JP2018060753A - 蓄電装置用外装材 - Google Patents

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Abstract

【課題】シーラント層が薄膜化した場合でも、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる蓄電装置用外装材を提供すること。【解決手段】少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、接着剤層又は接着性樹脂層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、上記シーラント層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含有する、蓄電装置用外装材。【選択図】図1

Description

本発明は、蓄電装置用外装材に関する。
蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置のさらなる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材としては、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルム(例えば、基材層/金属箔層/シーラント層のような構成のフィルム)が用いられるようになっている。
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するため、金属箔層としてアルミニウム箔層を含む外装材により電池内容物を覆う構成が採用されている。このような構成を採用したリチウムイオン電池は、アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。リチウムイオン電池の電池内容物には、正極、負極及びセパレータとともに、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの浸透力を有する非プロトン性の溶媒に、電解質としてリチウム塩を溶解した電解液、もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層が含まれる。
アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止したエンボスタイプのリチウムイオン電池が知られている。このようなリチウムイオン電池を構成する外装材には、ヒートシールによって安定した密封性を示すとともに、電池内容物の電解液によりアルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度の低下が生じにくいことが求められている。
また、蓄電装置の小型化に伴い、蓄電装置用外装材の基材層、金属箔層及びシーラント層の薄膜化が進んでいるところ、ここではシーラント層が薄膜化されることによる絶縁性の低下が問題となっている。
絶縁性の低下は種々の現象によって引き起こされ得る。例えば、ヒートシール等の熱の影響によるタブリードと金属箔層の接触、成型・折り曲げ等によるシーラント層へのクラックの発生、ヒートシール時に本来融着すべきではない部分が融着してしまうこと(以下「過着」と呼ぶ。)、デガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊、が挙げられる。
そこで、例えば特許文献1には、接着性ポリメチルペンテン層を含むヒートシール層(シーラント層)を備えることにより、ヒートシールの熱と圧力によって外装体のバリア層とタブとがショートすることなく安定して密封可能な外装材が提案されている。
特開2002−245983号公報
上記特許文献1に記載されたような従来の外装材では、タブリードと金属箔層が接触することによる絶縁性の低下への対策がなされている。しかしながら、本発明者らのこれまでの検証により絶縁性の改善に対して最も対策が重要であると考える、過着やデガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊に対する検討はなされていない。
過着による絶縁性の低下は、過着部が不均一な結晶状態となっているため応力が掛かったときにクラックが形成されることに起因していると本発明者らは推察している。また、デガッシングヒートシールでは、前述した電解液を噛み込みながらヒートシールするため、電解液が発泡し、シーラント層が破壊されることに起因していると推察される。これらにより発生したクラックや破壊されたシーラント層部分から、電解液が入り込み金属層に接触することで、絶縁性が低下すると考えられる。
更に、前述したヒートシール時の過着によるクラックの形成及びデガッシングヒートシールによるシーラント層の破壊に起因して発生する絶縁性の低下は、シーラント層の薄膜化の影響を受けやすいため、絶縁性改善の中でも今後特に対策が必要となる。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、シーラント層が薄膜化した場合でも、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる蓄電装置用外装材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、接着剤層又は接着性樹脂層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、上記シーラント層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含む、蓄電装置用外装材を提供する。
上記構成を有する蓄電装置用外装材によれば、シーラント層が薄膜化した場合でも、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。上記蓄電装置用外装材によれば、シール時の熱や成型時の応力によりシーラント層が変形された場合であっても絶縁性を十分維持することができる。上記蓄電装置用外装材がこのような効果を奏する理由を本発明者らは以下のように推測している。
蓄電装置用外装材のシーラント層は、ヒートシールやデガッシングヒートシール、成型などの蓄電装置作製工程において、電解液膨潤や結晶化、延伸など体積変化を伴う変形を何度も経ることにより、欠陥を生じやすい。特に、シーラント層の薄膜化により、電解液を噛み込んだ状態でヒートシールを行うデガッシングヒートシールにおいて、電解液の揮発(発泡)によると考えられるシーラント層の変形が大きくなり、絶縁性が低下しやすい。当該変形により絶縁性が低下する理由としては、例えば、発泡により金属箔層近傍が露出しやすく、露出した部分に電解液が接触することが考えられる。また、ヒートシール時に発生する過着(過剰シール部分)に起因してシーラント層にクラックが形成され、当該クラックに電解液が浸透して絶縁性の低下を生じる場合もある。過着は、シーラント層の本来シールすべきでない箇所がヒートシール時の熱により融着してしまう現象である。シーラント層に過着が生じた場合、ヒートシール後の徐冷により結晶化度が変化して過着部分が低密度化し、この低密度部分に応力が加わることでクラックが形成され、絶縁性の低下を生じやすくなる。更に、シーラント層の薄膜化により、冷間成型時の応力などによっても微細なクラックがシーラント層中に発生しやすくなり、電解液がクラックに浸透して、成型後に絶縁性の低下を生じやすくなる。
これに対し、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂をシーラント層に用いることで、上述した問題の発生を抑制することができ、絶縁性の低下を抑制することができる。シングルサイト触媒系ポリプロピレンは、一般的に用いられているマルチサイト触媒系ポリプロピレンと比較して分子量分布が狭く、低分子量成分及び低結晶成分が非常に少ない。よって、低分子量成分及び低結晶成分が少ないことから、上述したシーラント層の過着が起き難くなるとともに、ヒートシール部の結晶化度が均一になるため、クラックの形成が抑制されて絶縁性が改善する。また、シングルサイト触媒系ポリプロピレンは、分子量分布が狭いためタイ分子の形成が促進されて靭性が大きくなる。よって、デガッシングヒートシール時の電解液の発泡によるシーラント層の変形や破壊が抑制され、絶縁性が改善する。更に、シングルサイト触媒系ポリプロピレンは、低結晶成分が少ないことから、結晶化が均一且つ緻密になり、シーラント層に電解液が膨潤し難く、電解液の発泡自体が生じ難くなる。そのため、デガッシングヒートシール時の電解液の発泡が抑制され、絶縁性が改善する。加えて、シングルサイト触媒系ポリプロピレンは靭性が大きいため、各種シール強度が向上するとともに、冷間成型時の応力などによってシーラント層中にクラックが発生することを抑制することができる。なお、タブシーラント及び金属タブなど複数の材料を一度にヒートシールするトップシールでも、クラックに起因すると考えられる絶縁性の低下が生じやすいが、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂をシーラント層に用いることで、トップシール時にシーラント層中にクラックが発生することを抑制することができる。以上のことから、本発明の蓄電装置用外装材によれば、シーラント層が薄膜化した場合でも、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂は、プロピレン−エチレンランダム共重合体を含有することが好ましい。
シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、又は、ブロックポリプロピレンを用いることができるが、中でもランダムポリプロピレン(プロピレン−エチレンランダム共重合体)を用いることで、深絞り性(成型性)及び各種シール強度をより向上させることができるとともに、成型白化をより抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記シーラント層は、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有する相溶系エラストマーであるプロピレン−αオレフィン共重合体、及び、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有さない非相溶系エラストマーであるエチレン−αオレフィン共重合体の少なくとも一方を更に含んでいてもよい。
相溶系エラストマーを添加することで、シーラント層に柔軟性を持たせることができる。シーラント層に柔軟性を持たせることで、耐成型白化性、耐衝撃性等の機能をシーラント層に付与することができ、機能性がより向上した外装材を提供することができる。また、プロピレン−αオレフィン共重合体は、電解液ラミネート強度、デガッシングヒートシール強度などの電解液が関与するシール特性をより向上させることができる。一方、非相溶系エラストマーを添加することで、シーラント層に耐衝撃性、耐寒性を付与することができる。また、エチレン−αオレフィン共重合体は、電解液ラミネート強度、デガッシングヒートシール強度などの電解液が関与するシール特性をより向上させることができる。また、これら相溶系及び非相溶系の2種類のエラストマーは、一方のみを添加してもよいが、両方を併用した場合、耐成型白化性及び電解液が関与するシール特性をバランス良く向上させることができる。
ここで、上記プロピレン−αオレフィン共重合体及び上記エチレン−αオレフィン共重合体の少なくとも一方は、シングルサイト触媒系エラストマーであってもよい。
上記エラストマーは、マルチサイト触媒、シングルサイト触媒のどちらの触媒から得られたものでも用いることができるが、分子量分布が狭く、低分子量成分の少ないエラストマーが得られるシングルサイト触媒系エラストマーを用いることがより好ましい。シングルサイト触媒系エラストマーを用いることで、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
上記蓄電装置用外装材において、上記接着性樹脂層は、酸変性ポリプロピレンと、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体と、を含んでいてもよい。これにより、電解液が関与する場合のラミネート強度の低下及び絶縁性の低下が抑制されやすくなる。
上記蓄電装置用外装材において、上記接着剤層は、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含んでいてもよい。これにより、電解液が関与する場合のラミネート強度の低下及び絶縁性の低下が抑制されやすくなる。
上記蓄電装置用外装材において、上記腐食防止処理層は、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含むものであってもよい。また、上記蓄電装置用外装材において、上記腐食防止処理層は、上記金属箔層に化成処理を施して形成されたもの、又は、上記金属箔層に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含むものであってもよい。このような蓄電装置用外装材によれば、電解液が関与する場合のラミネート強度の低下及び絶縁性の低下が更に抑制される。
本発明によれば、シーラント層が薄膜化した場合でも、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる蓄電装置用外装材を提供することができる。本発明の蓄電装置用外装材は、薄膜構成、例えば、腐食防止処理層が設けられた金属箔層よりも内層側の総厚が35μm以下の構成であっても、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性を十分維持することができる。
