JP2018076796A - ロータリ圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベーンとピストンとの摺動部の温度上昇に伴って冷媒に不均化反応が生じることを抑える。【解決手段】ロータリ圧縮機において、冷媒は、HFO1123冷媒、またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒であり、インジェクション孔の噴射口は、上ベーンにおける上ピストンとの摺動面、及び下ベーンにおける下ピストンとの摺動面をインジェクション孔から噴射された液冷媒によって冷却可能な位置に設けられている。【選択図】図3

Description

本発明は、ロータリ圧縮機に関する。
冷媒を圧縮する圧縮機を含む冷凍サイクル装置では、冷媒としてR410A冷媒が広く用いられているが、R410A冷媒は、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が大きい。そこで、GWPが比較的小さい冷媒として、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)1123冷媒、及びHFO1123冷媒を含む混合冷媒を用いる関連技術が知られている。
国際公開第2014/057036号
上述したHFO1123冷媒は、一定条件下でエネルギーが与えられたときに不均化反応を起こす性質を有する。冷媒に不均化反応が起きたときには、大きな発熱を伴うので、冷凍サイクル装置内で不均化反応が発生した場合、圧縮機を含む冷凍サイクル装置の動作信頼性を低下させたり、急激な圧力の上昇を招き、冷媒の配管を損傷したりするおそれがある。
特に、ロータリ圧縮機では、ベーンの先端とピストンの外周面との摺動部が、ロータリ圧縮機全体において相対的に温度が高くなり、局所的に温度が250℃程度まで上昇する場合がある。このため、HFO1123冷媒を用いたロータリ圧縮機では、ベーンの先端とピストンの外周面との摺動部の温度上昇によって、HFO1123冷媒に不均化反応が発生するおそれがある。
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、ベーンとピストンとの摺動部の温度上昇に伴って冷媒に不均化反応が生じることを抑えることができるロータリ圧縮機を提供することを目的とする。
本願の開示するロータリ圧縮機の一態様は、上部に冷媒の吐出部が設けられ下部に冷媒の吸入部が設けられ密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体と、前記圧縮機筐体内の下部に配置され前記吸入部から吸入された冷媒を圧縮し前記吐出部から吐出する圧縮部と、前記圧縮機筐体内の上部に配置され前記圧縮部を駆動するモータと、を有し、前記圧縮部は、環状の上シリンダ及び下シリンダと、前記上シリンダの上側を閉塞する上端板と、前記下シリンダの下側を閉塞する下端板と、前記上シリンダと前記下シリンダとの間に配置され前記上シリンダの下側及び前記下シリンダの上側を閉塞する中間仕切板と、前記モータにより回転される回転軸と、前記回転軸に互いに180度の位相差をつけて設けられた上偏芯部及び下偏芯部と、前記上偏芯部に嵌合され前記上シリンダの内周面に沿って公転し前記上シリンダ内に上シリンダ室を形成する上ピストンと、前記下偏芯部に嵌合され前記下シリンダの内周面に沿って公転し前記下シリンダ内に下シリンダ室を形成する下ピストンと、前記上シリンダに設けられた上ベーン溝から前記上シリンダ室内に突出し前記上ピストンと当接することで前記上シリンダ室を上吸入室と上圧縮室に区画する上ベーンと、前記下シリンダに設けられた下ベーン溝から前記下シリンダ室内に突出し前記下ピストンと当接することで前記下シリンダ室を下吸入室と下圧縮室に区画する下ベーンと、前記上圧縮室及び前記下圧縮室に液冷媒を噴射するインジェクション孔と、前記上圧縮室内で圧縮された冷媒を前記上圧縮室内から吐出する上吐出孔と、前記下圧縮室内で圧縮された冷媒を前記下圧縮室内から吐出する下吐出孔と、を有するロータリ圧縮機において、前記冷媒は、HFO1123冷媒、またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒であり、前記インジェクション孔の噴射口は、前記上ベーンにおける前記上ピストンとの摺動面、及び前記下ベーンにおける前記下ピストンとの摺動面を前記インジェクション孔から噴射された液冷媒によって冷却可能な位置に設けられていることを特徴とする。
本願の開示するロータリ圧縮機の一態様によれば、ベーンとピストンとの摺動部の温度上昇に伴って冷媒に不均化反応が生じることを抑えることができる。
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。 図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。 図3は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を上方から見た横断面図である。 図4は、実施例のロータリ圧縮機の中間仕切板を示す平面図である。 図5Aは、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図5Bは、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図5Cは、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図5Dは、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図6Aは、参考例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図6Bは、参考例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図6Cは、参考例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図6Dは、参考例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔の噴射口から液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。 図7は、実施例のロータリ圧縮機のインジェクション孔を示す縦断面図である。 図8Aは、実施例のロータリ圧縮機において、回転軸の撓みに伴って上ピストン及び下ピストンが傾斜した状態を示す模式図である。 図8Bは、実施例のロータリ圧縮機において、上ベーン溝内で上ベーンが傾斜した状態を示す模式図である。 図9は、変形例のロータリ圧縮機において、上ベーン及び下ベーンの進退方向から見た上シリンダ及び下シリンダの模式的な縦断面図である。
