以下、本発明にかかる実施形態1,2のバンド締付具について、図面を参照して説明する。なお、下記に説明する実施形態はあくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
実施形態1.
実施形態1のバンド締付具1は、合成樹脂等からなるもので、図1〜図5に示すように、回動レバー11と、ベース部12とから構成され、図12〜図17等に示すように樹脂バンド2を電柱3等の対象物へ締付ける際に使用するものである。
<回動レバー11の構成>
回動レバー11は、図1〜図8等に示すように、基端部側にバンド巻付部11aおよび回動軸部11b1,11b2を有する一方、先端部側に係止部11c,11cを有し、回動軸部11b1,11b2を中心とした回動により図1〜図5に示す大開状態からほぼ180度回転して、図16や図17等に示すロック(閉止)状態になる。
尚、大開状態には、回動レバー11がベース部12に対し180度前後の最大限開いた状態と、その最大限開いた状態から多少の角度だけ回動する遊びがあっても良い。
バンド巻付部11aには、図3(b)や図7(b)等に示すように、樹脂バンド2の一端が通るバンド挿通孔11a1が設けられており、バンド挿通孔11a1の横および縦方向の幅は、樹脂バンド2の断面の横および縦方向の幅より若干大きく、樹脂バンド2が円滑に挿入できる大きさを確保している。
尚、バンド挿通孔11a1を介して回動レバー11の大開状態における上側、すなわち図3(b)および図7(b)における上側を第1バンド巻付部11a2、回動レバー11の大開状態における下側、すなわち図3(b)および図7(b)における下側を第2バンド巻付部11a3と称する。
バンド巻付部11aの第1バンド巻付部11a2には、図6(a)や図8(a)等に示すように、樹脂バンド2の長手方向に対し複数の第1凸条部11a21aおよび第1凹条部11a21bが所定間隔で平行に延びる第1凹凸条部11a21が設けられている。
これにより、第1バンド巻付部11a2の第1凹凸条部11a21により、回動レバー11を閉じた際、樹脂バンド2がバンド引張部11a31に引っ張られて樹脂バンド2に大きな引張力が作用し、樹脂バンド2は第1凹凸条部11a21に押圧されることになる。
そのため、樹脂バンド2を回動レバー11に通してベース部21に対しロック(全閉)状態にした際には、樹脂バンド2は第1凹凸条部11a21に押圧されて第1凹凸条部11a21の凹凸形状に変形されるので、芯線2b周囲の樹脂部材2aが芯線2bをさらに強固に挟持ないしは接着させる。
その結果、回動レバー11の第1凹凸条部11a21の第1凸条部11a21aと、ベース部12の巻付部回動用凹部12dによって樹脂バンド2を強力に挟持しても、芯線2b周囲の樹脂部材2aが千切れて芯線2bから樹脂部材2aが分離することを防止でき、樹脂バンド2を確実に締付けることができると共に、再度、バンド締付け作業を行うことが減少するので、作業性を向上させることができる。
また、図7(b)等に示すように、第1凹凸条部11a21が形成された第1バンド巻付部11a2のバンド出口側端部11a22は、第1バンド巻付部11a2のバンド入口側端部11a23や、第2バンド巻付部11a3のバンド出口側端部11a32やバンド入口側端部11a33よりも鋭角に形成されている。
また、第1バンド巻付部11a2のバンド入口側端部11a23は、図7(b)に示すように第2バンド巻付部11a3のバンド入口側端部11a33よりも回動レバー11の先端部側へ突出させている。
また、第2バンド巻付部11a3における回動レバー11の先端部側には、回動レバー11を開放状態からロック状態へ回動させた際に樹脂バンド2に摺接しつつそのバンド引張部分を回動レバー11の先端部側に移動させ、樹脂バンド2の一端を引っ張るバンド引張部11a31が設けられている。
ここで、バンド引張部11a31は、図6(b)等に示すように、その幅方向(回動レバー11の短手方向または回動軸部11b1,11b2の回動軸方向)の中央から両側に向かうに従って回動レバー11の先端部側に位置するように、すなわちその幅方向の中央が両側より回動軸部11b1,11b2の回動軸側に位置するように平面視湾曲形状に形成されている。ただし、本発明では、このバンド引張部11a31は、平面視湾曲形状に形成されている必要はなく、平面視湾曲形状は任意形状で、平面視直線形状でも良いし、平面視湾曲形状に限らず、平面視V形状等に形成しても良い。
また、回動レバー11の回動軸部11b1,11b2は、図6〜図8に示すように回動軸部11f1の外径r1を回動軸部11f2の外径r2よりも小さくして、左右で外径を変えて、ベース部12に対し回動レバー11の表裏を間違えて装着することを確実に防止している。そのため、回動レバー11の回動軸部11b1,11b2が嵌るベース部12の回動軸支持部12a1,12a2の軸受け孔12a11,12a21の内径も回動軸部11b1,11b2の外径に応じて大きさを変更している。
