JP2018075725A - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置 - Google Patents

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Takahiro Tajima
孝広 田嶋
康介 山▲崎▼
Kosuke Yamazaki
康介 山▲崎▼
知洋 山下
Tomohiro Yamashita
知洋 山下
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Abstract

【課題】 画像の耐擦過性及び光学濃度に優れる画像を記録しうるとともに、吐出ヨレを抑制できるインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】 水性インク、及び前記水性インクを吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用し、前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、ウレタン樹脂、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記ウレタン樹脂が、ポリイソシアネート、及び酸基を有するポリオールを含むポリオール、のそれぞれに由来するユニットを有し、前記ポリオールのうち、前記酸基を有するポリオールの占める割合(モル%)が、所定の範囲内であり、前記水溶性有機溶剤が、第1水溶性有機溶剤を含み、前記記録ヘッドの吐出口面が、撥水処理されていることを特徴とするインクジェット記録方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、記録媒体として普通紙などを用い、文字や図表などを含むビジネス文章などの印刷にもインクジェット記録方法が利用されており、このような用途への利用頻度が格段に増えてきている。このような用途では、高いレベルの画像の発色性や堅牢性(光、オゾンガス、水などへの耐性)が要求されるため、色材として顔料を用いたインク(顔料インク)が利用されることが多い。
色材として染料を用いたインクと比して、顔料インクで記録される画像の発色性が高い要因は、記録媒体の表面上に存在する色材量が多いためである。これは、染料は記録媒体の内部にまで浸透するのに対し、顔料はインクが記録媒体に付与される過程や付与された後に起こる液体成分の蒸発により、急速に凝集するという特性を有するためである。しかし、顔料インクは、色材である顔料が記録媒体の表面上に存在しやすいため、画像の耐擦過性が低いという課題を抱えている。
顔料インクで記録される画像特性などを向上するために、インクにウレタン樹脂を添加することが検討されている(特許文献1参照)。また、高酸価のウレタン樹脂を含有する顔料組成物が検討されている(特許文献2参照)。
特開2013−253237号公報 特開2007−254556号公報
本発明者らは、吐出口が形成されている面(吐出口面)が撥水処理されている記録ヘッドに適用するインクとして、特許文献1に記載のインクについて、検討を行った。その結果、画像の耐擦過性は向上するものの、記録媒体へのインクの付着位置が意図した位置とずれてしまう吐出ヨレが生じるため、画像が乱れてしまう。また、画像の光学濃度も得られないことがわかった。
さらに、吐出口面が撥水処理されている記録ヘッドから吐出するインクに、特許文献2に記載の顔料組成物を用いると、画像の耐擦過性及び光学濃度は向上するものの、吐出ヨレを抑制できないことが判明した。
したがって、本発明の目的は、画像の耐擦過性及び光学濃度に優れる画像を記録しうるとともに、吐出ヨレを抑制できるインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクジェット記録方法に使用されるインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、水性インク、及び前記水性インクを吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用し、前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、ウレタン樹脂、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記ウレタン樹脂が、ポリイソシアネート、及び酸基を有するポリオールを含むポリオール、のそれぞれに由来するユニットを有し、前記ポリオールのうち、前記酸基を有するポリオールの占める割合(モル%)が、99.9モル%以上であり、前記水溶性有機溶剤が、温度25℃での比誘電率が20.0以下の第1水溶性有機溶剤を含み、前記記録ヘッドの吐出口面が、撥水処理されていることを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
また、本発明は、水性インクを吐出する記録ヘッドの吐出口面が、撥水処理されている記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、ウレタン樹脂、及び水溶性有機溶剤を含有し、前記ウレタン樹脂が、ポリイソシアネート、及び酸基を有するポリオールを含むポリオール、のそれぞれに由来するユニットを有し、前記ポリオールのうち、前記酸基を有するポリオールの占める割合(モル%)が、99.9モル%以上であり、前記水溶性有機溶剤が、温度25℃での比誘電率が20.0以下の第1水溶性有機溶剤を含むことを特徴とするインクジェット記録装置に関する。
本発明によれば、画像の耐擦過性及び光学濃度に優れる画像を記録しうるとともに、吐出ヨレを抑制できるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在し得るが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、温度25℃における値である。
ウレタン樹脂とは、広義には、(ポリ)イソシアネートを用いて合成される樹脂である。インクジェット用の水性インクに一般的に用いられるウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールやポリアミン)を用いて合成され、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤も用いられる。このような成分を用いて合成されたウレタン樹脂は、ハードセグメントとソフトセグメントという主に2つのセグメントで構成される。
ハードセグメントは、ポリイソシアネート、ポリアミンや酸基を有するポリオール、及び架橋剤や鎖延長剤などの、分子量が相対的に小さい化合物に由来するユニットで構成される。ハードセグメントにはウレタン結合が多く存在し、ウレタン結合間の水素結合によりハードセグメント部分が密集して存在しやすいため、ハードセグメントは主にウレタン樹脂の強度に寄与する。一方、ソフトセグメントは、酸基を有しないポリオールなどの、分子量が相対的に大きい化合物に由来するユニットで構成される。ソフトセグメントは、ハードセグメントと比較すると密集して存在しづらいため、ソフトセグメントは主にウレタン樹脂の柔軟性に寄与する。このように、ウレタン樹脂は、強度と柔軟性を兼ね備え、高い弾性を発現する。
本発明者らは、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、及びウレタン樹脂を含有するインクを用いることが、耐擦過性の向上に有効であることを見出した。記録媒体にインクが付着して、インク中の水が蒸発すると、顔料とウレタン樹脂は近づく。顔料がアニオン性基を有すると、ウレタン樹脂の有するウレタン結合(−NH−CO−)の水素原子と水素結合することで、顔料の近傍にはウレタン樹脂が存在し、ウレタン樹脂が顔料を被覆している状態になるため、画像の耐擦過性が向上する。さらに、ウレタン樹脂の有するポリオールに由来するユニットが、主として酸基を有するポリオールに由来するユニットで構成されていれば、インク中の水が蒸発して、酸基の近傍にある水が離れた後に、酸基とウレタン結合の水素原子が水素結合しやすくなる。顔料の近傍に存在しているウレタン樹脂の間で水素結合が形成されると、ウレタン樹脂を介して、顔料が強く凝集する。これにより、画像を擦っても、ウレタン樹脂を介して強く凝集した顔料が剥れにくくなるため、画像の耐擦過性が向上する。
