JP2018086808A - 炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置 - Google Patents

炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2018086808A
JP2018086808A JP2016231785A JP2016231785A JP2018086808A JP 2018086808 A JP2018086808 A JP 2018086808A JP 2016231785 A JP2016231785 A JP 2016231785A JP 2016231785 A JP2016231785 A JP 2016231785A JP 2018086808 A JP2018086808 A JP 2018086808A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon fiber
fiber bundle
plasma
reinforced plastic
plastic structure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016231785A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6776849B2 (ja
Inventor
賢太郎 河野
Kentaro Kono
賢太郎 河野
真一郎 竹本
Shinichiro Takemoto
真一郎 竹本
内田 浩司
Koji Uchida
浩司 内田
黒田 真一
Shinichi Kuroda
真一 黒田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP2016231785A priority Critical patent/JP6776849B2/ja
Publication of JP2018086808A publication Critical patent/JP2018086808A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6776849B2 publication Critical patent/JP6776849B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Moulding By Coating Moulds (AREA)

Abstract

【課題】より高い強度の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置を提供すること。【解決手段】複数の単繊維からなる炭素繊維束を繊維長方向に搬送しながら樹脂を含浸させ、含浸させた樹脂を硬化させて成形する炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、炭素繊維束に対して開繊を実行する開繊工程と、開繊された炭素繊維束にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、プラズマ処理された炭素繊維束に樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、を有する、炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法を提供する。【選択図】図4

