JP2018069639A - 縦延伸装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】縦延伸時の熱可塑性フィルムにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる縦延伸装置を提供する。【解決手段】加熱ロール13によって加熱された熱可塑性フィルムFを、複数の低速駆動ロール8と複数の高速駆動ロール9との周速差によって延伸する縦延伸装置5において複数の低速駆動ロール8と複数の高速駆動ロール9とが、熱可塑性フィルムFの搬送面に複数の吸引孔である低速側吸引孔8bと高速側吸引孔9bとを有するサクションロールから構成され、隣り合う低速駆動ロール8と高速駆動ロール9との間に複数の加熱ロール13が設けられ、複数の加熱ロール13にアクチュエータである追従用電動モータ15がそれぞれ設けられ、複数の加熱ロール13をそれぞれ独立して回転駆動可能に構成され、追従用電動モータ15毎の出力トルクが追従用電動モータ15毎に設定される目標値に一致するように制御される。【選択図】図3

Description

本発明は、縦延伸装置に関する。詳しくは、熱可塑性フィルムを加熱して搬送方向に延伸する縦延伸装置に関する。
従来、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン、ポリアミド等の熱可塑性ポリマーからなる熱可塑性フィルムは、包装用フィルム、製版基板、印刷用フィルム、ラミネートフィルム、磁気記録媒体あるいは光ディスク等の支持体として広く使用されている。このようなポリエステル樹脂等の熱可塑性フィルムは、延伸することにより優れた物性が得られることが知られており、通常一軸延伸フィルムあるいは二軸延伸フィルムとして使用されている。上記二軸延伸フィルムは、縦一軸延伸した後、横延伸することにより製造される。熱可塑性フィルムを縦延伸する場合、上流側の低速ロールと下流側の高速ロールとの速度差を利用して流れ方向に延伸させる。この際、熱可塑性フィルムを破断することなく安定して延伸が行えるように上流側の低速ロールと下流側の高速ロールとの間隔を広げることで(長スパン化)単位時間当たりのフィルムの伸び量を小さくする方法が知られている。例えば特許文献1に記載のごとくである。
特許文献1に記載の縦延伸装置は、上流側の低速ローラ(低速ロール)と下流側の高速ローラ(高速ロール)との間に加熱炉が設けられ、加熱炉の中に複数のパスローラが設けられている。縦延伸装置は、加熱炉によって加熱された熱可塑性フィルムがスパンを広げて配置された低速ローラと高速ローラとによって延伸されつつ、複数のパスローラによってフィルムの縦方向の皺が延ばされることで、フィルムの波打ちを防止して安定した延伸が行える。しかし、特許文献1に記載の技術は、熱可塑性フィルムを複数のパスローラに接触させることよって皺を延ばすため、搬送時の抵抗が大きい。従って、縦延伸装置は、高速ローラと低速ローラとにおいて熱可塑性フィルムが滑らないようにニップローラによってよって熱可塑性フィルムを押圧しながら搬送している。このため、熱可塑性フィルムは、ニップローラの押圧力によって表面に転写傷が生じたり、パスローラとの間での滑りによって擦り傷が生じたりする場合があった。
特開2008−221722号公報
本発明の目的は、縦延伸時の熱可塑性フィルムにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる縦延伸装置の提供を目的とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、加熱ロールによって加熱された熱可塑性フィルムを、複数の低速駆動ロールと前記低速駆動ロールよりも周速が大きい複数の高速駆動ロールとの周速差によって延伸する縦延伸装置において前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールとが、前記熱可塑性フィルムの搬送面に複数の吸引孔を有するサクションロールから構成され、隣り合う前記低速駆動ロールと前記高速駆動ロールとの間に複数の加熱ロールが設けられ、前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールと前記複数の加熱ロールとにアクチュエータがそれぞれ設けられ、前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールと前記複数の加熱ロールとをそれぞれ独立して回転駆動可能に構成され、前記アクチュエータ毎の出力トルクが前記アクチュエータ毎に設定される目標値に一致するように制御されるものである。
