JP2018053276A - 孔あき金属基板の製造方法 - Google Patents

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睦 松浦
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Abstract

【課題】複数の微細な貫通孔を有する金属基板を簡便な方法で作製できる孔あき金属基板の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】金属基板の一方の主面に印刷法により複数の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層をエッチングマスクとして金属基板をエッチングして、金属基板の、開口部の位置に貫通孔を形成するエッチング工程とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、孔あき金属基板の製造方法に関する。
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のポータブル機器や、ハイブリッド自動車、電気自動車等の開発に伴い、その電源としての蓄電デバイス、特に、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタの需要が増大している。
このような蓄電デバイスの正極または負極に用いられる電極用集電体(以下、単に「集電体」という。)としては、アルミニウム板および銅板等の金属基板に多数の微細な貫通孔を形成したものを用いることが知られている。また、このような貫通孔が形成された金属基板からなる集電体の表面に、活性炭などの活物質を塗布され、正極または負極の電極として用いることが知られている。
例えば、特許文献1には、多数の貫通孔が設けられている金属箔からなる孔開き集電体が記載されている。
このような集電体を用いる蓄電デバイスは、デバイスの内部抵抗が低いほど優れた出力特性を示すが、長時間の使用等により集電体と活物質とが剥離すると接触抵抗が増大し、蓄電デバイスとしての出力特性が悪化してしまう。そのため、集電体と活物質との密着性が高いことが望ましい。
一般に、貫通孔の形成方法として、パンチング加工等の機械加工による形成方法が知られている。しかしながら、パンチング加工等により形成される貫通孔は、径が300μm以上の大きな孔である。貫通孔の径が大きいと、塗布した活物質の表面に、集電体の貫通孔に対応した凹凸ができたり、裏抜けしたりして、活物質表面の均一性が損なわれて塗布性が低下してしまう。
そのため、貫通孔の径を小さくして集電体である孔あき金属基板と活物質との密着性および塗布性を向上することが行われている。
このような微細な貫通孔が形成された金属基板の製造方法として、特許文献1には、無孔金属箔表面に紫外線硬化型感光性樹脂よりなるレジスト液を塗布し、レジスト層を形成した後、このレジスト層にポジフィルムを通して、孔を開けたい箇所だけに紫外線を照射せずに他の箇所には紫外線を照射し、他の箇所を硬化させた後、硬化していない箇所の感光性樹脂を洗浄除去して、無孔金属箔表面に孔開きレジスト膜を形成し、これにエッチングを施すことにより、無孔金属箔に孔開きレジスト膜の孔に対応する多数の貫通孔を形成し、孔開きレジスト膜を剥離して貫通孔が形成された金属基板を作製する方法が記載されている。
特開平11−67217号公報
しかしながら、上記のようないわゆるフォトレジストにより孔開きレジスト膜を形成して、エッチング処理を行う方法では、レジスト塗布、乾燥、画像形成(フイルム露光、レーザー描画等)、非画像部除去、洗浄工程と、工程が多く複雑になる。またそのため生産にかかるコストが高くなってしまうという問題があった。
そこで、本発明は、複数の微細な貫通孔を有する金属基板を簡便な方法で作製することができる孔あき金属基板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、金属基板の一方の主面に印刷法により複数の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、レジスト層をエッチングマスクとして金属基板をエッチングして、金属基板の、開口部の位置に貫通孔を形成するエッチング工程とを有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
(1) 金属基板の一方の主面に印刷法により複数の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
レジスト層をエッチングマスクとして金属基板をエッチングして、金属基板の、開口部の位置に貫通孔を形成するエッチング工程とを有する孔あき金属基板の製造方法。
(2) エッチング工程の後に、レジスト層を金属基板から除去するレジスト層除去工程を有する(1)に記載の孔あき金属基板の製造方法。
(3) エッチング工程の前に、金属基板の、レジスト層が形成される面とは反対側の主面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程を有する(1)または(2)に記載の孔あき金属基板の製造方法。
(4) エッチング工程の後に、レジスト層および樹脂層を金属基板から除去する除去工程を有する(3)に記載の孔あき金属基板の製造方法。
(5) レジスト層形成工程でレジスト層を形成する際の印刷法が、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、平版印刷法、凸版印刷法、および、スクリーン印刷法から選択される少なくとも1種である(1)〜(4)のいずれかに記載の孔あき金属基板の製造方法。
(6) 長尺な金属基板を基板ロールから送り出し、金属基板の長手方向に搬送しつつ、レジスト層形成工程、および、エッチング工程を行うものである(1)〜(5)のいずれかに記載の孔あき金属基板の製造方法。