また、回動レバー11の先端部側には、上述したように係止部11c,11cが設けられている。
係止部11c,11cは、回動レバー11の先端の側面から側方に突出して設けられており、後述するベース部12の被係止孔12b1,12b1に係止する。
ここで、この係止部11c,11cは、それぞれ、後述する図19に示すようにベース部12の被係止孔12b1,12b1の被係止用斜面部12b11,12b11に係止するように回動レバー11をベース部12に閉じた際に内側から外側に向かって徐々に上がっていくように傾斜した係止用斜面部11c1,11c1と、係止部11c,11cが被係止孔12b1,12b1に係止し易くなるように係止用斜面部11c1,11c1よりも傾斜した案内用斜面部11c2,11c2とが設けられている。
そのため、回動レバー11をロック(全閉)状態に閉じる際は、係止部11c,11cの係止用斜面部11c1,11c1によって係止部11c,11cがベース部12の被係止孔12b1,12b1に係止し易い一方、回動レバー11をロック(全閉)状態に閉じた後は、係止部11c,11cの徐々に上がっていくように傾斜した係止用斜面部11c1,11c1が、それぞれ、ベース部12の被係止部12b,12bの被係止用斜面部12b11,12b11に係止されるので、ロック状態を確実に維持することができる。つまり、係止部11c,11cは、閉め易く、かつ、取外し難い形状に構成されている。なお、係止部11c,11cおよび被係止孔12b1の形状も任意で良い。
また、回動レバー11の先端部とバンド巻付部11aとの間には、回動レバー11の軽量化や原材料費を抑えるために大きい開口の中央開口部11eが形成されていると共に、その中央開口部11eを第1中央開口部11e1、第2中央開口部11e2、および第3中央開口部11e3の3つに分割するように所定間隔離して2つのブリッジ部、すなわち主ブリッジ部11f1および福ブリッジ部11f2が左右の両側面に連結して設けられている。
主ブリッジ部11f1は、後述するようにベース部12における巻付部回動用凹部12dのバンド出口側に設けられたバンド曲げ挟持用凸部12e(図10(b)等参照。)とバンド巻付部11aとの間の第1中央開口部11e1に突出して、バンド曲げ挟持用凸部12eと主ブリッジ部11f1およびバンド巻付部11aとの間で樹脂バンド2を曲げつつ挟持する。
これにより、主ブリッジ部11f1を設けない場合と比較してより確実に樹脂バンド2を締付けることが可能となり、作業性を向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、主ブリッジ部11f1におけるバンド巻付部11a側の側面には、図6(a),(b)や、図7(b)、図8(a)等に示すように、複数の第2凸条部11f3aおよび第2凹条部11f3bが所定間隔で樹脂バンド2の長手方向に対し平行に延びる第2凹凸条部11f3を設けている。
これにより、樹脂バンド2を回動レバー11に通してベース部21に対しロック(全閉)状態にした際には、第2バンド巻付部11a2の第2凹凸条部11f3と、後述するベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eの第3凹凸条部12e2(図9(a)や図11(a)等参照。)との間で樹脂バンド2が挟まれ、第2凹凸条部11f3と第3凹凸条部12e2とによっても凹凸形状に変形されるので、芯線2b周囲の樹脂部材2aが芯線2bをさらに強固に挟持ないしは接着させる。
その結果、回動レバー11の主ブリッジ部11f1の第2凸条部11f3aと、ベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eの第3凹凸条部12e2との間によって樹脂バンド2を強力に挟持しても、芯線2b周囲の樹脂部材2aが千切れて芯線2bから樹脂部材2aが分離することを防止できるので、樹脂バンド2をより確実に締付けることができると共に、再度、バンド締付け作業を行うことが減少し、作業性を向上させることができる。
また、回動レバー11の先端部には、図2や図4、図5、図6等に示すように上面の中央が両側よりも盛り上がった盛上り部11gが設けられている。
これにより、盛上り部11gを設けない場合と比較して、より強く回動レバー11の先端部を押圧して回動レバー11の先端部側の係止部11c,11cを、ベース部12の先端側の被係止孔12b1,12b1に係止することが可能となり、より確実に樹脂バンド2を締付けることが可能となり、作業性を向上させることができる。
