JP2018066427A - 機械装置及びこれに用いる摺動材 - Google Patents

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拓 小野寺
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純 布重
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Abstract

【課題】摩耗耐久性の向上やメンテナンスサイクルの延長を図ることができる機械装置及びこれに用いる摺動材を提供する。
【解決手段】金属表面を有する部材31と、部材31表面を摺動する摺動材32と、を有し、摺動材32は、フッ素樹脂32aを母材とし、該母材に、フッ素樹脂32aから遊離するフッ素を捕捉する第一の材料32b又は金属表面に吸着する第二の材料32cの少なくとも一方が配合された複合樹脂材料により形成される機械装置である。
【選択図】図1

Description

本発明は、機械装置及びこれに用いる摺動材に関する。
空気などの流体を圧縮する流体機械としては、一般に、レシプロ式の流体機械やスクロール式の流体機械が用いられている。例えばレシプロ式流体機械において、金属製のシリンダ内を往復動するピストンには、シリンダの内面と摺動する摺動材として、ピストンリングが取り付けられている。また、例えばスクロール式の流体機械において、金属製の固定スクロールや、固定スクロールに対して円運動しながら摺接する旋回スクロールの端部には、これらの内面と摺動する摺動材として、チップシールが取り付けられている。
摺動材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという。)に代表される樹脂材料が用いられている。例えばPTFEは、結晶性が高く、せん断強度が小さいため、せん断を受けると容易にミクロレベルで剥離し、被摺動面に移着する。被摺動面に移着膜が形成されることにより、摺動材自体は、シリンダ等の硬質の金属面とは直接接触せず、移着膜と接触して摺動することから、低摩擦化や低摩耗化の効果を得ることが可能となる。
例えば特許文献1には、摺動材として、PTFEよりも金属材に対して移着し易い変性PTFEを用いることで、電気的に中性なガスを圧縮するときの、摺動材成分の付着量の低減を改善するようにした流体圧縮機が開示されている。また、特許文献2には、水素ガス雰囲気下で、金属表面にPTFEを接触させて摺動させることにより、該金属表面にPTFEの転移膜を形成する方法が開示されている。
特開2014−5732号公報 特開2008−290398号公報
金属材の表面は、通常酸化されて水酸基が生成している。このような金属材の表面を、PTFE等の摺動材により摺動すると、金属材の表面に活性種が露出し、金属フッ化物等の金属化合物が生成することがある。この場合、摺動材からの移着膜の形成が阻害されるため、移着膜による低摩擦化や低摩耗化の効果が得られ難くなり、摺動材の摩耗が顕在化する。これにより、摺動部における摩耗耐久性が低下し、メンテナンスサイクルの短縮や、寿命短縮等の問題が生じていた。
特許文献1の流体圧縮機では、摺動面における活性種の発生や、これに伴う移着膜の形成が阻害される現象を抑制することは困難である。また、特許文献2に記載の方法では、金属表面における金属フッ化物等の生成をある程度抑制できる可能性があるものの、水素ガス雰囲気下において移着膜を予め形成する必要があるため、製造コストが膨大となる。
そこで本発明は、摩耗耐久性の向上やメンテナンスサイクルの延長を図ることができる機械装置及びこれに用いる摺動材を提供することを目的とする。
本発明の機械装置の好ましい実施形態は、金属表面を有する部材と、前記部材表面を摺動する摺動材と、を有し、前記摺動材は、フッ素樹脂を母材とし、該母材に、前記フッ素樹脂から遊離するフッ素を捕捉する第一の材料又は前記金属表面に吸着する第二の材料の少なくとも一方が配合された複合樹脂材料により形成されることを特徴とする。
また、好ましくは、上記した実施形態に係る機械装置に用いられる摺動材として構成される。
本発明に係る摺動材によれば、部材表面における金属フッ化物の生成を抑制し、部材への移着膜の形成を促進して、摩耗耐久性の向上やメンテナンスサイクルの延長を図ることができる。
実施形態に係る機械装置に備えられる摺動部30を示す図である。 PTFE単独で構成された従来の摺動材によりアルミニウム表面を摺動するときの化学反応を説明する図である。 PTFE単独で構成された摺動材を摺動させた後の、アルミニウム表面に形成された摺動痕のX線光電子分光分析スペクトルを示す図である。 実施形態に係るレシプロ式流体機械40の全体構成を示す断面図である。 図4に示すレシプロ式流体機械40のシリンダ41内部の構成を拡大して示す断面図である。 スクロール式流体機械50の構成を示す断面図である。 図6に示すスクロール式流体機械50の固定スクロール51及び旋回スクロール52の一部を拡大して示す図である。 オルダム継手を備えたスクロール式流体機械70の構成を示す断面図である。 図8中のケーシング、旋回スクロール及びオルダム継手を示す分解斜視図である。 図8中のスライダを拡大して示す図である。 ピンオンディスク摩擦試験により得られた、各ピンの比摩耗量の評価結果を示す図である。 実施例4及び比較例2の摩擦試験後のアルミニウムディスク表面に形成された移着物のXPSスペクトルを示す図である。
図1は、実施形態に係る機械装置に備えられる摺動部30を示す図である。機械装置としては、例えばレシプロ式流体機械やスクロール式流体機械を挙げることができる。レシプロ式流体機械やスクロール式流体機械の全体構成は後述する。
摺動部30は、金属製の部材31と、フッ素樹脂を母材とする複合樹脂材料により形成された摺動材32と、を有している。摺動部30では、摺動材32が、摺動界面33において部材31と接触して摺動する。摺動界面33には、潤滑油やグリースなどが供給されてもよい。但し、実施形態の機械装置は、潤滑油等を供給せず、オイルフリーの状態で使用したときに、特に効果が発揮される。