本発明によれば、複数の微細な貫通孔を有する金属基板を簡便な方法で作製できる孔あき金属基板の製造方法を提供することができる。
本発明の孔あき金属基板の製造方法で準備する金属基板の模式的な断面図である。 本発明の孔あき金属基板の製造方法のレジスト層形成工程を説明するための模式的な断面図である。 本発明の孔あき金属基板の製造方法のエッチング工程を説明するための模式的な断面図である。 本発明の孔あき金属基板の製造方法で作製された孔あき金属基板の模式的な断面図である。 本発明の孔あき金属基板の製造方法の樹脂層形成工程を説明するための模式的な断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[孔あき金属基板の製造方法]
本発明の孔あき金属基板の製造方法は、
金属基板の一方の主面に印刷法により複数の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
レジスト層をエッチングマスクとして金属基板をエッチングして、金属基板の、開口部の位置に貫通孔を形成するエッチング工程とを有する孔あき金属基板の製造方法である。
以下、本発明の孔あき金属基板の製造方法について、図1〜図5を用いて説明する。
まず、図1に示すような平板状の金属基板12を準備する。この金属基板12は、後述するレジスト層形成工程およびエッチング工程に供されて、複数の貫通孔を形成されて孔あき金属基板10となるものである。
準備する金属基板12の形成材料としては、後述するエッチング工程で用いるエッチャントに対して溶解する金属原子を含んでいれば何でもよく、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、タンタル、モリブデン、ニオブ、ジルコニウム、タングステン、ベリリウム銅、燐青銅、黄銅、洋白、錫、鉛、亜鉛、半田、鉄、ニッケル、パーマロイ、ニクロム、42アロイ、コバール、モネル、インコネル、および、ハステロイ等の金属を用いることができる。
また、準備する金属基板12の厚みは、10μm〜100μmが好ましく、10μm〜40μmがより好ましい。なお、金属基板12の平均厚みは、接触式膜厚測定計(デジタル電子マイクロメータ)を用いて、任意の5点を測定した厚みの平均値をいう。
<レジスト層形成工程>
レジスト層形成工程は、準備した金属基板12の一方の主面(最大面)にレジスト層を形成する工程である。図2に示すように、形成されるレジスト層18は、複数の開口部20を有する。この開口部20は、後述するエッチング工程で金属基板12に貫通孔を形成する位置に合わせて所定のパターンで配列される。レジスト層18は、エッチング工程におけるエッチング処理で溶解されない層である。
以下の説明においては、複数の開口部20を有するレジスト層18をレジストパターン18ともいう。
ここで、本発明においては、レジスト層形成工程において、印刷法によりレジスト層18となる組成物を金属基板12上に、所定のパターンで印刷して、硬化させることで、複数の開口部20を有するレジスト層18(レジストパターン18)を形成する。
レジスト層形成工程において用いられる印刷法には限定はなく、公知の印刷法が適宜利用可能である。好ましくは、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、平版印刷法、および、スクリーン印刷法から選択される少なくとも1種である。より好ましくは、フレキソ印刷法である。
フレキソ印刷法は、素材にゴムおよび合成樹脂等を使用した凸部が形成された版胴(凸版)を利用した印刷方法である。フレキソ印刷法は、一般的に、アニロックスロール(金属ロール)上によりレジスト層となる組成物を付着させ、場合により、ドクターブレードを用いて組成物を薄層化した後、凸部を有する版胴に転写する。このとき、組成物は、凸部上に保持される。さらに、版胴を回転させて凸部上に保持されている組成物を金属基板上に転写する方法である。
グラビア印刷法は、凹部が形成された版胴(凹版)を利用した印刷方法である。グラビア印刷法は、一般的に、組成物の供給部から、版胴に形成された凹部にレジスト層となる組成物を供給し、場合により、ドクターブレードを用いて過剰な組成物をそぎ落とした後、凹部に残存した組成物を金属基板に転写する方法である。
平版印刷法は、印刷版の非画像部および画像部が、ほぼ同一水準にあり、親油性で水不親和性の画像部および親水性で油不親和性の非画像部が水−油斥力の原理により印刷版の同一水準上に形成された印刷版を用いる印刷方法である。平版印刷では、まず印刷版を水で湿らされた後に、組成物が塗布される。その際、非画像部は組成物を反発して画像部のみ組成物が保持される。その後、画像部に保持された組成物を金属基板に転写する。
凸版印刷法は、凹凸を利用する印刷方法である。凸版印刷法では、非画線部を凹部、画線部を凸部にして凸部に組成物をつけ、金属基板に転写する。
スクリーン印刷法は、ポリエステルなどの合成繊維やステンレスなどの金属繊維で織ったスクリーンメッシュを用いた版を使用する印刷方法である。メッシュの必要な画線以外の目をふさぐことでスクリーン印刷用の印刷版とすることができる。印刷の際には、スクリーン印刷版の上に組成物をのせて、スキージによって組成物をスクリーン印刷版の下面側に設置した金属基板上に押し出して組成物を金属基板に転写する。
レジスト層形成工程において、レジスト層18となる組成物を印刷法により所定のパターンで金属基板12上に印刷した後には、組成物を乾燥させて、複数の開口部20を有するレジスト層18(レジストパターン18)を形成する。
乾燥の際には、20〜100℃に加熱するのが好ましい。
ここで、後述するように、レジスト層形成工程でレジストパターン18を形成した金属基板12をエッチングすることで、開口部20の位置に貫通孔を形成する。したがって、開口部20の数密度は、後述する貫通孔の数密度と同等であればよく、10〜50000個/cm2が好ましく、100〜20000個/cm2がより好ましい。
