JP2018154805A - 水系インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置 - Google Patents

水系インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置 Download PDF

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明子 松▲崎▼
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光昭 小坂
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Abstract

【課題】細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供する。【解決手段】本発明に係る水系インクジェットインク組成物は、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体と、樹脂分散体と、を含有し、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、水系インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルから微小なインク滴を吐出させて、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法が知られており、サイン印刷分野、高速ラベル印刷分野での使用も検討されている。そして、インク低吸収性の記録媒体(例えば、アート紙やコート紙)またはインク非吸収性の記録媒体(例えば、プラスチックフィルム)に対して画像の記録を行う場合、インクとして、地球環境面および人体への安全性等の観点から、樹脂エマルジョンを含有する水系レジンインク組成物(以下、「水系インク」または、「インク」ともいう。)の使用が検討されている。そして、水系レジンインク組成物を用いてインク低(非)吸収性の記録媒体に記録する際に、インクを早期に固定して、記録後の一次加熱温度を高くせずに画質を向上させするために、インクの凝集剤を含有する反応液を用いることがある。
ここで、光やガス等に対して退色しにくい性質を有していることから、色材として顔料が用いられることがある。この顔料インクを用いたインクジェット記録において、記録媒体へのインクの浸透性や記録媒体との親和性を向上させ、インクの記録媒体上での意図しない滲みや拡がりを抑制し、細線をきれいに記録できることが課題となっていた。そこで、保存安定性に優れ、滲みにくく、紙への定着性が良好であり、鮮明な画像を印刷することができるインク組成物とするために、表面をリン含有基で修飾した顔料を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第5489126号公報
しかしながら、表面をリン含有基で修飾した顔料は、インクの保存安定性に注意が必要であり、上記技術では保存安定性が十分ではない。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供するものである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る水系インクジェットインク組成物の一態様は、
リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体と、樹脂分散体と、を含有し、
インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることを特徴とする。
上記適用例によれば、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることにより、細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物を提供することができる。
[適用例2]
上記適用例において、
前記リン含有基として、P−O基またはP=O基の何れかを含むことができる。
上記適用例によれば、リン含有基として、P−O基またはP=O基の何れかを含むことにより、細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物とすることができる。
[適用例3]
上記適用例において、
前記導電率が1000μs/cm以上2000μs/cm以下であることができる。
上記適用例によれば、導電率が1000μs/cm以上2000μs/cm以下であることにより、より保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物とすることができる。
[適用例4]
上記適用例において、
標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることができる。
上記適用例によれば、標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることにより、記録媒体上でのインク組成物の乾燥性が高くなるので、ブリードの発生が抑制され、画質に優れた画像を形成できる。
[適用例5]
前記樹脂分散体の固形分含有量は、1質量以上15質量%以下であることができる。
上記適用例によれば、樹脂分散体の固形分含有量が1質量以上15質量%以下であることにより、記録時の吐出信頼性を確保し、耐擦性に優れた画像を形成できる。
[適用例6]
上記適用例において、
前記表面処理顔料の含有量が0.5質量以上10質量%以下であることができる。
上記適用例によれば、表面処理顔料の含有量が0.5質量以上10質量%以下であることにより、記録時の吐出信頼性を確保し、耐擦性に優れた画像を形成できる。
