以下、本発明に係る燃料電池装置の実施の形態について、図1から図9を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池装置の左側面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池装置の外装等(カバーやシート)を外した状態の左側面図である。
図3は、本発明の実施形態に係る燃料電池装置の外装等(カバーやシート)を外した状態の斜視図である。
図1から図3に示すように、本実施形態に係る燃料電池装置としての燃料電池車両1は、燃料電池2で発電し、この電力でモータ3を駆動させて走行する。また、燃料電池車両1は、スクータ型の自動二輪車である。なお、燃料電池車両1は、三輪車や四輪車であっても良い。
なお、本実施形態における前後上下左右の表現は、燃料電池車両1の搭乗者を基準にする。図1から図3中の実線矢印Fは燃料電池車両1の前方を表し、実線矢印Rは燃料電池車両1の後方を表している。
燃料電池車両1は、前後に延びる車体5と、操舵輪としての前輪6と、前輪6を操舵自在に支えるステアリング機構7と、駆動輪としての後輪8と、後輪8を上下方向へ揺動自在に支えるスイングアーム9と、後輪8の駆動力を発生させるモータ3と、を備えている。
車体5は、車両の前後に延びるフレーム11と、フレーム11を覆う外装12と、フレーム11後半部の上方に配置されるシート13と、を備えている。
また、車体5は、燃料電池2と、燃料電池2で発電に使用される燃料としての水素の高圧ガスを貯蔵する燃料タンク15と、燃料電池2の電力を補助する二次電池16と、燃料電池2の出力電圧の調整と燃料電池2および二次電池16の電力の分配とを制御する電力管理装置17と、電力管理装置17が出力する直流電力を三相交流電力に変換してモータ3へ出力し、モータ3を運転するインバータ18と、これらを統括的に管理する車両コントローラ19と、を備えている。
燃料電池車両1のパワートレインは、燃料電池2および二次電池16を有し、車両の走行状態、燃料電池2の発電状態、二次電池16の蓄電状態によって各電池の電力を適宜に使うシステムである。また、燃料電池車両1は、減速する際にモータ3で回生電力を発生させる。車両の電源である二次電池16および燃料電池2は、インバータ18に並列に接続されてモータ3へ電力を供給する。二次電池16は、燃料電池車両1が減速する際にモータ3で発生する回生電力および燃料電池2が発電する電力を蓄える。
フレーム11は、複数の鋼鉄製中空管を一体に組み合わせたものである。フレーム11は、前端上部に配置されるヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21の中央部から後ろ下がりに傾斜して延びる上部ダウンフレーム22と、ヘッドパイプ21の下方に配置され、後ろ下がりに傾斜して延びる下部ダウンフレーム23と、左右一対の下部フレーム24と、左右一対の上部フレーム25と、ピボット軸26と、上ブリッジフレーム27と、下ブリッジフレーム28と、ガードフレーム29と、搭載機器保護フレーム30と、を備えている。
ヘッドパイプ21は、ステアリング機構7を操舵自在、つまり車両の左右方向へ揺動自在に支持している。
左右一対の下部フレーム24は、下部ダウンフレーム23の左右に配置され、ヘッドパイプ21の下部に接続されている。また、左右一対の下部フレーム24は、ヘッドパイプ21との接続部分から下部ダウンフレーム23に沿って略平行に、かつ後ろ下がりに傾斜して延びる前側傾斜部分と、前側傾斜部分の下端で後方に向かって湾曲する前側の湾曲部分と、前側の湾曲部分の後端から略水平に車体5の後方へ向かって車体5の中央部分(車両の前後方向で中央部分)に達するまで直線状に延びる直線部分と、を有している。さらに、左右一対の下部フレーム24は、直線部分の後端部から後上方に向けて湾曲する後ろ側の湾曲部分と、この後ろ側の湾曲部分の上端部から後ろ上がりに傾斜して延びる後側傾斜部分と、後側傾斜部分を上部フレーム25に接続する上下フレーム接合部と、を有している。なお、左右の下部フレーム24の間隔は、左右の上部フレーム25の間隔よりも広い。
左右の下部フレーム24の上部の間には、実質的に車両の左右方向へ直線状に延びるヘッドパイプ近傍ブリッジフレーム34が架設されている。また、左右それぞれの下部フレーム24は、フットレストブラケット31aを備えている。フットレストブラケット31aは、下部フレーム24の前側の湾曲部分の外側に配置されるフットボード31を下方から支持している。搭乗者は、フットボード31に足を置くことができる。
車体5の左側に配置される下部フレーム24は、サイドスタンドブラケット(図示省略)を備えている。サイドスタンドブラケット(図示省略)には、燃料電池車両1を左側へ傾けた状態で自立させるサイドスタンド(図示省略)が設けられている。サイドスタンドは、燃料電池車両1を自立させる起立位置と、走行の妨げとならないよう車体5に添う収納位置との間を揺動する。
左右一対の上部フレーム25は、車体5の前半部において下部フレーム24の前側傾斜部分の上下方向の中央部に接続されている。左右一対の上部フレーム25は、下部フレーム24の前側傾斜部分との接続部分から車体5の後方に向かって略水平に延びる水平部分と、左右一対の上部フレーム25の水平部分の後端であって、車体5の後半部、かつ後輪8の上方部分において後ろ上がりに大きく傾斜し、車体5の左右方向内側へ湾曲して後輪8の太さ(幅寸法)程度に接近する後端部と、を有している。