ウレタン樹脂の有するポリオールに由来するユニットが、主として酸基を有するポリオールに由来するユニットで構成されていると、ウレタン樹脂は、酸基を多く有していることになる。記録媒体とは異なり、記録ヘッドの吐出口付近のように水が相対的に多い状態であると、イオン解離した酸基の間で反発が起こりやすくなり、ウレタン樹脂は、立体的に広がりやすくなる。そのため、ウレタン樹脂の酸基のまわりに水が存在しやすくなり、ウレタン樹脂の親水性が高くなる。ウレタン樹脂の親水性が高いと、撥水処理されている吐出口面にウレタン樹脂が吸着しにくくなるため、インクがウレタン樹脂に引っ張られることなく吐出される。つまり、吐出ヨレを抑制できることになる。
通常、画像の光学濃度を向上するためには、インクに添加するウレタン樹脂の有する酸基を少なくすることが有効である。しかし、本発明では、画像の耐擦過性を向上し、吐出ヨレを抑制するために、ウレタン樹脂の有する酸基を多くしている。そのため、画像の光学濃度は下がってしまう。そこで、インクに、比誘電率が20.0以下である第1水溶性有機溶剤を含有させる。ウレタン樹脂の有する酸基と第1水溶性有機溶剤の親和性が低いため、ウレタン樹脂の近傍に第1水溶性有機溶剤が存在しにくくなり、ウレタン樹脂の凝集が促進される。これにより、記録媒体の内部に顔料が沈み込みにくくなるため、画像の光学濃度が向上する。第1水溶性有機溶剤の比誘電率が20.0を超えると、ウレタン樹脂の有する酸基と水溶性有機溶剤の親和性が高いので、ウレタン樹脂の近傍に第1水溶性有機溶剤が存在しやすくなり、ウレタン樹脂の凝集が抑制される。これにより、記録媒体の内部に顔料が沈みやすくなるため、画像の光学濃度が得られない。
本発明では、ポリオールに由来するユニットが主として酸基を有するポリオールに由来するユニットで構成されていることを特定するために、酸基を有するポリオールの割合が、99.9モル%以上であるという条件を設けている。これを外れると、ウレタン樹脂の有する酸基が少ないため、第1水溶性有機溶剤がウレタン樹脂の近傍に存在しやすくなり、ウレタン樹脂の凝集が抑制される。これにより、記録媒体の内部に顔料が沈み込みやすくなるため、画像の光学濃度が得られない。さらに、ウレタン樹脂の有する酸基が少ないため、ウレタン樹脂の酸基のまわりに水が存在しにくくなり、ウレタン樹脂の親水性が低くなる。ウレタン樹脂の親水性が低いと、撥水処理されている吐出口面にウレタン樹脂が吸着しやすくなるため、吐出ヨレを抑制できない。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、水性インク、及び水性インクを吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用し、水性インクを記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。
記録ヘッドの吐出口面は、撥水処理されている。吐出口面を撥水処理するための方法としては、撥水性材料をスプレーで塗布する方法や、真空蒸着やプラズマ重合により撥水性材料を付着させるという方法などを選択することができる。形成された吐出口面の撥水性は、その部材表面における水滴の接触角を測定することにより特定することができる。水の接触角が70度以上である場合は、撥水性を有するということができ、水の接触角が90度以上である場合が好ましい。なお、水との接触角は、純水(イオン交換水)を用い、一般的な接触角計を使用して測定することができる。このような接触角計としては、例えば、自動接触角測定機(CA−W、協和界面科学製)が挙げられる。
撥水性材料としては、例えば、フッ素樹脂系の化合物が好ましく用いられる。特に、フッ素樹脂系の化合物からなる一様な樹脂膜として撥水面が形成されていることが好ましく、この樹脂膜にはニッケルなどの金属が含まれないことが好ましい。フッ素樹脂系化合物は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、環状構造を有するフッ素樹脂、などが挙げられる。具体的には、商品名「ポリフロンPTFE」(ダイキン工業製)や、商品名「テフロン(登録商標)PTFE」(デュポン製)、商品名「サイトップ」(旭硝子製)などを挙げることができる。さらには、その他のフッ素原子を含有する樹脂、例えば、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化ウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂及びそれらの変性樹脂なども用いることができる。また、撥水性材料として、珪素原子を含む化合物やシリコーン系樹脂を用いてもよい。なかでも、高度な撥水性と耐久性が得られることから、撥水性材料として、フルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物、及び、カチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物の縮合物を用いることが好ましい。また、この縮合物を、紫外線などの活性エネルギー線の照射により硬化させた樹脂を用いてもよい。これらの加水分解性シラン化合物は、その分子構造中に加水分解性基を有する。加水分解性基としてはアルコキシ基を挙げることができる。また、カチオン重合性基としては環状エーテル基、環状ビニルエーテル基などを挙げることができる。
図1は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
<インク>
本発明のインクジェット記録方法は、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、ウレタン樹脂、及び水溶性有機溶剤を含有する水性インクを用いる。以下、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を表すものとする。
(顔料)
インクは、無機顔料や有機顔料などの顔料を含有する。顔料種としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクドリンなどの有機顔料などが挙げられる。また、調色などの目的のために、顔料に加えてさらに染料などを併用してもよい。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明における「アニオン性基の作用によって分散されている顔料」とは、アニオン性基を有する樹脂によって分散されている樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面にアニオン性基が導入された自己分散顔料のことを指す。
顔料が、アニオン性基ではなく、−OHなどのノニオン性基の作用によって分散している場合、インク中の水が蒸発して、顔料とウレタン樹脂が近づいても、ウレタン結合中の水素原子がノニオン性基と水素結合しにくくなる。そのため、ウレタン樹脂が顔料を被覆できず、画像の耐擦過性が得られない。
樹脂分散顔料に用いる樹脂は、アニオン性基を有する単量体に由来するユニット(アニオン性ユニット)を有する。樹脂としては、上記で説明した特定のウレタン樹脂を用いてもよいが、分散安定性に優れるアクリル樹脂を用いることが好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来するユニットを有する樹脂である。(メタ)アクリル酸は、アニオン性基を有する単量体である。アクリル樹脂は、アニオン性ユニットと、その他の単量体に由来するユニットを有する樹脂であることが好ましい。その他の単量体としては、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(n−、iso−、tert−)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香族基を有する単量体;などが挙げられる。なかでも、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸、及びスチレンに由来するユニットを有することが好ましい。アクリル樹脂の酸価(mgKOH/g)は、150mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。アクリル樹脂の酸価は、電位差を利用したコロイド滴定により得られる。