Description

本発明は、炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置に関する。
炭素繊維強化プラスチック構造体(CFRP:carbon fiber reinforced plastic)は、例えば、航空機、自動車用材料、及びスポーツ用品等の種々の分野で用いられている。
CFRP構造体の一例として、内部に高圧のガス又は液体を貯蔵する高圧タンクが挙げられる。例えば、特許文献1では、燃料電池車両に搭載されるCFRP構造体としての高圧タンク(水素タンク)の製造方法が提案されている。特許文献1の製造方法では、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させて、樹脂製等のライナーの外側に巻き付け、熱硬化性樹脂を硬化させることによって、当該ライナーの外側をCFRPで補強して水素タンクを製造する。
特許文献1では、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させるにあたり、複数の炭素繊維を所定密度で集合させてなる炭素繊維束(ロービング)をローラーの回転で引き出し繊維長方向に移動させながら、当該炭素繊維束に熱硬化樹脂を含浸させるいわゆるフィラメントワインディング法が行われている。
特開2014−124864号公報
上記フィラメントワインディング法において、CFRP構造体の強度を保つ上で、炭素繊維束を構成する各炭素繊維に適切に樹脂を含浸させることが重要であるが、上記特許文献1の等の従来の方法では炭素繊維束を移動させながら樹脂を含浸させるため、ローラーの送り速度や炭素繊維束の厚さ等の条件によっては必ずしも十分に樹脂を含浸させることができずに、製造されるCFRP構造体の強度に影響を与えることが考えられる。
また、燃料電池車両に搭載されるCFRP構造体としての水素タンクなどおいては、内部に水素ガスを高圧状態で充填するので、その強度を可能な限り高くすることが望まれる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より高い強度で炭素繊維強化プラスチック構造体を製造し得る製造方法及び製造装置を提供することにある。
本発明のある態様によれば、複数の単繊維からなる炭素繊維束を繊維長方向に搬送しながら樹脂を含浸させ、含浸させた樹脂を硬化させて成形する炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法が提供される。この製造方法は、炭素繊維束に対して開繊を実行する開繊工程と、開繊された炭素繊維束にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、プラズマ処理された炭素繊維束に樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、を有する。
本発明によれば、開繊及びその後のプラズマ処理を実行することで、より高い強度で炭素繊維強化プラスチック構造体を製造することができる。
図1は、本実施形態における高圧タンク製造装置の構成を説明する図である。 図2は、開繊前後の炭素繊維束の変化を説明する図である。 図3は、プラズマ処理装置の構成を説明する図である。 図4は、本実施形態の高圧タンク製造方法の流れを説明するフローチャートである。 図5Aは、未開繊の炭素繊維束に対するプラズマ照射の態様を説明する図である。 図5Bは、開繊後の炭素繊維束に対するプラズマ照射の態様を説明する図である。 図6は、第2実施形態における搬送速度に応じた開繊幅、プラズマ強度、及びプラズマ照射量の関係を示すグラフである。 図7は、第3実施形態における搬送速度に応じた開繊幅、プラズマ強度、プラズマ照射量、テンション、及び樹脂含浸量の関係を示すグラフである。
(第1実施形態)
以下、図面等を参照し、本発明の第1実施形態について説明する。なお、本実施形態では、CFRP構造体の一例である高圧タンクの製造方法について説明するが、本発明に係るCFRP構造体の製造方法は、高圧タンクの製造方法に限定されるものではない。
図1は、本実施形態における高圧タンク製造装置の構成を説明する図である。
図示のように、高圧タンク製造装置10は、ロービング12と、テンション調節装置14と、開繊装置16と、プラズマ処理装置18と、樹脂含浸装置20と、ライナー22と、コントローラ24と、を有する。
ロービング12は、炭素繊維束Cfbをボビンに巻回することで構成されている。炭素繊維束Cfbは、所定繊維径(例えば7μm程度)の単繊維Cfを多数(例えば1〜2万本以上)束ねて構成される。炭素繊維としては、例えばレーヨン系炭素繊維、ポリアクリルニトリル系炭素繊維、又はピッチ系炭素繊維等を用いることができる。
ロービング12は、転がり抵抗を任意に調節し得るブレーキローラ14aに支持され、炭素繊維束Cfbを搬送する方向(図の時計周り)に回転可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、ブレーキローラ14aがテンション調節装置14の一部として機能している。
テンション調節装置14は、搬送する炭素繊維束Cfbの張力を調節する装置である。具体的に、テンション調節装置14は、ブレーキローラ14aと、複数のガイドローラ14bと、を有している。ブレーキローラ14aは、コントローラ24からの指令信号に基づいてその転がり抵抗(ブレーキ力)が調節可能に構成されており、当該転がり抵抗の調節で炭素繊維束Cfbに対する張力(以下では、単に「テンションF」とも記載する)を調節することができる。ガイドローラ14bは、炭素繊維束Cfbを開繊装置16へ搬送する方向にガイドする。
開繊装置16は、搬送中の炭素繊維束Cfbに空気を吹き付けるエアガン等の空気噴射部16aを有する。この空気の吹き付けにより、炭素繊維束Cfbを構成する単繊維C中に空気を通過させることで、炭素繊維束Cfbを所定幅に拡げて、炭素繊維束Cfbの厚みを薄くすることができる。
図2は、開繊装置16による開繊前後の炭素繊維束Cfbの変化を説明する図である。なお、図2では、搬送方向と直交する方向の炭素繊維束Cfbの概略断面を示している。図に示す開繊装置16による開繊によって、炭素繊維束Cfbはその幅が広がり、厚さが減少する。例えば、開繊装置16による開繊によって、幅約10mmで厚さ約0.2mmの炭素繊維束Cfbが、幅30〜50mm、厚さ約0.05mmとなる。以下では、開繊装置16による開繊の後の炭素繊維束Cfbを「開繊幅Ow」と記載する。
すなわち、開繊装置16による開繊で炭素繊維束Cfbを構成する単繊維Cfの相互距離(以下では、「繊維間距離L」とも記載する)が、広がることとなる。
また、本実施形態では、開繊幅Owは、炭素繊維束Cfbの搬送速度V及び空気噴射部16aによる噴射空気の流速により調節することができる。特に、空気噴射部16aは、コントローラ24からの指令信号に基づいて、噴射空気の流速を任意に調節可能となるように構成されている。すなわち、コントローラ24は、開繊前の炭素繊維束Cfbを構成する単繊維Cfの本数、厚さ、幅、及び搬送速度V等の種々の条件に応じて、所望の開繊幅Owに応じた空気噴射部16aによる噴射空気の目標流速を演算し、これに応じて噴射空気の流速を制御することで、炭素繊維束Cfbの開繊幅Owを所望の開繊幅Owに調節することができる。
なお、例えば炭素繊維束Cfbに効率的に所望の流速の空気を吹き付けることができるように、空気噴射部16aに対して炭素繊維束Cfbを挟んだ反対側から、コントローラ24の指令に応じて任意の吸引力で空気を吸引可能な吸気ポンプ等の空気吸引装置を配置しても良い。
プラズマ処理装置18は、開繊された炭素繊維束Cfbにプラズマを照射する。
図3は、プラズマ処理装置18の構成を説明する図である。図示のように、プラズマ処理装置18は、複数(図では3つ)の放電電極26及び対向電極28と、それぞれの放電電極26及び対向電極28に設けられる交流電源25と、それぞれの放電電極26と対向電極28の間に窒素等の不活性ガスを噴射する不活性ガス噴射部30と、を有している。
図に示すプラズマ処理装置18では、交流電源25から放電電極26に高周波電圧を印加することで、当該放電電極26と接地側の対向電極28との間の空気に含まれる酸素やオゾン等の分子が電離したプラズマ(酸素プラズマ等)が発生する。