また、開口部20の形状は、円形状、楕円形状、正方形状、矩形状、三角形状、および、多角形状等の種々の形状とすることができる。
また、開口部20の開口径は、後述するエッチング後の貫通孔の開口径が好適範囲となる範囲であればよい。
また、複数の開口部20の配置パターンにも限定はなく、所望の貫通孔の配置パターンに合わせた配置パターンとすればよく、金属基板12の主面上に規則的に配列されていてもよいし、ランダムに配列されていてもよい。
(組成物)
レジスト層18となる組成物としては、後述するエッチング処理で溶解されず、金属基板12との密着性に優れる組成物を用いる。また、後述するレジスト層除去工程で容易に除去できる組成物を用いるのが好ましい。
具体的には、レジスト層18を形成する組成物は、少なくとも重合体成分を含有する組成物である。
<重合体成分>
上記組成物に含まれる重合体成分は特に限定されず、従来公知の重合体成分を用いることができる。
重合体成分としては、具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エステルアクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、および、フェノール系樹脂などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、耐酸性に優れ、後述するエッチング工程で用いるエッチャントとして酸性溶液を用いた場合にも、所望の貫通孔が得られやすくなる理由から、重合体成分が、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂およびポリイミド系樹脂からなる群から選択される樹脂材料であることが好ましい。
本発明においては、後述するレジスト層除去工程における除去が容易となる観点から、組成物に含まれる重合体成分が、水不溶性、且つ、アルカリ水可溶性の高分子(以下、「アルカリ水可溶性高分子」とも略す。)、即ち、高分子中の主鎖もしくは側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物であることが好ましい。
アルカリ水可溶性高分子としては、酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、後述するレジスト層除去工程における除去が更に容易となる観点で好ましい。酸性基の具体例としては、
フェノール基(−Ar−OH)、
スルホンアミド基(−SO2NH−R)、
置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕、
カルボキシル基(−CO2H)、
スルホ基(−SO3H)、
ホスホン基(−OPO32)が挙げられる。
なお、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
上記酸性基を有するアルカリ水可溶性高分子の中でも、フェノール基、カルボキシル基スルホンアミド基および活性イミド基を有するアルカリ水可溶性高分子が好ましく、特に、フェノール基、カルボキシル基またはスルホンアミド基を有するアルカリ水可溶性高分子が、形成されるレジスト層の強度と、後述するレジスト層除去工程における除去性とのバランスの観点から最も好ましい。
酸性基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
フェノール基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類から製造されるノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ノボラック樹脂またはヒドロキシスチレンの共重合体が好ましい。ヒドロキシスチレンの共重合体の市販品としては、丸善化学工業株式会社製、マルカリンカーM H−2、マルカリンカーM S−4、マルカリンカーM S−2、マルカリンカーM S−1、日本曹達株式会社製、VP−8000、VP−15000などを挙げることができる。
スルホンアミド基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましい。
特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
活性イミド基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
カルボキシル基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、カルボキシル基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物を用いた重合体が挙げられる。
スルホ基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホ基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
ホスホン基を有するアルカリ水可溶性高分子としては、例えば、ホスホン基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
アルカリ水可溶性高分子を構成する、酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
共重合の方法としては、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
上記共重合体は、共重合させる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。
