JP2016169322A - インクジェット記録装置及び水系インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の液体流路とを有する吐出ヘッドにおいて、凍結時における当該吐出ヘッドの故障を防止することができ、保存安定性に優れ、しかも発色性、耐擦性に優れた画像を形成できる水系インク組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る水系インク組成物は、振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の液体流路と、を有する吐出ヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるための水系インク組成物であって、酸化処理された顔料と、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂と、を含み、前記酸化処理された顔料が、その表面に、カルボキシル基と、前記カルボキシル基の0.8〜1.1倍のモル比でありかつ顔料の質量当たりのモル数で500μmol/g以上のラクトン基と、を有することを特徴とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、インクジェット記録装置及びそれに用いる水系インク組成物に関する。
液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置は、インクを吐出するノズル孔を有する吐出ヘッドと、ノズル孔からインクを吐出させる駆動手段(例えば、圧電振動子や発熱素子)と、データに応じて駆動手段を制御する制御手段とを備えている。ノズル孔へのインクの供給は、例えばインクカートリッジとインクカートリッジからのインクを受けるインク供給室と、インク供給室からノズル孔に到るインク供給流路とによって行われる。インクカートリッジは、通常、交換可能となっている。
吐出ヘッドの構造の一例としては、ノズル孔が設けられたノズルプレートと、該ノズルプレートと平行して配置され、圧電素子によって振動される振動板と、を備え、ノズルプレートと振動板との間に形成された圧力室の体積を振動板の振動によって変化させることによってインクを吐出させるタイプのものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このタイプの吐出ヘッドは、ノズル孔の上流の空間体積が小さいため、ノズル孔からインク滴を吐出しない時間が長くなると、ノズル孔近傍のインクが乾燥により増粘し、例えばインク滴の吐出方向が安定しないといった問題や、インク滴が吐出されないなどの吐出不良が発生するという問題があった。
そこで、小型化及び省スペース化を図るとともに、ノズル孔の上流の空間体積を従来よりも大きくした新たな吐出ヘッドが開発された(例えば、特許文献2参照)。この吐出ヘッドは、振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の流路とを備えることによって、ノズル孔の上流の空間体積を稼いでいる。この吐出ヘッドは、従来のものよりもノズルの上流の空間体積が大きいことにより、ノズル孔近傍のインクが乾燥により増粘しても拡散しやすく、インクの増粘を緩和することができる。
特開平08−020107号公報 特開2014−184606号公報
しかしながら、インクに酸化処理された自己分散型顔料が含まれていると、上記の新たな吐出ヘッドを備えるインクジェット記録装置が低温環境に置かれた際に、ノズルプレート側からインクが凍結し始め、インクの液体流路がノズルプレート側から徐々に塞がれることによってインクの体積膨張力の逃げ道がなくなり、振動板や圧電素子が破損してしまうという問題が生じることが明らかとなった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の液体流路とを有する吐出ヘッドにおいて、凍結時における当該吐出ヘッドの故障を防止することができ、保存安定性に優れ、しかも発色性、耐擦性に優れた画像を形成できる水系インク組成物を提供するものである。
また、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、高密度で小型な吐出ヘッドを備え、低温環境に置かれた場合であっても、吐出ヘッドの破損等が生じ難いインクジェット記録装置を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る水系インク組成物の一態様は、
振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の液体流路と、を有する吐出ヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるための水系インク組成物であって、
酸化処理された顔料と、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂と、を含み、
前記酸化処理された顔料が、その表面に、カルボキシル基と、前記カルボキシル基の0.8〜1.1倍のモル比でありかつ顔料の質量当たりのモル数で500μmol/g以上のラクトン基と、を有することを特徴とする。
適用例1の水系インク組成物によれば、インクに酸化処理された自己分散型顔料が含まれている場合に発生する吐出ヘッドのクラック等の故障を防止することができる。すなわち、インクに酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂が含まれることで、インクの凝固点は変わらないが、凝固物の性質を変化させることができる。インクの凍結が始まると、凝固物の結晶構造の間に自己乳化型樹脂が入り込むことで、より柔らかい凝固物が形成されるのである。これにより、凍結時における上記の吐出ヘッドのクラックを防止することができる。また、酸化処理された自己分散型顔料を含有するため、保存安定性に優れ、しかも発色性に優れた記録物を形成することができる。さらに、自己乳化型樹脂を含有するため、記録物の耐擦性を向上させることもできる。
[適用例2]
適用例1の水系インク組成物において、
前記酸化処理された顔料の表面における、当該顔料の質量当たりのラクトン基のモル数が700μmol/g以上であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2の水系インク組成物において、
前記酸化処理された顔料と前記自己乳化型樹脂との含有比率(酸化処理された顔料/自己乳化型樹脂)が、0.5以上6.0以下であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の水系インク組成物において、
前記自己乳化型樹脂がウレタン樹脂であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の水系インク組成物において、
前記顔料がカーボンブラックであることができる。
[適用例6]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
水系インク組成物と、前記水系インク組成物を吐出する吐出ヘッドと、を備えたインクジェット記録装置であって、
前記吐出ヘッドは、振動板を有する平面方向に延びる流路と、当該流路に繋がる垂直方向の複数の流路と、を備え、
前記水系インク組成物は、酸化処理された顔料と、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂と、を含み、
前記酸化処理された顔料は、その表面に、カルボキシル基と、前記カルボキシル基の0.8〜1.1倍のモル比でありかつ顔料の質量当たりのモル数で500μmol/g以上のラクトン基と、を有することを特徴とする。
適用例6のインクジェット記録装置によれば、使用するインクに酸化処理された自己分散型顔料が含まれている場合に発生する吐出ヘッドのクラック等の故障を防止することができる。すなわち、使用するインクに酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂が含まれることで、インクの凝固点は変わらないが、凝固物の性質を変化させることができる。インクの凍結が始まると、凝固物の結晶構造の間に自己乳化型樹脂が入り込むことで、より柔らかい凝固物が形成されるのである。これにより、凍結時における上記の吐出ヘッドのクラックを防止することができる。
[適用例7]
適用例6のインクジェット記録装置において、
前記酸化処理された顔料の表面における、当該顔料の質量当たりのラクトン基のモル数が700μmol/g以上であることができる。
[適用例8]
適用例6または適用例7のインクジェット記録装置において、
前記酸化処理された顔料と前記自己乳化型樹脂との含有比率(酸化処理された顔料/自己乳化型樹脂)が、0.5以上6.0以下であることができる。
[適用例9]
適用例6ないし適用例8のいずれか一例のインクジェット記録装置において、
前記自己乳化型樹脂がウレタン樹脂であることができる。
[適用例10]
適用例6ないし適用例9のいずれか一例のインクジェット記録装置において、
前記顔料がカーボンブラックであることができる。
実施形態に係る吐出ヘッドを模式的に示す分解斜視図。 実施形態に係る吐出ヘッドを模式的に示す平面図。 実施形態に係る吐出ヘッドを模式的に示す断面図。 実施形態に係る吐出ヘッドの要部を模式的に示す拡大断面図。 実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示す概略図。 比較例に係る吐出ヘッド(ヘッドB)の要部を模式的に示す拡大断面図。
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット記録装置
1.1.装置構成