また、回動レバー11の左右両側における図7(a),(b)の下側、すなわちベース部12に対し回動レバー11をロック(全閉)状態にした際の上側には、それぞれ、その面から立設した補強用リブ11hを設けている。そのため、回動レバー11の強度が向上するので、樹脂バンド2をロック(閉止)状態にする際、樹脂バンド2により回動レバー11に過大な外力が作用しても、回動レバー11が変形したり、破損することを防止することができる。
<ベース部12の構成>
ベース部12は、図9〜図11に示すように、回動レバー11の回動軸部11b1,11b2(図6(a),(b)等参照。)を回動可能に支持する回動軸支持部12a1,12a2と、回動レバー11の係止部11c,11cが係止する被係止部12b,12bと、バンド係止孔12cと、巻付部回動用凹部12dと、バンド曲げ挟持用凸部12eと、状態切替用凸部12fとを有すると共に、バンド係止孔12cにバンド係止部12c1と引張力逃し部12c2とを設けている。
回動軸支持部12a1,12a2は、当該ベース部12後方の左右両側から後方側壁を立設して設けられており、回動レバー11の両側から突出した回動軸部11b1,11b2がそれぞれ回転可能に嵌る軸受け孔12a11,12a21と、回動軸部11b1,11b2それぞれ軸受け孔12a11,12a21まで案内する案内溝部12a12,12a22が設けられている。
また、上述したようにベース部12に対する回動レバー11の表裏間違えての装着を防止できるよう回動レバー11の回動軸部11b1,11b2の外径r1,r2(図8(b)参照。)の大きさを変えているため、ベース部12の回動軸支持部12a1,12a2の軸受け孔12a11,12a21の内径および案内溝部12a12,12a22の溝幅も回動軸部11b1,11b2の外径に応じて大きさを変更している。
被係止部12b,12bは、当該ベース部12の前方両側から前方側壁を立設して設けられており、その前方側壁には、後述する図19等に示すように回動レバー11の係止部11c,11cが係止する被係止孔12b1,12b1と、被係止孔12b1,12b1まで回動レバー11の係止部11c,11cを案内するよう傾斜した係止部案内用斜面部12b2,12b2とが設けられている。
被係止孔12b1,12b1には、それぞれ、後述する図19等に示すように係止部11c,11cの係止用斜面部11c1,11c1の傾斜角度に合わせた被係止用斜面部12b11,12b11と、ほぼ水平で傾斜していない水平面部12b12,12b12とが形成されている。
バンド係止孔12cには、図9(a),(b)に示すように、バンド係止部12c1と、一対の引張力逃し部12c2とが設けられていえる。
バンド係止部12c1は、図9(a),(b)に示すように、樹脂バンド2の幅とほぼ同じ幅の長さを備えており、樹脂バンド2の他端が折り返されて当接する。
一対の引張力逃し部12c2,12c2は、図9(a),(b)に示すように、ベース部12に開設されたバンド係止孔12cの図上、左側、すなわち被係止部12b,12b側の内側面と、バンド係止部12c1との間を連結するように設けられており、回動レバー11を閉めて回動レバー11の係止部11c,11cがベース部12の被係止部12b,12bに係止する際、樹脂バンド2にかかる過大な引張力によって折れ曲るよう、互いに内側に向かって曲げられたV字形状で、かつ、左右方向に一定間隔を空けて構成されている。
そのため、一対の引張力逃し部12c2,12c2は、バンド係止部12c1に係止された樹脂バンド2に過大な引張力がかかった場合、V字形状の変曲点等で折れ曲がり、樹脂バンド2に作用している過大な引張力を弱めることができる。
巻付部回動用凹部12dは、樹脂バンド2が巻付けられたバンド巻付部11aの回動を許容するようバンド巻付部11aとの間に隙間を形成するもので、バンド巻付部11aの断面形状や樹脂バンド2の厚さ等に応じて、樹脂バンド2が巻付けられたバンド巻付部11aが大開状態からロック(閉止)状態まで回動できるようにほぼ断面湾曲形状に形成されている。
バンド曲げ挟持用凸部12eは、巻付部回動用凹部12dのバンド出口側に設けられた凸部であり、回動レバー12を閉めてロック(閉止)状態にした際には、後述する図17(b)等に示すように回動レバー11の中央開口部11eにおける主ブリッジ部11f1とバンド巻付部11aとの間の第1中央開口部11e1に突出して、主ブリッジ部11f1およびバンド巻付部11aとの間で樹脂バンド2を曲げつつ挟持する。