そして、発生したプラズマは、不活性ガス噴射部30から噴射された不活性ガスにより複数の微細な貫通孔を有する微細孔部32を介してプラズマ噴射口34に誘導され、プラズマ噴射口34から炭素繊維束Cfbに照射される。
プラズマ噴射口34は、炭素繊維束Cfbの幅方向に沿って所定幅(例えば25mm)に亘っている。以下では、このプラズマ噴射口34の炭素繊維束Cfbの幅方向に沿った幅を「プラズマ幅」とも記載する。
このプラズマ処理装置18では、酸素プラズマ(酸素ラジカル)が炭素繊維束Cfbに照射されることで、当該酸素ラジカルが炭素繊維束Cfbの表面の水素原子や炭素原子と結合して水酸基やアルデヒド基等の炭素由来の官能基を生成する。これにより、炭素繊維束Cfbの表面が改質されることとなる。
このようにプラズマ照射によって炭素繊維束Cfbの物性が改質されることで、樹脂含浸装置20により含浸される樹脂との化学結合が促進される。結果として、樹脂硬化後の炭素繊維束Cfbの強度が向上する。
また、プラズマ処理装置18によって炭素繊維束Cfbに照射するプラズマの強度(以下では、単に「プラズマ強度Cp」とも記載する)は、コントローラ24により制御される。具体的に、コントローラ24は、交流電源25から放電電極26に印加される電圧の大きさ及び周波数、及び不活性ガス噴射部30からの不活性ガスの流速等を制御することで、プラズマ強度Cpを任意に制御することができる。
樹脂含浸装置20は、プラズマ処理装置18によってプラズマ処理された炭素繊維束Cfbに熱硬化性樹脂を含浸させる装置である。
具体的に、樹脂含浸装置20は、樹脂容器40と、樹脂容器40内の樹脂溶液を炭素繊維束Cfbに接触させるメインローラ42と、メインローラ42に付着している樹脂を均一にする樹脂均し機43と、ガイドローラ44a,44bと、を有している。
樹脂容器40は、炭素繊維束Cfbに含浸させるマトリックス樹脂の溶液が貯留されている。このマトリックス樹脂は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂である。なお、エポキシ樹脂としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン類を有効成分とするエポキシ樹脂が用いられる。
メインローラ42は、一部分が樹脂容器40内の樹脂溶液に浸漬されるように配置され、炭素繊維束Cfbに接触しつつ炭素繊維束Cfbの搬送方向に沿って回転(図1では、時計回り)するように構成されている。
樹脂均し機43は、炭素繊維束Cfbとメインローラ42が接触する部分の上流で、メインローラ42の表面に接触するように構成されている。すなわち、樹脂均し機43は、メインローラ42が樹脂溶液に浸漬してその表面に付着した樹脂を、該メインローラ42が炭素繊維束Cfbに接触する前の段階で均一にさせる装置である。
ガイドローラ44a,44bは、メインローラ42と炭素繊維束Cfbが好適に接触するように、炭素繊維束Cfbの搬送方向にガイドするローラーである。
ライナー22は、炭素繊維束Cfbの搬送方向に沿って巻き取る方向(図1では、時計回り)に任意の回転速度で回転可能なシャフト23に支持され、当該シャフト23の回転に伴い回転する。したがって、シャフト23の回転でライナーの周囲に炭素繊維束Cfbを巻き付けることができ、高圧タンクの基本構造を得ることができる。
ライナー22は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂材料などで構成される。ライナー22を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、及びフッ素樹脂等が挙げられる。また、ライナー22を構成する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂やポリウレタン等が挙げられる。
さらに、本実施形態では、シャフト23は、コントローラ24の指令信号に基づいてその回転速度が調節される。そして、シャフト23の回転により、炭素繊維束Cfbが搬送方向に駆動される。すなわち、シャフト23の回転速度が炭素繊維束Cfbの搬送速度Vに相当し、コントローラ24により搬送速度Vの調節が可能である。
コントローラ24は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータ、特にマイクロコンピュータで構成される。
そして、コントローラ24は、上記CPU等の各ハードウェア要素によって、テンション調節装置14のブレーキローラ14aのブレーキ力(テンションF)、開繊装置16の空気噴射部16aからの空気の流速等(開繊幅Ow)、プラズマ処理装置18の交流電源25の電圧の大きさ及び周波数や不活性ガスの噴射流速(プラズマ強度Cp)、及びシャフト23の回転速度(搬送速度V)を制御することができるようにプログラムされている。
上記各構成を有する高圧タンク製造装置10を用いた実行される高圧タンク製造方法の流れを説明する。
図4は、本実施形態の高圧タンク製造方法の流れを説明するフローチャートである。なお、本実施形態では、コントローラ24により、搬送速度Vを予め固定値に設定する。
図示のように、ステップS101において、開繊装置16によって炭素繊維束Cfbに開繊工程を実行する。具体的に、コントローラ24は、搬送速度Vに応じた所望の開繊幅Owとなるように開繊装置16を制御して開繊を行う。なお、開繊幅Owは、プラズマ照射及び樹脂の含浸を適切に実行する観点から定められる。
ステップS102において、開繊された炭素繊維束Cfbにプラズマ処理を施すプラズマ処理工程を実行する。
ステップS103において、プラズマ処理された炭素繊維束Cfbに樹脂を含浸させる樹脂含浸工程を実行する。具体的には、上述のように、樹脂含浸装置20によって炭素繊維束Cfbに樹脂を含浸させる。
ステップS104において、樹脂を含浸させた炭素繊維束Cfbをライナー22に巻き取り積層して、加熱処理等の所定の硬化処理を行う。これにより、ライナー22の周囲に補強層としての炭素繊維層が巻回されたCFRP構造体としての高圧タンクが成形される。
したがって、本実施形態の高圧タンクの製造方法では、ステップS101の開繊工程で炭素繊維束Cfbを開繊することで、当該炭素繊維束Cfbを構成する複数の単繊維Cfの間の相互距離が広がり、且つ炭素繊維束Cfbの厚さも減少する。これにより、ステップS103の樹脂含浸工程において単繊維Cfの間に樹脂がより浸透しやすくなるため、各単繊維Cfに樹脂をより確実に含浸させることができる。したがって、樹脂の含浸が不十分であることに起因するボイドの発生等によって、完成品である高圧タンクの強度が低下することが抑制される。
また、ステップS102のプラズマ処理工程では、開繊によって単繊維Cfの間の相互距離が広がり、且つ炭素繊維束Cfbの厚さが減少した状態の炭素繊維束Cfbにプラズマ処理が行われる。これにより、プラズマ処理のプラズマ照射効率も高めることができる。これについてより具体的に説明する。
図5Aは、未開繊の炭素繊維束に対するプラズマ照射の態様を説明する図である。また、図5Bは、開繊後の炭素繊維束に対するプラズマ照射の態様を説明する図である。
先ず、図5Aに示す未開繊の炭素繊維束Cfbは、単繊維Cfがまとまって断面略円形を構成するように密集している。
したがって、プラズマ処理で照射されるプラズマ(図の矢印で示す)は、当該円形の周にあたる表面部分、特にプラズマ噴射口34側の表面部分にあたる領域Aに存在する単繊維Cfには一定量は照射されるものの、他の部分では十分な照射量が確保されない。
特に、上記略円形の炭素繊維束Cfbの中心に近い部分に存在する単繊維Cfは、プラズマが炭素繊維束Cfbの表面部分の単繊維Cfに阻まれるため、十分な照射量を確保することがより難しい。
一方で、図5Bに示す開繊後の炭素繊維束Cfbでは、未開繊の状態と比較して薄く幅広な形状となり、単繊維Cfの間の相互距離が広がり且つ厚さが減少している。したがって、開繊後の炭素繊維束Cfbは、照射されるプラズマ(図の矢印で示す)が、表面の単繊維Cfに十分に照射されつつも、表面の単繊維Cfの間を通過して、プラズマ噴射口34に対して反対側に存在する単繊維Cfにも十分に照射されることとなる。これにより、プラズマの照射効率が向上する。結果として、プラズマ処理の効率が向上することとなり、完成品である高圧タンクの強度を高めることができる。また、上述のように単繊維Cfの間の相互距離が広がることで、樹脂含浸装置20による樹脂の含浸も好適に実行することができる。