本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る蓄電装置用外装材の概略断面図である。 実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。 実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。 実施例における評価サンプルの作製方法を説明する模式図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態の蓄電装置用外装材は、少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、接着剤層又は接着性樹脂層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有し、シーラント層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含む。以下、本実施形態の蓄電装置用外装材についていくつかの態様を例示しつつ説明する。
[蓄電装置用外装材]
図1は、本実施形態の蓄電装置用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電装置用外装材)10は、基材層11と、該基材層11の一方の面上に形成された接着剤層12(第一の接着剤層12ということがある)と、該第一の接着剤層12の基材層11とは反対の面上に形成された金属箔層13と、該金属箔層13の第一の接着剤層12とは反対の面上に形成された腐食防止処理層14と、該腐食防止処理層14の金属箔層13とは反対の面上に形成された接着性樹脂層15と、該接着性樹脂層15の腐食防止処理層14とは反対の面上に形成されたシーラント層16と、が順次積層された積層体である。外装材10は、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電装置の外部側、シーラント層16を蓄電装置の内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。
<基材層11>
基材層11は、蓄電装置製造時のシール工程における耐熱性付与、加工や流通の際に起こりうるピンホール対策という目的で設けるものであり、絶縁性を有する樹脂層を用いるのが好ましい。そのような樹脂層としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム等の延伸又は未延伸フィルムを、単層又は2層以上積層した多層フィルムとして使用することができる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとナイロン(Ny)フィルムとを接着性樹脂を用いて共押出後に、延伸処理を施した共押し出し多層延伸フィルムを用いることも可能である。
基材層11の厚さは、6〜40μmが好ましく、10〜25μmがより好ましい。基材層11の厚さが6μm以上であることにより、蓄電装置用外装材10の耐ピンホール性及び絶縁性を向上できる傾向がある。
基材層11は後述する金属箔層13上に直接塗布することにより設けられてもよい。この場合、後述する第一の接着剤層12は不要である。塗布による基材層の形成方法としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂塗液を塗布し、紫外線照射、高温加熱、エージング(養生)処理等により硬化する方法を採用できる。上記樹脂塗液がウレタン樹脂の場合、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等を用いることができる。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。
<第一の接着剤層12>
第一の接着剤層12は、基材層11と金属箔層13とを接着する層である。第一の接着剤層12を構成する材料としては、具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。
上述した各種ポリオールは、外装材に求められる機能や性能に応じて、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
更に、接着促進を目的として、上述したポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合してもよい。
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
第一の接着剤層12の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
<金属箔層13>
金属箔層13は、水分が蓄電装置の内部に浸入することを防止する水蒸気バリア性を有する。また、金属箔層13は、深絞り成型をするために延展性を有する。金属箔層13としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の各種金属箔を使用することができ、質量(比重)、防湿性、加工性及びコストの面から、アルミニウム箔が好ましい。
アルミニウム箔としては、所望の成型時の延展性を付与できる点から、特に焼鈍処理を施した軟質アルミニウム箔を好ましく用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成型時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのがより好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量は、アルミニウム箔100質量%中、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた耐ピンホール性及び延展性を有する外装材10を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた外装材10を得ることができる。
金属箔層13の厚さは、特に限定されるものではないが、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μmとすることが好ましく、15〜100μmとすることがより好ましい。
金属箔層13にアルミニウム箔を用いる場合、アルミニウム箔としては、未処理のアルミニウム箔を用いてもよいが、耐電解液性を付与する点で脱脂処理を施したアルミニウム箔を用いるのが好ましい。
なお、アルミニウム箔に脱脂処理する場合は、アルミニウム箔の片面のみに脱脂処理を施してもよく、両面に脱脂処理を施してもよい。
<腐食防止処理層14>
腐食防止処理層14は、電解液、又は、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を防止するために設けられる層である。腐食防止処理層14としては、例えば、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、あるいはこれらの処理の組み合わせにより形成される。
脱脂処理としては、酸脱脂あるいはアルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸の単独、又はこれらの混合液を使用する方法などが挙げられる。また、酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、特に金属箔層13にアルミニウム箔を用いた場合に、アルミニウムの脱脂効果が得られるだけでなく、不動態であるアルミニウムのフッ化物を形成させることができ、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを使用する方法が挙げられる。
熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中にアルミニウム箔を浸漬処理するベーマイト処理が挙げられる。
陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理が挙げられる。
化成処理としては、浸漬型、塗工型が挙げられる。浸漬型の化成処理としては、例えばクロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、あるいはこれらの混合相からなる各種化成処理が挙げられる。一方、塗工型の化成処理としては、腐食防止性能を有するコーティング剤を金属箔層13上に塗工する方法が挙げられる。
これら腐食防止処理のうち、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理のいずれかで腐食防止処理層の少なくとも一部を形成する場合は、事前に上述した脱脂処理を行うことが好ましい。なお、金属箔層13として焼鈍工程を通した金属箔など脱脂処理済みの金属箔を用いる場合は、腐食防止処理層14の形成において改めて脱脂処理する必要なはい。
塗工型の化成処理に用いられるコーティング剤は、好ましくは3価クロムを含有する。また、コーティング剤には、後述するカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが含まれていてもよい。
また、上記処理のうち、特に熱水変成処理、陽極酸化処理では、処理剤によってアルミニウム箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れるアルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト)を形成させる。そのため、アルミニウム箔を用いた金属箔層13から腐食防止処理層14まで共連続構造を形成した形態になるので、上記処理は化成処理の定義に包含される。一方、後述するように化成処理の定義に含まれない、純粋なコーティング手法のみで腐食防止処理層14を形成することも可能である。この方法としては、例えば、アルミニウムの腐食防止効果(インヒビター効果)を有し、且つ、環境側面的にも好適な材料として、平均粒径100nm以下の酸化セリウムのような希土類元素酸化物のゾルを用いる方法が挙げられる。この方法を用いることで、一般的なコーティング方法でも、アルミニウム箔などの金属箔に腐食防止効果を付与することが可能となる。
上記希土類元素酸化物のゾルとしては、例えば、水系、アルコール系、炭化水素系、ケトン系、エステル系、エーテル系などの各種溶媒を用いたゾルが挙げられる。なかでも、水系のゾルが好ましい。
上記希土類元素酸化物のゾルには、通常その分散を安定化させるために、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸又はその塩、酢酸、りんご酸、アスコルビン酸、乳酸などの有機酸が分散安定化剤として用いられる。これらの分散安定化剤のうち、特にリン酸は、外装材10において、(1)ゾルの分散安定化、(2)リン酸のアルミキレート能力を利用した金属箔層13との密着性の向上、(3)フッ酸の影響で溶出したアルミニウムイオンを捕獲(不動態形成)することよる電解液耐性の付与、(4)低温でもリン酸の脱水縮合を起こしやすいことによる腐食防止処理層14(酸化物層)の凝集力の向上、などが期待される。
上記リン酸又はその塩としては、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、又はこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が挙げられる。なかでも、外装材10における機能発現には、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラメタリン酸などの縮合リン酸、又はこれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩が好ましい。また、上記希土類元素酸化物のゾルを用いて、各種コーティング法により希土類元素酸化物からなる腐食防止処理層14を形成させる時の乾燥造膜性(乾燥能力、熱量)を考慮すると、低温での脱水縮合性に優れる点から、ナトリウム塩がより好ましい。リン酸塩としては、水溶性の塩が好ましい。
希土類元素酸化物に対するリン酸(あるいはその塩)の配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して1質量部以上であれば、希土類元素酸化物ゾルがより安定になり、外装材10の機能がより良好になる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して5質量部以上がより好ましい。また、上記配合比が希土類元素酸化物100質量部に対して100質量部以下であれば、希土類元素酸化物ゾルの機能が高まり、電解液の浸食を防止する性能に優れる。上記配合比は、希土類元素酸化物100質量部に対して、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましい。
上記希土類元素酸化物ゾルにより形成される腐食防止処理層14は、無機粒子の集合体であるため、乾燥キュアの工程を経ても層自身の凝集力が低くなるおそれがある。そこで、この場合の腐食防止処理層14は、凝集力を補うために、下記アニオン性ポリマー、又はカチオン性ポリマーにより複合化されていることが好ましい。
アニオン性ポリマーとしては、カルボキシ基を有するポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸(あるいはその塩)、あるいはポリ(メタ)アクリル酸を主成分として共重合した共重合体が挙げられる。この共重合体の共重合成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。);(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基など。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基など。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシランなどのシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。
