JP2018053171A - 捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 - Google Patents

捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】形成される画像の摩擦堅牢性及び発色性に優れ、かつ、保存中における粘度の変化が少なく保存安定性が良好な、捺染インクジェットインク組成物を提供すること。【解決手段】表面に親水性基を有する自己分散型顔料と、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、を含む、捺染インクジェットインク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、捺染インクジェットインク組成物及び記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。インクジェット記録方法においては、用いるインクの性質、記録における安定性、得られる画像の品質をはじめとして、非常に多くの検討要素があり、インクジェット記録装置のみならず、用いるインク組成物に対する研究も盛んである。
また、インクジェット記録方法を用いて、布帛等を染色(捺染)することも行われている。従来、布帛(織布や不織布)に対する捺染方法としては、スクリーン捺染法、ローラー捺染法等が用いられてきたが、多種少量生産性ならびに即時プリント性等の観点から、インクジェット記録方法を適用することが有利であるため種々検討されている。
インク組成物に顔料と定着樹脂とを配合して布帛を捺染する、いわゆる顔料捺染についても検討が為されている。顔料捺染の場合には、布帛の繊維等に顔料を物理的に固着させることが重要となる。
これに対し、例えば、特許文献1には、中空樹脂粒子および金属化合物粒子から選ばれる少なくとも1種の色材と、ガラス転移温度が65℃以下のポリウレタン樹脂とを含有するインク組成物で印刷することを特徴とする画像形成方法が記載されている。この文献では、特定のガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂を用いることにより、色材を記録媒体上に強固に定着させ、優れた堅牢性を有する画像を得ることができるとしている。
特開2010−188597号公報
しかしながら、特定のガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂を用いるだけでは、堅牢性の向上は不十分である。そこで、さらなる堅牢性の向上のため、出願人は架橋性の樹脂を用いることを見出したが、架橋性の樹脂は、インクを保存する温度によっては、徐々に反応が進行して粘度が高くなる場合があった。また、上記先行技術では顔料を分散させるための分散剤を使用しているので、インクを保存する温度によっては、さらに、架橋性の樹脂と顔料分散剤とが徐々に反応してインクの粘度がさらに高くなる場合があった。さらに、上記先行技術のインク組成物では、記録媒体上での顔料の凝集速度が小さくなることがあり、画像の発色性が不十分となる場合があった。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、形成される画像の摩擦堅牢性及び発色性に優れ、かつ、保存中における粘度の変化が少なく保存安定性が良好な、捺染インクジェットインク組成物及びこれを用いた記録方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態
様又は適用例として実現することができる。
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物の一態様は、
表面に親水性基を有する自己分散型顔料と、
架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、
を含む。
このような捺染インクジェットインク組成物によれば、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体を含有することにより、形成される画像の摩擦堅牢性が良好である。また、自己分散型顔料を含有することにより、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体が存在しても、保存中の粘度が上昇しにくく、保存安定性が良好である。さらに、自己分散型顔料を用いているため、記録媒体(布帛)に付着した際の凝集速度が高く、発色性の良好な画像を形成することができる。
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物において、
前記自己分散型顔料は、自己分散型のカーボンブラックであってもよい。
このような捺染インクジェットインク組成物によれば、保存中における粘度の変化が少なく保存安定性が良好で、かつ、摩擦堅牢性及び発色性に優れた黒色の画像を形成することができる。
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物において、
前記親水性基が、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、及び−NR(式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一種以上の官能基であってもよい。
このような捺染インクジェットインク組成物によれば、保存中における粘度の変化が少なく保存安定性がさらに良好で、さらに発色性の良い画像を形成することができる。
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物において、
前記自己分散型顔料の前記捺染インク組成物全体に対する合計の含有量は、3質量%以上5質量%以下であってもよい。
このような捺染インクジェットインク組成物によれば、樹脂分散剤によって分散された顔料と比較した場合に、より少ない含有量でも、発色性の十分な画像を形成することができる。
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物において、
前記ウレタン系樹脂は、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を有してもよい。
このような捺染インクジェットインク組成物によれば、さらに摩擦堅牢性の良好な捺染物を得ることができる。
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物において、
前記ウレタン系樹脂分散体の破断点伸度は、170%以上であってもよい。
このような捺染インクジェットインク組成物によれば、さらに風合いの良好な捺染物を得ることができる。
本発明に係る記録方法の一態様は、上述の捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録する。
このような記録方法によれば、捺染インクジェットインク組成物が架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体を含有することにより、形成される画像の摩擦堅牢性が良好である。また、捺染インクジェットインク組成物が自己分散型顔料を含有することにより、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体が存在しても、保存中の粘度が上昇しにくく、保存安定性が良好である。さらに、捺染インクジェットインク組成物が自己分散型顔料を用いているため、記録媒体(例えば布帛)に付着した際の凝集速度が高く、発色性の良好な画像を形成することができる。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.捺染インクジェットインク組成物
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物(以下、捺染インク組成物、インク組成物ともいう)は、後述する本実施形態の前処理液を布帛に付着させ、その後に当該捺染インクジェットインク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて使用される。以下、まず、捺染インクジェットインク組成物について説明する。
1.1.自己分散型顔料
自己分散型顔料は、分散剤なしに水性媒体中に分散又は溶解することが可能な顔料である。ここで「分散剤なしに水性媒体中に分散又は溶解する」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水性基により、水性媒体中に安定に存在している状態を言う。そのため、分散剤に起因する消泡性の低下による発泡がほとんど無く、吐出安定性に優れるインクが調製しやすい傾向にある。
また、分散剤に起因する大幅な粘度上昇が抑えられるため、顔料をより多く含有することが可能となり印字濃度を十分に高めることが可能になる等、取り扱いが容易となる傾向にある。さらに、分散剤を用いる必要がないため、後述する架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体が徐々に反応したとしても、捺染インクジェットインク組成物の粘度の上昇を小さく抑えることができる。
また、自己分散型顔料は、後述する凝集剤による凝集が比較的速やかであり、記録媒体の表面付近において凝集しやすいので、画像の発色性が良好となる傾向がある。
本実施形態の捺染インク組成物に用いる自己分散型顔料としては、親水性基(親水性の分散性を付与する基)として官能基又はその塩を顔料粒子の表面に直接又は多価の基を介して導入(化学結合)されることによって、分散剤なしに水に分散可能とされたものを挙げることができる。
一つの顔料粒子に導入される官能基は、単一種でも複数種であってもよい。導入される官能基の種類及びその程度は、インク中での分散安定性,色濃度及びインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。親水性基として導入される官能基としては、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、及び−
NR(式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一種以上の官能基であることが好ましい。
また、親水性基が多価の基を介して顔料に導入される場合、分散性付与基が結合する多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基,置換基を有していても良いフェニレン基、あるいは、置換基を有していても良いナフチレン基等を挙げることができる。
親水性の分散性付与基である上記官能基あるいはその塩を、顔料粒子の表面に直接あるいは多価の基を介して、導入させる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができる。