縦延伸装置は、前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールと前記複数の加熱ロールとに前記アクチュエータがそれぞれトルク制御装置を介して接続され、前記出力トルクと前記目標値との差が規定値よりも大きい場合、そのアクチュエータに接続されているトルク制御装置の出力軸の回転速度を維持するように、そのトルク制御装置の入力軸と出力軸との間に回転速度差が生じ、前記出力トルクと前記目標値との差が規定値よりも小さい場合、そのアクチュエータに接続されているトルク制御装置の入力軸と出力軸との間に回転速度差が生じないように構成されるものである。
縦延伸装置は、前記トルク制御装置がパウダークラッチから構成され、前記目標値に基づいてそのトルク伝達量が制御されるものである。
縦延伸装置は、前記複数の加熱ロールがそれぞれ独立して温度制御可能に構成されるものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
縦延伸装置においては、加熱ロールによる熱可塑性フィルムの搬送時の抵抗が小さいので、低速駆動ロールと高速駆動ロールとにおいて熱可塑性フィルムをニップローラによって押圧して摩擦力を付与する必要がない。また、独立して駆動制御される複数の加熱ロールと熱可塑性フィルムとの間で滑りが発生しない。これにより、縦延伸時の熱可塑性フィルムにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる。
縦延伸装置においては、熱可塑性フィルムの搬送速度が変動した場合、加熱ロールがアクチュエータの制御と関係なく熱可塑性フィルムに追従して回転する。これにより、縦延伸時の熱可塑性フィルムにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる。
縦延伸装置においては、熱可塑性フィルムの搬送速度、延伸量に基づいて加熱ロールの回転速度が制御される。これにより、縦延伸時の熱可塑性フィルムにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる。
縦延伸装置においては、熱可塑性フィルムが所定の延伸割合で延伸されるので速度変動が生じにくい。これにより、縦延伸時の熱可塑性フィルムにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる。
縦延伸装置を備える製造装置の一実施形態における全体構成を示す概略図。 縦延伸装置の一実施形態における全体構成を示す概略図。 縦延伸装置の一実施形態における低速駆動ロールと高速駆動ロールとの構成を示す正面図。 縦延伸装置の一実施形態における加熱ロールと冷却ロールとの構成を示す正面図。 縦延伸装置の一実施形態における制御構成を示すブロック図。 縦延伸装置の一実施形態における加熱ロールの滑り抑制制御での動作態様を示す模式図。 縦延伸装置の一実施形態における加熱ロールの滑り抑制制御での駆動トルクの変動を表すグラフを示す図。
まず、図1を用いて、本発明に係る縦延伸装置の一実施形態である縦延伸装置5を備える製造装置1について説明する。なお、製造装置1は、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン、ポリアミド等の熱可塑性ポリマーからなる熱可塑性フィルムFを製造するものであるが、本実施形態においてはトリアセチルセルロース(TAC)からなる熱可塑性フィルムFを製造するものとして説明する。
図1に示すように、製造装置1は、トリアセチルセルロース(TAC)からなる熱可塑性ポリマーを加工して所望のフィルム厚からなる熱可塑性フィルムFを製造するものである。製造装置1は、溶融押出装置2、スリット状ダイ3、キャスティングロール4、縦延伸装置5、横延伸装置6および巻取装置7を具備している。
製造装置1は、チップ状の熱可塑性ポリマーを溶融押出装置2によって加熱溶融し、スリット状ダイ3から押し出す。製造装置1は、スリット状ダイ3から連続して押し出される熱可塑性ポリマーをキャスティングロール4に密着させてシート状に硬化させる。つまり、製造装置1は、チップ状の熱可塑性ポリマーから未延伸の熱可塑性フィルムFを形成する。更に、製造装置1は、連続して形成される未延伸の熱可塑性フィルムFを縦延伸装置5によって搬送方向(縦方向)に連続して延伸させて縦延伸された熱可塑性フィルムFを形成する。次に、製造装置1は、熱可塑性フィルムFを横延伸装置6によって幅方向(横方向)に連続して延伸させて二軸延伸された熱可塑性フィルムFを形成する。製造装置1は、形成した熱可塑性フィルムFを巻取装置7によって芯材に巻き取らせる。