これらアニオン性ポリマーは、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14(酸化物層)の安定性を向上させる役割を果たす。これは、硬くて脆い酸化物層をアクリル系樹脂成分で保護する効果、及び、希土類元素酸化物ゾルに含まれるリン酸塩由来のイオンコンタミ(特にナトリウムイオン)を捕捉する(カチオンキャッチャー)効果によって達成される。つまり、希土類元素酸化物ゾルを用いて得られた腐食防止処理層14中に、特にナトリウムなどのアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが含まれると、このイオンを含む場所を起点にして腐食防止処理層14が劣化しやすくなる。そのため、アニオン性ポリマーによって希土類元素酸化物ゾルに含まれるナトリウムイオンなどを固定化することで、腐食防止処理層14の耐性が向上する。
アニオン性ポリマーと希土類元素酸化物ゾルを組み合わせた腐食防止処理層14は、アルミニウム箔にクロメート処理を施して形成した腐食防止処理層14と同等の腐食防止性能を有する。アニオン性ポリマーは、本質的に水溶性であるポリアニオン性ポリマーが架橋された構造であることが好ましい。この構造の形成に用いる架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシ基、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートあるいはその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ジフェニルメタンジイソシアネートあるいはその水素添加物、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;あるいはこれらのイソシアネート類を、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールと反応させたアダクト体、水と反応させることで得られたビューレット体、あるいは三量体であるイソシアヌレート体などのポリイソシアネート類;あるいはこれらのポリイソシアネート類をアルコール類、ラクタム類、オキシム類などでブロック化したブロックポリイソシアネートなどが挙げられる。
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類と、エピクロルヒドリンを作用させたエポキシ化合物;フタル酸、テレフタル酸、シュウ酸、アジピン酸などのジカルボン酸と、エピクロルヒドリンとを作用させたエポキシ化合物などが挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、各種脂肪族あるいは芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ(土類)金属塩を用いてもよい。
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、オキサゾリンユニットを2つ以上有する低分子化合物、あるいはイソプロペニルオキサゾリンのような重合性モノマーを用いる場合には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどのアクリル系モノマーを共重合させたものが挙げられる。
また、アニオン性ポリマーとシランカップリング剤とを反応させ、より具体的には、アニオン性ポリマーのカルボキシ基とシランカップリング剤の官能基とを選択的に反応させ、架橋点をシロキサン結合としてもよい。この場合、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。なかでも、特にアニオン性ポリマーあるいはその共重合物との反応性を考慮すると、エポキシシラン、アミノシラン、イソシアネートシランが好ましい。
アニオン性ポリマーに対するこれらの架橋剤の比率は、アニオン性ポリマー100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して1質量部以上であれば、架橋構造が十分に形成されやすい。架橋剤の比率がアニオン性ポリマー100質量部に対して50質量部以下であれば、塗液のポットライフが向上する。
アニオン性ポリマーを架橋する方法は、上記架橋剤に限らず、チタニウム、ジルコニウム化合物を用いてイオン架橋を形成する方法などであってもよい。
カチオン性ポリマーとしては、アミンを有するポリマーが挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンあるいはこれらの誘導体、アミノフェノールなどのカチオン性のポリマーが挙げられる。
カチオン性ポリマーは、カルボキシ基やグリシジル基などのアミン/イミンと反応が可能な官能基を有する架橋剤と併用することが好ましい。カチオン性ポリマーと併用する架橋剤としては、ポリエチレンイミンとイオン高分子錯体を形成するカルボン酸を有するポリマーも使用でき、例えば、ポリアクリル酸あるいはそのイオン塩などのポリカルボン酸(塩)、あるいはこれにコモノマーを導入した共重合体、カルボキシメチルセルロースあるいはそのイオン塩などのカルボキシ基を有する多糖類などが挙げられる。ポリアリルアミンとしては、例えば、アリルアミン、アリルアミンアミド硫酸塩、ジアリルアミン、ジメチルアリルアミンなどの単独重合体あるいは共重合体などが挙げられる。これらのアミンは、フリーのアミンであってもよく、酢酸あるいは塩酸による安定化物であってもよい。また、共重合体成分として、マレイン酸、二酸化硫黄などを使用してもよい。更に、1級アミンを部分メトキシ化させることで熱架橋性を付与したタイプも使用でき、また、アミノフェノールも使用できる。特に、アリルアミンあるいはその誘導体が好ましい。
本実施形態では、カチオン性ポリマーも腐食防止処理層14を構成する一構成要素として記載している。その理由は、蓄電装置用外装材で要求される電解液耐性、フッ酸耐性を付与するべく様々な化合物を用い鋭意検討を行った結果、カチオン性ポリマー自体も、電解液耐性、耐フッ酸性を付与することが可能な化合物であることが判明したためである。この要因は、フッ素イオンをカチオン性基で補足する(アニオンキャッチャー)ことで、アルミニウム箔が損傷することを抑制しているためであると推測される。
カチオン性ポリマーは、接着性の向上という点でより好ましい材料である。また、カチオン性ポリマーも、上記アニオン性ポリマーと同様に、水溶性であることから、架橋構造を形成させて耐水性を付与することがより好ましい。カチオン性ポリマーに架橋構造を形成する際の架橋剤は、アニオン性ポリマーの項で説明した架橋剤を使用できる。腐食防止処理層14として希土類元素酸化物ゾルを用いた場合、その保護層として上記アニオン性ポリマーを用いる代わりに、カチオン性ポリマーを用いてもよい。
クロメート処理に代表される化成処理による腐食防止処理層は、アルミニウム箔との傾斜構造を形成させるため、特にフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸あるいはこれらの塩を配合した化成処理剤を用いてアルミニウム箔に処理を施し、次いでクロムやノンクロム系の化合物を作用させて化成処理層をアルミニウム箔に形成させるものである。しかしながら、上記化成処理は、化成処理剤に酸を用いていることから、作業環境の悪化やコーティング装置の腐食を伴う。一方、前述したコーティングタイプの腐食防止処理層14は、クロメート処理に代表される化成処理とは異なり、アルミニウム箔を用いた金属箔層13に対して傾斜構造を形成させる必要がない。そのため、コーティング剤の性状は、酸性、アルカリ性、中性などの制約を受けることがなく、良好な作業環境を実現できる。加えて、クロム化合物を用いるクロメート処理は、環境衛生上、代替案が求められている点からも、コーティングタイプの腐食防止処理層14が好ましい。
以上の内容から、上述したコーティングタイプの腐食防止処理の組み合わせの事例として、(1)希土類元素酸化物ゾルのみ、(2)アニオン性ポリマーのみ、(3)カチオン性ポリマーのみ、(4)希土類元素酸化物ゾル+アニオン性ポリマー(積層複合化)、(5)希土類元素酸化物ゾル+カチオン性ポリマー(積層複合化)、(6)(希土類元素酸化物ゾル+アニオン性ポリマー:積層複合化)/カチオン性ポリマー(多層化)、(7)(希土類元素酸化物ゾル+カチオン性ポリマー:積層複合化)/アニオン性ポリマー(多層化)、等が挙げられる。中でも(1)及び(4)〜(7)が好ましく、(4)〜(7)が特に好ましい。ただし、本実施形態は、上記組み合わせに限られるわけではない。例えば腐食防止処理の選択の事例として、カチオン性ポリマーは、後述する接着性樹脂層又は接着剤層(第二の接着剤層)の説明で挙げる変性ポリオレフィン樹脂との接着性が良好であるという点でも非常に好ましい材料であることから、接着性樹脂層又は接着剤層が変性ポリオレフィン樹脂で構成される場合においては、接着性樹脂層又は接着剤層に接する面にカチオン性ポリマーを設ける(例えば、構成(5)及び(6)などの構成)といった設計が可能である。
また、腐食防止処理層14は、前述した層には限定されない。例えば、公知技術である塗布型クロメートのように、樹脂バインダー(アミノフェノールなど)にリン酸とクロム化合物を配合した処理剤を用いて形成してもよい。この処理剤を用いれば、腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。また、塗液の安定性を考慮する必要があるものの、希土類元素酸化物ゾルとポリカチオン性ポリマーあるいはポリアニオン性ポリマーとを事前に一液化したコーティング剤を使用して腐食防止機能と密着性の両方を兼ね備えた層とすることができる。
腐食防止処理層14の単位面積当たりの質量は、多層構造、単層構造いずれであっても、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。上記単位面積当たりの質量が0.005g/m以上であれば、金属箔層13に腐食防止機能を付与しやすい。また、上記単位面積当たりの質量が0.200g/mを超えても、腐食防止機能はあまり変らない。一方、希土類元素酸化物ゾルを用いた場合には、塗膜が厚いと乾燥時の熱によるキュアが不十分となり、凝集力の低下を伴うおそれがある。なお、腐食防止処理層14の厚みについては、その比重から換算できる。
腐食防止処理層14は、電解液ラミネート強度の低下、ヒートシール後、成型後及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下が更に抑制される観点から、例えば、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む態様であってもよく、金属箔層13に化成処理を施して形成されている態様であってもよく、金属箔層13に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む態様であってもよい。
<接着性樹脂層15>
接着性樹脂層15は、主成分となる接着性樹脂組成物と必要に応じて添加剤成分とを含んで概略構成されている。接着性樹脂組成物は、特に制限されないが、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分と、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分とを含有することが好ましい。また、添加剤成分は、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(c)を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
(変性ポリオレフィン樹脂(a))
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が、ポリオレフィン樹脂にグラフト変性された樹脂であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ホモ、ブロック、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
これらのポリオレフィン樹脂をグラフト変性する際に用いる化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステルのいずれかから導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分が挙げられる。
具体的には、不飽和カルボン酸として、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸などが挙げられる。
不飽和カルボン酸の酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などの不飽和カルボン酸の酸無水物などが挙げられる。
不飽和カルボン酸のエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、フマール酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロ無水フタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチルなどの不飽和カルボン酸のエステルなどが挙げられる。