自己分散顔料としては、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(−R−)を介してアニオン性基が結合したものを用いる。アニオン性基としては、−COOM、−SOM、−POなどが挙げられる。Mとしては、それぞれ独立に、水素原子;アルカリ金属;アンモニウム(NH);有機アンモニウムが挙げられる。他の原子団(−R−)としては、アルキレン基;アリーレン基;アミド基;スルホニル基;イミノ基;カルボニル基;エステル基;エーテル基;これらの基を組み合わせた基などが挙げられる。
なかでも、自己分散顔料を用いることが好ましい。樹脂分散顔料は、顔料の粒子表面に樹脂が吸着しているため、ウレタン樹脂が顔料の近傍に存在しにくい。そのため、ウレタン樹脂を介して顔料が凝集しにくくなり、画像の耐擦過性が十分に得られない場合がある。
(ウレタン樹脂)
上述の通り、インクジェット用の水性インクに一般的に用いられるウレタン樹脂は、少なくとも、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールやポリアミン)を用いて合成され、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤も用いられる。インクに用いるウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、及び酸基を有しないポリオールを含むポリオールのそれぞれに由来するユニットを有する。本発明においては、ウレタン樹脂についての「ユニット」とは、1の単量体に由来する繰り返し単位のことを指すものとする。以下、ウレタン樹脂の構成ユニットとなる各単量体について説明する。なお、ウレタン樹脂による作用を効率よく発揮させるためには、アクリル樹脂鎖が組み込まれているようなウレタン樹脂(いわゆるウレタン−アクリル複合樹脂)とすることはあまり好ましくない。また、活性エネルギー線硬化型のウレタン樹脂、すなわち重合性基を有するウレタン樹脂とすることもあまり好ましくない。ウレタン樹脂の酸価(mgKOH/g)は、120mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。ウレタン樹脂の酸価は、アクリル樹脂の酸価と同様の方法で測定できる。
[ポリイソシアネート]
本発明における「ポリイソシアネート」とは、ポリオールやポリアミンなどと反応するために、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物を意味する。樹脂に占めるポリイソシアネートに由来するユニットの割合は、10.0モル%以上90.0モル%以下であることが好ましい。ポリイソシアネートとしては、脂肪族や芳香族のポリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネートなどの鎖状構造を有するポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの環状構造を有するポリイソシアネート;などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
なかでも、ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートであると、顔料を被覆しているウレタン樹脂の間で水素結合するだけでなく、芳香環の近傍に存在するπ電子が引き合うことで、樹脂の間の相互作用が強くなり、画像の耐擦過性をさらに向上することができる。一方、脂肪族ポリイソシアネートは、芳香環を有しないため、芳香族ポリイソシアネートと比べて、樹脂の間の相互作用が弱くなる。そのため、樹脂を介して、顔料が凝集しにくくなるため、画像の耐擦過性が十分に得られない場合がある。
[ポリオール]
上記のポリイソシアネートとの反応によってウレタン樹脂を構成するユニットとなる成分としては、ポリオールを用いることができる。本発明における「ポリオール」とは、分子中に2以上のヒドロキシ基を有する化合物を意味し、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの酸基を有しないポリオール;酸基を有するポリオール;などが挙げられる。ポリオールは、1種、又は必要に応じて2種以上を用いることができる。樹脂に占めるポリオールに由来するユニットの割合(モル%)は、10.0モル%以上90.0モル%以下であることが好ましい。
〔酸基を有するポリオール〕
酸基を有するポリオールとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などの酸基を有するポリオールが挙げられる。酸基はカルボン酸基であることが好ましい。カルボン酸基を有するポリオールとしては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。なかでも、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸が好ましい。酸基を有するポリオールの酸基は塩型であってもよく、塩を形成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン、アンモニウムイオン、ジメチルアミンなどの有機アミンのカチオンなどが挙げられる。なかでも、酸基を有するポリオールは、カルボン酸基を有するポリオールであることが好ましく、ジメチロールプロピオン酸であることがさらに好ましい。なお、汎用の酸基を有するポリオールの分子量は高くても400程度であるので、酸基を有するポリオールに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。
ポリオールのうち、酸基を有するポリオールの占める割合(モル%)は、99.9モル%以上であり、100.0モル%であることが好ましい。つまり、ポリオールは、酸基を有するポリオールのみであることが好ましい。酸基を有しないポリオールに由来するユニットが存在すると、酸基の間で反発が起こりにくくなり、ウレタン樹脂が広がりにくくなる。そのため、ウレタン樹脂の酸基のまわりに水が存在しにくくなり、ウレタン樹脂の親水性が低くなる。これにより、撥水処理されている吐出口面にウレタン樹脂が吸着しやすくなるため、吐出ヨレを十分に抑制できない場合がある。
〔酸基を有しないポリオール〕
ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイド及びポリオール類の付加重合物;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどが挙げられる。また、アルキレンオキサイドと付加重合するポリオール類としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン、水素添加ビスフェノールA、ジメチロール尿素及びその誘導体などのジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールメラミン及びその誘導体、ポリオキシプロピレントリオールなどのトリオール;などが挙げられる。グリコール類としては、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの(ポリ)アルキレングリコール;エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体;などが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、酸エステルなどが挙げられる。