ここで、バンド曲げ挟持用凸部12eにおけるバンド入口側面、すなわち巻付部回動用凹部12dのバンド出口側には、図9(a)や図10(b)、図11(b)等に示すように、バンド巻付部11aにおける第1凹凸条部11a21が設けられた第1バンド巻付部11a2側に設けられた段部との間で樹脂バンド2を挟持するベース側段部12e1が形成されている。
また、バンド曲げ挟持用凸部12eにおけるバンド出口側面、すなわち被係止部12b,12b側側面には、図9(a)や図11(a)等に示すように、複数の第3凸条部12e2aおよび第3凹条部12e2bが所定間隔で樹脂バンド2の長手方向に対し平行に延びる第3凹凸条部12e2が設けられている。
これにより、樹脂バンド2を通した回動レバー11をベース部21に対しロック(全閉)状態にした際には、後述する図17(b)等に示すように回動レバー11の主ブリッジ部11f1の第2凹凸条部11f3と、ベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eの第3凹凸条部12e2との間で樹脂バンド2を挟むことにより、樹脂バンド2が凹凸形状に変形するので、芯線2b周囲の樹脂部材2aが芯線2bをさらに強固に挟持ないしは接着させることができる。
そのため、回動レバー11の主ブリッジ部11f1と、ベース部12の第3凹凸条部12e2との間で樹脂バンド2を挟んだ場合でも、芯線2b周囲の樹脂部材2aが千切れて芯線2bから樹脂部材2aが分離することを防止できるので、樹脂バンド2をより確実に締付けることができると共に、再度、バンド締付け作業を行うことが減少するので、作業性を向上させることができる。
状態切替用凸部12fは、バンド曲げ挟持用凸部12eに対向するようにベース部12の後端部に設けられた凸部であり、ベース部12に装着された回動レバー11を回転させた際、回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド引張部11a31におけるバンド挿通孔11a1から離間した係合用端部11a34に係合して回動レバー11の大開状態と樹脂バンド2を仮止めする仮止め状態等とを切替えるための部分である。
つまり、状態切替用凸部12fは、回動レバー11の係合用端部11a34を境界部として、バンド引張部11a31側にある場合は、バンド入口側の側面は回動レバー11がベース部12に対し大きく開いた大開状態を保持する。
その一方、状態切替用凸部12fが回動レバー11のバンド引張部11a31側に位置する大開状態から、回動レバー11を閉める方向に回動して、回動レバー11の係合用端部11a34が状態切替用凸部12fを乗り越えてバンド引張部11a31の反対側へ移動すると、回動レバー11の第1バンド巻付部11a2におけるバンド出口側の端部11a22と、ベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eとの間で樹脂バンド2を挟持して樹脂バンド2を仮止めする仮止め状態になる。
<樹脂バンド2の構成>
樹脂バンド2は、図16(b)等に示すようにポリ塩化ビニル(PVC)等の軟質合成樹脂からなる樹脂部材2aの中に、アラミド繊維やガラス繊維、ワイヤー(鋼線)等の伸びがほとんどなく、引張耐力が大きい芯線2bを複数本内蔵させたバンドである。
<バンド締付具1の使用方法>
次に、このバンド締付具1の使用方法について、図12〜図17を参照して説明する。
まず、図12(a),(b)に示すように、樹脂バンド2の他端がベース部12のバンド係止孔12cのバンド係止部12c1に係止されたバンド締付具1を電柱3の側面に当てた状態で、樹脂バンド2の一端をその電柱3の周面に沿って一周させ、続いて大開状態の回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド挿通孔11a1のバンド入口側からベース部12の表面に向かって挿入する。
その際、図12(a),(b)に示すように、第2バンド巻付部11a3のバンド引張部11a31よりも第1バンド巻付部11a2のバンド入口側端部11a23の方が回動レバー11の先端部側へ突出しているので、樹脂バンド2の先端部がバンド引張部11a31の湾曲面に当接すると、第1バンド巻付部11a2のバンド入口側端部11a23の入口内側面、すなわちバンド挿通孔11a1におけるバンド入口側11a11の内側面に当接して、バンド挿通孔11a1の中へ確実かつ迅速に案内することになり、バンド挿入作業の作業性を向上させることができる。
そして、図13(a),(b)に示すように、樹脂バンド2の一端を回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド挿通孔11a1の中へ挿通させて、その先端部を所定長さ突出させた後、回動レバー11を、図13(a)に示す大開状態から矢印α方向に回動させる。