ピボット軸26は、車体5の後半部において左右の上部フレーム25間に架設されている。また、ピボット軸26は、上部フレーム25の下側、かつ上部フレーム25と下部フレーム24との合流部分(上下フレーム接合部)よりも後方であって、上部フレーム25の水平部分と下部フレーム24の後側傾斜部分とに接続されるブラケット26aに配置されている。ブラケット26aは、左右に一対ある。
上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の前端部に架設されている。上ブリッジフレーム27は、左右の上部フレーム25の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の上部フレーム25を連結している。
下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の前側の湾曲部分に架設されている。下ブリッジフレーム28は、左右の下部フレーム24の間を実質的に車両の左右方向へ直線状に延びて、左右の下部フレーム24を連結している。
ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24の後側の湾曲部分に架設されている。ガードフレーム29は、左右の下部フレーム24との接続部分から後下方に延びるとともに、フレーム11の内部空間を拡大するように後ろ下がりのU字形状に延びている。ガードフレーム29には、燃料電池車両1を直立状態で自立させるセンタースタンド33が設けられている。センタースタンド33は、燃料電池車両1を自立させる起立位置と、走行の妨げとならないよう車体5に添う収納位置との間を揺動する。
上部ダウンフレーム22は、ヘッドパイプ21と上ブリッジフレーム27との間に架設されている。
下部ダウンフレーム23の上端部は、左右の下部フレーム24に架設されるヘッドパイプ近傍ブリッジフレーム34の車両の左右方向中央部に接続される上端部と、下ブリッジフレーム28の車両の左右方向中央部に接続される下端部と、を有している。
搭載機器保護フレーム30は、上部フレーム25の後半部の上部に設けられている。搭載機器保護フレーム30は、燃料電池2を燃料電池車両1の車体に支持している。また、搭載機器保護フレーム30は、その一部を上部フレーム25に着脱できる。
シート13は、フレーム11の後半部上方を覆って前後に延びている。シート13はタンデム式であり、搭乗者を着座させる前半部13aと、同乗者を着座させる後半部13bとを一体的に備えている。また、シート13は、前半部13aと後半部13bとの間に傾斜部13cを備えている。
ここで、左右の上部フレーム25および左右の下部フレーム24で囲まれる空間をセンタートンネル領域35と呼び、上部フレーム25の後半部、外装12およびシート13で囲まれる空間を機器搭載領域36と呼び、センタートンネル領域35の後方かつ機器搭載領域36の下方の空間をタイヤハウス領域37と呼ぶ。
センタートンネル領域35は、燃料タンク15を収容している。本実施形態に係るスクータ型の燃料電池車両1では、センタートンネル領域35は、車両の前後方向に沿って搭乗者が足を乗せる左右のフットボード31の間に配置され、フットボード31の足載せ領域を左右に分断するようにフットボード31よりも上方に隆起している。換言すると、センタートンネル領域35の左右には、足載せ領域となるフットボード31が配置され、左右のフットボード31の間に燃料タンク15が配置されている。
機器搭載領域36は、車体5の前側から順に二次電池16、電力管理装置17、燃料電池2を収容している。機器搭載領域36の前端部、中央部、後端部、および中央部から後端部に渡る側部は、搭載機器保護フレーム30によって保護されている。
搭載機器保護フレーム30は、機器搭載領域36を囲んで機器搭載領域36に搭載される機器を保護している。
タイヤハウス領域37には後輪8が配置されている。
機器搭載領域36とタイヤハウス領域37との間には、それぞれの領域を分断する隔壁部材としてのリアフェンダ38が設けられている。
外装12は、車体5の前半部を覆うフロントレッグシールドカバー41と、車体5の中央上部に配置されてセンタートンネル領域35などの上部フレーム25の上方を覆うフロントフレームカバー42と、車体5の後半部に配置されて機器搭載領域36などの車体5の側面のうちシート13の下方部分を覆うフレームカバー43と、を備えている。
フレームカバー43は、シート13とともに機器搭載領域36を囲んでいる。機器搭載領域36は、シート13、フレームカバー43およびリアフェンダ38に囲まれる閉鎖的な空間である。機器搭載領域36は、フレームカバー43、もしくはリアフェンダ38の適宜の箇所に設けられる通気孔(図示省略)によって、燃料電池2への空気の流れを容易、かつ確実に制御し、また冷却が必要な装置へ冷却風としての空気の流れを容易、かつ確実に制御している。なお、機器搭載領域36は、各カバー(フロントフレームカバー42、フレームカバー43など)の継ぎ目などから空気が入り込むことを許容する。
