JP2018062279A - 双胴式救助船 - Google Patents

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Abstract

【課題】救助員の乗り込んだ救助船が近づくことのできない場所や悪天候・悪条件下においても、被救助者を迅速且つ安全に救助することができ、救助者が二次災害に遭う虞のない、被救助者の救助を可能にする双胴式救助船を提供する。【解決手段】ウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船1は、互いに平行に配された二つの船体2と、前記二つの船体を連結する連結体5,6と、該二つの船体にそれぞれ設けられたウォータージェット推進器とを備え、前記二つの船体の間に昇降自在に網部7が配され、前記網部に支持索8が結索され、前記連結体に操出・巻取装置9が設けられ、前記支持索が前記操出・巻取装置により発停自在及び正逆自在に巻回され、前記ウォータージェット推進器及び前記操出・巻取装置を遠隔操作するための無線操縦装置が設けられていることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は双胴式救助船に係り、より詳しくは救助員の乗り込んだ救助船が近づくことのできない場所や悪天候・悪条件下においても、被救助者(例えば、遭難者)を迅速且つ安全に救助することができ、救助者が二次災害に遭う虞のない、被救助者の救助を可能にする双胴式救助船に関する。
従来、水上で遭難した被救助者を救助するために救助船が用いられている。従来の救助船は、救助船に救助員が乗り込み、救助員の操舵により救助船をできるだけ被救助者に近づけ、救助船から浮き輪やゴムボート等を投げ、被救助者が浮き輪やゴムボート等に掴まった状態で、被救助者を浮き輪やゴムボート等ごと手繰り寄せることにより被救助者を救助していた。
特許文献1には、船体の上部外縁に前方弧形チューブと後方チューブが分離して形成された船艇において、前記前方弧形チューブは前記船体の両側に固定され、前記船体の上面で前記前方弧形チューブの後方の両側または一側には、スライディングレールが前記船体の長さ方向に後方に向けて設置され、前記後方チューブは、その下部に前記スライディングレールに挿入されるガイド突起が設置されて、前記スライディングレール上をスライドできるようになって、前記前方弧形チューブの後端部と前記後方チューブの先端部には、互いに着脱自在に連結する第1結合手段が装備されている人命救助用船艇が開示され、人命救助用船艇における前方弧形チューブと後方チューブを分離し易く、かつ作業を単純化して被救助者を速かに引き上げて迅速な人命救助を可能にすることが開示されている。
しかし、特許文献1の人命救助用船艇は、救助員が乗り込んだ比較的大きな船艇で、被救助者の近くまで接近し、被救助者を浮き輪やゴムボート等ごと手繰り寄せる必要があり、台風による高潮による被害、あるいは津波の被害により発生した陸上から流れ込んできた多数の流木や瓦礫等により被救助者に近づくことができない場合、とりわけ、被救助者が意識混濁している場合等において、救助が難航するという問題があった。
また、船艇が被救助者に接近し過ぎることによって、船体が被救助者に衝突する、あるいは船艇の船体に取り付けられたスクリュー等の推進器に巻き込まれる等によって被救助者の身体が傷つけられる虞があった。
さらに、荒天下での水上の人命救助は風雨や波浪により危険を伴うため、救助者が船艇に乗り込み被救助者の近くまで接近する場合、救助者が二次災害に遭う虞もあった。
特許文献2には、図7に示すように、人を収容するための収容部(212)と、収容部を取り付けるための取付部(213)と、収容部の先端を上下に駆動するための駆動部(214)からなる救助装置であって、救助艇(100)の艇首取り付け救助部に取り付けることにより、水に浮かぶ人を救助するときは、収容部の先端を水面下に下げて、人を収容部に掬い上げるときは、収容部を水面上に上げることにより水難者を救助できるようにしたことを特徴とする救助艇に装着できる救助装置が開示され、救助艇を停船することなく風位に立てながら救助作業を行い作業中も水難者を見失うことなく搭乗者の安全も図れることが開示されている。