[適用例7]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例6のいずれか一例の水系インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体へ付着させるインク付着工程を備える、インクジェット記録方法。
上記適用例によれば、インクの導電率を所定の範囲とすることにより、インク成分の分散安定性が優れるため、吐出安定性に優れた記録方法を提供することができる。また、記
録媒体へのインクの浸透性や記録媒体との親和性が良いため、インクの記録媒体上での意図しない滲みや拡がりが抑制され、細線印刷時の印刷品質が確保され、さらに耐擦性に優れた画像を得ることができる。
[適用例8]
上記適用例において、
前記水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を、前記記録媒体へ付着させる反応液付着工程を備えることができる。
上記適用例によれば、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を記録媒体へ付着させる反応液付着工程を備えることにより、インクのブリードを抑制して画質に優れる記録を行うことができる。
[適用例9]
上記適用例において、
前記記録媒体を加熱する加熱工程を備え、
前記インク付着工程を、前記加熱工程により加熱された記録媒体に対して行うことができる。
上記適用例によれば、インク付着工程を、加熱工程により加熱された記録媒体に対して行うことにより、インクのブリードを抑制して画質に優れる記録を行うことができるとともに、より耐擦性に優れた画像を形成できると供に、加熱工程を有する場合であっても、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例10]
上記適用例において、
前記インク付着工程において、前記記録媒体の表面温度が30℃以上55℃以下であることができる。
上記適用例によれば、インク付着工程において、記録媒体の表面温度が30℃以上55℃以下である場合においても、インクジェットヘッドへの熱の影響を抑えながら、画質を向上させることができ、耐擦性に優れた画像を形成できると供に、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例11]
上記適用例において、
前記記録媒体に対して前記インクジェットヘッドが相対的に位置を変えながら、前記インクジェットヘッドから前記水系インクジェットインク組成物を吐出して記録媒体へインク組成物を付着させる走査を複数回行いインク付着工程を行うものであり、1回の走査の走査時間が12s以下であることができる。
上記適用例によれば、上記のような走査時間であっても、耐擦性に優れた画像を形成できると供に、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例12]
上記適用例において、
前記水系インクジェットインク組成物と前記反応液の表面張力の差の絶対値が10以下であることができる。
上記適用例によれば、水系インクジェットインク組成物と反応液の表面張力の差の絶対値が10以下であることにより、記録時の濡れ性が確保されるため、画質に優れる記録を
行うことができる。
[適用例13]
上記適用例において、
前記反応液は、標準沸点が280℃超の水溶性有機溶剤の含有量が5質量%以下であることができる。
上記適用例によれば、反応液が標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることにより、記録媒体上での反応液の乾燥性が高くなる。
[適用例14]
上記適用例において、
前記インクジェットヘッドが、圧力室からノズルの間の前記水系インクジェットインク組成物が通過する流路に段差を有することができる。
上記適用例によれば、例えば、ノズルプレート(シリコン層)をエッチングすることによりノズルを形成すると、圧力室からノズルの間のインクが通過する流路に段差が形成され、該段差においてインク組成物が滞留することによりインク膜が堆積して連続印字時のインクの着弾ずれや目詰まりが生じやすい。しかしながら、上記適用例のインクジェット記録方法によれば、このような構造を有するインクジェットヘッドであっても、前記段差においてインク膜の堆積を低減できるので、インクの吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
[適用例15]
本発明に係るインクジェット記録装置の一態様は、
インクジェットヘッドを備え、適用例7ないし適用例14のいずれか一例に記載のインクジェット記録方法を行うことを特徴とする。
上記適用例によれば、上記適用例のインクジェット記録方法で記録を行うことにより、細線印刷時の印刷品質が確保されたインクジェット記録が可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
[適用例16]
上記適用例において、
インクジェットヘッドからインクを排出する機構であってインクジェットヘッドが備えるインク組成物を吐出して記録するための圧力発生手段以外の機構を備え、
前記インクジェット記録方法を、前記機構により行うクリーニング工程を行うことなく1時間以上行う制御を行うことができる。
上記適用例によれば、上述のインクジェット記録方法で記録を行うので、特にクリーニング工程を行わずに1時間以上吐出安定性に優れたインクジェット記録を実現することができる。
インクジェット記録装置を模式的に示す概略断面図。 図1に示すインクジェットヘッドの構造を模式的に示す概略断面図。
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではな
く、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物の一態様は、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体と、樹脂分散体と、を含有し、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることを特徴とする。また、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体へ付着させるインク付着工程を備えることを特徴とする。
ことを特徴とする。
以下、本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物およびインクジェット記録方法について、この記録方法により記録を行うインクジェット記録装置、水系インクジェットインク組成物(以下、「インク」ともいう。)、反応液および記録媒体の各構成、インクジェット記録方法の順に説明する。
1.各構成
1.1.インクジェット記録装置
本実施形態に係るインクジェット記録方法が実施されるインクジェット記録装置の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態に係るインクジェット記録方法に使用できるインクジェット記録装置は、以下の態様に限定されるものではない。
図1は、インクジェット記録装置1を模式的に示す概略断面図である。図1に示すように、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2と、IRヒーター3と、プラテンヒーター4と、硬化ヒーター5と、冷却ファン6と、プレヒーター7と、通気ファン8と、を備える。インクジェット記録装置1は、図示しない制御部を備え、制御部によりインクジェット記録装置1の全体の動作が制御される。
インクジェットヘッド2は、記録媒体Mに対してインク組成物を吐出して付着させる手段であり、例えば、図2に示したタイプのものを用いることができる。
インクジェットヘッド2は、インク組成物を吐出するノズル22を備える。インクをノズルから吐出させる方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に吐出させ、インクの液滴が偏向電極間を飛翔する間に記録情報信号に対応して吐出させる方式(静電吸引方式);小型ポンプでインクに圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインクの液滴を吐出させる方式;インクに圧電素子で圧力と記録情報信号を同時に加え、インクの液滴を吐出・記録させる方式(ピエゾ方式);インクを記録情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インクの液滴を吐出・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
インクジェットヘッド2としては、シリアル式インクジェットヘッド、ライン式インクジェットヘッドのいずれも使用可能である。
ここで、シリアル式インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置とは、記録媒体Mに対してインクジェットヘッド2が相対的に位置を変えながら、インクジェットヘッド2からインクを吐出して記録媒体Mへインクを付着させる走査(パス)を複数回行いながらインク付着工程を行うものである。
シリアル式インクジェットヘッドの具体例には、記録媒体の幅方向(記録媒体の搬送方向に交差する方向)に移動するキャリッジにインクジェットヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってインクジェットヘッドが移動することにより記録媒体上に液滴を
吐出するものが挙げられる。シリアル式のインクジェット記録装置であるシリアルプリンターは、ヘッドが記録媒体の副走査方向と交差した主走査方向に移動しながらインクの吐出を行う主走査(パス)を行い、通常2パス以上(マルチパス)で記録が行われる。
一方、ライン式インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置は、インクを吐出させる走査(パス)を1回行うことにより記録を行うものである。ライン型のインクジェットヘッドの具体例には、インクジェットヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、ヘッドが移動せずに記録媒体上に液滴を吐出するものが挙げられる。
本実施形態では、インクジェット記録装置1として、シリアル式インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、インクをノズルから吐出させる方式としてピエゾ方式を利用したインクジェットヘッドを用いている。
図2は、インクジェットヘッド2の構造を模式的に示す概略断面図である。図2において、矢印は、インクの移動方向を示している。インクジェットヘッド2は、圧力室21と、圧力室21に圧力を付与してノズル22からインク組成物を吐出させる圧電素子23とを備え、圧力室21において、ノズル22に連通する流出口24と対向する位置24r以外の場所に圧電素子23が配置されている。圧電素子23が、ノズル22の直上に設けられている場合には、圧電素子23からのインクの押出力が直接的にノズル壁面24aに付着したインク膜にも伝わるため、インク膜の付着を解消し易いが、圧電素子23がノズル22の直上に設けられていない場合には、インク膜の付着を解消しにくいため、本実施形態に係るインクジェット記録方法が特に有用となる。
