以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
図1〜図27は、本発明の加熱調理器をオーブンレンジに適用した一実施形態を示している。先ず図1〜図4に基いて、オーブンレンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする操作手段7が配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
本体1の下部には、本体1の前面より着脱が可能な給水カセット8と水受け9が各々配設される。給水カセット8は、蒸気発生装置(図示せず)から発生する蒸気の供給源として、液体となる水を入れる有底状の容器である。また水受け9は、本体1からの食品カスや水滴、蒸気などを受ける有底状の容器である。
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は、本体1ひいてはオーブンレンジの底面を形成するオーブン底板11を覆うように、本体1の前面を形成するオーブン前板12と、本体1の後面を形成するオーブン後板13との間に設けられる。また本体1には、加熱調理すべき被調理物Sを内部に収容する調理室14と、調理室14の温度を検出する温度検出素子たるサーミスタ15が設けられる。調理室14の前面はオーブン前板12に達していて、被調理物Sを出し入れするのに開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。
調理室14を形成する周壁は、天井壁14aと、底壁14bと、左側壁14cと、右側壁14dと、奥壁14eとからなる。調理室14の奥壁14eは、その中央に吸込み口16を備えており、吸込み口16の周囲には複数の吹出し口17を備えている。また、調理室14の上壁面となるドーム状の天井壁14aに対向して、本体1の上部には、調理室14の上方から被調理物Sを輻射加熱するグリル用の上ヒータ18が設けられ、本体1の底部には、調理室14内に電波であるマイクロ波を供給するために、マグネトロンを含むマイクロ波発生装置19が設けられる。これにより、上ヒータ18への通電に伴う熱放射によって、調理室14内に収容した被調理物Sを上方向からグリル加熱し、またマイクロ波発生装置19への通電動作により、調理室14内に収容した被調理物Sにマイクロ波を放射して、被調理物Sをレンジ加熱する構成となっている。
調理室14の左側壁14cと右側壁14dには、調理室14の内部に金属製の角皿21を吊設状態で収納保持するために、左右一対の棚支え22を上下二段に備えている。ここで使用する角皿21は、上面を開口した有底凹状で、その他は無孔に形成される収容部21Aと、収容部21Aの上端より外側水平方向に延設するフランジ部21Bとにより構成される。またフランジ部21Bには、角皿21を通して熱風の流通を可能にする通気孔21Cが開口形成される。図2では、調理室14の内部で下段の棚支え22に角皿21のフランジ部21Bを載せて、収容部21Aに被調理物Sを載せた状態を示しているが、調理に応じて角皿21を上段の棚支え22にだけ載せたり、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せたりしてもよく、角皿21に代えて別な焼き網(図示せず)などの付属品を収納保持することもできる。
24は、本体1の内部において、調理室14の室外後方から下方にかけて具備されるオーブン加熱用の熱風ユニットである。この熱風ユニット24は、奥壁14eに取付けられる凸状のケーシング26と、空気を加熱する熱風ヒータ27と、調理室14内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン28と、熱風ファン28を所定方向に回転させる電動の熱風モータ29と、熱風モータ29からの駆動力を熱風ファン28に伝達する伝達機構30と、により概ね構成される。奥壁14eとケーシング26との間の内部空間として、調理室14の室外後方に形成された加熱室31には、熱風ヒータ27と熱風ファン28がそれぞれ配設される一方で、本体1の内部に形成された調理室14とオーブン底板11との間の下部空間32には、熱風モータ29が配設される。そして、熱風ユニット24全体を後側外方から覆うように、本体1の後部にオーブン後板13が配設される。
本実施形態の熱風ファン28は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ27は熱風ファン28の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ27は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。前述した吸込み口16や熱風吹出し口17は、調理室14と加熱室31との間を連通する通風部として機能するものである。
そして本実施形態では、熱風モータ29への通電に伴い熱風ファン28が回転駆動すると、調理室14の内部から吸込み口16を通して吸引された空気が、熱風ファン28の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ27により加熱され、吹出し口17を通過して、調理室14内に熱風が供給される。これにより、調理室14の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室14内の被調理物Sを熱風コンベクション加熱する。また、角皿21の周囲にスリット状の通気孔21Cを設けることで、例えば上下2段の棚支え22に角皿21を各々載せて、熱風ユニット24を利用したオーブン加熱調理を行なった場合でも、各角皿21の通気孔21Cを通して調理室14内で熱風が上下に循環するため、被調理物Sとなる食品を前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
