JP2019042997A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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賢一 瀬口
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賢一 瀬口
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Abstract

【課題】反応液を用いるインクジェット記録方法において、印刷画像の耐久性の低下と、画像境界部での滲みの低減が可能なインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供する。【解決手段】本発明に係るインクジェット記録方法は、記録媒体にインク組成物が含む成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域30を形成する反応液付着工程と、前記記録媒体に顔料を含むインク組成物を付着させることにより、印刷画像40を形成するインク組成物付着工程と、を備え、前記印刷画像40は、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である内部領域31と、前記内部領域31と前記印刷画像40の端である画像境界部42と間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間34と、を有する。【選択図】図2

Description

本発明は、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルから微小なインク滴を吐出させて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法が知られており、例えば、商業印刷分野での使用も検討されている。そして、インクとして、地球環境面および人体への安全性等の観点から、水系インク組成物(以下、「水系インク」または、「インク」ともいう。)の使用が検討されており、インク低吸収性の記録媒体(例えば、アート紙やコート紙)またはインク非吸収性の記録媒体(例えば、プラスチックフィルム)に対して画像の記録を行う際には、インクを早期に固定して、記録後の一次加熱温度を高くせずに画質を向上させするために、顔料等のインク成分を凝集させる凝集剤として、樹脂や金属塩等を含有する反応液を用いることがある(例えば、特許文献1。)。
特開2015−227003号公報
しかしながら、余剰の凝集剤に起因して記録物の耐擦性などの耐久性が低下する場合がある。これは、反応液が付着して形成された反応液付着領域の端部であって、インク成分の付着がなくなる領域である画像境界部で特に起こりやすい現象である。
そこで、凝集剤による耐久性の低下を防止するために、反応液の凝集剤の含有量を減らすことが考えられる。しかし、反応液の凝集剤の含有量を減らすと、インク成分の凝集が不十分となり、画像境界部では滲みが発生する場合がある。この画像の品質低下は、特に、記録媒体がフィルム等のインク低吸収性またはインク非吸収性の記録媒体において顕著である。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、反応液を用いるインクジェット記録方法において、印刷画像の耐久性の低下と、画像境界部での滲みの低減が可能なインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
記録媒体にインク組成物が含む成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域を形成する反応液付着工程と、
前記記録媒体に顔料を含むインク組成物を付着させることにより、印刷画像を形成するインク組成物付着工程と、を備え、
前記印刷画像は、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である内部領域と、前記内部領域と前記印刷画像の端である
画像境界部と間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間と、を有することを特徴とする。
上記適用例によれば、反応液を用いるインクジェット記録方法において、反応液の凝集剤の含有量を低減することなく印刷画像の耐久性の低下が低減する。また、十分な発色が得られるため、画像の品質低下が防止され、画像境界部での滲みの低減が可能となる。
[適用例2]
上記適用例において、
前記内部領域における単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比が0.1以上0.6以下であることができる。
適用例2によれば、凝集剤/顔料が0.1以上0.6以下であることにより、より印刷画像の耐久性の低下と画像境界部での滲みの低減が可能となる。また、画像の光沢が向上する。
[適用例3]
上記適用例において、
前内部領域における前記インク組成物の付着量が、5mg/inch以上20mg/inch未満であることができる。
適用例3によれば、内部領域におけるインク組成物の付着量が、5mg/inch以上20mg/inch未満であることにより、発色性が向上して画像境界部での滲みが低減する。
[適用例4]
上記適用例において、
前記内部領域における前記顔料の付着量が、0.1mg/inch以上0.4mg/inch未満であることができる。
適用例4によれば、内部領域における顔料の付着量が、0.1mg/inch以上0.4mg/inch未満であることにより、発色性が向上して画像境界部での滲みが低減する。また、境界間距離dが1.0mm未満であることにより、内部領域における顔料の付着量が、0.1mg/inch以上0.4mg/inch未満であっても印刷画像の耐久性の低下が低減する。
[適用例5]
上記適用例において、
前記凝集剤が、多価金属塩とカチオン性ポリマーと有機酸とにおいて何れか1種以上を含むことができる。
適用例5によれば、凝集剤が、多価金属塩とカチオン性ポリマーと有機酸とにおいて何れか1種以上を含むことにより、インク組成物に含まれる顔料等の成分と凝集剤とが反応して凝集し、得られる記録物の発色性して画像境界部での滲みの低減が可能となる。また、凝集剤として、印刷画像の耐久性の低下の原因となりやすい多価金属塩を使用する場合においても、本適用例の構成により、印刷画像の耐久性の低下の低減が可能となる。
[適用例6]
上記適用例において、
前記インク組成物が樹脂を含むことができる。
適用例6によれば、インク組成物が樹脂を含むことにより、より記録物の耐擦性が向上し、印刷画像の耐久性の低下が低減する。
[適用例7]
上記適用例において、
前記記録媒体が、低吸収性記録媒体または非吸収記録媒体であることができる。
適用例7によれば、記録媒体が、低吸収性記録媒体または非吸収記録媒体である場合においても、印刷画像の耐久性の低下と、画像境界部での滲みの低減が可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例8]
上記適用例において、
前記境界間に、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が前記所定未満である反応液付着領域を有することができる。
適用例8によれば、境界間に、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が前記所定未満である反応液付着領域を有する場合においても、印刷画像の耐久性の低下と、画像境界部での滲みの低減が可能なインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例9]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
適用例1ないし適用例9の何れか一例に記載のインクジェット記録方法により記録を行うことを特徴とする。
適用例9によれば、反応液を用いるインクジェット記録方法において、反応液の凝集剤の含有量を低減することなく印刷画像の耐久性の低下が低減する。また、十分な発色が得られるため、画像の品質低下が防止され、画像境界部での滲みの低減が可能となる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法を行うインクジェット記録装置の概略斜視図。 本実施形態における記録媒体の記録領域を示す説明図。 記録媒体の記録領域に形成された、反応液付着領域(内部領域)と印刷画像との関係を示す説明図。
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体にインク組成物が含む成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域を形成する反応液付着工程と、前記記録媒体に顔料を含むインク組成物を付着させることにより、印刷画像を形成するインク組成物付着工程と、を備え、前記印刷画像は、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が
所定以上である内部領域と、前記内部領域と前記印刷画像の端である画像境界部と間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間と、を有することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、前述のインクジェット記録方法により記録を行うインクジェット記録装置であることを特徴とする。例えば、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、記録媒体にインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域を形成する反応液吐出部と、前記記録媒体に顔料を含むインク組成物を付着させることにより、前記記録媒体に印刷画像を形成するインク吐出部と、前記印刷画像が、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である内部領域と、前記内部領域と前記印刷画像の端である画像境界部と間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間と、を有するように、前記反応液吐出部と前記インク吐出部を制御する制御部とを備えるものである。
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置について、インクジェット記録装置、インク組成物、反応液および記録媒体の順に各構成を説明し、その次に、インクジェット記録方法の各工程を説明する。
1.1.インクジェット記録装置
まず、本実施形態に係るインクジェット記録方法が実施されるインクジェット記録装置の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録方法に使用できるインクジェット記録装置は、以下の態様に限定されるものではない。
以下、本実施形態で用いられるインクジェット記録装置について、カートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明するが、インクジェット記録装置は、オンキャリッジタイプのプリンターであることに限定されるものではなく、カートリッジがキャリッジに搭載されないで外部に固定された、オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。
また、以下の説明に用いるプリンターは、所定の方向に移動するキャリッジにプリントヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するシリアルプリンターであるが、本実施形態において、記録装置はシリアルプリンターに限定されるものではなく、ヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、プリントヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出するラインプリンターであってもよい。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