例えば、(a)市販の酸化カーボンブラックにオゾンや次亜塩素酸ソーダ溶液を作用し、カーボンブラックを更に酸化処理して、その表面をより親水化処理する手段(例えば、特開平7−258578号公報、特開平8−3498号公報、特開平10−120958号公報、特開平10−195331号公報、特開平10−237349号公報)、(b)カーボンブラックを3−アミノ−N−アルキル置換ピリジウムブロマイドで処理する手段(例えば、特開平10−195360号公報、特開平10−330665号公報)、(c)有機顔料が不溶あるいは難溶である溶剤中に有機顔料を分散させ、スルホン化剤により、顔料粒子表面にスルホン基を導入する手段(例えば、特開平8−283596号公報、特開平10−110110号公報、特開平10−110111号公報)、(d)三酸化硫黄と錯体を形成する塩基性溶剤中に有機顔料を分散させ、三酸化硫黄を添加することにより有機顔料の表面を処理し、スルホン基あるいはスルホンアミノ基を導入する手段(例えば、特開平10−110114号公報)、(e)アゾカップリング反応によりカーボンブラックに結合させたフェニレン基を介することで、水可溶化官能基とポリマーを顔料表面に導入する手段(例えば、特開2000−53902号公報)等が挙げられる。本実施形態で用いられる自己分散型顔料のための作製手段は、上記(a)〜(e)の手段に限定されるものではない。
また、本実施形態において、親水性基として用いられる硫黄含有分散性付与基としては、硫黄原子を含有し、しかも、水中分散性を付与する官能基であれば特に限定されず、具体的には、スルフィン酸基(SO−)あるいはスルホン酸基(SO−)を挙げることができる。
また、本実施形態において、親水性基として用いられるリン含有分散性付与基としては、リン原子を含有し、しかも水中分散性を付与する官能基であれば特に限定されず、具体的には、リン酸基を挙げることができる。
上記に示すような表面処理顔料に導入される親水性の分散性付与基は、少なくとも粒子表面上に存在すればよく、粒子内部に含まれていてもよい。
また、自己分散型顔料は、例えば、顔料に物理的処理又は化学的処理を施すことで、親水性基を顔料の表面に結合させることにより製造されてもよい。当該物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また、当該化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
また、顔料がブラック(黒色)である場合には、次亜ハロゲン酸及び/又は次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、又は過硫酸及び/又は過硫酸塩による酸
化処理により表面処理された自己分散型顔料が、高発色という点でさらに好ましい。表面処理されたブラック自己分散型顔料は、必要に応じて分離膜等での濃縮、金属フィルターやメンブランフィルター等を用いた濾過、遠心分離による分級、アルカリ金属塩の水酸化物、又はアミンによる中和が行われていてもよい。
また、本実施形態の捺染インクジェットインク組成物をブラックインク組成物とする場合には、自己分散型顔料の原料となる顔料としては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。本発明で好ましいカーボンブラックの具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種又は二種以上の混合物として用いても良い。また、ブラックの自己分散型顔料として市販品を利用することも可能であり、好ましい例としては、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)が挙げられる。
一方、本実施形態の捺染インクジェットインク組成物をカラーインク組成物とする場合には、自己分散型顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M、CAB−O−JET270Y(以上キャボット社製)等が挙げられる。
これら例示した自己分散型顔料は、複数種を混合して用いてもよい。捺染インクジェットインク組成物中の自己分散型顔料(固形分)の合計の含有量は、使用する顔料種により異なるが、良好な発色性を得る観点から、捺染インクジェットインク組成物の総質量を100質量%としたときに、好ましくは1質量%以上10質量%以下、より好ましくは2質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上5質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以上4質量%以下である。自己分散型顔料の濃度がこの範囲であれば、発色性の十分な画像を形成することができる。また、自己分散型顔料の凝集速度が高いので、自己分散型顔料の濃度がこの範囲であれば、分散剤によって分散された顔料を同程度の濃度として配合したインクと比較して、より発色性の高い画像を形成することができる。
なお、捺染インクジェットインク組成物に調製する際には、あらかじめ顔料を分散させた顔料分散液を調製して、その顔料分散液を捺染インク組成物に添加してもよい。このような顔料分散液を得る方法としては、分散剤を使用せずに自己分散型顔料を分散媒中に分散させる方法、表面処理した自己分散型顔料を分散媒に分散させる方法などがある。
1.2.架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体
本実施形態の捺染インク組成物は、架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体(以下、架橋性基を有するウレタン系樹脂、樹脂分散体ともいう)を含有する。なお、樹脂分散体としては、エマルション状態及び溶液状態としたものをいずれも用いることができるが、インクの粘度上昇を抑えるという点から、エマルション状態としたものを使用することが好ましい。架橋性基(イソシアネート基)は、化学的に保護されており(キャッピングあるいはブロッキング)、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、結合(例えばウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等)を形成することになる。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基は、1分子に3つ以上設けられているため、架橋性基の反応により、架橋構造が形成される。なお、本明細書においてウレタン系樹脂とは、イソシアネート基が他の反応性の基(例えば、水酸基、アミノ基、ウレタン結合基、カルボキシル基等)と反応して形成される、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等を含んでもよい樹脂のことを指す(ただし、架橋反応に寄与する未反応のイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基を有する。)。したがって、本明細書では、例えば、尿素樹脂は、ウレタン系樹脂に包含されることとなる。ウレタン系樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物とを反応して得られるウレタン結合を有する化合物であることが好ましい。
ブロックドイソシアネート(化学的に保護されたイソシアネート)は、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有し、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ブロック剤とを反応させることにより得ることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香族脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートなどが挙げられる。これらポリイソシアネート単量体は、単独使用又は2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
なお、ポリイソシアネート化合物を2種類以上併用する場合には、例えば、ブロックドイソシアネートの製造時において、2種類以上のポリイソシアネート化合物を同時に反応させてもよく、また、各ポリイソシアネート化合物を個別に用いて得られたブロックドイソシアネートを混合してもよい。
ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生又は活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態及び脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用も有する。
ブロック剤としては、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩などが挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズ
イミダゾール(解離温度120℃)、2−メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4−メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2−エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン(解離温度110℃)、2−フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。
ピリミジン系化合物としては、例えば、2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンなどが挙げられる。
グアニジン系化合物としては、例えば、3,3−ジメチルグアニジンなどの3,3−ジアルキルグアニジン、例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(解離温度120℃)などの1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンなどが挙げられる。
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−又は2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン(解離温度140℃)、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−s−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−ヒドロキシピリジン(解離温度80℃)、2−又は8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオール(解離温度70℃)などが挙げられる。
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルs−ブチル、マロン酸エチルs−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン
酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネートなど)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニルなど)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、又は、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン(解離温度140℃)、ジシクロヘキシルアミン(解離温度130℃)、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン(解離温度130℃)、t−ブチルメチルアミン、t−ブチルエチルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルプロピルアミン、t−ブチルブチルアミン、t−ブチルベンジルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルフェニルアミン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸などが挙げられる。
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
カルバミン酸系化合物としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、例えば、アセトアニリド、N−メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ピロリドン、2,5−ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどが挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジフェニルピラゾール、3,5−ジ-t-ブチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾールなどが挙げられる。
メルカプタン系化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。
さらに、ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタートなどのその他のブロック剤も挙げられる。
なお、上記例示した幾つかの化合物については、イソシアネート基を再生させる温度として、解離温度を併記した。
このようなブロック剤は、単独使用又は2種類以上併用することができる。ブロック剤の解離温度は、適宜選択することができる。解離温度としては、例えば、60℃以上230℃以下、好ましくは80℃以上200℃以下、より好ましくは100℃以上180℃以下、さらに好ましくは110℃以上160℃以下である。係る温度範囲であれば、捺染インク組成物のポットライフを十分長くすることができるとともに、加熱工程での温度を高くしすぎないようにすることができる。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂の主鎖は、エーテル結合を含むポリエーテル型、エステル結合を含むポリエステル型、カーボネート結合を含むポリカーボネート型、等いずれであってもよい。架橋性基を有するウレタン系樹脂が架橋した場合(架橋体)の破断点伸度や100%モジュラスは、架橋点の密度と、このような主鎖の種類を変更することによって調節することができる。これらのうち、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を有する架橋性基を有するウレタン系樹脂は、破断点伸度と100%モジュラスのバランスが良好であり、画像の摩擦堅牢性、印捺物の風合いを向上しやすい点でより好ましい。特にポリカーボネート系骨格を有するウレタン樹脂は摩擦堅牢性を良好とできる傾向があり好ましい。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂は、架橋が形成された後(架橋体)において、破断点伸度が、150%以上、好ましくは170%以上、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは、300%以上であることが好ましい。このような破断点伸度となるように架橋点の密度や、主鎖の種類を選択することにより、印捺物の風合いを向上させることができる。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂は、架橋が形成された後(架橋体)において、100%モジュラスが、1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることがさらに好ましい。このようなモジュラスとなるように架橋点の密度や、主鎖の種類を選択することにより、乾摩擦堅牢性及び湿摩擦堅牢性を向上させることができる。
ここで、破断点伸度は、例えば、架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションを硬化させて、約60μmの厚さのフィルムを作成し、引張試験ゲージ長20mm及び引っ張り速度100mm/分の条件下で測定して得られる値を採用することができる。また、10
0%モジュラスは、前記引張試験においてフィルムが元の長さに対し100%伸びた時の引っ張り応力を測定して得られる値を採用することができる。測定するフィルムは、架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションを用いて形成してもよいし、同種の樹脂を用いて成形により形成してもよいが、エマルション樹脂を用いて形成することが好ましい。
架橋性基を有するウレタン系樹脂は、エマルションの形態で配合されてもよい。このような樹脂エマルションは、いわゆる自己反応型のウレタン系樹脂エマルションであり、親水性基を有するブロック剤でブロック化したイソシアネート基を有するウレタン系樹脂エマルションとして市販されているものを用いることができる。
架橋性基を有するウレタン系樹脂の市販品としては、
タケラックWS−6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリエーテル由来骨格を有する、ポリエーテル系ポリウレタン)、
WS−5100(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリカーボネート由来骨格を有する、ポリカーボネート系ポリウレタン)、
エラストロンE−37、H−3(以上は主鎖がポリエステル由来骨格を有するポリエステル系ポリウレタン(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
エラストロンH−38、BAP、C−52、F−29、W−11P(以上は主鎖がポリエーテル由来骨格を有するポリエーテル系ポリウレタン)(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
NeoRez R−9660、R−9637、R−940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、
アデカボンタイター HUX−380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルション)、などを例示することができる。
なお、これらのウレタン系樹脂は、前処理液に含まれてもよく、その場合には、前処理液に含まれるウレタン系樹脂と、捺染インクジェットインク組成物に含まれるウレタン系樹脂とは、同じでも異なっていてもよい。
また、本実施形態のインクジェット捺染方法における加熱工程の温度は、これらの架橋性基を有するウレタン系樹脂のイソシアネート基の脱保護温度(解離温度)を考慮して、架橋性基の少なくとも一部が活性化するように設定される。
架橋性基を有するウレタン系樹脂の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましく、5質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。また、7質量%以上が中でも好ましく、10質量%以下が中でも好ましい。本実施形態においては、自己分散型顔料を用いることにより、顔料分散液中に分散樹脂等を含有しない若しくは含有量が少量であることにより、かわりに架橋性基を有するウレタン樹脂や自己分散型顔料の含有量を増やすことができる。架橋性基を有するウレタン樹脂の含有量が下限値以上であることにより摩擦堅牢性を良好なものとすることができ、上限値以下であることにより吐出安定性を良好なものとすることができるため好ましい。
1.3.その他の成分
1.3.1.水
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、水を含んでもよい。水としては
、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、捺染インク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
水の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお捺染インク組成物中の水というときには、例えば、原料として用いる樹脂粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、捺染インクジェットインク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
1.3.2.水溶性有機溶剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、水溶性有機溶媒を含んでもよい。水溶性有機溶媒を含むことにより、捺染インクジェットインク組成物のインクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、長期放置時による記録ヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、ポリオール化合物、グリコールエーテル、ベタイン化合物等が挙げられる。
ポリオール化合物としては、例えば、分子内の炭素数が2以上6以下であり、かつ、分子内にエーテル結合を1つ有してもよいポリオール化合物(好ましくはジオール化合物)等が挙げられる。具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール、3−(3−メチルフェノキシ)−1,2−プロパンジオール、3−ヘキシルオキシ−1,2−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−フェノキシメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−ブテンー1,4−ジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等の多価アルコール類等が挙げられる。
グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。より好ましくは、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
ベタイン化合物とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物(分子内塩)である。好ましいベタイン化合物としては、アミノ酸のN−アルキル置換体であり、より好ましくはアミノ酸のN−トリアルキル置換体である。ベタイン化合物としては、例えば、トリメチルグリシン(「グリシンベタイン」ともいう。)、γ−ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリン及びグルタミン酸ベタイン等が挙げられ、好ましくは、トリメチルグリシン等が例示できる。
