JP2018053170A - 捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、無機アルカリ化合物と、有機アルカリ化合物と、顔料、とを含有する、捺染インクジェットインク組成物。さらに、樹脂分散剤、HLB値が10以上である、アセチレングリコール系界面活性剤を含有する、捺染インクジェットインク組成物。
【選択図】なし
Description
架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、
無機アルカリ化合物と、
有機アルカリ化合物と、
を含有する。
顔料をさらに含有してもよい。
顔料分散用の樹脂分散剤をさらに含有してもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤をさらに含有してもよい。
前記アセチレングリコール系界面活性剤のHLB値は、10以上であってもよい。
前記捺染インクジェットインク組成物のpHが、11.5以下であってもよい。
前記ウレタン系樹脂分散体は、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を
有してもよい。
前記ウレタン系樹脂は、破断点伸度が170%以上である、捺染インクジェットインク組成物。
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物(以下、捺染インク組成物、インク組成物等ともいう)は、後述する本実施形態の前処理液を布帛に付着させ、その後に当該捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて使用される。まず、捺染インク組成物について説明する。本実施形態の捺染インク組成物は、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、有機アルカリ化合物と、無機アルカリ化合物と、を含有する。
本実施形態の捺染インク組成物は、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体(以下、架橋性基を有するウレタン系樹脂、樹脂分散体ともいう)を含有する。なお、樹脂分散体としては、エマルション状態および溶液状態としたものをいずれも用いることができるが、インクの粘度上昇を抑えるという点から、エマルション状態としたものを使用することが好ましい。架橋性基(イソシアネート基)は、化学的に保護されており(キャッピングあるいはブロッキング)、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、結合(例えばウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等)を形成することになる。
は、例えば、尿素樹脂は、ウレタン系樹脂に包含されることとなる。ウレタン系樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物とを反応して得られるウレタン結合を有する化合物であることが好ましい。
)、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
水性基を有するブロック剤でブロック化したイソシアネート基を有するウレタン系樹脂エマルションとして市販されているものを用いることができる。
タケラックWS−6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリエーテル由来骨格を有する、ポリエーテル系ポリウレタン)、
WS−5100(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリカーボネート由来骨格を有する、ポリカーボネート系ポリウレタン)、
エラストロンE−37、H−3(以上は主鎖がポリエステル由来骨格を有するポリエステル系ポリウレタン(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
エラストロンH−38、BAP、C−52、F−29、W−11P(以上は主鎖がポリエーテル由来骨格を有するポリエーテル系ポリウレタン)(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
NeoRez R−9660、R−9637、R−940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
アデカボンタイター HUX−380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルション)、などを例示することができる。
本実施形態の捺染インク組成物は、無機アルカリ化合物(無機塩基化合物)を含む。無機アルカリ化合物は、捺染インク組成物のpHを高める性質を有している。また、無機アルカリ化合物は、架橋性基を有するウレタン系樹脂の分散安定性を高める機能、及び/又は、架橋性基を有するウレタン系樹脂の再分散性を向上させる機能を少なくとも有している。
されることにより水中での分散安定性を高めている。そのため、アルカリ化合物を有する材料を追添することによって、水中での分散安定性をより高める効果が期待できる。
本実施形態の捺染インク組成物は、有機アルカリ化合物を含む。有機アルカリ化合物は、捺染インク組成物のpHを高める性質を有している。また、有機アルカリ化合物は、上述の無機アルカリ化合物と組み合わされることにより、捺染インク組成物のpHを高めすぎないように作用する。無機アルカリ化合物単独で架橋性基を有するウレタン系樹脂の再分散性を向上させる機能を担わせると、pHが高くなりすぎる場合がある。しかし、有機アルカリ化合物及び無機アルカリ化合物との組み合わせにより、pHの過度の上昇を抑えることができ、捺染インク組成物による、例えば容器や装置等の部材の腐食等を抑制することができる。
ついても現時点では定かでない。しかし、このような作用・機能は、少なくとも架橋性基を有するウレタン系樹脂の官能基あるいは保護基、有機アルカリ化合物及び無機アルカリ化合物の間の相互作用に起因していると考えられる。