まず、本実施形態に係るインクジェット記録装置の装置構成について説明する。図1は、本実施形態に係る吐出ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。図2は、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドを模式的に示す平面図である。図3は、図2のA−A′線断面図であり、図4は、図3の要部を拡大した断面図である。
図示するように、本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドIIは、ヘッド本体11、ヘッド本体11の一方面側に固定されたケース部材40、ヘッド本体11の他方面側に固定されたカバーヘッド130等の複数の部材を備える。本実施形態では、ヘッド本体11は、流路部材である流路形成基板10、連通板15及びスペーサー25と、流路部材の一方面側に取り付けられたノズルプレート20と、保護基板30と、コンプライアンス基板45と、を具備する。なお、本実施形態の流路部材は、流路形成基板10と連通板15とスペーサー25とで構成されている。また、本実施形態の保護部材は、コンプライアンス基板45と保護板であるカバーヘッド130とで構成されている。
ヘッド本体11を構成する流路形成基板10は、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrOあるいはAlを代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、MgO、LaAlOのような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。この流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力発生室12が第1の方向Xに沿って形成された圧力発生室12の列が複数列設された列設方向を、以降、第2の方向Yと称する。
また、流路形成基板10には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部側に、当該圧力発生室12よりも開口面積が狭く、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
また、流路形成基板10の一方面側には、連通板15と、スペーサー25と、ノズルプレート20とが順次積層されている。すなわち、流路形成基板10の一方面に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたスペーサー25と、スペーサー25の連通板15とは反対面側に設けられたノズル開口21を有するノズルプレート20と、を具備する。
連通板15には、圧力発生室12とノズル開口21とを連通する第1ノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このように連通板15を設けることによってノズルプレート20のノズル開口21と圧力発生室12とを離せるため、圧力発生室12の中にあるインクは、ノズル開口21付近のインクで生じるインク中の水分の蒸発による増粘の影響を受け難くなる。また、ノズルプレート20は圧力発生室12とノズル開口21とを連通する第1ノズル連通路16の開口を覆うだけで良いので、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、コストの削減を図ることができる。なお、本実施形態では、ノズルプレート20のノズル開口21が開口されて、インク滴が吐出される面を液体噴射面20aと称する。
また、連通板15には、マニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15を厚さ方向(連通板15と流路形成基板10との積層方向)に貫通して設けられている
また、第2マニホールド部18は、連通板15を厚さ方向に貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、各圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。
このような連通板15としては、ステンレスやNiなどの金属、またはジルコニウムなどのセラミック等を用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料が好ましい。すなわち、連通板15として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱や冷却されることで、流路形成基板10と連通板15との線膨張係数の違いにより反りが生じてしまう。本実施形態では、連通板15として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることで、熱による反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
スペーサー25は、ノズルプレート20と略同じ面積(第1の方向X及び第2の方向Yにおける面積)を有する。このため、スペーサー25は、ノズルプレート20が取り付けられる位置のみに設けられている。すなわち、スペーサー25は、連通板15の保護部材であるコンプライアンス基板45が取り付けられる位置には設けられていない。このため、詳しくは後述するが、流路部材のノズルプレート20が取り付けられる位置、すなわち、ノズルプレート20が取り付けられるスペーサー25の表面の位置と、流路部材の保護部材(コンプライアンス基板45)が取り付けられる位置、すなわち、連通板15に直接取り付けられる位置とは、インク滴の吐出方向、つまり、連通板15と流路形成基板10との積層方向である第3の方向Zにおいて異なる位置となっている。
このようなスペーサー25には、第1ノズル連通路16に連通してノズル開口21と連通する第2ノズル連通路26が設けられている。すなわち、圧力発生室12は、連通板15の第1ノズル連通路16とスペーサー25の第2ノズル連通路26と、を介してノズル開口21に連通している。
なお、スペーサー25としては、例えば、ステンレスやNiなどの金属、またはジルコニウム、シリコンなどのセラミック、を用いることができる。本実施形態では、スペーサー25として、連通板15と同じシリコン単結晶基板を用いることで、加熱や冷却されることによる反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
また、スペーサー25は、保護部材であるコンプライアンス基板45と保護板であるカバーヘッド130の積層した厚さ(第3の方向Zの合計の厚さ)と、ノズルプレート20の厚さと、に基づいて、液体噴射面20aとカバーヘッド130の表面(液体噴射面20a側の面)との段差hが所望の値となるように選択すればよい。
ノズルプレート20には、各圧力発生室12と第1ノズル連通路16及び第2ノズル連通路26を介して連通するノズル開口21が形成されている。すなわち、ノズル開口21は、同じ種類の液体(インク)を噴射するものが第1の方向Xに並設され、この第1の方向Xに並設されたノズル開口21の列が第2の方向Yに2列形成されている。
このようなノズルプレート20としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等を用いることができる。なお、ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いることで、ノズルプレート20と連通板15との線膨張係数を同等として、加熱や冷却されることによる反りや熱によるク
ラック、剥離等の発生を抑制することができる。
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けるようにした。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(ノズルプレート20が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって画成されている。
また、流路形成基板10の圧電アクチュエーター300側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護するための空間である保持部31を有する。
また、このような構成のヘッド本体11には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド100をヘッド本体11と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、ケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40とヘッド本体11とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40とヘッド本体11とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。
なお、ケース部材40の材料としては、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。ちなみに、ケース部材40として、樹脂材料を成形することにより、低コストで量産することができる。
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の液体噴射面20a側の開口を封止している。
すなわち、本実施形態の保護部材を構成するコンプライアンス基板45は、連通板15に直接固定されている。したがって、ノズルプレート20が取り付けられるスペーサー25の表面の位置と、保護部材であるコンプライアンス基板45が取り付けられる連通板15のノズルプレート20側の表面との位置は、第3の方向Zにおいて異なる位置となっている。