酸エステルを構成する酸成分としては、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;前記芳香族ジカルボン酸の水素添加物などの脂環族ジカルボン酸;マロン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;などが挙げられる。これらの無水物、塩、誘導体(アルキルエステル、酸ハライド)なども酸成分として用いることができる。また、酸成分とエステルを形成する成分としては、ジオール、トリオールなどのポリオール類;(ポリ)アルキレングリコールなどのグリコール類;などが挙げられる。ポリオール類やグリコール類としては、上記のポリエーテルポリオールを構成する成分として例示したものが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、公知の方法で製造されるポリカーボネートポリオールを用いることができる。具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールなどのアルカンジオール系ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。また、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネートなどのカーボネート成分やホスゲンと、脂肪族ジオール成分と、を反応させて得られるポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
酸基を有しないポリオールを用いる場合は、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。ポリオールのうち、酸基を有しないポリオールの占める割合(モル%)は、0.1モル%未満であり、0.0モル%であることが好ましい。
〔鎖延長剤、架橋剤〕
ウレタン樹脂には、架橋剤や鎖延長剤が用いられていてもよい。通常、架橋剤はプレポリマーの合成の際に用いられ、鎖延長剤は予め合成されたプレポリマーに対して鎖延長反応を行う際に用いられる。基本的には、架橋剤や鎖延長剤としては、架橋や鎖延長など目的に応じて、水や、上記で挙げたポリイソシアネート、ポリオールの他に、ポリアミンなどからも適宜に選択して用いることができる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン、ヒドラジン、ポリアミドポリアミン、ポリエチレンポリイミンなどが挙げられる。なお、汎用の酸基を有するポリオールと同様に汎用のポリアミンの分子量は高くても400程度であるので、ポリアミンに由来するユニットは、基本的にはウレタン樹脂のハードセグメントとなる。鎖延長剤として、ウレタン樹脂を架橋させることができるものを用いることもできる。
インク中のウレタン樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、ウレタン樹脂の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上2.0倍以下であることが好ましい。前記比率が0.1倍未満であると、顔料に対してウレタン樹脂が少なすぎるため、画像の耐擦過性が十分に得られない場合がある。前記比率が2.0倍を超えると、顔料に対してウレタン樹脂が多いため、ウレタン樹脂の間で凝集しやすく、凝集したウレタン樹脂が吐出口面に吸着し、吐出ヨレを十分に抑制できない場合がある。
[ウレタン結合/ウレア結合のモル比率]
ウレタン結合には、N−H結合が1つ存在し、ウレア結合には、N−H結合が2つ存在する。ウレタン樹脂中のウレア結合が多くなると、N−H結合の水素原子が、撥水処理された吐出口面と相互作用して、吐出ヨレが生じやすくなる傾向にある。したがって、ウレタン樹脂における、ウレタン結合が占める割合(モル%)は、ウレア結合が占める割合(モル%)に対するモル比率で、80.0/20.0以上100.0/0.0以下であることが好ましい。これにより、吐出ヨレを効果的に抑制できる。
上記モル比率は、ウレタン樹脂における、ウレタン結合の占める割合(モル%)及びウレア結合が占める割合(モル%)の合計を100.0モル%として、これらの割合を分数の形式で表すものである。例えば、上記モル比率が80.0/20.0以上であることとは、ウレタン結合が占める割合が80.0モル%以上であることを意味する。したがって、この場合、ウレア結合が占める割合は20.0モル%以下(合計の100.0モル%から、ウレタン結合の80.0モル%を引いた値以下)となる。
ウレタン樹脂におけるウレタン結合/ウレア結合のモル比率を調整する方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。第1の方法としては、ウレタン樹脂を合成する際のアミン化合物の使用量を調整する方法が挙げられる。この方法では、アミン化合物とイソシアネート基の反応により生じるウレア結合の量をコントロールする。具体的には、以下の方法でウレタン樹脂の合成を行う。先ず、アミン化合物の使用量を異ならせて複数種のウレタン樹脂を合成し、後述する方法によって、ウレタン結合/ウレア結合のモル比率を算出する。得られたモル比率から、アミン化合物の使用量とモル比率との関係を調べて検量線を作成し、この検量線を利用して、所望のモル比率を有するウレタン樹脂を合成するために必要となるアミン化合物の使用量を決定する。なお、予め検量線を作成するのは、同種のアミン化合物を使用したとしても、その他の成分が異なると反応率などが変わる場合もあるため、同じモル比率とはならないからである。
第2の方法としては、ウレタン樹脂を水に転相する際に、未反応のイソシアネート基の残存率を調整する方法が挙げられる。この方法では、水とイソシアネート基との反応により生じるウレア結合の量をコントロールする。具体的には、以下の方法でウレタン樹脂の合成を行う。ウレタン樹脂の合成反応の途中で、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によって、ポリイソシアネートの使用量に対するイソシアネート基の残存率を確認する。イソシアネート基の残存率は、反応時間やポリイソシアネートの使用量などを変えることで調整することができる。そして、イソシアネート基の残存率が、所望のウレタン結合/ウレア結合のモル比率と同じ値になった時点で反応系にイオン交換水を添加する。例えば、ウレタン結合/ウレア結合のモル比率が95.0/5.0であるウレタン樹脂を合成する場合には、仕込んだポリイソシアネート由来のイソシアネート基の残存率が5.0モル%になった時点でイオン交換水を添加する。後述する実施例では、この第2の方法によって、ウレタン樹脂におけるウレタン結合/ウレア結合のモル比率を調整した。
イソシアネート基とアミンが反応するとウレア結合が形成される。したがって、ポリアミンを用いる場合には、ウレタン樹脂における、ウレタン結合/ウレア結合のモル比率が所望の比率になるようにその使用量を決定することが好ましい。
[合成方法]
ウレタン樹脂の合成方法としては、従来、ウレタン樹脂の合成方法として一般的に利用されているもののいずれも利用することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。ポリイソシアネート、及び、それと反応する化合物(ポリオールやポリアミン)を用いて、プレポリマーを合成する。この際、必要に応じて沸点100℃以下の有機溶剤を使用してもよく、また、中和剤を用いてプレポリマーの酸基を中和する。その後、鎖延長剤や架橋剤を含む液体中にプレポリマーを添加し、鎖延長反応や架橋反応を行う。次いで、有機溶剤を使用した場合には除去して、ウレタン樹脂を得る。
中和剤としては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基;などが挙げられる。中和剤は、プレポリマーが有する酸性基1モル当たり、好ましくは0.5〜1.0モル、より好ましくは0.8〜1.0モル用いる。この範囲外であると、ウレタン樹脂を含む液体の不安定化や粘度上昇が生じ、インク調製の作業性が若干低下する場合がある。