しかし、図7に示すように、特許文献2の救助装置は、収容部(212)の水中に浸かっている領域(没水領域)が幅方向及び深さ方向において少なく、且つ救助艇(100)は直進しているため、被救助者を掬い上げ損ねる虞があった。特許文献2の救助装置では、幅方向の収容領域を補うために斜路(221)を設けているが、斜路(221)は網ではなく、被救助者が直進している救助船(100)の斜路(221)に接触した際に被救助者の身体が傷つけられる虞がある。
また、収容部(212)は、救助艇(100)の船首から突出して設けられているため、救助艇(100)の重心がずれており、被救助者を収容部(212)に収容した際に、救助艇(100)のバランスが崩れ、転覆する虞がある。
さらに、特許文献2には、救助装置のその他の実施形態が記載されている(図8参照)。この実施形態では、救助装置(300)は船殻救助部にあり、収容部(312)と取付部(313)と駆動部(314)から構成される。収容部(312)は救助艇(100)の船首部の艇殻を転用したもので、収容部(312)は取付部(313)の把持部(3132)を回転の中心として艇首下方に約90度回転可能であって、水難者に直進する救助艇の前面で水面から水中にかけて船殻は籠状となって救助装置として用いられる。つまり、救助艇(100)の船首を被救助者の掬い部として用いている。
しかし、この実施形態における救助装置は、収容部(312)は船首を用いていることから、収容部(312)の開口部の形状は三角形状を呈しており、且つ水中に浸かっている領域(没水領域)が幅方向及び深さ方向において少ないため、被救助者を掬い上げ損ねる虞があった。さらに、収容部(312)は網ではないため、被救助者が直進している救助船の収容部(すなわち、救助艇の船首部)に接触した際に被救助者の身体が傷つけられる虞がある。加えて、収容部(312)は網ではないため、救助艇(100)が前進する際に収容部(312)が水の抵抗を大きく受けることになり、救助艇(100)の操舵が困難となる。これにより、救助艇(100)を前進させながらの救助活動はできない。場合によっては、収容部(312)が水の抵抗によって外れてしまう虞もある。
また、特許文献2の救助装置及び救助艇は、ウォータージェット推進器を備えていないため、水深の浅い場所やスクリューに絡まる虞のある水草等の障害物が多い場所において救助活動を実施できないという問題があった。
加えて、特許文献2の救助装置及び救助艇は、救助活動に少なくとも2人の救助者を必要とするため、救助者が立ち入ることができない場所での救助活動が不可能であり、救助者が二次災害に遭う虞もあった。
叙上の通り、従来の救助船による救助では、救助船を遠隔操作し、救助船で被救助者を直接掬って救助するという発想自体がなかった。
特開2008−150027号公報 特開2015−077894号公報
本発明は、叙上の従来技術の問題点を解決し、救助員の乗り込んだ救助船が近づくことのできない場所や悪天候・悪条件下においても、被救助者を迅速且つ安全に救助することができ、救助者が二次災害に遭う虞のない、被救助者の救助を可能にする双胴式救助船を提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、
互いに平行に配された二つの船体と、前記二つの船体を連結する連結体と、該二つの船体にそれぞれ設けられたウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船であって、
前記二つの船体の間に昇降自在に網部が配され、
前記網部に支持索が結索され、
前記連結体に操出・巻取装置が設けられ、
前記支持索が前記操出・巻取装置により発停自在及び正逆自在に巻回され、
前記ウォータージェット推進器及び前記操出・巻取装置を遠隔操作するための無線操縦装置が設けられている
ことを特徴とするウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船に関する。
請求項2に係る発明は、
前記操出・巻取装置が、補助駆動源に減速器を介して取り付けられた回転ドラムから構成され、
前記二つの船体の前記ウォータージェット推進器の各々に主駆動源が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船に関する。
請求項3に係る発明は、前記網部が、支持枠と該支持枠に張設された網状体からなる請求項1又は2に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船に関する。