したがって、本実施形態の高圧タンクの製造方法では、開繊工程における炭素繊維束Cfbの開繊で、炭素繊維束Cfbにより好適に樹脂を含浸させることができるとともに、その後のプラズマ処理のプラズマ照射効率も高めることができるので、得られる高圧タンクの強度の向上を図ることができる。
さらに、本実施形態では、開繊によって炭素繊維束Cfbの厚さが減少していることによって、高圧タンクの補強層として要求される厚さを得るために、ライナー22に対する炭素繊維束Cfbの巻数が増大することとなる。すなわち、最終的に得られる高圧タンクにおいては、同じ厚さの補強層であっても、幅広で薄肉の炭素繊維束Cfbがライナー22に対してより多く巻回されている状態となる。これにより、例えば、高圧タンクの補強層にクラックを発生させ得る何らかの事象が生じた場合においても、当該クラックの進展を各炭素繊維束Cfbの境界でせき止めることができる。結果として、クラックが発生してもその長さを短く抑えることができるので、高圧タンクの強度の向上により一層資することとなる。
以上説明した本実施形態における炭素繊維強化プラスチック構造体としての高圧タンクの製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態によれば、複数の単繊維Cfからなる炭素繊維束Cfbを繊維長方向に搬送しながら樹脂を含浸させ、含浸させた樹脂を硬化させて成形する炭素繊維強化プラスチック構造体としての高圧タンクの製造方法が提供される。
この高圧タンクの製造方法は、炭素繊維束Cfbに対して開繊を実行する開繊工程(図4のステップS101)と、開繊された炭素繊維束Cfbにプラズマ処理を施すプラズマ処理工程(図4のステップS102)と、プラズマ処理された炭素繊維束Cfbに樹脂を含浸させる樹脂含浸工程(ステップS103)と、を有する。
これによれば、開繊工程で炭素繊維束Cfbを開繊することで、樹脂含浸工程における炭素繊維束Cfbへの樹脂の含浸をより好適に行うことができるとともに、その後のプラズマ処理におけるプラズマ照射効率も高めることができる。
したがって、樹脂の含浸が不十分であることに起因するボイドの発生等による高圧タンクの強度低下を抑制できるとともに、炭素繊維束Cfbを構成する各単繊維Cfにより確実にプラズマを照射することができる。結果として、得られる高圧タンクの強度をより向上させることができる。
さらに、本実施形態では、開繊によって炭素繊維束Cfbの厚さが減少していることによって、高圧タンクの補強層として要求される厚さを得るために、炭素繊維束Cfbの巻数が増大することとなる。すなわち、最終的に得られる高圧タンクにおいては、同じ厚さの炭素繊維層であっても、幅広で薄肉の炭素繊維束Cfbがより多く巻回されている状態となるので、当該高圧タンクの強度がより向上することとなる。
また、本実施形態の高圧タンクの製造方法は、複数の単繊維Cfからなる炭素繊維束Cfbを繊維長方向に搬送しながら樹脂を含浸させ、該樹脂含浸後に成形して高圧タンクを製造する高圧タンク製造装置10により実行される。
この高圧タンク製造装置10は、搬送される炭素繊維束CfbのテンションFを調節する張力調節装置としてのテンション調節装置14と、炭素繊維束Cfbに対して開繊を実行する開繊装置16と、開繊された炭素繊維束Cfbにプラズマ処理を実行するプラズマ処理装置18と、プラズマ処理された炭素繊維束Cfbに樹脂を含浸させる樹脂含浸装置20と、炭素繊維束Cfbの搬送速度Vに応じて、テンション調節装置14、開繊装置16、プラズマ処理装置18、及び樹脂含浸装置20を制御するコントローラ24と、を有する。
これにより、この高圧タンク製造装置10により、テンションF、開繊幅Ow、及びプラズマ強度Cpを調節して炭素繊維束Cfbへのプラズマ照射量Pや樹脂含浸量Iを好適に制御しつつ、本実施形態の高圧タンクの製造方法を実行することができる。
したがって、例えば、高圧タンクの生産性を向上させるべく、搬送速度Vを相対的に高く設定したとしても、当該搬送速度Vに応じてプラズマ照射量P及び樹脂含浸量Iを適切に確保することができるので、一定水準の強度を有する高圧タンクを低コストに製造することができる。
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、コントローラ24は、搬送速度Vを設定(固定)し、当該搬送速度Vに対して、炭素繊維束Cfbに照射されるプラズマ照射量Pが一定となるように開繊幅Ow及びプラズマ強度Cpを制御する。
ここで、プラズマ照射量Pは、下記の式(1)により定められる。
Figure 2018086808
ただし、Cpはプラズマ強度、Lは繊維間距離、tpはプラズマ照射時間、及びDfは繊維径を意味する。
ここで、繊維間距離Lは、幅方向において隣接する単繊維Cfの間の平均的な間隔を意味する。繊維間距離Lは、単繊維Cfの本数N、開繊後の炭素繊維束Cfbの厚さBb、及び幅(開繊幅Ow)から算出することができる。
繊維間距離Lは、例えば、炭素繊維束Cfbの厚さ方向において単繊維Cfは相互に接していて、当該厚さ方向における隣接する単繊維Cfの間の間隔をゼロと仮定すると、以下の式(2)により算出することができる。
Figure 2018086808
また、式(1)のプラズマ照射時間tpは、搬送速度Vに基づいて求めることができる。すなわち、搬送速度Vに応じて、炭素繊維束Cfbがプラズマ処理装置18におけるプラズマ照射領域(プラズマ噴射口34のカバー領域)を通過する時間が定まるので、これをプラズマ照射時間tpとすることができる。したがって、搬送速度Vが大きくなるほど、プラズマ照射時間tpは短くなる。
したがって、本実施形態では、コントローラ24は、上記式(1)及び式(2)により定まるプラズマ照射量Pが、予め定められる搬送速度Vに対して略一定値を取るように、開繊幅Ow、及びプラズマ強度Cpを調節する。
より詳細には、コントローラ24は、予め定められる搬送速度Vに基づいて、プラズマ照射量Pが略一定値となるように、開繊幅Owの目標値(以下、「目標開繊幅Ow_t」とも記載する)とプラズマ強度Cpの目標値(以下、「目標プラズマ強度Cp_t」とも記載する)を定める。そして、コントローラ24は、開繊幅Ow及びプラズマ強度Cpが、それぞれ、目標開繊幅Ow_t及び目標プラズマ強度Cp_tに近づくように、プラズマ処理装置18及び樹脂含浸装置20を制御する。
図6は、設定される搬送速度Vの大きさに対する開繊幅Ow、プラズマ強度Cp、及びプラズマ照射量Pの関係を示すグラフである。特に、図6(a)は開繊幅Owを表し、図6(b)はプラズマ強度Cpを表し、図6(c)はプラズマ照射量Pを表している。
本実施形態の制御では、設定される搬送速度Vに応じて、2つの制御モードI及び制御モードIIが切り替えられる。コントローラ24は、制御モードIと制御モードIIの切り替えを、搬送速度Vと所定の閾値Vthとの大小関係を基準に実行する。
なお、本実施形態において、閾値Vthは、制御モードIにおいてプラズマ照射量Pを一定にすべく搬送速度Vが大きくなるにつれて大きく設定される目標開繊幅Ow_tが、プラズマ処理装置18のプラズマ噴射口34の幅(プラズマを照射可能な幅)に相当する開繊幅上限値Owmaxに到達する際の搬送速度Vの値として定義される。
したがって、コントローラ24は、搬送速度Vが閾値Vth未満である場合には、制御モードIの制御を実行し、搬送速度Vが閾値Vth以上である場合には、制御モードIIの制御モードを選択する。以下、制御モードI及び制御モードIIの詳細を説明する。
(i)制御モードI
コントローラ24は、設定される搬送速度Vが大きいほど、目標開繊幅Ow_tを大きく定めて開繊幅Owを大きくする(図6(a)参照)。これは、既に説明したように搬送速度Vが大きいほどプラズマ照射時間tpが短くなるため、開繊幅Owを大きくして、炭素繊維束Cfbに対するプラズマの照射領域を広げプラズマ照射量Pを略一定に維持するためである(図6(c)参照)。なお、この場合、目標プラズマ強度Cp_tは略一定値に設定し、プラズマ強度Cpを略一定に保つ(図6(b)参照)。