図1に示す例では、部材31は、基材としての金属材31aの表面に、金属酸化物31bが形成されている。即ち、図1に示す例では、金属酸化物31bにより、金属表面が形成されており、この金属酸化物31bに、摺動材32を接触させて摺動させる。なお、図1では、金属材31aの表面に金属酸化物31bが形成されている例を示したが、金属材31aには、必ずしも金属酸化物31bが形成されていなくてもよく、部材31の表面に、金属材31aが露出していていもよい。即ち、部材31の金属表面は、金属材31aを構成する金属により形成されていてもよく、金属材31a上に形成された、金属酸化物31b等の金属化合物により形成されていてもよい。
摺動材32を構成する複合樹脂材料には、母材であるフッ素樹脂32a中に、第一の材料32bと第二の材料32cとが配合されている。図1では、フッ素樹脂32a中に、第一の材料32b及び第二の材料32cの双方が配合されている複合樹脂材料を用いた例を示したが、複合樹脂材料としては、第一の材料32b又は第二の材料32cのいずれか一方が配合されていてもよい。第一の材料32b、第二の材料32cについては後述する。摺動材32には、上記した第一の材料32b、第二の材料32cに加えて、カーボン等の補強材や固体潤滑材が配合されていてもよい。
部材31を構成する金属材31aとしては、例えば、Al、Mg、Si等の軽金属や、Fe、Cr、Ni、Mo、Ti、Cu等の遷移金属を用いることができる。部材31としては、具体的には、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等のAl系材料、鉄や鉄−ニッケル合金等のFe系材料、チタンやチタン合金等のTi系材料、銅や銅合金等のCu系材料を用いることができる。中でも、Al系材料を用いた場合に、耐摩耗性について優れた効果を得ることができる。Al系材料には、例えばMg、Si等が含有されていてもよい。また、Fe系材料には、例えばCr、Ni、Mo等が含有されていてもよい。
金属材31aの表面に形成される金属酸化物31bとしては、例えば金属材31aがアルミニウムの場合には酸化アルミニウム(以降、アルミナと呼ぶ)であり、鉄の場合には酸化鉄であり、銅の場合には酸化銅である。
部材31は、図1に示すように、部材31の基材を金属材31aにより形成してもよいし、部材31の基材の表面に、上記した金属材31aを構成する金属材料と同様の金属材料を用いて、例えばメッキ処理や物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法等により表面処理してもよい。表面処理する場合、部材31の基材は、上記した金属材31aにより構成してもよく、上記した金属材31aを構成する金属材料以外の金属材料を用いて構成してもよく、金属材料以外の材料を用いて構成してもよい。
摺動材32を構成する複合樹脂材料のフッ素樹脂32aとしては、PTFE、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(二フッ化)(PVDF)からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることができる。例えば、PTFEと、それ以外のフッ素樹脂とを混合して用いてもよい。
第一の材料32b、第二の材料32cが配合されていない、PTFE単独で構成された従来の摺動材を用いた場合の問題点を、アルミニウム表面を摺動するときの化学反応を例に、図2及び図3を用いて説明する。アルミニウムの表面は通常酸化されており、酸化表面に大気中の水蒸気が解離吸着することで、水酸基が生成する(図2(1)参照)。このようなアルミニウム表面を、PTFEからなる摺動材により摺動すると、摩擦熱やメカノケミカル的な作用により、アルミニウム表面が化学的に活性化し、水酸基が水分子として脱離する。水酸基が脱離した後のアルミニウム表面には、配位不飽和となって活性化したAl原子(以下、活性Al原子という)が、表面に露出した状態となる(図2(2)参照)。活性Al原子は電子不足状態であり、周囲から電子を奪うルイス酸として作用する。このため、活性Al原子がPTFEに作用すると、PTFEからフッ素を引き抜き、フッ化アルミニウムを生成する。
アルミニウム表面に形成されたフッ化アルミニウムが、移着膜の形成に与える影響を、図3を用いて説明する。図3に、PTFE単独で構成された摺動材を摺動させた後の、アルミニウム表面に形成された摺動痕のX線光電子分光分析(以下、XPSという)スペクトルを示す。図3中(B)は、フッ化アルミニウムを予め生成させたアルミニウム表面とPTFE単独で構成された摺動材とを摺動させた後の、アルミニウム表面に形成された摺動痕のXPSスペクトルであり、図3中(A)は、フッ化アルミニウムを生成させていないアルミニウム表面とPTFE単独で構成された摺動材とを摺動させた後のアルミニウム表面に形成された摺動痕のXPSスペクトルを示す図である。図3に示すように、アルミニウム表面にフッ化アルミニウムを予め生成させた場合(B)には、アルミニウム表面にフッ化アルミニウムを生成させていない場合(A)と比較して、PTFE単独で構成された摺動材から生じる移着膜に対応するC−Fのピークが低下していることが確認できる。即ち、摺動時に生成したフッ化アルミニウム等の金属フッ化物は、低摩擦化や低摩耗化に寄与する移着膜の形成を阻害することが確認できる。従って、摺動材32としては、図3中(A)に示す状態が得られるようにするため、部材31(例えばアルミニウム)の表面における金属化合物(例えばフッ化アルミニウム)の生成を抑制しながら、部材31の表面を摺動できるものが望ましい。
第一の材料32bは、摺動材32の母材であるフッ素樹脂32aから遊離するフッ素を捕捉するトラップ材として機能するものである。これにより、例えばアルミニウム表面におけるフッ化アルミニウム等の、金属フッ化物の生成を防止することができる。