請求項4に係る発明は、前記支持枠が、長方形、正方形、長円、楕円及び円からなる群から選択される一種以上の形状を呈している請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船に関する。
請求項5に係る発明は、ビデオカメラを搭載していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船に関する。
請求項1に係る双胴式救助船によれば、互いに平行に配された二つの船体と、前記二つの船体を連結する連結体と、該二つの船体にそれぞれ設けられたウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船であって、前記二つの船体の間に昇降自在に網部が配され、前記網部に支持索が結索され、前記連結体に操出・巻取装置が設けられ、前記支持索が前記操出・巻取装置により発停自在及び正逆自在に巻回され、前記ウォータージェット推進器及び前記操出・巻取装置を遠隔操作するための無線操縦装置が設けられているため、無線によりウォータージェット推進器を操作することにより、無人で水上を航行させることができる。そのため、救助者が立ち入ることができない危険な場所であっても、無人でその現場に向かって被救助者を救助でき、被救助者に救援物資を届けることができる。本発明に係る双胴式救助船は、船体に人が乗るスペースを確保する必要がないため、船体を小型化することができ、水面に障害物がある場所や狭い空間等であっても円滑に航行でき、被救助者を救助することができる。
また、請求項1に係る双胴式救助船によれば、二つの船体の間の網部に結索された支持索が操出・巻取装置により発停自在及び正逆自在に巻回されるため、被救助者が網部上に位置するように救助船を遠隔操作し、支持索を操出・巻取装置により巻き上げることにより、網部が水中から水上に上昇し、被救助者を網部で掬い、水上に引き上げることができる。これにより、被救助者を水上に引き上げたまま、遠隔操作により救助船を有人の比較的大きな船舶や陸地等の安全な場所に迅速且つ安全に運ぶことができる。
さらに、請求項1に係る双胴式救助船によれば、ウォータージェット推進器を備えているため、スクリューを推進器とする救助船では航行することができない水深の浅い場所やスクリューに絡まる虞のある水草等の障害物が多い場所においても救助活動が可能である。加えて、万一被救助者が双胴式救助船の推進器に近づいた場合でも被救助者が傷つく虞がない。
加えて、請求項1に係る双胴式救助船は、二つの船体が互いに平行に配されているため、双胴式救助船の重心が二つの船体の間となり、双胴式救助船が傾き難くなる。また、網部が二つの船体の船首よりも前方に突出することはないため、被救助者を網部で掬いあげた場合でも、双胴式救助船の重心がずれることはなく、被救助者の重みで双胴式救助船が少し沈む(没水部分が増す)だけであり、双胴式救助船のバランスが崩れることなく安定して被救助者を有人の比較的大きな船舶(例えば、海上保安庁や海上自衛隊の保安船等)や陸地等の安全な場所に運搬できる。
請求項2に係る双胴式救助船によれば、操出・巻取装置が、補助駆動源に減速器を介して取り付けられた回転ドラムから構成され、前記二つの船体の前記ウォータージェット推進器の各々に主駆動源が設けられているため、操出・巻取装置及び二つの船体のウォータージェット推進器各々を独立して操作することができるため、救助船の細かい操縦が可能となり、より確実に救助活動を実施できる。
請求項3に係る双胴式救助船によれば、前記網部が、支持枠と該支持枠に張設された網状体からなるため、救助する人のみならず、動植物や、回収する物品や、輸送する救援物資等をより確実に救助・運搬することが可能となる。
請求項4に係る双胴式救助船によれば、前記支持枠が、長方形、正方形、長円、楕円及び円からなる群から選択される一種以上の形状を呈しているため、救助する人のみならず、動植物や、回収する物品や、輸送する救援物資等の形状に合わせて最適な形状を選択することができ、より容易且つ安全に救助活動を実施することができる。
請求項5に係る双胴式救助船によれば、本発明に係る双胴式救助船がビデオカメラを搭載しているため、無線で双胴式救助船を操作する救助者が視認できない場所においては、ビデオカメラで現場の状況を撮影・記録することが可能となる。これにより、救助者が視認できない場所にいる被救助者の位置や状態を把握することができ、双胴式救助船により直接救助する、救援物資を届ける等、適切な救助対応策を実施することができる。