調理室14の左側壁14cには、蒸気発生装置33に連通する蒸気噴出孔34が設けられる。図示しないが、本体1の内部に設けられる蒸気発生装置33は、金属製で中空の蒸発容器や、蒸発容器に装着されるシーズヒータなどの蒸発用ヒータや、給水カセット8からの水を蒸発容器内に導く給水ポンプなどを備え、蒸発容器内に連通して複数の蒸気噴出孔34を有している。これにより蒸気発生装置33の動作中には、給水カセット8からの水を蒸発容器内に送り込んで所定の温度にまで加熱することで、蒸気噴出孔34から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給され、調理室14内に入れられた被調理物Sのスチーム調理を行なう構成となっている。
続いて、マイクロ波発生装置19とその周辺の細部構成を、図5〜図7に基いて説明する。これらの各図において、調理室14の底壁14bは、金属板材41に形成された凹状のアンテナ収納部42の上面開口を、セラミック板などのマイクロ波が透過可能な底板43で覆うことで構成される。マイクロ波が透過不能な金属板材41は、底壁14bの周囲部のみならず、左側壁14cや、右側壁14dや、奥壁14eを一体的に形成するもので、底板43を除く調理室14の内面は、全てマイクロ波が透過不能な材料で形成される。
マイクロ波発生装置19は、マイクロ波の供給源となるマグネトロン(図示せず)の他に、本体1内部の下部空間32において、マグネトロンで発振されたマイクロ波をアンテナ収納部42の直下に導く導波管45と、導波管45の下方に配設されるアンテナモータ46と、その下端部が導波管45の内部に配置され、アンテナモータ46の回転軸に取付け固定されるアンテナホルダ47と、アンテナホルダ47内に挿入固定される円柱状のケーブル軸48と、その中心にケーブル軸48の上端部が取付け固定され、アンテナ収納部42の内部で回動可能に設けられるアンテナ49と、により主に構成される。アンテナ収納部42の上面開口を底板43で塞いだ状態では、調理室14の底壁14Bを形成する平板状の底板43に対向して、アンテナ49の全体が底板43と平行に配置される。
アンテナ49は、ケーブル軸48に沿って下から上に進行するマイクロ波を表面から放射するもので、本実施形態では上方から見た輪郭形状が一部を切り欠いた円形であり、一定の厚さを有する凹凸のないアルミニウムなどの金属平板で形成される。アンテナ49には、ケーブル軸48の上端部が挿入される貫通孔51や、外周部が開口する切欠き状のマイクロ波放射部52や、大小2つずつの開口した放射調整部53,54が形成される。マイクロ波放射部52は、マイクロ波の放射に図6に示す矢印Dの方向への指向性を与えるものである。マイクロ波放射部52の内面には、直線状に突出する放射突部55と、アンテナ49の外周形状に沿って円弧状に突出する一対の放射突部56が各々配置され、これらの放射突部55,56からマイクロ波が強く放射される。また放射調整部53,54は、アンテナ49からのマイクロ波を目標の放射分布に調整するためのもので、ここでは特に、ケーブル軸48からアンテナ49の端部までの距離に応じて変動するマイクロ波の放射分布を調整するものである。
ここで使用する円板状のアンテナ49は、アンテナモータ46への通電により底板43の下方でケーブル軸48を中心に回転するが、大きな円板を動かした方が、小さな円板を動かすより電波をかき回す面積が増えるので、調理室14に入れた被調理物Sへの加熱ムラを抑えるのには有利となる。また、調理室14の内壁面に近いところは電波の変化が少なくなり、温まりにくい特徴を持っている。そのため、従来のものよりも被調理物Sへの加熱ムラを効果的に抑制するために、アンテナ49の直径Arは20cm以上とするのが好ましい。
また図6に示すように、アンテナ49の外周端面とアンテナ収納部42の側面との隙間Adが3mm程度以下になると、金属間の電界集中によるスパークが発生する。したがって、アンテナ49と他の金属として例えばアンテナ収納部42との間隔Adは、10mm以上離して設計するのが好ましい。
図8〜図13は、本体1の内部に配設される温度分布検出手段58とその周辺の構成を示したものである。これらの各図において、調理室14の右側壁14dには、四角錐台状の隆起部材61が調理室14内に向かう内方に膨出して設けられる。隆起部材61は、上段の棚支え22より上方にあって、右側壁14dの上部で前後の中央に設けられており、その傾斜した下面部に窓62が開口形成される。また、上下の棚支え22の間に位置して、右側壁14dの上下前後の中央には、窓62とは別の窓63が開口形成される。
調理室14と本体1との間には、窓62を含む隆起部材61の外方に臨んで、第1センサ65やセンサモータ66が配設され、窓63に臨んで第2センサ68が配設される。また、センサモータ66や第2センサ68は、本体1の内部に取付け固定される一方で、第1センサ65はセンサモータ66の回動自在な回転軸69に取付けられる。
第1センサ65の駆動装置となるセンサモータ66は、ステッピングモータなどで構成され、本体1の内部で第1センサ65を前後方向に揺動させる回転軸69を備えている。第1センサ65は、回転軸69に取付け固定される中空状のセンサケース71と、センサケース71の内部に収納されるセンサ基板72と、センサ基板72の表面に搭載される複数個(例えば8個)の赤外線検出素子73と、この赤外線検出素子73に臨んでセンサケース71に取付け固定されるレンズ74と、を主な構成要素としている。