また、水溶性有機溶剤として、ピロリドン誘導体を用いてもよい。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。また、水溶性有機溶剤の全体の配合量は、捺染インク組成物の粘度調整、保湿効果による目詰まり防止の点から、捺染インク組成物の全量に対して合計で、0.2質量%以上30質量%以下、好ましくは0.4質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以上10質量%以下である。
1.3.3.界面活性剤
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。界面活性剤は、捺染インクジェットインク組成物の界面張力を低下させ、布帛への浸透性を高めることができる。ただし、カチオン系界面活性剤については、捺染インクジェットインク組成物の成分を凝集させる可能性があるため、微量とするか、他の種の界面活性剤を用いることがより好ましい。
捺染インクジェットインク組成物に界面活性剤を配合する場合には、捺染インクジェットインク組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下が好ましい。なお捺染インクジェットインク組成物において、界面活性剤は任意成分であり、含まれなくても捺染インクジェットインク組成物の機能・作用は十分に発揮することができる。
ノニオン系界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤のうち少なくとも一種が好ましい。インク組成物がこれらの界面活性剤を含むことにより、布帛に対する濡れ性や顔料の分散安定性が一層良好となる。
上記のアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、以下に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上を例示できる。また、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104
DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、AirProductsandChemicals.Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、メガファックF−479(DIC株式会社製)、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン系界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、オルフィンPD−501、オルフィンPD−502、オルフィンPD−570(いずれも、日信化学工業株式会社製)、BYK−347、BYK−348、BYK−302(いずれも、ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
さらに、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を用いてもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸系としてアルキルアミノ脂肪酸塩、ベタイン系としてアルキルカルボキシルベタイン、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。両性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
上記例示した界面活性剤は、複数種を混合して用いてもよい。
捺染インクジェットインク組成物に界面活性剤を配合する場合には、捺染インクジェットインク組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下配合することが好ましい。
捺染インクジェットインク組成物が界面活性剤を含有することにより、ヘッドからインクを吐出する際の安定性が増す傾向がある。また、適切な量の界面活性剤の使用は、布帛
への浸透性が向上し、前処理液との接触を増やすことができる。これにより、自己分散型顔料の凝集や、捺染インクジェットインク組成物の増粘が生じやすくなり、捺染物の発色性をさらに良好にすることができる。
1.3.4.キレート剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、キレート剤を含んでもよい。キレート剤は、イオンを捕獲する性質を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
1.3.5.防腐剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、防腐剤を含有してもよい。防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。これにより、例えば、捺染インクジェットインク組成物を、長期的にプリンターを使用せず保守する際のメンテナンス液として使用しやすくなる。防腐剤の好ましい例としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、又はプロキセルTNなどを挙げることができる。
1.3.6.pH調整剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、捺染インク組成物の洗浄性を調節することができる。pH調整剤としては、例えば、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、を例示できる。
1.3.7.樹脂エマルション
本実施形態に係る捺染インク組成物は、樹脂エマルション(架橋性基を有しないウレタン系樹脂等)を含有してもよい。
樹脂エマルションとしては、限定されないが、ウレタン系、スチレンアクリル系、アクリル系、及び、塩化ビニル−酢酸ビニル系から選択される少なくとも一種の樹脂エマルションを例示することができる。
ウレタン系樹脂エマルションとしては、分子中にウレタン結合を有するものであれば特に制限されないが、ウレタン結合に加えて、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン系樹脂エマルション、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン系樹脂エマルション、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン系樹脂エマルション等も使用することができる。なお、上述の架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションとは別に、以下に示すような樹脂エマルションを選択することができる。
樹脂エマルションの市販品としては、
マイクロジェルE−1002、E−5002(日本ペイント社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルション)、
ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルション)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルション)、
ポリゾールAM−710、AM−920、AM−2300、AP−4735、AT−860、PSASE−4210E(アクリル系樹脂エマルション)、
ポリゾールAP−7020(スチレン・アクリル樹脂エマルション)、
ポリゾールSH−502(酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ポリゾールAD−13、AD−2、AD−10、AD−96、AD−17、AD−70(
エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ポリゾールPSASE−6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)(昭和電工社製商品名)、
ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン−アクリル系樹脂エマルション、日本ゼオン社製)、
サイビノールSK−200(商品名、アクリル系樹脂エマルション、サイデン化学社製)、
AE−120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルション)、
AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルション)、
セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション)、
ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルション)、
ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルション)、
ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルション)(日信化学工業社製商品名)、
エリーテルKA−5071S、KT−8803、KT−9204、KT−8701、KT−8904、KT−0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルション)、ハイテックSN−2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルション)、
タケラックW−6020、W−635、W−6061、W−605、W−635、W−6110(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、
モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、
ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC−1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX−7630A、352J、352D、PDX−7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、
NKバインダーR−5HN(新中村化学工業株式会社製)、等が挙げられる。
捺染インク組成物に樹脂エマルションを含有させる場合には、捺染インク組成物中の樹脂エマルションの固形分換算での含有量は、捺染インク組成物の総質量を100質量%としたときに、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。樹脂エマルションの固形分換算での含有量が前記範囲であると、画像の洗濯耐久性がさらに良好なものとなる。固形分換算の量とは、樹脂エマルションにおける樹脂(固形分)以外の物質を除いた量をいうものとする。
なお、捺染インク組成物に樹脂エマルションを含有させる場合であって、前処理液に樹脂エマルションが配合された場合には、両者の樹脂エマルションは、同種であっても異種であってもよい。
1.3.8.その他の成分
本実施形態に係る捺染インク組成物は、さらに、保湿剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤などの、種々の添加剤を適宜含有することができる。
1.4.捺染インク組成物の物性
本実施形態に係る捺染インク組成物は、インクジェット法によって布帛に付与される。そのため、捺染インク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。