ちなみに、流路部材において、ノズルプレート20が取り付けられる位置と、保護部材(本実施形態では、保護部材を構成するコンプライアンス基板45)が取り付けられる位置と、が第3の方向Zで同じ位置となっているとは、例えば、連通板15の同じ平面上に取り付けられることを言う。この連通板15の平面とは、もちろん当該連通板15の表面を平面状に加工した際の加工誤差による高さばらつきなども含むものである。つまり、本実施形態では、平面上に加工された連通板15の同じ表面にノズルプレート20と、保護部材とを固定するのではなく、連通板15のノズルプレート20が固定される位置にスペーサー25を設けることで、ノズルプレート20がスペーサー25の表面に取り付けられ
ることになり、ノズルプレート20と保護部材との第3の方向Zにおける取り付け位置が異なる位置となるようにしている。
このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、封止膜46と、固定基板47と、を具備する。封止膜46は、可撓性を有する薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やステンレス鋼(SUS)等により形成された厚さが20μm以下の薄膜)からなり、固定基板47は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質の材料で形成される。この固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
なお、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入路44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板121が挿通される接続口43が設けられている。
また、ヘッド本体11の液体噴射面20a側には、本実施形態の保護板であるカバーヘッド130が設けられている。カバーヘッド130は、コンプライアンス基板45の連通板15とは反対面側に接合されており、コンプライアンス部49の流路(マニホールド100)とは反対側の空間を封止する。なお、カバーヘッド130には、ノズル開口21を露出する露出開口部131が設けられている。本実施形態では、露出開口部131は、ノズルプレート20を露出する大きさ、つまり、コンプライアンス基板45と同じ開口を有する。
また、カバーヘッド130は、本実施形態では、ヘッド本体11の側面(液体噴射面20aとは交差する面)を覆うように、液体噴射面20a側から端部が屈曲して設けられている。
このような構成のインクジェット式記録ヘッドIIでは、インクを噴射する際に、インクカートリッジ2から導入路44を介してインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動回路120からの信号に従い、圧力発生室12に対応する各圧電アクチュエーター300に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター300と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力発生室12内の圧力が高まり所定のノズル開口21からインク滴が噴射される。なお、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドIIでは、接続口43からノズル開口21までを液体流路と称する。すなわち、液体流路は、接続口43、マニホールド100、供給連通路19、圧力発生室12、第1ノズル連通路16、第2ノズル連通路26及びノズル開口21で構成されている。
このような構成のインクジェット式記録ヘッドIIは、振動板50を有する平面方向(Y方向)に延びる液体流路(圧力発生室12)と、当該液体流路に繋がる垂直方向(Z方向)の複数の液体流路(供給連通路19、第2ノズル連通路26、第1ノズル連通路16)と、を有していることを特徴としている。インクジェット式記録ヘッドIIは、従来のインクジェット式記録ヘッドに比べて液体流路の距離が長く、液体流路の体積が大きくなっているため、ノズル近傍のインクの乾燥を低減できる。これにより、インクを吐出していないノズルでのインクの増粘を緩和することができるので、インクの吐出安定性が良好となる。
その一方で、自己分散顔料を含有するインクを充填したインクジェット式記録ヘッドIIを低温環境下に置いておくと、液体流路中のインクが+Z方向側から徐々に凍結し始め
、液体流路内のインクが+Z方向から−Z方向へと徐々に塞がれることによってインクの逃げ道がなくなり、その結果振動板や圧電素子が破損してしまうという問題が発生することがわかった。かかる問題は、自己分散顔料を含有するインクを充填した場合に発生するが、詳細なメカニズムは明らかとなっていない。このような問題に対して、本願発明は、上記のような構造を有するインクジェット式記録ヘッドIIに自己分散顔料を含有するインクを充填した場合に、自己分散顔料を含有するインクの組成を工夫することによってインク凍結時に発生する振動板や圧電素子のクラックを回避することに成功したものである。
この実施形態のインクジェット式記録ヘッドIIは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図5は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図5に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数のインクジェット式記録ヘッドIIを有するインクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニット1とも言う)は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、このヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1は、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッドII(ヘッドユニット1)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドIIが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、いわゆるライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した例では、インクジェット式記録装置Iは、液体貯留手段であるインクカートリッジ2がキャリッジ3に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、例えば、インクタンク等の液体貯留手段を装置本体4に固定して、貯留手段とインクジェット式記録ヘッドIIとをチューブ等の供給管を介して接続してもよい。また、液体貯留手段がインクジェット式記録装置に搭載されていなくてもよい。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
1.2.水系インク組成物
本実施形態で使用される水系インク組成物は、上記のインクジェット記録装置に用いるための水系インク組成物である。この水系インク組成物は、酸化処理された顔料と、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂と、を少なくとも含む。以下、本実施形態で
使用される水系インク組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
1.2.1.自己分散型顔料
本実施形態で使用される水系インク組成物は、酸化処理された顔料を含有する。顔料は、この酸化処理により、その表面にラクトン基やカルボキシル基が導入されたものである。この酸化処理された顔料は、ラクトン基やカルボキシル基等の親水性官能基が水側に向けて配向されるため、分散剤を配合せずとも顔料同士の静電反発力により水系インク組成物中で安定に分散されることができる。本明細書では、この酸化処理された顔料を「自己分散型顔料」とも称する。なお、本明細書における「分散」とは、自己分散型顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態をいい、分散している状態のもののみならず、溶解している状態のものも含むものとする。
自己分散型顔料が配合された水系インク組成物は、自己分散型顔料以外の顔料及び分散剤の配合された通常の水系インク組成物と比べて、分散安定性が高く、また水系インク組成物の粘度が適度なものとなるので、顔料をより多く含有させることが可能となり、特に普通紙に対して発色性に優れた文字や図形等の画像を形成することができる。さらに、自己分散型顔料が配合された水系インク組成物は、印字品質の向上に有効な水溶性有機溶剤(後述する)を配合しても流動性の低下を生じることがないので、該水溶性有機溶剤を併用することにより印字品質も高められる。
自己分散型顔料は表面に、カルボキシル基と、前記カルボキシル基の0.8〜1.1倍、好ましくは0.85〜1.05倍、より好ましくは0.9〜1.0倍のモル比でありかつ顔料の質量当たりのモル数で500μmol/g以上、好ましくは600μmol/g以上、より好ましくは700μmol/g以上、特に好ましくは700〜900μmol/gのラクトン基と、を有している。
自己分散型顔料の表面のカルボキシル基は、同じくモル数で700μmol/g以上、好ましくは700〜900μmol/gである。
親水性官能基であるカルボキシル基やラクトン基を前記範囲内で有している自己分散型顔料は、親水性官能基が水側に向けて配向されているため、顔料同士間に大きな静電的な斥力が働いており、またラクトン基が比較的多いことと相俟って、凝集し難いものとなっている。さらに、自己分散型顔料は、親水性官能基を有するため水との相互作用が強く、カルボキシル基やラクトン基が適度な比で顔料表面に存するため、水に分散させ易く、沈降し難くて安定なものとなっている。
そのため、自己分散型顔料は、分散剤がなくても水に分散させることができる。自己分散型顔料に、水を添加したりその後濃縮したりすることで、所望の顔料濃度の分散液を調製することができる。この分散液には、必要に応じて、適切な任意の水溶性有機溶剤や防腐剤のような添加物が、加えられていてもよい。