ステアリング機構7は、車体5の前方に配置されて、フレーム11のヘッドパイプ21を中心に左右方向へ揺動し前輪6の操舵を可能にする。ステアリング機構7は、頂部に設けられるハンドル45と、ハンドル45と前輪6とを連結し、若干後ろに傾斜して上下に延びる左右一対のフロントフォーク46と、を備えている。左右のフロントフォーク46は、弾性的に伸縮自在なテレスコピック構造を備えている。左右のフロントフォーク46の下端部には、前輪6を回転自在に支持する車軸(図示省略)が架設されている。前輪6の上方には、フロントフェンダ47が配置されている。フロントフェンダ47は、左右のフロントフォーク46の間にあって、フロントフォーク46に固定されている。
前輪6は、左右のフロントフォーク46の下端部に架設されている車軸の周りに回転自在な従動輪である。
スイングアーム9は、車体5の左右方向に延びている回転中心としてのピボット軸26の周りに上下方向へ揺動する。スイングアーム9は、車体5の左右で前後方向に延びる一対のアーム部の間に後輪8を回転自在に支持している。フレーム11とスイングアーム9との間には、リアサスペンション48が架設されている。リアサスペンション48の上端部は、上部フレーム25の後端部に揺動自在に支持されている。リアサスペンション48の下端部は、スイングアーム9の後端部に揺動自在に取り付けられている。リアサスペンション48は、スイングアーム9の揺動を緩衝する。
またスイングアーム9は、後輪8を回転駆動させるモータ3と、燃料電池2から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3へ供給するインバータ18と、を収容している。
モータ3は、燃料電池2または二次電池16から供給される電力によって後輪8を回転駆動させ、これにより電動車両1を走行させる。モータ3は、スイングアーム9の後部に収容されて、後輪8の車軸と同軸に配置されている。モータ3はスイングアーム9に一体的に組み付けられてユニットスイング式スイングアームを構成している。
インバータ18は、スイングアーム9の前部に収容されて、ピボット軸26とモータ3との間に配置されている。インバータ18は、電力管理装置17が出力する直流電力を三相交流電力に変換し、その交流電力の周波数を変更してモータ3の回転数を調整する。
後輪8は、モータ3から駆動力が伝達される車軸(図示省略)によって支えられる駆動輪である。
燃料電池2は、燃料と酸化剤とを反応させて発電する。燃料電池2は、燃料として高圧ガス、例えば水素ガスを使用し、酸化剤として空気中の酸素を使用して発電し、空気を用いて冷却する空冷式燃料電池システムである。
燃料電池2は、機器搭載領域36の後半側に配置されている。さらに具体的には、燃料電池2は、シート13の前半部13aと後半部13bとの間の傾斜部から後半部13bの下方に渡って配置されている。
燃料電池2は、車体5の前後方向に延びる長辺を有する直方体形状であって、吸気口2aが配置される正面を前斜め下方へ向け、排気口2bが配置される背面を後ろ斜め上方へ向ける姿勢で機器搭載領域36に配置されている。つまり、燃料電池2は、前方側が後方側よりも下方に位置する前傾姿勢でフレーム11に固定されている。燃料電池2の上部は搭載機器保護フレーム30に固定され、燃料電池2の下部は上部フレーム25に固定されている。
燃料電池2は、正面側から背面側へ向かって連結される扁平な複数のモジュールを含んでいる。具体的には、燃料電池2は、正面側から順に積層状態に重ねられて連結されるフィルタ(図示省略)、吸気シャッタ(図示省略)、セルスタック(図示省略)、ファン(図示省略)、排気シャッタ2cを有している。燃料電池2の天面には、燃料電池用制御部(図示省略)が設けられている。
吸気シャッタは、開閉自在な空気の吸気口2aを有し、吸気口2aを開閉してセルスタックへの空気の導入量を制御することができる一方、吸気口2aを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成することができる。排気シャッタ2cは、開閉自在な空気の排気口2bを有し、排気口2bを閉じて燃料電池2内で空気を循環させる循環経路を形成することができる。換言すると、燃料電池2は、正面に開閉可能な吸気口2aを有し、背面に開閉可能な排気口2bを有し、吸気口2aおよび排気口2bを閉じることで燃料電池2内の空気を循環させることができる。
セルスタックは、吸気口から吸い込まれる空気に含まれる酸素と燃料タンク15から供給される水素とを電気化学反応させて発電し、発電後に湿潤な余剰ガスを生成する。
ファンは、機器搭載領域36内の空気を吸気口から燃料電池2内に吸い込むための吸込負圧を発生させる一方で、セルスタックから余剰ガスを吸い出して排気口から排気する。ファンが流動させる空気の流れは、セルスタックで発電に用いられる他に、燃料電池2の冷却に利用される。
燃料電池2の後方には、排気ダクト52が設けられている。燃料電池2のファンは、余剰ガスをセルスタックから吸い出して排気ダクト52へ排気する。排気ダクト52の前端部は、燃料電池2の箱体(排気シャッタ2cの枠体)に気密に接続されている。排気ダクト52は、車体5の後端で後下方と後上方に向かって開口される排気口52a(後述する第一排気口89、第二排気口91)を有している。排気ダクト52は、燃料電池2のファンから吐出される排気(余剰ガス)を、排気口52aへ導いて車体5の後方へ排出する。