尚、樹脂バンド2の一端を回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド挿通孔11a1に通す回動レバー11の大開状態では、図12や図13に示すように、ベース部12の後端の状態切替用凸部12fは、回動レバー11の係合用端部11a34に係合してバンド引張部11a31側に位置しており、回動レバー11の大開状態を保持している。
そのため、実施形態1のバンド締付具では、回動レバー11がベース部12に対し大きく開いた大開状態で回動レバー11およびベース部12が安定するので、この点でもバンド挿入作業の作業性を向上させることができる。
その結果、回動レバー11をベース部12に対し大開状態にして樹脂バンド12をバンド挿通孔11a1に通す際、状態切替用凸部12fと回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド引張部11a31によって大開状態に保持されるため、作業者のバンド挿通作業が容易になる。
次に、回動レバー11を図14(a),(b)に示すように大開状態から60度ほど回転させると、状態切替用凸部12fが回動レバー11のバンド引張部11a31側に位置する大開状態から、図15に拡大して示すように、回動レバー11の係合用端部11a34が状態切替用凸部12fを押圧して状態切替用凸部12fを押曲げて状態切替用凸部12fを乗り越え、バンド引張部11a31の反対側へ移動する。
すると、回動レバー11の第1バンド巻付部11a2におけるバンド出口側の端部11a22と、ベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eとの間で樹脂バンド2を挟持して樹脂バンド2を仮止めする仮止め状態になる。
また、この樹脂バンド2の仮止め状態では、図15等に拡大して示すように、回動レバー11の係合用端部11a34が状態切替用凸部12fを乗り越えているため、樹脂バンド2の引張力によって回動レバー11に開く方向、すなわち戻る方向へ力が作用しても、所定値以上の引張力が作用しなければ回動レバー11は開くことはない。
その結果、仮止め機能を有さない従来技術と比較すると、実施形態1のバンド締付具1は、樹脂バンド2を仮止めできると共に、回動レバー11の戻りを防止する仮止め機能を有するので、樹脂バンド2の仮止め状態で回動レバー11から手を離して樹脂バンド2の高さを変えたり、さらには再度回動レバー11を開いて樹脂バンド2を再度締付けることが可能となり、この点でも作業性を向上させることができる。
尚、この仮止め状態では、樹脂バンド2の他端がベース部12のバンド係止孔12cのバンド係止部12c1に係止されているが、まだ仮止め状態で、樹脂バンド2にかかっている引張力がまだ大きくないため、図14(a)に示すようにバンド係止部12c1を支持している一対の引張力逃し部12c2,12c21は折れ曲がらない。
そして、図14(a),(b)に示す樹脂バンド2および回動レバー11の仮止め状態からさらにα方向に回動レバー11を回動させると、樹脂バンド2は第2バンド巻付部11a3のバンド引張部11a31に巻付けられながら引っ張られ、引張力が次第に増加していく。
ここで、第2バンド巻付部11a3のバンド引張部11a31は、その幅方向の両側より中央部の方が回動軸部11b1,11b2の回転中心側に窪んだ湾曲形状に形成されているため、樹脂バンド2の幅方向の中央部は、その両側よりも短い半径でバンド巻付部11aを回ることになる。そのため、バンド引張部11a31に摺接して引っ張られる樹脂バンド2の幅方向の両側では、引張力が強く作用するものの、樹脂バンド2の幅方向の中央部では、両側ほどの引張力は作用しないので、伸びがほとんど無いバンドでもバンド締付具1全体を大型化させず、また過大な力も必要とせずに電柱3等の対象物に巻き付け固定することができる。
そして、図14(a),(b)に示す仮止め状態から回動レバー11をさらに回動させて樹脂バンド2の引張力が増大しながら、図16(a),(b)に示すように回動レバー11先端部の係止部11c,11cがベース部12の被係止孔12b1に係止すると、回動レバー11がベース部12にロック(閉止)されることになる。
ロック(閉止)状態では、図16(a),(b)に示すように樹脂バンド2はバンド巻付部11aへの巻き付き量が最大となり、しかも、図17(a),(b)に示すように樹脂バンド2を引っ張っているバンド引張部11a31がベース部12の後端側から先端側へ移動するため、樹脂バンド2にかかる引張力は最大となって、確実に樹脂バンド2を電柱3に締付けることが可能となる。