本発明では、化合物を共重合して共重合体を形成する場合、その化合物として、酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m11)に挙げる化合物を挙げることができる。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド。
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
重合体成分としては、単独重合体、共重合体に係わらず、重量平均分子量が1.0×103〜2.0×105で、数平均分子量が5.0×102〜1.0×105の範囲にあるものが好ましく。また、多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものが好ましい。
本発明の重合体成分として共重合体を用いる場合、その主鎖および/または側鎖を構成する、酸性基を有する化合物に由来する最小構成単位と、主鎖の一部および/または側鎖を構成する、酸性基を含まない他の最小構成単位と、の配合重量比は、50:50〜5:95の範囲にあるものが好ましく、40:60〜10:90の範囲にあるものがより好ましい。
上記重合体成分は、それぞれ1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、組成物に含まれる全固形分に対して、30〜99質量%の範囲で用いるのが好ましく、40〜95質量%の範囲で用いるのがより好ましいが、更には50〜90質量%の範囲で用いることが特に好ましい。
<界面活性剤>
上記組成物は、上述した粒子の分散性の観点から、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記界面活性剤を含有する場合の含有量は、組成物の全質量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。
<溶媒>
上記組成物は、レジスト層を形成する際の作業性の観点から、溶媒を添加することができる。
溶媒としては、具体的には、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト層形成工程で印刷される際の組成物の粘度は、印刷法に応じて適宜設定すればよく、例えば、30〜100mPa・sが好ましい。
ここで、レジスト層の組成物として、赤外線等で露光することで溶液に対する溶解性が大きく変化する材料を用いることが好ましい。
このような材料を用いてレジスト層18を形成してエッチング処理を行った後、レジスト層18を露光して、溶液に対する溶解性を変化させることで、エッチング処理時にはレジスト層18は溶解せずエッチング処理に対するレジストとして機能し、レジスト層除去工程で露光して溶液で溶解することでレジスト層18を容易に除去することができる。
<エッチング工程>
レジスト層形成工程で金属基板12の一方の主面にレジストパターン18を形成した後に、エッチング工程を行う。
図3に示すように、エッチング工程は、複数の開口部20が形成されたレジスト層18が積層された金属基板12にエッチング処理を行って、開口部20の位置の金属基板12を溶解することで、金属基板12を厚み方向に貫通させて貫通孔14を形成する工程である。従って、貫通孔14は開口部20の位置に形成される。
これにより、複数の貫通孔14を有する孔あき金属基板10が作製される。
前述のとおり、集電体である孔あき金属基板と活物質との密着性および塗布性の向上のため、孔あき金属基板の貫通孔の開口径を小さくすることが行われている。このような微細な貫通孔が形成された孔あき金属基板を、フォトレジストにより孔開きレジスト膜を形成して、エッチング処理を行って作製する場合には、レジスト塗布、乾燥、画像形成(フイルム露光、レーザー描画等)、非画像部除去、洗浄工程と、孔開きレジスト膜を形成するための工程が多く複雑になるという問題があった。
これに対して、本発明の孔あき金属基板の製造方法は、レジスト層形成工程において、印刷法により金属基板上にレジストパターンを形成した後、エッチング工程で金属基板に貫通孔を形成する。そのため、工程が複雑になることなく、簡便に微細な貫通孔を有する金属基板を作製することができる。
また、パンチング加工(打ち抜き加工)により貫通孔を形成する方法は、工程は簡便であるが、打ち抜きの際に、縁部にバリが発生してしまうため、集電体として使用した場合に、短絡等の原因となってしまうという問題があった。
これに対して、本発明の孔あき金属基板の製造方法は、エッチングにより凹部を貫通させるためバリが発生することがない。
エッチング工程において行うエッチング処理としては、酸あるいはアルカリの化学溶液を用いる化学エッチング、ならびに、電解エッチング等を用いることができる。
エッチング工程で形成される貫通孔14の数密度は、10〜50000個/cm2が好ましく、100〜20000個/cm2がより好ましい。
貫通孔14の数密度は、高精度形状測定器で、2mm□内にある貫通孔の数を測定して求める。
また、貫通孔14の開口部の形状は、レジスト層18の開口部20の形状と同様に、円形状、楕円形状、正方形状、矩形状、三角形状、および、多角形状等の種々の形状とすることができる。
また、貫通孔14の開口径は、5μm〜300μmが好ましく、10μm〜100μmがより好ましい。
なお、貫通孔の開口径は、高分解能走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope(SEM))を用いてアルミニウム板の表面を真上から貫通孔の大きさに合わせて倍率100〜10000倍で撮影し、得られたSEM写真において、周囲が環状に連なっている貫通孔を少なくとも20個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、これらの平均値を開口径として算出する。