また、同様の観点から、捺染インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上3.6mPa・s以下であることがより好ましい。
1.5.作用効果
本実施形態に係る捺染インク組成物によれば、架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有することにより、形成される画像の摩擦堅牢性が良好である。また、自己分散型顔料を含有することにより、架橋性基を有するウレタン系樹脂が存在しても、保存中の粘度が上昇しにくく、保存安定性が良好である。さらに、自己分散型顔料を用いているため、記録媒体(布帛)に付着した際の凝集速度が高く、発色性の良好な画像を形成することができる。
また、本実施形態に係る捺染インク組成物によれば、自己分散型顔料を含有し、分散樹脂等を含有しない若しくは含有量が少量であることに起因して、分散樹脂の種類や含有量に依存せずに架橋性基を含有するウレタン系樹脂の種類や含有量の選択が可能である。架橋性基を含有するウレタン系樹脂と分散樹脂との間の反応による影響が少なく、保存安定性も良好なものとすることができる。
2.インクジェット捺染方法
本実施形態のインクジェット捺染方法は、凝集剤を含有する前処理液により布帛を処理する工程、処理された前記布帛に対して、上述の架橋性基を有するウレタン系樹脂を含有する捺染インク組成物を付着させる工程、及び前記布帛を加熱する工程を少なくとも有する。以下、本実施形態に係る捺染方法について、布帛、捺染方法、前処理液の順に説明する。
2.1.布帛
本実施形態に係るインクジェット捺染方法は、布帛(記録媒体)を用いて行われる。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。本実施形態で使用する布帛は、これらのうち綿、麻等のセルロースを含む繊維で形成されたものがより好ましい。このような布帛を用いることで、顔料のよりすぐれた定着性を得ることができる。
また、本実施形態で使用する布帛の目付は、1.0oz(オンス)以上10.0oz以下、好ましくは2.0oz以上9.0oz以下、より好ましくは3.0oz以上8.0oz以下、さらに好ましくは4.0oz以上7.0oz以下の範囲である。本実施形態の捺染方法では、後述の前処理液を用いるため、このような範囲の目付の布帛に対して、前処理液を付与した際に凝集剤を適切に配置させることができるため、良好な顔料捺染を実現することができる。また、換言すると、布帛の目付がこのような範囲であれば、前処理液を十分に適用することができ、本実施形態の捺染方法により良好な捺染を行うことができる。さらに、本実施形態の捺染方法は、前処理液を用いることから、目付けの異なる複数種の布帛に適用することができ、良好な捺染を行うことができる。
2.2.捺染方法(記録方法)
次に、本実施形態に係る捺染方法(記録方法)について工程毎に説明する。
2.2.1.前処理液を布帛に付着させる工程
前処理液(後述)を布帛に付着させる工程は、布帛の少なくとも一部の領域に、前処理液を付与する工程である。本工程では、前処理液の付着量が100mg/inch以上3000mg/inch以下となるように付与することが好ましく、130mg/inch以上1500mg/inch以下となるように付与することがより好ましく、193mg/inch以上500mg/inch以下となるように付与することがさらに好ましい。前処理液の付着量を0.02g/cm以上とすることで、布帛に対して前処理液を均一に塗布しやすくなるので、画像の色ムラを抑制できる。また、前処理液の付着量を0.5g/cm以下とすることで、画像の滲みを抑制できる。また、前処理液の付着量は、布帛の面積当たりの質量に対して70質量%以上100質量%以下であることも好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
本工程では、布帛に付与した前処理液に含まれる凝集剤の付着量が、7.5μmol/cm以上40μmol/cm以下となるように付与することが好ましく、12μmol/cm以上30μmol/cm以下となるように付与することがより好ましい。凝集剤の付着量が10μmol/cm以上となるように付与することで、記録される画像の発色性が良好となる。また、凝集剤の付着量が40μmol/cm以下となるように付与することで、記録される画像の堅牢性がさらに良好になる。
前処理液を布帛に付与する方法としては、例えば、前処理液中に布帛を浸漬させる方法(浸漬塗布)、前処理液を、ヘラ、ローラー、刷毛、ロールコーター等で塗布する方法(ローラー塗布)、前処理液をスプレー装置等によって噴射する方法(スプレー塗布)、前処理液をインクジェット方式により噴射する方法(インクジェット塗布)等が挙げられ、いずれの方法も使用してもよい。これらの中でも、装置構成が簡便であり、前処理液の付与が迅速に行えるという点から、浸漬塗布、ローラー塗布、スプレー塗布等の接触式又は非接触式の手法を使用することが好ましく、これらの手法を組み合わせてもよい。また、インクジェット塗布によれば、所定の位置に前処理液を容易かつ正確に塗布することができ、前処理液の使用量を削減できるのでより好ましい。
本実施形態に係る捺染方法は、前処理液を付着させる工程の後、布帛に付与された前処理液を乾燥する前処理液の乾燥工程を含んでもよい。前処理液の乾燥は、自然乾燥で行ってもよいが、乾燥速度の向上という観点から、加熱を伴う乾燥であることが好ましい。前処理液の乾燥工程において加熱を伴う場合に、その加熱方法は特に限定されるものではないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
2.2.2.捺染インク組成物を布帛にインクジェット法により付着させる工程
捺染インク組成物(後述)を布帛にインクジェット法により付着させる工程は、上記前処理液を付着させる工程によって前処理液を付与した領域の少なくとも一部に、捺染インク組成物をインクジェット法により付与する工程である。これにより、捺染インク組成物に含まれる顔料等の成分と凝集剤とが反応又は相互作用することで、顔料等の成分が凝集するので、発色性に優れた画像が得られる。
本工程は、インクジェット記録用ヘッドのノズルから捺染インク組成物の液滴を吐出させて、当該液滴を布帛に付着させることにより、布帛に画像を印捺するものである。これにより、布帛に捺染インク組成物からなる画像が印捺された印捺物(捺染物)が得られる。
捺染インク組成物を吐出させるインクジェット記録方式としては、いずれの方式でもよく、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデンマンド方式(ピエゾ式、バブルジェ
ット(登録商標)式)などが挙げられる。これらのインクジェット記録方式の中でも、高精細、装置の小型化等の観点から、ピエゾ式のインクジェット記録装置を用いる方式がより好ましい。
本工程では、捺染インク組成物の付着量が、1.5mg/cm以上6mg/cm以下となるように布帛に付与することが好ましく、2mg/cm以上5mg/cm以下となるように布帛に付与することがより好ましい。捺染インク組成物の付着量が1.5mg/cmであることで、記録される画像の発色性が良好になる傾向にあり、捺染インク組成物の付着量が6mg/cm以下であることで、記録される画像の乾燥性が良好になって、例えば画像の滲みを抑制できる。
2.2.3.布帛を加熱する工程
本実施形態に係る捺染方法は、布帛に付与したインク組成物(画像)を加熱する加熱工程を含む。
布帛に付与したインク組成物を加熱する加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、熱風乾燥法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
布帛に付与したインク組成物を加熱する際の加熱温度としては、これに限定されるものではないが、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましい。ただし、加熱温度(到達温度)は、少なくとも上述した架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基が活性化される温度以上の温度である。係る架橋性基は、化学的に保護されており(キャッピングあるいはブロッキング)、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、結合(例えばウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等)を形成することになる。また、架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基は、1分子に3つ以上設けられているため、架橋性基の反応により、架橋構造が形成される。
本工程により、捺染インク組成物に含有される架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基が活性化され、ウレタン系樹脂の架橋構造が生成される。これにより、ウレタン系樹脂の堅牢な被膜が形成され、例えば色材が布帛に定着される。また、布帛には、前処理液が付着しているため、前処理液に含まれる凝集剤にカチオン性有機化合物を用いた場合には、これがウレタン系樹脂の架橋体の網目に侵入する等の現象が生じて、より強固に布帛に対して画像を定着させることができる場合がある。
加熱温度が上記範囲内にあることで、布帛のダメージを低減できたり、捺染インク組成物に含まれる樹脂(その他の樹脂を含んでもよい。)の皮膜化を促進できる。なお、本加熱工程における加熱温度とは、布帛に形成された画像表面の温度のことをいい、例えば非接触温度計(商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)を用いて測定することができる。また、加熱時間としては、これに限定されるものではないが、例えば30秒以上20分以下とすることができる。
2.3.作用効果
本実施形態のインクジェット捺染方法(記録方法)によれば、前処理液により、捺染インク組成物に含まれる自己分散型顔料を布帛の表面付近に留め、十分な発色性を有する画像(捺染物)を得ることができるとともに、架橋性基を有するウレタン系樹脂が加熱されることにより架橋することにより、色材を布帛に対して十分に定着することができ、良好な堅牢性を有する画像(捺染物)を得ることができる。
3.前処理液
本実施形態に係る前処理液は、上述の捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて行う上述のインクジェット捺染方法に用いられる。より具体的には、本実施形態に係る前処理液を布帛に付着させ、その後に捺染インク組成物をインクジェット法により布帛に付着させて、布帛の捺染を行うために用いられる。
特に、本実施形態においては、前処理液中の後記凝集剤が自己分散型顔料自体と反応するため、分散樹脂と反応し顔料自体とは反応しないような樹脂分散型顔料に比べ、顔料の布帛表面への定着性がより良く、発色性が良好となる。
前処理液は捺染インクジェットインク組成物とともにインクセットとして用いてもよい。
3.1.凝集剤
本実施形態の前処理液は、少なくとも凝集剤を含有する。凝集剤は、捺染インク組成物の成分を凝集又は増粘させる。すなわち、凝集剤は、捺染インク組成物に含まれる顔料及び樹脂等の成分の少なくとも一部と相互作用することで、顔料を凝集させる機能を有する。これにより、少なくとも捺染インク組成物により記録される画像の発色性を向上させることができる。