排気ダクト52の排気口52aは、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方であって、望ましくは排気ダクト52の後方上端部に配置されている。換言すると、排気口52aの上縁部は、燃料電池2の排気口2bよりも高い位置に配置されている。排気ダクト52は、燃料電池2の排気面(背面)よりも上方に配置される排気口52aを有することによって、未反応の水素ガスを含む湿潤な余剰ガスを排気口52aに導いて車体5から確実に排気することができる。
燃料タンク15は高圧圧縮水素貯蔵システムである。燃料タンク15は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の、あるいはアルミライナ製複合容器である圧力容器55と、燃料充填口56を有する燃料充填用継手57と、燃料充填元弁58と、遮断弁(図示省略)とレギュレータ(図示省略)とを一体的に有する燃料供給元弁59と、二次減圧弁(図示省略)と、を備えている。
圧力容器55は、燃料電池2の燃料としての水素ガスを貯蔵するアルミライナ製複合容器である。燃料タンク15は、例えば約70MPaの水素ガスを貯蔵する。圧力容器55は、円筒形状の胴部と、胴部の前後の端面に設けられるドーム状の鏡板と、を有している。圧力容器55は、円筒胴の中心線を車体5の前後方向へ沿わせてセンタートンネル領域35内に配置されている。圧力容器55は、一対の上部フレーム25、一対の下部フレーム24、下ブリッジフレーム28、およびガードフレーム29に周囲を囲まれて、燃料電池車両1の転倒や衝突による負荷に対して堅牢に保護されている。
また、圧力容器55は、車体5の一方側の側部に配置される上部フレーム25、例えば車体5の右側に配置される上部フレーム25と、車体5の他方側の側部に配置される下部フレーム24、例えば車体5の左側に配置される下部フレーム24との間に架設されるクランプバンド61によってセンタートンネル領域35に支持されている。詳細には、圧力容器55は、右側の上部フレーム25と左側の下部フレーム24との間に架設される下クランプバンド(クランプバンド61の下半部)に載置され、上クランプバンド(クランプバンド61の上半部)で締め付け挟持されている。なお、クランプバンド61は、車体5の左側に配置される上部フレーム25と、車体5の右側に配置される下部フレーム24との間に架設されていても良い。
燃料充填用継手57は、センタートンネル領域35の外側、詳しくはセンタートンネル領域35の後ろ上方であって、機器搭載領域36の前端部に配置されている。燃料充填用継手57は、二次電池16よりも上方、あるいは真上に配置されている。燃料充填用継手57は、搭載機器保護フレーム30の継手用ブラケット30fに固定されている。燃料充填用継手57は、燃料充填時に設備側の継手を車体の上方、かつ左側から差し込めるよう、車体5の上方、かつやや左側に向かって延びている。燃料充填用継手57は、シート13の前端部に設けられる燃料充填口用リッド62によって覆い隠されている。燃料充填口用リッド62は、ヒンジ機構(図示省略)を介してシート13に支持されており、揺動することで開閉する。燃料充填用継手57は、燃料としての水素の高圧ガスを燃料タンク15に導き入れる入口としての燃料充填口56を有している。
燃料充填口56は、燃料充填用継手57の頂部に配置されている。また、燃料充填口56は、車体5の左上方を向いている。燃料タンク15に燃料を充填する際、燃料充填口用リッド62を開放した状態において、燃料充填口56の上方は、雰囲気に開放されている。したがって、高圧ガス(燃料、水素ガス)を燃料タンク15に充填する際、仮に高圧ガス(燃料、水素ガス)が漏洩しても、漏洩燃料は滞留することなく燃料電池車両1の上方へ拡散する。
燃料充填元弁58および燃料供給元弁59は、一体化されて圧力容器55の後方側の鏡板の頂部に設けられているタンクバルブ63に内蔵されている。タンクバルブ63は、ガードフレーム29で囲まれた空間に配置されている。燃料供給元弁59は、遮断弁(図示省略)および一次減圧弁(図示省略)を備えている。燃料充填元弁58と燃料供給元弁59の遮断弁とは、電磁弁を用いた開閉弁である。燃料供給元弁59の一次減圧弁と二次減圧弁とは、圧力容器55からの高圧燃料ガスの圧力を順次減圧して調整する。
二次電池16は、箱状のリチウムイオン電池である。二次電池16は、機器搭載領域36の前端部であって、圧力容器55の後半部、つまり円筒胴の後半部、および後方側の鏡板とシート13の前半部13aとの間に配置されている。
なお、燃料電池車両1は、二次電池16の他に、メータ類(図示省略)、ランプ類(図示省略)用の電源として、例えば12V系の電力を供給する第2二次電池(図示省略)を備えている。第2二次電池は、ヘッドパイプ21の周囲、例えば、ヘッドパイプ21の右側の側方に配置されている。
電力管理装置17は、機器搭載領域36内で二次電池16と燃料電池2との間に配置され、フレーム11に固定されている。なお、電力管理装置17は二次電池16と同じ防水ケース内に配置されていても良い。