このように構成することで、製造装置1は、チップ状の熱可塑性ポリマーから縦方向と横方向とに二軸延伸させた熱可塑性フィルムFを連続して形成することができる。
以下に、図2から図5を用いて、本発明に係る縦延伸装置の一実施形態である縦延伸装置5について説明する。縦延伸装置5は、未延伸の熱可塑性フィルムFを搬送方向(以下、「縦方向」と記す)に延伸させるものである。縦延伸装置5は、複数の低速駆動ロール8、複数の高速駆動ロール9、吸引ポンプ10、低速用電動モータ11、高速用電動モータ12、複数の加熱ロール13、複数の冷却ロール14、複数の追従用電動モータ15、複数のパウダークラッチ16、制御装置17を備える。
図2に示すように、低速駆動ロール8は、高速駆動ロール9とともに未延伸の熱可塑性フィルムFを縦方向に延伸するものである。低速駆動ロール8は、縦延伸装置5の最上流側に配置されている。本実施形態において、縦延伸装置5には、複数の低速駆動ロール8が配置されている。低速駆動ロール8は、金属製のロールであり、ハードクロムめっき処理やタングステンカーバイト溶射、フッ素樹脂被覆、セラミック被覆等の表面処理が施されている。低速駆動ロール8は、熱可塑性フィルムFが低速駆動ロール8に所定のラップ角で巻きかけられるように配置されている。
図3に示すように、低速駆動ロール8の熱可塑性フィルムFが接触する面(以下、単に「搬送面」と記す)である低速側搬送面8aには、ロール内部に貫通する複数の孔が形成されている。さらに、低速駆動ロール8は、吸引ポンプ10によってロール内部が吸引されるように構成されている(図2における薄墨部分参照)。これにより、低速駆動ロール8は、低速側搬送面8aの孔が低速側吸引孔8bとして作用し、熱可塑性フィルムFを吸着保持できるように構成されている。
図2に示すように、高速駆動ロール9は、低速駆動ロール8とともに未延伸の熱可塑性フィルムFを縦方向に延伸するものである。高速駆動ロール9は、縦延伸装置5の最下流側に配置されている。本実施形態において、縦延伸装置5には、複数の高速駆動ロール9が配置されている。高速駆動ロール9は、金属製のロールであり、ハードクロムめっき処理やタングステンカーバイト溶射、フッ素樹脂被覆、セラミック被覆等の表面処理が施されている。高速駆動ロール9は、熱可塑性フィルムFが高速駆動ロール9に所定のラップ角で巻きかけられるように配置されている。
図3に示すように、高速駆動ロール9は、熱可塑性フィルムFが接触する高速側搬送面9aにロール内部に貫通する複数の孔が形成されている。さらに、複数の高速駆動ロール9は、吸引ポンプ10によってロール内部が吸引されるように構成されている(図2における薄墨部分参照)。これにより、複数の高速駆動ロール9は、高速側搬送面9aの孔が高速側吸引孔9bとして作用し、熱可塑性フィルムFを吸着保持できるように構成されている。
アクチュエータである低速用電動モータ11と高速用電動モータ12とは、複数の低速駆動ロール8と複数の高速駆動ロール9とをそれぞれ回転駆動させるものである。低速用電動モータ11と高速用電動モータ12とは、それぞれが制御装置17(図5参照)に含まれるベクトルインバーターに接続され、独立してトルク制御されるように構成されている。低速用電動モータ11は、トルク制御装置であるパウダークラッチ16を介して低速駆動ロール8毎にそれぞれ設けられ、高速用電動モータ12は、パウダークラッチ16を介して高速駆動ロール9毎にそれぞれ設けられている。つまり、複数の低速用電動モータ11は、それぞれに接続されている低速駆動ロール8を独立して駆動制御することができる。同様に、複数の高速用電動モータ12は、それぞれに接続されている複数の低速駆動ロール8を独立して駆動制御することができる。
各高速駆動ロール9は、各低速駆動ロール8に対してドロー制御されている。すなわち、各高速駆動ロール9は、各低速駆動ロール8よりも周速が大きくなるように駆動されている。熱可塑性フィルムFは、複数の低速駆動ロール8によって所定の単位繰り出し速度で上流側から繰り出されるとともに、複数の高速駆動ロール9によって低速駆動ロール8の繰り出し速度よりも大きい所定の単位繰り入れ速度で下流側に向かって繰り入れられる。これにより、複数の低速駆動ロール8と複数の高速駆動ロール9とは、互いのピッチ間において熱可塑性フィルムFを所定の繰り出し速度における単位繰り出し量と所定の繰り入れ速度における単位繰り入れ量との差分だけ引き伸ばすように構成されている。