第一の材料32bとしては、この第一の材料32bと、PTFE等のフッ素樹脂32aから遊離するフッ素との反応の活性化エネルギーが、部材31の金属表面と、フッ素樹脂32aから遊離するフッ素との反応の活性化エネルギーより低いものを用いることができる。なお、フッ素と反応する金属表面としては、上記したように、金属材31aを構成する金属や、金属材31a上に形成された金属酸化物31b等の金属化合物が挙げられる。この場合、第一の材料32bは、金属表面と比較して、フッ素樹脂32aから遊離するフッ素との反応性が高いため、部材31の表面において、フッ素樹脂32aから遊離したフッ素が活性Al原子等の活性反応サイトと反応してフッ化する前に、このフッ素を第一の材料32bにより捕捉(トラップ)することができる。
第一の材料32bとしては、一般に固体酸触媒の材料として用いられる金属酸化物の粉末を用いることができる。第一の材料としては、例えば、β型アルミナ(β−Al)、γ型アルミナ(γ−Al)、δ型アルミナ(δ−Al)、θ型アルミナ(θ−Al)、シリカ(SiO)−アルミナ(Al)複合酸化物、ゼオライト、チタニア(TiO、ルチル型又はアナターゼ型)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、セリア−ジルコニア複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つを用いることができる。なお、上記した金属酸化物の粒子表面には、PTFE等のフッ素樹脂に配合したときの分散性を高める目的で、シランカップリング処理等により表面処理をしてもよい。
第二の材料32cは、部材31の金属表面に吸着するものである。なお、部材31の金属表面としては、上記したように、金属材31aを構成する金属や、金属材31a上に形成された金属酸化物31b等の金属化合物が挙げられる。第二の材料32cとしては、部材31の金属表面に対する第二の材料32cの吸着エネルギーが、部材31の金属表面に対するフッ素樹脂の吸着エネルギーより大きいものを用いることができる。即ち、PTFE単独で構成された従来の摺動材を用いた摺動部においては、図2で説明したように、部材であるアルミニウムの表面に露出した活性Al原子が、摺動材であるPTFEと接触することでフッ化アルミニウムが生成し、移着膜の形成を阻害していた。第二の材料32cとして、上記したものを用いた場合、第二の材料32cは、フッ素樹脂32aと比較して、部材31の金属表面に対する吸着性が高いため、活性Al原子等の活性反応サイトにフッ素樹脂が接触してフッ化反応が進行する前に、この活性反応サイトに第二の材料32cが吸着し、部材31表面におけるフッ化反応を抑制することができる。また、第二の材料32cは、活性Al原子等の活性反応サイトが生成する前の金属表面に吸着し、活性反応サイト自体の生成を抑制することもできる。これにより、部材31表面におけるフッ化反応を抑制することができる。
第二の材料32cとしては、摺動材32を製造する際の加熱プロセスを考慮すると、摺動材32の母材であるフッ素樹脂の融点付近の温度で揮発しない、高分子材料を用いることが好ましい。低分子材料を用いると、摺動材32の製造時における加熱プロセス中に、燃焼により気化したり、揮発したりして、第二の材料32cによる金属フッ化物の生成抑制効果を十分に得られない可能性がある。
第二の材料32cとしては、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の、極性基を有する樹脂材料の粉末体が挙げられる。第二の材料32cとしては、上記した樹脂材料の粉末体のいずれか一つを単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
複合樹脂材料には、第一の材料32b、第二の材料32cに加えて、補強材や、固体潤滑材等を配合してもよい。なお、固体潤滑材としては、PTFE等の、母材成分として配合した成分以外の成分を使用する。補強材は、摺動材としての強度を高めるものであり、一例としては、カーボン(球状カーボン、カーボン繊維など)、ガラス繊維、球状アルミナ、銅、ブロンズ等が挙げられる。また、固体潤滑材の一例としては、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素(六方晶)等が挙げられる。
複合樹脂材料を製造する際には、一般に、PTFE等の母材の粉末、第一の材料32bの粉末、第二の材料32cの粉末を、ミキサーで混合し、続いて圧縮成型又は射出成型した後、焼成して得ることができる。焼成は、使用する母材、第一の材料32b、第二の材料32cの種類に応じて、その温度範囲を適宜調整して行う。
摺動材32における、第一の材料32b又は第二の材料32cの存在確認は、例えばXRDや赤外分光分析(以下、IRという)を用いて行うことができる。例えば、第一の材料32bである金属酸化物の粉末は、特定の結晶形をもつため、XRDで検出することができる。また、第二の材料32cである樹脂材料の粉末は、特定の官能基を有するため、IRで検出することができる。
図4は、一実施形態に係るレシプロ式流体機械40の全体構成を示す断面図である。レシプロ式流体機械40は、シリンダ41と、シリンダ41内部を往復動するピストン42と、を有している。シリンダ41内の、ピストン42により画成された空間には、流体を圧縮又は膨張させる作動空間としての圧縮/膨張室43が形成されている。
シリンダ41の図4中上端は、仕切り板44により閉塞されており、仕切り板44に、吸入口44a、吐出口44bが設けられている。吸入口44a、吐出口44bには、それぞれ、吸入弁44c、吐出弁44dが設けられており、吸入弁44c、吐出弁44dの先には、それぞれ配管が接続されている。