なお、倍率は、貫通孔を20個以上抽出できるSEM写真が得られるように上述した範囲の倍率を適宜選択することができる。また、開口径は、貫通孔部分の端部間の距離の最大値を測定した。すなわち、貫通孔の開口部の形状は略円形状に限定はされないので、開口部の形状が非円形状の場合には、貫通孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。従って、例えば、2以上の貫通孔が一体化したような形状の貫通孔の場合にも、これを1つの貫通孔とみなし、貫通孔部分の端部間の距離の最大値を開口径とする。
また、貫通孔による平均開口率の測定方法は以下のとおりである。まず、金属基板の一方の面側に平行光光学ユニットを設置し、平行光を透過させて、金属基板の他方の面から、光学顕微鏡を用いて金属基板の表面を倍率100倍で撮影し、写真を取得する。得られた写真の10cm×10cmの範囲における100mm×75mmの視野(5箇所)について、貫通孔の開口面積の合計と視野の面積(幾何学的面積)とから、比率(開口面積/幾何学的面積)から算出し、各視野(5箇所)における平均値を平均開口率として算出する。
〔化学エッチング〕
ここで、化学エッチングによりエッチングを行う場合は、金属基板12の形成材料に応じて、レジスト層18を溶解せず、金属基板12を溶解させる溶液(エッチャント)を用いてエッチングを行えばよい。
溶液(エッチャント)の、酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、過酸化水素、酢酸、などが挙げられる。また、アルカリの例としては、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。また、塩化鉄(III)、塩化銅(II)などの無機塩も用いることができる。また、これらは1種類でも、2種類以上混合して使用してもよい。
化学エッチング処理は、金属基板12を上述した溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき法は、金属基板12を上述した溶液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、1〜120秒であるのが好ましく、1〜100秒であるのがより好ましく、3〜60秒であるのが更に好ましい。
〔電解エッチング〕
電解エッチングによりエッチングを行う場合は、電解浴としては、酸、アルカリ又はそれらの塩を含む水溶液あるいは有機溶剤を含む水性溶液が用いられ、これらの中でも、特に、塩酸、硝酸又はそれらの塩を含む電解液が好ましい。
電解エッチング処理に使用される電解液は塩酸、又は硝酸の水溶液であり、濃度は0.01〜3重量%の範囲で使用することが好ましく、0.05〜2.5重量%であればさらに好ましい。
また、この電解液には必要に応じて硝酸塩、塩化物、モノアミン類、ジアミン類、アルデヒド類、リン酸、クロム酸、ホウ酸、シュウ酸アンモニウム塩等の腐蝕抑制材(又は安定化剤)、砂目の均一化剤などを加えることができる。また、電解液中には、適当量(1〜10g/リットル)のアルミニウムイオンを含んでいてもよい。
電解エッチング処理は、通常10〜60℃の電解液の温度で行われる。電源は直流でも交流でも可能である。交流電流を用いる場合には、正負の極性が交互に交換されたものであれば、矩形波、台形波、正弦波いずれのものも用いることができ、通常の商用交流の単相及び三相交流電流を用いることができる。また電流密度は、5〜100A/dm2で、10〜300秒間処理することが望ましい。
<レジスト層除去工程>
ここで、本発明の孔あき金属基板の製造方法においては、エッチング工程の後に、レジストパターン18を除去するレジスト層除去工程を有していてもよい。
レジスト層除去工程は、レジスト層18の形成材料を溶解し金属基板12を溶解しない溶液を用いてレジスト層18を溶解して除去する。
ここで、レジスト層18の形成材料として、アルカリ水可溶性の樹脂材料を用いる場合には、レジスト層18を除去する溶液としてアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。
〔アルカリ性水溶液〕
アルカリ性水溶液としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類;などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記アルカリ性水溶液に、アルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
〔処理方法〕
レジスト層を除去する処理は、例えば、エッチング工程後のレジスト層を有する金属基板を上述したアルカリ性水溶液に接触させることにより行う。
接触させる方法は特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
浸せき処理の時間は、3秒〜10分であることが好ましく、5秒〜5分であることがより好ましい。
また、浸漬させる際のアルカリ性水溶液は、20〜60℃であることが好ましく、30〜50℃であることがより好ましい。
<樹脂層形成工程>
ここで、本発明の孔あき金属基板の製造方法においては、エッチング工程より前に、金属基板の他方の主面、すなわち、レジストパターンが形成される面とは反対側の主面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程を有していてもよい。樹脂層は、エッチング工程におけるエッチング処理で溶解されない層である。図5に示すように、樹脂層22は開口部を有さないベタのレジスト層と言える。
樹脂層形成工程は、レジスト層形成工程の前であってもよく後であってもよい。
また、樹脂層形成工程における樹脂層22の形成方法としては、塗布等の公知の形成方法が適宜利用可能である。
金属基板12のレジストパターン18とは反対側の面に樹脂層22を形成することで、エッチング工程の際に、金属基板12は樹脂層22側からは溶解されず、レジストパターン18が積層された側から溶解される。そのため、エッチング量をより好適に調整することができ、貫通孔の開口径をより好適に調整することができる。