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、ベースとなるポリオレフィン樹脂100質量部に対し、上述した不飽和カルボン酸誘導体成分0.2〜100質量部をラジカル開始剤の存在下、グラフト重合(グラフト変性)することで製造することができる。グラフト変性の反応温度は、50〜250℃が好ましく、60〜200℃がより好ましい。また、反応時間は、製造方法に応じて適宜設定されるが、例えば二軸押出機による溶融グラフト重合の場合、押出機の滞留時間内、具体的には2〜30分が好ましく、5〜10分がより好ましい。なお、グラフト変性は、常圧、加圧のいずれの条件下においても実施できる。
グラフト変性に用いられるラジカル開始剤としては、アルキルパーオキサイド、アリールパーオキサイド、アシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
これらの有機過酸化物は、上述した反応温度や反応時間の条件によって適宜選択して用いることができる。例えば、二軸押出機による溶融グラフト重合の場合、アルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステルが好ましく、具体的にはジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシ−ヘキシン−3、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
変性ポリオレフィン樹脂(a)としては、無水マレイン酸により変性されたポリオレフィン樹脂が好ましく、例えば、三井化学社製の「アドマー」、三菱化学社製の「モディック」などが適している。このような変性ポリオレフィン樹脂(a)成分は、各種金属や各種官能基を有するポリマーとの反応性に優れるため、該反応性を利用して接着性樹脂層15に密着性を付与することができ、耐電解液性を向上することができる。
(マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b))
マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)は、変性ポリオレフィン樹脂(a)に対し、分散相サイズが200nmを超え、50μm以下の範囲でマクロ相分離構造を形成するものである。
接着性樹脂組成物が、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分を含有することにより、接着性樹脂層15を構成する主成分となる変性ポリオレフィン樹脂(a)成分等をラミネートする際に発生する残留応力を開放することができ、粘弾性的な接着性を接着性樹脂層15に付与することができる。従って、接着性樹脂層15の密着性がより向上して、耐電解液性により優れた外装材10が得られる。
マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)は、変性ポリオレフィン樹脂(a)上で海島状に存在するが、分散相サイズが200nm以下であると、粘弾性的な接着性の改善を付与させることが困難になる。一方、分散相サイズが50μmを超えると、変性ポリオレフィン樹脂(a)とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)とは本質的に非相溶性であるため、ラミネート適正(加工性)が著しく低下すると共に、接着性樹脂層15の物理的強度が低下しやすくなる。以上より、分散相サイズは、500nm〜10μmであることが好ましい。
このようなマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)としては、例えば、エチレン及び/又はプロピレンに、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから選ばれるα−オレフィンを共重合させたポリオレフィン系の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
また、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分としては、市販品を使用することができ、例えば、三井化学社製の「タフマー」、三菱化学社製の「ゼラス」、モンテル社製の「キャタロイ」などが適している。
接着性樹脂層15において、接着性樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(a)成分に対するマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分の含有量は、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。ここで、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分の含有量が1質量部未満であると、接着性樹脂層の密着性の向上が期待できない。一方、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分の含有量が40質量部を越えると、本来、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分とは相溶性が低いために加工性が著しく低下しやすくなる。また、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分は接着性を示す樹脂ではないため、シーラント層16や腐食防止処理層14などの他の層に対する接着性樹脂層15の密着性が低下しやすくなる。
(アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(c))
接着性樹脂層15は、添加剤成分として、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(以下、単に、「成分(c)」と称する)を含むことが好ましい。ここで、成分(c)は、完全非晶性の樹脂成分である。
以下、接着性樹脂層15において、主成分となる接着性樹脂組成物に添加剤成分(c)を添加する効果について説明する。
成分(c)は、接着性樹脂層15が溶融状態においては接着性樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(a)成分と相溶であるが、冷却に伴う結晶化の際に結晶外へ排出され、球晶周辺に均一分散される。これにより、成分(c)は、主成分である接着性樹脂組成物中の変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の結晶化度を阻害しない。また、接着性樹脂層15中に成分(c)を添加することで、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の濃度が成分(c)によって希釈されて結晶成長が抑制されるため、ベース樹脂の接着成分(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分)の結晶サイズ(球晶サイズ)を小さくすることが可能となる。また、結晶外に排出された成分(c)は、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の微小球晶の周辺に、均一に分散する。また、上記のような成分(c)の効果により、白化現象を抑制することができる。
ところで、従来から、外装材を冷間成型する際に「白化現象」が発生することが知られている。ここで、白化現象の機構について、変性ポリオレフィン樹脂(a)にマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)を配合した接着性樹脂層15を例にして、説明する。
(1)熱ラミネート時の熱処理により、接着性樹脂層15中の変性ポリオレフィン樹脂(a)が結晶化する。
(2)変性ポリオレフィン樹脂(a)と、マクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)は非相溶性であるため、(1)の結晶化の挙動により、両者の界面で歪が生じる。
(3)成型時に応力が加わることで、両者の界面に亀裂が生じ、ボイド−クレイズが形成される。
(4)ボイド−クレイズにより光が散乱し、光学的な光の乱反射による白化現象が起こる。
すなわち、白化現象を抑制するためには、「熱ラミネート時の熱量で変性ポリオレフィン樹脂(a)の結晶化が進行しない、もしくは結晶化が進行した場合でも微細な球晶を形成すること」と、「変性ポリオレフィン樹脂(a)とマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)との密着性を改善すること」が、重要となることが知られている。
これに対して、接着性樹脂層15の主成分となる接着性樹脂組成物に添加剤成分として成分(c)を添加することにより、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分の結晶サイズ(球晶サイズ)を小さくすることができるため、柔軟でかつ粘り強い膜特性を得られる。また、成分(c)が変性ポリオレフィン樹脂(a)の周辺に均一に分散することで、均一に応力緩和が可能となり、ボイドクレーズの発生が抑制できるため、成型時の応力に伴う外装材10の「白化現象」を緩和することが可能となると考えられる。
以上のように、接着性樹脂層15の主成分となる接着性樹脂組成物に添加剤成分として成分(c)を添加することにより、接着性樹脂層15の透明性を上げると共に、成型時の応力に伴う白化現象を緩和することができる。これにより、成型白化も改善され、外装材10の屈曲応力に伴う絶縁性(耐屈曲性)の改善が可能となる。また、接着性樹脂層15中の変性ポリオレフィン樹脂成分(a)の結晶化度が保持されつつ、柔軟性を付与できるため、外装材10の電解液膨潤時のラミネート強度低下を抑制することが可能となる。
接着性樹脂層15中の、成分(c)の割合は、下限値が2.5質量%であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。一方、上限値は、60質量%であることが好ましい。ここで、接着性樹脂層15中の、成分(c)の割合が2.5質量%未満であると、上述したような成分(c)を添加することによる効果が十分に得られない傾向がある。一方、60質量%を超えると(すなわち、接着性樹脂組成物の割合が40質量%未満であると)、シーラント層16や腐食防止処理層14などの他の層に対する接着性樹脂層15の密着性が低下しやすくなる傾向がある。
(アイソタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(d))
接着性樹脂層15は、添加剤成分として、上述した成分(c)に加えて、アイソタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(以下、単に「成分(d)」と称する)を更に含むことが好ましい。
接着性樹脂層15の主成分である接着性樹脂成分に、添加剤成分として更に成分(d)を添加することにより、応力を緩和するための柔軟性が付与できるため、電解液ラミネート強度の低下を抑制しつつ、ヒートシール強度(特に耐電解液)の改善、デガッシングシール強度の改善が可能となる。また、添加剤成分として、成分(c)と成分(d)とを組み合わせることで、白化現象や耐屈曲絶縁性をより改善することができる。
接着性樹脂層15中の、添加剤成分(すなわち、成分(c)と成分(d)との総量)の割合は、5〜60質量%であることが好ましい。ここで、接着性樹脂層15中の、添加剤成分の割合が5質量%未満であると(すなわち、接着性樹脂組成物の割合が95質量%を超えると)、上述したような添加剤を添加することによる効果が十分に得られない傾向がある。一方、60質量%を超えると(すなわち、接着性樹脂組成物の割合が40質量%未満であると)、シーラント層16や腐食防止処理層14などの他の層に対する接着性樹脂層15の密着性が低下しやすくなる傾向がある。
なお、接着性樹脂層15中の、添加剤成分である成分(c)の分析方法としては、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)による立体規則性評価によって定量することが可能である。
一方、成分(d)の分析としては、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)を用いて、α−オレフィンの分岐に帰属される吸収体と、変性ポリオレフィン樹脂(a)の特性吸収体に帰属される吸収体とで検量線を作成することで、配合比を確認することができる。
接着性樹脂層15は、接着性樹脂組成物(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)成分ならびにマクロ相分離熱可塑性エラストマー(b)成分)及び添加剤成分(すなわち、成分(c)ならびに成分(d))の他に、必要に応じて各種添加剤、例えば難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤などを含有してもよい。
接着性樹脂層15の厚さは、特に限定されるものではないが、応力緩和や水分・電解液透過の観点から、シーラント層16と同じもしくはそれ以下であることが好ましい。
<シーラント層16>
シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16は、ベース樹脂としてシングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含む。シーラント層16は、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有する相溶系エラストマー、及び、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有さない非相溶系エラストマーの少なくとも一方を更に含んでいてもよい。
(シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂)
シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂は、活性点が均一であるシングルサイト触媒を用いて重合したポリプロピレンである。シングルサイト触媒としては、メタロセン触媒、ビス−π−シクロペンタジエニル基を有する遷移金属錯体等が挙げられるが、メタロセン触媒が好ましい。シングルサイト触媒は、マルチサイト触媒に比べて、分子量分布が狭く、低分子量成分及び低結晶成分が少ない、均一度の高いポリプロピレンを得ることができる。すなわち、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂とは、後述する分子量分布の範囲、及び/又は、キシレン抽出量の範囲を満たすポリプロピレン樹脂であると言うこともできる。
シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるQ値(Mw/Mn)は、5.5未満であることが好ましく、1.5以上5.5未満であることがより好ましく、1.5以上4.0未満であることが更に好ましい。Q値が5.5未満であると、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性をより十分に維持することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算することで求めたものである。
シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂の25℃でのキシレン抽出量は、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂全量を基準として、1.5質量%未満であることが好ましく、1.0質量%未満であることがより好ましく、0.8質量%未満であることが更に好ましい。キシレン抽出量が1.5質量未満であると、低分子量成分及び低結晶成分が十分に少なく、本発明の効果が十分に発現し、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性をより十分に維持することができる。また、キシレン抽出量が1.5質量未満であると、シーラント層16に電解液がより膨潤し難くなり、絶縁性及び外装材の基本性能(電解液ラミネート強度、電解液ヒートシール強度等)をより良好なものとすることができる。なお、本明細書において、キシレン抽出量は、以下の方法で測定される値である。まず、2gの試料を300mlのp−キシレン(0.5mg/mlのBHTを含む)に130℃で溶解させ溶液とした後、25℃で12時間放置する。その後、析出したポリマーを濾別し、濾液からp−キシレンを蒸発させ、更に100℃で12時間減圧乾燥し、室温キシレン可溶成分を回収する。この回収成分の質量の仕込み試料質量に対する割合(質量%)から、キシレン抽出量を求める。
シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、プロピレン−エチレンランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、並びに、エチレン及びプロピレン以外のα−オレフィンとプロピレンとの共重合体(プロピレン系共重合体)が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
上記プロピレン系共重合体を構成する単量体としてのα−オレフィンの具体例は、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等を含む。
シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン又はランダムポリプロピレンであることが好ましく、ランダムポリプロピレンであることがより好ましい。ランダムポリプロピレンを用いることで、深絞り性(成型性)及び各種シール強度をより向上させることができるとともに、成型白化をより抑制することができる。なお、ホモポリプロピレン、又は、ブロックポリプロピレンを用いた場合、ランダムポリプロピレンを用いた場合と比較して、シール開始温度が高くなりシール適性が低下する傾向がある。また、ホモポリプロピレンを用いた場合、結晶化度が高いため、深絞り成型性が低下する恐れがある。一方、ブロックポリプロピレンを用いた場合、成型白化が生じやすくなる恐れがある。
シーラント層16におけるシングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂の含有量は、シーラント層16の全質量を基準として、20〜100質量%であってもよく、40〜90質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、70〜80質量%であることが更に好ましい。
シーラント層16におけるシングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂の分析は、シングルサイト触媒の残渣を測定することによって行うことが可能である。この場合、シーラント層を溶剤に抽出した後、IR(赤外分光法)、GC(ガスクロマトグラフィー)、GCMS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)等により分析を行うことができる。
(相溶系エラストマー)
相溶系エラストマーは、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有するエラストマーであり、シーラント層16の結晶化を抑制し、更にシーラント層16に柔軟性を持たせることができる。シーラント層16に柔軟性を持たせることで、耐成型白化性、耐衝撃性等の機能をシーラント層16に付与することができる。また、シーラント層16に相溶系エラストマーを添加することで、デガッシングヒートシール強度を含む電解液が関与するシール特性を向上させることができる。なお、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有する(相溶系)とは、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂中に分散相サイズ1nm以上500nm未満で分散することを意味する。
相溶系エラストマーとしては、上述した効果がより十分に得られることから、相溶系ポリオレフィン系エラストマーが好ましく、プロピレン−αオレフィン共重合体がより好ましい。プロピレン−αオレフィン共重合体を用いることで、電解液ラミネート強度、デガッシングヒートシール強度などの電解液が関与するシール特性をより向上させることができる。
プロピレン−αオレフィン共重合体としては、プロピレンに、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから選ばれるα−オレフィンを共重合させて得られる化合物を用いることができる。これらの中でも、1−ブテンを共重合させることで得られるプロピレン−1−ブテンランダム共重合体を用いることが、シール特性向上や相溶性の観点から特に好ましい。
相溶系エラストマーとしては、マルチサイト触媒(チーグラー・ナッタ触媒等)、シングルサイト触媒(メタロセン触媒等)のどちらの触媒から得られたものでも用いることができるが、分子量分布が狭く、低分子量成分が少ないことから、シングルサイト触媒を用いて得られた相溶系エラストマー(シングルサイト触媒系相溶系エラストマー)を用いることがより好ましい。シングルサイト触媒系相溶系エラストマーを用いることで、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
相溶系エラストマーの分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるQ値(Mw/Mn)は、5.5未満であることが好ましく、1.5以上5.5未満であることがより好ましく、1.5以上4.0未満であることが更に好ましい。Q値が5.5未満であると、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下をより十分に抑制することができる。
相溶系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シーラント層16において、相溶系エラストマーの含有量は、シーラント層16の全質量を基準として、0〜40質量%であってもよく、5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、10〜15質量%であることが更に好ましい。この含有量が5質量%以上であることにより、耐成型白化性、耐衝撃性及びシール特性を向上させる効果を十分に得ることができる。一方、この含有量が40質量%以下であることにより、シーラント層16の耐熱性の低下を抑制でき、且つ、ヒートシール時の過着の発生を抑制することができる。
(非相溶系エラストマー)
非相溶系エラストマーは、上記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有さないエラストマーであり、シーラント層16に耐衝撃性、耐寒性を付与することができる。また、シーラント層16に非相溶系エラストマーを添加することで、デガッシングヒートシール強度を含む電解液が関与するシール特性を向上させることができる。なお、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有さない(非相溶系)とは、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂中に分散相サイズ500nm以上20μm未満で分散することを意味する。
非相溶系エラストマーとしては、上述した効果がより十分に得られることから、非相溶系ポリオレフィン系エラストマーが好ましく、エチレン−αオレフィン共重合体がより好ましい。エチレン−αオレフィン共重合体を用いることで、電解液ラミネート強度、デガッシングヒートシール強度などの電解液が関与するシール特性をより向上させることができる。
エチレン−αオレフィン共重合体としては、エチレンに、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンから選ばれるα−オレフィンを共重合させて得られる化合物を用いることができる。これらの中でも、1−ブテンを共重合させることで得られるエチレン−1−ブテンランダム共重合体を用いることが、シール特性向上の観点から特に好ましい。
非相溶系エラストマーとしては、マルチサイト触媒(チーグラー・ナッタ触媒等)、シングルサイト触媒(メタロセン触媒等)のどちらの触媒から得られたものでも用いることができるが、分子量分布が狭く、低分子量成分が少ないことから、シングルサイト触媒を用いて得られた非相溶系エラストマー(シングルサイト触媒系非相溶系エラストマー)を用いることがより好ましい。シングルサイト触媒系非相溶系エラストマーを用いることで、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
非相溶系エラストマーの分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるQ値(Mw/Mn)は、5.5未満であることが好ましく、1.5以上5.5未満であることがより好ましく、1.5以上4.0未満であることが更に好ましい。Q値が5.5未満であると、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下をより十分に抑制することができる。
非相溶系エラストマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シーラント層16において、非相溶系エラストマーの含有量は、シーラント層16の全質量を基準として、0〜40質量%であってもよく、5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、10〜15質量%であることが更に好ましい。この含有量が5質量%以上であることにより、耐衝撃性、耐寒性及び電解液が関与するシール特性を向上させる効果を十分に得ることができる。一方、この含有量が40質量%以下であることにより、シーラント層16の耐熱性の低下を抑制でき、且つ、ヒートシール時の過着の発生を抑制することができる。
シーラント層16は、上述した相溶系及び非相溶系の2種類のエラストマーのうち一方のみを含有してもよいが、両方を含有することが、耐成型白化性及び電解液が関与するシール特性をバランス良く向上させることができるため好ましい。特に、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂と、相溶系エラストマーであるプロピレン−1−ブテンランダム共重合体と、非相溶系エラストマーであるエチレン−1−ブテンランダム共重合体との親和性は良好であるため、これらを組み合わせて用いることで、耐成型白化性及び電解液が関与するシール特性をよりバランス良く向上させることができる。
(添加成分)