以下に、本願の開示するロータリ圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示するロータリ圧縮機が限定されるものではない。
(ロータリ圧縮機の構成)
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。図3は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を上方から見た横断面図である。
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10内の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10内の上部に配置され回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、圧縮機筐体10の外周面に固定され密閉された縦置き円筒状のアキュムレータ25と、を備えている。
アキュムレータ25は、吸入部としての上吸入管105及びアキュムレータ上湾曲管31Tを介して上シリンダ121Tの上シリンダ室130T(図2参照)と接続され、吸入部としての下吸入管104及びアキュムレータ下湾曲管31Sを介して下シリンダ121Sの下シリンダ室130S(図2参照)と接続されている。本実施例では、圧縮機筐体10の周方向において、上吸入管105と下吸入管104の位置が重なっており、同一位置に位置する。
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112と、を備えている。ステータ111は、圧縮機筐体10の内周面に焼嵌め状態で固定されている。ロータ112は、回転軸15に焼嵌め状態で固定されている。
回転軸15は、下偏芯部152Sの下方の副軸部151が、下端板160Sに設けられた副軸受部161Sに回転自在に支持され、上偏芯部152Tの上方の主軸部153が上端板160Tに設けられた主軸受部161Tに回転自在に支持されている。回転軸15には、上偏芯部152T及び下偏芯部152Sが互いに180度の位相差をつけて設けられており、上偏芯部152Tに上ピストン125Tが支持され、下偏芯部152Sに下ピストン125Sが支持されている。これによって、回転軸15は、圧縮部12全体に対して回転自在に支持されるとともに、回転によって上ピストン125Tを上シリンダ121Tの内周面に沿って公転運動させ、下ピストン125Sを下シリンダ121Sの内周面に沿って公転運動させる。
圧縮機筐体10の内部には、圧縮部12において摺動する上ピストン125T及び下ピストン125S等の摺動部の潤滑性を確保し、上圧縮室133T(図2参照)及び下圧縮室133S(図2参照)をシールするために、潤滑油18が圧縮部12をほぼ浸漬する量だけ封入されている。圧縮機筐体10の下側には、ロータリ圧縮機1全体を支持する複数の弾性支持部材(図示せず)を係止する取付脚310(図1参照)が固定されている。
図1に示すように、圧縮部12は、上吸入管105及び下吸入管104から吸入された冷媒を圧縮し、後述する吐出部としての吐出管107から吐出する。図2に示すように、圧縮部12は、上から、内部に中空空間が形成された膨出部を有する上端板カバー170T、上端板160T、環状の上シリンダ121T、中間仕切板140、環状の下シリンダ121S、下端板160S及び平板状の下端板カバー170Sを積層して構成されている。圧縮部12全体は、上下から略同心円上に配置された複数の通しボルト174,175及び補助ボルト176によって固定されている。
図3に示すように、上シリンダ121Tには、モータ11の回転軸15と同心円上に沿って、上シリンダ内壁123Tが形成されている。上シリンダ内壁123T内には、上シリンダ121Tの内径よりも小さい外径の上ピストン125Tが配置されており、上シリンダ内壁123Tと上ピストン125Tとの間に、冷媒を吸入し圧縮して吐出する上圧縮室133Tが形成される。下シリンダ121Sには、モータ11の回転軸15と同心円上に沿って、下シリンダ内壁123Sが形成されている。下シリンダ内壁123S内には、下シリンダ121Sの内径よりも小さい外径の下ピストン125Sが配置されており、下シリンダ内壁123Sと下ピストン125Sとの間に、冷媒を吸入し圧縮して吐出する下圧縮室133Sが形成される。
図2及び図3に示すように、上シリンダ121Tは、円形状の外周部から、回転軸15の径方向に張り出した上側方突出部122Tを有する。上側方突出部122Tには、上シリンダ室130Tから放射状に外方へ延びる上ベーン溝128Tが設けられている。上ベーン溝128T内には、上ベーン127Tが摺動可能に配置されている。上ベーン127Tは、上ピストン125Tの外周面に接する摺動面127aを有する。下シリンダ121Sは、円形状の外周部から、回転軸15の径方向に張り出した下側方突出部122Sを有する。下側方突出部122Sには、下シリンダ室130Sから放射状に外方へ延びる下ベーン溝128Sが設けられている。下ベーン溝128S内には、下ベーン127Sが摺動可能に配置されている。下ベーン127Sは、下ピストン125Sの外周面に接する摺動面127aを有する。
上側方突出部122T及び下側方突出部122Sは、回転軸15の周方向に沿って、所定の突出範囲にわたって形成されている。上側方突出部122T及び下側方突出部122Sは、上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの加工時に加工治具に固定するためのチャック用保持部として用いられる。