また、請求項5に係る双胴式救助船によれば、被救助者を網部で掬い、水上に引き上げた後も、ビデオカメラにより被救助者の状態を確認することができる。これにより、網部で掬い、水上に引き上げた被救助者の身体の状態を確認することができるため、被救助者を救助者が待機している有人の比較的大きな船舶(例えば、海上保安庁や海上自衛隊の保安船等)や陸地に被救助者を運ぶまでの間に、被救助者の身体の状態に合わせた適切な対応(例えば、適切な薬剤の準備やドクターヘリの要請等)を事前に準備することができ、救助した被救助者に迅速且つ適切な処置を施すことが可能となる。
本発明に係る双胴式救助船を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は繰出・巻取装置の内部を示す模式図である。 本発明に係る双胴式救助船の平面図である。 本発明に係る双胴式救助船の網部が第1の位置にある様子を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。 本発明に係る双胴式救助船の網部が第2の位置にある様子を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。 本発明に係る双胴式救助船の船体の概略断面図である。 本発明に係る双胴式救助船によって被救助者を救出する様子を示す図であって、(a)は双胴式救助船を被救助者に接近させる様子を示す図、(b)は双胴式救助船の網部を被救助者の直下に移動させた様子を示す図、(c)は双胴式救助船の網部を第2の位置に移動させ、被救助者を水上に持ち上げた様子を示す図である。 特許文献2に記載の救助装置及び救助艇の一実施形態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。 特許文献2に記載の救助装置及び救助艇のその他の実施形態を示す斜視図である。
以下、本発明に係る双胴式救助船の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る双胴式救助船の斜視図、図2は本発明に係る双胴式救助船の平面図、図3は本発明に係る双胴式救助船の網部が第1の位置にある様子を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、図4は本発明に係る双胴式救助船の網部が第2の位置にある様子を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、図5は本発明に係る双胴式救助船の船体の概略断面図である。
尚、本明細書において、船体(2)の長手方向におけるウォータージェット推進器(4)側を後方(船尾側)、その反対側を前方(船首側)と称する。
本発明に係る双胴式救助船(1)は、互いに平行に配された二つの船体(2)と、二つの船体(2)を連結する連結体(3)と、二つの船体(2)の後方にそれぞれ設けられたウォータージェット推進器(4)を備えている。
船体(2)は略円筒形状を呈しており、その後方にウォータージェット推進器(4)が設けられ、上面(水面上側)の前方に第1連結体(5)が設けられ、後方に第2連結体(6)が設けられている。
尚、船体(2)の形状は特に限定されず、例えば、円錐形状、四角柱形状、四角錐形状、三角錐形状、あるいはこれらの組み合わせ等、被救助者を網部(7)で掬い上げた状態で水上を安定に航行することができる形状であればいかなる形状であってもよい。また、本発明に係る双胴式救助船(1)は、航行時に渦が発生しない流線形の形状を呈していることがより好ましい。
また、図5に示すように、船体(2)の内部には、複数の隔室(18)が設けられることが望ましい。これにより、水上の浮遊物等に衝突して船体(2)の一部(すなわち、ある隔室)に孔が開いて船体(2)内部に水が浸入したとしても、その他の隔室(18)には水が侵入しないため、双胴式救助船(1)全体の浮力が維持され、2次災害による双胴式救助船(1)の沈没を防止することができる。
連結体(3)は、正面視略コ字状を呈した部材であって、第1端部(31)と第2端部(32)が夫々船体(2)の上面(水面上側)に一体的、あるいは着脱自在に設けられている。
図1乃至5に示すように、連結体(3)は双胴式救助船(1)に2つ設けられており、本明細書において、船体(2)の前方に設けられた連結体を第1連結体(5)と称し、船体(2)の後方に設けられた連結体を第2連結体(6)と称する。