また、凝集剤は、捺染インク組成物に含まれる顔料及び樹脂等の少なくとも一部の成分と相互作用することで、捺染インク組成物の粘度を高める(増粘)ことができる。これにより、捺染インク組成物が布帛の内部に浸透しすぎることを抑制して発色性を高めることができる。また、捺染インク組成物の増粘により、滲みやブリードを軽減させることができる場合がある。
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩、無機酸、有機酸、カチオン性化合物等が挙げられ、カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂(カチオン性ポリマー)、カチオン性界面活性剤等(本明細書では、カチオン性樹脂、カチオン性界面活性剤を含めた概念として、カチオン性有機化合物ということがある。)を用いることができる。
金属塩としては、好ましくは多価金属塩であるが、多価金属塩以外の金属塩も使用可能である。これらの凝集剤の中でも、捺染インク組成物に含まれる成分との反応性に優れるという点から、金属塩、及び有機酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、これらの凝集剤の中でも、前処理液に対して溶解しやすいという点からは、カチオン性ポリマーを用いることが好ましい。また、凝集剤は複数種を併用することも可能である。
凝集剤により、捺染インク組成物に含む成分の表面電荷を中和させたり捺染インク組成物のpHを変化させることにより、これら成分を凝集や析出させ、自己分散型顔料を凝集させたり、捺染インク組成物を増粘させる。
金属塩のうち多価金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、及びマグネシウム化合物、並びにこれらの塩(多価金属塩)が挙げられる。これら多価金属化合物の中でも、顔料を効果的に凝集させることができるため、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、及びマグネシウム化合物、並びにこれらの塩からなる群より選択される一種以上が好ましく、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属の解離性塩がより好ましく、カルシウム塩及びマグ
ネシウム塩のうち少なくともいずれかがさらに好ましい。
また、多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、色材等の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオンである。すなわち、多価金属塩とは、無機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。
なお、多価金属化合物はイオン性の多価金属塩であることが好ましく、特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩である場合、反応液の安定性がより良好となる。また、多価金属の対イオンとしては、無機酸イオン、有機酸イオンのいずれでもよい。
上記の多価金属塩の2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+、Al3+などが挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl、NO3−、CHCOO、I、Br、ClO などが挙げられる。これらの中でも、凝集の効果が高い、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩を用いることが好ましい。また、好ましい多価金属塩の具体例としては、例えば、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、CaCl(塩化カルシウム)、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を確保でき、かつ、前処理液による跡残りが低減する(跡が目立たなくなる)ため、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム及び塩化カルシウムのうち少なくともいずれかがより好ましい。
多価金属塩以外の金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの一価の金属塩が挙げられる。硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
なお、多価金属化合物としては、上記の他に、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、及びベントナイト等の無機顔料、並びにアクリル系プラスチックピグメント、及び尿素高分子物質などの有機顔料が挙げられる。
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン性有機化合物としては、特に限定されるものではないが、有機酸塩、カチオン性樹脂、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。カチオン性有機化合物の中でも、捺染インク組成物に含まれる成分との反応性に優れるという点から、カチオン性樹脂及びカチオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
有機酸塩としては、例えば、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸等の塩を例示することができる。有機酸塩の対イオン(カチオン)は、特に限定されず、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。有機酸塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン性樹脂としては、例えば、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアリルアミン系樹脂等が挙げられる。
カチオン性のウレタン系樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。カチオン性のウレタン系樹脂としては、例えば、ハイドラン CP−7010、CP−7020、CP−7030、CP−7040、CP−7050、CP−7060、CP−7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR−2120C、WBR−2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB−1200、CD−1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
カチオン性のアリルアミン系樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
このようなカチオン性のアリルアミン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、PAA−HCL−01、PAA−HCL−03、PAA−HCL−05、PAA−HCL−3L、PAA−HCL−10L、PAA−H−HCL、PAA−SA、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、P
AA−25、PAA−H−10C、PAA−D11−HCL、PAA−D41−HCL、PAA−D19−HCL、PAS−21CL、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−22SA、PAS−M−1A、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−92、PAS−92A、PAS−J−81L、PAS−J−81(商品名、ニットーボーメディカル会社製)、ハイモ Neo−600、ハイモロック Q−101、Q−311、Q−501、ハイマックス SC−505、SC−505(商品名、ハイモ株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級及び第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、脂肪酸アミドアミン、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩、アルキルベタイン、脂肪酸アミドベタイン、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。具体的には、第4級アンモニウム系としてアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系としてN−メチルビスヒドロキエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等が挙げられ、更に例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチル硫酸塩、ジメチルエチルオクチルアンモニウムエチル硫酸塩、トリメチルラウリルアンモニウム塩酸塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
このようなカチオン性の界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、カチオーゲンTML、カチオーゲンTMP、カチオーゲンTMS、カチオーゲンES−O、カチオーゲンES−L、カチオーゲンES−L−9、カチオーゲンES−P(いずれも第一工業製薬株式会社製)、アモーゲンS−H、アモーゲンK、アモーゲンCB−H、アモーゲンHB−C、アモーゲンAOL(いずれも第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態の前処理液の全体に対するカチオン性有機化合物の合計の含有量(固形分量)は、上述の効果が発揮されるように適宜決定することができ、例えば、前処理液の全質量に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下、特に好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
3.2.その他の成分
3.2.1.水
本実施形態の前処理液は、水を含んでもよい。水としては、上述の捺染インク組成物において説明したと同様である。水の含有量は、前処理液の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。
3.2.2.水溶性有機溶剤
本実施形態の前処理液は、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤は、記録媒体に対する前処理液の濡れ性を向上させることができる場合がある。水溶性有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類及びアルコキシア
ルキルアミド類の少なくとも一種を例示できる。また、水溶性有機溶剤としては、これら以外の含窒素化合物、糖類、アミン類等であってもよい。また、前処理液は、上述した捺染インク組成物に用い得る水溶性有機溶剤を含有してもよい。