樹脂層22の形成材料(組成物)は、レジスト層18の組成物と同様の組成物が利用可能である。
また、樹脂層22の組成物はレジスト層18の組成物と異なっていてもよいが、同じ組成物を用いるのが好ましい。同じ組成物を用いることで、レジスト層18を除去する際に同時に樹脂層22を除去することができる。
[防食処理]
本発明の製造方法は、防食処理を施す工程を有していることが好ましい。
また、防食処理を施すタイミングは特に限定されず、例えば、レジスト層形成工程で用いる金属基板に対して施す処理であってもよく、レジスト層除去工程においてアルカリ性水溶液に対して後述するトリアゾール類などを添加する処理であってもよく、レジスト層除去工程後に施す処理であってもよい。
防食処理としては、例えば、少なくともトリアゾール類を溶媒に溶解したpH5〜8.5の溶液に金属基板を浸漬させ、有機誘電体皮膜を形成する処理が挙げられる。
トリアゾール類としては、例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)、トリルトリアゾール(TTA)などが好適に挙げられる。
また、トリアゾール類とともに、各種の有機防錆材、チアゾール類、イミダゾール類、メルカプタン類、トルエタノールアミンなども使用することができる。
防食処理に用いる溶媒としては、水または有機溶媒(特にアルコール類)を適宜用いることができるが、形成される有機誘電体皮膜の均一性と量産時における厚み制御が行いやすく、また簡便であり、更には環境への影響などのことを考えると、脱イオン水を主体とする水であることが好ましい。
トリアゾール類の溶解濃度は、形成する有機誘電体皮膜の厚みや処理可能時間との関係で適宜に決められるが、通常、0.005〜1重量%程度であればよい。
また、溶液の温度は室温であればよいが、必要に応じては加温して使用してもよい。
溶液への金属基板の浸漬時間は、トリアゾール類の溶解濃度や形成する有機誘電体皮膜の厚みとの関係で適宜に決められるが、通常、0.5〜30秒程度であればよい。
防食処理の他の具体例としては、三酸化クロム,クロム酸塩,重クロム酸塩の群から選ばれる少なくとも1種を水に溶解して成る水溶液に金属基板を浸漬することにより、クロムの水和酸化物を主体とする無機誘電体皮膜を形成する方法が挙げられる。
ここで、クロム酸塩としては例えばクロム酸カリウムやクロム酸ナトリウムを好適とし、また重クロム酸塩としては例えば重クロム酸カリウムや重クロム酸ナトリウムを好適とする。そして、その溶解濃度は、通常、0.1〜10質量%に設定され、また液温は室温〜60℃程度でよい。水溶液のpH値は、酸性領域からアルカリ性領域まで格別限定されるものではないが、通常、1〜12に設定される。
また、金属基板の浸漬時間は、形成する無機誘電体皮膜の厚みなどにより適宜に選定される。
本発明においては、上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
<ロール・ツー・ロールによる処理>
本発明の孔あき金属基板の製造方法においては、カットシート状の金属基板を用いて、いわゆる枚葉式で各工程の処理を施すものであってもよいし、長尺な金属基板を、所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ各工程の処理を施す、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、「RtoR」ともいう)による処理を行うものであってもよい。
本発明において、RtoRとは、長尺な金属基板を巻回してなる基板ロールから金属基板を送り出して、長手方向に搬送しつつ、搬送経路上に配置された各処理装置によって、レジスト層形成工程およびエッチング工程等の処理を連続的に順次、行い、処理済の金属基板(すなわち、孔あき金属基板)を、再度、ロール状に巻回する製造方法である。
前述のとおり、本発明の製造方法は、レジスト層形成工程で印刷法によりレジスト層を形成した後、エッチング工程で金属基板に貫通孔を形成する。そのため、工程を複雑にすることなく連続的に行うことができるため、各工程をRtoRで容易に行うことができる。
本発明の製造方法をRtoRで行うことで生産性をより向上できる。
[集電体]
上述のとおり、本発明の製造方法で作製される孔あき金属基板は、蓄電デバイス用集電体(以下、「集電体」ともいう)として利用可能である。
集電体は、孔あき金属基板が厚み方向に複数の貫通孔を有していることにより、例えば、リチウムイオンキャパシタに用いた場合においては短時間でのリチウムのプレドープが可能となり、リチウムをより均一に分散させることが可能となる。また、活物質層や活性炭との密着性が良好となり、サイクル特性や出力特性、塗布適性等の生産性に優れる蓄電デバイスを作製することができる。
特に、本発明の製造方法で作製される孔あき金属基板を用いる集電体は、活物質層との密着性がより良好となり、サイクル特性が向上した蓄電デバイスを作製することができる。
<活物質層>
活物質層としては特に限定はなく、従来の蓄電デバイスにおいて用いられる公知の活物質層が利用可能である。
具体的には、孔あき金属基板を正極の集電体として用いる場合の、活物質および活物質層に含有していてもよい導電材、結着剤、溶媒等については、特開2012−216513号公報の[0077]〜[0088]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
また、孔あき金属基板を負極の集電体として用いる場合の、活物質については、特開2012−216513号公報の[0089]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
[蓄電デバイス]
本発明の製造方法で作製される孔あき金属基板を集電体として利用する電極は、蓄電デバイスの正極あるいは負極として用いることができる。