(ii)制御モードII
コントローラ24は、搬送速度Vの大きさにかかわらず目標開繊幅Ow_tを開繊幅上限値Owmaxとして演算する。すなわち、開繊幅Owを一定値の開繊幅上限値Owmaxに固定する(図6(a)参照)。
ここで、制御モードIIでは、制御モードIのように設定される搬送速度Vが大きいほど開繊幅Owを大きくしてしまうと、開繊幅Owが開繊幅上限値Owmaxを超えることとなる。すなわち、開繊幅Owがプラズマ処理装置18のプラズマ噴射口34の幅を超えてしまうので、炭素繊維束Cfbがプラズマ照射可能領域を超えて幅方向に広がってしまう。
したがって、本実施形態では、炭素繊維束Cfbの幅をプラズマ照射可能な幅の範囲内に収めるべく、制御モードIIにおいて、コントローラ24は、搬送速度Vの変化にかかわらず、開繊幅Owを開繊幅上限値Owmaxに固定する。
一方で、このように開繊幅Owを固定とすると、設定される搬送速度Vが大きくなるにしたがいプラズマ照射時間tpが減少してプラズマ照射量Pが減少してしまう。そこで、本実施形態では、この場合もプラズマ照射量Pを減少させることなく一定に保つべく、設定される搬送速度Vが大きいほどプラズマ強度Cpを大きくする(図6(b)参照)。
以上説明した制御モードI及び制御モードIIにおける制御によって、搬送速度Vの大きさにかかわらず、プラズマ照射量Pを所望の一定値に調節することができる(図6(c)参照)。
以上説明した本実施形態における炭素繊維強化プラスチック構造体としての高圧タンクの製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、開繊工程における開繊後の炭素繊維束の幅である開繊幅Owを、炭素繊維束Cfbの搬送速度Vに応じて調節する。これにより、プラズマ処理工程におけるプラズマ照射時間が変化した場合であっても、これに合わせて開繊幅Owを調節することで、プラズマ照射量Pを適切に調節することができる。
特に、本実施形態では、開繊幅Owを、搬送速度Vが大きいほど大きくする。これにより、搬送速度Vが相対的に大きく、プラズマ照射時間が相対的に短くなる場合であっても、炭素繊維束Cfbに対するプラズマ照射領域を広げることができる。結果として、搬送速度Vを相対的に大きくしても、所望のプラズマ照射量を確保することができる。
また、本実施形態では、プラズマ処理工程において炭素繊維束Cfbに照射するプラズマの強度であるプラズマ強度Cpを、炭素繊維束Cfbの搬送速度Vに応じて調節する。これにより、搬送速度Vが相対的に大きく、プラズマ照射時間tpが相対的に短くなる場合であっても、プラズマ強度Cpを大きくして、プラズマ照射量Pを大きくすることができる(式(1)参照)。結果として、搬送速度Vを相対的に大きくしても、所望のプラズマ照射量Pを確保することができる。
より具体的には、プラズマ強度Cpを、搬送速度Vの大きさにかかわらず炭素繊維束Cfbに照射されるプラズマの量(プラズマ照射量P)が略一定に保たれるように調節する。すなわち、プラズマ強度Cpを制御してプラズマ照射量Pを搬送速度Vに依らない略一定値に調節することができる。
より具体的に、本実施形態では、炭素繊維束Cfbの搬送速度Vが所定の閾値Vth未満である場合には、搬送速度Vが大きいほど開繊幅Owを大きくし、炭素繊維束Cfbの搬送速度Vが閾値Vth以上である場合には、搬送速度Vが大きいほどプラズマ強度Cpを大きくする(図6(b)参照)。
したがって、搬送速度Vが閾値Vth未満、すなわち開繊幅Owが開繊幅上限値Owmax未満の場合(図6の制御モードI)は、設定される搬送速度Vが大きくなるほど開繊幅Owを大きくしてプラズマ照射領域を広げ、プラズマ強度Cpを変えることなく所望のプラズマ照射量Pを確保することができる(図6(c))。一方で、搬送速度Vが閾値Vth以上、すなわち開繊幅Owが開繊幅上限値Owmaxに到達している場合(図6の制御モードII)には、設定される搬送速度Vが大きいほどプラズマ強度Cpを大きくすることで(図6(b))、開繊幅Owを開繊幅上限値Owmaxに固定しつつも所望のプラズマ照射量Pを確保することができる(図6(c))。
これにより、任意に設定される搬送速度Vに応じて、所望のプラズマ照射量Pをより確実に確保することができ、高強度の高圧タンクの製造により資することとなる。特に、プラズマ照射量Pを略一定に保つように開繊幅Ow及びプラズマ強度Cpを調節しているので、搬送されている炭素繊維束Cfbに均一にプラズマ処理を施すことができ、結果として、高圧タンクの強度にかかる製品バラツキ等を抑制してより安定した高品質の高圧タンクの製造を図ることができる。
なお、本実施形態の閾値Vthは、開繊幅上限値Owmaxは、プラズマ処理におけるプラズマを照射可能な領域の大きさから定まる開繊幅Owの上限値(開繊幅上限値Owmax)に基づいて設定される。これにより、任意に設定される搬送速度Vに応じて、プラズマ照射が可能となる最大の大きさまで開繊幅Owを増加させることが許容されるので、開繊によるプラズマ照射領域の増大効果を最大限利用することができる。
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について説明する。なお、第2実施形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態では、コントローラ24は、搬送速度Vを設定(固定)し、当該搬送速度Vに対して、炭素繊維束Cfbに照射されるプラズマ照射量P及び炭素繊維束Cfbに対する樹脂含浸量Iが一定となるように開繊幅Ow、プラズマ強度Cp、及びテンションFを制御する。
ここで、樹脂含浸量Iは、下記の式(3)により定められる。
Figure 2018086808
ただし、Fはテンション、Lは繊維間距離、tiは樹脂接触時間、μは樹脂の粘度、及びDfは繊維径を意味する。
ここで、樹脂接触時間tiは、炭素繊維束Cfbに樹脂含浸装置20のメインローラ42が接触する時間である。樹脂接触時間tiは、搬送速度Vに基づいて求めることができる。すなわち、搬送速度Vに応じて、メインローラ42が炭素繊維束Cfbに接触する時間が定まるので、これを樹脂接触時間tiとすることができる。搬送速度Vが大きくなるほど、樹脂接触時間tiは短くなる。
したがって、本実施形態では、コントローラ24は、第2実施形態において予め定められた搬送速度Vに応じてプラズマ照射量Pを一定とすべく調節された開繊幅Owに合わせて、適宜、テンションFを調節することによって樹脂含浸量Iが略一定となるように調節する。
より詳細には、コントローラ24は、上記搬送速度Vに基づいて、樹脂含浸量Iが略一定となるように、テンションFの目標値(以下、「目標テンションF_t」とも記載する)を定める。そして、コントローラ24は、テンションFが目標テンションF_tに近づくように、テンション調節装置14を制御する。
図7は、設定される搬送速度Vの大きさに対する開繊幅Ow、プラズマ強度Cp、プラズマ照射量P、テンションF、及び樹脂含浸量Iの関係を示すグラフである。特に、図7(a)は開繊幅Owを表し、図7(b)はプラズマ強度Cpを表し、図7(c)はプラズマ照射量Pを表し、図7(d)はテンションFを表し、図7(e)は樹脂含浸量Iを表している。
図示のように、本実施形態でも第2実施形態と同様に、搬送速度Vが閾値Vth未満である場合には、制御モードIの制御を実行し、搬送速度Vが閾値Vth以上である場合には、制御モードIIの制御を実行する。以下、制御モードI及び制御モードIIの詳細を説明する。
(i)制御モードI
コントローラ24は、第2実施形態と同様にプラズマ照射量Pを略一定に維持する観点から、設定される搬送速度Vが大きいほど、目標開繊幅Ow_tを大きく定めて開繊幅Owを大きくする(図7(a)参照)とともに、目標プラズマ強度Cp_tは略一定値に設定して、プラズマ強度Cpを略一定に保つ(図7(b)参照)。
ここで、本実施形態では、設定される搬送速度Vが大きくなるにつれて、樹脂接触時間tiも短くなる。しかしながら、上述のようにプラズマ照射量Pを略一定に維持する観点から開繊幅Owを大きくしているので、樹脂含浸装置20のメインローラ42が接触する領域が広がる。したがって、樹脂接触時間tiが短くなっても、樹脂含浸量Iを略一定に保つことができる(図7(e)参照)。