図2に示すように、加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFを加熱するものである。加熱ロール13は、最も下流側の低速駆動ロール8と最も上流側の高速駆動ロール9との間に配置されている。本実施形態において、縦延伸装置5には、複数の加熱ロール13が配置されている。加熱ロール13は、金属製のロールであり、ハードクロムめっき処理やタングステンカーバイト溶射、フッ素樹脂被覆、セラミック被覆等の表面処理が施されている。加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFが加熱ロール13に所定のラップ角で巻きかけられるように配置されている。
図4に示すように、各加熱ロール13には、加熱手段であるカートリッジヒータ13bと加熱ロール13の熱可塑性フィルムFが接触する加熱搬送面13aの温度を測定する温度測定手段である加熱温度センサ13cがそれぞれ設けられている。各加熱ロール13に設けられているカートリッジヒータ13bと加熱温度センサ13cとは、制御装置17(図5参照)からの制御信号によって、加熱ロール13の加熱搬送面13aをそれぞれ独立して所定の温度に加熱して維持するように構成されている。なお、本実施形態において、加熱ロール13の加熱手段をカートリッジヒータ13bとしたがこれに限定されるものではなく、温水、加圧温水、加熱オイル等の熱媒の循環による加熱装置、誘導加熱装置などでもよい。
図2に示すように、冷却ロール14は、熱可塑性フィルムFを冷却するものである。冷却ロール14は、最も下流側の加熱ロール13と最も上流側の高速駆動ロール9との間に配置されている。本実施形態において、縦延伸装置5には、複数の冷却ロール14が配置されている。冷却ロール14は、金属製のロールであり、ハードクロムめっき処理やタングステンカーバイト溶射、フッ素樹脂被覆、セラミック被覆等の表面処理が施されている。冷却ロール14は、熱可塑性フィルムFが各冷却ロール14に所定のラップ角で巻きかけられるように配置されている。
図4に示すように、複数の冷却ロール14は、冷却手段であるヒートパイプ14bと冷却ロール14の熱可塑性フィルムFが接触する冷却搬送面14aを測定する温度測定手段である冷却温度センサ14cがそれぞれ設けられている。複数の冷却ロール14に設けられているヒートパイプ14bと冷却温度センサ14cとは、制御装置17(図5参照)からの制御信号によって、各冷却ロール14の冷却搬送面14aをそれぞれ独立して冷却するように構成されている。なお、本実施形態において、冷却ロール14の冷却手段をヒートパイプ14bとしたがこれに限定されるものではなく、ピエゾ素子や熱媒の循環による冷却装置などでもよい。
アクチュエータである追従用電動モータ15は、加熱ロール13と冷却ロール14とを回転駆動させるものである。追従用電動モータ15は、各加熱ロール13と各冷却ロール14とにトルク制御装置であるパウダークラッチ16を介してそれぞれ設けられている。追従用電動モータ15は、それぞれが制御装置17(図5参照)に含まれるベクトルインバーターに接続され、互いに独立してトルク制御されるように構成されている。つまり、複数の追従用電動モータ15は、それぞれに接続されている加熱ロール13または冷却ロール14を独立して駆動制御できるように構成されている。
図3と図4とに示すように、トルク制御装置である複数のパウダークラッチ16は、低速駆動ロール8と低速用電動モータ11との間の伝達トルク、高速駆動ロール9と高速用電動モータ12との間の伝達トルク、加熱ロール13と追従用電動モータ15との間の伝達トルク、または冷却ロール14と追従用電動モータ15との間の伝達トルクを制限するものである。パウダークラッチ16は、入力軸16aと出力軸16bとの間に介在する磁性鉄粉(パウダー)に磁束を加えることで摩擦を発生させて、入力軸16aと出力軸16bとの間でトルク伝達される状態に切り替える。本実施形態において、各パウダークラッチ16には、その入力軸16aに複数の低速用電動モータ11、複数の高速用電動モータ12または複数の追従用電動モータ15のうちいずれか一つがそれぞれ接続され、その出力軸16bに複数の低速駆動ロール8、複数の高速駆動ロール9、複数の加熱ロール13または複数の冷却ロール14のうちいずれか一つがそれぞれ接続されている。つまり、各パウダークラッチ16は、低速駆動ロール8と低速用電動モータ11との間の伝達トルク、高速駆動ロール9と高速用電動モータ12との間の伝達トルク、加熱ロール13と追従用電動モータ15との間の伝達トルク、または冷却ロール14と追従用電動モータ15との間の伝達トルクを任意に設定できるように構成されている。各パウダークラッチ16は、それぞれが制御装置17(図5参照)に接続され、互いに独立して伝達トルクの大きさを制御できるように構成されている。