本実施形態では図11に示すように、各赤外線検出素子73の視野V1が、調理室14の右側壁14dの上部中央から窓62を通して、略矩形状をなす底壁14bの左右方向に並ぶように、調理室14の上下方向に沿って複数個の赤外線検出素子73を一直線上に並べて配置している。また、本実施形態では図12に示すように、図示しない制御手段からのモータ駆動信号を受けて、センサモータ66がその回転軸69を正方向と逆方向に所定角度だけ往復回動すると、第1センサ65が揺動するのに伴い、調理室14の底壁14bに達する複数個の赤外線検出素子73の視野V1が、各赤外線検出素子73を中心として移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングするように、図8の一点鎖線で示す複数個の赤外線検出素子73を結ぶ直線と、回転軸69の回転中心軸線とを略一致させている。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓62を塞いでもよい。
一方、第2センサ68は、本体1の内部に取付け固定される中空状のセンサケース76と、センサケース76の内部に収納されるセンサ基板77と、センサ基板77の表面に搭載される1個の赤外線検出素子78と、この赤外線検出素子78に臨んでセンサケース76に取付け固定されるレンズ79と、を主な構成要素としている。そして図13に示すように、赤外線検出素子78の視野V2が、右側壁14dの上下前後の中央から窓63を通して、常に底壁14bの前後左右の中心に達するように、第2センサ68が本体1の内部に取付け固定される。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓63を塞いでもよい。
第1センサ65と第2センサ68は何れも赤外線センサで、本実施形態の温度分布検出手段58を構成する。ここでの温度分布検出手段58は、スイングする第1センサ65と、固定した第2センサ68とにより、加熱室14内全体の温度分布を検出することで、そこに収容された被調理物Sが放射する赤外線の量から、被調理物Sの表面温度を短時間で検出するものである。
図14は、オーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、81はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段81は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、計時手段としてのタイマや、入出力デバイスなどを備えている。
制御手段81の入力ポートには、前述したキーやタッチパネルによる操作手段7や、温度分布検出手段58の他に、加熱室14内の温度を検出するサーミスタなどの温度検出手段82と、熱風ファン28の回転速度を検出する熱風モータ回転検出手段83と、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段84と、アンテナ49の回転の原点を検出するアンテナ位置検出手段85と、前述した蒸気容器内の温度を検出するサーミスタなどの蒸気容器検出手段86が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段81の出力ポートには、前述した表示手段6の他に、マグネトロンやその駆動手段を含むマイクロ波加熱手段88と、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータをそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段89と、アンテナモータ46を回転駆動させるためのアンテナ駆動手段90と、熱風モータ29を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段91と、センサモータ66を正逆回転駆動させるためのセンサモータ駆動手段92と、蒸気発生装置33の給水ポンプを動作させるためのポンプ駆動手段93が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段81は、操作手段7からの操作信号と、温度分布検出手段58や、温度検出手段82や、熱風モータ回転検出手段83や、扉開閉検出手段84や、アンテナ位置検出手段85や、蒸気容器検出手段86からの各検出信号を受けて、計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、マイクロ波加熱手段88と、ヒータ駆動手段89と、アンテナ駆動手段90と、熱風モータ駆動手段91と、センサモータ駆動手段92と、ポンプ駆動手段93に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての前記メモリに記録したプログラムを、制御手段81が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段41を加熱制御部95と、表示制御部96として機能させるプログラムを備えている。
加熱調理制御部95は、主に被調理物Sの加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段84からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マイクロ波加熱手段88や、ヒータ駆動手段89や、アンテナ駆動手段90や、熱風モータ駆動手段91や、センサモータ駆動手段92や、ポンプ駆動手段93に制御信号を送出して、被調理物Sに対する種々の加熱調理を制御する。本実施形態では、加熱調理を実行するための被加熱物Sの材料および加熱条件を含む調理情報として、予め複数のメニューが前記メモリに記憶保持されており、加熱調理制御部95はその中から選択された一つのメニューについて、操作手段7から加熱調理を実行する操作が行われると、その選択されたメニューに従う所定の手順で、被調理物Sを自動的に加熱する自動調理機能を備えている。