記録装置としては、例えば、図1に示すインクジェットヘッドを搭載したインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)が挙げられる。図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド2を搭載すると共にインクや反応液が充填されたカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェットヘッド2の下方に配設され、記録媒体である記録媒体Mが搬送されるプラテン5と、記録媒体Mを加熱する加熱機構6と、キャリッジ4を記録媒体Mの媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録媒体Mを媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、キャリッジ4の支持部材であるガイドロッド9と、キャリッジ4の位置を検出するリニアエンコーダー10を備え
る。また、プリンター1は制御部CONTを備え、制御部CONTにより、プリンター1全体の動作が制御すされる。ここで、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
インクジェットヘッド2は、記録媒体Mにインクや反応液を付着させる手段であり、インクや反応液を付着させる記録媒体Mと対向する面に、インクや反応液を吐出する複数のノズル(図示せず)を備える。これらの複数のノズルは、例えば、列状に配列されており、これにより、ノズルプレート表面にノズル面(図示せず)が形成される。本実施形態では、インクジェットヘッド2は、記録媒体Mに凝集剤を含む反応液を付着させることにより、記録媒体Mに反応液付着領域を形成する反応液吐出部として機能すると共に、反応液が付着された記録媒体Mに反応液によって凝集する顔料を含むインク組成物を付着させることにより、記録媒体Mに印刷画像を形成するインク吐出部として機能する。
なお、本実施形態では、記録媒体Mに反応液付着領域を形成する反応液吐出部がインクジェットヘッド2に設けられる構成としているが、反応液吐出部を備える反応液吐出手段は、インクジェットヘッド2による吐出以外の手段、例えば、インクジェットヘッド2以外に設けた反応液を噴射する手段であってもよい。
本実施形態において、インクジェットヘッド2によりインクや反応液をノズルから吐出させる方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に吐出させ、インクの液滴が偏向電極間を飛翔する間に記録情報信号に対応して吐出させる方式(静電吸引方式);小型ポンプでインクに圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を吐出させる方式;インクに圧電素子で圧力と記録情報信号を同時に加え、インクの液滴を吐出・記録させる方式(ピエゾ方式);インクを記録情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インクの液滴を吐出・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
インクジェットヘッド2としては、ライン式インクジェットヘッド、シリアル式インクジェットヘッドのいずれも使用可能であるが、図1に示すように、本実施形態ではシリアル式インクジェットヘッドを用いている。
ここで、シリアル式インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置とは、記録用のインクジェットヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させつつインクを吐出させる走査(パス)を、複数回行うことによって記録を行うものである。シリアル型のインクジェットヘッドの具体例としては、記録媒体の媒体幅方向(記録媒体の搬送方向に交差する方向)に移動するキャリッジにインクジェットヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってインクジェットヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を吐出するものが挙げられる。
一方、ライン式インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させつつ、インクを吐出させる走査(パス)を1回行うことにより記録を行うものである。ライン型のインクジェットヘッドの具体例としては、インクジェットヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、インクジェットヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出するものが挙げられる。
図1に示すように、本実施形態において、インクジェットヘッド2にインクや反応液を供給するカートリッジ3は、独立した4つのカートリッジからなる。4つのカートリッジのそれぞれに、例えば、異なる種類のインクや反応液が充填される。カートリッジ3は、インクジェットヘッド2に対して着脱可能に装着される。なお、図1の例では、カートリ
ッジの数が4つであるが、これに限定されず、所望の数のカートリッジを搭載することができる。
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられる。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿った主走査方向に移動する。なお、図1の例では、キャリッジ4が主走査方向に移動するものを示したが、これに限定されず、主走査方向の移動に加えて、副走査方向に移動するものであってもよい。
インクジェットヘッド2によるインクや反応液の吐出の諸条件(インクや反応液の付着量、吐出速度等)の制御、キャリッジ4の移動速度等の諸条件の制御は、制御部CONTによって行われる。本実施形態においては、リニアエンコーダー10がキャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出し、検出された信号が位置情報として制御部CONTに送信される。制御部CONTは、このリニアエンコーダー10からの位置情報に基づいてインクジェットヘッド2の走査位置を認識し、インクジェットヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御する。
加熱機構6は、記録媒体Mを加熱できる位置に設けられていれば、その設置位置は特に限定されるものではない。図1の例では、加熱機構6は、プラテン5上であって、インクジェットヘッド2と対向する位置に設置されている。このように、加熱機構6がインクジェットヘッド2と対向する位置に設置されていると、記録媒体Mにおける液滴の付着位置を確実に加熱できるため、記録媒体Mに付着した液滴を効率的に乾燥することができる。
加熱機構6としては、例えば、記録媒体Mを熱源に接触させて加熱するプリントヒーター機構、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長をもつ電磁波)等を照射する機構、温風を吹き付けたりするドライヤー機構等を用いることができる。
加熱機構6による記録媒体Mの加熱は、インクジェットヘッド2のノズルから吐出された液滴が記録媒体Mに付着する前または付着する時に行われる。加熱の諸条件の制御(例えば、加熱実施のタイミング、加熱温度、加熱時間等)は、制御部CONTによって行われる。
加熱機構6による記録媒体Mの加熱は、インクの濡れ広がり、浸透性および乾燥性の向上、吐出安定性等の観点から、記録媒体Mが35℃以上65℃以下の温度範囲を保持するように行われることが好ましい。ここで、記録媒体Mを加熱する温度とは、加熱時における記録媒体Mの記録面の表面の温度を意味する。
プリンター1は、加熱機構6の他に、さらに、図示しない第2の加熱機構を備えていてもよく、その場合には、加熱機構6よりも記録媒体Mの搬送方向の下流側に設置される。第2の加熱機構は、加熱機構6によって記録媒体Mを加熱した後、つまり、ノズルから吐出された液滴が記録媒体Mに付着した後に、当該記録媒体Mの加熱を行うものである。プリンター1が第2の加熱機構を備えると、記録媒体Mに付着したインクの液滴の乾燥性が向上する。第2の加熱機構としては、上記の加熱機構6で説明したいずれかの機構(例えば、ドライヤー機構等)を用いることができる。
本実施形態に係るインクジェット記録方法では、上記のインクジェット記録装置に、以下に説明するインク組成物を用いて記録媒体Mに記録を行い、記録媒体Mに印刷画像を形成する。
1.2.インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインク組成物は、後述の反応液によって凝集する成分を含むものであり、このインク組成物を記録媒体に付着させることにより、記録媒体に印刷画像を形成する。なお、反応液によって凝集する成分としては顔料、樹脂などがあげられ、顔料であることが画質が一層優れる点で好ましい。
以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインク組成物(以下、単に「インク」ともいう。)に含まれる成分および含まれ得る成分ついて詳細に説明する。
なお、本実施形態に係るインクジェット記録方法に用いられるインク組成物は、水系インクジェットインク組成物であることが好ましい。ここで、本発明における「水系」インクジェットインク組成物とは、水を主要な溶媒として、有機溶剤を主要な溶媒としない組成物である。インク組成物中の有機溶剤の含有量は、その組成物100質量%に対して30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。インク組成物(100質量%)中の水の含有量は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
1.2.1.顔料
本実施形態において、インク組成物は、色材として顔料を含む。顔料は、光やガス等に対して退色しにくい性質を有していることから、好ましく用いられる。顔料を用いて記録媒体上に形成された画像は、画質に優れるだけでなく、耐水性、耐ガス性、耐光性等に優れ、保存性が良好となる。この性質は、特にインク非吸収性または低吸収性の記録媒体上に形成された場合に顕著である。顔料は、凝集剤によって凝集する成分であることが好ましい。この場合、発色性や境界部の滲みの低減が特に優れ、また本実施形態によれば耐擦性を優れたものにすることができる。
本実施形態において使用可能な顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。一方、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
本実施形態で使用可能な顔料の具体例のうち、ブラック顔料としてはカーボンブラックが挙げられ、カーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、もしくはチャンネルブラック等(C.I.ピグメントブラック7)、また市販品としてNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA77、MA100、No.2200B等(以上商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上商品名、デグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上商品名、キャボット社製)が挙げられる。