図5に示すように、制御装置17は、縦延伸装置5を制御するものである。制御装置17は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置17は、図示しない製造装置1の制御装置に接続され、縦延伸装置5等を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
制御装置17は、各低速駆動ロール8の低速用電動モータ11と各高速駆動ロール9の高速用電動モータ12とに接続され、各低速用電動モータ11と各高速用電動モータ12とにそれぞれ駆動トルクに関する指令値を送信して任意の駆動トルクTdを出力するように制御することができる。また、制御装置17は、各 低速用電動モータ11と各高速用電動モータ12とから実駆動トルクをそれぞれ取得することができる。
制御装置17は、吸引ポンプ10に接続され、吸引ポンプ10を制御することができる。
制御装置17は、各加熱ロール13に設けられている各カートリッジヒータ13bと各加熱温度センサ13cとに接続され、各加熱温度センサ13cから対応する加熱ロール13の実温度を取得することが必要である。また、制御装置17は、各カートリッジヒータ13bに温度の指令値を送信して所定の温度を維持するように制御することができる。
制御装置17は、各冷却ロール14に設けられている各冷却温度センサ14cに接続され、各冷却温度センサ14cから対応する冷却ロール14の実温度を取得することが必要である。
制御装置17は、各加熱ロール13の追従用電動モータ15と各冷却駆動ロールの追従用電動モータ15とに接続され、各追従用電動モータ15にそれぞれ駆動トルクに関する指令値を送信して任意の駆動トルクTdを出力するように制御することができる。また、制御装置17は、各追従用電動モータ15から実駆動トルクをそれぞれ取得することができる。
制御装置17は、各パウダークラッチ16に接続され、任意の伝達トルクに関する指令値を送信して任意の伝達トルク以下で入力軸16aと出力軸16bとの間でトルク伝達される状態に制御することができる。
このように構成される縦延伸装置5は、複数の低速駆動ロール8によって熱可塑性フィルムFを吸着保持しながら所定の単位送り出し量で繰り出す。縦延伸装置5は、低速駆動ロール8から繰り出された熱可塑性フィルムFを複数の加熱ロール13によって所定の温度まで加熱する。一方、縦延伸装置5は、加熱ロール13で加熱された熱可塑性フィルムFを複数の高速駆動ロール9によって吸着保持しながら所定の単位繰り入れ量で繰り入れる。これにより、縦延伸装置5は、加熱された熱可塑性フィルムFを所定の繰り出し速度における単位繰り出し量と所定の繰り入れ速度による単位繰り入れ量との差分だけ縦延伸させる。そして、縦延伸装置5は、熱可塑性フィルムFを複数の冷却ロール14によって所定の温度まで冷却する。縦延伸装置5は、複数の低速駆動ロール8と複数の高速駆動ロール9との間隔を広げて熱可塑性フィルムFを延伸させることで、熱可塑性フィルムFの単位時間当たりの伸び量が少なくなり、延伸時のフィルムに対する負荷を小さくすることができる。なお、本実施形態において、アクチュエータは、低速用電動モータ11、高速用電動モータ12および追従用電動モータ15からなる電動モータから構成されているがこれに限定するものではなく、駆動装置であればよい。
以下では、図3、図6と図7とを用いて、複数の低速駆動ロール8と複数の高速駆動ロール9とにおける熱可塑性フィルムFの保持の態様、ならびに低速駆動ロール8、複数の高速駆動ロール9、複数の加熱ロール13および複数の冷却ロール14による熱可塑性フィルムFの延伸時の態様について説明する。なお、本実施形態において、縦延伸装置5は、四本の低速駆動ロール8、三本の高速駆動ロール9、四本の加熱ロール13および四本の冷却ロール14から構成されているがこれに限定されるものではない。