そのため、この樹脂バンド2のロック(閉止)状態、およびその直前では、樹脂バンド2の他端がベース部12のバンド係止孔12cのバンド係止部12c1に係止されており、樹脂バンド2にかかっている引張力が非常に大きくなるため、図18に示すようにバンド係止部12c1を支持している一対の引張力逃し部12c2,12c21が折れ曲がり、樹脂バンド2にかかる過大な引張力を弱めることができる。
また、この樹脂バンド2のロック(閉止)状態では、図17(a),(b)に示すように樹脂バンド2が回動レバー11のバンド巻付部11aに巻き付けられるだけでなく、回動レバー11の第1バンド巻付部11a2のバンド出口側の端部11a22と、ベース部12の状態切替用凸部12fとの間や、第1バンド巻付部11a2のレバー側段部11a24とバンド曲げ挟持用凸部12eのベース側段部12e1との間、さらには回動レバー11の主ブリッジ部11f1とベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eとの間等で樹脂バンド2を挟持するので、樹脂バンド2が緩まないように挟持することができる。
また、図17(a),(b)に示すように回動レバー11の主ブリッジ部11f1の第2凹凸条部11f3とベース部12の第3凹凸条部12e2との間でも樹脂バンド2を挟むため、樹脂バンド2をより確実に締付けることができると共に、芯線2b周囲の樹脂部材2aが千切れて芯線2bから樹脂部材2aを分離することを防止でき、再度、バンド締付け作業を行うことが減少するので、作業性を向上させることができる。
<実施形態1のバンド締付具1の効果>
以上説明したように、実施形態1のバンド締付具1では、ベース部12のバンド係止孔12cに、樹脂バンド2の他端が係止されるバンド係止部12c1と、バンド係止孔12cにおける被係止部12b,12b側の内側面とバンド係止部12c1との間を連結する一対の引張力逃し部12c2とを設け、回動レバー11を閉めてロックする際、樹脂バンド2の他端が係止されたバンド係止部12c1を介して一対の引張力逃し部12c2,12c2に応力がかかり、引張力逃し部12c2,12c2が折れ曲がることによって樹脂バンド2にかかる過大な引張力を弱める。
そのため、実施形態1のバンド締付具1によれば、回動レバー11を回転させて樹脂バンド2を締付ける際、樹脂バンド2にかかる過大な引張力を逃がすことができるので、樹脂バンド2を構成する樹脂部材2aと芯線2bとを分離させずに樹脂バンド2を所定の締付力によって確実に締付けることが可能となり、作業性を向上させることができる。
また、一対の引張力逃し部12c2,12c2の変形によって回動レバー11にかかる過大な曲げ力も逃がすことが可能となるので、回動レバー11の強度が向上するので、樹脂バンド2をロック(閉止)状態にする際、回動レバー11が変形したり、破損することを防止することができる。
また、回動レバー11の左右両側における図7(a),(b)の下側、すなわちベース部12に対し回動レバー11をロック(全閉)状態にした際の上側には、それぞれ、その面から立設した補強用リブ11hを設けているため、この点でも、回動レバー11の強度が向上するので、樹脂バンド2をロック(閉止)状態にする際、回動レバー11が変形したり、破損することを防止することができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、回動レバー11のバンド巻付部11aには、バンド挿通孔11a1と、バンド引張部11a31と、樹脂バンド2の長手方向に対し複数の第1凸条部11a21aおよび第1凹条部11a21bが所定間隔で平行に延びる第1凹凸条部11a21を設けため、樹脂バンド2をバンド挿通孔11a1に通して回動レバー11を回動させた際には、樹脂バンド2がバンド引張部11a31により引っ張られ、樹脂バンド2にかかる引張力が漸次大きくなり、樹脂バンド2がバンド巻付部11aの第1凹凸条部11a21bに押付けられることになる。
そのため、図16(b)に示すように第1凹凸条部11a21の第1凸条部11a21aが樹脂バンド2の樹脂部材2aに食い込み、樹脂部材2aをその中に収容されている芯線2bに押付け、樹脂部材2aが芯線2bを強固に挟持ないしは接着する。