自己分散型顔料の分散液は、温度変化による安定性に優れている。70℃で5週間経過時でも、平均粒子径変化率が15%以下であることが好ましく、10%以下であると一層好ましい。上記変化率は平均粒径が増大する変化が著しい場合、特に問題である。
また、自己分散型顔料の分散液は、粘度変化が起こらず、安定性に優れている。70℃で5週間経過時でも、粘度変化率が10%以下であることが好ましい。上記変化率は粘度が増大する変化が著しい場合、特に問題である。
自己分散型顔料を形成し得る顔料としては、通常のインクジェット記録用インク組成物
におけるものと同様のものが用いられ、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、ベンガラ、朱、カドミウム赤、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンクロメート等の有機顔料又は無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能なら、何れも使用できる。これらのうち、特にカーボンブラックを用いることが好ましい。
カーボンブラックとしては、ファーネス法で得られたカーボンブラック、チャンネル法で得られたカーボンブラック等であってもよい。ファーネス法は、約2000℃までの高温に耐え得るレンガで内張りされた特殊な燃焼炉に燃料(ガスや油)と空気とを導入し、完全燃焼させ1400℃以上の高温雰囲気を形成した上で液状の原料油を連続的に噴霧し熱分解させ、炉内後段で生成したカーボンブラックを含む高温ガスに水を噴霧し反応を停止させた後、バッグフィルターでカーボンブラックと排ガスとに分離するという原末の製造方法である。このような製造方法に従い、カーボンブラック原末の表面にも、少量のラクトン基やカルボキシル基が導入される。この現象は製造方法とともに、カーボンブラックのストラクチャーの形状や表面構造に深く関わり、またこれがカーボンブラック原末を酸化処理して得られる自己分散型顔料に対して重要な因子となる。
顔料の酸化処理の方法は、例えば、空気接触による酸化法;窒素酸化物、オゾンとの反応による気相酸化法;硝酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム、亜塩素酸、過塩素酸、次亜ハロゲン酸塩、過酸化水素、臭素水溶液、オゾン水溶液等の酸化剤を用いる液相酸化法等であってもよい。プラズマ処理等により表面を改質してもよい。
特に好ましい酸化処理の方法は、次亜ハロゲン酸やその塩を用いて顔料を湿式酸化する方法である。次亜ハロゲン酸塩は、具体例には次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウムが挙げられ、反応性の点から次亜塩素酸ナトリウムがより一層好ましい。
カーボンブラックを酸化処理する場合、例えばファーネス法により調製されたカーボンブラック原末を水に懸濁させた液に、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩の水溶液を加え、酸化処理を行い自己分散型顔料を得て、直径0.6〜3mmのミル媒体とともに分散機で攪拌し、100〜500メッシュの金網で濾別し、濾液を限外濾過膜により脱塩する工程を少なくとも有し、これにより分散液を得る方法が好ましい。
次亜ハロゲン酸やその塩好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を酸化剤として用い酸化処理することにより、カーボンブラック原末の表面は酸化されて、ラクトン基、カルボキシル基等が導入される。次亜ハロゲン酸やその塩の使用量は、カーボンブラック原末のBET比表面積の大きさに応じ、適宜調整される。カーボンブラック原末を、その表面積あたり0.6×10−4〜2.5×10−4mol/m、好ましくは0.6×10−4〜1.5×10−4mol/mの塩素量の次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩で酸化処理することによって安定性の良い自己分散型カーボンブラックとなる。
BET比表面積が小さくなるほど次亜ハロゲン酸やその塩である次亜ハロゲン酸類の量を少なくし、BET比表面積が大きくなるほど次亜ハロゲン酸類の量を多くするように、調整することが好ましい。BET比表面積が小さくなるほど次亜ハロゲン酸類と反応する活性点が少なくなり、比表面積が大きくなるほど次亜ハロゲン酸類と反応する活性点が多くなるからである。活性点と反応する量以上の次亜ハロゲン酸を加えても反応に支障はないが、無駄な次亜ハロゲン酸を使用することになり、余計な脱塩操作が必要になる。活性点と反応する量以下の次亜ハロゲン酸量で反応を行なうと目標とするラクトン基量、カル
ボキシル基量に到達せず、沈降率が高くなる結果、長期保存安定性が低下してしまう。
カーボンブラック原末を水に懸濁させる際、酸化処理を適度に行うために、カーボンブラックを充分に水に混合して馴染ませることが重要である。負荷の高い分散機や高速攪拌機等を用いて分散させてもよい。予めカーボンブラックに水溶性溶剤を浸透させてもよい。また水−水溶性溶剤の混合系で分散処理をしてもよい。
カーボンブラックの酸化処理・分散または粉砕する工程において、分散機または粉砕機としてボールミル、アトライター、フーロジェットミキサー、インペラーミル、コロイダルミル、サンドミル(例えば、「スーパーミル」、「アジテーターミル」、「ダイノーミル」、「ビーズミル」の商品名の市販品)等を用いてもよい。その際、ミル媒体は、必ずしも用いなくてもよいが、用いた方が好ましい。ミル媒体は、直径0.6〜3mmのものが好ましく、具体的には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、磁性ビーズ、ステンレス製ビーズ等が挙げられる。この酸化しつつ分散する工程での条件は、10〜70℃で3〜10時間、回転数=500rpm以上であることが好ましい。酸化反応は、一般に反応温度が高いほど進行し易いが、温度が高過ぎると次亜ハロゲン酸塩が分解してしまうので、40〜60℃で行なうのが好ましい。
金網での濾過は、粗大粒子やミル媒体を取り除くために行なわれる。得られた濾液をpH調整してもよい。得られた濾液中の過剰な酸や副生した水溶性酸性基を塩基性物質で中和してもよい。このような塩基性物質としては、アルカリ金属の水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等;アンモニアやアンモニア水;アミン化合物が、挙げられる。アミン化合物は、例えば水溶性の揮発アミン、アルカノールアミン等が挙げられる。具体的には、炭素数1〜3のアルキル基で置換された揮発性アミン(例えばメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン);炭素数1〜3のアルカノール基で置換されたアルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン);炭素数1〜3のアルキル基または炭素数1〜3のアルカノール基で置換されたアルキルアルカノールアミンが挙げられる。
上記で得られた液の脱塩は、液の電導度が最大1.5mS/cmとなるまで、例えば限外濾過膜により行われる。この範囲外で脱塩を止めると、NaCl等の不純物がインキ中に多量に含まれることとなってしまう結果、インキの保存安定性を悪くしてしまう。またより安定なインキを調整するため、前記脱塩の方法は、各種の脱塩方法を組合せたものであってもよい。上記の方法で脱塩された顔料分散液を得ることができる。
このような脱塩された分散液により得られた自己分散型カーボンブラックは、その電導度が0.7mS/cm以下となり、保存安定性の良い水系インク組成物を調製するために用いることができる。脱塩後、遠心分離機やフィルターを用いて、1μm以上の粗大粒子をさらに取り除いて、分散液を得てもよい。
自己分散型顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が1〜300nmの範囲であることが好ましく、10〜200nmの範囲であることがより好ましい。本明細書において「平均粒径」とは、特に断らない限り、動的光散乱法を測定原理とする粒径分布測定装置によって測定された体積平均粒径(Mv)を意味する。このような粒径分布測定装置としては、例えば株式会社堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−500」が挙げられる。
本実施形態で用いられる水系インク組成物中における自己分散型顔料の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜30.0質量%の
範囲、より好ましくは0.5〜15.0質量%の範囲である。含有量が前記範囲にあると、分散安定性に優れ、水系インク組成物の粘度が適度なものとなり、特に普通紙に対して発色性に優れた文字や図形等の画像を形成することができる。
1.2.2.自己乳化型樹脂
本実施形態に係る水系インク組成物は、酸価が10〜90mg/KOH、好ましくは30〜80mg/KOHの自己乳化型樹脂を含有する。なお、酸価とは、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。このような自己乳化型樹脂を含有することで、水系インク組成物の凝固点は変わらないが、凝固物の性質を変化させることができる。すなわち、水系インク組成物の凍結が始まると、凝固物の結晶構造の間に自己乳化型樹脂が入り込むことで、より柔らかい凝固物が形成されるのである。これにより、凍結時における上記の吐出ヘッドのクラックを防止することができる。また、自己乳化型樹脂を含有することで、画像や文字などの記録物の耐擦性を向上させることもできる。酸価が90mg/KOHを超える自己乳化型樹脂を添加すると、界面活性作用が強くなりすぎるため、普通紙の内部に浸透することによって発色性が低下する傾向がある。加えて、膜が脆弱になるため耐擦過性が低下する。一方、酸価が10mg/KOH未満の自己乳化型樹脂を添加すると、水に対する親和性が低くなることにより形成される凝固物が硬いものとなり、凍結時の吐出ヘッドの故障が発生する場合がある。また、水に対する親和性が低いため、インクの再分散性が低下し、目詰まり引き起こす傾向がある。