図3に示すように、本実施形態における縦延伸装置5の複数の低速駆動ロール8は、所定のラップ角でそれぞれの低速側搬送面8aに巻きつけられている熱可塑性フィルムFを搬送面の全面に形成されている孔によって吸着保持している。つまり、各低速駆動ロール8は、熱可塑性フィルムFのうち低速側搬送面8aに接触している面の全域を吸着保持している。このため、各低速駆動ロール8は、ニップローラによって押圧保持している場合よりも小さい圧力で熱可塑性フィルムFを保持することができる。また、各低速駆動ロール8は、気体である空気によって熱可塑性フィルムFが低速側搬送面8aに押し付けられている。このため、各低速駆動ロール8は、固体であるニップローラによって押圧保持している場合よりも均一な圧力で熱可塑性フィルムFを保持することができる。つまり、各低速駆動ロール8は、熱可塑性フィルムFに局所的な圧力集中が生じにくい。これにより、本実施形態における低速駆動ロール8は、熱可塑性フィルムFを吸着保持することで熱可塑性フィルムFの表面における転写キズの発生を抑制することができる。複数の高速駆動ロール9についても同様である。
次に、図4、図6および図7を用いて、複数の低速駆動ロール8、複数の高速駆動ロール9、複数の加熱ロール13および複数の冷却ロール14における滑り抑制制御について説明する。なお、本実施形態において、加熱ロール13における滑り抑制制御について説明し、同様の制御が行われる複数の低速駆動ロール8、複数の高速駆動ロール9および複数の冷却ロール14ついての説明を省略する。
図6に示すように、本実施形態における縦延伸装置5の各加熱ロール13は、所定のラップ角でそれぞれの加熱搬送面13aに熱可塑性フィルムFが巻きつけられている。複数の加熱ロール13は、それぞれに接続されている追従用電動モータ15(図4参照)によって、熱可塑性フィルムFに追従するように回転駆動されている。つまり、加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに同期するように制御される。熱可塑性フィルムFは、縦方向に延伸されることで、搬送速度Vtが低速駆動ロール8の所定の繰り出し速度から高速駆動ロール9の所定の繰り入れ速度まで大きくなりながら搬送されている。このため、熱可塑性フィルムFは、その搬送経路位置によって搬送速度Vtが異なる。従って、複数の加熱ロール13は、配置毎に異なる熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに追従できるように独立して回転速度Vr(周速度)が制御されるように構成されている。
図4に示すように、複数の加熱ロール13は、それぞれのパウダークラッチ16(図4参照)を介して接続されている追従用電動モータ15との間での伝達トルクが制限されている。各パウダークラッチ16には、入力軸16aに追従用電動モータ15の駆動トルクTdが伝達され、出力軸16bに加熱ロール13を所定の速度で回転させるために必要な回転トルクTrとして伝達されている。パウダークラッチ16は、入力軸16aに伝達されている駆動トルクTdと出力軸16bに伝達されている回転トルクTrとの間に規定値Tg以上の差が生じると入力軸16aと出力軸16bとがずれて入力軸16aと出力軸16bとの間に回転速度差が生じる。
複数の加熱ロール13のうち任意の位置に配置されている一の加熱ロール13は、その回転速度Vrから定まる周速度が熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに一致するように追従用電動モータ15に回転駆動されている。熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが基準搬送速度Vt0の場合、追従用電動モータ15は、一の加熱ロール13の回転速度Vrから定まる周速度が熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに一致するために必要な駆動トルクTdを基準駆動トルクTd0として制御されている。
図6(a)に示すように、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが基準搬送速度Vt0であり、搬送速度Vtと一の加熱ロール13の回転速度Vrにより定まる周速度とが一致している場合、搬送されている熱可塑性フィルムFによって加熱ロール13の回転速度Vrが影響を受けない。
図7に示すように、熱可塑性フィルムFが搬送速度Vt0で搬送されている時間t1までの間、パウダークラッチ16の入力軸16aと出力軸16bに伝達されている駆動トルクTdと出力軸16bに伝達されている回転トルクTrとがそれぞれ基準駆動トルクTd0になる。つまり、パウダークラッチ16の入力軸16aと出力軸16bとの間に規定値Tg以上の差が生じていないので、入力軸16aと出力軸16bとがずれることなく、各軸が同じ回転速度Vrで回転している(図6(a)参照)。この結果、加熱ロール13は、搬送されている熱可塑性フィルムFに追従して回転しているので熱可塑性フィルムFと加熱ロール13の搬送面との間で滑りの発生が抑制される。