シリンダ41は、図4中下端側が開放されており、この下端部において、筐体45と接続されている。ピストン42には、ピストンピン46aを介して連結棒46が接続されている。筐体45内には、モータ47が収容されている。モータ47は、プーリ48、及びプーリ48間に巻き回されたベルト49を介して、連結棒46に接続されている。
レシプロ式流体機械40の作動時には、モータ47の動力を、ベルト49、プーリ48を介して、連結棒46によりピストン42に伝える。ピストン42を上下動させることで、吸入口44aから圧縮/膨張室43内に外気を吸入し、圧縮/膨張室43内で吸入ガスを圧縮する。圧縮されたガスは、吐出口44bを通って、圧縮/膨張室43の外部に吐出され、配管により回収される。
図5に、図4に示すレシプロ式流体機械40のシリンダ41内部の構成を拡大して示す。ピストン42には、ピストンリング421、ライダーリング422が環装されており、ピストン42の上下動に伴い、ピストンリング421、ライダーリング422が、シリンダ41の内周面と摺動する。これにより、ピストン42とシリンダ41との接触やカジリを防止することができ、ピストン42とシリンダ41とのスムーズな摺動状態を得ることができる。
シリンダ41は、図1における部材31に該当し、ピストンリング421は、図1における摺動材32に該当する。ピストン42は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。シリンダ41は、金属材31a(図1参照)を基材とする金属製であり、金属材31aについて説明したのと同様の材料を用いて形成することができる。シリンダ41には、金属材31aに対する表面処理により、適宜被膜を形成してもよい。例えば、金属材31aの表面に対して、Ni等によりメッキ膜を形成してもよい。なお、シリンダ41の金属材31aの表面には、被膜を形成しなくてもよい。
ピストンリング421は、上記した複合樹脂材料により形成する。即ち、ピストンリング421は、母材であるフッ素樹脂に、第一の材料32b又は第二の材料32cの少なくとも一方が配合されている複合樹脂材料を用いて形成する。ライダーリング422についても、ピストンリング421と同様、複合樹脂材料を用いて形成してもよい。
図6は、スクロール式流体機械50の構成を示す断面図である。図6において、スクロール式流体機械50は、スクロール式流体機械50の外殻をなすケーシング53と、ケーシング53に回転可能に設けられた駆動軸54と、ケーシング53に取り付けられた固定スクロール51と、駆動軸54のクランク軸54Aに旋回可能に設けられた旋回スクロール52と、を有している。固定スクロール51は、固定鏡板51aと、固定鏡板51aの一主面側に渦巻状に形成された固定スクロールラップ51bと、を有している。旋回スクロール52は、旋回鏡板52aと、旋回鏡板52aの一主面側に渦巻状に形成された旋回スクロールラップ52bと、を有している。旋回スクロール52には、旋回鏡板52aの背面側中央にボス部52fが突設されている。
旋回スクロール52は、旋回スクロールラップ52bが、固定スクロールラップ51bと互いに噛み合うように、互いに対向して配置されている。これにより、固定スクロールラップ51bと旋回スクロールラップ52bとの間に、流体を圧縮又は膨張する作動空間としての圧縮/膨張室55が形成される。
固定スクロール51の固定鏡板51aの外周側には、吸入口56が穿設されている。吸入口56は、最外周側の圧縮/膨張室55に連通している。また、固定クスロール51の固定鏡板51aの中心部には、吐出口57が穿設されている。吐出口57は、最内周側の圧縮/膨張室55に開口している。
駆動軸54は、玉軸受58を介してケーシング53に回転可能に支持されている。駆動軸54の一端側は、ケーシング53外で電動モータ等に連結されており、駆動軸54の他端側は、ケーシング53内に伸張してクランク軸54Aとなる。クランク軸54Aの軸線は、駆動軸54の軸線に対して、所定寸法だけ偏心している。
ケーシング53の旋回スクロール52側の内周には、円環状のスラスト受部61が設けられている。スラスト受部61と旋回鏡板52aとの間には、スラストプレート62が設けられている。スラストプレート62は、例えば鉄等の金属材料により円環状の板体として形成されており、旋回スクロール52が旋回運動したときに、旋回鏡板52aに対してその表面が摺動し、主に圧縮運転時に旋回スクロール52に作用するスラスト方向(旋回スクロール52を固定スクロール51から離間させる方向)の荷重をスラスト受部61と共に受承する。これにより、ケーシング53と旋回鏡板52aとのかじりや異常摩耗を防止する。
また、スラスト受部61と旋回鏡板52aとの間には、スラストプレート62より中心寄りの位置に、オルダムリング63が設けられている。オルダムリング63は、駆動軸54によって旋回スクロール52が回転駆動されたときに、旋回スクロール52の自転を防止し、クランク軸54Aによる所定寸法の旋回半径を持った円運動を与える。
不図示の電動モータ等により駆動軸54を回転駆動させると、旋回スクロール52が所定寸法の旋回半径で旋回運動し、吸込口56から吸い込まれた外部の空気が、固定スクロールラップ51bと旋回スクロールラップ52bとの間に画成された圧縮/膨張室55…内で順次圧縮される。この圧縮空気は、固定スクロール51の吐出口57から、外部の空気タンク等に吐出される。
図7に、図6に示すスクロール式流体機械50の固定スクロール51及び旋回スクロール52の一部を拡大して示す。固定スクロールラップ51bの旋回鏡板52aとの対向側の端面51cには、溝51dが形成されており、この溝51dには、チップシール591が嵌め込まれている。また、旋回スクロールラップ52bの固定鏡板51aとの対向側の端面52cにも、溝52dが形成されており、この溝52dにもチップシール592が嵌め込まれている。
旋回スクロール52の旋回運動に伴い、チップシール591が旋回鏡板52aのラップ底面52eと摺動し、チップシール592が固定鏡板51aのラップ底面51eと摺動する。これにより、固定スクロールラップ51bと旋回鏡板52aのラップ底面52eとの接触や、旋回スクロールラップ52bと固定鏡板51aのラップ底面51eとの接触を防止することができ、スムーズな摺動状態を得ることができる。