1.4.1.顔料
本実施形態の捺染インク組成物は、色材として顔料、染料等を含有してもよい。本実施形態の捺染インク組成物は、上述の架橋性基を有するウレタン系樹脂により、物理的に色材を記録媒体に定着できるため、用いる色材としては、顔料がより好ましい。係る顔料が布帛に付着されることにより、布帛(記録媒体)が捺染され、捺染物(印捺物)が形成される。
ン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫化亜鉛、及び酸化ジルコニウム等の金属酸化物及び硫化物、並びにファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、さらには黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社製)、Color
Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ社製)等が挙げられる。
.I.ピグメントグリーン 7、10、及びC.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
これらのうち、樹脂分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等及びこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を有するモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。また、共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、捺染インク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、捺染インク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、捺染インク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。界面活性剤は、捺染インク組成物の界面張力を低下させ、布帛への浸透性を高めることができる。ただし、カチオン系界面活性剤については、捺染インク組成物の成分を凝集させる可能性があるため、微量とするか、他の種の界面活性剤を用いることがより好ましい。
ル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を用いてもよい。
HLB値=(無極性値(I)/有極性値(O))×10・・・(1)
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
本実施形態の捺染インク組成物は、水溶性有機溶媒を含んでもよい。水溶性有機溶媒を含むことにより、捺染インク組成物のインクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。
イン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリン及びグルタミン酸ベタイン等が挙げられ、好ましくは、トリメチルグリシン等が例示できる。
(防腐剤)
本実施形態の捺染インク組成物は、防腐剤を含有してもよい。防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。これにより、例えば、捺染インク組成物を、長期的にプリンターを使用せず保守する際のメンテナンス液として使用しやすくなる。防腐剤の好ましい例としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。
本実施形態の捺染インク組成物は、キレート剤を含んでもよい。キレート剤は、イオンを捕獲する性質を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
本実施形態の捺染インク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、捺染インク組成物のpHの変動を抑制することができる。pH調整剤としては、公知の緩衝剤(バッファー)を用いることができる。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、樹脂エマルション(架橋性基を有しないウレタン系樹脂等)を含有してもよい。
マイクロジェルE−1002、E−5002(日本ペイント社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルション)、
ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルション)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルション)、
ポリゾールAM−710、AM−920、AM−2300、AP−4735、AT−860、PSASE−4210E(アクリル系樹脂エマルション)、
ポリゾールAP−7020(スチレン・アクリル樹脂エマルション)、
ポリゾールSH−502(酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ポリゾールAD−13、AD−2、AD−10、AD−96、AD−17、AD−70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ポリゾールPSASE−6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)(昭和電工社製商品名)、
ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルション、日本ゼオン社製)、
サイビノールSK−200(商品名、アクリル系樹脂エマルション、サイデン化学社製)、
AE−120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルション)、
AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルション)、
セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルション)、
ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルション)、
ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルション)(日信化学工業社製商品名)、
エリーテルKA−5071S、KT−8803、KT−9204、KT−8701、KT−8904、KT−0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルション)、ハイテックSN−2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルション)、
タケラックW−6020、W−635、W−6061、W−605、W−635、W−6110(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、
ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630A、352J、352D、PDX−7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、
NKバインダーR−5HN(新中村化学工業株式会社製)、等が挙げられる。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、さらに、保湿剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤などの、種々の添加剤を適宜含有することができる。
本実施形態に係る捺染インク組成物は、インクジェット法によって布帛に付与される。そのため、捺染インク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。
本実施形態に係る捺染インク組成物によれば、架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有することにより、形成される画像の摩擦堅牢性が良好である。また、係る捺染インク組成物は、有機アルカリ化合物及び無機アルカリ化合物を含有することにより、保存や乾燥によって架橋性基を有するウレタン系樹脂の分散が不良となった場合でも、容易に再分散を行うことができ、再分散性にも優れる。
本実施形態のインクジェット捺染方法は、例えば、凝集剤を含有する前処理液により布帛を処理する工程、処理された前記布帛に対して、上述の捺染インク組成物を付着させる工程、及び前記布帛を加熱する工程を有する。以下、本実施形態に係る捺染方法について、布帛、捺染方法、前処理液の順に説明する。
本実施形態に係るインクジェット捺染方法は、布帛(記録媒体)を用いて行われる。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。本実施形態で使用する布帛は、これらのうち綿、麻等のセルロースを含む繊維で形成されたものがより好ましい。このような布帛を用いることで、顔料のよりすぐれた定着性を得ることができる。
を十分に適用することができ、本実施形態の捺染方法により良好な捺染を行うことができる。さらに、本実施形態の捺染方法は、前処理液を用いることから、目付けの異なる複数種の布帛に適用することができ、良好な捺染を行うことができる。
次に、本実施形態に係る捺染方法について工程毎に説明する。
本実施形態において、前処理液(後述)を布帛に付着させる工程は、任意に行われる。前処理液(後述)を布帛に付着させる工程は、布帛の少なくとも一部の領域に、前処理液を付与する工程である。本工程では、前処理液の付着量が100mg/inch2以上3000mg/inch2以下となるように付与することが好ましく、130mg/inch2以上1500mg/inch2以下となるように付与することがより好ましく、193mg/inch2以上500mg/inch2以下となるように付与することがさらに好ましい。前処理液の付着量を0.02g/cm2以上とすることで、布帛に対して前処理液を均一に塗布しやすくなるので、画像の色ムラを抑制できる。また、前処理液の付着量を0.5g/cm2以下とすることで、画像の滲みを抑制できる。また、前処理液の付着量は、布帛の面積当たりの質量に対して70質量%以上100質量%以下であることも好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
捺染インク組成物を布帛にインクジェット法により付着させる工程は、布帛の少なくとも一部に、捺染インク組成物をインクジェット法により付与する工程である。捺染インク組成物を布帛にインクジェット法により付着させる工程は、上記前処理液を付着させる工程によって前処理液を付与した領域の少なくとも一部に、捺染インク組成物をインクジェ
ット法により付与してもよい。これにより、捺染インク組成物に含まれる顔料等の成分と凝集剤とが反応又は相互作用することで、顔料等の成分が凝集するので、より発色性に優れた画像が得られる。
本実施形態に係る捺染方法は、布帛に付与したインク組成物(画像)を加熱する加熱工程を含んでもよい。
熱工程における加熱温度とは、布帛に形成された画像表面の温度のことをいい、例えば非接触温度計(商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)を用いて測定することができる。また、加熱時間としては、これに限定されるものではないが、例えば30秒以上20分以下とすることができる。