ホワイト顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、および酸化ジルコニウムの白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色
の中空樹脂粒子および高分子粒子等の白色有機顔料を使用することもできる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、およびイエロー以外のカラーインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、10、C.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
インク組成物に含まれ顔料の含有量は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。
上記の顔料をインク組成物に適用するためには、顔料が水中で安定的に分散保持できるようにする必要がある。その方法としては、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂等の分散剤樹脂にて分散させる方法(以下、この方法により分散された顔料を「樹脂分散顔料」という。)、水溶性界面活性剤および/または水分散性界面活性剤の界面活性剤にて分散させる方法(以下、この方法により分散された顔料を「界面活性剤分散顔料」という。)、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、上記の樹脂あるいは界面活性剤等の分散剤なしで水中に分散および/または溶解可能とする方法(以下、この方法により分散された顔料を「表面処理顔料」という。)等が挙げられる。本実施形態において、インク組成物は、上記の樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料のいずれも用いることができ、必要に応じて複数種混合した形で用いることもできる。
樹脂分散顔料に用いられる分散剤樹脂としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を有するモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
上記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、上記分散剤樹脂の中和当量以上であれば特に制限はない。
上記分散剤樹脂の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が上記範囲であることにより、色材の水中での安定的な分散が得られ、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。
以上述べた分散剤樹脂としては市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
また、界面活性剤分散顔料に用いられる界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
上記分散剤樹脂または上記界面活性剤の顔料に対する添加量は、顔料100質量部に対して好ましくは1質量部〜100質量部であり、より好ましくは5質量部〜50質量部である。この範囲であることにより、顔料の水中への分散安定性が確保できる。
また、表面処理顔料としては、親水性官能基として、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SONH、−RSOM、−POHM、−PO、−SONHCOR、−NH、−NR(但し、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を示す。)等が挙げられる。これらの官能基は、顔料粒子表面に直接および/または他の基を介してグラフトされることによって、物理的および/または化学的に導入される。多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基等を挙げることができる。
また、前記の表面処理顔料としては、硫黄を含む処理剤によりその顔料粒子表面に−SOMおよび/または−RSOM(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す。)が化学結合するように表面処理されたもの、すなわち、前記顔料が、活性プロトンを持たず、スルホン酸との反応性を有さず、顔料が不溶ないしは難溶である溶剤中に、顔料を分散させ、次いでアミド硫酸、又は三酸化硫黄と第三アミンとの錯体によりその粒子表面に−SOMおよび/または−RSOMが化学結合するように表面処理され、水に分散および/または溶解が可能なものとされたものであることが好ましい。
前記官能基またはその塩を顔料粒子の表面に直接または多価の基を介してグラフトさせる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができる。例えば、市販の酸化カーボンブラックにオゾンや次亜塩素酸ソーダ溶液を作用し、カーボンブラックをさらに酸化処理してその表面をより親水化処理する手段(例えば、特開平7−258578号公報、特開平8−3498号公報、特開平10−120958号公報、特開平10−195331号公報、特開平10−237349号公報)、カーボンブラックを3−アミノ−N−アルキル置換ピリジウムブロマイドで処理する手段(例えば、特開平10−195360号公報、特開平10−330665号公報)、有機顔料が不溶又は難溶である溶剤中に有機顔料を分散させ、スルホン化剤により顔料粒子表面にスルホン基を導入する手段(例えば、特開平8−283596号公報、特開平10−110110号公報、特開平10−110111号公報)、三酸化硫黄と錯体を形成する塩基性溶剤中に有機顔料を分散させ、三酸化硫黄を添加することにより有機顔料の表面を処理し、スルホン基又はスルホンアミノ基を導入する手段(例えば、特開平10−110114号公報)等が挙げられるが、本発明で用いられる表面処理顔料のための作製手段はこれらの手段に限定されるものではない。
1つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
以上述べた樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料を水中に分散させる方法としては、樹脂分散顔料については顔料と水と分散剤樹脂、界面活性剤分散顔料については顔料と水と界面活性剤、表面処理顔料については表面処理顔料と水、また各々に必要に応じて水溶性有機溶剤・中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行うことができる。この場合、顔料の粒径としては、平均粒径で20nm〜500nmの範囲になるまで、より好ましくは50nm〜200nmの範囲になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。
1.2.2.樹脂
本実施形態において、インク組成物は、樹脂を含有することが好ましい。該樹脂は、インク組成物を固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有する。本実施形態において、樹脂は、本実施形態で使用するインク組成物の溶剤に難溶あるいは不溶である樹脂を、微粒子状にして分散させて(すなわちエマルジョン状態、あるいはサスペンジョン状態にして)含ませることができ、「バインダー固形分」や「樹脂エマルジョン」ともいう。
本実施形態において用いられる樹脂としては、特に限定されないが、上記の分散剤樹脂として用いられる樹脂の他、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、および塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、および天然樹脂が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーの少なくとも何れかの単独重合体又は共重合体であるアクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂の中でも、(メタ)アクリル系モノマーとビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。ビニル系モノマーとしては、限るものでは無いがスチレンなどが挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーとスチレンとの共重合体であるスチレン−アクリル共重合体系樹脂が特に好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、およびグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。また、樹脂としては、上記以外にもポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂も好ましく、これらの中でも特に、樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。
また、樹脂は直鎖又は分岐状の高分子であっても、3次元に架橋した高分子であってもよく、3次元に架橋した高分子が好ましい。
上記の樹脂を微粒子状態で得るには、以下に示す方法で得られ、そのいずれの方法でもよく、必要に応じて複数の方法を組み合わせてもよい。その方法としては、所望の樹脂を構成する単量体中に重合触媒(重合開始剤)と分散剤とを混合して重合(すなわち乳化重合)する方法、親水性部分を持つ樹脂を水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を水中に混合した後に水溶性有機溶剤を蒸留等で除去することで得る方法、樹脂を非水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を分散剤と共に水溶液中に混合して得る方法等が挙げられる。上記の方法は、用いる樹脂の種類・特性に応じて適宜選択することができる。樹脂を分散する際に用いることのできる分散剤としては、特に制限はないが、アニオン性界面活性剤(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルリン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩等)、ノニオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等)を挙げることができ、これらを単独あるいは二種以上を混合して用いることができる。
上記のような樹脂として、微粒子状態(エマルジョン状態、サスペンジョン状態)で用いる場合、公知の材料・方法で得られるものを用いることも可能である。例えば、特公昭62−1426号公報、特開平3−56573号公報、特開平3−79678号公報、特開平3−160068号公報、特開平4−18462号公報等に記載のものを用いてもよい。また、市販品を用いることもでき、例えば、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上商品名、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学株
式会社製)、ジュリマーAT−613(商品名、東亜合成株式会社製)、ビニプラン700(商品名、日信化学工業株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
樹脂微粒子は、複合樹脂を含むことが好ましい。複合樹脂は、樹脂微粒子を構成する樹脂として、樹脂を構成するモノマー成分の構成(種類、含有量比の少なくとも何れか)が互いに異なる2種以上の樹脂からなり、この2種以上の樹脂は、樹脂微粒子のどの部位を構成するかは問わないものである。2種以上の樹脂はその境界で樹脂の構成が不連続に区別できるものに限られず、連続的にモノマー成分の構成が異なるものであっても良い。