図7において、固定スクロール51及び旋回スクロール52は、図1における部材31に該当し、チップシール591及びチップシール592は、図1における摺動材32に該当する。固定スクロール51及び旋回スクロール52は、金属材31a(図1参照)を基材とする金属製であり、金属材31aについて説明したのと同様の材料を用いて形成することができる。固定スクロール51の固定鏡板51aのラップ底面51e及び固定スクロールラップ51bの側面には、金属材31aに対する表面処理により、適宜メッキ膜等の被膜を形成してもよい。
チップシール591及びチップシール592は、複合樹脂材料により形成する。即ち、チップシール591及びチップシール592は、母材であるフッ素樹脂に、第一の材料32b又は第二の材料32cの少なくとも一方が配合されている複合樹脂材料を用いて形成する。
また、スラストプレート62と旋回鏡板52aとの摺動部において、これらの摺動面を形成するスラストプレート62表面又は旋回鏡板52aの表面に、上記した、複合樹脂材料をコーティングしてもよい。また、上記した説明では、スラストプレート62を、鉄等の金属材料により形成した例を示したが、スラストプレート62自体を、複合樹脂材料により形成してもよい。また、上記した説明では、スラストプレート62と、スラストプレート62より中心寄りの位置に設けられたオルダムリング63により、旋回スクロール52の自転を防止する機構について示したが、本発明における実施形態はこれに限られるものではなく、本発明は、例えば補助クランク(図示しない)など他の自転防止機構を用いたスクロール式流体機械にも用いることができる。
図6〜7では、旋回スクロール52の自転を防止する機構として、オルダムリング63を備えたスクロール式流体機械50の構成を示した。図8〜図10では、旋回スクロールの自転防止機構として、オルダム継手を備えたスクロール式流体機械70の構成を示す。図8において、71は固定スクロール、72は旋回スクロール、73はケーシング、74は駆動軸である。旋回スクロール72は、旋回スクロール本体75と、旋回スクロール本体75の背面側に取り付けられた、略円板状の背面プレート76とを有している。
固定スクロール71は、固定鏡板71aの表面側に固定スクロールラップ71bが設けられ、固定鏡板71aの背面側に放熱板71cが設けられている。また、旋回スクロール本体75は、旋回鏡板75aの表面側に、固定スクロールラップ71bと対向するように、旋回スクロールラップ75bが設けられ、旋回鏡板75aの背面側に放熱板75cが設けられている。
背面プレート76は、旋回スクロール本体75の放熱板75cの先端に、ボルト等により固着されており、その背面中央部には、ボス部76dが軸方向に突出している。なお、スクロール式流体機械70の基本的な構成は、上記した点以外は、図6に示す構成と同様である。このため、図6と共通する部分については説明を省略する。
スクロール式流体機械70では、旋回スクロール72の背面プレート76と、ケーシング73のフランジ部77との間に、自転防止機構であるオルダム継手90が設けられている。図9〜図10に示すように、オルダム継手90は、X軸方向に延びるX軸ガイド91、91、X軸方向に直交するY軸方向に延びるY軸ガイド92、92、X軸ガイド91及びY軸ガイド92に摺接するスライダ93、及びスライダ93に配置された各球体94を有している。
X軸ガイド91、91、Y軸ガイド92、92は、いずれも細長い角板状に形成されている。X軸ガイド91、91は、ケーシング73のフランジ部77の摺動面77Aに一体に設けられており、Y軸方向に一定の寸法だけ離間して設置されている。Y軸ガイド92、92は、背面プレート76の摺動面76Aに一体に設けられており、X軸方向に一定の寸法だけ離間して設置されている。
スライダ93は、略正方形の平板状に形成されており、側面93a、93aが、X軸ガイド91、91の内面に摺接し、側面93b、93bが、Y軸ガイド92、92の内面に摺接するように装着されている。スライダ93の中央部には、背面プレート76のボス部76dが貫通する逃し穴93cが穿設されており、その4隅には、貫通孔93d、93d、93d、93dが穿設されている。貫通孔93dには、球体94、94、94、94が挿入されている。
オルダム継手90は、スライダ93をX軸方向、Y軸方向に摺動変位させることにより、旋回スクロール72の自転を防止し、旋回スクロール72に所定寸法の旋回半径をもった円運動を与える自転防止機構として機能する。
図8に示すスクロール式流体機械70は、不図示の電動モータ等により駆動軸74を回転駆動させると、旋回スクロール72が所定寸法の旋回半径で旋回運動し、吸込口78から吸込まれた外部の空気が、固定スクロールラップ71bと旋回スクロールラップ75bとの間に画成された圧縮/膨張室79、79…内で順次圧縮される。この圧縮空気は、固定スクロール71の吐出口80から、吐出パイプ81を介して吐き出され、外部のタンクに貯留される。
例えばX軸ガイド91、91、Y軸ガイド92、92が金属製であり、スライダ93が樹脂製である場合、スライダ93における、摺動面を構成する領域を、上記した複合樹脂材料により形成してもよい。また、スライダ93の摺動面を形成する面を、複合樹脂材料によりコーティングしてもよい。また、X軸ガイド91、91、Y軸ガイド92、92が金属製である場合には、X軸ガイド91、91、Y軸ガイド92、92の表面に、複合樹脂材料をコーティングしてもよい。また、X軸ガイド91、91、Y軸ガイド92、92を複合樹脂材料により構成し、スライダ93を金属製としてもよい。