その結果、回動レバー11のバンド巻付部11aやバンド引張部11a31によって樹脂バンド2に引張力を付与しても、芯線2b周囲の樹脂部材2aが千切れて芯線2bから樹脂部材2aが分離し難くなるので、樹脂バンド2を確実に締付けることができると共に、再度、バンド締付け作業を行うことが減少し、作業性を向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、図17(a),(b)に示すように回動レバー11の主ブリッジ部11f1の第2凹凸条部11f3とベース部12の第3凹凸条部12e2との間でも樹脂バンド2を挟むため、樹脂バンド2をより確実に締付けることができると共に、芯線2b周囲の樹脂部材2aが千切れて芯線2bから樹脂部材2aを分離することを防止でき、再度、バンド締付け作業を行うことが減少するので、作業性を向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、第1バンド巻付部11a2のバンド入口側端部11a23は、図7(a),(b)に示すようにバンド引張部11a31が設けられた第2バンド巻付部11a3のバンド入口側端部11a33よりも回動レバー11の先端部側へ突出して形成されている。
そのため、図12(a),(b)に示すように回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド挿通孔11a1のバンド入口側11a11から樹脂バンド2の一端を挿入する際、樹脂バンド2の先端部がバンド引張部11a31に当接すると、樹脂バンド2の先端部をバンド挿通孔11a1のバンド入口側11a11に案内するので、バンド挿通孔11a1のバンド入口側11a11へ確実かつ簡単に挿入することが可能となり、この点でも作業性を向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、第1凹凸条部11a21が形成された第1バンド巻付部11a2のバンド出口側端部11a22は、第1バンド巻付部11a2のバンド入口側端部11a23や、第2バンド巻付部11a3のバンド出口側端部11a32やバンド入口側端部11a33よりも鋭角に形成している。
そのため、バンド巻付部11aのバンド挿通孔11a1に樹脂バンド2の一端を挿入して回動するだけでも、樹脂バンド2は、第1バンド巻付部11a2のバンド出口側端部11a22のところで大きく鋭角に折れ曲がって、バンド巻付部11aに巻き付けられていくので、樹脂バンド2をバンド挿通孔11a1に挿入し、回動レバー11をロックする方向に回動させるだけで、樹脂バンド2を確実に締付けることができ、作業性を向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、ベース部12には、樹脂バンド2が巻付けられたバンド巻付部11aの回動を許容するよう凹んで形成され、バンド巻付部11aとの間に隙間を形成する巻付部回動用凹部12dが設けられている一方、回動レバー11は、当該回動レバー11の先端部と、当該回動レバー11の後端部側のバンド巻付部11aとの間に中央開口部11eが形成されていると共に、その中央開口部11eには左右の両側面に連結された主ブリッジ部11f1が形成され、ベース部12における巻付部回動用凹部12dのバンド出口側には、中央開口部11eにおける主ブリッジ部11f1とバンド巻付部11aとの間の第1中央開口部11e1に突出して、主ブリッジ部11f1およびバンド巻付部11aとの間で樹脂バンド2を曲げつつ挟持するバンド曲げ挟持用凸部12eを設けている。
そのため、回動レバー12を閉めてロック(閉止)状態にした際には、バンド曲げ挟持用凸部12eと、主ブリッジ部11f1およびバンド巻付部11aとの間で樹脂バンド2を曲げつつ挟持するので、樹脂バンド2をさらに確実に締付けることができ、この点でも作業性をさらに向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、バンド曲げ挟持用凸部12eにおけるバンド入口側面には、ベース側段部12e1が設けられている一方、回動レバー12を閉めてロック(閉止)状態にした際にバンド曲げ挟持用凸部12eのベース側段部12e1に対向する第1バンド巻付部11a2には、レバー側段部11a24を形成している。
そのため、回動レバー12を閉めてロック(閉止)状態にした際には、バンド曲げ挟持用凸部12eのベース側段部12e1と、第1バンド巻付部11a2のレバー側段部11a24との間でもさらに樹脂バンド2を曲げつつ挟持するので、樹脂バンド2をさらに確実に締付けることができ、この点でも作業性をさらに向上させることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、ベース部12の後端部には、ベース部12に装着された回動レバー11を回転させた際、第2バンド巻付部11a3の係合用端部11a34に係合する状態切替用凸部12fが設けられており、状態切替用凸部12fがバンド引張部11a31側に位置する場合は、回動レバー11がベース部12に対し大きく開いた大開状態を保持する一方、その大開状態から回動レバー11が閉まる方向に回動して、係合用端部11a34が状態切替用凸部12fを乗り越えると、第1バンド巻付部11a2のバンド出口側端部11a22と、ベース部12のバンド曲げ挟持用凸部12eとの間で樹脂バンド2を挟持することにより樹脂バンド2を仮止する。