車両コントローラ19は、燃料電池車両1内で比較的に高所となるヘッドパイプ21の周囲、例えば、12V系の電力を供給する第2二次電池の反対側にあたるヘッドパイプ21の左側の側方に配置されている。
次いで、燃料電池車両1の排気ダクト構造について詳しく説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の排気ダクト構造の縦断面図である。
図5は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の排気ダクト構造の斜視図である。
図6は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の排気ダクトの正面図である。
図7は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の排気ダクト構造の左側面図である。
図8は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両の排気ダクト構造の底面図である。
図4から図8に示すように、本実施形態に係る燃料電池車両1の排気ダクト構造69は、燃料と空気中の酸素とを反応させて発電する燃料電池2と、燃料電池2の排気を導いて燃料電池2から離れた箇所へ排気する排気風路82を区画する排気ダクト52と、を備えている。
また、排気ダクト構造69は、排気ダクト52内へ空気を導入して排気ダクト52内の気体を攪拌するファン71と、排気ダクト52の内部に設けられ、ファン71に対向し、ファン71が生じさせる流れを分散させて排気ダクト52内の気体の攪拌を促進させる攪拌促進壁72を備えている。
燃料電池2は、例えば固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell、PEFC)である。燃料電池2のセルスタックは、多数積層される単位セルを含んでいる。単位セルは、水素が供給されるアノード極、空気中の酸素が供給されるカソード極、およびアノード極とカソード極との間に挟み込まれ、拡散層/触媒層/水素イオンを選択的に透過する固体高分子電解質膜/触媒層/拡散層の積層体を含んでいる。燃料電池2は、燃料タンク15から供給される水素と吸気口2aから吸い込まれる空気に含まれる酸素との電気化学反応によって発電するとともに、水を副成する電気化学システムである。
水素と反応した後の余剰空気、およびセルスタックを冷却した後の空気は、カソード極の排気として排気口2bから排出される。
他方、水素は、循環経路を含む水素供給配管(図示省略)を介して燃料電池2に供給される。水素は、原則として燃料電池2での消費量に応じてアノード極に供給される。
排気ダクト52は、燃料電池2の発電にともなう湿潤な排気を車外へ排気し、また、燃料電池2の安定的な発電を維持するために行われる水素ガスパージにともなって排気ダクト52内へ排気される水素を希釈して車外へ排気する。排気ダクト52は、導電性を有する樹脂の成形品である。
排気ダクト52は、パッキン73を介して燃料電池2の排気口2bに連結され、かつ車体5の後端部で外装12に連結されている。排気ダクト52は、第一ダクト部材75と、第一ダクト部材75に連結される第二ダクト部材76と、を備えている。
第一ダクト部材75は、燃料電池2に気密に接続される環状の接続部81、および排気風路82の一部を区画する第一区画壁83を一体に有している。
第二ダクト部材76は、排気風路82を区画する側壁85a、85bおよび底壁85cのうち互いに対向する一対の側壁85a、85bに配置される分割面86(分割線、分割箇所)で接続部81の後部および側壁85a、85bに連結されて排気風路82の他部を区画している。
換言すると、排気ダクト52は、燃料電池2に気密に接続される環状の接続部81、および排気風路82の一部を区画する第一区画壁83を一体に有する第一ダクト部材75と、排気風路82を区画する側壁85a、85bおよび底壁85cのうち互いに対向する一対の側壁85a、85bに配置される分割面86で接続部81の後部および第一区画壁83に連結されて排気風路82の他部を区画する第二ダクト部材76と、を備えている。
排気風路82は、排気ダクト52と燃料電池2との接続部81から車体5の後端部に延びる第一排気風路87と、第一排気風路87の途中から分岐して下方に延びる第二排気風路88と、を含んでいる。
第一排気風路87は、燃料電池2の排気口2bに繋がれ、車体5の後端部へ直線状、かつ後ろ上がりに延びている。第一排気風路87は、燃料電池2の排気口2bに繋がる上流側から下流側へ向かって上下左右に狭まる楔形状を有し、略矩形の流路断面を有している。また、第一排気風路87は、上流側から第二排気風路88の分岐部までの部分に比べて、第二排気風路88の分岐部から下流側の部分の方が流路断面積の減少が緩い。
第一排気風路87は、車体5の後方へ向かって開口する第一排気口89を有している。第一排気口89は、車体5の後方へ向かって開口する左右一対の排気口89a、89bを含んでいる。一対の排気口89a、89bは、第一排気風路87が第二排気風路88との分岐部の下流側(車両の後方側)でV字状に分岐され、排気ダクト52内の排気を円滑に分流する。