すなわち、本実施形態では、プラズマ照射量Pを略一定に保つことを意図して搬送速度Vの増大に応じ開繊幅Owを大きくする制御によって、プラズマ照射量Pだけでなく、樹脂含浸量Iも略一定に保つことができる。なお、この場合、目標テンションF_tは略一定値に設定し、テンションFは一定に制御する(図7(b)参照)。
(ii)制御モードII
第2実施形態と同様に、コントローラ24は、搬送速度Vの変化にかかわらず、開繊幅Owを開繊幅上限値Owmaxに固定する(図7(a)参照)一方で、設定される搬送速度Vが大きいほどプラズマ強度Cpを大きくしてプラズマ照射量Pを所望の一定値に調節している(図7(c)参照)。
さらに、本実施形態では、搬送速度Vにかかわらず開繊幅Owを固定すると、設定される搬送速度Vが大きくなるにしたがい樹脂接触時間tiが短くなり樹脂含浸量Iが減少してしまう。そこで、本実施形態では、この場合も樹脂含浸量Iも減少させることなく一定に保つべく、設定される搬送速度Vが大きいほどテンションFを大きくする(図7(d))。
以上説明した制御モードI及び制御モードIIにおける制御によって、搬送速度Vの大きさにかかわらず、プラズマ照射量P及び樹脂含浸量Iの双方を、それぞれの所定の一定値に調節することができる。
以上説明した本実施形態における炭素繊維強化プラスチック構造体としての高圧タンクの製造方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、搬送される炭素繊維束Cfbの張力(テンションF)を、搬送速度Vに応じて調節する。これにより、搬送速度Vが相対的に大きく、樹脂含浸工程における樹脂接触時間tiが相対的に短い場合であっても、テンションFを大きくして、樹脂含浸量Iを大きくすることができる(式(3)参照)。結果として、搬送速度Vを相対的に大きくしても、所望の樹脂含浸量Iを確保することができる。
さらに、本実施形態においては、炭素繊維束Cfbの搬送速度Vが所定の閾値Vth未満である場合には、炭素繊維束CfbのテンションFを略一定に維持し(図7(d)の制御モードI)、搬送速度Vが閾値Vth以上である場合には、搬送速度Vが大きいほどテンションFを大きくする(図7(d)の制御モードII)。
したがって、本実施形態では、搬送速度Vが閾値Vth未満、すなわち開繊幅Owが開繊幅上限値Owmax未満の場合(図7の制御モードI)は、設定される搬送速度Vの大きさにかかわらず、炭素繊維束CfbのテンションFを略一定に維持する。一方、搬送速度Vが閾値Vth以上、すなわち開繊幅Owが開繊幅上限値Owmaxに到達している場合(図7の制御モードII)には、設定される搬送速度Vが大きいほどテンションFを大きくする(図7(d))。
これにより、任意に設定される搬送速度Vに応じて、所望の樹脂含浸量Iをより確実に確保することができ、ボイド等の発生が抑制された高強度の高圧タンクの製造により資することとなる。特に、樹脂含浸量Iを略一定に保つようにテンションFを調節しているので、搬送されている炭素繊維束Cfbへの樹脂の含浸をより好適に実行することができ、結果として、高圧タンクの強度にかかる製品バラツキ等を抑制してより安定した高品質の高圧タンクの製造を図ることができる。
さらに、本実施形態では、搬送速度Vが閾値Vth未満の場合(図7の制御モードI)には、プラズマ照射量Pを略一定に保つ観点から、搬送速度Vが大きくなるにつれて開繊幅Owが大きくなるように制御している(図7(a)参照)。したがって、この場合には、テンションFを一定に調節するだけで、テンションFに対する特別な制御を行うことなく、樹脂含浸量Iを略一定に維持することができる(図7(d)及び図7(e))。すなわち、本実施形態では、プラズマ照射量Pを略一定に保つ観点の開繊幅Owの制御によって、樹脂含浸量Iを略一定にする効果も得ることができる。
一方で、搬送速度Vが閾値Vth以上である場合(図7の制御モードII)は、開繊幅Owが開繊幅上限値Owmaxに固定されているが(図7(a))、搬送速度Vが大きくなるにつれてテンションFを大きくすることによって、開繊幅Owが開繊幅上限値Owmaxに維持された状態であっても、樹脂含浸量Iを一定に保つことができる(図7(e))。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
例えば、プラズマ処理装置18の対向電極28は、放電電極26に対して、プラズマ照射対象物である炭素繊維束Cfbを挟んで反対側に配置するようにしても良い。また、開繊についても、本実施形態の開繊装置16による空気の吹き付けに限られず、所定の開繊ローラーを用いた開繊等の他の種々の方法を採用しても良い。
さらに、本実施形態における炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法では、単繊維Cfを断面略円形状に集合させた炭素繊維束Cfbを搬送させ、これにプラズマ処理や開繊を行うようにしている。しかしながら、単繊維Cfを断面略矩形状に集合させた炭素繊維束Cfbを搬送させて、プラズマ処理や開繊を行うようにしても良い。これにより、炭素繊維束Cfbの矩形を構成する平面部分に対して、プラズマを照射させるとともに樹脂を接触させることができるので、プラズマ照射効率や樹脂含浸の効率を向上させることができる。
また、搬送速度Vに応じたテンションF、開繊幅Ow、及びプラズマ強度Cpの調節は、上記第2実施形態や第3実施形態で説明した例に限定されるものではない。例えば、搬送速度Vが閾値Vth未満である制御モードIにおいて、プラズマ照射量Pを所望の値とすべく開繊幅Owを調節する構成に代えて、又はこれとともにプラズマ強度Cp自体を変化させるようにしても良い。
さらに、第2実施形態及び第3実施形態の制御に代えて、例えば、テンションF、開繊幅Ow、及びプラズマ強度Cpの少なくとも何れか一つを固定値に設定し、コントローラ24によって搬送速度Vを調節することで、プラズマ照射量Pや樹脂含浸量Iを所望の値に制御しても良い。
また、本実施形態で説明したプラズマ照射量Pや樹脂含浸量Iを一定にする制御に限られず、状況に応じて、搬送速度Vの値に応じて変動するプラズマ照射量Pや樹脂含浸量Iの目標値を定め、当該変動する目標値にプラズマ照射量Pや樹脂含浸量Iを制御すべく、テンションF、開繊幅Ow、及びプラズマ強度Cpの少なくとも何れか1つを調節するようにしても良い。
また、第3実施形態では、第2実施形態の制御にしたがい所望のプラズマ照射量Pを得るべく調節される開繊幅Owをベースとして、樹脂含浸量Iを所望の値に調整すべくテンションFを調節した。しかしながら、逆に、樹脂含浸量Iを所望の値とすべく開繊幅Owを調節し、この調節された開繊幅Owをベースとして、所望のプラズマ照射量Pを得るべくプラズマ強度Cpを調節しても良い。
さらに、上記第2実施形態及び第3実施形態では、搬送速度Vの閾値Vth(図6又は図7参照)を、開繊幅Owがプラズマ噴射口34の幅に相当する開繊幅上限値Owmaxに達するときの搬送速度Vとして定められている。しかしながら、他の基準で閾値Vthを定めても良い。例えば、上述のように、所望の樹脂含浸量Iを得るべく開繊幅Owを調節するようにして、開繊幅Owが樹脂含浸装置20において樹脂と接触することが可能である幅の上限(メインローラ42の幅等)に達するときの搬送速度Vを閾値Vthと定めても良い。
また、上記第2実施形態及び第3実施形態では、開繊幅上限値Owmaxはプラズマ噴射口34の幅に相当する値としているが、炭素繊維束Cfbの全領域により確実にプラズマを照射する観点から、開繊幅上限値Owmaxをプラズマ噴射口34の幅よりも所定量小さく設定しても良い。
さらに、本発明の製造方法及び製造装置は、上記実施形態の高圧タンクの製造に限られず、航空機、自動車用材料、及びスポーツ用品等の他の種々の用途で用いられるCFRP構造体の製造に適用することができる。
10 高圧タンク製造装置
12 ロービング
14 テンション調節装置
14a ブレーキローラ
14b ガイドローラ
16 開繊装置
16a 空気噴射部
18 プラズマ処理装置
20 樹脂含浸装置
22 巻き取りボビン
24 コントローラ
25 交流電源
26 放電電極
28 対向電極
30 不活性ガス噴射部
32 微細孔部
34 プラズマ噴射口
40 樹脂容器
42 メインローラ
43 樹脂均し機
44a,44b ガイドローラ