上側方突出部122Tには、外側面から上ベーン溝128Tと重なる位置に、上シリンダ室130Tに貫通しない深さで上スプリング穴124Tが設けられている。上スプリング穴124Tには上スプリング126Tが配置されている。下側方突出部122Sには、外側面から下ベーン溝128Sと重なる位置に、下シリンダ室130Sに貫通しない深さで下スプリング穴124Sが設けられている。下スプリング穴124Sには下スプリング126Sが配置されている。
また、下シリンダ121Sには、下ベーン溝128Sの径方向外側と圧縮機筐体10内とを連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒を導入し、下ベーン127Sに冷媒の圧力により背圧をかける下圧力導入路129Sが形成されている。また、上シリンダ121Tには、上ベーン溝128Tの径方向外側と圧縮機筐体10内とを開口部で連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒を導入し、上ベーン127Tに冷媒の圧力により背圧をかける上圧力導入路129Tが形成されている。
図3に示すように、上シリンダ121Tの上側方突出部122Tには、上吸入管105と嵌合する上吸入孔135Tが設けられている。下シリンダ121Sの下側方突出部122Sには、下吸入管104と嵌合する下吸入孔135Sが設けられている。
図2に示すように、上シリンダ室130Tは、上下をそれぞれ上端板160T及び中間仕切板140で閉塞されている。下シリンダ室130Sは、上下をそれぞれ中間仕切板140及び下端板160Sで閉塞されている。
図3に示すように、上シリンダ室130Tは、上ベーン127Tが上スプリング126Tに押圧されて上ピストン125Tの外周面に当接することによって、上吸入孔135Tに連通する上吸入室131Tと、上端板160Tに設けられた上吐出孔190Tに連通する上圧縮室133Tと、に区画される。下シリンダ室130Sは、下ベーン127Sが下スプリング126Sに押圧されて下ピストン125Sの外周面に当接することによって、下吸入孔135Sに連通する下吸入室131Sと、下端板160Sに設けられた下吐出孔190Sに連通する下圧縮室133Sと、に区画される。
また、上吐出孔190Tは、上ベーン溝128Tに近接して設けられており、下吐出孔190Sは、下ベーン溝128Sに近接して設けられている。上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内で圧縮された冷媒は、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内から、上吐出孔190T及び下吐出孔190Sを通って吐出される。
中間仕切板140には、図3及び図4に示すように、中間仕切板140の径方向に沿ってインジェクション孔140aが形成されており、上圧縮室133T及び下圧縮室133Sに液冷媒を噴射するためのインジェクション管142がインジェクション孔140aに嵌め込まれている。また、中間仕切板140の上下両面には、インジェクション孔140aに連通すると共に中間仕切板140を厚み方向(回転軸15方向)に一端が貫通する円形状の噴射口141T、141Sがそれぞれ設けられている。
インジェクション管142の一端部は、圧縮機筐体10の外周面に引き出されており、冷媒循環路から液冷媒が導入されるインジェクション連結管(図示せず)と接続されている。ロータリ圧縮機1では、インジェクション管142から供給された液冷媒を、中間仕切板140の各インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから上圧縮室133T及び下圧縮室133Sに噴射し、圧縮過程後期の冷媒の温度を下げることで冷媒の圧縮効率を高めている(第1の作用)。
図2に示すように、上端板160Tには、上端板160Tを貫通して上シリンダ121Tの上圧縮室133Tと連通する上吐出孔190Tが設けられ、上吐出孔190Tの出口側には、上吐出孔190Tの周囲に上弁座(図示せず)が形成されている。上端板160Tには、上吐出孔190Tの位置から上端板160Tの外周に向かって溝状に延びる上吐出弁収容凹部164Tが形成されている。
上吐出弁収容凹部164Tには、後端部が上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され前端部が上吐出孔190Tを開閉するリード弁型の上吐出弁200Tと、後端部が上吐出弁200Tに重ねられて上吐出弁収容凹部164T内に上リベット202Tにより固定され前端部が上吐出弁200Tが開く方向へ湾曲して(反って)いて上吐出弁200Tの開度を規制する上吐出弁押さえ201T全体とが収容されている。
下端板160Sには、下端板160Sを貫通して下シリンダ121Sの下圧縮室133Sと連通する下吐出孔190Sが設けられている。下端板160Sには、下吐出孔190Sの位置から下端板160Sの外周に向かって溝状に延びる下吐出弁収容凹部(図示せず)が形成されている。
下吐出弁収容凹部には、後端部が下吐出弁収容凹部内に下リベット202Sにより固定され前端部が下吐出孔190Sを開閉するリード弁型の下吐出弁200Sと、後端部が下吐出弁200Sに重ねられて下吐出弁収容凹部内に下リベット202Sにより固定され前端部が下吐出弁200Sが開く方向へ湾曲して(反って)いて下吐出弁200Sの開度を規制する下吐出弁押さえ201S全体とが収容されている。
互いに密着固定された上端板160Tと膨出部を有する上端板カバー170Tとの間には、上端板カバー室180Tが形成される。互いに密着固定された下端板160Sと平板状の下端板カバー170Sとの間には、下端板カバー室180S(図1参照)が形成される。下端板160S、下シリンダ121S、中間仕切板140、上端板160T及び上シリンダ121Tを貫通し下端板カバー室180Sと上端板カバー室180Tとを連通する冷媒通路孔136が設けられている。