こうした自動調理機能の中で、本実施形態では、例えば被調理物Sをあたためたり、解凍したりする自動レンジのメニューを選択した場合に、マイクロ波発生装置19からのマイクロ波を調理室14の内部に放射しながら、調理時間やレンジ出力などを操作手段7からの操作入力無しに自動的に設定して、マイクロ波発生装置19を設定時間に達するまで設定出力で駆動制御し、調理室14に入れられた被調理物Sをレンジ加熱する自動レンジ調理制御部98を、加熱調理制御部95の中の一機能として備えている。
表示制御部96は、加熱調理制御部95と連携して、表示手段6の表示に係る動作を制御するものである。表示制御部96の制御対象となる表示手段6は、液晶パネルや照明灯により構成されるが、それ以外の表示器を用いてもよい。
次に、上記構成のオーブンレンジについてその作用を説明すると、予め調理室14内に被調理物Sを入れた状態で、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により調理メニューを選択操作した後に調理開始を指示すると、制御手段81の記憶部に組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が所定のタイミングで出力され、被調理物Sが加熱調理される。
ここで、例えばオーブン加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段81からの制御信号がヒータ駆動手段89と熱風モータ駆動手段91に送出されて、熱風ヒータ27と熱風モータ29が各々通電され、熱風モータ29のモータ軸37に発生した回転力が、伝達機構30を通して熱風ファン28のシャフト34に伝達する。それにより熱風ファン28は加熱室31の内部で回転し、その速度は熱風モータ回転検出手段83により制御手段81に取り込まれると共に、調理室14から吸込み口16を通して加熱室31に吸込んだ空気を、通電した熱風ヒータ27側に送り出し、ここで加熱された空気が熱風吹出し口17を通して調理室に熱風Fとして供給されることで、調理室14内の被調理物Sが熱風コンベクション加熱される。
上述した自動レンジを含むレンジ加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段81は温度分布検出手段58や温度検出手段82からの各検出信号を受けて、被調理物Sが設定した温度に加熱されるように、アンテナ位置検出手段85からの検出信号でアンテナ49の原点位置を確認しながら、マイクロ波加熱手段88とアンテナ駆動手段90とセンサモータ駆動手段92に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、マイクロ波発生装置19のマグネトロンやアンテナモータ46が通電動作して、回転するアンテナ49の表面から発生したマイクロ波が調理室14内に供給放射され、底壁14bに置かれた被加熱物Sがレンジ加熱される。
このレンジ加熱調理時において、センサモータ66の回転軸69は、回転角度が0°の位置(図11に示すように、8個の赤外線検出素子73の視野V1が、調理室14の底壁14bの前後方向の中央に一列に並ぶ状態のとき。)から、時計回り方向(正方向)と反時計回り方向(逆方向)への回転を繰り返し行なう。その結果、本体1の内部で第1センサ65は揺動し、各赤外線検出素子54の視野V1は、図12に示すような移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングする。このときセンサモータ66の回転軸69は所定の角度で間欠的に回転しており、制御手段81は回転軸69を所定の角度で回転させる毎に、各赤外線検出素子73からの検出信号を取り込んで、調理室14内の任意の位置に置かれた被調理物Sの温度を監視する。こうして各赤外線検出素子73は、実質的に調理室14の底壁14bのほぼ全域から赤外線を受光して、調理室14内に入れられた被調理物Sの温度を検出することが可能になる。
本実施形態では、調理室14の右側壁14dの上部において、第1センサ65が前後方向の後方にではなく中央に設けられており、被調理物Sを底壁14bの前後方向の中央付近に置いたときに、第1センサ65から被調理物Sまでの距離が近づいて、被調理物Sの温度をより正しく検出できる。特に加熱調理時には、習慣的に被調理物Sの中心を調理室14の中央部に一致させて置くことが多いので、本実施形態のような位置に第1センサ65を設けるだけで、自ずと被調理物Sの温度検出精度を向上させることができる。
また本実施形態のセンサモータ66は、所定時間となる例えば5秒間を1周期として第1センサ65を揺動させ、その間に第1センサ65は、1つの赤外線検出素子73につき片道で64か所、往復で128か所の温度を検出する。つまり、8個の赤外線検出素子73を有する第1センサ65をスイングすることで、第1センサ65は1周期当り128×8=1024か所もの温度を測定でき、第1センサ65により広い調理室14の内部温度を広範囲に細かく隅々まで検出できる。
これとは別に、本実施形態では本体1に固定した第2センサ68により、図13に示すような赤外線検出素子78の視野V2に置かれた被調理物Sの温度を連続的に検出する。制御手段81は、少なくともモータ66の回転軸69が所定の角度で回転する毎に、若しくはそれよりも短い時間間隔で、単独の赤外線検出素子78からの検出信号を取り込んで、調理室14内の中央部付近における被調理物Sの温度を監視する。
こうして本実施形態では、8個の赤外線検出素子73を有する第1センサ65からの各検出信号により、調理室14内の温度を広範囲に細かく隅々まで検出すると共に、1個の赤外線検出素子78を有する第2センサ68からの検出信号により、調理室14内の中央部付近の温度を、連続的に検出することが可能になる。制御手段81はこれらの検出信号を受けて、被調理物Sに対して所望のレンジ加熱調理が行われるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。また異常監視の機能として、被調理物Sの検出温度が通常の範囲を超えている場合は、機器に異常が発生したと判断して、マイクロ波発生装置19への通電を強制的に停止する。何れの場合も、第1センサ65と第2センサ68との併用で、被調理物Sの温度を瞬時に判断することで、結果的に加熱調理の制御や異常監視を正確に行なうことが可能になる。