このように、平行に配された二つの船体(2)同士の前方と後方を、第1連結体(5)及び第2連結体(6)で連結することによって、二つの船体(2)を所望の位置に配することができる。
尚、二つの船体(2)は必ずしも平行に配する必要はなく、例えば、船体(2)前方の船体(2)間の距離を後方の船体間の距離よりも長くなる(つまり、図2において、二つの船体(2)が平面視略ハ字状になる)ように二つの船体(2)の前方と後方を第1連結体(5)及び第2連結体(6)で連結してもよく、後述する網部(7)に被救助者等を受け入れることができれば、いかなる配置であってもよい。
第1連結体(5)は、二つの船体(2)の前方同士を連結するように設けられており、後述する支持索(8)が引っ掛けられる。支持索(8)が第1連結体(5)の所望の位置で強固に引っかかるように、第1連結体(5)の所望の箇所に凹部を設けてもよく、支持索(8)を通すリング状の部材等を設けてもよい。
第2連結体(6)は、二つの船体(2)の後方同士を連結するように設けられており、その上部に操出・巻取装置(9)が一体的又は着脱自在に設けられている。第2連結体(6)の側面あるいは内部には、操出・巻取装置(9)に駆動エネルギーを伝達するためのコード等の伝達手段が設けられ得る。
尚、叙上の通り、連結体(3)は二つの船体(2)の前方及び後方に夫々設けられることが望ましいが、これに限定されず、例えば、二つの船体(2)の長手方向中央付近に1つの連結体(3)を設ける等、水上を航行している際にも二つの船体(2)を安定に連結することができればいかなる連結方法であってもよい。
また、第1連結体(5)及び第2連結体(6)は、その長手方向の長さを変更できる機構を採用することもできる。長手方向の長さを長くすることにより、二つの船体(2)間の距離を長くし、設置する網部(7)の幅方向の長さを長くすることができる。これにより、被救助者を掬い上げることができる面積が広くなるため、より容易に被救助者を救助することができる。さらに、被救助者を掬い上げることができる面積が広くなることにより、一度に複数人の被救助者を掬い上げることができる。
網部(7)は、二つの船体(2)の間に昇降自在に配されている。網部(7)の前端部(71)には支持索(8)が結索されており、この支持索(8)が操出・巻取装置(9)により操出及び巻取されることにより、網部(7)が船体(2)に対して昇降自在となる。
網部(7)の後端部(72)は二つの船体(2)又は第2連結体(6)に支持された棒状の軸(10)に回動可能に保持されている。
図3に示すように、通常時は、網部(7)の後端部(72)は水面(W)よりも上に位置し、前端部(71)は水面下に位置している(この前端部(71)の位置を第1の位置(L)と称す)。一方、被救助者を救助した際には、図4に示すように、前端部(71)を上昇させ、前端部(71)が水面(W)よりも上であり、且つ後端部(72)よりも上に位置するようにする(この前端部(71)の位置を第2の位置(H)と称す)。前端部(71)を第2の位置(H)にすることにより、救助した被救助者を水面(W)から掬い上げることができる。
尚、軸(10)の形状は特に限定されず、網部(7)の後端部(72)を回動可能に保持することができるものであれば、いかなる形状のものを用いてもよい。さらに、軸(10)の材質は、河川水や海水等による劣化や発錆が起こらないあるいは起こり難いものであれば、いかなるものであってもよい。
また、網部(7)は、周囲を補強する支持枠(11)と支持枠(11)に張設された網状体(12)からなることが望ましい。これにより、網部(7)の強度が高まり、より安定に被救助者を掬い上げることができる。
網状体(12)は、麻糸や綿糸などの天然繊維や、ナイロン,ビニロン,サラン,塩化ビニルなどの合成繊維等から形成されるロープからなるが、これらに限定されず、海水や波しぶき(噴水塩霧)等による劣化や発錆が生じないあるいは生じ難いものであれば、いかなるものでも用いることができる。
尚、支持枠(11)の形状は特に限定されず、図1に示すような長方形や、正方形、長円、楕円、又は円、あるいはこれらの組み合わせ等、救助する被救助者のみならず、動植物や、回収する物品や、輸送する救援物資等、本発明に係る双胴式救助船(1)を用いて救助・搬送するものの形状に合わせて最適な形状を選択することが望ましい。