以下に、回転軸15の回転による冷媒の流れを説明する。上シリンダ室130T内において、回転軸15の回転によって、回転軸15の上偏芯部152Tに嵌合された上ピストン125Tが、上シリンダ室130Tの外周面(上シリンダ121Tの内周面)に沿って公転することにより、上吸入室131Tが容積を拡大しながら上吸入管105から冷媒を吸入し、上圧縮室133Tが容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が上吐出弁200Tの外側の上端板カバー室180Tの圧力より高くなると、上吐出弁200Tが開いて上圧縮室133Tから上端板カバー室180Tへ冷媒が吐出される。上端板カバー室180Tに吐出された冷媒は、上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出孔172T(図1参照)から圧縮機筐体10内に吐出される。
また、下シリンダ室130S内において、回転軸15の回転によって、回転軸15の下偏芯部152Sに嵌合された下ピストン125Sが、下シリンダ室130Sの外周面(下シリンダ121Sの内周面)に沿って公転する。これにより、下吸入室131Sが容積を拡大しながら下吸入管104から冷媒を吸入し、下圧縮室133Sが容積を縮小しながら冷媒を圧縮する。圧縮した冷媒の圧力が下吐出弁200Sの外側の下端板カバー室180Sの圧力より高くなると、下吐出弁200Sが開いて下圧縮室133Sから下端板カバー室180Sへ冷媒が吐出される。下端板カバー室180Sに吐出された冷媒は、冷媒通路孔136及び上端板カバー室180Tを通って上端板カバー170Tに設けられた上端板カバー吐出孔172Tから圧縮機筐体10内に吐出される。
圧縮機筐体10内に吐出された冷媒は、ステータ111外周に設けられた上下に連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、圧縮機筐体10の上部に配置された吐出部としての吐出管107から吐出される。
(ロータリ圧縮機の特徴的な構成)
次に、実施例のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。図4は、実施例のロータリ圧縮機1の中間仕切板140を示す平面図である。
本実施例のロータリ圧縮機1では、冷媒として、HFO1123冷媒、またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒が用いられている。そして、実施例では、冷媒の不均化反応の発生を抑制するために、図3及び図4に示すように、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sが、上ベーン127Tにおける上ピストン125Tとの摺動面137T、及び下ベーン127Sにおける下ピストン125Sとの摺動面137Sを、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから噴射された液冷媒によって冷却可能な位置に設けられている。実施例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上シリンダ室130T内及び下シリンダ室130S内に開口するように中間仕切板140に設けられている。そして、回転軸15に直交する平面上で、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ベーン溝128Tに対して上吐出孔190T側の上シリンダ室130T(上圧縮室133T)内、及び下ベーン溝128Sに対して下吐出孔190S側の下シリンダ室130S(下圧縮室133S)内に開口するように配置されている。
なお、ここで、液冷媒によって冷却可能な位置とは、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に噴射された液冷媒が摺動面137T、137Sに直接的に吹き付けられる位置に限定するものではなく、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に液冷媒が噴霧された空間内のガス冷媒(液冷媒の霧によって冷却された空間内のガス冷媒)を介して間接的に摺動面137T、137Sが冷却される位置を含む。言い換えると、インジェクション孔140aの噴射口141Tが摺動面137Tの近傍に開口し、噴射口141Sが摺動面137Sの近傍に開口することによって、液冷媒で冷却された空間を介して間接的に摺動面137T,137Sを冷却可能となる。
また、本実施例において、インジェクション孔140aから上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に噴射された液冷媒は、圧縮過程後期の冷媒を冷却することで冷媒の圧縮効率を高める第1の作用と、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sを冷却する第2の作用(冷媒の不均化反応の発生を抑制する作用)とを兼ねている。インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの位置は、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内の冷媒の圧縮効率を高める効果も得る観点で、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に開口するように配置されることが好ましい。
しかし、上述の構成に限定されるものではなく、回転軸15に直交する平面上で、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ベーン溝128Tに対して上吸入管105側の上シリンダ室130T(上吸入室131T)内、及び下ベーン溝128Sに対して下吸入管104側の下シリンダ室130S(下吸入室131S)内に開口するように配置されてもよい。この構成の場合、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから噴射された液冷媒は、上述と同様に摺動面137T、137Sを冷却する作用を有するが、圧縮過程後期の冷媒を冷却する第1の作用が得られない。しかしながら、この構成の場合には、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に比べて圧力が低い上吸入室131T内及び下吸入室131S内へ、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから液冷媒が噴射されることになる。このため、上圧縮室133T及び下圧縮室133Sへ液冷媒を噴射する構成と比べて、相対的に圧力が低い上吸入室131T内及び下吸入室131S内へ液冷媒を噴射する構成は、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから噴射される液冷媒の噴射圧を高く設定することが可能になり、液冷媒の噴射量を増やすことが可能となる。これにより、液冷媒の噴射量が十分に確保されるので、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sを冷却する効果を高めることができる。