第一排気口89には、導電性の第一メッシュフィルタ92が設けられている。第一メッシュフィルタ92は、第一排気口89の排気の流れを円滑に保ちつつ、数ミリからセンチメートルオーダーの異物が排気ダクト52内に入り込むことを阻止している。
第二排気風路88は、斜め後ろ下方へ向かって垂れ下がり、リアフェンダ38の接線方向に沿っている。第二排気風路88は、第一排気風路87との分岐部分から下端へ向かって略一様な筒形状を有している。また、第二排気風路88は、車体5の後方側で狭くなる台形状の流路断面を有している。第二排気風路88の幅寸法(車体5の左右方向における幅寸法)は、第一排気風路87との接続部分において第一排気風路87の横幅よりも狭く、第一排気風路87の底面、つまり排気風路82を区画する底壁85cから突出するように延びている。
第二排気風路88は、リアフェンダ38を避け、リアフェンダ38の後方で車体5の斜め後ろ下方へ向かって開口する第二排気口91を有している。第二排気口91は、車両の走行時にリアフェンダ38の後方に生じる負圧領域に配置されている。このため、燃料電池車両1が走行している場合、第二排気風路88内の排気は、リアフェンダ38の後方に生じる負圧領域によって第二排気口91から吸い出される。換言すると、第二排気口91は、効果的に排気を流出させることができる。第二排気口91には、導電性の第二メッシュフィルタ93が設けられている。第二メッシュフィルタ93は、第二排気口93の排気の流れを円滑に保ちつつ、数ミリからセンチメートルオーダーの異物が排気ダクト52内に入り込むことを阻止している。
第一ダクト部材75および第二ダクト部材76は、協働して第一排気風路87を区画する一方で、第一ダクト部材75は、単独で第二排気風路88を区画している。換言すると、第一ダクト部材75は、第一排気風路87の一部と第二排気風路88とを区画し、第二ダクト部材76は、第一排気風路87の他部を区画している。なお、第一排気風路87の他部は、第二排気風路88の反対側にあたり、第一排気風路87の上部である。
第一ダクト部材75は、燃料電池2に接続される最上流部に切れ目のない環状の接続部81と、接続部81の下流側に連接し、第一排気風路87の下半部を区画し後端部へ達する第一区画壁83と、第二排気風路88を区画する筒状の第二区画壁95と、を有している。
接続部81は、燃料電池2の排気口2bに対応する矩形の筒体状であり、上下左右に略平坦な壁を有している。接続部81は、第一排気風路87の全長に比べて極めて短い。接続部81と燃料電池2との間には、接続部81と燃料電池2との隙間を気密に塞ぐパッキン73が挟み込まれている。
第一区画壁83は、接続部81の下半部後方に連接し、排気風路82を区画する側壁85a、85bの一部および底壁85cの一部を有している。第一区画壁83は、上向きに開放するトレイ形状を有している。また、第一区画壁83の後端部には、第一排気口89(つまり、左右一対の排気口89a、89b)の下半部が区画されている。
第一区画壁83の底壁は、第一排気風路87の底壁85cの一部である。接続部81の底壁と第一区画壁83の底壁との境界部分には、排気ダクト52とフレーム11との干渉を回避するために、排気ダクト52内へ突出する適宜の形状の凸部97(排気ダクト52の外側から見れば凹形状)が設けられている。底壁85cの中央部には、第二排気風路88に通じる開口が設けられている。第一区画壁83の底壁、つまり底壁85cは、筒状の第二区画壁95に連接している。第二区画壁95は、第一区画壁83の底壁から下方へ突出して延びている。
第二区画壁95は、フレーム11のダクト固定ブラケット101に結合部材102で固定されている。ダクト固定ブラケット101は、ファン71およびリアフェンダ38の固定ブラケットを兼ね、左右の上部フレーム25の後端部に架設されている。
第二ダクト部材76は、第一ダクト部材75の接続部81よりも後方部分に上方から着脱自在に組み合わされる蓋体である。第二ダクト部材76は、第一排気風路87のうち接続部81よりも下流側の天面を区画する一方で、第一区画壁83の側壁85a、85bと協働して第一排気風路87のうち接続部81よりも下流側の左右の側面を区画している。また、第二ダクト部材76の後端部には、第一排気口89(つまり、左右一対の排気口89a、89b)の上半部が区画されている。
第二ダクト部材76は、分割面86(分割箇所)で第一ダクト部材75の縁部に覆い被さるように嵌合される継手部103を有している。第二ダクト部材76と第一ダクト部材75との間には、部材間の隙間を気密に塞ぐシール材(図示省略)が挟み込まれている。第二ダクト部材76は、継手部103に設けられる適宜の締結部105によって第一ダクト部材75に着脱自在に固定されている。継手部103の内面は、第二ダクト部材76と第一ダクト部材75とを実質的に面一に連結させる。
排気ダクト52は、下部に水抜き孔106を有している。水抜き孔106は、排気ダクト52の側壁85a、85bの近傍に配置されている。水抜き孔106は一対あって、排気ダクト52の一対の側壁85a、85bそれぞれの近傍に配置されている。水抜き孔106は、接続部81の底壁を貫き、接続部81の底面から下方に突出するボス107の中心を貫通している。ボス107には排水ホース108が接続されている。水抜き孔106は、第一排気口89から排気ダクト52内に侵入した水分や、排気ダクト52内で凝縮した水分を排気ダクト52から排出する。排水ホース108は、排水を車体5の適宜の箇所へ導いて廃棄する。水抜き孔106は、その役割上、排気ダクト52の最も低い箇所に配置されていることが好ましい。本実施形態に係る水抜き孔106は、排気ダクト52が燃料電池2の排気口2bから斜め上方へ延びているため、燃料電池2の排気口2bの近傍に配置されていることが好ましい。