本実施形態のインクジェット捺染方法(記録方法)によれば、使用する捺染インクジェットインク組成物に含まれる架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体の作用により、堅牢性の良好な画像を形成できる。また、係る捺染インクジェットインク組成物を用いることにより、有機アルカリ化合物及び無機アルカリ化合物を含有することから、保存や乾燥によって架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体の分散が不良となった場合でも、容易に再分散を行うことができ、捺染インクジェットインク組成物の再分散性にも優れる。また、前処理液を用いた場合には、捺染インク組成物の成分を布帛の表面付近に留め、例えば十分な発色性を有する画像(捺染物)を得ることができるとともに、架橋性基を有するウレタン系樹脂が加熱されることにより架橋することにより、捺染インク組成物の成分を布帛に対して十分に定着することができ、さらに良好な堅牢性を有する画像(捺染物)を得ることができる。
本実施形態に係る前処理液は、上述の捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて行う上述のインクジェット捺染方法に用いられる。より具体的には、前処理液を布帛に付着させてもよく、その場合、その後に捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて、布帛の捺染を行うために用いられる。
本実施形態の前処理液は、少なくとも凝集剤を含有する。凝集剤は、捺染インク組成物の成分を凝集又は増粘させる。すなわち、凝集剤は、捺染インク組成物に含まれる顔料及び樹脂等の成分の少なくとも一部と相互作用することで、顔料を凝集させる機能を有する。これにより、少なくとも捺染インク組成物により記録される画像の発色性を向上させることができる。
ト、及び尿素高分子物質などの有機顔料が挙げられる。
ルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
3.2.1.水
本実施形態の前処理液は、水を含んでもよい。水としては、上述の捺染インク組成物において説明したと同様である。水の含有量は、前処理液の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
本実施形態の前処理液は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤は、記録媒体に対する前処理液の濡れ性を向上させることができる場合がある。水溶性有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類及びアルコキシアルキルアミド類の少なくとも一種を例示できる。また、水溶性有機溶剤としては、これら以外の含窒素化合物、糖類、アミン類等であってもよい。また、前処理液は、上述した捺染インク組成物に用い得る水溶性有機溶剤を含有してもよい。
前処理液は、樹脂エマルションを含有してもよい。樹脂エマルションを含有することで、捺染インク組成物に含まれる自己分散型顔料の布帛に対する定着(固着)性をさらに高めることができる場合がある。また、樹脂エマルションは、前処理液及び/又は捺染インク組成物が布帛に浸透するのを抑制する目止め剤として機能させてもよい。
本実施形態の前処理液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、上述の捺染インク組成物において説明したと同様である。前処理液に界面活性剤を配合する場合には、前処理液全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下配合することが好ましい。
本実施形態の前処理液は、必要に応じて、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの、種々の添加剤を適宜添加することができる。
本実施形態に係る前処理液は、布帛への浸透性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、30mN/m以上、好ましくは35mN/m以上、より好ましくは38mN/m以上、さらに好ましくは40mN/m以上であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
4.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1及び表2の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、各捺染インク組成物を得た。表1
及び表2中の数値は、質量%を示し、純水(イオン交換水)は各捺染インク組成物の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。なお表中、樹脂の含有量は、樹脂固形分量(質量%)を指す。
表1、表2に実施例、比較例で使用した捺染インク組成物に用いた樹脂を記載した。なお、タケラックWS−6021は三井化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有するポリエーテル骨格を有するウレタン系樹脂、タケラックWS−5100は三井化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有するポリカーボネート骨格を有するウレタン系樹脂、エラストロンE−37は、第一工業製薬株式会社製の自己架橋性架橋基を有するポリエステル骨格を有するウレタン系樹脂、タケラックW6110は、三井化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有しないウレタン系樹脂(ポリカーボネート系)である。また、各樹脂の破断点伸度及び100%モジュラスの値は、以下の通りである。
タケラックWS−5100:破断点伸度180%、モジュラス28MPa
エラストロンE−37:破断点伸度500%、モジュラス2MPa
タケラックW6110:破断点伸度550%
である。
4.4.その他の成分
また、表1、表2中、KF−6011は、信越シリコーン社製のシロキサン系界面活性剤であり、サーフィノール465は、AirProductsandChemicals.Inc.社製のアセチレングリコール系界面活性剤である。KF−6011のHLB値は、14.5であり、サーフィノール465のHLB値は、13である。