シーラント層16は、上述したシングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂、相溶系エラストマー及び非相溶系エラストマー以外の他の成分を更に含んでいてもよい。他の成分として、例えば引取性、加工性を向上させるためにLDPE(低密度ポリエチレン)などの他の樹脂を添加してもよい。また、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂以外のポリオレフィン樹脂(例えば、マルチサイト触媒系ポリプロピレン樹脂や、上記LDPEに限定されないポリエチレン樹脂等)を添加してもよい。添加する他の樹脂成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、10質量部以下であることが好ましい。また、樹脂以外の成分として、例えば、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。これら樹脂以外の他の成分の含有量は、シーラント層16の全質量を100質量部とした場合、5質量部以下であることが好ましい。
シーラント層16において、1−ブテンの存在は、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)により帰属することで確認可能である。また、1−ブテンの含有量は、既知量の1−ブテンを含むエラストマーを既知量配合した樹脂組成物を用いて、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂とエラストマーの特性吸収帯の透過度あるいは吸光度にて検量線を作成することで確認することが可能である。更に、相溶系エラストマー、及び、非相溶系エラストマーのそれぞれの1−ブテン含有量についても、同様にFT−IRの特性吸収帯にてイメージングを行い、顕微FT−IR(透過法)で1−ブテン起因の吸収帯でマッピングすることにより確認可能である。なお、FT−IR以外にも、シーラント層16を溶媒で溶解させてNMRで測定することで1−ブテンの存在及び含有量を確認することも可能である。
シーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜60μmの範囲であることがより好ましい。また、シーラント層16の厚さは、薄膜化の観点から、30μm以下であってもよい。また、シーラント層16と接着性樹脂層15との合計の厚み(すなわち、腐食防止処理層14が設けられた金属箔層13よりも内層側の総厚)は、35μm以下であってもよい。本実施形態の蓄電装置用外装材は、このような薄膜構成であっても、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
以上、本発明の蓄電装置用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図1では、腐食防止処理層14が金属箔層13の接着性樹脂層15側の面に形成されている場合を示したが、腐食防止処理層14は金属箔層13の第一の接着剤層12側の面に形成されていてもよく、金属箔層13の両面に形成されていてもよい。金属箔層13の両面に腐食防止処理層14が形成されている場合、金属箔層13の第一の接着剤層12側に形成される腐食防止処理層14の構成と、金属箔層13の接着性樹脂層15側に形成される腐食防止処理層14の構成とは、同一であっても異なっていてもよい。
また、図1では、接着性樹脂層15を用いて金属箔層13とシーラント層16とが積層されている場合を示したが、図2に示す蓄電装置用外装材20のように、接着剤層17(第二の接着剤層17ということがある)を用いて金属箔層13とシーラント層16とが積層されていてもよい。以下、第二の接着剤層17について説明する。
<第二の接着剤層17>
第二の接着剤層17は、腐食防止処理層14が形成された金属箔層13とシーラント層16とを接着する層である。第二の接着剤層17には、金属箔層とシーラント層とを接着するための一般的な接着剤を用いることができる。
腐食防止処理層14が上述したカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーを含む層を有する場合、第二の接着剤層17は、腐食防止処理層14に含まれる上記ポリマーと反応性を有する化合物(以下、「反応性化合物」とも言う)を含む層であることが好ましい。
例えば、腐食防止処理層14がカチオン性ポリマーを含む場合、第二の接着剤層17はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。腐食防止処理層14がアニオン性ポリマーを含む場合、第二の接着剤層17はアニオン性ポリマーと反応性を有する化合物を含む。また、腐食防止処理層14がカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含む場合、第二の接着剤層17はカチオン性ポリマーと反応性を有する化合物と、アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物とを含む。ただし、第二の接着剤層17は必ずしも上記2種類の化合物を含む必要はなく、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの両方と反応性を有する化合物を含んでいてもよい。ここで、「反応性を有する」とは、カチオン性ポリマー又はアニオン性ポリマーと共有結合を形成することである。また、第二の接着剤層17は、酸変性ポリオレフィン樹脂を更に含んでいてもよい。
カチオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。
これら多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示した多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、カチオン性ポリマーとの反応性が高く、架橋構造を形成しやすい点で、多官能イソシアネート化合物が好ましい。
アニオン性ポリマーと反応性を有する化合物としては、グリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物としては、カチオン性ポリマーを架橋構造にするための架橋剤として先に例示したグリシジル化合物、オキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、アニオン性ポリマーとの反応性が高い点で、グリシジル化合物が好ましい。
第二の接着剤層17が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合、反応性化合物は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基とも反応性を有する(すなわち、酸性基と共有結合を形成する)ことが好ましい。これにより、腐食防止処理層14との接着性がより高まる。加えて、酸変性ポリオレフィン樹脂が架橋構造となり、外装材20の耐溶剤性がより向上する。
反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基に対し、等量から10倍等量であることが好ましい。等量以上であれば、反応性化合物が酸変性ポリオレフィン樹脂中の酸性基と十分に反応する。一方、10倍等量を超えると、酸変性ポリオレフィン樹脂との架橋反応としては十分飽和に達しているため、未反応物が存在し、各種性能の低下が懸念される。したがって、例えば、反応性化合物の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して5〜20質量部(固形分比)であることが好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂は、酸性基をポリオレフィン樹脂に導入したものである。酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基などが挙げられ、カルボキシ基が特に好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、接着性樹脂層15に用いる変性ポリオレフィン樹脂(a)として例示したものと同様のものを用いることができる。
第二の接着剤層17には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤を配合してもよい。
第二の接着剤層17は、電解液が関与する場合のラミネート強度の低下を抑制する観点及び絶縁性の低下を更に抑制する観点から、例えば、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含むものであってもよい。なお、カルボジイミド化合物としては、例えば、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。
また、第二の接着剤層17を形成する接着剤として、例えば、水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとを配合したポリウレタン系接着剤を用いることもできる。
第二の接着剤層17の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、及び加工性等を得る観点から、1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
第二の接着剤層17以外の蓄電装置用外装材20の構成は、蓄電装置用外装材10と同様である。なお、蓄電装置用外装材20におけるシーラント層16の厚さは、第二の接着剤層17の厚さに応じて調整する。蓄電装置用外装材20におけるシーラント層16の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜80μmの範囲であることがより好ましい。また、シーラント層16の厚さは、薄膜化の観点から、30μm以下であってもよい。また、シーラント層16と第二の接着剤層17との合計の厚み(すなわち、腐食防止処理層14が設けられた金属箔層13よりも内層側の総厚)は、35μm以下であってもよい。本実施形態の蓄電装置用外装材は、このような薄膜構成であっても、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性の低下を抑制することができる。
図1及び図2では、シーラント層16が単層である場合を示したが、シーラント層16は多層であってもよい。シーラント層16が多層である場合、複数の層のうちの少なくとも一層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含む層であればよい。
また、図1及び図2では、第一の接着剤層12を介して基材層11と金属箔層13とが接着されている場合を示したが、第一の接着剤層12を介さずに、コーティング法により金属箔層13上に基材層11が直接形成されていてもよい。本明細書中、このようにコーティング法により金属箔層13上に直接形成された基材層を被覆層と言う。なお、金属箔層13の被覆層側の面には、腐食防止処理層14が形成されていてもよい。以下、被覆層について説明する。
<被覆層>
被覆層は、蓄電装置を製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
被覆層は樹脂で形成され、金属箔層13の一方の面に、接着剤等を介さずに直接形成されている。このような被覆層の形成は、被覆層となる樹脂材料を金属箔層13上に塗布又は塗工することにより形成することができる。
被覆層を形成する樹脂材料としては、ポリエステル、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができ、中でもウレタンアクリレートが好ましい。これは、ウレタンアクリレートからなる塗膜が好適な延展性を有するからである。これらの樹脂材料を含む塗工液として、2液硬化型の塗工液が用いられてもよい。
被覆層の厚さは、3μm〜30μmが好ましく、5μm〜20μmがより好ましい。被覆層は、金属箔層13上に直接形成されるため、被覆層の厚さを20μm以下とすることで、従来の外装材よりも薄い構成とすることも容易である。
[外装材の製造方法]
次に、図1に示す外装材10の製造方法の一例について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材10の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、接着性樹脂層15及びシーラント層16を更に積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体を熱処理する工程とを含んで概略構成されている。
(金属箔層13への腐食防止処理層14の積層工程)
本工程は、金属箔層13に対して、腐食防止処理層14を形成する工程である。その方法としては、上述したように、金属箔層13に脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理を施したり、腐食防止性能を有するコーティング剤を塗工したりする方法などが挙げられる。
また、腐食防止処理層14が多層の場合は、例えば、下層側(金属箔層13側)の腐食防止処理層を構成する塗工液(コーティング剤)を金属箔層13に塗工し、焼き付けて第一層を形成した後、上層側の腐食防止処理層を構成する塗工液(コーティング剤)を第一層に塗工し、焼き付けて第二層を形成すればよい。また、第二層は、後述する接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程において形成することもできる。
脱脂処理についてはスプレー法又は浸漬法にて、熱水変成処理や陽極酸化処理については浸漬法にて、化成処理については化成処理のタイプに応じ浸漬法、スプレー法、コート法などを適宜選択して行えばよい。
腐食防止性能を有するコーティング剤のコート法については、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコートなど各種方法を用いることが可能である。
上述したように、各種処理は金属箔の両面又は片面のどちらでも構わないが、片面処理の場合、その処理面は接着性樹脂層15が積層する側に施すことが好ましい。なお、要求に応じて、基材層11の表面にも上記処理を施してもよい。