ファン71は、排気ダクト52の下部に設けられ、車体5の後方へ向けて送風する姿勢で配置されている。ファン71は、第二排気風路88の横幅(車体5の左右方向における幅)よりも小さく、車体5の幅方向において排気ダクト52の中央部に配置され、第二排気風路88を区画する側壁のうち、正面側(車両の前方側)の壁面に設けられている。正面側の壁面は、第一ダクト部材75の第二区画壁95の一部である。正面側の壁面は、ファン71から排気ダクト52内へ送風される空気を導く切り欠き部(図示省略)を有している。
ファン71は、第一排気風路87と第二排気風路88との分岐部分の後縁部へ向けて送風する姿勢で排気ダクト52に固定されている。ファン71の送風によって、排気ダクト52内の空気は攪拌され、排気に含まれる水素ガスを希釈し、排気の水素ガス濃度を均一化させる。ファン71は、リアフェンダ38と排気ダクト52の底壁85cとの間の空気を第二排気風路88内に送り込む。換言すると、ファン71は、第二区画壁95の前方の空気を、第二排気風路88のやや上流側を向く攪拌促進壁72に向けて送り込む。
攪拌促進壁72は、底壁85cと第二区画壁95との境界部分であって、第一排気風路87と第二排気風路88との分岐部分の後縁部に設けられている。攪拌促進壁72は、第二排気風路88の第二区画壁95を上方に延ばすように第二区画壁95側から第一排気風路87内へ突出している。攪拌促進壁72の上端部は、車体5の前方方向、つまり燃料電池2の排気口2bへ向かって湾曲している。
攪拌促進壁72は、車体5の幅方向において、第一排気風路87および第二排気風路88の幅寸法よりも狭く、排気ダクト52の中央部にファン71に対向するように配置されている。攪拌促進壁72の左右縁部と側壁85a、85bとの間には距離が確保されている。このため、燃料電池2の排気は、攪拌促進壁72の左右両側方を通じて第一排気風路87の下流側へ通過できる。
ところで、燃料電池反応の継続にともない空気経路側(カソード極側)から不可避的にセルスタックを透過する窒素による水素濃度低下、ひいては水素濃度低下にともなう反応効率の低下を防止し、安定な発電をするため、および反応により生成される水分を排出するために、燃料電池2は、定期的な水素ガスパージを行う。この水素ガスパージによってアノードオフガスおよび水分は、アノード極から余剰水素排気管115、および排気弁116を経由して排気ダクト52へ排出される。換言すると、燃料電池2は、アノードオフガスおよび水分を排気ダクト52へ排出する余剰水素排気管115、および排気弁116を備えている。
そこで、燃料電池2または排気ダクト52は、燃料電池2のアノードから排出されるアノードオフガスを排気風路82に導く排出口121を有している。
排出口121は、余剰水素排気管115を介して燃料電池2に接続されている。本実施形態に係る排気ダクト構造69の排出口121は、燃料電池2の排気シャッタ2cの枠体122の底壁122cに配置されている。排出口121は、排気シャッタ2cのルーバー123よりも下流側(排気ダクト52寄り)に配置され、排気シャッタ2cが閉じた場合であってもアノードオフガスを燃料電池2から排気ダクト52へ放出できる。反応により生成される水分も排出口121から放出される。
なお、排出口121は、排気ダクト52側に設けられていてもよい(図8に二点鎖線で示す排出口121)。この場合、排出口121は、排気ダクト52の接続部81の底壁、または第一区画壁83の底壁に設けられる。換言すると、排出口121は、排気ダクト52の底壁85cに設けられる。
排出口121は一対あって、排気ダクト52の一対の側壁85a、85bそれぞれの近傍に配置され、または排気シャッタ2cの一対の側壁122a、122bそれぞれの近傍に配置されている。なお、排気シャッタ2cの一対の側壁122a、122bは、パッキン73を介して排気ダクト52の一対の側壁85a、85bのそれぞれに繋がる壁である。また側壁の近傍とは、排気ダクト52の幅方向において、排気ダクト52の底壁85c、または排気シャッタ2cの枠体122の底壁122cの中央部分よりも側壁122a、122bに近い部分である(図8)。
排出口121は、排気ダクト52内の排気の流れ方向において、水抜き孔106よりも上流側に配置されている。換言すると、水抜き孔106は、排気ダクト52内の排気の流れ方向において、排出口121よりも下流側に配置されている。また、排出口121および水抜き孔106は、排気ダクト52内の排気の流れ方向に実質的に沿って並んでいる。
また、排気ダクト構造69は、排出口121よりも排気の流れの下流側に設けられ、かつアノードオフガスを排出口121から離れる方向へ導く案内面125を有する案内部126を備えている。