また本実施形態では、調理室14へのマイクロ波放射手段として、従来よりも大型のアンテナ49を採用している。図15は、アンテナ形状の違いによるマイクロ波の放射方向を矢印で示したものであるが、図中(A)の一般的なモデルでは、アンテナ49’が平板状で、その直径Ar’は15cmであり、調理室14内の限られた領域にしかマイクロ波を放射させることができない。図中(B)に示す従来のドーム形アンテナ49’’では、アンテナ49’’の表面から調理室14に向けてマイクロ波が広がって放射されるが、調理室14の中心部付近に比べて周辺部付近に放射されるマイクロ波の量が少なく、被調理物Sに温めムラが発生する要因となる。また、アンテナ49’’の直径Ar’’は一般的なモデルと同様に15cmであり、調理室14内の限られた領域にしかマイクロ波を放射させることができない。
それに対して、本実施形態のような大型のアンテナ49は、直径Arが20cmであるため、アンテナ49を回動させたときに、アンテナ49から放射するマイクロ波をかき回す面積が増加して、調理室14内の隅々にまでマイクロ波を放射させることができる。これは、被調理物Sの加熱ムラを抑えるのに有利である。また、平板状のアンテナ49の表面から調理室14に向けて、どの領域でも均一にマイクロ波が放射されるので、被調理物Sを広範囲にわたりムラなく加熱することができる。
スチーム加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段81は蒸気容器検出手段86からの検出信号を受けて、調理室14内に設定した温度の蒸気が供給されるように、ヒータ駆動手段89とポンプ駆動手段93に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、蒸気発生装置33の給水ポンプや蒸発用ヒータが通電動作し、給水カセット8に貯留した水が蒸発容器内に送り込まれて所定の温度に加熱され、蒸気噴出口34から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給されることで、被調理物Sがスチーム加熱される。
次に、上述したレンジ加熱の中で、特に自動レンジ調理制御部98による自動レンジの調理メニューについて、その動作を詳しく説明する。操作手段7により被調理物Sをあたためる自動レンジの調理メニューを選択すると、自動レンジ調理制御部98は、調理室14に入れられた被加熱物Sのレンジ加熱中に、可動する第1センサ65と固定した第2センサ68からの各検出信号に加えて、温度センサ15からの検出信号を取り込んで、被調理物Sの温度となる食材温度を測定し、被調理物Sの種類や量に拘らず、その測定した食材温度が常温よりも高い適切な設定温度に加熱されるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。
特に本実施形態では、操作手段7を1回押す自動レンジの調理メニューで、被調理物Sのあたため不足やあたため過ぎが生じたり、食材や量によってあたため具合が違ったりする潜在的なユーザの不満を解消するために、2種類の赤外線センサである第1センサ65および第2センサ68と、温度検出手段82を構成する温度センサ15とを併用したトリプルセンサで、自動レンジ調理制御部98がマイクロ波発生装置19の動作を制御することで、被調理物Sを自動であたためるレンジ加熱性能の大幅な改善を図っている。これにより、食材や量に拘らず、操作手段7を1回押す自動レンジの調理メニューで、被調理物をばらつきなく適切な温度にあたためることが可能となる。
ここで、レンジ加熱による被調理物Sの温度差、すなわちレンジ加熱ムラの原因について、図16と図17を参照して説明する。図16は、レンジ出力が500Wとなるようにマイクロ波発生装置19を動作させたときに、被加熱物Sの中央内部のマイクロ波が吸収しにくい部位と、被加熱物Sの表面端部のマイクロ波が吸収しやすい部位の温度変化を測定したグラフである。図17は、レンジ出力が1000Wとなるようにマイクロ波発生装置19を動作させたときに、被加熱物Sの中央内部のマイクロ波が吸収しにくい部位と、被加熱物Sの表面端部のマイクロ波が吸収しやすい部位の温度変化を測定したグラフである。これらに共通して、被調理物Sはひき肉であり、その温度検出はマイクロ波の影響を受けずに、無線で検出データを送出することができ、調理室14のような密閉空間に入れて、レンジ加熱中の温度測定ができるデータロガーDLを使用した。
図16に示すように、レンジ出力が500Wの場合、レンジ加熱中にデータロガーDLで検出した被調理物Sのマイクロ波が吸収しやすい部位と吸収しにくい部位との最大温度差は、53℃であった。これに対して、図17に示すように、レンジ出力が1000Wになると、レンジ加熱中にデータロガーDLで検出した被調理物Sのマイクロ波が吸収しやすい部位と吸収しにくい部位との最大温度差は、レンジ出力が増加した関係で81℃に広がった。このように、赤外線センサである第1センサ65や第2センサ68では、食材の表面温度がよく見えていても、食材の大きさや形状は均一ではないので、マイクロ波を吸収しやすい部位の温度は上がってしまう。特にレンジ出力を1000Wに強めた場合、レンジ加熱の途中で同じ食材でも最大温度差が81℃に達し、レンジ加熱ムラが顕著になる。