樹脂(メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレート=25/50/15/10の質量比で共重合したもの。重量平均分子量12,000)40質量部を、水酸化カリウム7質量部、水23質量部、及びトリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル30質量部を混合した液に投入し、80℃で撹拌しながら加熱して樹脂水溶液を調製した。
色材としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);20部をスルホラン;250部中に混合し、アイガーモーターミルM250型(商品名、アイガージャパン社製)で、ビーズ充填率:70%及び回転数:5,000rpmの条件下で1時間整粒分散した。得られた顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレーターに移し、30mmHg以下に減圧しながら、120℃に加熱して、系内に含まれる水分をできるだけ留去した後、150℃に温度制御した。次いで、三酸化硫黄25部を加えて6時間反応させ、反応終了後、過剰なスルホランで数回洗浄した後に水中に注ぎ濾過することで、スルフィン酸基(SO2−)あるいはスルホン酸基(SO3−)等の硫黄含有分散性付与基を
顔料表面に直接導入した、自己分散型カーボンブラック顔料のスラリーを得た。
4.5.1.印捺物の作成
布帛(プリントスター へビーウェイト(白)5.6oz)に、セイコーエプソン株式会社製プリンター(SC−F200)を用いて、各捺染インク組成物により、解像度1440dpi×1440dpiとし、塗布量200mg/inch2で印刷を行った。該印刷後に、再度コンベアオーブン(熱風乾燥法)にて、165℃・5分間の熱処理を行い、印捺物の定着を行った。
各例の印捺物に対してISO−105 X12に規定の方法に従い、I型(クロックメーター)試験機を用いて摩擦に対する染色堅牢度試験を実施した。乾摩擦はISO−105 X12に規定される乾燥試験、湿摩擦はISO−105 X12に規定される湿潤試験に則って試験し、汚染グレースケールを用いて評価した。評価基準は以下の通りとし、結果を表1、表2に記載した。
◎:摩擦堅牢性が4級以上である
○:摩擦堅牢性が3級以上4級未満である
△:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である
×:摩擦堅牢性が2級未満である。
◎:摩擦堅牢性が3級以上である
○:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である
△:摩擦堅牢性が1級以上2級未満である
×:摩擦堅牢性が1級未満である。
各例の印捺物のOD値を、測色器(商品名「Gretag Macbeth Spectrolino」、X−RITE社製)により測定し、得られたOD値に基づいて、下記
評価基準により発色性を評価し、結果を表1、表2に記載した。
○:OD値が1.40以上1.45未満である
△:OD値が1.30以上1.45未満である
×:OD値が1.30未満である。
各例の印捺物の印捺部分を手のひらで直接触れ、その際の感触を以下の基準に従って判定した。判定は3人で行い、最も支持の多い意見を判定の結果とした。判定が1人ずつに分かれた場合は、それらの中間となる意見を判定結果とし、表1、表2に記載した。
○:印捺部の硬さ、又は手触りが元の布帛に比べやや変化するが、実用として問題ない
△:印捺部の硬さ、又は手触りが元の布帛に比べ悪化するが、許容範囲である
×:印捺部が硬くなり、使用感が悪く実用できない。
各例の捺染インク組成物5gを30mLのガラス瓶に入れ、蓋をせずに50℃環境下で3時間放置した。放置後のインクに純水を10g加え、30分放置後状態変化を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて再分散性を評価した。評価結果を表1、表2に示す。
○:インクが再分散し一様な状態になる
△:インクは一部再分散するが、瓶の壁面に固形物が残る
×:固形物が壁面にかなり残り、ほぼ再分散しない。
××:固形分が壁面にほとんど残り、再分散が見られない。
架橋性基を有するウレタン系樹脂、無機アルカリ化合物及び有機アルカリ化合物の全てを含む各実施例の捺染インク組成物は、いずれも摩擦堅牢性、及び、再分散性に優れた結果となった。
浸透が抑制されたためと考えられる。
Claims (9)
- 架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、
無機アルカリ化合物と、
有機アルカリ化合物と、
を含有する、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項1において、
顔料をさらに含有する、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項2において、
樹脂分散剤をさらに含有する、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
アセチレングリコール系界面活性剤をさらに含有する、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項4において、
前記アセチレングリコール系界面活性剤のHLB値は、10以上である、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記捺染インク組成物のpHが、11.5以下である、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記ウレタン系樹脂は、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を有する、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
前記ウレタン系樹脂は、破断点伸度が170%以上である、捺染インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録する、記録方法。
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