図4〜5に示すレシプロ式流体機械、及び図6〜10に示すスクロール式流体機械においては、いずれも圧縮/膨張室内に供給するガスとして、大気を用いてもよいし、乾燥ガスを用いてもよい。即ち、高純度窒素ガス等の、露点が低く、湿度が低いガスを圧縮する際には、フッ素樹脂を母材とする摺動材の摩耗が悪化し易く、流体機械のメンテナンスサイクルや寿命が短くなり易かった。上記した実施形態に係る摺動材は、圧縮するガスの種類に拠らずに、部材の表面における金属フッ化物の生成抑制効果を発現する。このため、実施形態の摺動材を適用した流体機械を、例えば乾燥ガスの圧縮に供することもできる。
乾燥ガスの例としては、露点−30℃以下のガスを挙げることができる。乾燥ガスとしては、例えば合成空気、高純度窒素ガス、酸素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、水素ガス等が挙げられる。
上記した実施形態では、圧縮機に代表される流体機械に、図1に示す摺動材32を適用した場合を例に説明した。但し、実施形態に係る摺動材32は、流体機械以外にも、真空装置、印刷装置、分析装置、宇宙関連機器等の、固体潤滑性が求められる機械装置に用いてもよい。
第一原理に基づく密度汎関数理論(DFT)手法により、第一の材料32bと第二の材料32cの特性を検証した。以下の検証では、複合樹脂材料の第一の材料32bとしてγ型アルミナを用い、第二の材料32cとしてPEEK樹脂を用いた場合について検証した。また、部材31を構成する金属材31aはアルミニウムとし、最表層の金属酸化物31bは酸化アルミニウムとした。
まず、第一の材料32bであるγ型アルミナ、及び摺動材31の最表層の金属酸化物31bである酸化アルミニウムのそれぞれについて、フッ素との反応の活性化エネルギーを計算した。酸化アルミニウムとしては、α型アルミナを仮定した。
計算には、市販のソフトウェア「DMol」(Accelrys社製)を用いた。また、汎関数として「GGA−PBE」を用い、基底関数として「DNP」を用いた。また、エネルギー収束閾値を、10−5Haとした。計算結果を表1に示す。なお、活性化エネルギーは、正に大きいほど反応が進行し難いことを示す。
表1に示すように、フッ素とγ型アルミナ(第一の材料32b)との反応の活性化エネルギーΔE1は、フッ素とα型アルミナ(金属酸化物31b)との反応の活性化エネルギーΔE2と比較して小さい。
従って、母材であるPTFEにγ型アルミナを配合することにより、PTFEから遊離したフッ素を、γ型アルミナにより捕捉(トラップ)することができる。このため、部材としてのアルミニウム表面のフッ化現象を抑制することができる。
Figure 2018066427
次に、第二の材料32cであるPEEK樹脂、及び摺動材31の母材であるPTFEのそれぞれについて、部材31の最表層の金属酸化物31bである酸化アルミニウム(α型アルミナ)に対する吸着エネルギーを、表1に示す計算と同じソフトウェアを用いて計算した。計算結果を表2に示す。なお、吸着エネルギーの計算において、樹脂材料を構成するポリマー鎖の全てをモデル化することは困難であるため、吸着エネルギーの計算は、それぞれのモノマーについて行った。吸着エネルギーは、負に大きいほど強く吸着していることを表す。
表2に示すように、酸化アルミニウム(α型アルミナ)表面に対するPEEK樹脂(第二の材料32c)の吸着エネルギーΔE3は、酸化アルミニウム(α型アルミナ)表面に対するPTFE(摺動材32の母材)の吸着エネルギーΔE4と比較して、負に大きい値を示している。従って、PTFEにPEEK樹脂を配合することにより、酸化アルミニウム表面の反応活性サイトにPEEK樹脂が吸着し、アルミニウム表面のフッ化を抑制することが可能である。
Figure 2018066427
第一の材料32b及び第二の材料32cの効果を検討するため、ピンオンディスク摩擦試験を行った。ピンオンディスク摩擦試験では、計算による検証と同様、第一の材料32bとしてγ型アルミナを使用し、第二の材料32cとしてPEEK樹脂を使用し、部材31を構成する金属材31aとしてアルミニウムを使用した。金属材31aの最表層の金属酸化物31bは酸化アルミニウムとした。
ピンオンディスク摩擦試験は、表3に示す材料を用いた複合樹脂材料により形成した直径φ3mmの棒状部材を、摺動材32に対応するピンとして使用した。具体的には、各原料粉をミキサーで混合し、得られた混合物を圧縮成型、さらに焼成して得られた焼成品をφ3の棒状に加工したものを、摩擦試験に供した。
なお、表3において「○」は、γ型アルミナ、PEEK樹脂又はカーボンを、PTFE(母材)に対して配合したことを示し、「−」は、γ型アルミナ、PEEK樹脂又はカーボンを、PTFE(母材)に対して配合しなかったことを示す。また、表3において、γ型アルミナ、PEEK樹脂又はカーボンをPTFE(母材)に対して配合した場合、それぞれの成分のPTFE(母材)に対する配合割合は、実施例1〜5、比較例1〜3において同率とした。
また、φ30mm、厚さ4mm、表面の算術平均粗さ0.05μmのアルミニウム製ディスクを、部材31に対応するディスクとして使用した。摩擦試験は、ディスクの中心から7.5mmだけシフトした位置に、荷重10Nでピンを押し付けた状態で、回転数100rpm(すべり速度は78.5mm/s)で6時間連続して行った。
摩擦試験を実施する際の雰囲気としては、大気雰囲気、高純度窒素雰囲気の2種類を適用した。大気雰囲気は、温度約20℃、相対湿度約50%とした。高純度窒素の雰囲気は、窒素ガスボンベから窒素ガスを供給して形成した。高純度窒素の雰囲気は、温度約20℃、露点−70℃の乾燥状態とした。
(実施例1)
母材であるPTFEに、第一の材料32bとしてγ型アルミナを配合して、複合樹脂材料を得た。この複合樹脂材料により作成したピンを用いて、大気雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(実施例2)
母材であるPTFEに、第二の材料32cとしてPEEK樹脂を配合して、複合樹脂材料を得た。この複合樹脂材料により作成したピンを用いて、大気雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(実施例3)