ここで、蓄電デバイス(特に、二次電池)の具体的な構成や適用される用途については、特開2012−216513号公報の[0090]〜[0123]段落に記載された材料や用途を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
[正極]
本発明の製造方法で作製される孔あき金属基板を集電体として用いた正極は、孔あき金属基板を正極に用いた正極集電体と、正極集電体の表面に形成される正極活物質を含む層(正極活物質層)とを有する正極である。
ここで、上記正極活物質や、上記正極活物質層に含有していてもよい導電材、結着剤、溶媒等については、特開2012−216513号公報の[0077]〜[0088]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
[負極]
本発明の製造方法で作製される孔あき金属基板を集電体として用いた負極は、孔あき金属基板を負極に用いた負極集電体と、負極集電体の表面に形成される負極活物質を含む層とを有する負極である。
ここで、上記負極活物質については、特開2012−216513号公報の[0089]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
[その他の用途]
本発明の製造方法で作製された孔あき金属箔は、蓄電デバイス用の集電体の他、耐熱フィルター、耐熱微粒子フィルター、防音材、オイル回収フィルター、静電フィルター、抗菌フィルター、液体改質フィルター、水電解フィルター、排ガス浄化フィルター、食品濾過フィルター、海洋生物濾過フィルター、ダストフィルター、DNA(deoxyribonucleic acid)フィルター、微粉分級フィルター、固液分離フィルター、脱臭フィルター、光触媒担持体、水素発生触媒担体、酵素電極、貴金属吸収材の担体、抗菌用担体、吸着剤、吸収剤、光学フィルター、遠赤外線カットフィルター、防音・吸音材、電磁波シールド、直接型燃料電池のガス拡散層・セパレータ、微生物保管容器酸素供給口用ネット、建築用材料、照明用途、金属調装飾用途等にも用いることができる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
<孔あき金属基板の作製>
本発明の孔あき金属基板の製造方法を実施し、孔あき金属基板を作製した。
金属基板として平均厚みが15μm、大きさ200mm×200mmの銅箔(JIS C1100−H 4160、電解銅箔)を準備し、銅箔に以下に示す工程を施し、孔あき金属基板を作製した。
(a−1)レジスト層形成工程
下記組成に調製したレジスト層形成用組成物1を希釈剤(メチルエチルケトン)にて希釈し、離合社製ザーンカップ#3を用いて粘度を70mPa・sに調整した。希釈した組成物1を、フレキソ印刷法にて銅箔上の片面に所定のパターンで印刷し乾燥させた。印刷スピードは40m/min、乾燥温度は90℃とした。また、乾燥後のレジスト層の厚みは約1μmとした。また、開口部の形状は円形状とし、開口径は20μmとし、数密度は100個/mm2とした。
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レジスト層形成用組成物1
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・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量4100)
1.2g
・メガファックF−780−F(界面活性剤、DIC(株)製)0.1g
・メチルエチルケトン 1.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.0g
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(b)樹脂層形成工程
レジスト層形成用組成物1と同様の組成物を銅箔の他方の面にも塗布、乾燥して樹脂層を形成した。樹脂層の厚みは1μmとした。
(c−1)エッチング工程
次いで、50℃に保温したエッチャント〔塩化鉄(III)濃度:30質量%、塩酸濃度:3.65質量%〕に、レジストパターンが積層された銅箔を5分間浸漬し、その後、スプレーによる水洗を行い、乾燥させることにより、貫通孔を形成した。
(d)レジスト層除去工程
次いで、貫通孔形成後の銅箔を、液温50℃のアルカリ性水溶液(水酸化ナトリウム濃度:0.4質量%)中に120秒間浸漬させることにより、レジスト層および樹脂層を溶解し、除去した。
その後、スプレーによる水洗を行い、乾燥させることにより、貫通孔を有する孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の貫通孔の数密度を、高精度形状測定器で、2mm□内にある貫通孔の数を測定して求めたところ、100個/mm2であった。
貫通孔の開口径は、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム板の表面を真上から貫通孔の開口部が画面内に入るように倍率を100倍〜10000倍の範囲で適宜調整して撮影し、得られたSEM写真において、周囲が環状に連なっている貫通孔を少なくとも20個抽出し、その直径を読み取り、これらの平均値を開口径として算出して求めた。貫通孔の開口径は22μmであった。
[実施例2]
レジスト層および樹脂層となる組成物を以下の組成物2に変更した以外は実施例1と同様にして孔あき金属基板を作製した。
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レジスト層形成用組成物2
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・メタクリル酸とメタクリル酸エチルとメタクリル酸ブチルとの
共重合体(26mol%/37mol%/37mol%,重量平均分子量50000) 1.2g
・メガファックF−780−F(界面活性剤、DIC(株)製)0.1g