ウレタン樹脂の合成に用いる化合物(ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなど)の1分子当たりの反応基(イソシアネート基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基など)の数は、所望とするウレタン樹脂の特性に合わせて決定する。例えば、1分子当たり1つの反応基を持つ化合物は、ウレタン樹脂の末端に存在するユニットとなる。また、1分子当たり2つ以上の反応基を持つ化合物は、ウレタン樹脂を構成する他のユニットに挟まれる位置に存在するユニットとなり、なかでも、1分子当たり3つ以上の反応基を持つ化合物は、ウレタン樹脂を架橋させるためのユニットとなる。ウレタン樹脂を架橋させたい場合には、所望の架橋度に応じて、構成ユニットとして1分子当たり3つ以上の反応基を持つ化合物に由来するユニットを用いればよい。逆に、ウレタン樹脂を架橋させたくない場合には、構成するユニットとして1分子当たり2つの反応基を持つ化合物に由来するユニットのみを用いればよい。
[分析方法]
〔組成〕
ウレタン樹脂の組成は、以下の方法によって分析することができる。先ず、ウレタン樹脂を含有するインクから、ウレタン樹脂を抽出する方法について説明する。具体的には、インクを80,000rpmで遠心分離して分取した上澄み液に、過剰の酸(塩酸など)を添加して析出したウレタン樹脂を抽出することができる。また、前記上澄み液を乾固させることによってウレタン樹脂を分取することもできる。また、顔料を溶解しないが、ウレタン樹脂は溶解するような有機溶剤(ヘキサンなど)を用いて、インクからウレタン樹脂を抽出することもできる。なお、インクからも分析を行うことはできるが、上述の方法によって抽出したウレタン樹脂(固形分)を用いることで、より精度が高い分析を行うことができる。
上記のようにして分取したウレタン樹脂を乾燥させた後、重水素化ジメチルスルホキシド(重DMSO)に溶解させて測定対象の試料を調製する。そして、この試料について、プロトン核磁気共鳴法(H−NMR)により分析を行って得られたピークの位置から、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどの種類を確認することができる。さらに、各成分の化学シフトのピークの積算値の比から、組成比を算出することもできる。また、ウレタン樹脂を熱分解ガスクロマトグラフィーにより分析しても、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリアミンなどの種類を確認することができる。さらに、カーボン核磁気共鳴分光法(13C−NMR)により分析を行って、酸基を有しないポリオールの単位ユニットの繰り返し数を求め、数平均分子量を算出することができる。さらに、乾燥させたウレタン樹脂をテトラヒドロフランに溶解し、水酸化カリウムのエタノール滴定液を用いた電位差滴定により、ポリオールのうち、酸基を有するポリオールの占める割合を測定することができる。
〔ウレタン結合/ウレア結合のモル比率〕
ウレタン樹脂におけるウレタン結合/ウレア結合のモル比率は以下のようにして確認することができる。具体的には、重DMSOに溶解させたウレタン樹脂について、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)による分析を行って算出した、ウレタン結合とウレア結合のピークの積算値の比から求める。ただし、ウレタン結合とウレア結合のピークの位置は、ウレタン樹脂の合成に使用した化合物の種類によって異なる。したがって、ウレタン樹脂の合成に使用した化合物についてのウレタン結合とウレア結合のピークの位置を調べる必要がある。その方法を以下に示す。
先ず、ウレタン樹脂の組成、具体的には、ポリイソシアネートと、それと反応する成分(ポリオールや酸基含有ジオールなど)を分析する。なお、ウレタン樹脂の組成の分析方法については、前述する手法を利用することができる。次いで、当該ポリイソシアネートに対応するウレタン結合及びウレア結合の化学シフトを確認するため、以下の操作を行う。ポリイソシアネート、及び、それと反応する成分(ポリオール、酸基含有ジオール、ポリアミン、水)を1種ずつ用いて、反応物を調製する。例えば、ポリオールと酸基含有ジオールが併用されていれば、(i)ポリイソシアネートとポリオールの反応物、(ii)ポリイソシアネートと酸基含有ジオールの反応物、(iii)ポリイソシアネートと水の反応物、をそれぞれ調製する。このようにして調製した反応物を重DMSOに溶解させ、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)により分析を行って、各反応物についてのウレタン結合及びウレア結合の化学シフトを確認する。
上記の例であれば、(i)と(ii)の反応物からウレタン結合の化学シフトを、また、(iii)の反応物からウレア結合の化学シフトを、それぞれ確認する。そして、得られたそれぞれの化学シフトから、ウレタン結合とウレア結合のピークを特定し、それらのピークの積算値の比からウレタン樹脂におけるウレタン結合/ウレア結合のモル比率を算出する。なお、例えば、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを用いたウレタン樹脂の化学シフトは、測定条件やウレタン樹脂の組成により多少のずれは生じるが、ウレタン結合は155ppm付近、ウレア結合は158ppm付近にピークが検出される。
後述する実施例では、以下のようにしてウレタン樹脂におけるウレタン結合/ウレア結合のモル比率を求めた。合成したウレタン樹脂を含む液体に過剰の酸(塩酸)を添加し、析出したウレタン樹脂を分取し、乾燥させた。これを重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、カーボン核磁気共鳴法(13C−NMR)による核磁気共鳴装置(Avance500、BRUKER Bio Spin製)により、ウレタン結合及びウレア結合の化学シフトのピーク積算値を求めた。そして、これらのピーク積算値の比率から、ウレタン結合/ウレア結合のモル比率を求めた。
(水溶性有機溶剤)
通常「水溶性有機溶剤」とは液体を指すものであるが、本発明においては、温度25℃で固体であるものも水溶性有機溶剤に含めることとする。水溶性有機溶剤の具体例としては、以下に示すものなどが挙げられる(括弧内の数値は、温度25℃における比誘電率を表す)。メチルアルコール(33.1)、エチルアルコール(23.8)、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(18.3)、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4の1価アルコール類。1,2−プロパンジオール(28.8)、1,3−ブタンジオール(30.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、1,5−ペンタンジオール(27.0)、1,2−ヘキサンジオール(14.8)、1,6−ヘキサンジオール(7.1)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(23.9)などの2価アルコール類。1,2,6−ヘキサントリオール(28.5)、グリセリン(42.3)、トリメチロールプロパン(33.7)、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類。エチレングリコール(40.4)、ジエチレングリコール(31.7)、トリエチレングリコール(22.7)、テトラエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、チオジグリコールなどのアルキレングリコール類。ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(9.8)などのグリコールエーテル類。数平均分子量600のポリエチレングリコール(11.5)、同1,000のポリエチレングリコール(4.6)、ポリプロピレングリコールなどの数平均分子量200乃至1,000のポリアルキレングリコール類。2−ピロリドン(28.0)、N−メチル−2−ピロリドン(32.0)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリン、尿素(110.3)、エチレン尿素(49.7)、トリエタノールアミン(31.9)などの含窒素化合物類。ジメチルスルホキシド(48.9)、ビス(2−ヒドロキシエチルスルホン)などの含硫黄化合物類。インクに含有させる水溶性有機溶剤としては、比誘電率が3.0以上のものが好ましく、温度25℃での蒸気圧が水より低いことが好ましい。