前処理液には、水溶性有機溶剤を複数種を含んでもよい。水溶性有機溶剤を含む場合には、前処理液の全体に対する、水溶性有機溶剤の合計の含有量は、0.1質量以上20質量%以下、好ましくは0.3質量以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量以上10質量%以下、さらに好ましくは1質量以上7質量%以下である。
3.2.3.樹脂エマルション
前処理液は、樹脂エマルションを含有してもよい。樹脂エマルションを含有することで、捺染インク組成物に含まれる自己分散型顔料の布帛に対する定着(固着)性をさらに高めることができる場合がある。また、樹脂エマルションは、前処理液及び/又は捺染インク組成物が布帛に浸透するのを抑制する目止め剤として機能させてもよい。
このような樹脂エマルションとしては、限定されないが、ウレタン系、スチレンアクリル系、アクリル系、及び、塩化ビニル−酢酸ビニル系から選択される少なくとも一種の樹脂エマルションを例示することができる。前処理液では、これらの樹脂エマルションのうち1種以上を使用することができる。
ウレタン系樹脂エマルションとしては、分子中にウレタン結合を有するものであれば特に制限されないが、ウレタン結合に加えて、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン系樹脂エマルション、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン系樹脂エマルション、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン系樹脂エマルション等も使用することができる。なお、後述の捺染インク組成物に配合される架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションを含んでもよい。
前処理液に樹脂エマルションを含有させる場合には、前処理液中の樹脂エマルションの固形分換算での含有量は、前処理液の総質量を100質量%としたときに、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。樹脂エマルションの固形分換算での含有量が前記範囲であると、画像の洗濯耐久性がさらに良好なものとなることがある。固形分換算の量とは、樹脂エマルションにおける樹脂(固形分)以外の物質を除いた量をいうものとする。
なお、前処理液に樹脂エマルションを含有させる場合であって、捺染インク組成物に樹脂エマルションが配合された場合には、両者の樹脂エマルションは、同種であっても異種であってもよい。
3.2.4.界面活性剤
本実施形態の前処理液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、上述の捺染インク組成物において説明したと同様である。前処理液に界面活性剤を配合する場合には、前処理液全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下配合することが好ましい。
前処理液が界面活性剤を含有することにより、ヘッドからインクを吐出する際の安定性が増す傾向がある。また、適切な量の界面活性剤の使用は、布帛への浸透性が向上し、凝集剤をより均一に配置させることができる。これにより、自己分散型顔料の凝集や、捺染インク組成物の増粘が生じやすくなり、捺染物の発色性をさらに良好にすることができる。
3.2.5.その他の成分
本実施形態の前処理液は、必要に応じて、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防黴剤などの、種々の添加剤を適宜添加することができる。
3.3.前処理液の物性
本実施形態に係る前処理液は、布帛への浸透性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、30mN/m以上、好ましくは35mN/m以上、より好ましくは38mN/m以上、さらに好ましくは40mN/m以上であることが好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、前処理液は、インクジェット法によって布帛に付着されてもよく、そのようにする場合には、20℃における粘度を、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上5mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上3.6mPa・s以下とすることがより好ましい。
一方、前処理液は、インクジェット法以外の方法で行われてもよい。そのような方法としては、前処理液を各種のスプレーを用いて布帛に塗布する方法、前処理液に布帛を浸漬させて塗布する方法、処理液を刷毛等により布帛に塗布する方法等の非接触式及び接触式のいずれか又はそれらを組み合わせた方法が挙げられる。
前処理液がこのようなインクジェット法以外の方法によって布帛に付着される場合には、20℃における粘度は、インクジェット法による場合よりも高くてもよく、例えば、1.5mPa・s以上100mPa・s以下、好ましくは1.5mPa・s以上50mPa・s以下、より好ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下とすることが好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
4.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
4.1.前処理液の調製
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌し十分に混合した。1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、各前処理液を得た。表1中の数値は、質量%を示し、純水(イオン交換水)は各前処理液の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。
また、凝集剤についても表1に記載したものを用いた。表1には、凝集剤の質量%を記載した。すなわち、前処理液の調製にはエマルションを用いたが、固形分量を換算して表1に記載した。
Figure 2018053171
4.2.捺染インク組成物の調製
表2の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、各捺染インク組成物を得た。表2中の数値は、質量%を示し、純水(イオン交換水)は各捺染インク組成物の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。また、表2には、各実施例及び各比較例で使用した前処理液のNo.を記載した。
Figure 2018053171
4.3.捺染インク組成物に使用した樹脂
表2に実施例、比較例で使用した捺染インク組成物に用いた樹脂を記載した。なお、タケラックWS−6021は三井化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有するポリエーテル骨格を有するウレタン系樹脂、タケラックWS−5100は三井化学株式会社製の自己架
橋性架橋基を有するポリカーボネート骨格を有するウレタン系樹脂、エラストロンE−37は、第一工業製薬株式会社製の自己架橋性架橋基を有するポリエステル骨格を有するウレタン系樹脂、タケラックW6110は、三井化学株式会社製の自己架橋性架橋基を有しないウレタン系樹脂(ポリカーボネート系)である。表2中の架橋性基を有するウレタン系樹脂および非架橋性樹脂の含有量は樹脂固形分量を表す。
また、各樹脂の破断点伸度及び100%モジュラスの値は、以下の通りである。
タケラックWS−6021:破断点伸度750%、モジュラス3MPa
タケラックWS−5100:破断点伸度180%、モジュラス28MPa
エラストロンE−37:破断点伸度500%、モジュラス2MPa
タケラックW6110:破断点伸度550%
である。
なお、破断点伸度は、各樹脂のエマルションを用いて、約60μmの厚さのフィルムを作成し、170℃5分間加熱した後、引張試験ゲージ長20mm及び引っ張り速度100mm/分の条件下で測定して得られた値を採用した。また、100%モジュラスは、前記引張試験においてフィルムが元の長さに対し100%伸びた時の引っ張り応力を測定して得られた値を採用した。
表2中、顔料分散液A〜Dは、いずれも固形分15%のものを用いた。各顔料分散液の製造は以下の通りとした。
(顔料分散液A)
色材としてカーボンブラックであるMA100(商品名、三菱化学株式会社製);20部をスルホラン;250部中に混合し、アイガーモーターミルM250型(商品名、アイガージャパン社製)で、ビーズ充填率:70%及び回転数:5,000rpmの条件下で1時間整粒分散した。得られた顔料ペーストと溶剤の混合液をエバポレーターに移し、30mmHg以下に減圧しながら、120℃に加熱して、系内に含まれる水分をできるだけ留去した後、150℃に温度制御した。次いで、三酸化硫黄25部を加えて6時間反応させ、反応終了後、過剰なスルホランで数回洗浄した後に水中に注ぎ濾過することで、スルフィン酸基(SO−)あるいはスルホン酸基(SO−)等の硫黄含有分散性付与基を顔料表面に直接導入した、自己分散型カーボンブラック顔料のスラリーを得た。
上記材料・方法で得られた自己分散型カーボンブラック顔料;20部に、湿潤剤としてアセチレングリコール系界面活性剤であるサーフィノール465(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製);1部、中和剤としてトリエタノールアミン;2部、イオン交換水;77部を加え、ペイントシェーカー(ガラスビーズ使用、ビーズ充填率:60%、メディア径:1.7mm)を使用して、顔料の平均粒子径(二次粒子径)が100nmになるまで分散して、スルフィン酸基(SO−)あるいはスルホン酸基(SO−)等の硫黄含有分散性付与基(親水性基)を顔料表面に直接導入した自己分散型カーボンブラック顔料の分散混合物を得た。分散時間は約1時間であった。
得られた分散混合物をポリプロピレン製容器に密封し、80℃環境下にて2時間加熱処理した後室温まで自然冷却させて顔料分散液Aを得た。顔料固形分濃度は、15.0質量%となるように調製した。
(顔料分散液B)
色材としてカーボンブラックであるFW18(商品名、デグサ社製);35部をイオン交換水;1,000部中に混合して、ボールミルにて粉砕した。この粉砕原液に次亜塩素酸ナトリウム;400部を加え、90℃〜100℃に加熱しながら10時間攪拌し、反応
させた。反応終了後の混合物の水洗・濾過を数回繰り返すことにより、カルボン酸基を直接顔料表面に導入した自己分散型カーボンブラック顔料のスラリーを得た。
上記材料・方法で得られた自己分散型カーボンブラック顔料;20部に、中和剤としてトリイソプロパノールアミン;3部、水溶性有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル;5部、イオン交換水;71.8部を加え、ペイントシェーカー(ジルコニアビーズ使用;ビーズ充填率:60%、メディア径:1.7mm)を使用して顔料の平均粒子径(二次粒子径)が100nmになるまで分散して、カルボキシル基を顔料表面に直接導入した自己分散型カーボンブラック顔料の分散混合物を得た。分散時間は約3時間であった。
得られた分散液混合物に、湿潤剤としてアセチレンアルコール系界面活性剤であるサーフィノール61(商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製);0.2部を加えてよく攪拌混合し、これをポリプロピレン製容器に密封し、70℃環境下にて10時間加熱処理した後室温まで自然冷却させて、顔料分散液Bを得た。顔料固形分濃度は、15.0質量%となるよう調製した。