従来は、レンジ加熱中に被調理物S各部の温度を測定することができず、レンジ加熱後に調理室14内に熱電対を入れて被調理物Sの温度測定を行っていた。そのため、レンジ加熱後に熱電対で検出した被調理物Sの吸収しやすい部位と吸収しにくい部位の温度差、つまり図16や図17の例では、レンジ出力が500Wの場合は35℃、レンジ出力が1000Wの場合は60℃で、レンジ加熱ムラの評価を行なわざるを得なかった。しかし、データロガーDLを利用すれば、レンジ加熱中にどの程度の温度差が生じているのかを測定することができ、レンジ加熱中に各赤外線検出素子73,78で検出される温度の最大値と最小値の差が大きい場合、それまでよりもレンジ出力を弱めて、ゆっくりと被調理物Sを加熱することで、被調理物Sのレンジ加熱ムラを抑えることが可能になる。
図18は、前述のデータロガーDLを用いたレンジ加熱中の温度計測結果をグラフで示したものである。同図において、ここでは透明な耐熱容器に入れた200gの水をレンジ加熱したときの、第1センサ65の各赤外線検出素子73による検出温度(「赤外線センサ8眼検出温度」)と、温度センサ15によるAD値から換算される検出温度(「温度センサAD値」)と、データロガーDLにより検出された水温(「水温(データロガー)」)と、従来の赤外線センサ制御温度と、従来の赤外線センサ温度推定値の経時変化がそれぞれ示されている。データロガーDLは、水を入れた容器の中に投入されている。
レンジ加熱中にデータロガーDLが計測した水温と、第1センサ65や温度センサ15で検出した温度とを比較すると、赤外線センサによる第1センサ65の検出温度は、被調理物Sから蒸気が発生するまでは、データロガーDLが計測した実負荷の温度上昇に追従するが、被調理物Sから蒸気が発生した後は感度が鈍くなり、実負荷の温度上昇に対して次第に追従しなくなる。それに対して温度センサ15は、被調理物Sから蒸気が発生した後に感度が良好になり、第1センサ65に比べて温度センサ15の方が実負荷の温度上昇に対する追従性が良くなる。
したがって本実施形態のように、2種類の赤外線センサである第1センサ65および第2センサ68と、別な温度センサ15とを組み合わせたトリプルセンサで、自動レンジの加熱中に被調理物Sから蒸気が発生するまでは、第1センサ65と第2センサ68からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定する一方で、被調理物Sから蒸気が発生したら、温度センサ15からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定するように自動レンジ調理制御部98を構成すれば、被調理物Sの温度をより正確に測定して、被調理物を所望の適切な温度にあたためることが可能となる。また図示しないが、制御手段81の出力ポートに蒸気検出手段を備え、この蒸気検出手段により自動レンジの加熱中に被調理物Sから蒸気が発生したか否かを検出する構成としてもよい。
本実施形態の自動レンジ調理制御部98は、上述した被調理物Sをあたためる調理メニューの他に、被調理物Sを解凍する調理メニューを操作手段7で選択できるようになっている。これにより、操作手段7により被調理物Sを解凍する自動レンジの調理メニューを選択すると、自動レンジ調理制御部98は、調理室14に入れられた被加熱物Sのレンジ加熱中に、可動する第1センサ65と固定した第2センサ68からの各検出信号に加えて、温度センサ15からの検出信号を取り込んで、被調理物Sの温度となる食材温度を測定し、被調理物Sの種類や量に拘らず、その測定した食材温度が常温付近の適切な設定温度に加熱解凍されるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。
図19は、被調理物Sを解凍する自動レンジの調理メニューとして、普段使いのスピード解凍を行なう「お急ぎ解凍」の調理メニューを選択した場合の、本実施形態と従来例の仕様を表で示したものである。同図において、従来の「お急ぎ解凍」では、レンジ出力の最小値がマグネトロンを連続発振させた状態で400W、レンジ出力をオン/オフさせる周期の最短時間が30秒であるのに対し、本実施形態における新たな「新お急ぎ解凍」では、レンジ出力の最小値がマグネトロンを連続発振させた状態で300W、レンジ出力をオン/オフさせる周期の最短時間が10秒となる。レンジ出力の最小値を300Wにする理由は、レンジ出力をオン/オフさせる周期の最短時間が10秒になると、それより低いレンジ出力値では、マグネトロンが発振しなくなるからである。ここでいうレンジ出力とは、JIS(C 9250)や電気用品取締法で決められている定格高周波出力に相当するもので、調理室14内に置いたビーカ内の水に吸収されたマイクロ波のエネルギー量と言える。
また、従来の「お急ぎ解凍」では、第1センサ65と第2センサ68とによる「ダブル赤外線センサ」で、被調理物Sに対する温度監視を行なっていたのに対し、本実施形態の「新お急ぎ解凍」では、「ダブル赤外線センサ」に加えて、温度センサを組み合わせて、被調理物Sに対する温度監視を行なっている。その詳細は、図16〜図18で説明した通りである。アンテナ49については、従来の「お急ぎ解凍」と本実施形態の「新お急ぎ解凍」に共通して、その直径Arが20cmの「大型アンテナ」として形成される。その詳細は、図15で説明した通りである。
このように、従来はマイクロ波の発振源となるマグネトロンを、最短で例えば15秒オン/15秒オフの周期で繰り返し動作させていたのに対し、本実施形態では、最短で例えば5秒オン/5秒オフの周期で繰り返し動作させることが可能となり、マグネトロンの発振が停止しない程度に、マグネトロンを連続発振させたときのレンジ出力の最小値を低下させた上で、マグネトロンの発振する時間を15秒から5秒に短縮することで、レンジ加熱される被調理物Sをきめ細かく火加減調節して、短い解凍時間で煮えづらい状態に仕上げることが可能になる。そのため、従来の「お急ぎ解凍」では、豚ひき肉100gの解凍時間が3分〜4分30秒であったのに対し、本実施形態の「新お急ぎ解凍」では、豚ひき肉100gの解凍時間が2分30秒(2分台)に短縮できた。