特に、2種以上の樹脂の1つをコア樹脂、他の1つをシェル樹脂とし、コア樹脂を主に樹脂微粒子の中央部を構成する樹脂とし、シェル樹脂を主に樹脂微粒子の周辺部を構成する樹脂としたコアシェル樹脂微粒子とする場合、樹脂微粒子の周辺部と中央部でそれぞれ樹脂の特性を変えられる点で好ましい。この場合、シェル樹脂は樹脂微粒子の周辺部の少なくとも一部を構成するものであればよい。ここで、複合樹脂の1例としてコアシェル樹脂に関し記載するが、コアシェル樹脂に限らず複合樹脂であれば、同様の効果を奏する。コアシェル樹脂は、コアとシェルを独立してその架橋の程度やガラス転移温度を制御することができるため、樹脂微粒子の樹脂の溶解性を調整しやすいという観点から好ましい。
また、コアシェル樹脂ではない樹脂においても、樹脂のガラス転移温度や架橋の程度で溶解時間を調整することが可能である。さらに、ガラス転移温度や架橋の程度に限らず、樹脂合成に使用するモノマーの種類や量などの組成で調整することもできる。
樹脂を微粒子状態で用いる場合、インク組成物の保存安定性・吐出信頼性を確保する観点から、その平均粒径は5nm以上400nm以下の範囲が好ましく、より好ましくは50nm以上200nm以上の範囲である。樹脂微粒子の平均粒子径が前記範囲にあることにより、成膜性に優れると共に、凝集しても大きな塊ができにくいため、ノズルの目詰まりを低減することができる。なお、本明細書における平均粒子径は、特に明示がない限り体積基準のものである。測定方法としては、例えば、動的光散乱理論を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。このような粒度分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックUPA」等が挙げられる。
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、−20℃以上100℃以下であることが好ましく、−10℃以上80℃以下であることがより好ましく、0℃以上76℃以下であることがさらに好ましい。
樹脂の含有量の下限は、固形分換算でインク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。また、樹脂の含有量の上限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、記録時の吐出信頼性を確保し、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体上においても、耐
擦性に優れた画像を形成することができる。
1.2.3.水
本実施形態において、インク組成物は水を含有することが好ましい。水は、インク組成物の主となる媒体であり、加熱によって蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるため好適である。
水の含有量の下限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、水の含有量の上限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。
1.2.4.有機溶剤
本実施形態において、インク組成物は有機溶剤を含有してもよい。インク組成物が有機溶剤を含有することにより、記録媒体上に吐出されたインク組成物の乾燥性が良好となり、耐擦性に優れた画像を得ることができる。
インク組成物に用いる有機溶剤としては、特に限定されないが、水溶性有機溶剤であることが好ましい。水溶性有機溶剤を使用することにより、インク組成物の分散が安定化され、さらにインク組成物の乾燥性が良好となり、耐水性や耐擦性に優れた印刷画像を得ることができる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基を持つアミン類;グリセリンが挙げられる。インク組成物の乾燥性を向上させる点では、これらの中でも、プロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール等を用いることが好ましい。
また、本実施形態において、インク組成物に用いる有機溶剤としては、樹脂の溶解性が高く、耐水性や耐擦性に優れた印刷画像が得られる点により、含窒素溶剤を含むことが好ましい。含窒素溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
有機溶剤の含有量の下限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また、有機溶剤の含有量の上限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、220℃以上がさらに好ましい。有機溶剤の標準沸点の上限は、300℃以下が好ましく、270℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。有機溶剤の標準沸点が上記の範囲である場合、吐出安定性や耐擦性などがいっそう優れる点で好ましい。
なお、標準沸点が280℃超過の有機溶剤は、インクの水分を吸収して、インクジェットヘッド付近のインクを増粘させる場合があり、これにより、インクジェットヘッドの吐出安定性を低下させる場合がある。このため、本実施形態において、インク組成物は、標準沸点が280℃超の有機溶剤の含有量が、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。この場合には、記録媒体上でのインク組成物の乾燥性が高くなるので、特に低吸収性記録媒体または非吸収記録媒体への記録に適するものとなり、ブリードの発生が抑制された優れた画像を形成できる。また、得られた印刷画像のベタツキが低減され、耐水性や耐擦性に優れたものとなる。
標準沸点が280℃超の有機溶剤としては、例えば、グリセリンを挙げることができる。グリセリンは吸湿性が高く、標準沸点が高いため、インクジェットヘッドの目詰まりや、動作不良の原因となる場合がある。また、グリセリンは、防腐性が乏しく、カビや菌類を繁殖させやすいため、含有しないことが好ましい。
また、有機溶剤として標準沸点が280℃以下の有機溶剤の含有量の下限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。また、標準沸点が280℃以下の有機溶剤の含有量の上限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。標準沸点が280℃以下の有機溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク中の顔料および樹脂成分の分散安定性、連続吐出安定性、記録媒体へのインクの埋まり性(ぬれ広がり性)や浸透性、インクの耐乾燥がより向上する。
1.2.5.界面活性剤
本実施形態において、インク組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を含有することが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールおよび2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールおよび2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される1種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(商品名、エアープロダクツ社製)、サーフィノール465やサーフィノール61やサーフィノールDF110D(商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルス
ルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、サーフロンS144、S145(以上商品名、AGCセイミケミカル株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(以上商品名、住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(以上商品名、Dupont社製);FT−250、251(以上商品名、株式会社ネオス製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、BYK Additives & Instruments社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
これらの中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、ノズルの目詰まり回復性をさらに向上させることができる。一方、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤は、記録媒体上でインクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有している点で好ましい。したがって、本実施形態において、インク組成物は、シリコーン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤の少なくとも一方と、アセチレングリコール系界面活性剤と、を含有することがより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量の下限は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。一方、含有量の上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が前記範囲にあると、ノズルの目詰まり回復性が向上する効果が得られやすい。
フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の含有量の下限は、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましい。一方、含有量の上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の含有量が前記範囲にあると、記録媒体上でインクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有している点で好ましい。
1.2.6.その他の含有成分
本実施形態において、インク組成物には、その保存安定性およびインクジェットヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、消泡剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、有機溶剤ではない保湿剤、および分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤等の、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、ト
リエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
有機溶剤ではない保湿剤としては、トリメチロールプロパンや糖等の常温で固体の保湿剤が挙げられる。
1.2.7.インク組成物の調製方法
本実施形態において、インク組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.2.8.インク組成物の物性
本実施形態において、インク組成物は、画像品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係るインク組成物の20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.3.反応液