さらに、実施例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの位置に関し、図3及び図4に示すように、回転軸15の軸方向に直交する平面上において、上ベーン溝128Tの中心線C1とインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心との距離、及び下ベーン溝128Sの中心線C1とインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心との距離をそれぞれL、上シリンダ121Tの内径及び下シリンダ121Sの内径をそれぞれ2Rとしたときに、
L<(R/2) ・・・(式1)
を満たす。
インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、式1を満たすように上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に開口するように配置されている。インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの位置は、式1を満たすことによって、インジェクション孔140aから上シリンダ121T内及び下シリンダ121S内に噴射された液冷媒によって、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sを冷却することができる。ここで、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sの冷却には、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから噴射された液冷媒が直接的に摺動面137T、137Sに吹き付けられることで冷却されることと、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから液冷媒が噴射された噴霧領域(液冷媒の霧で冷却された空間内のガス冷媒)を介して間接的に摺動面137T、137Sが冷却されることとを含む。
なお、本実施例における液冷媒の噴射条件の一例としては、上シリンダ121T内及び下シリンダ121Sの内径の半径Rが28mm程度、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの孔径がφ0.5mm以上、圧力差([液冷媒の吐出圧力]−[冷媒の吸入圧力])が2MPa以上に設定されている。
また、図3及び図4に示すように、回転軸15に直交する平面上で、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心は、上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの中心O(回転軸15の中心O)に対する回転軸15まわりにおいて、すなわち上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの内周面の周方向において、上ベーン溝128T及び下ベーン溝128Sの各中心線C1に対して、中心角θ1が45度以下の扇形の範囲内に配置されている。
上ピストン125T及び下ピストン125Sが上死点に位置する回転角度(クランク角度)を0度(360度)として、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が0度、90度、180度、270度における上圧縮室133T及び下圧縮室133Sにおけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの状態について説明する。図5A、図5B、図5C及び図5Dは、実施例のロータリ圧縮機1の圧縮部12において、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。図5B及び図5Cにおいて、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから噴射された液冷媒によって適正な冷却効果が得られる冷却範囲Sを模式的に円形で示す。また、図5A、図5B、図5C及び図5Dにおいて、回転軸15は右回りに回転し、上ピストン125T及び下ピストン125Sが右回りに公転する。
図5Aに示すように、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が0度(360度)のとき、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ピストン125T及び下ピストン125Sによって塞がれている。図5B及び図5Cに示すように、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が90度程度から180度程度の角度範囲のときに、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ピストン125T及び下ピストン125Sの外周側に位置することによって開かれており、液冷媒を噴射する。このとき、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、冷却範囲Sにおける上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内、つまり冷却範囲Sと、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内とが重なる噴霧領域に液冷媒を噴射可能となる。