図20は、従来の「お急ぎ解凍」と本実施形態の「新お急ぎ解凍」について、被調理物Sとなる被解凍物として冷凍豚ひき肉100gを、実際に自動レンジ加熱で解凍した評価結果を一覧で示したものである。従来は加熱時間が3分32秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が2分28秒に短縮された。その他、被解凍物の各測定点の仕上がり温度と、全測定点の平均温度と、各測定点の中の最高温度や最低温度と、解凍後の状態は、図に示した通りである。
図21は、従来の「お急ぎ解凍」と本実施形態の「新お急ぎ解凍」について、被解凍物として煮えやすい豚薄切り肉100gを、実際に自動レンジ加熱で解凍したときの加熱時間と解凍後の状態を示したものである。従来は加熱時間が2分38秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が1分59秒に約40秒(39秒)短縮された。解凍後は何れも、煮えがなくはがせるほぼ同等の仕上がり状態が得られた。
図22は、従来の「お急ぎ解凍」と本実施形態の「新お急ぎ解凍」について、被解凍物として中が固いままになりやすい鶏むね肉かたまり100gを、実際に自動レンジ加熱で解凍したときの加熱時間と解凍後の状態を示したものである。従来は加熱時間が3分34秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が2分31秒に約1分(1分3秒)短縮された。解凍後は何れも、肉の中心温度が−1.2℃で、直後に包丁で切れるほぼ同等の仕上がり状態が得られた。
図23は、従来の「お急ぎ解凍」と本実施形態の「新お急ぎ解凍」について、被解凍物として最大分量の豚ひき肉600gを、実際に自動レンジ加熱で解凍したときの加熱時間と解凍後の状態を示したものである。従来は加熱時間が18分10秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が10分52秒に約7分(7分18秒)短縮された。解凍後は何れも、煮えがなくはがせるほぼ同等の仕上がり状態が得られた。
次に、被解凍物の分量が多い時に、加熱解凍時間を更に短縮する好ましい手法を説明する。第1の手法として、本実施形態の自動レンジ調理制御部98は、被調理物Sへの自動レンジ加熱を開始するスタート時に、温度分布検出手段58を構成する第1センサ65や第2センサ68からの検出信号により、調理室14内に置かれた被調理物Sの分量を判定し、その判定結果に応じて被調理物Sへの加熱量を可変調整する構成を有している。これは具体的には、被調理物Sの分量が少ないと判定した場合には、被調理物へSの加熱量を減少させ、逆に被調理物Sの分量が多いと判定した場合には、被調理物へSの加熱量を増加させて、被調理物Sの分量に応じてマイクロ波発生装置19に対する制御を分けることで実現する。自動レンジ調理制御部98は、被調理物Sの分量に応じて、被調理物へSの加熱量を段階的若しくは連続的に可変調整することが可能である。
図24は、被調理物Sの分量が少ないと判定した場合に、調理室14内の底面各部がレンジ加熱の開始時にどのような温度分布であったのかを一例で示している。また図25は、被調理物Sの分量が多いと判定した場合に、調理室14内の底面各部がレンジ加熱の開始時にどのような温度分布であったのかを一例で示している。これらの各図において、マトリクス状に配列された数字は、第1センサ65や第2センサ68により検出される調理室14の底壁14b上の検出温度である。
自動レンジ調理制御部98は、被調理物Sへのレンジ加熱を開始すると、第1センサ65をスイングさせて、調理室14内の底面全領域について各地点の温度を検出する。次に、各地点の検出温度が所定温度(例えば0℃)以下であるか否かを判定し、所定温度以下であれば、それは被調理物Sとして冷凍食材が存在する地点であると判断する。そして、調理室14内の底面全領域における全地点の温度平均値(図中、「庫内全平均」)と、冷凍食材が存在する地点の温度平均値(図中、「冷凍食材平均」)との差が小さい程、被調理物Sの分量が多いと判断する。
図24に示す例では、「庫内全平均」が19.4℃であり、「冷凍食材平均」が−3.7℃であり、その差は23.1℃である。これに対して、図25に示す例では、「庫内全平均」が10.6℃であり、「冷凍食材平均」が−3.2℃であり、その差は13.8℃である。これにより自動レンジ調理制御部98は、「庫内全平均」から「冷凍食材平均」を減算した温度差が小さい程、被調理物Sの分量が多いと判断できる。
従来は、こうした被調理物Sの分量判定に基づく加熱量の調整は行われておらず、被調理物Sの分量が調理室14に投入可能な例えば50〜600gの範囲で、同じ制御が行われていた。しかし、長時間レンジ加熱を連続して行なうと、最小分量である50gで被調理物Sが煮えてしまうため、被調理物Sに対する加熱量を下げざるを得ない。そのため、最大分量である600gでは、被調理物Sの解凍時間が延びてしまう問題があった。
しかし、本実施形態の自動レンジ調理制御部98では、被調理物Sのレンジ加熱を開始するスタート時に、被調理物Sの分量を判定しており、被調理物Sの分量が多い程、例えばマグネトロンを連続発振させることにより、レンジ出力を連続してオンする時間を長く調整することで、被調理物に対する加熱量を増加させることができる。そのため、被調理物Sの分量が多い場合に、被調理物Sの分量が少ない場合と制御を分けることで、加熱解凍時間を効果的に短縮することが可能になる。