ここで、圧力室21においてノズル22に連通する流出口24と対向する位置24rとは、ノズル22の直上を意味し、図2において、仮に、流出口24の壁24aから図の上方に向けて線(図2では破線で示されている。)を延長した場合に、延長線24bおよび延長線24bで囲まれた中の領域を意味する。例えば、図2のインクジェットヘッド2であれば、流出口24は、インクが吐出する方向に直交する方向における面積がノズル22と同じ部分の流出口24であり、途中で広くなった部分ではない。したがって、当該位置24r以外の場所に圧電素子23が配置されているとは、この領域(位置24r)の少なくとも一部に、圧電素子23の少なくとも一部が位置しないことをいう。上述の圧電素子23がノズル22の直上に設けられていないインクジェットヘッドの他の例としては、例えば、図2における圧力室21の手前側または奥側の何れかの壁に圧電素子が設けられているインクジェットヘッドがあげられる。
圧力室21は、圧力室21へインクが供給される供給口25と、圧力室21の流出口24とを結ぶインク移動方向よりも延長方向において、インクが滞留する滞留部分26を有している。この滞留部分26は、インクジェットヘッド2を量産する工程上形成される部分であり、滞留部分26のない圧力室21を備えたインクジェットヘッドを量産することは難しい。この滞留部分26では、インク組成物が澱みやすく、インク乾燥物(樹脂溶着物)も溜まりやすい。そして、気泡が集まって空間ができた時に、壁面にインク乾燥物が付着する。これに対して、後述する本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物を用いたインクジェット記録方法によれば、このような構造を有するインクジェットヘッド2であっても、滞留部分26においてインク乾燥物の堆積を低減でき、インクの吐出安定性に優れたインクジェット記録方法となる。
また、インクジェットヘッド2は、圧力室21からノズル22の間のインクが通過する流路、つまり、圧力室21より下流に段差22aを有していてもよい。この段差22aは、インクジェットヘッドを製造する過程で生じる場合がある。例えば、シリコン層(ノズルプレート20)をエッチングによりノズル22を形成すると生じる部分であり、シリコ
ン層をエッチングすることにより段差22aを解消したノズルプレート20を形成することは難しい。この段差22aは、圧力室21の流出口24からノズル22までの間にあればよく、ノズルプレート20に形成されるとは限らない。インクの初期充填やクリーニングの際に段差22aに気泡が付着して残ることがあり、気泡が記録中に段差22aから浮揚して圧力室21の上方に集まり、ここで気液界面が発生してインクが乾燥し、インク乾燥物(樹脂溶着物)が生成する。これに対して、本実施形態に係るインクジェット記録方法によれば、このような段差22aを有していても、この段差22aにおいてインク乾燥物の堆積を低減でき、インクの吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
本実施形態において、インクジェットヘッド2の圧力室21、並びに圧力室21毎に設けられる吐出駆動部(図示せず)およびノズル22は、それぞれ互いに独立して、一のヘッドに複数個設けられていてもよい。ここで吐出駆動部は、機械的な変形により圧力室21の容積を変化させる圧電素子23などの電気機械変換素子や、熱を発することによりインクに気泡を発生させ吐出させる電子熱変換素子などを用いて形成することができる。
図1に戻り、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド2からのインク組成物の吐出時において、記録媒体Mを加熱するための、IRヒーター3およびプラテンヒーター4を備えている。本実施形態において、後述するインク付着工程において、記録媒体Mを加熱する際には、IRヒーター3およびプラテンヒーター4の少なくとも1つを用いればよい。
なお、IRヒーター3を用いると、インクジェットヘッド2側から記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2も同時に加熱されやすいが、プラテンヒーター4など記録媒体Mの裏面から加熱される場合と比べて、記録媒体Mの厚みの影響を受けずに昇温することができる。また、記録媒体Mを加熱する際にプラテンヒーター4を用いると、インクジェットヘッド2側と反対側から記録媒体Mを加熱することができる。これにより、インクジェットヘッド2が比較的加熱されにくくなる。ただし、IRヒーター3およびプラテンヒーター4による、記録媒体Mの表面温度は30℃以上55℃以下であることが好ましい。これにより、IRヒーター3およびプラテンヒーター4から受ける輻射熱が少ない又はなくなることから、インクジェットヘッド2内のインク組成物の乾燥および組成変動を抑制でき、インクジェットヘッド2の内壁に樹脂が溶着することが抑制される。
硬化ヒーター5は、記録媒体Mに記録されたインク組成物を乾燥および固化させるものである。硬化ヒーター5が、画像が記録された記録媒体Mを加熱することにより、インク組成物中に含まれる水分などがより速やかに蒸発飛散して、インク組成物中に含まれる樹脂微粒子によってインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上においてインク膜が強固に定着(接着)して、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。硬化ヒーター5による乾燥温度は、好ましくは40℃以上120℃以下であり、より好ましくは60℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上90℃以下である。
インクジェット記録装置1は、冷却ファン6を有していてもよい。記録媒体Mに記録されたインク組成物を乾燥後、冷却ファン6により記録媒体M上のインク組成物を冷却することにより、記録媒体M上に密着性よくインク膜を形成することができる。