そのため、樹脂バンド2を仮止め機能を有さない従来技術と比較すると、樹脂バンド2の仮止め状態で回動レバー11から手を離して樹脂バンド2の高さを変えたり、さらには再度回動レバー11を開いて樹脂バンド2を再度締付けることが可能となり、この点でも作業性を向上させることができる。
また、状態切替用凸部12fは、樹脂バンド2を巻付けた回動レバー11を回動させ、回動レバー11先端側の係止部11c,11cがそれぞれベース部12の被係止部12b,12bに係止するロック状態になった際には、図15(a),(b)に示すようにバンド巻付部11aにおけるバンド挿通孔11a1のバンド出口側端部11a22との間で樹脂バンド2を挟持するので、樹脂バンド2をさらに確実に締付けることができる。
また、実施形態1のバンド締付具1では、バンド引張部11a31は、その幅方向の両側より中央部の方が回動軸部11b1,11b2の回転中心側に窪んだ形状に形成しているため、バンド引張部11a31は樹脂バンド2に摺接し樹脂バンド2を回動レバー11の先端部側へ引っ張り、樹脂バンド2の幅方向の中央部はその両側よりも短い半径でバンド巻付部11aを回ることになる。
そのため、バンド引張部11a31に摺接して引っ張られる樹脂バンド2の幅方向の両側では、引張力が強く作用するものの、樹脂バンド2の幅方向の中央部では、両側ほどの引張力は作用しないので、伸びがほとんど無いバンドでもバンド締付具1全体を大型化させず、また過大な力も必要とせずに電柱3等の対象物に巻き付け固定することができる。
実施形態2.
上記実施形態1のバンド締付具1では、ベース部12のバンド係止孔12cにバンド係止部12c1および一対の引張力逃し部12c2,12c2を設けて、樹脂バンド2の他端が係止されたバンド係止部12c1を介して一対の引張力逃し部12c2,12c2に応力がかかって折れ曲がることにより、樹脂バンド2にかかる過大な引張力を弱めるように構成したが、実施形態2のバンド締付具1’では、別の箇所に引張力逃し部12c2’を設けたことを特徴とする。
図20(a),(b)それぞれ、実施形態2のバンド締付具1’のベース部12’の正面図、底面図である。尚、実施形態2のバンド締付具1’でも、実施形態1の回動レバー11と同じ構成であるため、実施形態2では、回動レバー11の説明、および実施形態2のベース部12’における実施形態1のベース部12と同じ構成については、説明を省略する。
図20(a),(b)に示すように、実施形態2のバンド締付具1’のベース部12’の4つの脚部12g’それぞれに切欠部12g1’を設けることにより、回動レバー11を閉めてロックした際に、樹脂バンド2にかかる過大な引張力によって折れ曲る引張力逃し部12g2’を設けている。
そのため、実施形態2のバンド締付具1’のベース部12’では、実施形態1のバンド締付具1とは異なり、バンド係止孔12c’に引張力逃し部12c2を設ける必要がなくなるため、バンド係止孔12c’におけるベース部12の長手方向、すなわち樹脂バンド2の引張り方向の長さは短くなり、バンド係止孔12c’における被係止部12b側の内側面がバンド係止部となる。
次に、実施形態2のバンド締付具1’を使用して、樹脂バンド2を電柱3の周りに締め付けて固定する場合について説明する。
図21(a)に示すように、樹脂バンド2の他端がベース部12のバンド係止孔12cに係止されたバンド締付具1を電柱3の側面に当てた状態で、樹脂バンド2の一端をその電柱3の周面に沿って一周させ、続いて大開状態の回動レバー11のバンド巻付部11aのバンド挿通孔11a1のバンド入口側からベース部12の表面に向かって挿入後、回動レバー11を図21(a)に示すように大開状態からα方向に回動させると、樹脂バンド2が回動レバー11のバンド巻付部11aに巻き付けられ、樹脂バンド2にかかる引張力が大きくなる。
そして、回動レバー11の係止部11c,11cをベース部12の被係止孔12b1,12b1に係止してロック(閉止)する際、およびその直前では、樹脂バンド2にかかる引張力が非常に大きくなるため、実施形態2のバンド締付具1’では、図21(b)に示すようにベース部12’の4つの脚部12g’が切欠部12g1’によって弱くなった引張力逃し部12g2’で折れ曲がり、樹脂バンド2にかかる過大な引張力を弱めることができる。
従って、実施形態2のバンド締付具1’によれば、回動レバー11を閉めてロックする際、樹脂バンド2に作用する過大な引張力によって折れ曲がる引張力逃し部12g2’をベース部12’の脚部12g’に設けたため、実施形態1のバンド締付具1と同様の効果を得ることができる。