自己乳化型樹脂を構成する高分子材料としては、疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーとの共重合体や、疎水性基と親水性基を分子構造中に合わせ持ったモノマーからなる重合体が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリウレタン(ウレタン樹脂)、ポリアクリル酸(アクリル樹脂)、ポリエステル、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体等のアクリル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体等のスチレン−アクリル酸共重合体;スチレン−マレイン酸;スチレン−無水マレイン酸;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、凍結時における吐出ヘッドのクラックの抑制と記録物の耐擦性の向上との両立という点では、ポリウレタン(ウレタン樹脂)が特に好ましい。
ウレタン樹脂としては、特に制限はなく、イソシアネート化合物と水酸基を有する化合物とを縮合反応させて得られるウレタン樹脂を使用することができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)等が挙げられる。
水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを(共)重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。かかるジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。これらの中では、ポリエーテル系、ポリエステル系及びポリカーボネート系のうち1種以上が好ましい。
また、上記の他、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオール化合物も使用でき、その具体例としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。これらの中では、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。これらのジオール化合物は、2種以上を併用してもよい。
ウレタン樹脂の合成に際しては、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加してもよい。低分子量のポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルジオールの原料として使用される、グリコール、アルキレンオキシド低モル付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物が挙げられる。また、このようにして得られたウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸に由来する酸基を中和した後または中和しながら水延長またはジ(トリ)アミンで鎖延長することができる。鎖延長の際に使用されるポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
ウレタン樹脂としては、望ましくは、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系の水酸基を有する化合物を用いて得られるポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンが挙げられる。また、上記の化合物のうちカルボキシル基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオールを用いたり、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加したり、酸性基を導入したポリウレタン、中でもカルボキシル基を有するものが望ましい。さらに、後述する架橋処理により、これらカルボキシル基等の官能基を架橋させるのが、光沢向上、耐擦性向上等の点から望ましい。
ウレタン樹脂は、中和したものを使用することもできる。中和に使用する塩基としては、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。ウレタン樹脂は、重量平均分子量が2000以上20000以下であることが好ましく、3000以上10000以下であることがより好ましい。
本実施形態で用いられる水系インク組成物中における自己分散型樹脂の固形分含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1.0〜10.0質量%の範囲、より好ましくは2.0〜9.0質量%の範囲、特に好ましくは3.0〜7.0質量%の範囲である。含有量が前記範囲にあると、分散安定性に優れ、凍結時の吐出ヘッドのクラックを防止でき、特に記録された文字や図形等の画像の耐擦性を向上させることができる。
1.2.3.水溶性有機溶媒
本実施形態で用いられる水系インク組成物には、水溶性有機溶媒を添加してもよい。水
溶性有機溶剤を添加することにより、インクのノズル前面での乾燥を抑制し、吐出ヘッドの目詰まりを効果的に防止することができる。水溶性有機溶剤としては、例えば1価アルコール、多価アルコール類及びその誘導体等が挙げられる。
1価アルコールとしては、特に炭素数1〜4の1価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール等が挙げられる。
多価アルコール及びその誘導体としては、炭素数2〜6の2〜5価アルコール、およびそれらと炭素数1〜4の低級アルコールとの完全または部分エーテルを用いることができる。ここで多価アルコール誘導体とは、少なくとも1個のヒドロキシル基がエーテル化されたアルコール誘導体であり、エーテル化されたヒドロキシル基を含まない多価アルコールそれ自体を意味するものではない。
これらの多価アルコールおよびそれらの低級アルキルエーテルの具体例としては、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,3−オクタンジオール、1,2−ペンタンジオール等のジオール類、モノ、ジ若しくはトリエチレングリコール−モノ若しくはジ−アルキルエーテル、モノ、ジ若しくはトリプロピレングリコール−モノ若しくはジ−アルキルエーテル、グリセリンが挙げられ、好ましくは1,2−ヘキサンジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン等が挙げられる。
本実施形態で用いられる水系インク組成物中における水溶性有機溶剤の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは5.0〜30.0質量%、より好ましくは10.0〜25.0質量%である。
1.2.4.界面活性剤
本実施形態で用いられる水系インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。
ノニオン系界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのノニオン系界面活性剤は、水系インク組成物の表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れている。これにより、表面張力及びヘッドノズル面等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができる。
上記のアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、以下に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上を例示できる。また、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104
DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、メガファックF−479(DIC株式会社製)、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、オルフィンPD−501、オルフィンPD−502、オルフィンPD−570(いずれも、日信化学工業株式会社製)、BYK−347、BYK−348(いずれも、ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
さらに、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を用いてもよい。
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力が特に優れており、かつ、気泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。すなわち、気泡性が小さいため、例えば、水性インク組成物をインクジェット記録装置に適用する場合には、インク流路の段差部に気泡が固定されにくく望ましい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム系としてアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩およびアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系としてN−メチルビスヒドロキエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸系としてアルキルアミノ脂肪酸塩、ベタイン系としてアルキルカルボキシルベタイン、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシドなど
が挙げられる。両性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
本実施形態で用いられる水系インク組成物中における界面活性剤の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜2.0質量%、より好ましくは0.2〜1.0質量%である。
1.2.5.水
本実施形態で用いられる水系インク組成物は、水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。本実施形態に係る水系インク組成物中における水の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上95質量%以下、特に好ましくは60質量%以上90質量%以下である。ここで、水の含有量は、水を添加した量に限られず、他の添加剤等を加える場合には添加剤中の水分も含むものである。
なお、本明細書において「水系」インク組成物とは、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、水を30質量%以上含有するインク組成物のことをいう。
1.2.6.その他の成分
本実施形態で用いられる水系インク組成物は、上記の成分以外にも、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤等を含有してもよい。
1.2.7.含有比率
本実施形態で用いられる水系インク組成物は、前記自己分散型顔料(酸化処理された顔料)と前記自己乳化型樹脂との含有比率(自己分散型顔料/自己乳化型樹脂)が、好ましくは0.5以上6.0以下、より好ましくは0.8以上4.0以下、特に好ましくは1.0以上3.0以下である。自己分散型顔料と自己乳化型樹脂との含有比率が前記範囲内にあると、水系インク組成物の凍結によって生じる凝固物の結晶構造の間に自己乳化型樹脂が適量入り込むことによって、より柔らかい凝固物が形成される。これにより、凍結時における上記の吐出ヘッドのクラックを効果的に防止することができる。
1.2.8.物性
本実施形態で用いられる水系インク組成物は、上記のインクジェット記録装置に用いられることから、例えば組成や配合を調節することで、粘度(25℃における粘度)を好ましくは2mPa・s以上20mPa・s以下、より好ましくは3mPa・s以上15mPa・s以下とする。これにより、水系インク組成物の吐出安定性(吐出量の安定性、液滴の飛行特性等)、吐出応答性(応答速度、高周波対応性(周波数特性)等)等を優れたものとすることができる。なお、インクジェット用インクの粘度は、振動式粘度計を用いた、JIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
1.3.作用効果等
上述したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置の吐出ヘッドは、振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の液体流路とを有している。このような吐出ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて、酸性処理された自己分散型顔料を含むインクをカートリッジに充填すると、インクジェット記録装置が低温環境に置かれた際に、ノズルプレート側からインクが凍結し始め、インクの液体流路がノズルプレート側から徐々に塞がれることによってインクの体積膨張緑の逃げ道がなくなり、振動板や圧電素子が破損してしまうという問題が生じていた。
本実施形態に係るインクジェット記録装置によれば、凍結時における上記の吐出ヘッド
のクラックを防止することができる。このメカニズムは、以下のように推察される。酸性処理された自己分散型顔料を含むインクに、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂を添加することによって、水系インク組成物の凝固物の性質を変化させることができる。すなわち、水系インク組成物の凍結が始まると、凝固物の結晶構造の間に自己乳化型樹脂が入り込むことで、より柔らかい凝固物が形成されるのである。これにより、凍結時における上記の吐出ヘッドのクラックを防止することができると考えられる。
また、本実施形態に係る水系インク組成物によれば、上記のインクジェット記録装置における凍結時の吐出ヘッドのクラックを防止することができるだけでなく、自己分散型顔料及び自己乳化型樹脂を含有することにより、保存安定性に優れ、しかも発色性、耐擦性に優れた画像を形成することができる。
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
2.1.水系インク組成物の調製
2.1.1.自己分散型カーボンブラックの分散液の調製
<分散液A>
ファーネス法で調製したカーボンブラック原末500g(一次粒子径=18nm、BET比表面積=180m/g、DBP吸油量=186mL/100g)を、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)の水溶液5300gを50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に、水酸化カリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により、脱塩及び精製を行なった。電気透析装置を用いて液の電導度が1.0mS/cmになるまでさらに脱塩及び精製を行った。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Aを得た。
<分散液B>
ファーネス法で調製したカーボンブラック原末(一次粒子径=16nm、BET比表面積=215m/g、DBP吸油量=210mL/100g)500gを、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)の水溶液7000gを50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に、水酸化ナトリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により、脱塩及び精製を行なった。電気透析装置を用いて液の電導度が1.0mS/cmになるまでさらに脱塩及び精製を行った。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液に
イオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Bを得た。
<分散液C>
ファーネス法で調製したカーボンブラック原末500g(一次粒子径=17nm、BET比表面積=200m/g、DBP吸油量=185mL/100g)を、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度12%)の水溶液5400gを50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。滴下終了直後に直径3mmのガラスビーズを加え、50℃で30分間撹拌し、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ガラスビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に水酸化ナトリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により脱塩及び精製を行なった。電気透析装置を用いて液の電導度が1.0mS/cmになるまで脱塩及び精製を行った。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Cを得た。
<分散液D>
カーボンブラック原末(一次粒子径=20nm、BET比表面積=124m/g、DBP吸油量=165mL/100g)500gを、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)の水溶液2250gを50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に、水酸化ナトリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により、脱塩及び精製を行なった。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Dを得た。
<分散液E>
カーボンブラック原末(一次粒子径=40nm、BET比表面積=56m/g、DBP吸油量=122mL/100g)500gを、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)の水溶液1700gを50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に水酸化ナトリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により、脱塩及び精製を行なった。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックを濃度15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Eを得た。
<分散液F>