水溶性有機溶剤の比誘電率は、誘電率計(例えば、BI−870、BROOKHAVEN INSTRUMENTS CORPORATION製など)を用いて、周波数10kHzの条件で、測定することができる。温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率は、50.0質量%水溶液の比誘電率を測定し、下記式(A)から算出することができる。
εsol=2ε50%−εwater ・・・(1)
εsol:温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率
ε50%:温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の50.0質量%水溶液の比誘電率
εwater:水の比誘電率
温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を50.0質量%水溶液の比誘電率から算出する理由は、以下に示す通りである。温度25℃で固体の水溶性有機溶剤のうち、インクの構成成分となりうるものには、50.0質量%を超える高濃度水溶液の調製が困難なものがある。一方、10.0質量%以下の低濃度水溶液では水の比誘電率が支配的となり、水溶性有機溶剤の確からしい(実効的な)比誘電率の値を得ることは困難である。そこで、本発明者らが検討を行ったところ、インクに用いる温度25℃で固体の水溶性有機溶剤のほとんどが、測定対象となる水溶液を調製可能であり、かつ、算出される比誘電率も本発明の効果と整合することが判明した。以上の理由により、本発明においては50.0質量%水溶液の比誘電率から、温度25℃で固体の水溶性有機溶剤の比誘電率を算出して用いることとした。温度25℃で固体の水溶性有機溶剤であっても、水への溶解度が低く、50.0質量%水溶液を調製できないものについては、飽和濃度の水溶液を利用し、上記のεsolを算出する場合に準じて算出した比誘電率の値を便宜的に用いる。
[第1水溶性有機溶剤]
インクは、比誘電率が20.0以下の第1水溶性有機溶剤を含有する。第1水溶性有機溶剤の比誘電率は、10.0以下であることが好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。比誘電率が10.0以下であると、ウレタン樹脂の有する酸基の近傍に第1水溶性有機溶剤がより近づきにくくなるため、ウレタン樹脂が凝集しやすくなる。これにより、画像の光学濃度が向上する。インク中の第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.5質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。
第1水溶性有機溶剤としては、数平均分子量200のポリエチレングリコール(18.9)、イソプロピルアルコール(18.3)、1,2−ヘキサンジオール(14.8)、数平均分子量600のポリエチレングリコール(11.5)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(9.8)、数平均分子量1,000のポリエチレングリコール(4.6)などが挙げられる。なかでも、第1水溶性有機溶剤は、トリエチレングリコール(23.7)であることが好ましい。なお、インクが、比誘電率が20.0以下の第1水溶性有機溶剤を含有すれば、さらに比誘電率が20.0を超える水溶性有機溶剤も併用して用いることができる。
第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、ウレタン樹脂の含有量(質量%)に対する質量比率で、2.0倍以上10.0倍以下であることが好ましい。前記比率が2.0倍未満であると、ウレタン樹脂に対して第1水溶性有機溶剤が少ないため、ウレタン樹脂が凝集しにくくなり、画像の光学濃度が十分に得られない場合がある。前記比率が10.0倍を超えると、ウレタン樹脂に対して第1水溶性有機溶剤が多いため、ウレタン樹脂の近傍以外にも第1水溶性有機溶剤が多く存在し、インクの粘度が上がりやすい。これにより、インクが吐出口面に付着しやすくなり、吐出ヨレを十分に抑制できない場合がある。
(水性媒体)
インクは、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤は、第1水溶性有機溶剤を含むこと以外は、特に限定されるものではない。水溶性有機溶剤としては、その他のアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及び含窒素化合物類などの水性のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、45.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上55.0質量%以下であることが好ましい。この含有量は、第1水溶性有機溶剤を含む値である。水溶性有機溶剤の含有量が3.0質量%未満であると、インクをインクジェット記録装置に用いる場合に吐出安定性などの信頼性が十分に得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が55.0質量%超であると、インクの粘度が上昇して、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の成分)
インクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(インクの物性)
本発明においては、温度25℃における、インクのpH、静的表面張力、粘度が以下の範囲内であることが好ましい。pHは5.0以上10.0以下であることが好ましく、7.0以上9.5以下であることがさらに好ましい。静的表面張力は30mN/m以上45mN/m以下であることが好ましく、35mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。また、粘度は1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
略称は以下の通りである。HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、IPDI:イソホロンジイソシアネート、TDI:トリレンジイソシアネート、MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート、PPG:ポリプロピレングリコール、PTMG:ポリテトラメチレングリコール、PEG:ポリエチレングリコール、PC:ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、DMPA:ジメチロールプロピオン酸、EDA:エチレンジアミン。
<ウレタン樹脂の合成>