次に、インクジェット記録方法で用いられる反応液について説明する。本実施形態で用いられる反応液は凝集剤を含むものであり、この凝集剤は、例えば、上述するインク組成物に含まれる顔料や樹脂等を凝集させるものである。以下、本実施形態で用いられる反応液に含まれる成分および含まれ得る成分ついて詳細に説明する。
なお、本実施形態において、反応液とは、色材の含有量が0.2質量%以下であり、記録媒体に着色するために用いる上述のインク組成物ではなく、インク組成物を付着する前に記録媒体へ付着させて用いる補助液である。
1.3.1.凝集剤
本実施形態で用いられる反応液は、インク組成物の顔料や樹脂等を凝集させる凝集剤を含む。反応液が凝集剤を含むことにより、後述するインク組成物付着工程において、凝集剤とインク組成物に含まれる顔料や樹脂とが速やかに反応する。そうすると、インク組成物中の顔料や樹脂の分散状態が破壊され、顔料や樹脂が凝集する。そして、この凝集物が顔料の記録媒体への浸透を阻害するため、印刷画像の画質の向上の点で優れたものとなると考えられる。
凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオン性ポリマー、カチオン性界面活性剤、有機酸が挙げられる。これらの凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの凝集剤の中でも、インク組成物に含まれる成分との反応性に優れるという点から、多価金属塩およびカチオン性ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の凝集剤を用いることが好ましい。
多価金属塩としては、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な化合物である。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+等の二価金属イオン;Al3+、Fe3+、Cr3+等の三価金属イオンが挙げられる。陰イオンとしては、Cl、I、Br、SO 2−、ClO3−、NO3−、およびHCOO、CHCOO等が挙げられる。これらの多価金属塩の中でも、反応液の安定性や凝集剤としての反応性の観点から、カルシウム塩およびマグネシウム塩が好ましい。
有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオン性ポリマーとしては、例えば、カチオン性のウレタン樹脂、カチオン性のオレフィン樹脂、カチオン性のアミン系樹脂等が挙げられる。
カチオン性のウレタン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。カチオン性のウレタン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP−7010、CP−7020、CP−7030、CP−7040、CP−7050、CP−7060、CP−7610(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(以上商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR−2120C、WBR−2122C(以上商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶剤等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB−1200、CD−1200(以上商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
カチオン性のアミン系樹脂は、分子中にアミノ基を複数個有するものであればよく、ポリアミン樹脂、アリルアミン樹脂などがあげられ、また、アミノ基を複数個有するもので
あれば、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などもあげることができる。ポリアミン樹脂は骨格中にポリアミン構造を有するものであればよく、ポリアミド樹脂は骨格中にポリアミド構造を有するものであればよく、ポリアクリルアミド樹脂は骨格中にポリアクリルアミド構造を有するものであれば良く、アリルアミン樹脂は骨格中にポリアリル構造を有しアミノ基を有する樹脂であればよい。なお、骨格中にポリアミン構造を有する樹脂であればポリアミン樹脂に含めるものとする。
カチオン性のアリルアミン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。このようなカチオン性のアリルアミン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、PAA−HCL−01、PAA−HCL−03、PAA−HCL−05、PAA−HCL−3L、PAA−HCL−10L、PAA−H−HCL、PAA−SA、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、PAA−25、PAA−H−10C、PAA−D11−HCL、PAA−D41−HCL、PAA−D19−HCL、PAS−21CL、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−22SA、PAS−M−1A、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−92、PAS−92A、PAS−J−81L、PAS−J−81(以上商品名、ニットーボーメディカル会社製)、ハイモ Neo−600、ハイモロック
Q−101、Q−311、Q−501、ハイマックス SC−505、SC−505(以上商品名、ハイモ株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級および第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチル硫酸塩、ジメチルエチルオクチルアンモニウムエチル硫酸塩、トリメチルラウリルアンモニウム塩酸塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
反応液の凝集剤の濃度は、反応液1kg中において、0.03mol/kg以上であってもよい。また、反応液1kg中において、0.1mol/kg以上1.5mol/kg以下であってもよく、0.2mol/kg以上0.9mol/kg以下であってもよい。また、凝集剤の含有量は、例えば、反応液の全質量(100質量%)に対し、0.1質量%以上25質量%以下であってもよく、1質量%以上20質量以下であってもよく、3質量%以上10質量以下であってもよい。
1.3.2.水
本実施形態で用いられる反応液は、水を主溶媒とする水系の反応液であることが好ましい。この水は、反応液を記録媒体に付着させた後、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、反応液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止できるので好適である。反応液に含まれる水の含有量は、反応液の全質量(100質量%)に対して、例えば、40質量%以上とすることができ、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上である。
1.3.3.有機溶剤
本実施形態で用いられる反応液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、記録媒体に対する反応液の濡れ性を向上させることができる。有機溶剤としては、上述の水系のインク組成物で例示する有機溶剤と同様のものを使用できる。有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、反応液の全質量(100質量%)に対して、例えば、10質量%以上60質量%以下とすることができ、好ましくは15質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
有機溶剤の標準沸点は、上記のインク組成物に含有してもよい有機溶剤の標準沸点の好ましい範囲の温度に、上記のインク組成物に含有してもよい有機溶剤の標準沸点とは独立して含有することができる。あるいは、有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、180℃以上300℃以下がより好ましく、190℃以上270℃以下がさらに好ましく、200℃以上250℃以下が特に好ましい。
なお、反応液は、有機溶剤として、標準沸点が280℃超の水溶性有機溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。前記の場合には、反応液の乾燥性が良いため、反応液の乾燥が迅速に行われるほか、得られた記録物のベタツキ低減や耐擦性に優れる。
1.3.4.界面活性剤
本実施形態で用いられる反応液は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を含有することにより、反応液の表面張力を低下させ、記録媒体との濡れ性を向上させることができる。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーンン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。これらの界面活性剤の具体例については、上述のインク組成物で例示する界面活性剤と同様のものを使用できる。界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、反応液の全質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上5質量%以下とすることができる。
1.3.5.その他の成分
本実施形態で用いられる反応液には、必要に応じて、上記のインク組成物と同様の、pH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を添加してもよい。
1.3.6.反応液の調製方法
本実施形態で用いられる反応液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することより調製することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためのろ過を行い、目的の反応液を得ることができる。
1.3.7.反応液の物性
本実施形態で用いられる反応液は、インクジェットヘッドで吐出させる場合には、20℃における表面張力が18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートを反応液で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、本実施形態で用いられる反応液の20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.4.記録媒体
上述のインク組成物は、インク乾燥性を有し、インク吸収性、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対する記録において、画質や耐擦性に優れた画像を得ることができる。中でも、上述のインク組成物は、上述の反応液と共に用いることにより、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対して、好適に用いることができる。
インク吸収性の記録媒体としては、例えば、インク吸収性が高い、綿、絹、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン等の布地や、普通紙、インクジェット専用紙、中程度の吸収性の上質紙や再生紙等の普通紙、コピー用紙、インク吸収能を有するインク受容層を設けたインクジェット専用紙等が挙げられる。
インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
