JP5667484B2 - 開繊繊維の製造法、製造装置 - Google Patents
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Description
本発明により、所定の開繊幅への調整および目スキ・ムラなどの品位向上を得て、開繊が提供可能となる。
本発明は繊維束を一定の張力で搬送しつつ、繊維走行方向に対して60°〜120°を成す交差方向で繊維束に揺動作用を付与することにより繊維束を開繊する方法であって、揺動は多段階の揺動機構によりなされ、揺動機構群のうち少なくとも1つの揺動機構対間に120°〜240°の位相差が存在することを特徴とする開繊繊維の製造方法である。
本発明の開繊繊維の製造法に適用可能な繊維の種類にとくに限定はないが、繊維強化複合材料に用いられる強化繊維束を得るのが本発明の主な目的の1つであるので、炭素繊維、ガラス繊維などの無機系繊維およびアラミド繊維などの有機系繊維が好ましく挙げられる。なかでも炭素繊維が好ましく挙げられ、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。PAN系炭素繊維は、平均直径5〜10μmのものを使用できる。PAN系炭素繊維は、1000〜50000本の単繊維が繊維束となったものを使用できる。
用いられる繊維束の厚みにとくに限定はないが、炭素繊維の場合は0.05〜0.5mmが好ましい。
用いられる繊維束の断面形状にとくに限定はなく、長方形、円形および楕円が挙げられる。
繊維はサイジング剤が付着されたものを用いることが好ましく、サイジング剤は繊維100重量部に対し、0超〜10重量部であることが好ましい。
繊維束は、装置に供給され、フィーダー(前部フィーダー)により制御/搬送され、開繊が施された後、フィーダー(後部フィーダー)から引き取られる。繊維束の張力は搬送速度や引取テンション、搬送装置中に繊維束を掛け渡す接触・通過手段の形状、抱き角により適宜制御できる。本発明方法は揺動機構機構を有するので、諸条件を調整し、所望の張力にて搬送することが可能であり、一定の張力にての開繊〜搬送が可能である。
搬送機構中の繊維束との接触・通過手段の形状はとくに限定はないが、円柱形状のピン(以下ピンということがある)が好ましく挙げられる。また繊維束は複数用いて多錘で供給しても良い。
本発明の開繊繊維の製造方法では、揺動機構により、円柱形状のピン(以下揺動ピン)を用いて繊維走行方向に対して60°〜120°、好ましくは80°〜100°を成す交差方向で繊維束に揺動作用を付与し、繊維束を開繊する。揺動機構は製造装置中、第1揺動機構、第2揺動機構といったように多段階となるように複数設ける。繊維走行方向に対する交差方向の設定は、複数設けられた揺動機構で同一でも異なっても良い。ここで多段の揺動機構により構成される揺動工程の上流側は拡幅工程であり、下流側は仕上げ工程となる。設けられた揺動機構群のうち、少なくとも1つ以上の揺動機構対間で位相差および/または振幅差を設けることが好ましい。なかでも、上記拡幅工程と仕上げ工程の境界に位置する揺動機構対間において、位相差および/または振幅差を設けることが好ましい。
このように揺動機構を適宜配置し、接触・通過する繊維束に揺動を付与することで繊維束の開繊幅を制御することができる。
本発明は上記の開繊繊維の製造方法に用いられる装置も含む。装置としては具体的には1)給糸機構、2)繊維束を解舒及び搬送する機構と揺動機構とからなる開繊機構、3)巻取り機構とを含む。
給糸機構としては、繊維束が巻き付けられた給糸体、又は給糸体を多数装備した給糸クリールが具体的に挙げられる。開繊機構は、上記に述べたとおりである。巻取り機構は幅方向に展延開繊された繊維束又は繊維束群を巻き取る機能を有するものである。
また、複数の繊維束を投入して一括で開繊処理を行なう場合は、誘導位置決めピン、固定ピン、揺動ピンをそれぞれ軸方向に、投入する繊維束本数および開繊幅に応じて延長する事により、容易に対応出来る。
本発明で得られる開繊繊維は、繊維束を幅方向に展延・開繊されて得られたものである。開繊後の形状はシート状が好ましく挙げられる。シート状の場合、開繊シートと呼ぶこともできる。繊維が炭素繊維の場合、得られた開繊繊維の目付けは20〜100g/m2が好ましい。繊維が炭素繊維で、シート形状の場合の、好ましい開繊シートの厚みは0.01〜0.2μmである。開繊シートの幅にとくに限定はなく、所望の幅のものを、供給する繊維束の量の選択、あるいは複数の繊維束を投入する多錘化により得ることができる。