このような噴霧領域に向けてインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから液冷媒を噴射することで、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sへ液冷媒を直接吹き付けて直接的に冷却する、または液冷媒の霧で冷やされた空間内のガス冷媒を介して摺動面137T、137Sを間接的に冷却する(液冷媒によって冷やされた空間内のガス冷媒が摺動面137T、137Sの熱を奪って冷却する)ことが可能になる。すなわち、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの位置が式1を満たすことにより、上ベーン127Tと上ピストン125Tとの摺動部、下ベーン127Sと下ピストン125Sとの摺動部を、冷却範囲S内に含めることが可能になる。そして、図5D及び図5Aに示すように、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が270度程度から360度程度の角度範囲のときに、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ピストン125T及び下ピストン125Sによって塞がれることにより、液冷媒の噴射を停止する。
上述した実施例と比較するため、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sが上述した式1を満たさない参考例について説明する。言い換えると、参考例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの位置は、L≧(R/L)となるように上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内に配置されている。図6A、図6B、図6C及び図6Dは、参考例のロータリ圧縮機の圧縮部において、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから液冷媒を噴射する動作を説明するための横断面図である。また、図6A、図6B、図6C及び図6Dにおいて、回転軸15は右回りに回転し、上ピストン125T及び下ピストン125Sが右回りに公転する。
図6Aに示すように、参考例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が0度(360度)程度のとき、上ピストン125T及び下ピストン125Sの外周側に位置することによって開かれ、液冷媒の噴射を開始する。そして、図6B及び図6Cに示すように、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が90度程度から180度程度の角度範囲のときに、参考例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、冷却範囲Sにおける上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内、つまり冷却範囲Sと、上圧縮室133T内及び下圧縮室133S内とが重なる噴霧領域に液冷媒を噴射可能となる。しかしながら、参考例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの位置が式1を満たしていないので、上ベーン127Tと上ピストン125Tとの摺動部、下ベーン127Sと下ピストン125Sとの摺動部が、冷却範囲Sの外側となり、液冷媒によって上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sを適正に冷却することができない。そして、図6Dに示すように、上ピストン125T及び下ピストン125Sの回転角度が270度程度から360度程度の角度範囲のとき、参考例におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ピストン125T及び下ピストン125Sによって塞がれることにより、液冷媒の噴射を停止する。
次に、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線の向きについて説明する。図7は、実施例のロータリ圧縮機1のインジェクション孔140aを示す縦断面図である。図7に示すように、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線C2は、回転軸15の軸方向(中間仕切板140の厚み方向)に対して傾斜しており、上ベーン127Tにおける上ピストン125Tとの摺動面137T、及び下ベーン127Sにおける下ピストン125Sとの摺動面137Sに向かって延びている。インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線C2は、例えば、回転軸15の軸方向における摺動面137T、137Sの中央に向かって延びており、回転軸15の軸方向において摺動面137T、137Sの中央から両端に向かって効果的に冷却することが可能とされている。ここで、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線C2とは、インジェクション孔140aにおいて中間仕切板140に開口する端部が延びる方向に沿う直線(端部の横断面に直交する直線)を指している。
このように実施例におけるインジェクション孔140aは、噴射口141Tの中心線C2を回転軸15の軸方向に対して所望の傾斜角度θ2で上ベーン127T側へ向かって傾斜させ、噴射口141Sの中心線C2を回転軸15の軸方向に対して所望の傾斜角度θ2で下ベーン127S側へ向かって傾斜させることにより、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sにおける所望の位置を狙って液冷媒を噴射することで、摺動面137T、137Sを冷却する効果を高めることができる。