Claims (10)

  1. 複数の単繊維からなる炭素繊維束を繊維長方向に搬送しながら樹脂を含浸させ、含浸させた前記樹脂を硬化させて成形する炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記炭素繊維束に対して開繊を実行する開繊工程と、
    前記開繊された前記炭素繊維束にプラズマ処理を施すプラズマ処理工程と、
    前記プラズマ処理された前記炭素繊維束に前記樹脂を含浸させる樹脂含浸工程と、
    を有する、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記開繊工程における開繊後の前記炭素繊維束の幅である開繊幅を、前記炭素繊維束の搬送速度に応じて調節する、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  3. 請求項2に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記開繊幅を、前記炭素繊維束の搬送速度が大きいほど大きくする、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  4. 請求項2又は3に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記プラズマ処理工程において前記炭素繊維束に照射するプラズマの強度であるプラズマ強度を、前記炭素繊維束の搬送速度に応じて調節する、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  5. 請求項4に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記プラズマ強度を、前記炭素繊維束の搬送速度の大きさにかかわらず前記炭素繊維束に照射されるプラズマ照射量が略一定に保たれるように調節する、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  6. 請求項5に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記炭素繊維束の搬送速度が所定の閾値未満である場合には、前記炭素繊維束の搬送速度が大きいほど前記開繊幅を大きくし、
    前記炭素繊維束の搬送速度が前記閾値以上である場合には、前記炭素繊維束の搬送速度が大きいほど前記プラズマ強度を大きくする、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  7. 請求項6に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記閾値は、前記プラズマ処理におけるプラズマを照射可能な領域の大きさから定まる前記開繊幅の上限値に基づいて設定される、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  8. 請求項2〜7の何れか1項に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    搬送される前記炭素繊維束の張力を、前記炭素繊維束の搬送速度に応じて調節する、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  9. 請求項8に記載の炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法であって、
    前記炭素繊維束の搬送速度が所定の閾値未満である場合には、前記炭素繊維束の張力を略一定に維持し、
    前記炭素繊維束の搬送速度が前記閾値以上である場合には、前記炭素繊維束の搬送速度が大きいほど前記炭素繊維束の張力を大きくする、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法。
  10. 複数の単繊維からなる炭素繊維束を繊維長方向に搬送しながら樹脂を含浸させ、含浸させた前記樹脂を硬化させて成形する炭素繊維強化プラスチック構造体を製造する炭素繊維強化プラスチック構造体の製造装置であって、
    搬送される前記炭素繊維束の張力を調節する張力調節装置と、
    前記炭素繊維束に対して開繊を実行する開繊装置と、
    前記開繊された前記炭素繊維束にプラズマ処理を実行するプラズマ処理装置と、
    前記プラズマ処理された前記炭素繊維束に前記樹脂を含浸させる樹脂含浸装置と、
    前記炭素繊維束の搬送速度に応じて、前記張力調節装置、前記開繊装置、及び前記プラズマ処理装置を制御するコントローラと、
    を有する、
    炭素繊維強化プラスチック構造体の製造装置。
JP2016231785A 2016-11-29 2016-11-29 炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置 Active JP6776849B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016231785A JP6776849B2 (ja) 2016-11-29 2016-11-29 炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016231785A JP6776849B2 (ja) 2016-11-29 2016-11-29 炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018086808A true JP2018086808A (ja) 2018-06-07
JP6776849B2 JP6776849B2 (ja) 2020-10-28