酸基を有しないポリオールを用いる場合、表1に記載の酸基を有しないポリオール(モル)をメチルエチルケトンに充分撹拌溶解した。次いで表1に記載のポリイソシアネート(モル)、及び酸基を有するポリオール(モル)を加え、温度75℃で1時間反応させて、プレポリマー溶液を得た。得られたプレポリマー溶液を温度60℃まで冷却して、水酸化カリウム水溶液を加え、酸基を中和した。その後、温度40℃まで冷却してイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌することで乳化した。乳化後、鎖延長剤(モル)を加え、鎖延長反応を温度30℃にて12時間行った。フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)によりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで、この溶液を加熱減圧下、メチルエチルケトンを留去し、ウレタン樹脂の含有量が20.0%であるウレタン樹脂1〜19を含む液体を得た。表1の下段に、ポリオールのうち、酸基を有するポリオールの割合(モル%)(表中「酸基を有するポリオールの割合」と記載)、ウレア結合に対するウレタン結合の割合(モル比率)(表中「ウレタン結合/ウレア結合のモル比率」と記載)、ウレタン樹脂の酸価(mgKOH/g)、及びウレタン樹脂の重量平均分子量を記載する。
ウレタン樹脂の酸価の測定方法は、以下の通りである。流動電位滴定ユニット(PCD−500)を搭載した電位差自動滴定装置(AT−510、京都電子工業製)を用い、電位差を利用したコロイド滴定により、テトラヒドロフランに溶解させたウレタン樹脂について、酸価を測定した。この際、滴定試薬としては、水酸化カリウムのエタノール溶液を用いた。
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、GPCにより、以下のようにして測定した。温度25℃で24時間かけて、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。得られた溶液を、メンブレンフィルターでろ過して、サンプル溶液を得た。サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.3%となるように調整した。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で樹脂の重量平均分子量を測定した。
装置:Waters2695 Separations Module、Waters製
RI検出器:2414detector、Waters製
カラム:KF−806Mの4連、昭和電工製
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:温度40℃
試料注入量:100μL
樹脂の重量平均分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500、東ソー製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用した。
<アクリル樹脂の合成>
スチレン69部、α−メチルスチレン10部、アクリル酸21部を用いて、常法により、アクリル樹脂を合成した。10.0%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてカルボキシ基を中和し、さらに適量のイオン交換水を加えて、アクリル樹脂の含有量が10.0%であるアクリル樹脂を含む液体を得た。アクリル樹脂の酸価は、164mgKOH/gだった。アクリル樹脂の酸価の測定方法は、ウレタン樹脂の測定方法と同様である。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1)
水5.5gに濃塩酸5.0gを溶かした溶液に、温度5℃で、4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。温度10℃以下を維持するために、アイスバスで撹拌しながら、上記で得られた溶液に、水9.0gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。15分撹拌後、カーボンブラック(ブラックパールズ880、キャボット製)6.0gを加え、混合した。さらに、15分撹拌後、得られたスラリーをろ紙(標準用ろ紙No.2、アドバンテック製)でろ過し、カーボンブラックを十分に水洗し、温度110℃のオーブンで乾燥させた。得られたカーボンブラックに水を添加して、顔料分散液を得た。その後、顔料のカウンターイオンをナトリウムイオンからカリウムイオンに置換し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液1を得た。顔料分散液1には、顔料の粒子表面に−C−(COOK)基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
(顔料分散液2)
水500.0g、及びカーボンブラック15.0g(ブラックパールズ880、キャボット製)を混合し、15,000rpmで30分間撹拌して、顔料を予備湿潤させた。ここに水4,485gを加え、高圧ホモジナイザーで分散させて、分散液を得た。得られた分散液を高圧容器に移し、圧力3.0MPaで加圧した後、オゾン濃度が100ppmであるオゾン水を導入することによって顔料のオゾン酸化処理を行い、分散液を得た。水酸化カリウムを用いて、分散液のpHを10.0に調整し、顔料の含有量が10.0%である顔料分散液2を得た。顔料分散液2には、顔料の粒子表面に−COOK基が結合している自己分散顔料が含まれていた。
(顔料分散液3)
カーボンブラック(ブラックパールズ880、キャボット製)10.0g、樹脂を含む液体20.0g、及びイオン交換水270.0gを混合して、混合物を得た。樹脂を含む液体としては、スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体の含有量が20.0%である液体を用いた。スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体は、重量平均分子量が10,000である。得られた混合物を、サンドグラインダーを用いて1時間分散した後、ポアサイズが3.0μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過した。次いで、イオン交換水を加えて、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%である顔料分散液3を得た。
(顔料分散液4)
顔料10.0g、樹脂を含む液体20.0g、及びイオン交換水270.0gを混合して、混合物を得た。顔料としては、カーボンブラック(ブラックパールズ880、キャボット製)を用いた。また、樹脂を含む液体としては、スチレン−アクリル酸共重合体を、共重合体の酸価に対して等モル量の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、樹脂の含有量が20.0%である液体を用いた。スチレン−アクリル酸共重合体は、酸価が200mgKOH/g、重量平均分子量が10,000である。得られた混合物を、サンドグラインダーを用いて1時間分散した後、ポアサイズが3.0μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)で加圧ろ過した。次いで、イオン交換水を加えて、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%である顔料分散液4を得た。
(顔料分散液5)
顔料10.0部、樹脂を含む液体25.0部、及びイオン交換水65.0部を混合して、混合物を得た。顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3(Hostaperm Blue B2G、クラリアント製)を用いた。また、樹脂を含む液体としては、スチレン−アクリル酸共重合体を、共重合体の酸価に対して0.95当モル量の水酸化カリウム水溶液で中和し、樹脂の含有量が20.0%である液体を用いた。スチレン−アクリル酸共重合体は、酸価が215mgKOH/g、重量平均分子量が8,500(ジョンクリル678、BASF製)である。この混合物を、ジルコニアビーズ(0.3mm径)の充填率が80%であるビーズミルを用いて5時間分散した。その後、この分散液を遠心分離処理して粗大粒子を除去し、イオン交換水を加えて、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%である顔料分散液5を得た。顔料分散液5を含有するインクは、シアンインクである。
(顔料分散液6)