図6(b)に示すように、一の加熱ロール13において、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが基準搬送速度Vt0よりも大きくなり、一の加熱ロール13の回転速度Vrにより定まる周速度よりも大きい搬送速度Vt1になった場合、熱可塑性フィルムFによって加熱ロール13の回転速度Vrを大きくする方向に外力Fr1が加わる。これにより、パウダークラッチ16の出力軸16bは、出力軸16bに伝達されている回転トルクTrが変動する。パウダークラッチ16は、入力軸16aに伝達されている駆動トルクTdとパウダークラッチ16の出力軸16bに伝達されている回転トルクTrとの間に規定値Tg以上の差が生じると、入力軸16aと出力軸16bとの位相がずれて入力軸16aと出力軸16bとの間に回転速度差が生じる。つまり、一の加熱ロール13の回転速度Vr(周速度)は、熱可塑性フィルムFからの外力Fr1によって、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vt1と一致する周速度である回転速度Vr1まで大きくなる。この結果、一の加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが大きくなっても、外力Fr1によって熱可塑性フィルムFに追従して回転速度Vrが大きくなるので熱可塑性フィルムFと一の加熱ロール13の搬送面との間で滑りの発生が抑制される。
図7に示すように、一の加熱ロール13を回転駆動している一の追従用電動モータ15の駆動トルクTdは、熱可塑性フィルムFからの外力Fr1が一の加熱ロール13の回転を助ける方向に作用することで、時間t1から時間t2までの間に駆動トルクTd1まで減少する。制御装置17は、一の追従用電動モータ15の駆動トルクTdの減少を検出すると、減少した一の追従用電動モータ15の駆動トルクTd1を増加させるように制御する。つまり、制御装置17は、一の加熱ロール13の回転速度Vrが回転速度Vr1になるように駆動トルクTdを制御する(図6(b)参照)。これにより、加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに追従するように回転される。
図6(c)に示すように、一の加熱ロール13において、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが一の加熱ロール13の回転速度Vrにより定まる周速度よりも小さい搬送速度Vt2になった場合、熱可塑性フィルムFによって加熱ロール13の回転速度Vrを小さくする方向に外力Fr2が加わり、パウダークラッチ16の出力軸16bに伝達されている回転トルクTrが変動する。パウダークラッチ16の入力軸16aに伝達されている駆動トルクTdとパウダークラッチ16の出力軸16bに伝達されている回転トルクTrとの間に規定値Tg以上の差が生じると、パウダークラッチ16は、入力軸16aと出力軸16bとの位相がずれて入力軸16aと出力軸16bとの間に回転速度差が生じる。つまり、一の加熱ロール13は、回転速度Vr(周速度)が熱可塑性フィルムFからの外力Fr2によって、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vt2と一致する周速度である回転速度Vr2まで小さくなる。この結果、一の加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが小さくなっても、外力Fr2によって熱可塑性フィルムFに追従して回転速度Vrが小さくなるので熱可塑性フィルムFと一の加熱ロール13の搬送面との間で滑りの発生が抑制される。
図7に示すように、一の加熱ロール13を回転駆動している一の追従用電動モータ15の駆動トルクTdは、熱可塑性フィルムFからの外力Fr2が一の加熱ロール13の回転を妨げる方向に作用することで、時間t3から時間t4の間に駆動トルクTd2まで増加する。制御装置17は、一の追従用電動モータ15の駆動トルクTdの増加を検出すると、増加した一の追従用電動モータ15の駆動トルクTd2を減少させるように制御する。つまり、制御装置17は、一の加熱ロール13の回転速度Vrが回転速度Vr2になるように制御する。これにより、加熱ロール13は、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに追従するように回転される。