Family

ID=62494181

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016231785A Active JP6776849B2 (ja) 2016-11-29 2016-11-29 炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6776849B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002115173A (ja) * 2000-10-11 2002-04-19 Kobe Steel Ltd 繊維強化熱可塑性樹脂線材および同ペレットの製法
WO2003091015A1 (fr) * 2002-04-23 2003-11-06 Toray Industries, Inc. Pre-impregne, procede de fabrication et article moule
JP2012240317A (ja) * 2011-05-20 2012-12-10 Toray Ind Inc 引抜成形品の連続製造方法
JP2013511465A (ja) * 2009-11-23 2013-04-04 アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー 炭素‐炭素複合材料におけるcnt浸出繊維
WO2014142109A1 (ja) * 2013-03-12 2014-09-18 倉敷紡績株式会社 繊維強化樹脂用繊維及びその製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002115173A (ja) * 2000-10-11 2002-04-19 Kobe Steel Ltd 繊維強化熱可塑性樹脂線材および同ペレットの製法
WO2003091015A1 (fr) * 2002-04-23 2003-11-06 Toray Industries, Inc. Pre-impregne, procede de fabrication et article moule
JP2013511465A (ja) * 2009-11-23 2013-04-04 アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー 炭素‐炭素複合材料におけるcnt浸出繊維
JP2012240317A (ja) * 2011-05-20 2012-12-10 Toray Ind Inc 引抜成形品の連続製造方法
WO2014142109A1 (ja) * 2013-03-12 2014-09-18 倉敷紡績株式会社 繊維強化樹脂用繊維及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6776849B2 (ja) 2020-10-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102373111B1 (ko) 섬유 복합 재료를 제조하기 위한 방법 및 장치
US10889070B2 (en) Composite material including unidirectional continuous fibers and thermoplastic resin
KR101449204B1 (ko) 연속 탄소섬유 강화 열가소성 프리프레그의 제조 방법
DK3019330T3 (en) PROCEDURE FOR MANUFACTURING A REINFORCEMENT BAR
JP6821922B2 (ja) 強化繊維中に樹脂を含浸させる装置および強化繊維中に樹脂を含浸させる方法。
JP6210088B2 (ja) タンクの製造方法、および、タンクの製造装置
JP6828905B2 (ja) Smc製造方法及びその製造装置
KR101776383B1 (ko) 복합재 보강멤버 제조장치 및 제조방법
JP6099039B2 (ja) 複合容器の製造方法
JP2016011403A (ja) 一方向性繊維強化テープ状複合材の製造方法、製造装置及び当該テープ状複合材を使用したランダムシートの製造方法
JP6958624B2 (ja) 炭素繊維複合素材の製造方法、並びに炭素繊維複合素材の製造装置
JP6776849B2 (ja) 炭素繊維強化プラスチック構造体の製造方法及び製造装置
US10780656B2 (en) Device for impregnation and curing of continuous fibers with resin
JP5056986B2 (ja) 繊維複合材料の製造方法及び製造装置
WO2018008431A1 (ja) 引抜成形材料の製造方法及び引抜成形材料の製造装置
JP5925325B2 (ja) 風車翼の製造方法
JP5667484B2 (ja) 開繊繊維の製造法、製造装置
US11401394B2 (en) Method for altering polymer properties for molding of parts
JP7209707B2 (ja) 材料の巻き出し
JP2004223743A (ja) 衝撃吸収体の製造方法
CN110641040A (zh) 由非卷曲织物形成复合制品的方法
JP2003245985A (ja) 成形体の連続製造方法
JP2012251043A (ja) 糸条、シート状の強化繊維基材、プリフォーム及び繊維強化複合材料の製造方法
JP2015214087A (ja) タンクの製造方法
JP2006035663A (ja) 未含浸強化繊維の織布の裁断方法およびその裁断処理装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190911

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200520

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200616

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200721

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200908

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200921

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6776849

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151