顔料分散液5の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントレッド202(Ink Jet Magenta E 02、BASF製)とC.I.ピグメントバイオレット19(Ink Jet Magenta E 02、BASF製)との固溶体に変更した。それ以外は、顔料分散液5の調製と同様の手順で、顔料分散液6(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%)を得た。顔料分散液6を含有するインクは、マゼンタインクである。
(顔料分散液7)
顔料分散液5の調製において、顔料の種類をC.I.ピグメントイエロー74(Hansa yellow 5GXB、クラリアント製)に変更した。それ以外は、顔料分散液5の調製と同様の手順で、顔料分散液7(顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%)を得た。顔料分散液7を含有するインクは、イエローインクである。
<インクの調製>
表2〜4に記載の各成分を混合した。ポリエチレングリコールに付した数値は、数平均分子量である。アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。表中、括弧内の数値は、温度25℃における比誘電率を表す。比較例8のインクは、特許文献2の製造例3と同様に調製した油性インクである。比較例8のインクに含まれるウレタン樹脂の酸価は、179mgKOH/gである。表2〜4の下段には、顔料の含有量、ウレタン樹脂の含有量、第1水溶性有機溶剤の含有量、及びウレタン樹脂に対する第1水溶性有機溶剤の含有比率(表中「第1水溶性有機溶剤/ウレタン樹脂(倍)」と記載)を記載する。
<評価>
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、吐出口面が撥水処理されている記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(PIXUS iP3100、キヤノン製)に搭載した。撥水処理には、フルオロアルキル基を有する加水分解性シラン化合物(フルオロメチル基及びメトキシ基を有する化合物)、及びカチオン重合性基を有する加水分解性シラン化合物(エポキシ基及びエトキシ基を有する化合物)の縮合物を硬化させた樹脂を用いた。吐出口面における水の接触角を、自動接触角測定機(CA−W、協和界面科学製)を用いて測定したところ、90度以上だった。前記インクジェット記録装置の解像度は2400dpi×1200dpiである。そして、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、30.4ngのインク滴を1滴付与する条件で記録した画像を記録デューティが100%であると定義する。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、A又はBを許容できるレベルとし、Cを許容できないレベルとした。評価結果を表6に示す。
(耐擦過性)
上記のインクジェット記録装置を用いて、普通紙(PPC用紙GF−500、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、1.0インチ×0.5インチのベタ画像を記録した。記録の10分後及び1日後にそれぞれ、得られたベタ画像の上に、シルボン紙、そして面圧が40g/cmである分銅を置き、ベタ画像とシルボン紙を擦り合わせた。その後、シルボン紙及び分銅を除き、シルボン紙の白地部の汚れを目視により観察した。
A:10分後及び1日後において、白地部がほとんど汚れなかった。
B:10分後において、白地部が汚れたが、1日後においては、白地部がほとんど汚れなかった。
C:10分後及び1日後において、白地部が汚れた。
(吐出ヨレの抑制)
上記のインクジェット記録装置を用いて、普通紙(PPC用紙GF−500、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、19cm×26cmのベタ画像を、2枚記録した。そして、インクジェット記録装置を30分間放置した後、記録ヘッドを取り外し、吐出口面を顕微鏡で観察した。さらに、再度記録ヘッドをインクジェット記録装置に装着し、上記と同様の画像を、2枚記録する工程を1サイクルとし、これを20サイクル繰り返した。その後、PIXUS iP3100のノズルチェックパターンを1枚記録した。このときのノズルチェックパターンを目視で観察することにより、吐出ヨレの抑制を評価した。さらに、記録ヘッドを取り外し、吐出口面を顕微鏡で観察した。
A:吐出口面には、付着物がなく、ノズルチェックパターンに乱れは確認されなかった。
B:吐出口面には、わずかに付着物があったが、ノズルチェックパターンに乱れは確認されなかった。
C:吐出口面には、わずかに付着物があり、ノズルチェックパターンに若干の乱れが確認された。
(光学濃度)
上記インクジェット記録装置を用いて、4種類の普通紙((1)PPC用紙GF−500、キヤノン製、(2)PPC用紙4024、ゼロックス製、(3)PPC用紙ブライトホワイト、ヒューレッドパッカード製、(4)PPC用紙ハンマーミルジェットプリント、インターナショナルペーパー製)に、記録デューティが100%である、2cm×2cmのベタ画像を記録した。得られたベタ画像を温度25℃で1日放置した後、光学濃度計(マクベスRD−918、マクベス製)を用いて、得られた画像の光学濃度を測定した。評価基準は表5に示す。

Claims (6)

  1. 水性インク、及び前記水性インクを吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置を使用し、前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、ウレタン樹脂、及び水溶性有機溶剤を含有し、
    前記ウレタン樹脂が、ポリイソシアネート、及び酸基を有するポリオールを含むポリオール、のそれぞれに由来するユニットを有し、
    前記ポリオールのうち、前記酸基を有するポリオールの占める割合(モル%)が、99.9モル%以上であり、
    前記水溶性有機溶剤が、温度25℃での比誘電率が20.0以下の第1水溶性有機溶剤を含み、
    前記記録ヘッドの吐出口面が、撥水処理されていることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記ウレタン樹脂におけるウレタン結合が占める割合(モル%)が、ウレア結合が占める割合(モル%)に対するモル比率で、80.0/20.0以上100.0/0.0以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記ポリイソシアネートが、芳香族ポリイソシアネートを含む請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第1水溶性有機溶剤の温度25℃での比誘電率が、10.0以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記顔料が、自己分散顔料を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 水性インクを吐出する記録ヘッドの吐出口面が、撥水処理されている記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
    前記水性インクが、アニオン性基の作用によって分散されている顔料、ウレタン樹脂、及び水溶性有機溶剤を含有し、
    前記ウレタン樹脂が、ポリイソシアネート、及び酸基を有するポリオールを含むポリオール、のそれぞれに由来するユニットを有し、
    前記ポリオールのうち、前記酸基を有するポリオールの占める割合(モル%)が、99.9モル%以上であり、
    前記水溶性有機溶剤が、温度25℃での比誘電率が20.0以下の第1水溶性有機溶剤を含むことを特徴とするインクジェット記録装置。
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