(顔料分散液C)
20g(固形分)のカーボンブラック、9mmolの((4−アミノベンゾイルアミノ)−メタン−1,1−ジイル)ビスホスホン酸一ナトリウム塩(処理剤)、20mmolの硝酸、及び200mLの純水を混合した。この際、カーボンブラックには、ブラックパールズ880(商品名、キャボット製)を用い、混合は、シルヴァーソン混合機を用いて、室温で6,000rpmにて混合した。30分後、この混合物に少量の水に溶解させた20mmolの亜硝酸ナトリウムをゆっくり添加した。この混合によって混合物の温度は60℃に達し、この状態で1時間反応させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、混合物のpHを10に調整した。30分後、20mLの純水を加え、スペクトラムメンブランを用いてダイアフィルトレーションを行い、その後、顔料の含有量が10.0%となるようにして、分散液を得た。このようにして、顔料粒子の表面に、−C−CONH−CH−(PO(OH)(ONa))(PO(OH))基が結合している自己分散顔料が水中に分散された状態の分散液を得た。官能基の導入量は0.33mmol/gであった。得られた分散液に対して、イオン交換法によりナトリウムイオンをアンモニウムイオンに置換して、顔料の含有量が15質量%である顔料分散液Cを得た。
(顔料分散液D)
樹脂(メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレート=25/50/15/10の質量比で共重合したもの。重量平均分子量12,000)40質量部を、水酸化カリウム7質量部、水23質量部、及びトリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル30質量部を混合した液に投入し、80℃で撹拌しながら加熱して樹脂水溶液を調製した。
上記の樹脂水溶液(固形分43質量%)1.75kgに、3.0kgのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7、平均粒子径100nm)及び10.25kgの水をそれぞれ配合し、混合撹拌機で撹拌しプレミキシングを行い、混合液を得た。0.5mmのジルコニアビーズを85%充填した1.5リットルの有効容積を有する多ディスク型羽根車を備えた横型のビーズミルを用いて、上記の混合液を多パス方式により分散させた。具体的には、ビーズ周速8m/秒、1時間に30リットルの吐出量で2パス行い、平均粒子径325nmの顔料分散混合液を得た。次に、0.05mmのジルコニアビーズを95質量%充填した1.5リットルの有効容積を有する横型のアニュラー型のビーズミルを用いて、上記顔料分散混合液の循環分散を行った。スクリーンは0.015mmのものを使用し、ビーズ周速10m/秒で、顔料分散混合液量10kgを循環量300リットル/時
で4時間分散処理を行い、顔料の固形分含有量15質量%、樹脂含有量5%の水性の顔料分散液Dを得た。
また、表2中、BYK−348は、ビックケミー・ジャパン社製のシロキサン系界面活性剤である。その他、化合物名で記載した成分は、いずれも試薬として購入したものを用いた。
4.4.評価試験
4.4.1.印捺物の作成
表2に記載した各実施例及び各比較例の前処理液をスポンジローラーに十分に含ませ、該ローラーを、布帛(プリントスター へビーウェイト(白)5.6oz)に対して、上下左右にそれぞれ3〜4回ころがし、できるだけ均一に前処理液を塗布した。塗布量は、A4サイズの面積あたり、約20gであった。前処理液を塗布した布帛を、ヒートプレスで165℃・45秒の熱処理を行い乾燥させた。
乾燥後の布帛に、セイコーエプソン株式会社製プリンター(SC−F200)を用いて、各捺染インク組成物により、解像度1440dpi×1440dpiとし、塗布量200mg/inchで印刷を行った。該印刷後に、再度コンベアオーブン(熱風乾燥法)にて、165℃・5分間の熱処理を行い、印捺物の定着を行った。
4.4.2.摩擦堅牢度試験
各例の印捺物に対してISO−105 X12に規定の方法に従い、I型(クロックメーター)試験機を用いて摩擦に対する染色堅牢度試験を実施した。乾摩擦はISO−105 X12に規定される乾燥試験、湿摩擦はISO−105 X12に規定される湿潤試験に則って試験し、汚染グレースケールを用いて評価した。評価基準は以下の通りとし、結果を表2に記載した。
乾燥摩擦堅牢性
◎:摩擦堅牢性が4級以上である
○:摩擦堅牢性が3級以上4級未満である
△:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である
×:摩擦堅牢性が2級未満である。
湿摩擦堅牢性
◎:摩擦堅牢性が3級以上である
○:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である
△:摩擦堅牢性が1級以上2級未満である
×:摩擦堅牢性が1級未満である。
4.4.3.発色性の評価
各例の印捺物のOD値を、測色器(商品名「Gretag Macbeth Spectrolino」、X−RITE社製)により測定し、得られたOD値に基づいて、下記評価基準により発色性を評価し、結果を表3、表4に記載した。
◎:OD値が1.45以上である
○:OD値が1.40以上1.45未満である
△:OD値が1.30以上1.45未満である
×:OD値が1.30未満である。
4.4.4.保存安定性
各例の捺染インク組成物をサンプル瓶に入れ、50℃で1週間放置し、放置前後の粘度を山一電機社製デジタル粘度計VM−100を用いて測定した。放置前の粘度に対して放置後の粘度がどの程度変化したか(粘度変化)により、保存安定性を評価した。評価基準を以下に示す。評価結果を表2に記載した。
○:粘度変化が10%未満
△:粘度変化が10%以上20%未満
×:粘度変化が20%以上。
4.4.5.吐出安定性
インクジェット方式のプリンターEM−930C(商品名:セイコーエプソン株式会社製)に実施例及び比較例の各捺染インク組成物をそれぞれ充填し、クリーニングを3回繰り返した直後に全ノズルを吐出しながら20分間連続印刷して、印刷抜け、曲がりのノズル本数を以下の基準に基づいて判定した。
○:抜け、曲がりが0ノズル
△:抜け、曲がりが1〜5ノズル
×:抜け、曲がりが6ノズル以上。
4.4.6.印捺物の風合いの評価
各例の印捺物の印捺部分を手のひらで直接触れ、その際の感触を以下の基準に従って判定した。判定は3人で行い、最も支持の多い意見を判定の結果とした。判定が1人ずつに分かれた場合は、それらの中間となる意見を判定結果とし、表2に記載した。
◎:印捺部の硬さ、手触りが元の布帛とほぼ変わらず、良好である
○:印捺部の硬さ、又は手触りが元の布帛に比べやや変化するが、実用として問題ない
△:印捺部の硬さ、又は手触りが元の布帛に比べ悪化するが、許容範囲である
×:印捺部が硬くなり、使用感が悪く実用できない。
4.5.評価結果
自己分散型顔料及び架橋性基を有するウレタン系樹脂の両者を含む各実施例の捺染インク組成物は、前処理液の凝集剤の種類にかかわらず、いずれも摩擦堅牢性、発色性及び保存安定性に優れた結果となった。保存安定性に優れる場合には、吐出安定性も良好な結果であった。
また、実施例3と実施例11の結果から自己分散型顔料及び架橋性基を有するウレタン系樹脂の両者を含む捺染インク組成物は、前処理液の凝集剤として、カチオン性ポリマーを用いた場合に、乾摩擦堅牢性および湿摩擦堅牢性がより優れることがわかった。
これに対して、樹脂分散型の顔料を使用した比較例1、2、4では、発色性が劣る結果となった。これは、前処理液中の凝集剤による凝集効果が、自己分散型顔料の場合に比較して不十分であった、又は、凝集剤による凝集速度が不十分であったためと考えられる。その結果、顔料が布帛の表面に残り難く、布帛内部への浸透等により発色性が劣ったものと考えられる。さらに、比較例4をみると、樹脂分散顔料を増やした場合、発色性は改善するものの、保存安定性、吐出安定性及び、風合いが不十分となった。この一因は、分散剤が増えたことによる粘度の上昇、及び/又は、分散剤と架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基との反応が進んだことによる粘度の上昇によると考えられる。
このことから、実施例6と比較して、樹脂分散顔料で高発色とするには添加量を増やす必要があるが、その場合、高粘度化により、他の成分(例えば、定着樹脂)を増やす余地
が狭くなることが示唆される。また逆に、自己分散顔料を用いれば、樹脂分散顔料よりも少ない添加量で高発色とすることができるため、代わりに他の成分(定着樹脂等)の添加量を増やすことができることが分かる。
また、架橋性基を有しないウレタン系樹脂を使用した比較例3では、摩擦堅牢性が不十分となった。これは、樹脂による顔料を定着させる能力が不足したためと考えられる。
一方、各実施例をみると、架橋性基を有するウレタン系樹脂が、ポリエーテル骨格を有する場合は、ポリカーボネート骨格を有する場合、ポリエステル骨格を有する場合に比べて、風合いがより良好となることが分かった。また、ポリカーボネート骨格を有する場合は、ポリエーテル骨格を有する場合、ポリエステル骨格を有する場合に比べて、摩擦堅牢性(特に乾摩擦堅牢性)が良好となることが分かった。このことは、骨格そのものの性質や、破断点伸度及び100%モジュラスの値が関与したことによると考えられる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (7)

  1. 表面に親水性基を有する自己分散型顔料と、
    架橋性基を有するウレタン系樹脂分散体と、
    を含む、捺染インクジェットインク組成物。
  2. 請求項1において、
    前記自己分散型顔料は、自己分散型のカーボンブラックである、捺染インクジェットインク組成物。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記親水性基が、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、及び−NR(式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1以上12以下のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一種以上の官能基である、捺染インクジェットインク組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記自己分散型顔料の前記捺染インクジェットインク組成物全体に対する合計の含有量は、3質量%以上5質量%以下である、捺染インクジェットインク組成物。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記ウレタン系樹脂分散体は、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を有する、捺染インクジェットインク組成物。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記ウレタン系樹脂分散体の破断点伸度は、170%以上である、捺染インクジェットインク組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録する、記録方法。
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