カーボンブラック原末(一次粒子径=19nm、BET比表面積=145m/g、DBP吸油量=125mL/100g)500gを、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)4500gの水溶液を50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュ金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に水酸化ナトリウム5%水溶液を加えpH=7.5に調整した後、限外濾過膜で電導度が1.5mS/cmになるまで脱塩及び精製を行なった。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過を行った。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Fを得た。
<分散液G>
カーボンブラック原末(一次粒子径=19nm、BET比表面積=153m/g、DBP吸油量=130mL/100g)500gを、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、50℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)5500gの水溶液を50〜60℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュ金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に水酸化ナトリウム5%水溶液を加えpH=7.5に調整した後、限外濾過膜で電導度が1.5mS/cmになるまで脱塩及び精製を行なった。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17重量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過を行った。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15重量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散型カーボンブラックの分散液Gを得た。
2.1.2.自己分散型カーボンブラックの物性評価
上記で得られた自己分散型カーボンブラックの分散液A〜Gについて、以下のようにして物性評価を行った。
<自己分散型カーボンブラックのラクトン基及びカルボキシル基存在量の測定>
上記で得られた自己分散型カーボンブラックを60℃で15時間乾燥し、そのカーボンブラックを用い、熱分解ガスクロマト装置(ヒューレットパカード社製、装置名「HP5890A」)を使用して、358℃でラクトン基、650℃でカルボキシル基が夫々分解して生じるCOを測定した。測定値からカーボンブラックのラクトン基及びカルボキシル基存在量を換算した。測定条件は下記の通りである。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー
・GPC:東ソー製HLC−8020
・カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)
・検出器:示差屈折率計(RI)
で単分散ポリスチレンを基準として、各重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
<自己分散型カーボンブラックの電導度の測定方法>
上記の方法で乾燥して得られた自己分散型カーボンブラック2.5gにイオン交換水47.5gを加え超音波を5分間照射した。その後5分間撹拌し電導度を測定した。電導度はCOND METER ES-51(HORIBA製)を使用した。
<自己分散型カーボンブラックの平均粒子径の測定>
0.065重量%の改質カーボンブラック濃度に調整した水溶液について、粒度分析計(日機装株式会社製、装置名「マイクロトラック9340−UPA」)を用い、平均粒子径を測定した。
その評価結果を表1に示す。
Figure 2016169322
2.1.3.水系インク組成物の調製
カーボンブラック分散液に、樹脂、グリセリン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、オルフィンE1010、及びトリエタノールアミンを表2〜表3に記載の組成となるように添加した。その後、常温で1時間混合攪拌し、さらに孔径5μmのメンブランフィルターでろ過した後、真空ポンプを用いて脱気処理して、実施例及び比較例で用いる各水系インク組成物を得た。なお、表2及び表3中の数値は水系インク組成物中の含有量(質量基準%)を表し、表2及び表3に示す各成分の略称は以下の通りである。
<顔料>
・樹脂分散顔料
顔料としてのカーボンブラック10質量部に対して、分散剤としてのスチレン−アクリル酸共重合体のアンモニウム塩(重量平均分子量10000、ポリマー成分15%)10質量部及びイオン交換水80質量部を加えて十分に混合した後、この混合物をサンドミル(株式会社安川製作所製)中でガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍量)とともに2時間分散した。分散後、ガラスビーズを取り除き、表3に記載の樹脂分散顔料を得た。
・分散液A〜G(上記で調製された分散液)
<樹脂>
・ウレタン樹脂[酸価6]:商品名「アクリットWBR−2000U」、大成ファインケミカル株式会社製、自己乳化型樹脂
・ウレタン樹脂[酸価11.6]:商品名「サンキュア2260」、株式会社GCIクレオス製、自己乳化型樹脂
・ウレタン樹脂[酸価31.5]:商品名「サンキュア1511」、株式会社GCIクレ
オス製、自己乳化型樹脂
・ウレタン樹脂[酸価75]:下記合成例1で得られた樹脂。
・ウレタン樹脂[酸価110]:下記合成例2で得られた樹脂。
・アクリル樹脂[酸価53]:商品名「ジョンクリル611」、BASF株式会社製、自己乳化型樹脂
・ポリエステル[酸価13]:商品名「KA−5971S」、ユニチカ社製株式会社製、自己乳化型樹脂
・水溶性アクリル樹脂:商品名「HPD−96」、BASF株式会社製
・ウレタン樹脂エマルジョン:商品名「エバファノールAP−6」、日華化学株式会社製・アクリル樹脂エマルジョン:商品名「モビニール790」、ニチゴーモビニール株式会社製
<界面活性剤>
・オルフィンE1010(商品名、日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
(合成例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、メチルエチルケトンを592g、ジメチロールプロピオン酸を147g、イソホロンジイソシアネートを444g仕込み、窒素ガス雰囲気下70℃で2時間反応させ、反応生成物Aを得た。この反応生成物Aのイソシアナト基定量値は6.53であり、反応指数は0.977であった。
次いで、温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、上記で得られた反応生成物Aを268gとMn400のポリプロピレングリコール(OH基当量281)を45g、エチレングリコールを7.2g、ジブチル錫ジラウレートを0.001g、メチルエチルケトン320g仕込み、窒素ガス雰囲気下80℃で16時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止し、酸価75、Mw30,000のカルボキシ基含有ポリウレタンを得た。得られた樹脂溶液は、仕込量のジメチロールプロピオン酸と同モル量の水酸化ナトリウムで中和し、水を加え転相乳化し、メチルエチルケトンを減圧脱溶剤により除去した後、水を加えて質量換算固形分20%の水溶液とした。水溶液は無色透明であり、粒径は50nm未満であった。
(合成例2)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた4つ口フラスコに、合成例1で得られた反応生成物Aを206.1gとMn400のポリプロピレングリコール(OH基当量281)を10g、ジブチル錫ジラウレートを0.001g、メチルエチルケトン320g仕込み、窒素ガス雰囲気下80℃で16時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止し、酸価110、Mw30,000のカルボキシ基含有ポリウレタンを得た。得られた樹脂溶液は、仕込量のジメチロールプロピオン酸と同モル量の水酸化ナトリウムで中和し、水を加え転相乳化し、メチルエチルケトンを減圧脱溶剤により除去した後、水を加えて質量換算固形分20%の水溶液とした。水溶液は無色透明であり、粒径は50nm未満であった。
(アクリルディスパージョン、ポリエステルディスパージョンの作製)
非水溶性樹脂(ジョンクリル611又はKA−5971S)3.00質量部をN−メチル−2−ピロリドン7.00質量部に溶解させて樹脂の有機溶剤溶液を得た。この有機溶剤溶液をジメチルエタノールアミン0.15質量部で中和し、ニューコール3240(日本乳化剤社製)0.30質量部とイオン交換水39.55質量部を混合し乳化分散させて水性樹脂分散液を得た。
(酸価の測定方法)
酸価の測定はJISのK0070に準拠した方法で測定した。なお本発明では、測定用
溶剤として以下に示す溶剤を用いた。上記樹脂水溶液を乾燥固化した樹脂10gを300mlの三角フラスコに秤量し、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒約50ml加えて樹脂を溶解する。次いで、フェノールフタレイン指示薬を用い、あらかじめ標定された0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、滴定に用いた水酸化カリウムエタノール溶液の量から、計算式(1)に従い酸価(mgKOH/g)を求める。
A(mgKOH/g)=分子/分母 ・・・(1)
分子:0.1(mol/L)×B/1000(L)×56.11(g/mol)×10
分母:S
式中、Aは樹脂の酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、Sは樹脂の質量(g)、56.11は、水酸化カリウムの式量である。