また、インクジェット記録装置1は、記録媒体Mに対してインク組成物が吐出される前に、記録媒体Mを予め加熱する(プレ加熱する)プレヒーター7を備えていてもよい。さらに、記録装置1は、記録媒体Mに付着したインク組成物がより効率的に乾燥するように
通気ファン8を備えていてもよい。
1.2.水系インクジェットインク組成物
次に、本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物について説明する。本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物は、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体と、樹脂分散体と、を含有し、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることを特徴とする。以下、本実施形態における水系インクジェットインク組成物に含まれる成分および含まれ得る成分ついて詳細に説明する。
なお、本発明における「水系」インクジェットインク組成物とは、水を主要な溶媒として、有機溶剤を主要な溶媒としない組成物である。組成物中の有機溶剤の含有量はその組成物100質量%に対して30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。インク組成物(100質量%)中の水の含有量は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
1.2.1.顔料分散体
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体を含む。
本実施形態において、リン含有基を表面に有するように表面処理する対象となる顔料としては、特に制限されないが、無機顔料や有機顔料が挙げられる。無機顔料としては、酸化チタンおよび酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。一方、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を使用することができる。
本実施形態で使用可能な顔料の具体例のうち、ブラック顔料としてはカーボンブラックが挙げられ、カーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、もしくはチャンネルブラック等(C.I.ピグメントブラック7)、また市販品としてNo.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA77、MA100、No.2200B等(以上全て商品名、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250等(以上全て商品名、エボニックジャパン株式会社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700等(以上全て商品名、コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12等(以上全て商品名、キャボットジャパン株式会社製)が挙げられる。
ホワイト顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、および酸化ジルコニウムの白色無機顔料が挙げられる。当該白色無機顔料以外に、白色の中空樹脂粒子および高分子粒子などの白色有機顔料を使用することもできる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、
17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、およびイエロー以外のカラーインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
パール顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス等の真珠光沢や干渉光沢を有する顔料が挙げられる。
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅などの単体又は合金からなる粒子が挙げられる。
インク組成物に含まれ表面処理顔料の含有量は、水系インクジェットインク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7.0質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上6.5質量%以下であることがさらに好ましく、2質量%以上6質量%以下であることがさらにより好ましい。表面処理顔料の含有量が上記範囲にあることにより、記録時の吐出信頼性を確保すると共に、発色と耐擦性に優れた画像を形成することができる。
上記の顔料を水系インクジェットインク組成物に適用するためには、顔料が水中で安定的に分散保持できるようにする必要がある。その方法としては、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂等の樹脂分散剤にて分散させる方法(以下、この方法により分散された顔料を「樹脂分散顔料」という。)、水溶性界面活性剤および/または水分散性界面活性剤の界面活性剤にて分散させる方法(以下、この方法により分散された顔料を「界面活性剤分散顔料」という。)、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、上記の樹脂あるいは界面活性剤等の分散剤なしで水中に分散および/または溶解可能とする方法(以下、この方法により分散された顔料を「表面処理顔料」という。)等が挙げられる。