・メチルエチルケトン 1.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.0g
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作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は20μmであった。
[実施例3]
レジスト層および樹脂層となる組成物を以下の組成物3に変更した以外は実施例1と同様にして孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は23μmであった。
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レジスト層形成用組成物3
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・p−ヒドロキシスチレンの共重合体(重量平均分子量:30000) 1.2g
・メガファックF−780−F(界面活性剤、DIC(株)製)0.1g
・メチルエチルケトン 1.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.0g
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[実施例4]
金属基板として銅箔に代えて、アルミニウム箔(JIS H 4160、合金番号:1085−H)を用い、(c−1)エッチング工程に代えて下記(c−2)エッチング工程とした以外は、実施例1と同様の方法で、貫通孔を有する孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は24μmであった。
(c−2)エッチング工程
次いで、10℃に冷却したエッチャント〔塩化銅(II)濃度:0.65質量%、塩酸濃度:9質量%〕に、レジストパターンが積層されたアルミニウム箔を1分間浸漬し、その後、スプレーによる水洗を行い、乾燥させることにより、貫通孔を形成した。
[実施例5]
金属基板として銅箔に代えて、ステンレス箔(SUS304)を用いた以外は、実施例1と同様にして、貫通孔を有する孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は25μmであった。
[実施例6]
(a−1)レジスト層形成工程に代えて、下記(a−2)レジスト層形成工程を行った以外は実施例1と同様にして、貫通孔を有する孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は22μmであった。
(a−2)レジスト層形成工程
上記組成に調製したレジスト層形成用組成物1を希釈剤(メチルエチルケトン)にて希釈し、離合社製ザーンカップ#3を用いて粘度を50mPa・sに調整した。希釈した組成物1を、グラビア印刷法にて銅箔の片面に所定のパターンで印刷し乾燥させた。印刷スピードは40m/min、乾燥温度は90℃とした。また、乾燥後のレジスト層の厚みは約1μmとした。
[実施例7]
金属基板として銅箔に代えて、アルミニウム箔(JIS H 4160、合金番号:1085−H)を用い、(c−1)エッチング工程に代えて上記(c−2)エッチング工程を行った以外は、実施例6と同様の方法で、貫通孔を有する孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は23μmであった。
[実施例8]
金属基板として銅箔に代えて、ステンレス箔(SUS304)を用いた以外は、実施例6と同様にして、貫通孔を有する孔あき金属基板を作製した。
作製した孔あき金属基板の数密度、開口径を測定したところ、数密度は100個/mm2、開口径は23μmであった。
以上、実施例1〜8から、本発明の製造方法は、複数の微細な貫通孔を有する金属基板を簡便に作製できることがわかる。
以上より本発明の効果は明らかである。
10 孔あき金属基板
12 金属基板
14 貫通孔
18 レジスト層
20 開口部
22 樹脂層

Claims (6)

  1. 金属基板の一方の主面に印刷法により複数の開口部を有するレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
    前記レジスト層をエッチングマスクとして前記金属基板をエッチングして、前記金属基板の、前記開口部の位置に貫通孔を形成するエッチング工程とを有する孔あき金属基板の製造方法。
  2. 前記エッチング工程の後に、前記レジスト層を前記金属基板から除去するレジスト層除去工程を有する請求項1に記載の孔あき金属基板の製造方法。
  3. 前記エッチング工程の前に、前記金属基板の、前記レジスト層が形成される面とは反対側の主面に樹脂層を形成する樹脂層形成工程を有する請求項1または2に記載の孔あき金属基板の製造方法。
  4. 前記エッチング工程の後に、前記レジスト層および前記樹脂層を前記金属基板から除去する除去工程を有する請求項3に記載の孔あき金属基板の製造方法。
  5. 前記レジスト層形成工程で前記レジスト層を形成する際の印刷法が、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、平版印刷法、凸版印刷法および、スクリーン印刷法から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載の孔あき金属基板の製造方法。
  6. 長尺な前記金属基板を基板ロールから送り出し、前記金属基板の長手方向に搬送しつつ、レジスト層形成工程、および、前記エッチング工程を行うものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の孔あき金属基板の製造方法。
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