インク低吸収性の記録媒体としては、表面にインクを受容するための塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、親水性ポリマーが塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。これらの記録媒体は、透明な記録媒体であってもよい。
ここで、本明細書において「インク非吸収性または低吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
また、エンボスメディア等の、表面に凹凸を有するインク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対しても、好適に用いることができる。
2.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体にインク組成物が含む成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域を形成する反応液付着工程と、前記記録媒体に顔料を含むインク組成物を付着させることにより、印刷画像を形成するインク組成物付着工程と、を備え、前記印刷画像は、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である内部領域と、前記内部領域と前記印刷画像の端である画像境界部との間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間と、を有することを特徴とする。以下、本実施形態に係るインクジェット記録方法について、工程ごとに詳細に説明する。
2.1.反応液付着工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、反応液付着工程は、記録媒体に凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域を形成する工程である。本実施形態に係るインクジェット記録方法では、反応液付着工程を行うことにより、後述するインク組成物付着工程で形成された印刷画像の画質が向上する。
本実施形態に係るインクジェット記録方法において、反応液の付着は、図1のインクジェットヘッド2による吐出により行うが、それ以外の方法、例えば、反応液をロールコーター等で塗布する方法(ローラー塗布)や、反応液をスプレー装置等によって噴射する方法(スプレー塗布)等であってもよい。
図2に、本実施形態における記録媒体の記録領域20を、また、図3に、本実施形態における記録媒体Mの記録領域20に形成された、反応液付着領域30と印刷画像40との関係を示す。
図2、3に示すように、本実施形態において、記録領域20とは、後述するインク組成物付着工程において印刷画像40が形成された領域を含む記録媒体M上の領域をさす。また、本実施形態では、反応液付着領域30は、記録領域20の少なくとも一部の領域に凝集剤を含む反応液を付着させることにより、記録領域20の少なくとも一部の領域に形成されればよい。この反応液付着領域30は、所定の面積を有する連続する1つの領域であり、限るものではないが、所定の面積は、例えば、1mm以上であることが好ましい。
反応液付着領域30の端32は、記録媒体に反応液を付着させることにより、反応液付着領域30を形成した領域、つまり、反応液の付着量が所定の値であるような領域の端部(縁端)を意味する。したがって、反応液の付着量が所定の値であるような領域と、反応液の付着量が所定の値未満であるような領域との境界が、反応液付着領域30の端32となる。例えば、図3に示すように、反応液付着領域30の外側の領域に、所定の値未満の反応液が付着された領域36は、反応液付着領域30には含まれないものとする。一方、反応液付着領域30を形成しないところに所定の値未満の反応液が付着することにより、反応液付着領域30とは別に反応液付着領域が形成される場合も含むものとする。
なお、反応液付着領域30において、後述するインク組成物付着工程においてインクが付着されることにより、単位面積当たりの顔料の付着量に対する凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である領域を内部領域31と呼ぶ。反応液付着領域30の端32とは、凝集剤/顔料が所定以上である内部領域31と、凝集剤/顔料が0.1未満である領域との境界である。つまり、凝集剤/顔料が所定以上の内部領域31の端を、反応液付着領域30の端32とすることができる。なお、凝集剤/顔料が所定未満である領域とは、例えば、図3における所定の値未満の反応液が付着された領域36である。
また、内部領域31と、印刷画像40の端である画像境界部42と、の間を境界間34と呼び、境界間34の距離が境界間距離dである。境界間34は、凝集剤/顔料の付着量比が0.1未満である。
本実施形態では、反応液は、後述するインク組成物付着工程で反応液付着領域30に付着されるインク中の顔料との間で、反応液付着領域30における単位面積当たりの顔料の付着量に対する凝集剤の付着量の比である凝集剤/顔料が0.05以上であることが好ましく、0.06以上であることがより好ましく、0.08以上であることがさらに好ましく、0.1以上であることがよりさらに好ましい。上限は1以下が好ましく、0.6以下を満たして記録されることが好ましい。凝集剤/顔料が前記範囲にあることにより、印刷画像の削れと画像境界部での滲みの一層の低減が可能となる。なお、凝集剤/顔料の下限は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、凝集剤/顔料の上限は、0.5以下であることが好ましく、0.4未満であることがより好ましい。
上記のような値とするために、本実施形態においては、反応液付着工程における反応液の付着量の上限は、2.8mg/inch以下であることが好ましく、2.0mg/inch以下であることがより好ましく、1.5mg/inch以下であることがさらに好ましい。また、反応液付着工程における反応液の付着量の下限は、0.3mg/inch以上であることが好ましく、0.5mg/inch以上であることがより好ましく、0.8mg/inch以上であることがさらに好ましい。
ここで、反応液付着工程の反応液の付着量は、図2、3の反応液付着領域30おける反応液の付着量であり、反応液付着領域30は、少なくとも付着量が前記付着量である領域を有するものである。また、本実施形態において、反応液を2つ以上の複数種用いる場合は、反応液付着領域30の反応液の付着量は、複数種の反応液の合計の反応液付着量としてもよい。
なお、反応液付着工程の前に、または反応液付着工程の際に、図1に示す加熱機構6により記録媒体Mが加熱されていることが好ましい。加熱された記録媒体M上に反応液を付着させることにより、記録媒体M上に吐出された反応液が記録媒体M上で塗れ広がりやすくなり、反応液を均一塗布することができる。このため、後述のインク組成物付着工程で付着されたインクと反応液が十分に反応し、優れた画質が得られるようになる。また、反応液は記録媒体M上で均一に塗布されるため、得られた印刷画像の画質が向上する。
ここで、反応液を付着させる際の記録媒体Mの表面温度は、後述するインクを付着させる際の記録媒体Mの表面温度(一次加熱温度)の好ましい範囲の温度とは独立して設定することができる。例えば、反応液を付着させる際の記録媒体Mの表面温度は、45℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、38℃以下であることがさらに好ましい。また、反応液を付着させる際の記録媒体Mの表面温度の下限値は、30℃以上であることが好ましく、32℃以上であることがより好ましい。反応液を付着させる際の記録媒体Mの表面温度が前記範囲にある場合には、反応液を記録媒体Mに均一に塗布することができ、耐擦性と画質を向上させることができる。また、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑えることができる。
2.2.インク組成物付着工程
インク組成物付着工程は、反応液が付着された記録媒体に反応液によって凝集する顔料を含むインク組成物を付着させることにより、反応液付着領域へ印刷画像を形成する工程である。この工程により、記録媒体の記録領域に、インク組成物からなる印刷画像が形成
される。
ここで、本実施形態において、「画像」とは、ドット群から形成される記録パターンを示し、テキスト印字、ベタ画像も含める。なお、「ベタ画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録し、通常、記録媒体の記録領域がインクで覆われ、記録媒体の地が見えていないような画像であるべき画像パターンを意味する。
図2、3に示すように、本実施形態において、インク組成物付着工程により形成される印刷画像40は、インク組成物の付着量が所定の値であるような領域であり、目視によりインク組成物の付着量がほぼ同じであると視認できるような所定の面積を有し、連続する1つの領域である。所定の面積は、限るものではないが、例えば1mm以上であることが好ましい。また、印刷画像40は、文字画像や絵画像などの記録する画像を構成する領域であればよく、形状は四角形に限るものではなく、複数形成されていてもよい。
図2、3に示すように、本実施形態では、印刷画像40は反応液付着領域30の全てを覆うように形成されているが、反応液付着領域30の一部が印刷画像40によって覆われていない場合も含むものとする。
印刷画像40の端である画像境界部42は、記録領域20にインクを付着させることにより印刷画像40を形成した領域、つまり、インクの付着量が所定の値であるような領域の端部(縁端)を意味し、印刷画像40と、インク組成物の付着量が所定の値未満の領域との境界である画像境界部42である。そして、本実施形態において、印刷画像40の端である画像境界部42は、単位面積当たりの顔料の付着量に対する凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が0.1以上である内部領域31の端32と、の間にある境界間34が境界間距離d(mm)が1.5mm以下が好ましく、1.0mm未満を満たすように形成されることがより好ましい。
つまり、本実施形態では、反応液付着領域30は、反応液付着領域30の端32が印刷画像40の画像境界部42よりも内側となるように、印刷画像40よりも内側に形成される。これにより、反応液の凝集剤のうちインク成分と反応せずに凝集物が析出し、この凝集物が起点となって印刷画像40が端部から削れることが防止される。このため、反応液の凝集剤の含有量を低減することなく、印刷画像の耐久性の低下の低減が可能となる。また、反応液の凝集剤の含有量を低減する必要がないため、十分な発色が得られ、画像の品質低下を防止し、画像境界部での滲みの低減が可能となる。
ここで、境界間を有さずに反応液付着工程を行った場合、凝集剤などの反応液に含まれる成分が、記録物の使用中などに、印刷画像の端から染み出して印刷画像に悪影響を及ぼすことがある。そこで、本実施形態では、印刷画像40の端付近に凝集剤/顔料の付着量比が0.1未満である境界間34を設けることで、印刷画像40への悪影響をなくすことができ、かつ、境界間距離dを好ましくは1.5mm以下にすることで、印刷画像40の画像境界部42付近の滲みもなくして、優れた画質を得ることができる。
また、本実施形態では、印刷画像40に境界間34を設けることで、印刷画像40の耐久性を優れたものにできる。例えば、凝集剤として多価金属塩を用いた場合には、インクの成分と反応せずに析出した多価金属塩の結晶が研磨剤として作用し、印刷画像40の端部からの削れる「端部擦れ」が発生しやすくなるが、本実施形態では、境界間34を設けることで、多価金属塩の結晶の析出が防止されるため、反応液の凝集剤の含有量を低減することなく、印刷画像の端部擦れが低減し、印刷画像40の耐久性の低下の低減が可能となる。また、凝集剤として、カチオン性ポリマーや有機酸等を用いた場合の耐湿摩擦性の
