-30 2016-11-30 ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法 Pending JP2018090512A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016233689A JP2018090512A (ja) 2016-11-30 2016-11-30 ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016233689A JP2018090512A (ja) 2016-11-30 2016-11-30 ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018090512A true JP2018090512A (ja) 2018-06-14

Family

ID=62564226

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016233689A Pending JP2018090512A (ja) 2016-11-30 2016-11-30 ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018090512A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2020075728A1 (ja) * 2018-10-09 2020-04-16 ダイキン工業株式会社 パーフルオロアルキン化合物の製造方法
CN112585109A (zh) * 2018-09-26 2021-03-30 阿科玛法国公司 1-氯-3,3,3-三氟丙烯的稳定化
CN112723983A (zh) * 2021-03-30 2021-04-30 北京宇极科技发展有限公司 Z-1-卤-3,3,3-三氟丙烯的制备方法
CN112723985A (zh) * 2021-03-30 2021-04-30 北京宇极科技发展有限公司 E-1-卤-3,3,3-三氟丙烯的制备方法
CN114644545A (zh) * 2020-12-17 2022-06-21 陕西中蓝化工科技新材料有限公司 一种顺式卤代烯烃的制备方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112585109A (zh) * 2018-09-26 2021-03-30 阿科玛法国公司 1-氯-3,3,3-三氟丙烯的稳定化
CN112585109B (zh) * 2018-09-26 2024-03-26 阿科玛法国公司 1-氯-3,3,3-三氟丙烯的稳定化
WO2020075728A1 (ja) * 2018-10-09 2020-04-16 ダイキン工業株式会社 パーフルオロアルキン化合物の製造方法
JP2020079230A (ja) * 2018-10-09 2020-05-28 ダイキン工業株式会社 パーフルオロアルキン化合物の製造方法
CN112823148A (zh) * 2018-10-09 2021-05-18 大金工业株式会社 全氟炔烃化合物的制造方法
CN114644545A (zh) * 2020-12-17 2022-06-21 陕西中蓝化工科技新材料有限公司 一种顺式卤代烯烃的制备方法
CN112723983A (zh) * 2021-03-30 2021-04-30 北京宇极科技发展有限公司 Z-1-卤-3,3,3-三氟丙烯的制备方法
CN112723985A (zh) * 2021-03-30 2021-04-30 北京宇极科技发展有限公司 E-1-卤-3,3,3-三氟丙烯的制备方法
CN112723983B (zh) * 2021-03-30 2021-07-16 泉州宇极新材料科技有限公司 Z-1-卤-3,3,3-三氟丙烯的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5491392B2 (ja) フッ素化された有機化合物を生成するための方法
US9120716B2 (en) Process for the preparation of 2,3,3,3 tetrafluoropropene
JP2018090512A (ja) ハイドロハロフルオロプロペンを用いたフルオロカーボンの製造方法
JP6251992B2 (ja) シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2018048205A (ja) ハイドロハロフルオロオレフィンの製造方法
TW201332939A (zh) 用於製備2,3,3,3-四氟丙烯之方法
JP2014210765A (ja) 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
KR20140077958A (ko) 2,3,3,3-테트라플루오로프로펜의 제조 방법
JP6751239B2 (ja) 1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
EP2630107A1 (en) Process for the manufacture of 2-chloro-3,3,3-trifluropropene by gas phase fluorination of pentachloropropane
US20210221756A1 (en) Hydrofluorination of 1233xf to 244bb by sbf5
WO2018193884A1 (ja) 1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法
WO2016194794A1 (ja) ハイドロハロフルオロオレフィンの製造方法
WO2017183501A1 (ja) 1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法
JP6043415B2 (ja) 2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
JPWO2019003847A1 (ja) 1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法
JP6627849B2 (ja) シス−1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法
WO2013157384A1 (ja) シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンの製造方法
JP2020203916A (ja) トランス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7426

Effective date: 20161220

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20161220