支持索(8)は、その一端が操出・巻取装置(9)の回転ドラム(9d)に係止されており、二又の他端が網部(7)の前端部(71)の両端に係止されている。支持索(8)は、操出・巻取装置(9)により発停自在及び正逆自在に巻回される。
このように、網部(7)の前端部(71)の両端が支持索(8)に係止され、両端を均等に昇降させるため、網部(7)を昇降させる際に網部(7)が傾かず、双胴式救助船(1)の重心がずれない。そのため、被救助者を網部(7)で掬い上げた際に双胴式救助船(1)が傾かず、安定して被救助者を運ぶことができる。
尚、支持索(8)は図3に示すように、2本の支持索が連結具(13)を介して連結されていても良い。また、支持索(8)の素材は特に限定されず、ステンレス、アルミなどの金属や、ナイロン,ビニロン,サラン,塩化ビニルなどの非金属であって、支持索として通常用いられ、海水や波しぶき(噴水塩霧)等による劣化や発錆が生じないあるいは生じ難いものであり、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
操出・巻取装置(9)は、筐体(9c)内に補助駆動源(9m)、減速器(9g)、及び回転ドラム(9d)が連結して配された装置である(図1の(b)参照)。補助駆動源(9m)は、直流電動機、交流電動機等のモータからなり、補助駆動源(9m)によって供給されるエネルギー(軸の回転)を、減速器(9g)を介して所望の回転に減速して回転ドラム(9d)を回動させ、支持索(8)を発停自在及び正逆自在に巻回する。回転ドラム(9d)を回動させ、支持索(8)を巻き上げることにより、網部(7)の前端部(71)の位置を第1の位置(L)から第2の位置(H)に上昇させることができる。反対に、回転ドラム(9d)を巻き上げ時とは逆方向に回動させることで、支持索(8)を繰り出し、網部(7)の前端部(71)の位置を第2の位置(H)から第1の位置(L)に下降させることができる。
尚、操出・巻取装置(9)に配する回転ドラム(9d)は特に限定されず、支持索(8)を係止でき、操出・巻取できるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
減速器(9g)は、入力軸(a1)の回転を同軸上に配された出力軸(a2)を通して所望の減速比にて回転ドラム(9d)に伝達する。
尚、操出・巻取装置(9)に配する減速器(9g)は特に限定されず、入力軸(a1)の回転を減速して出力軸(a2)から出力できるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
また、図1の(b)に示す減速器(9g)では、入力軸(a1)と出力軸(a2)は同軸上に設けられているが、これに限定されず、軸心をずらして入力軸(a1)と出力軸(a2)とを設けてもよい。
操出・巻取装置(9)による支持索(8)の操出・巻取速度(回転ドラム(9d)の回転速度)は特に限定されず、被救助者が網部(7)の直上に位置した際に遅滞なく網部(7)の前端部(71)を第2の位置(H)に達するように巻き上げることができる速度であればいかなる速度であっても良い。尚、操出・巻取速度は、例えば2、3、4、5段階等、段階的に調節できるものとしてもよい。
尚、操出・巻取装置(9)は、補助駆動源(9m)の電源として蓄電池や燃料電池等を備えていても良い(図示せず)。操出・巻取装置(9)に電源を設けない場合は、船体(2)の主駆動源(14)の電源(19)を、電気ケーブル等を介して操出・巻取装置(9)と連結して、電源としてもよい。
ウォータージェット推進器(4)は、二つの船体(2)の後方に設けられている。図5に示すように、ウォータージェット推進器(4)は、船体(2)の底部に水を吸い込む吸込口(15)、スクリュー(16)、及び吐出口(17)を備えている。ウォータージェット推進器(4)は、吸込口(15)から汲み上げた水をスクリュー(16)の回転により圧力をかけて勢いよく吐出口(17)から吐出することで推進力を得る。ウォータージェット推進器(4)は、後述する主駆動源(14)から供給されるエネルギーによって駆動される。
尚、本発明に係る双胴式救助船(1)のウォータージェット推進器(4)は、叙上のものに限定されず、船舶に通常使用され当業者に自明のものであれば、いかなる推進器でも用いることができる。