向上が可能となる。さらに、凝集剤として有機酸を用いた場合の、有機酸の染み出しによる臭気の発生の防止が可能となる。このように、印刷画像40の端付近から凝集剤が染み出して画像の耐久性を低下させる場合があるが、本実施形態では、境界間34を設けることで防止できる。また、境界間距離dが好ましくは1.5mm以下を満たすことにより、優れた画質も得られる。
境界間距離dの関係は、例えば、図2に示す内部領域31の端32と、印刷画像40の画像境界部42との距離が、印刷画像40のどの画像境界部42においても1.5mm以下を満たしていれば好ましい。また、反応液付着領域30において、内部領域31の端32以外の領域は、凝集剤/顔料が所定以上を満たしていればよい。
境界間距離dの下限は、0mm超であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましく、0.3mm以上であることが特に好ましい。また、境界間距離dの上限は、1mm以下であることが好ましく、0.9mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらにより好ましく、0.6mm以下であることがさらに好ましく、0.5mm以下であることが特に好ましい。
なお、境界間34には、凝集剤/顔料の付着量比が所定の値未満の反応液が付着された反応液付着領域を有しても有さなくてもよく、有することが凝集境界滲みの低減の点でより好ましい。境界間34に反応液付着領域を有する場合、境界間34の反応液付着領域の単位面積当たりの顔料の付着量に対する凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)は、1未満が好ましく、0.07以下がより好ましく0.05以下がさらにより好ましく、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。また、境界間34の反応液付着領域は、内部領域の端から画像境界部へ向かう距離が、0.7mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。また、境界間34に反応液付着領域を有する場合、反応液付着量の異なる複数の反応液付着領域を有してもよく、反応液付着量が多段階や漸減状になっていてもよい。
なお、画像境界部42よりも印刷画像40に対する外側には、画像境界部42と接しては反応液付着領域を設けないことが、付着した凝集剤による画像への影響を与えない点でより好ましい。あるいは、該外側には、画像境界部42と接しては、内部領域31における凝集剤/顔料比が所定以上となるような反応液の付着量による反応液付着領域は設けないことが、付着した凝集剤による画像への影響が比較的少ない点で好ましい。
また、本実施形態では、インクは、反応液付着領域30の内部領域31における単位面積当たりの顔料の付着量に対する凝集剤の付着量の比である凝集剤/顔料が好ましくは0.1以上であるが、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.6以下を満たして記録されることがさらに好ましい。凝集剤/顔料が前記範囲にあることにより、印刷画像の削れと画像境界部での滲みの低減が可能となる。なお、凝集剤/顔料の下限は、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。また、凝集剤/顔料の上限は、0.5以下であることが好ましく、0.4未満であることがより好ましい。この場合には、さらに画像の光沢が向上する。
上記のような値とするために、本実施形態においては、インク組成物付着工程における反応液付着領域におけるインクの付着量の上限は、30mg/inch以下であることが好ましく、25mg/inch以下であることがより好ましく、20mg/inch以下であることがさらに好ましく、18mg/inch以下であることがより好ましく、16mg/inch以下であることがさらに好ましく、12mg/inch以下であることが特に好ましい。また、インク組成物付着工程におけるインクの付着量の下限
は、4.0mg/inch以上であることが好ましく、5.0mg/inch以上であることがより好ましく、8.0mg/inch以上であることがさらに好ましく、10mg/inch以上であることが特に好ましい。前記範囲にあることにより、印刷画像の画質が向上し、画像境界部での滲みの低減が可能となる。
ここで、インク組成物付着工程のインクの付着量は、図2の印刷画像40おけるインクの付着量であり、印刷画像40は、少なくとも付着量が前記付着量である領域を有するものである。また、本実施形態において、本実施形態で用いられるインク組成物を2つ以上の複数種用いる場合は、印刷画像が形成された領域のインク組成物の付着量は、複数種のインク組成物の合計のインク付着量としてもよい。
また、反応液付着領域30における顔料の付着量の上限は、1mg/inch以下であることが好ましく、0.4mg/inch未満であることが好ましく、0.3mg/inch以下であることがより好ましく、0.25mg/inch以下であることがさらに好ましい。また、反応液付着領域30における顔料の付着量の下限は、0.08mg/inch以上であることが好ましく、0.1mg/inch以上であることがより好ましく、0.2mg/inch以上であることがさらに好ましい。反応液付着領域30における顔料の付着量が前記範囲であることにより、画質が向上して画像境界部での滲みの低減が可能となり、発色性も向上する。また、境界間距離dが0mm以上1.0mm未満であることにより、反応液付着領域における顔料の付着量が、0.1mg/inch以上0.4mg/inch未満であっても端部からの印刷画像の耐久性の低下の低減が可能となる。
2.3.加熱工程
インク組成物付着工程は、インク組成物付着工程の前またはインク組成物付着工程と同時に、図1に示す加熱機構6により記録媒体Mを加熱する加熱工程を備えるものであってもよく、加熱工程により加熱された記録媒体Mへ行うことが好ましい。これにより、記録媒体M上でインクを迅速に乾燥させることができ、ブリードが抑制され、耐擦性と画質に優れた画像を形成することができる。
インクを付着させる際の記録媒体Mの表面温度(一次加熱温度)は、60℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることが特に好ましく、38℃以下であることがいっそう好ましい。インクを付着させる際の記録媒体の表面温度が前記範囲にあることにより、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑制することができる。また、インクジェット記録の際の記録媒体Mの表面温度の下限は25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、32℃以上であることがさらに好ましく、35℃以上であることが特に好ましい。インクジェット記録の際の記録媒体Mの表面温度が上記の範囲であることにより、記録媒体M上でインクを迅速に乾燥させることができ、ブリードが抑制され、耐擦性と画質に優れた画像を形成できる。
2.4.その他の工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記インク組成物付着工程の後、上述の第2の加熱機構によりインク組成物が付着した記録媒体Mを加熱する二次加熱工程を有していてもよい。これにより、記録媒体M上のインク組成物に含まれる樹脂等が溶融してインク膜が形成される。これにより、記録媒体M上においてインク膜が強固に定着(接着)して、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
第2の加熱機構により記録媒体Mの表面を加熱する温度(二次加熱温度)は、好ましくは40℃以上120℃以下であり、より好ましくは60℃以上100℃以下であり、さら
に好ましくは80℃以上90℃以下である。加熱温度が上記範囲内であることにより、得られた画像の耐擦性がより向上し、さらに記録媒体M上に密着性よくインク膜を形成することができる。
なお、二次加熱工程の後に、図示しない冷却ファン等により、記録媒体M上のインク組成物を冷却する工程を有していてもよい。
また、本実施形態において、インクを吐出して記録するための圧力発生手段以外の手段により、つまり、インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構ではない他の機構により、インク組成物や反応液を排出させるクリーニング工程を備えていてもよい。
インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構としては、上述のピエゾ素子等挙げられる。該クリーニング工程は、インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してインクジェットヘッド2のノズルから、インク組成物を排出させる工程としてもよい。この工程を備えることで、インクジェットヘッド2の内壁に樹脂が溶着する懸念がある場合にも、これを抑制し、吐出安定性を一層優れたものとすることができる。
また、クリーニング工程における他の機構としては、吸引(負圧)の付与や、ヘッドの上流から正圧を付与すること、等圧力を付与する機構が挙げられる。これらは、インクジェットヘッド自身の機能によるインク排出(フラッシング)ではない。つまり、記録に際して、インクジェットヘッドからインクを吐出させる機能を用いての排出ではない。
以上示したように、本実施形態では、印刷画像は、単位面積当たりの顔料の付着量に対する凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である内部領域と、内部領域と印刷画像の端である画像境界部と間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間と、を有することにより、反応液を用いるインクジェット記録方法において、反応液の凝集剤の含有量を低減することなく印刷画像の耐久性の低下の低減が可能となる。また、十分な発色が得られるため、画像の品質低下を防止し、画像境界部での滲みの低減が可能なインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
3.実施例および比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
3.1.反応液組成物およびカラーインク組成物の調製
まず、顔料と分散剤樹脂を水に混合してビーズミルで撹拌して顔料分散液を調製した。顔料分散液に反応液1を混合した所、顔料が沈降したことから、顔料は反応液と反応して凝集するものであった。次に、顔料分散液と他の成分を、表1の配合割合になるように混合攪拌してカラーインク組成物と反応液組成物を得た。なお、表1中の数値は全て質量%を示し、水は、反応液組成物またはカラーインク組成物の全質量が100質量%となるように添加した。
Figure 2019042997
なお、用いた各材料の詳細は以下の通りである。
<顔料>
・C.I.ピグメントブルー15:3。
<分散剤樹脂>
・スチレン−アクリル酸系水溶性樹脂(Tg 55℃)
<樹脂微粒子>
下記製造例により作製した。
<溶剤1>
・2−ピロリドン
<溶剤2>
・1,3−ブタンジオール
<溶剤3>
・1,2−ヘキサンジオール
<界面活性剤>
・BYK348(商品名、BYK Additives & Instruments社製、シリコーン系界面活性剤)
<凝集剤>
・多価金属塩;硫酸マグネシウム
・カチオンポリマー;カチオマスタ―PD−7(商品名、四日市合成社製 ポリアミン樹脂)
<樹脂微粒子の製造例>
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過硫酸カリウムを0.2部添加しておき、イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウムを0.05部、スチレン22部、n−ブチルアクリレート50部およびt−ドデシルメルカプタン0.02部を入れたモノマー溶液を、70℃に滴下して反応させてコア粒子を作製した。その後、過硫酸アンモニウム10%溶液2部を添加して攪拌し、さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリウム0.2部、メチルアクリレート17部、エチルアクリレート20部、メチルメタクリレート30部、アクリル酸5部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、およびシェル層形成用モノマー100質量%中に30質量%となる量の多官能アクリルモノマーからなる反応液を70℃で攪拌しながら添加し、重合反応させてシェル層とした。その後、反