こうした手法とは別に、若しくはこうした手法と組み合わせて、本実施形態の自動レンジ調理制御部98は、被調理物Sを加熱解凍する際に、レンジ出力のオン時間がそれぞれ異なる複数の工程を順次実行し、一つの工程内で温度分布検出手段58や温度検出手段82から検出した被調理物Sの検出温度が、その工程内の最終的な目標温度に近付くにしたがって、レンジ出力のオン時間を徐々に減らすように、マイクロ波発生装置19を制御する構成を有している。
図26は、従来の「お急ぎ解凍」におけるレンジ出力のオン/オフタイミングと、食材温度との関係をグラフで示している。また図27は、本実施形態の「新お急ぎ解凍」におけるレンジ出力のオン/オフタイミングと、食材温度との関係をグラフで示している。これらの各図で、「食材温度」とあるのは、温度分布検出手段58や温度検出手段82で検出される被調理物Sの検出温度に相当し、「レンジ出力」とあるのは、マグネトロンの発振動作に相当する。
従来の「お急ぎ解凍」と本実施形態の「新お急ぎ解凍」では、何れも被調理物Sに対する自動レンジ加熱を開始すると、レンジ出力のオン時間がそれぞれ異なる複数の工程、すなわちここでは3つの工程1〜3を、工程1→工程2→工程3の順に実行して、被調理物Sへの加熱量を次第に減少させながら、調理室14に入れられた被調理物Sを加熱解凍する。また全ての工程1〜3に渡って、レンジ出力のオン/オフ周期は一定(=10秒)となり、最初の工程1では、その全期間においてレンジ出力のオン時間とオフ時間が10秒オン/0秒オフとなるように、マグネトロンを連続的に発振させ、最後の工程3では、その全期間においてレンジ出力のオン時間とオフ時間が3秒オン/7秒オフとなるように、マグネトロンを間歇的に発振させる。
一方、中間の工程2は、工程1よりもレンジ出力のオン時間が短く、工程3よりもレンジ出力のオン時間が長くなるが、従来の「お急ぎ解凍」は、その全期間でオン時間とオフ時間が5秒オン/5秒オフに固定されるのに対し、本実施形態の「新お急ぎ解凍」は、被調理物Sへの加熱に伴い上昇する食材温度が、予め設定した工程2の目標温度に近付くにしたがって、オン時間とオフ時間が8秒オン/2秒オフから4秒オン/6秒オフに可変する。
このように、従来の「お急ぎ解凍」では、被調理物Sの分量に拘らず、各工程1〜3でレンジ出力のオン時間が一定であるのに対し、本実施形態の「新お急ぎ解凍」では、中間の一つの工程2で、調理室14内の食材温度が目標温度に近付くにしたがって、レンジ出力のオン時間を次第に可変減少させ、被調理物Sの分量に応じてレンジ出力をきめ細かく制御するようにしている。この場合、被調理物Sの分量が多くなる程、食材温度が目標温度に達するのに多くの加熱量を被調理物Sに与えることができ、被調理物Sの分量が多い場合に、被調理物Sの加熱解凍時間を効果的に短縮することが可能になる。
以上のように本実施形態は、マイクロ波発生手段となるマイクロ波発生装置19からのマイクロ波を調理室14の内部に放射することで、調理室14に入れられた被調理物をレンジ加熱する加熱調理器としてのオーブンレンジにおいて、被調理物Sの加熱解凍時におけるレンジ出力の最低値を300Wとし、レンジ出力をオン/オフさせる周期の最短時間を10秒とするように、マイクロ波発生装置19を制御する制御手段81を備えている。
この場合、調理室14に入れられた被調理物Sを加熱解凍させる際に、レンジ出力の最低値を300Wにまで低下させ、且つレンジ出力の周期の最短時間を10秒にまで短縮することで、マイクロ波発生装置19の発振が停止しない範囲で、きめ細かなレンジ出力の調節が可能となり、従来よりも短い時間で被調理物Sを好ましい状態に解凍することが可能になる。
また本実施形態では、調理室14内の温度分布を検出する複数の赤外線センサからなる温度分布検出手段58をさらに備え、制御手段81の自動レンジ調理制御部98は、被調理物Sへの加熱開始時に、温度分布検出手段58からの検出信号により被調理物Sの分量を判定し、その判定結果に応じて被調理物Sへの加熱量を調整する構成を備えている。
この場合、調理室14内の被調理物Sに対する加熱開始時に、当該被調理物Sの分量を判定して、その分量が多い程、例えばレンジ出力を連続してオンする時間を長く調整することで、被調理物Sの分量が多い場合の加熱解凍時間を短縮することが可能になる。
また本実施形態の制御手段81は、レンジ出力のオン時間がそれぞれ異なる複数の工程を順次実行し、同じ工程内であっても、被調理物Sの温度が目標温度に近付くにしたがって、レンジ出力のオン時間を徐々に減らすように、マイクロ波発生装置19を制御する構成となっている。
この場合、一つの工程内でレンジ出力のオン時間を固定するよりも、被調理物Sの温度が加熱により目標温度に近付くにしたがって、レンジ出力のオン時間を可変して減らすことで、被調理物Sの分量に応じたレンジ出力のよりきめ細かな制御が可能になり、被調理物Sの分量が多い場合の加熱解凍時間を短縮することが可能になる。
また本実施形態では、調理室14内の温度分布を検出する赤外線センサとしての第1センサ65や第2センサ68による温度分布検出手段58の他に、調理室14内の温度を検出する温度センサ15を含む温度検出手段82をさらに備え、制御手段81は、被調理物Sから蒸気が発生するまでは、温度分布検出手段58からの検出信号に基づいて被調理物Sの温度を算出し、被調理物Sから蒸気が発生した後は、温度分布検出手段58に代わって温度検出手段82からの検出信号に基づいて、被調理物Sの温度を算出する構成としている。
この場合、第1センサ65や第2センサ68による温度分布検出手段58と、温度センサ15による温度検出手段82とを組み合わせて、被調理物Sの温度を算出することにより、被調理物Sの種類や量に拘らず、ばらつきなく適切な温度に加熱を行なうことが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、被調理物Sへの加熱量を調整するために、例えば、レンジ出力を一定の周期でオン/オフさせつつ、そのオン時間を可変させたりしてもよい。