また、後述する上ベーン127Tの摺動面137Tと上ピストン125Tの外周面とが片当たりする傾向、及び下ベーン127Sの摺動面137Sと下ピストン125Sの外周面とが片当たりする傾向を考慮し、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線C2は、摺動面137T、137Sにおける一端側に向かって延ばされてもよく、必要に応じて液冷媒の噴射方向が適宜調整されてもよい。また、インジェクション孔140aは、噴射口141T、141Sの中心線C2が回転軸15の軸方向に対して傾斜される構成に限定されるものではなく、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sの直下から、回転軸15の軸方向に向かって液冷媒を噴射するように構成されてもよい。
上述したように実施例のロータリ圧縮機1は、HFO1123冷媒、またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒を用いており、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sが、上ベーン127Tにおける上ピストン125Tとの摺動面137T、及び下ベーン127Sにおける下ピストン125Sとの摺動面137Sを、インジェクション孔140aから噴射された液冷媒によって冷却可能な位置に設けられている。このため、ロータリ圧縮機1は、上ベーン127Tにおける上ピストン125Tとの摺動部、及び下ベーン127Sにおける下ピストン125Sとの摺動部を効果的に冷却することができる。したがって、上ベーン127Tと上ピストン125Tとの摺動面137T及び下ベーン127Sと下ピストン125Sとの摺動面137Sの温度上昇に伴ってHFO1123冷媒またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒に不均化反応を生じることを抑えることができる。その結果、不均化反応に伴う発熱によりロータリ圧縮機1を用いた冷凍サイクル装置の動作信頼の低下が抑えられ、不均化反応に伴う発熱によりロータリ圧縮機1の運転を停止することや回転数を下げることが避けられるため、冷凍サイクルにおけるCOP(Coefficient Of Performance:成績係数)の低下を抑えることができる。
また、実施例のロータリ圧縮機1におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上シリンダ室130T内及び下シリンダ室130S内に開口するように中間仕切板140に設けられ、回転軸15の軸方向に直交する平面上において、上ベーン溝128Tの中心線C1とインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心との距離、及び下ベーン溝128Sの中心線C1とインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心との距離をそれぞれL、上シリンダ121Tの内径及び下シリンダ121Sの内径をそれぞれ2Rとしたときに、L<(R/2)・・・(式1)を満たす。これにより、図5B及び図5Cに示すように、インジェクション孔140aの噴射口141T、141Sから噴射される液冷媒によって適正な冷却効果が得られる冷却範囲S内に、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sが含まれるので、摺動面137T、137Sを効果的に冷却することができる。したがって、摺動面137T、137Sの温度上昇に伴ってHFO1123冷媒またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒に不均化反応を生じることを抑えることができる。
また、実施例のロータリ圧縮機1におけるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線C2は、回転軸15の軸方向に対して傾斜し、上ベーン127Tにおける上ピストン125Tとの摺動面137T、及び下ベーン127Sにおける下ピストン125Sとの摺動面137Sに向かって延びている。これにより、摺動面137T、137Sにおける所望の位置に向かって液冷媒を噴射可能となり、摺動面137T、137Sを冷却する効果を高めることができる。
以下、他の実施例について図面を参照して説明する。他の実施例において、実施例と同一の構成部材には、実施例と同一の符号を付して説明を省略する。
(他の実施例)
図8Aは、実施例のロータリ圧縮機1において、回転軸15の撓みに伴って上ピストン125T及び下ピストン125Sが傾斜した状態を示す模式図である。図8Bは、実施例のロータリ圧縮機1において、上ベーン溝128T内で上ベーン127Tが傾斜した状態を示す模式図である。
ロータリ圧縮機1では、上シリンダ121T内及び下シリンダ121S内で上ピストン125T及び下ピストン125Sによって冷媒を圧縮するときに、回転軸15が軸方向に沿って微小量だけ撓む。図8Aに示すように、回転軸15の撓みに伴って上ピストン125T及び下ピストン125Sが回転軸15の径方向に対して傾く。上ピストン125T及び下ピストン125Sが傾くことに伴って、ロータリ圧縮機1の上下方向(回転軸15の軸方向)における上ベーン127Tと上ベーン溝128Tとのクリアランス分、下ベーン127Sと下ベーン溝128Sとのクリアランス分だけ、図8Bに示すように、上ベーン127T及び下ベーン127Sが摺動方向に対して傾く。このため、上ベーン127Tの摺動面137Tと上ピストン125Tの外周面との接触状態、及び下ベーン127Sの摺動面137Sと下ピストン125Sの外周面との接触状態が変化し、上ベーン溝128T及び下ベーン溝128S内に拘束された状態で摺動する上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sが、上ピストン125T及び下ピストン125Sの外周面と片当たり状態になるおそれがある。このような片当たりにより、上ベーン127Tと上ピストン125Tとの摩擦力、下ベーン127Sと下ピストン125Sとの摩擦力が大きくなり、摺動面137T、137Sにおける片当たり部分の温度の上昇を招く。