このように構成することで、縦延伸装置5は、熱可塑性フィルムFが所定の延伸割合で延伸されるので速度変動が生じにくい。さらに、縦延伸装置5は、複数の加熱ロール13と複数の冷却ロール14とが熱可塑性フィルムFに能動的に追従するように制御されているので、加熱ロール13と冷却ロール14とによる熱可塑性フィルムFの搬送時の抵抗が小さい。従って、縦延伸装置5は、低速駆動ロール8と高速駆動ロール9とにおいて、熱可塑性フィルムFをニップローラによって押圧して滑りを抑制するための摩擦力を付与する必要がない。また、縦延伸装置5は、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtに基づいて複数の加熱ロール13と複数の冷却ロール14との回転速度Vrが独立してトルク制御される。さらに、熱可塑性フィルムFの搬送速度Vtが変動した場合、パウダークラッチ16の作用により加熱ロール13または冷却ロール14が追従用電動モータ15の制御と関係なく熱可塑性フィルムFに追従して回転される。従って、縦延伸装置5は、加熱ロール13と熱可塑性フィルムFとの間で滑りが発生しない。これにより、縦延伸時の熱可塑性フィルムFにおいて転写傷や擦り傷等の発生を抑制することができる。
以上、本実施形態における縦延伸装置5は、クラッチとしてパウダークラッチ16が用いられているがこれに限定するものではなく、伝達トルクを任意の値に制御することができるものであればよい。また、縦延伸装置5は、熱可塑性フィルムFを加熱ロール13の加熱搬送面13aに接触させることで熱可塑性フィルムFを一面ずつ交互に加熱しているがこれに限定されるものではなく、密閉タイプのエア加熱ノズルによる加熱によって、熱可塑性フィルムFを同時に両面から加熱してもよい。上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
5 縦延伸装置
8 低速駆動ロール
9 高速駆動ロール
13 加熱ロール
8a 低速側搬送面
8b 低速側吸引孔
9a 低速側搬送面
9b 高速側搬送面
15 追従用電動モータ

Claims (4)

  1. 加熱ロールによって加熱された熱可塑性フィルムを、複数の低速駆動ロールと前記低速駆動ロールよりも周速が大きい複数の高速駆動ロールとの周速差によって延伸する縦延伸装置において
    前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールとが、前記熱可塑性フィルムの搬送面に複数の吸引孔を有するサクションロールから構成され、
    隣り合う前記低速駆動ロールと前記高速駆動ロールとの間に複数の加熱ロールが設けられ、
    前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールと前記複数の加熱ロールとにアクチュエータがそれぞれ設けられ、前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールと前記複数の加熱ロールとをそれぞれ独立して回転駆動可能に構成され、
    前記アクチュエータ毎の出力トルクが前記アクチュエータ毎に設定される目標値に一致するように制御される縦延伸装置。
  2. 前記複数の低速駆動ロールと前記複数の高速駆動ロールと前記複数の加熱ロールとに前記アクチュエータがそれぞれトルク制御装置を介して接続され、
    前記出力トルクと前記目標値との差が規定値よりも大きい場合、そのアクチュエータに接続されているトルク制御装置の出力軸の回転速度を維持するように、そのトルク制御装置の入力軸と出力軸との間に回転速度差が生じ、前記出力トルクと前記目標値との差が規定値よりも小さい場合、そのアクチュエータに接続されているトルク制御装置の入力軸と出力軸との間に回転速度差が生じないように構成される請求項1に記載の縦延伸装置。
  3. 前記トルク制御装置がパウダークラッチから構成され、前記目標値に基づいてそのトルク伝達量が制御される請求項2に記載の縦延伸装置。
  4. 前記複数の加熱ロールがそれぞれ独立して温度制御可能に構成される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の縦延伸装置。
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