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、リン含有基を表面に有する表面処理を行った表面処理顔料を用いることにより、顔料を水中で安定的に分散保持するが、必要に応じて、他の親水性官能基を有する表面処理顔料、樹脂分散剤や界面活性剤を
併用してもよい。
親水性官能基であるリン含有基としては、P−O基またはP=O基の何れかを有するものであることが好ましい。そのようなリン含有基としては、例えば、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、亜ホスフィン酸基、ホスファイト基、ホスフェート基、ジホスフェート基、トリホスフェート基、ピロホスフェート基が挙げられる。表面処理顔料としてリン含有基を表面に有する表面処理顔料を用いることにより、記録媒体へのインクの浸透性や記録媒体との親和性が向上し、インクの記録媒体上での意図しない滲みや拡がりを抑制し、細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物とすることができる。
リン含有基以外の親水性官能基としては、−OM、−COOM、−CO−、−SOM、−SONH、−RSOM、−SONHCOR、−NH、−NR(但し、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基または置換基を有していてもよいナフチル基を示す。)等が挙げられる。
上記の官能基は、顔料粒子表面に直接および/または他の基を介してグラフトされることによって、物理的および/または化学的に導入される。多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基等を挙げることができる。
また、前記の表面処理顔料としては、硫黄を含む処理剤によりその顔料粒子表面に−SOMおよび/または−RSOM(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す。)が化学結合するように表面処理されたもの、すなわち、前記顔料が、活性プロトンを持たず、スルホン酸との反応性を有せず、顔料が不溶ないしは難溶である溶剤中に、顔料を分散させ、次いでアミド硫酸、又は三酸化硫黄と第三アミンとの錯体によりその粒子表面に−SOMおよび/または−RSOMが化学結合するように表面処理され、水に分散および/または溶解が可能なものとされたものであることが好ましい。
前記官能基またはその塩を顔料粒子の表面に直接または多価の基を介してグラフトさせる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができる。例えば、市販の酸化カーボンブラックにオゾンや次亜塩素酸ソーダ溶液を作用し、カーボンブラックをさらに酸化処理してその表面をより親水化処理する手段(例えば、特開平7−258578号公報、特開平8−3498号公報、特開平10−120958号公報、特開平10−195331号公報、特開平10−237349号公報)、カーボンブラックを3−アミノ−N−アルキル置換ピリジウムブロマイドで処理する手段(例えば、特開平10−195360号公報、特開平10−330665号公報)、有機顔料が不溶又は難溶である溶剤中に有機顔料を分散させ、スルホン化剤により顔料粒子表面にスルホン基を導入する手段(例えば、特開平8−283596号公報、特開平10−110110号公報、特開平10−110111号公報)、三酸化硫黄と錯体を形成する塩基性溶剤中に有機顔料を分散させ、三酸化硫黄を添加することにより有機顔料の表面を処理し、スルホン基又はスルホンアミノ基を導入する手段(例えば、特開平10−110114号公報)等が挙げられるが、本発明で用いられる表面処理顔料のための作製手段はこれらの手段に限定されるものではない。
1つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェットヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を有するモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
上記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、上記樹脂分散剤の中和当量以上であれば特に制限はない。
上記樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が上記範囲であることにより、色材の水中での安定的な分散が得られ、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。
以上述べた樹脂分散剤としては市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
また、界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
上記樹脂分散剤または上記界面活性剤の顔料に対する添加量は、顔料100質量部に対して好ましくは1質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上50質量部以上である。この範囲であることにより、顔料の水中への分散安定性が確保できる。
以上述べた表面処理顔料は、水中に分散させることにより、顔料分散体として使用される。表面処理顔料を水中に分散させる方法としては、表面処理顔料と水、また各々に必要に応じて水溶性有機溶剤・中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行うことができる。この場合、顔料の粒子径としては、平均粒子径で20nm以上500nm以下になるまで、より好ましくは50nm以上200nm以下になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。樹脂分散剤や界面活性剤を使用する場合にも、同様である。