二つの船体(2)内には夫々主駆動源(14)が配置されており、主駆動源(14)によって供給されるエネルギーによって船体(2)のウォータージェット推進器(4)を駆動させることで、本発明に係る双胴式救助船(1)は水上を航行することができる。
この主駆動源(14)は、例えば、直流電動機(モータ)、交流電動機、ガソリンエンジン、又はディーゼルエンジン等、あるいはこれらの組み合わせから選択される。しかし、これらに限定されず、双胴式救助船(1)の駆動源として用いることができるものであり、当業者に自明のものであれば、いかなる駆動源を用いても良い。
尚、直流電動機や交流電動機等のモータを駆動源として使用する場合、その電源(19)として蓄電池や燃料電池等が使用され得る。また、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の原動機を駆動源として使用する場合、その燃料としてガソリンや軽油等の化石燃料が使用され得る。しかしこれらに限定されず、モータの電源として当業者に自明であるもの、あるいは原動機の燃料として当業者に自明であるものであれば、いかなるものでも用いることができる。
本発明に係る双胴式救助船(1)は、ビデオカメラ等の撮影手段(図示せず)を備えていることが望ましい。ビデオカメラを備えることにより、救助者が視認できない場所にいる被救助者の位置や状態を把握することができ、双胴式救助船により直接救助する、救援物資を届ける等、適切な救助対応策を実施することができる。
ビデオカメラの設置位置は特に限定されず、双胴式救助船(1)の周囲と網部(7)で掬い上げた被救助者の状態を撮影できる位置であれば、いかなる位置に配置してもよい。
尚、ビデオカメラは、浸水による故障を防止するために、防水耐性を備えたものを使用する、あるいは防水のために透明なカバー等の内部に格納することが望ましい。
無線操縦装置(図示せず)は、陸上や有人船舶に配置された送信機と、この送信機から無線送信される制御信号を受信する受信アンテナと、この受信アンテナにより受信された制御信号に基づいて主駆動源、補助駆動源、ウォータージェット推進器(4)及びビデオカメラの駆動を制御する制御装置を備えている。
本発明に係る双胴式救助船(1)は、このような無線操縦装置を備えているため、無線により主駆動源、補助駆動源、ウォータージェット推進器(4)及びビデオカメラを遠隔操作して無人で水上を航行させることができる。そのため、救助隊が立ち入れないような危険な現場に被救助者がいる場合であっても、無人でその現場に向かって被救助者を救助したり、被救助者に救援物資を届けたりすることが可能である。
尚、双胴式救助船(1)における無線操縦装置の設置箇所は特に限定されず、送信機から無線送信される制御信号を受信することができる位置であれば、双胴式救助船(1)のいかなる位置にも設置することができる。但し、海水や波しぶき(噴水塩霧)等が無線操縦装置内に侵入しないよう防水・防塩措置を施すことは言うまでもない。
本発明に係る双胴式救助船(1)の変形例として、網部(7)の前端部(71)だけでなく、網部(7)の後端部(72)も昇降自在としてもよい。
網部(7)の前端部(71)と後端部(72)の両方を昇降自在とすることによって、網部(7)で掬い上げた被救助者をより高い位置に保持でき、台風による高潮や波浪の際に掬い上げた被救助者が波をかぶることを防止でき、且つ波がかからない状態で目的地まで航行することができる。
網部(7)の後端部(72)の昇降手段としては、前端部(71)と同様に、支持索と操出・巻取装置(9)を用いて後端部(72)を昇降させることが望ましい。この後端部(72)用の操出・巻取装置(9)は、前端部(71)用の操出・巻取装置(9)と一体的に形成されてもよい。
尚、網部(7)を昇降させる手段として、操出・巻取装置(9)自体をリフト等の昇降手段を用いて連結体(3)上で昇降させる、あるいは、連結体(3)を船体(2)上で昇降させる等の手段を用いてもよい。
図6は、本発明に係る双胴式救助船(1)によって被救助者を救出する様子を示す図であって、(a)は双胴式救助船(1)を被救助者に接近させる様子を示す図、(b)は双胴式救助船(1)の網部(7)を被救助者の直下に移動させた様子を示す図、(c)は双胴式救助船の網部を第2の位置に移動させ、被救助者を水上に持ち上げた様子を示す図である。
図6を用いて、本発明に係る双胴式救助船(1)によって被救助者(P)の救出の一例を示す。