なお、樹脂によって、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒約50mlに溶解しないものは、エタノール50ml、あるいは、エタノール/純水=1:1の混合溶媒約50mlのどちらか溶解するほうを選択して、他は同じ操作にて滴定を行う。
(酸価の定量)
試料液の1.0gを、メチルエチルケトン10gで希釈し、トルエンとメタノールの混合溶媒(トルエン:メタノール=7:3)溶液40ml中に加えて溶解した後、0.1規定水酸化カリウムのメタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として用いて中和滴定を行って定量した。
2.2.インクジェット記録装置の準備
上記で説明した図1〜図4に記載されている吐出ヘッドを備えるインクジェット記録装置を準備した。表2では、このインクジェット記録装置の吐出ヘッドを「ヘッドA」と称する。
一方、上記のインクジェット記録装置の吐出ヘッドの図4に相当する構造が図6のような構造となっているインクジェット記録装置を準備した。表2では、このインクジェット記録装置の吐出ヘッドを「ヘッドB」と称する。図6に示すように、ヘッドBの液体流路は、振動板50を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の1本の液体流路とを含む構造となっているため、上記のヘッドAと比べてノズル上流の流路体積が小さくなっている。
2.3.評価方法
2.3.1.間欠印字の評価
ヘッドAもしくはヘッドBのいずれかのインクジェットプリンターのヘッド内に上記で調製した水系インク組成物を充填した。写真用紙(光沢)(セイコーエプソン株式会社製)にインクを全ノズル吐出させた。その後、キャリッジを12秒間空走した後、上記写真用紙(光沢)にインクを全ノズル吐出した。空走前後のドットの着弾位置ズレにより間欠特性を評価した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
1:着弾ズレが0μm以上100μm未満。
2:着弾ズレが100μm以上200μm未満。
3:着弾ズレが200μm以上300μm未満。
4:着弾ズレが300μm以上。
2.3.2.発色性の評価
ヘッドAもしくはヘッドBのいずれかのインクジェットプリンターのヘッド内に上記で調製した水系インク組成物を充填した。充填後、フォトマット紙/顔料専用(セイコーエプソン株式会社製)上に1440×720dpi、インク重量24ngでベタ印刷を行っ
た。印刷物を乾燥後、Spectrolino(商品名、GretagMacbeth社製)により反射濃度値(OD値)を測定した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
1:OD値が2.1以上。
2:OD値が2.0以上2.1未満。
3:OD値が1.9以上2.0未満。
2.3.3.耐擦性
ヘッドAもしくはヘッドBのいずれかのインクジェットプリンターのヘッド内に上記で調製した水系インク組成物を充填した。充填後、フォトマット紙/顔料専用(セイコーエプソン株式会社製)上に1440×720dpi、インク重量24ngでベタ印刷を行った。得られた印刷物について、印刷後1時間経過した印刷物の印刷面の上に金巾を載せ、更にその上に50gの分銅を載せた。分銅下の金巾を引き抜き、引き抜いた金巾への転写の程度を目視で観察し、以下の基準で耐擦性を評価した。
(評価基準)
1:転写が全く認められない。
2:転写が僅かに認められる。
3:転写がはっきりと認められる。
2.3.4.ヘッド凍結安定性
ヘッドAもしくはヘッドBのいずれかのインクジェットプリンターのヘッド内に上記で調製した水系インク組成物を充填した。キャップをした状態でインクジェット記録装置全体を、−20℃に温度設定された冷凍室に静置した。5日経過後、インクジェット記録装置を冷凍室から取り出し、常温に戻した。この操作を5台のインクジェットプリンターについて行い、圧電アクチュエーターの破損の有無を顕微鏡にて観察し、圧電アクチュエーターの故障率を算出して評価した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
1:故障率が0%(故障なし)。
2:故障率が20%(1台故障した)。
3:故障率が40%以上(2台以上故障した)。
2.3.5.インクの再分散性
SUS基板に水系インク組成物を1滴垂らし、80℃で1時間乾燥させた。次いで、乾燥物の上に同じ種類の水系インク組成物を1滴垂らした。所定時間放置後、ティッシュペーパーでインクを吸い取り、乾燥物の有無を確認した。乾燥物が再溶解してなくなるのに必要な時間を評価した。評価基準は以下の通りである。
(評価基準)
1:1分未満。
2:1分以上5分未満。
3:5分以上。
2.3.6.インクの保存安定性
上記で作製した水系インク組成物を50gスクリュー管に入れ、70℃6日間放置した。放置前後の粘度について、E型粘度計RE550L(装置名、東機産業株式会社製)を用いて粘度を測定し、放置前後の粘度の変化率に基づいてインクの保存安定性を評価した。評価基準は以下の通りである。
粘度変化率(%)=|(η2−η1)/η1|×100 ・・・・・(2)
η1:放置前のインクの粘度、η2:放置後のインクの粘度
(評価基準)
1:粘度の変化率が5%未満。
2:粘度の変化率が5%以上10%未満。
3:粘度の変化率が10%以上。
2.4.評価結果
各実施例及び比較例の水系インク組成物の組成、評価結果を下表2及び下表3に示す。
Figure 2016169322
Figure 2016169322
表2及び表3の結果から明らかなように、本発明に係る水系インク組成物によれば、上
記ヘッドAを備えるインクジェット記録装置のインクカートリッジに充填した場合でも、凍結時におけるヘッドAの故障を防止することができ、保存安定性に優れ、しかも発色性、耐擦性に優れた画像を形成できることが明らかとなった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、II…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、III…ヘッドB、1…インクジェット式記録ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、2…カートリッジ、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、6…駆動モーター、7…タイミングベルト、8…プラテン、10…流路形成基板、11…ヘッド本体、15…連通板、20…ノズルプレート、20a…液体噴射面、21…ノズル開口、25…スペーサー、30…保護基板、40…ケース部材、45…コンプライアンス基板、50…振動板、60…第1電極、70…圧電体層、80…第2電極、100…マニホールド、120…駆動回路、130…カバーヘッド(保護板)

Claims (10)

  1. 振動板を有する平面方向に延びる液体流路と、当該液体流路に繋がる垂直方向の複数の液体流路と、を有する吐出ヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるための水系インク組成物であって、
    酸化処理された顔料と、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂と、を含み、
    前記酸化処理された顔料が、その表面に、カルボキシル基と、前記カルボキシル基の0.8〜1.1倍のモル比でありかつ顔料の質量当たりのモル数で500μmol/g以上のラクトン基と、を有する、水系インク組成物。
  2. 前記酸化処理された顔料の表面における、当該顔料の質量当たりのラクトン基のモル数が700μmol/g以上である、請求項1に記載の水系インク組成物。
  3. 前記酸化処理された顔料と前記自己乳化型樹脂との含有比率(酸化処理された顔料/自己乳化型樹脂)が、0.5以上6.0以下である、請求項1または請求項2に記載の水系インク組成物。
  4. 前記自己乳化型樹脂がウレタン樹脂である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の水系インク組成物。
  5. 前記顔料がカーボンブラックである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の水系インク組成物。
  6. 水系インク組成物と、前記水系インク組成物を吐出する吐出ヘッドと、を備えたインクジェット記録装置であって、
    前記吐出ヘッドは、振動板を有する平面方向に延びる流路と、当該流路に繋がる垂直方向の複数の流路と、を備え、
    前記水系インク組成物は、酸化処理された顔料と、酸価が10〜90mg/KOHの自己乳化型樹脂と、を含み、
    前記酸化処理された顔料は、その表面に、カルボキシル基と、前記カルボキシル基の0.8〜1.1倍のモル比でありかつ顔料の質量当たりのモル数で500μmol/g以上のラクトン基と、を有する、インクジェット記録装置。
  7. 前記酸化処理された顔料の表面における、当該顔料の質量当たりのラクトン基のモル数が700μmol/g以上である、請求項6に記載のインクジェット記録装置。
  8. 前記酸化処理された顔料と前記自己乳化型樹脂との含有比率(酸化処理された顔料/自己乳化型樹脂)が、0.5以上6.0以下である、請求項6または請求項7に記載のインクジェット記録装置。
  9. 前記自己乳化型樹脂がウレタン樹脂である、請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
  10. 前記顔料がカーボンブラックである、請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
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