また、第一層及び第二層を形成するためのコーティング剤の塗布量はいずれも、0.005〜0.200g/mが好ましく、0.010〜0.100g/mがより好ましい。
また、乾燥キュアが必要な場合は、用いる腐食防止処理層14の乾燥条件に応じて、母材温度として60〜300℃の範囲で行うことができる。
(基材層11と金属箔層13との貼り合わせ工程)
本工程は、腐食防止処理層14を設けた金属箔層13と、基材層11とを、第一の接着剤層12を介して貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、ウエットラミネーションなどの手法を用い、上述した第一の接着剤層12を構成する材料にて両者を貼り合わせる。第一の接着剤層12は、ドライ塗布量として1〜10g/mの範囲、より好ましくは3〜7g/mの範囲で設ける。
(接着性樹脂層15及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、先の工程により形成された腐食防止処理層14上に、接着性樹脂層15及びシーラント層16を形成する工程である。その方法としては、押出ラミネート機を用いて接着性樹脂層15をシーラント層16と共にサンドラミネーションする方法が挙げられる。更には、接着性樹脂層15とシーラント層16とを押出すタンデムラミネート法、共押出法でも積層可能である。また、シーラント層形成用の樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを接着性樹脂とともにサンドラミネーションする方法により積層させてもよい。
本工程により、図1に示すような、基材層11/第一の接着剤層12/金属箔層13/腐食防止処理層14/接着性樹脂層15/シーラント層16の順で各層が積層された積層体が得られる。
なお、接着性樹脂層15は、上述した材料配合組成になるように、ドライブレンドした材料を用いて直接、押出ラミネート機により積層させてもよいし、あるいは事前に単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダーミキサーなどの溶融混練装置を用いてメルトブレンドを施した後の造粒物を用いて、押出ラミネート機により積層させてもよい。
また、多層の腐食防止処理層14を形成する場合、押出ラミネート機にアンカーコート層を塗工することが可能なユニットを備えていれば、該ユニットにて腐食防止処理層14の第二層を塗工してもよい。
(熱処理工程)
本工程は、積層体を熱処理する工程である。積層体を熱処理することで、金属箔層13/腐食防止処理層14/接着性樹脂層15/シーラント層16間での密着性を向上させ、より優れた耐電解液性や耐フッ酸性を付与することができる。熱処理の温度は、接着性樹脂層15やシーラント層16を構成する材料の種類などに依存するが、目安としては、積層体の最高到達温度が、接着性樹脂層15又はシーラント層16の融点よりも20〜100℃高くなるように熱処理するのが好ましく、接着性樹脂層15又はシーラント層16の融点よりも20〜60℃高くなるように熱処理するのがより好ましい。積層体の最高到達温度がこの範囲を超えると、例えば、金属箔の熱膨張や、貼り合せ後の基材層の熱収縮が発生し、加工性や特性を低下させる可能性がある。そのため、熱処理時間は、処理温度に依存するが、短時間(例えば30秒未満)で行うのが望ましい。
このようにして、図1に示すような、本実施形態の外装材10を製造することができる。
次に、図2に示す外装材20の製造方法の一例について説明する。なお、外装材20の製造方法は以下の方法に限定されない。
本実施形態の外装材20の製造方法は、金属箔層13に腐食防止処理層14を積層する工程と、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程と、第二の接着剤層17を介してシーラント層16を更に積層して積層体を作製する工程と、必要に応じて、得られた積層体をエージング処理する工程とを含んで概略構成されている。なお、基材層11と金属箔層13とを貼り合わせる工程までは、上述した外装材10の製造方法と同様に行うことができる。
(第二の接着剤層17及びシーラント層16の積層工程)
本工程は、金属箔層13の腐食防止処理層14側に、第二の接着剤層17を介してシーラント層16を貼り合わせる工程である。貼り合わせの方法としては、ウェットプロセス、ドライラミネーションが挙げられる。
ウェットプロセスの場合は、第二の接着剤層17を構成する接着剤の溶液又は分散液を、腐食防止処理層14上に塗工し、所定の温度(接着剤が酸変性ポリオレフィン樹脂を含む場合は、その融点以上の温度)で溶媒を飛ばし乾燥造膜、又は乾燥造膜後に必要に応じて焼き付け処理を行う。その後、シーラント層16を積層し、外装材20を製造する。塗工方法としては、先に例示した各種塗工方法が挙げられる。
ドライラミネーションの場合は、シーラント層形成用の樹脂組成物を用いて、事前にキャストフィルムとしてシーラント単膜を製膜し、このフィルムを、接着剤を用いてドライラミネート法により積層させる方法が挙げられる。
(エージング処理工程)
本工程は、積層体をエージング(養生)処理する工程である。積層体をエージング処理することで、金属箔層13/腐食防止処理層14/第二の接着剤層17/シーラント層16間の接着を促進させることができる。エージング処理は、室温〜100℃の範囲で行うことができる。エージング時間は、例えば、1〜10日である。また、第二の接着剤層17/シーラント層16間の接着をより促進させるため、第二の接着剤層17の融点以上の温度で熱処理を行うことが可能である。熱処理としてはオーブン加熱、加熱したロールで挟み込む(熱ラミネート)、加熱したロールに巻き付ける、などの手法が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
このようにして、図2に示すような、本実施形態の外装材20を製造することができる。
以上、本発明の蓄電装置用外装材及びその製造方法の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。なお、基材層11及び第一の接着剤層12の代わりに被覆層を備える蓄電装置用外装材を製造する場合は、上述のように、被覆層となる樹脂材料を金属箔層13上に塗布又は塗工することにより被覆層を形成することができる。
本発明の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタなどの蓄電装置用の外装材として好適に用いることができる。中でも、本発明の蓄電装置用外装材は、リチウムイオン電池用の外装材として好適である。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を以下に示す。
<基材層(厚さ15μm)>
ナイロンフィルム(Ny)(東洋紡社製)を用いた。
<第一の接着剤層(厚さ4μm)>
ポリエステルポリオール系主剤に対して、トリレンジイソシアネートのアダクト体系硬化剤を配合したポリウレタン系接着剤(東洋インキ社製)を用いた。
<第一の腐食防止処理層(基材層側)及び第二の腐食防止処理層(シーラント層側)>
(CL−1):溶媒として蒸留水を用い、固形分濃度10質量%に調整した「ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾル」を用いた。なお、ポリリン酸ナトリウム安定化酸化セリウムゾルは、酸化セリウム100質量部に対して、リン酸のNa塩を10質量部配合して得た。
(CL−2):溶媒として蒸留水を用い固形分濃度5質量%に調整した「ポリアリルアミン(日東紡社製)」90質量%と、「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製)」10質量%からなる組成物を用いた。
(CL−3):溶媒として1質量%濃度のリン酸水溶液を用い、固形分濃度1質量%に調整した水溶性フェノール樹脂(住友ベークライト社製)に対し、フッ化クロム(CrF)を最終乾燥皮膜中に存在するCr量として10mg/mとなるように濃度を調整した化成処理剤を用いた。
<金属箔層(厚さ35μm)>
焼鈍脱脂処理した軟質アルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、「8079材」)を用いた。
<第二の接着剤層(厚さ3μm)>
第二の接着剤層形成用接着剤として、下記接着剤a及びbを準備した。
接着剤a:トルエンに溶解させた無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、イソシアヌレート構造のポリイソシアネート化合物を10質量部(固形分比)で配合した接着剤。
接着剤b:水添ダイマー脂肪酸及びジオールからなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとをモル比(NCO/OH)が2になるように配合したポリウレタン系接着剤。
<接着性樹脂層>
(樹脂A):以下の材料を質量比で(AR−1):(AR−2)=3:1(質量比)となるように混合した混合物。
(樹脂B):(AR−1)の樹脂組成物。
(AR−1):非相容系ゴムとしてエチレン−プロピレンゴムを配合したランダムポリプロピレン(PP)ベースの酸変性ポリプロピレン樹脂組成物(三井化学社製、アドマー)。
(AR−2):アタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体(住友化学社製、「タフセレンH」)。
<シーラント層>
(ベース樹脂):表1に示すシングルサイト触媒(メタロセン触媒)又はマルチサイト触媒(チーグラー・ナッタ触媒)を用いて重合したホモポリプロピレン又はランダムポリプロピレン(プロピレン−エチレンランダム共重合体)。
(相溶系エラストマー):表1に示すシングルサイト触媒(メタロセン触媒)又はマルチサイト触媒(チーグラー・ナッタ触媒)を用いて重合したプロピレン−1−ブテンランダム共重合体。
(非相溶系エラストマー):表1に示すシングルサイト触媒(メタロセン触媒)又はマルチサイト触媒(チーグラー・ナッタ触媒)を用いて重合したエチレン−1−ブテンランダム共重合体。
[実施例1]
まず、金属箔層に、第一及び第二の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL−1)を、ドライ塗布量として70mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工することで、(CL−1)と(CL−2)からなる複合層を第一及び第二の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−1)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。
次に、第一及び第二の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第一の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第一の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。これを押出ラミネート機の巻出部にセットし、第二の腐食防止処理層上に270℃、100m/minの加工条件で共押出しすることで接着性樹脂層(厚さ10μm)及びシーラント層(厚さ20μm)をこの順で積層した。なお、接着性樹脂層及びシーラント層は、事前に二軸押出機を用いて各種材料のコンパウンドを作製しておき、水冷・ペレタイズの工程を経て、上記押出ラミネートに使用した。接着性樹脂層の形成には、樹脂Aを用いた。シーラント層の形成には、ベース樹脂であるシングルサイト触媒系ホモポリプロピレンと、シングルサイト触媒系相溶系エラストマーと、シングルサイト触媒系非相溶系エラストマーとを混合した樹脂組成物を用いた。シーラント層における上記各成分の含有量は表1に示した通りである。
このようにして得られた積層体を、該積層体の最高到達温度が190℃になるように、熱処理を施して、実施例1の外装材(基材層/第一の接着剤層/第一の腐食防止処理層/金属箔層/第二の腐食防止処理層/接着性樹脂層/シーラント層の積層体)を製造した。
[実施例2]
シーラント層のベース樹脂として、シングルサイト触媒系ランダムポリプロピレンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の外装材を製造した。
[実施例3〜5]
シーラント層における各成分の含有量を表1に示すように変更したこと以外は実施例2と同様にして、実施例3〜5の外装材を製造した。
[実施例6〜7]
シングルサイト触媒系ランダムポリプロピレンとして、表1に示すキシレン抽出量及び分子量分布を有するものを用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例6〜7の外装材を製造した。
[実施例8〜15]
相溶系エラストマー及び非相溶系エラストマーの添加の有無、及び/又は、それらを合成する際の使用触媒の種類を表1に示すように変更したこと以外は実施例2と同様にして、実施例8〜15の外装材を製造した。
[実施例16]
接着性樹脂層の形成に樹脂Bを用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例16の外装材を製造した。
[実施例17]