母材であるPTFEに、第一の材料32bとしてγ型アルミナを配合し、第二の材料32cとしてPEEK樹脂を配合して、複合樹脂材料を得た。この複合樹脂材料により作成したピンを用いて、大気雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(実施例4)
実施例3で得られた複合樹脂材料に、さらにカーボンを配合し、得られた複合樹脂材料により作成したピンを用いて、大気雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(実施例5)
実施例4で用いたものと同じ複合樹脂材料によりピンを作成した。得られたピンを用いて、高純度窒素雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(比較例1)
母材であるPTFEに、第一の材料32b、第二の材料32cのいずれも配合していない樹脂材料(PTFEの割合が100%である樹脂材料)により、ピンを作成した。得られたピンを用いて、大気雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(比較例2)
母材であるPTFEに、第一の材料32b、第二の材料32cのいずれも配合せず、カーボンを配合して得られた樹脂材料により、ピンを作成した。得られたピンを用いて、大気雰囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
(比較例3)
比較例2で用いたものと同じ樹脂材料により、ピンを作成した。得られたピンを用いて、高純度窒素囲気下でピンオンディスク摩擦試験を行った。
Figure 2018066427
ピンオンディスク摩擦試験により得られた、各ピンの比摩耗量の評価結果を図11に示す。ピンオンディスク摩擦試験の評価は、摩擦試験に伴うピンの長さの変化を計測し、摩擦試験前後でのピンの長さの減少量(摩耗量)を算出して行った。図11には、実施例1〜5及び比較例1〜3について算出された、各ピンの減少量(摩耗量)を、比較例1(PTFE単独で構成された摺動材の場合)の減少量(摩耗量)を基準とした相対値として示した。
図11に示すように、実施例1及び実施例2は、比較例1と比較して、摩耗量が約1/100まで低下することが確認できた。即ち、PTFEに対して第一の材料32b又は第二の材料32cを配合することで、摺動材32としての摩耗耐久性を、100倍向上させることができることが確認できた。また、実施例3では、実施例1や実施例2と比較して、摩耗量がさらに低下していることが確認できた。このことから、第一の材料32bと第二の材料32cとを併用することにより、摩耗耐久性を向上させる効果が相乗的に発現されることが確認できた。
また、実施例4では、比較例2と比較して、摩耗量が約1/40まで低下していることが確認できた。即ち、PTFEにカーボンを配合して補強した複合樹脂材料に対して、更に第一の材料32bや第二の材料32cを配合することで、摺動材32としての摩耗耐久性を、約40倍向上させることができた。さらに、実施例4では、比較例1と比較すると、1000倍以上の摩耗耐久性を有することが確認できた。
また、実施例5と比較例3とを比較すると、高純度窒素雰囲気下においても、第一の材料32b及び第二の材料32cによる摩耗耐久性の向上効果が確認できた。即ち、大気中で摩擦試験を行った、実施例4と比較例2とを比較した結果と同様に、第一の材料32bと第二の材料32cとを母材に配合することにより、約40倍の摩耗耐久性向上の効果を得られることが確認できた。
上記したピンオンディスク摩擦試験後のアルミニウムディスク表面に形成された移着物に対して、X線光電子分光分析(XPS)による化学分析を行い、フッ素の化学結合状態から、アルミニウム表面に存在する化学種を特定した。X線光電子分光分析(XPS)は、表3において検討した材料のうち、摩耗量が最小であった実施例4と、これに対応する比較例2について行った。
図12(a)に実施例4の摩擦試験後のアルミニウムディスク表面に形成された移着物のXPSスペクトル、図12(b)に比較例2の摩擦試験後のアルミニウムディスク表面に形成された移着物のXPSスペクトルを示す。なお、図12(a)、(b)のいずれも、F1s光電子のスペクトルである。図12より、第一の材料32bや第二の材料32cを含まない樹脂材料をピンとして用いた比較例2のアルミニウムディスク表面では、図12(b)に示すように、フッ化アルミニウムのピークが確認された。これに対し、第一の材料32bと第二の材料32cを含む複合樹脂材料を、ピンとして用いた実施例4のアルミニウムディスク表面では、図12(a)に示すように、フッ化アルミニウムをピークは確認されなかった。この結果から、母材であるPTFEに対して、第一の材料32bや第二の材料32cを配合することによって、フッ化アルミニウムの形成が抑制されることが確認できた。
以上説明した摩擦試験及び表面化学分析の結果から明らかなように、実施形態に係る摺動材は、部材31との摺動時に、部材31の摺動面に金属フッ化物が生成されるのを抑制できる。このため、摺動面に移着膜が形成され易くなり、摺動材32の摩耗耐久性を向上できる。従って、この摺動材32を、例えばレシプロ式流体機械のピストンリングやスクロール式流体機械のチップシールに適用することで、ピストンリングやチップシールの摩耗耐久性が高められるため、これらの交換寿命が長くなる。このため、レシプロ式流体機械やスクロール式流体機械のメンテナンスサイクルや寿命を延長できる。
また、一般に、摩耗耐久性が悪化し易い、高純度窒素等の乾燥雰囲気においても、実施形態の摺動材32を用いることで、摩耗耐久性の向上を図ることができる。このため、レシプロ式流体機械やスクロール式流体機械で乾燥ガスを圧縮する際にも、メンテナンスサイクルや寿命の延長を図ることができる。