案内面125は、排出口121から排出されるアノードオフガスを排出口121から離れる方向、例えば本実施形態における上方へ導く。案内面125は、排出口121に最も近い部分において排気ダクト52の底壁85cまたは排気シャッタ2cの枠体122の底壁122cに連接し、排気ダクト52内の流れの下流へ排出口121から遠ざかるほど排気ダクト52の天井へ向かって斜め上方へ延びている。また、案内面125は、排気ダクト52の側壁85a、85bに達している。換言すると、案内面125は、排気ダクト52の側壁85a、85bのいずれかに沿っている。なお、案内面125は、排出口121が排気ダクト52の側壁または排気シャッタ2cの枠体122の側壁に設けられている場合には、アノードオフガスを当該側壁から離れる方向、例えば本実施形態における上方、かつ排気ダクト52の中央へ導く。つまり、案内面125は、排気風路82内の流れによって攪拌されやすい箇所へ排出口121から排出されるアノードオフガスを導く。
案内部126は、排出口121と水抜き孔106との間に配置され水抜き孔106の真上に達している。つまり、案内部126は、水抜き孔106の真上を覆っている。案内部126は、案内面125を有する傾斜板127を有している。この傾斜板127の裏面(案内面125の裏面)が、水抜き孔106の真上を覆っている。
案内部126は、案内面125に連接し、かつ排気ダクト52の側壁85a、85bに沿って上方へ延びる縦板部128を備えている。縦板部128は、案内部126の傾斜板127を補強するとともに、案内面125に沿って流れるアノードオフガスが、傾斜板127と排気ダクト52の側壁85a、85bとの隙間から傾斜板127の裏面側に流れ込むことを阻止している。
水抜き孔106は、排気ダクト52から水分を流出させる機能上、開放状態であることが好ましい一方で、排気ダクト52から排気を僅かに流出させてしまう。排出口121と水抜き孔106とが近接している場合、高濃度のアノードオフガスが直接的に排出口121から水抜き孔106へ入り込み、排気ダクト52外へ漏れ出る虞が生じてしまう。そこで、案内部126は、アノードオフガスを案内面125によって水抜き孔106から遠ざけ、さらに縦板部128によってアノードオフガスが案内面125の裏面に回り込むことを防いで、高濃度のアノードオフガスが直接的に水抜き孔106から排気ダクト52外へ漏れ出ることを防いでいる。
また、水抜き孔106同様に、案内部126は、排気ダクト52の側壁85a、85bの近傍に配置されている。案内部126は一対あって、排気ダクト52の一対の側壁85a、85bそれぞれの近傍に配置されている。一対の案内部126は、排気ダクト52内の流れを通過させる排気風路82を隔てて、相互に離間して配置されている。
図9は、本発明の実施形態に係る燃料電池車両のパッキンの斜視図である。
図9に示すように、本実施形態に係る燃料電池車両1の排気ダクト構造69は、燃料電池2と排気ダクト52とを気密に連結させるパッキン73を備えている。
パッキン73は、例えばシリコンゴムの成形品である。パッキン73は、燃料電池2の排気シャッタ2cの枠体122、および排気ダクト52の接続部81に対応する矩形の枠形状を有している。パッキン73は、燃料電池2の排気シャッタ2cの枠体122の端部を嵌め込む前側凹部(図示省略)と、排気ダクト52の接続部81の端部を嵌め込む後ろ側凹部(図示省略)と、を備えている。
案内部126は、燃料電池2および排気ダクト52の別部品である。案内部126は、パッキン73に一体成型されている。案内部126は、パッキン73の底壁と側壁との角部の内側に設けられている。案内部126の傾斜板127は、パッキン73の底壁から突出し、縦板部128は、パッキン73の側壁から突出している。
このように構成される本実施形態に係る燃料電池車両1は、排気ダクト52内に放出されるアノードオフガスを案内部126によって排気ダクト52の底部から天井へ向かって導き、排気ダクト52内の排気に合流させることができ、ひいては排気ダクト52による排気の攪拌機能を活用してアノードオフガスを希釈させる。つまり、本実施形態に係る燃料電池車両1は、従来の燃料電池システムの希釈器が有する滞留室を要することなく、アノードオフガスを希釈させる。
また、本実施形態に係る燃料電池車両1は、案内部126によってアノードオフガスが直接的に排気ダクト52の水抜き孔106から漏れ出すことを確実に防ぐことができる。
さらに、本実施形態に係る燃料電池車両1は、案内部126を備えるため、排出口121および水抜き孔106の配置の自由度を高め、ひいては排気ダクト52の形状の制約を緩和できる。
さらにまた、本実施形態に係る燃料電池車両1は、排気ダクト52内の流れを通過させる排気風路82を隔てて離間する一対の案内部126を備えているため、排気ダクト52内の排気の主流(燃料電池2の排気口2bから排気ダクト52内に流れ込む排気の流れ)を妨げることなく、アノードオフガスを希釈させる。
また、本実施形態に係る燃料電池車両1は、燃料電池2および排気ダクト52の別部品である案内部126を備えているため、燃料電池2および排気ダクト52に複雑な形状変更をともなうことなく、既存システムにも適用しうる。
したがって、本発明に係る燃料電池車両1は、滞留室を別途に設けることなく、余剰ガスを放出する排気ダクト52内にアノードオフガスを直接的に排出し、かつ排気ダクト52の排気効率を保ちつつアノードオフガスを余剰ガスに拡散させることができる。