このように得られた開繊繊維および/または開繊シートは繊維強化複合材料に用いることができる。
[実施例1]
以下のようにして、幅30mmの開繊繊維を得る目的で運転した。図1で、給糸体1から連続的に搬送されてくる繊維束1−1は、本実施形態においては、直径7μmの炭素繊維24,000本をウレタン樹脂系のサイジング剤で、幅10mm、厚み0.15mmの偏平状態に集束させたものが開繊対象に選択されている。上記の繊維束1条を使用し、誘導位置決めピン4の上流側で繊維束張力0.3kgfになるよう調整し、繊維束を5m/分で搬送した。搬送された炭素繊維束を、第1揺動装置にて直径10mmの丸棒形状のピンを、図3に示すように繊維走行方向に対して90°を成す角度で、周波数5Hz・振幅±20mmの条件で接触通過させることで拡幅を促した。固定ピンを1本介した後、第2揺動装置にて炭素繊維束の走行方向に対して90°を成す角度で直径10mmのピンを、第1揺動装置のピンに対して180°の振動位相差・周波数5Hz・振幅±5mmで走行する炭素繊維束を接触通過させた。開繊条件、および得られた開繊繊維の結果を表1にまとめた。繊維束内の目スキ・ムラは解消できた。得られた開繊繊維品位評価は、目スキ・ムラおよび毛羽なしを◎、目スキ・毛羽は無いが多少のムラが認められる状態を○、目スキ・ムラおよび毛羽有りを×とし、表中に記載。
実施例1における開繊条件のうち、第2揺動装置における振幅を±10mm(実施例2)、±15mm(実施例3)、±20mm(実施例4)の各条件にて実施例1と同様に炭素繊維束の開繊を実施した。開繊条件、および得られた開繊繊維の結果を表1にまとめた。
実施例1と実施例2〜4の比較において、第1揺動と第2揺動の振動周波数、および第1揺動と第2揺動との振動位相差を同条件で、第2揺動の振幅(第1揺動と第2揺動との振幅差)のみ変化させて狙いの開繊幅30mmを得ており、得られたデータの変動係数および開繊繊維の品位共に許容の範囲であった。
開繊条件のうち、第2揺動装置における振幅を±20、第1揺動と第2揺動の振動位相差を、0°(比較例1)、90°(比較例2)および270°(比較例3)の各条件にて炭素繊維束の開繊を実施した。開繊条件、および得られた開繊繊維の結果を表1にまとめた。
前述の振幅差による影響に対して、第1揺動と第2揺動の振動位相差を0°、90°、180°、270°の影響は大きく、位相差180°以外の振動位相差では開繊幅の制御が困難である上に、品位の低下が顕著に現れていた。
第2揺動が無く、第1揺動のみで振動周波数を5Hz(比較例4)、10Hz(比較例5)および15Hz(比較例6)の各条件で炭素繊維束の開繊を実施して、得られた開繊繊維束の開繊幅および品位は表1に示す通りであった。
揺動装置1台で開繊を行なった場合、開繊幅の制御が困難であり、変動係数も大きく、目スキ・ムラおよび毛羽といった品位も非常に低下した。
1−1 繊維束および繊維束群
2 搬送供給機構
3 前部フィーダー
4 誘導位置決めピン
5 固定ピン
6 第1揺動ピン
7 固定ピン
8 第2揺動ピン
9 固定ピン
10 後部フィーダー
11 開繊繊維
Claims (5)
- 繊維束を一定の張力で搬送しつつ、繊維走行方向に対して60°〜120°を成す交差方向で繊維束に揺動作用を付与することにより繊維束を開繊する、開繊繊維の製造方法であって、揺動は多段階の揺動機構によりなされ、揺動機構群のうち少なくとも1つの揺動機構対間に120°〜240°の振動位相差が存在し、揺動機構が揺動ピンであり、揺動作用の付与が繊維束と揺動ピンとの接触により成される製造方法。
- 多段階の揺動機構で構成される工程において、揺動機構群のうち少なくとも1つの揺動機構対間に振幅差を設ける請求項1に記載の製造方法。
- 多段階の揺動機構の振動周波数が同じである請求項1または2に記載の製造方法。
- 多段階の揺動機構の振動周波数および振動位相差が同じである請求項1または2に記載の製造方法。
- 1)給糸機構、2)繊維束を解舒及び搬送する機構と多段階の揺動機構とからなる開繊機構、3)巻取り機構とを含む開繊繊維製造装置であって、揺動機構が揺動ピンである開繊繊維製造装置。
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