30…摺動部、31…部材、31a…金属材、31b…金属酸化物、32…摺動材、32a…フッ素樹脂、32b…第一の材料、32c…第二の材料、33…摺動界面、40…レシプロ式流体機械、41…シリンダ、42…ピストン、421…ピストンリング、422…ライダーリング、43、55、79…圧縮/膨張室、44…仕切り板、44a、56、78…吸入口、44b、57、80…吐出口、44c…吸入弁、44d…吐出弁、45…筐体、46…連結棒、46a…ピストンピン、47…モータ、48…プーリ、49…ベルト、46…連結棒、50、70…スクロール式流体機械、51、71…固定スクロール、51a、71a…固定鏡板、51b、71b…固定スクロールラップ、51c、52c…端面、51d、52d…溝、51e、52e…ラップ底面、52、72…旋回スクロール、52a、75a…旋回鏡板、52b、75b…旋回スクロールラップ、52f、76d…ボス部、53、73…ケーシング、54、74…駆動軸、54A…クランク軸、58…玉軸受、591、592…チップシール、61…スラスト受部、62…スラストプレート、63…オルダムリング、71c、75c…放熱板、75…旋回スクロール本体、76…背面プレート、76A、77A…摺動面、77…フランジ部、81…吐出パイプ、90…オルダム継手、91…X軸ガイド、92…Y軸ガイド、93…スライダ、93a、93b…スライダ93の側面、93c…逃し穴、93d…貫通孔、94…球体

Claims (13)

  1. 金属表面を有する部材と、
    前記部材表面を摺動する摺動材と、を有し、
    前記摺動材は、フッ素樹脂を母材とし、該母材に、前記フッ素樹脂から遊離するフッ素を捕捉する第一の材料又は前記金属表面に吸着する第二の材料の少なくとも一方が配合された複合樹脂材料により形成されることを特徴とする機械装置。
  2. 前記摺動材が、前記第一の材料として、該第一の材料と前記フッ素樹脂から遊離するフッ素との反応の活性化エネルギーが、前記金属表面と、前記フッ素樹脂から遊離するフッ素との反応の活性化エネルギーより低いものを含有することを特徴とする請求項1に記載の機械装置。
  3. 前記摺動材が、前記第二の材料として、前記金属表面に対する前記第二の材料の吸着エネルギーが、前記金属表面に対する前記フッ素樹脂の吸着エネルギーより大きいものを含有することを特徴とする請求項1に記載の機械装置。
  4. 前記部材が、Al系材料又はFe系材料を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の機械装置。
  5. 前記部材としてのシリンダと、
    前記シリンダの内部を往復動しつつ、該シリンダ内に、流体を圧縮又は膨張させる作動空間を形成するピストンと、
    前記作動空間の外部から前記作動空間内へと前記流体を流通させるか、又は前記作動空間から該作動空間の外部へと前記流体を吐出させる孔部と、
    前記ピストンに装着され、前記シリンダの内面と摺動する前記摺動材としてのピストンリングと、を有し、
    前記ピストンリングは、前記複合樹脂材料により形成されることを特徴とする請求項1に記載の機械装置。
  6. 固定鏡板に固定スクロールラップが形成された、前記部材としての固定スクロールと、
    旋回鏡板に旋回スクロールラップが形成された、前記部材としての旋回スクロールと、
    前記固定スクロールと前記旋回スクロールとが互いに対向して噛み合わされて設置されて形成された、流体を圧縮又は膨張させる作動空間と、
    前記作動空間の外部から前記作動空間内へと前記流体を流通させるか、又は前記作動空間から該作動空間の外部へと前記流体を吐出させる孔部と、
    前記固定スクロールラップの前記旋回鏡板との対向側端部及び前記旋回スクロールラップの前記固定鏡板との対向側端部にそれぞれ嵌合された、前記摺動材としてのチップシールと、を有することを特徴とする請求項1に記載の機械装置。
  7. 前記流体として、乾燥ガスが前記作動空間に導入されることを特徴とする請求項5又は6に記載の機械装置。
  8. 金属表面を有する部材表面を摺動する摺動材であって、
    フッ素樹脂を母材とし、該母材に、前記フッ素樹脂から遊離するフッ素を捕捉する第一の材料又は前記金属表面に吸着する第二の材料の少なくとも一方が配合された複合樹脂材料により形成されることを特徴とする摺動材。
  9. 前記第一の材料と前記フッ素樹脂から遊離するフッ素との反応の活性化エネルギーは、
    前記金属表面と、前記フッ素樹脂から遊離するフッ素との反応の活性化エネルギーより低いことを特徴とする請求項8に記載の摺動材。
  10. 前記金属表面に対する前記第二の材料の吸着エネルギーは、前記金属表面に対する前記フッ素樹脂の吸着エネルギーより大きいことを特徴とする請求項8に記載の摺動材。
  11. 前記フッ素樹脂は、PTFE、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)及びポリフッ化ビニリデン(二フッ化)(PVDF)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項8に記載の摺動材。
  12. 前記第一の材料は、β型アルミナ(β−Al)、γ型アルミナ(γ−Al)、δ型アルミナ(δ−Al)、θ型アルミナ(θ−Al)、シリカ(SiO)−アルミナ(Al)複合酸化物、ゼオライト、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、セリア−ジルコニア複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項8に記載の摺動材。
  13. 前記第二の材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項8に記載の摺動材。
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