まず、目視あるいは双胴式救助船(1)に設けられたビデオカメラによって被救助者(P)を確認し、遠隔操作によって双胴式救助船(1)を水面(W)付近に漂っている被救助者(P)に接近させる(図6の(a)参照)。
続いて、被救助者(P)が双胴式救助船(1)の網部(7)の直上に来るように遠隔操作によって双胴式救助船(1)を移動させる(図6の(b)参照)。
被救助者(P)が網部(7)の直上に位置したら、操出・巻取装置(9)の回転ドラム(9d)を回動させ、支持索(8)を巻き上げ、網部(7)の前端部(71)の位置を第1の位置(L)から第2の位置(H)に上昇させる。これにより、被救助者(P)を網部(7)で掬い上げ、水面(W)よりも上に引き上げることができる(図6の(c)参照)。
そして、被救助者(P)を網部(7)で掬い上げて水面(W)よりも上に引き上げた状態(すなわち、網部(7)の前端部(71)の位置を第2の位置(H)に上昇させた状態)を維持し、遠隔操作により双胴式救助船(1)を有人の比較的大きな船舶(例えば、海上保安庁や海上自衛隊の保安船等)や陸地等の安全な場所に運び、被救助者(P)を救出する。
尚、本発明に係る双胴式救助船(1)は被救助者等の人の救出だけでなく、例えば動植物の保護・運搬や、物資の運搬等、様々な用途に使用され得る。
また、本発明に係る双胴式救助船(1)の構成(とりわけ、二つの船体の間に網部を配置し、網部が昇降自在であるという構成)は、有人の救助船にも転用することができる。
本発明に係る双胴式救助船は、救助員の乗り込んだ救助船が近づくことのできない場所や悪天候・悪条件下においても、被救助者を迅速且つ安全に救助することができ、救助者が二次災害に遭う虞のない、被救助者の救助を可能にする。それゆえに、本発明に係る双胴式救助船は、例えば、様々な水難あるいは海難救助現場において広く利用することができ、とりわけ、津波や洪水や台風等の自然災害時において、救助隊が立ち入ることができない現場において好適に使用される。
1 双胴式救助船
2 船体
3 連結体
31 第1端部
32 第2端部
4 ウォータージェット推進器
5 第1連結体
6 第2連結体
7 網部
71 前端部
72 後端部
8 支持索
9 繰出・巻取装置
9c 筐体
9d 回転ドラム
9m 補助駆動源
9g 減速器
10 軸
11 支持枠
12 網状体
13 連結具
14 主駆動源
15 吸込口
16 スクリュー
17 吐出口
18 隔室
19 電源
a1 入力軸
a2 出力軸
H 第2の位置
L 第1の位置
P 被救助者
W 水面

Claims (5)

  1. 互いに平行に配された二つの船体と、前記二つの船体を連結する連結体と、該二つの船体にそれぞれ設けられたウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船であって、
    前記二つの船体の間に昇降自在に網部が配され、
    前記網部に支持索が結索され、
    前記連結体に操出・巻取装置が設けられ、
    前記支持索が前記操出・巻取装置により発停自在及び正逆自在に巻回され、
    前記ウォータージェット推進器及び前記操出・巻取装置を遠隔操作するための無線操縦装置が設けられている
    ことを特徴とするウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船。
  2. 前記操出・巻取装置が、補助駆動源に減速器を介して取り付けられた回転ドラムから構成され、
    前記二つの船体の前記ウォータージェット推進器の各々に主駆動源が設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船。
  3. 前記網部が、支持枠と該支持枠に張設された網状体からなる請求項1又は2に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船。
  4. 前記支持枠が、長方形、正方形、長円、楕円及び円からなる群から選択される一種以上の形状を呈している請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船。
  5. ビデオカメラを搭載していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウォータージェット推進器を備えた双胴式救助船。
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