そこで、上ベーン127T及び下ベーン127Sの摺動面127aにおける片当たりする一端側を効果的に冷却するために、インジェクション孔140aは、中間仕切板140に設けられる代わりに、上シリンダ121Tの外周から上シリンダ室130Tへ延びるように上シリンダ121Tの径方向に貫通して設けられてもよく、下シリンダ121Sの外周から下シリンダ室130Sへ延びるように下シリンダ121Sの径方向に貫通して設けられてもよい。図9に示すように、この構成の場合、上シリンダ121T及び下シリンダ121Sに設けられるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sの中心線C2は、回転軸15の径方向(上シリンダ121T及び下シリンダ121Sの径方向)に対して傾斜角θ3で傾斜し、上ベーン127Tの摺動面137Tにおける上端板160T側の一端、及び下ベーン127Sの摺動面137Sにおける下端板160S側の一端に向かって延ばされてもよい。あるいは、上シリンダ121T及び下シリンダ121Sに設けられるインジェクション孔140aの噴射口141T、141Sは、上ベーン127Tの摺動面137T及び下ベーン127Sの摺動面137Sに隣接する位置に開口するように設けられてもよい。これにより、インジェクション孔140aは、回転軸15の撓みに伴う片当たりによって温度が高くなる傾向がある摺動面127aの一端側(片当たり部分)を狙って液冷媒を噴射して効果的に冷却することが可能となる。したがって、摺動面137T、137Sの温度上昇に伴ってHFO1123冷媒またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒に不均化反応を生じることを抑えることができる。
1 ロータリ圧縮機
10 圧縮機筐体
11 モータ
12 圧縮部
15 回転軸
25 アキュムレータ
105 上吸入管(吸入部)
104 下吸入管(吸入部)
107 吐出管(吐出部)
121T 上シリンダ
121S 下シリンダ
125T 上ピストン
125S 下ピストン
127T 上ベーン
127S 下ベーン
128T 上ベーン溝
128S 下ベーン溝
130T 上シリンダ室
130S 下シリンダ室
131T 上吸入室
131S 下吸入室
133T 上圧縮室
133S 下圧縮室
135T 上吸入孔
135S 下吸入孔
137T、137S 摺動面
140 中間仕切板
140a インジェクション孔
141T、141S 噴射口
142 インジェクション管
151 副軸部
152T 上偏芯部
152S 下偏芯部
153 主軸部
160T 上端板
160S 下端板
161T 主軸受部
161S 副軸受部
190T 上吐出孔
190S 下吐出孔

Claims (4)

  1. 上部に冷媒の吐出部が設けられ下部に冷媒の吸入部が設けられ密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体と、前記圧縮機筐体内の下部に配置され前記吸入部から吸入された冷媒を圧縮し前記吐出部から吐出する圧縮部と、前記圧縮機筐体内の上部に配置され前記圧縮部を駆動するモータと、を有し、
    前記圧縮部は、環状の上シリンダ及び下シリンダと、前記上シリンダの上側を閉塞する上端板と、前記下シリンダの下側を閉塞する下端板と、前記上シリンダと前記下シリンダとの間に配置され前記上シリンダの下側及び前記下シリンダの上側を閉塞する中間仕切板と、前記モータにより回転される回転軸と、前記回転軸に互いに180度の位相差をつけて設けられた上偏芯部及び下偏芯部と、前記上偏芯部に嵌合され前記上シリンダの内周面に沿って公転し前記上シリンダ内に上シリンダ室を形成する上ピストンと、前記下偏芯部に嵌合され前記下シリンダの内周面に沿って公転し前記下シリンダ内に下シリンダ室を形成する下ピストンと、前記上シリンダに設けられた上ベーン溝から前記上シリンダ室内に突出し前記上ピストンと当接することで前記上シリンダ室を上吸入室と上圧縮室に区画する上ベーンと、前記下シリンダに設けられた下ベーン溝から前記下シリンダ室内に突出し前記下ピストンと当接することで前記下シリンダ室を下吸入室と下圧縮室に区画する下ベーンと、前記上圧縮室及び前記下圧縮室に液冷媒を噴射するインジェクション孔と、前記上圧縮室内で圧縮された冷媒を前記上圧縮室内から吐出する上吐出孔と、前記下圧縮室内で圧縮された冷媒を前記下圧縮室内から吐出する下吐出孔と、
    を有するロータリ圧縮機において、
    前記冷媒は、HFO1123冷媒、またはHFO1123冷媒を含む混合冷媒であり、
    前記インジェクション孔の噴射口は、前記上ベーンにおける前記上ピストンとの摺動面、及び前記下ベーンにおける前記下ピストンとの摺動面を前記インジェクション孔から噴射された液冷媒によって冷却可能な位置に設けられていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  2. 前記インジェクション孔の前記噴射口は、前記上シリンダ室内及び前記下シリンダ室内に開口するように前記中間仕切板に設けられ、
    前記回転軸の軸方向に直交する平面上において、前記上ベーン溝の中心線と前記インジェクション孔の前記噴射口の中心との距離、及び前記下ベーン溝の中心線と前記インジェクション孔の前記噴射口の中心との距離をそれぞれL、前記上シリンダの内径及び前記下シリンダの内径をそれぞれ2Rとしたときに、
    L<(R/2) ・・・(式1)
    を満たす、
    請求項1に記載のロータリ圧縮機。
  3. 前記インジェクション孔の前記噴射口の中心は、前記回転軸まわりにおいて前記上ベーン溝及び前記下ベーン溝の各中心線に対して、中心角45度以下の扇形の範囲内に配置されている、
    請求項2に記載のロータリ圧縮機。
  4. 前記インジェクション孔の前記噴射口の中心線は、前記回転軸の軸方向に対して傾斜し、前記上ベーンにおける前記上ピストンとの摺動面、及び前記下ベーンにおける前記下ピストンとの摺動面に向かって延びている、
    請求項2または3に記載のロータリ圧縮機。
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