応液を水酸化ナトリウムで中和してpH8〜8.5に調整し、0.3μmのフィルターでろ過することによりコアシェル型樹脂微粒子水分散液を作製した。
上記で得られたコアシェル型樹脂微粒子について、JIS K7121に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を行い、コア部を構成する重合体およびシェル部を構成する重合体のガラス転移温度Tg(℃)をそれぞれ求めたところコア部のTgは−10℃であり、シェル部のTgは33℃であった。示差走査熱量計には、セイコー電子株式会社製、型式「DSC6220」を使用した。
また、上記で得られたコアシェル型樹脂微粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社)により測定して、コアシェル型樹脂微粒子の粒子径φ(nm)を求めたところ平均粒子径が200nmであった。なお、得られた樹脂微粒子は、コア粒子の外周に高ガラス転移点を有するシェル層が形成されたものとなった。
3.2.評価試験
3.2.1.インクジェット記録方法
記録装置として、紙案内部に温度が可変できるプラテンヒーターを取り付け、インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンター(商品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製)の改造機2台を用いた。1台目は反応液専用とし、ノズル列の1つに反応液組成物を充填した。もう1台はカラーインク専用とし、全ノズルにシアンのインク組成物を充填した。記録媒体として、Mactac社製商品名「Mactac5829R」を用いた。
まず反応液専用プリンターを用いて常温、常圧下で、記録媒体上に、表2、3に記載のように、付着量が0.3〜2.8mg/inchとなる範囲で調整し、縦720dpi×横720dpiの解像度で反応液のベタパターンを形成した。この印刷の際、記録媒体の表面温度は35℃になるようにした。その後、プリンターから排出された記録媒体をオーブンで60℃で1分、二次乾燥させてから、2台目のカラー専用プリンターを行いて、反応液のベタパターンと境界間距離dを、表2、3に記載のように、0〜1mmの範囲で搬送方向にずらしたベタパターンを印刷した。この際、表2、3に記載のように、カラーインクのベタパターンは付着量4〜20mg/inchとなる範囲で調整し、縦1440dpi×横720dpiの解像度となるようにした。この印刷の際も、記録媒体の表面温度は35℃になるようにした。カラーインクの印刷後、プリンターから排出された記録媒体をオーブンで100℃で2分、二次乾燥させた。
得られた各記録物について、以下の評価を行った。
3.2.2.境界滲み
上記のようにして得られた記録物のベタ印刷部表面を目視にて観察し、以下の基準で境界滲みを評価した
(評価基準)
A:目視及びルーペで観察しても境界の滲みが見られない。
B:目視では境界の滲みが見られないがルーペで観察して若干見られる。
C:目視では境界の滲みが見られないがルーペで拡大すると境界の滲みが大きく見られる。
D:目視で観察して、境界の滲みが見られる。
3.2.3.耐擦性(端部擦れ)
上記のようにして得られた記録物について、学振型摩擦堅牢度試験機AB−301(テスター産業株式会社製)を用いて、金巾3号布を500gの荷重で50往復させる試験(
JIS P 8136)を行った。そして、記録媒体の表面における画像(塗膜)のはがれ具合を目視で観察し、以下の基準で評価した。なお、剥離が見られた例は画像の端部付近に剥離が見られ、端部付近に凝集剤の結晶異物が見られる傾向があった。
(評価基準)
A:傷や剥離がない。
B:剥離はないが、ストローク面積の1%以下の傷がある。
C:ストローク面積の1%以下の傷または剥離がある。
D:ストローク面積の1%超の傷または剥離がある。
3.2.4.耐擦性(耐湿)
上記の耐擦性試験(端部擦れ)において、布を水で濡らして、400gの荷重で30往復させて行い、以下の基準で評価した。なお、傷や剥離が見られた例は、主に画像の端部付近に剥離が見られた。
(評価基準)
A:記録部に傷や剥離や布へのインクの移りがなかった。
B:記録部の目立つ傷や剥離は見られなかったが白綿布へのインクの移りが見られた。
C:記録部の端付近に若干の傷や剥離があった。
D:記録部の端付近にかなりの傷や剥離が見られた。
3.2.5.発色性
上記のようにして得られた記録物のベタ印刷部表面をグレタグマクベス測色計(Gretag Macbeth社製)を用いて、観測光源:D50、観測視野:2°の条件で反射OD値を測定し、得られたOD値に基づき、以下の基準で評価した。
(評価基準)
A:Cyan OD値が1.5超。
B:Cyan OD値が1.2超1.5以下。
C:Cyan OD値が0.9超1.2以下。
D:Cyan OD値が0.9以下。
3.2.6.白化性(結晶析出)
上記のようにして得られた記録物のベタ印刷部表面を目視にて観察し、以下の基準で白化性を評価した。ここで、白化となる原因物質は、凝集剤由来の結晶異物である。
(評価基準)
A:結晶異物が観察できない。
B:結晶異物が観察できる。
3.2.7.平滑性
「JIS Z 8741:1997 鏡面光沢度」に準じた測定方法で、記録物の60度光沢度を測定し、以下の基準で平滑性を評価した。
(評価基準)
A:60度光沢度が60超。
B:60度光沢度が40超60以下。
C:60度光沢度が20超40以下。
D:60度光沢度が20以下。
3.3.評価結果
評価試験の結果を表2、3の下方に示す。
Figure 2019042997
Figure 2019042997
いずれの実施例においても、印刷画像の耐擦性と、画像境界部での滲みの低減が優れていた。これに対し、比較例は、境界滲みと耐擦性の何れかが劣っていた。詳細には、実施例1〜4、16より、境界間距離dが大きいほど耐擦性がより優れ、境界間距離dが小さいほど境界滲み低減がより優れていた。
実施例5〜8、15、17より、凝集剤/顔料比が大きいほど、境界滲み、発色性がより優れ、凝集剤/顔料比が小さいほど、耐擦性、平滑性がより優れていた。
表3の実施例9〜12より、凝集剤/顔料比をほぼ一定にして、反応液とインク組成物の付着量を変更した場合、反応液とインク組成物の付着量が多い方が、顔料付着量が増えるため、境界滲みや発色性がより優れる傾向にあった。一方、反応液とインク組成物の付着量が少ない方が、耐擦性がより優れる傾向にあった
実施例13は、境界間距離dが0.9mmの境界間の中に、凝集剤/顔料比が0.05である反応液付着領域を内部領域側から0.4mmで設けた例であるが、境界間距離dが0.9mmである実施例4と比べて境界滲みの低減に優れていた。また、実施例13は、境界間における反応液が付着されていない領域のみの距離としては0.5mmであることから、実施例3と比べると、耐擦性がより優れていた。このことから、境界間に、凝集剤/顔料比が0.1未満である反応液付着領域を設けることで、境界滲み低減と耐擦性向上の点でより優れていた。
実施例14と実施例7の比較から、凝集剤としてカチオンポリマーを用いる場合、耐擦性、平滑性がより優れ、凝集剤として多価金属塩を用いる場合、境界滲み低減や発色性により優れていた。
実施例17は、内部領域の凝集剤/顔料比が0.1未満であり、単位面積当たりの顔料の付着量に対して凝集剤の付着量が比較的少ないが、実施例3と比べ境界滲みが劣っていたことから、凝集剤/顔料比が比較的少ない場合、境界間距離が適切であっても境界滲みが低下することがわかった。また、発色性が劣った。ただし、実施例3と比べて耐擦性はより優れていた。このことから、内部領域の凝集剤/顔料比を少なくすることで耐擦性が改善する傾向はあるが、発色性が低下し、画像境界部の滲みは低下する。
比較例1、2は、境界間を設けなかった例であり、耐擦性が劣り、特に比較例1は端部擦れが劣った。また、表中には記載しなかったが、実施例16よりも境界間距離をさらに大きくしたところ、境界滲みがCランクよりも低下した。また、実施例17よりも凝集剤/顔料比をさらに少なくしたところ、境界滲みがCランクよりも低下した。
以上により、実施例では、反応液の凝集剤の含有量を低減させることなく、印刷画像の端部での耐擦性向上が可能となり、印刷画像の耐久性の低下と画像境界部では滲みの低減が可能となった。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…プリンター、2…インクジェットヘッド、3…カートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…加熱機構、7…キャリッジ移動機構、8…媒体送り機構、9…ガイドロット、10…リニアエンコーダー、20…記録領域、30…反応液付着領域、31…内部領域、32…反応液付着領域の端、34…境界間、36…所定の値未満の反応液が付着された領域、40…印刷画像、42…画像境界部、M…記録媒体、CONT…制御部、d…境界間距離

Claims (9)

  1. 記録媒体にインク組成物が含む成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を付着させることにより、前記記録媒体に反応液付着領域を形成する反応液付着工程と、
    前記記録媒体に顔料を含むインク組成物を付着させることにより、印刷画像を形成するインク組成物付着工程と、を備え、
    前記印刷画像は、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定以上である内部領域と、前記内部領域と前記印刷画像の端である画像境界部と間にあり単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が所定未満である境界間と、を有する、インクジェット記録方法。
  2. 前記内部領域における単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比が0.1以上0.6以下である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記内部領域における前記インク組成物の付着量が、5mg/inch以上20mg/inch未満である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記内部領域における前記顔料の付着量が、0.1mg/inch以上0.4mg/inch未満である、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記凝集剤が、多価金属塩とカチオン性ポリマーと有機酸とにおいて何れか1種以上を含む、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記インク組成物が樹脂を含む、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記記録媒体が、低吸収性記録媒体または非吸収記録媒体である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記境界間に、単位面積当たりの前記顔料の付着量に対する前記凝集剤の付着量の比(凝集剤/顔料)が前記所定未満である反応液付着領域を有する、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載のインクジェット記録方法により記録を行う、インクジェット記録装置。
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