まず、金属箔層に、第一及び第二の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL−3)を、ドライ塗布量として30mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施した。次いで、得られた層上に(CL−2)を、ドライ塗布量として20mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工することで、(CL−3)と(CL−2)からなる複合層を第一及び第二の腐食防止処理層として形成した。この複合層は、(CL−3)と(CL−2)の2種を複合化させることで腐食防止性能を発現させたものである。このようにして第一及び第二の腐食防止処理層を設けた金属箔層を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例17の外装材を製造した。
[実施例18]
まず、金属箔層に、第一及び第二の腐食防止処理層を以下の手順で設けた。すなわち、金属箔層の両方の面に(CL−3)を、ドライ塗布量として30mg/mとなるようにマイクログラビアコートにより塗工し、乾燥ユニットにおいて200℃で焼き付け処理を施すことで、第一及び第二の腐食防止処理層を形成した。このようにして第一及び第二の腐食防止処理層を設けた金属箔層を用いたこと以外は実施例2と同様にして、実施例18の外装材を製造した。
[実施例19]
実施例1と同様にして、金属箔層に、第一及び第二の腐食防止処理層を設けた。第一及び第二の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第一の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(第一の接着剤層)を用いて基材層に貼りつけた。次いで、第一及び第二の腐食防止処理層を設けた金属箔層の第二の腐食防止処理層側をドライラミネート手法により、接着剤a(第二の接着剤層)を用いて、あらかじめキャストフィルムとして成膜しておいたシーラント層(厚さ30μm)に貼り付けた。
このようにして得られた積層体を、40℃で4日間のエージング処理を施して、実施例19の外装材(基材層/第一の接着剤層/第一の腐食防止処理層/金属箔層/第二の腐食防止処理層/第二の接着剤層/シーラント層の積層体)を製造した。
[実施例20]
第二の接着剤層の形成に用いた接着剤を接着剤bに変更したこと以外は実施例19と同様にして、実施例20の外装材を製造した。
[比較例1]
シーラント層のベース樹脂として、マルチサイト触媒系ランダムポリプロピレンを用いたこと以外は実施例8と同様にして、比較例1の外装材を製造した。
[比較例2]
シーラント層のベース樹脂として、マルチサイト触媒系ランダムポリプロピレンを用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の外装材を製造した。
各実施例及び比較例の主な条件を表1に示す。
Figure 2018060753
<評価>
実施例及び比較例で得られた外装材に対し、以下の評価試験を行った。
(電解液ラミネート強度)
エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液をテフロン(登録商標)容器に充填し、その中に外装材を15mm×100mmにカットしたサンプルを入れ、密栓後85℃、24時間で保管した。その後、共洗し、金属箔層/接着性樹脂間、又は、金属箔層/第二の接着剤層間のラミネート強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/minで行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:ラミネート強度が9N/15mm超
B:ラミネート強度が7N/15mm以上、9N/15mm以下
C:ラミネート強度が5N/15mm以上、7N/15mm未満
D:ラミネート強度が5N/15mm未満
(電解液ヒートシール強度)
外装材を60mm×120mmにカットしたサンプルを2つに折り畳み、1辺を10mm幅のシールバーで190℃、0.5MPa、3secで熱封緘した。その後、残りの2辺も熱封緘し袋状になった外装材に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液を2ml注入したパウチを60℃で24時間保管後、熱封緘1辺目を15mm幅にカットし(図3を参照)、シール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/minで行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:シール強度が90N/15mm以上、バースト幅が5mm超
B:シール強度が80N/15mm以上、バースト幅が5mm超
C:シール強度が40N/15mm以上、80N/15mm未満
D:シール強度が40N/15mm未満
(デガッシングヒートシール強度(デガスヒートシール強度))
外装材を75mm×150mmにカットしたサンプルを37.5mm×150mmに2つ折りにした後(図4(a)を参照)、150mm辺と37.5mm辺の一方をヒートシールし、製袋した。その後、パウチ内に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液を5ml注液し、37.5mm辺の他方をヒートシールして、シール部S1により密封されたパウチを得た。次いで、このパウチを60℃で24時間保管した後、電解液を含んだ状態でパウチ中央部を190℃、0.3MPa、2secでヒートシールした(デガッシングヒートシール部S2、図4(b)を参照)。シール部を安定化させるため、常温で24時間保管後、デガッシングヒートシール部S2を含む領域を15mm幅にカットし(図4(c)を参照)、ヒートシール強度(T形はく離強さ)を、試験機(INSTRON社製)を用いて測定した。試験は、JIS K6854に準じて、23℃、50%RH雰囲気下、剥離速度50mm/minで行った。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:シール強度が70N/15mm以上
B:シール強度が40N/15mm以上、70N/15mm未満
C:シール強度が30N/15mm以上、40N/15mm未満
D:シール強度が30N/15mm未満
(成型後の白化(成型白化))
外装材の常態のサンプル及び60℃で1週間保管したサンプルを、120mm×200mmにカットし、シーラント層が成型機の凸部に接するように冷間成型用金型にセットし、成型速度5mm/secで2.0mmの深絞りを行った。その後、最も延伸が厳しいフィルム押さえ部側の辺の白化を観察した。金型には、成型エリアが80mm×70mm(角筒型)、パンチコーナーラジアス(RCP)が1.0mmのものを用いた。その結果に基づき、以下の基準で評価した。なお、評価がC以上であれば実用上問題ないといえる。
A:常態のサンプル及び60℃1週間保管のサンプルともに白化なし
B:常態のサンプルで白化なし、60℃1週間保管のサンプルで薄く白化
C:常態のサンプルで薄く白化、60℃1週間保管のサンプルで白化
D:常態のサンプルで白化
(ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性(ヒートシール・成型・デガス絶縁))
外装材を120mm×200mmにカットしたサンプル40を、シーラント層が成型機の凸部に接するように冷間成型用金型にセットし、成型速度15mm/secで2.0mmの深絞りを行って深絞り部41を形成した後、120mm×100mmに2つ折りにした(図5(a)を参照)。次いで、タブ42とタブシーラント43とを間に挟んだ状態で100mmの上辺部44をヒートシールした後(図5(b)を参照)、120mmの側辺部45をヒートシールして製袋した(図5(c)を参照)。その後、電極を接触させるために、サンプル40の外層の一部を削って金属箔層の露出部46を形成した(図5(d)を参照)。次いで、パウチ内に、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合溶液にLiPFを1Mになるように加えた電解液を5ml注液し、100mmの下辺部47をヒートシールにて封止した(図5(e)を参照)。その後、このパウチを平置きした状態で、60℃で24時間放置し、ヒートシールした下辺部47よりも内側の部分48を、電解液を噛み込んだ状態で190℃、0.3MPa(面圧)、2secでデガッシングヒートシールした(図5(f)を参照)。次いで、タブ42と金属箔層の露出部46に電極49a,49bをそれぞれ接続し、耐電圧・絶縁抵抗試験器(KIKUSUI製、「TOS9201」)を用いて25Vを印加し、そのときの抵抗値を測定した(図5(g)を参照)。金型には、成型エリアが80mm×70mm(角筒型)、パンチコーナーラジアス(RCP)が1.0mmのものを用いた。その結果に基づき、以下の基準で評価した。
A:抵抗値が200MΩ超
B:抵抗値が100MΩ以上200MΩ以下
C:抵抗値が30MΩ以上100MΩ未満
D:抵抗値が30MΩ未満
また、上記評価結果で抵抗値が30MΩ未満(D評価)となったサンプルに関して、耐電圧・絶縁抵抗試験器(KIKUSUI製、「TOS9201」)を用いて、電極49a,49b間に更に25Vを2時間印加し、絶縁低下箇所の特定を行った。電圧を長時間印加することで、金属箔層(アルミニウム箔)と電解液との反応物が絶縁低下箇所から析出するため、絶縁低下箇所を特定することができる。
(総合品質)
上記各評価の結果を表2に示す。下記表2において、各評価結果にD評価がないものは、総合的な品質が優れていると言える。
Figure 2018060753
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜20の外装材は、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性に優れることが確認された。更に、実施例1〜20の外装材は、電解液ラミネート強度、電解液ヒートシール強度、デガッシングヒートシール強度、成型白化においても十分な性能を有していることが確認された。
一方、比較例1〜2の外装材は、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後に絶縁性が低下していることが確認された。また、比較例1〜2の外装材におけるヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁低下箇所は、デガッシングヒートシール部及びトップシール部であることが特定された。
10,20…蓄電装置用外装材、11…基材層、12…第一の接着剤層、13…金属箔層、14…腐食防止処理層、15…接着性樹脂層、16…シーラント層、17…第二の接着剤層、40…サンプル、41…深絞り部、42…タブ、43…タブシーラント、44…上辺部、45…側辺部、46…金属箔層の露出部、47…下辺部、48…下辺部よりも内側の部分、49a,49b…電極、S1…シール部、S2…デガッシングヒートシール部。

Claims (8)

  1. 少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、接着剤層又は接着性樹脂層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
    前記シーラント層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含む、蓄電装置用外装材。
  2. 前記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂が、プロピレン−エチレンランダム共重合体を含有する、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
  3. 前記シーラント層が、前記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有する相溶系エラストマーであるプロピレン−αオレフィン共重合体、及び、前記シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂に対して相溶性を有さない非相溶系エラストマーであるエチレン−αオレフィン共重合体の少なくとも一方を更に含む、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
  4. 前記プロピレン−αオレフィン共重合体及び前記エチレン−αオレフィン共重合体の少なくとも一方が、シングルサイト触媒系エラストマーである、請求項3に記載の蓄電装置用外装材。
  5. 前記接着性樹脂層が、酸変性ポリプロピレンと、アタクチック構造のポリプロピレン又はアタクチック構造のプロピレン−αオレフィン共重合体と、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  6. 前記接着剤層が、酸変性ポリオレフィンと、多官能イソシアネート化合物、グリシジル化合物、カルボキシ基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物及びカルボジイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤と、を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  7. 前記腐食防止処理層が、酸化セリウムと、該酸化セリウム100質量部に対して1〜100質量部のリン酸又はリン酸塩と、カチオン性ポリマーと、を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
  8. 前記腐食防止処理層が、前記金属箔層に化成処理を施して形成されている、又は、前記金属箔層に化成処理を施して形成されており、且つ、カチオン性ポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
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