1.2.2.樹脂分散体
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、樹脂を水に分散させた樹脂分散体(すなわちエマルジョン状態、あるいはサスペンジョン状態にして)を含む。樹脂分散体の樹脂成分は、インクを固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有し、画像の耐擦性を向上させることができる。
樹脂分散体の樹脂としては、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、および塩化ビニリデンの単独重合体又は共重合体、フッ素樹脂、および天然樹脂が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマーの少なくとも何れかの単独重合体又は共重合体である(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の中でも、(メタ)アクリル系モノマーとビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。ビニル系モノマーとしては、限るものでは無いがスチレンなどが挙げられる。(メタ)アクリル系モノマーとスチレンとの共重合体であるスチレン−アクリル共重合体系樹脂が特に好ましい。なお、上記の共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、およびグラフト共重合体のうちいずれの形態であってもよい。また、樹脂としては、上記以外にもポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂も好ましい。
上記の樹脂は、特に限定されないが、例えば、以下に示す調製方法により得ることができ、必要に応じて複数の方法を組み合わせてもよい。当該調製方法としては、所望の樹脂を構成する成分の単量体中に重合触媒(重合開始剤)と分散剤とを混合して重合(乳化重合)する方法、親水性部分を持つ樹脂を水溶性有機溶剤に溶解させて得られる溶液を水中に混合した後に水溶性有機溶剤を蒸留等で除去する方法、および樹脂を非水溶性有機溶剤に溶解させて得られる溶液を分散剤と共に水溶液中に混合する方法が挙げられる。
上記の樹脂の平均粒子径は、10nm〜500nmが好ましく、20nm〜400nmがより好ましく、30nm〜300nmが特に好ましい。樹脂の平均粒子径が前記範囲にあることにより、成膜性に優れると共に、凝集しても大きな塊ができにくいのでノズルの目詰まりを低減することができる。なお、本明細書における平均粒子径は、特に明示がない限り体積基準のものである。測定方法としては、例えば、動的光散乱理論を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。このような粒度分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製の「マイクロトラックUPA」等が挙げられる。
樹脂分散体の含有量は、固形分換算で、インク組成物の総質量(100質量%)に対して1質量以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂分
散体の固形分含有量が上記範囲にあることにより、記録時の吐出信頼性を確保し、耐擦性に優れた画像を形成できる。
1.2.3.水
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は水を含有する。水は、水系インクジェットインク組成物の主となる媒体であり、加熱によって蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
水の含有量は、水系インクジェットインク組成物の総質量(100質量%)に対して、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
1.2.4.有機溶剤
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は有機溶剤を含有してもよい。インク組成物が有機溶剤を含有することにより、記録媒体上に吐出された水系インクジェットインク組成物の乾燥性が良好となり、耐擦性に優れた画像を得ることができる。
インク組成物に用いる有機溶剤としては、水溶性有機溶剤であることが好ましい。水溶性有機溶剤を使用することにより、よりインク組成物の乾燥性が良好となり、耐擦性に優れた画像を得ることができる。
水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールの低級アルキルエーテル類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの水酸基を持つアミン類;グリセリンが挙げられる。水系インクジェットインク組成物の乾燥性を向上させる点では、これらの中でも、プロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール等を用いることが好ましい。
有機溶剤の含有量は、水系インクジェットインク組成物の総質量(100質量%)に対して、2.0質量%以上45質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、6.0質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、180℃以上300℃以下がより好ましく、200℃以上270℃以下がさらに好ましく、210℃以上250℃以下が特に好ましい。有機溶剤の標準沸点が上記範囲である場合、インク組成物の吐出信頼性や耐擦性がより優れ、好ましい。
また、本実施形態において、水系インクジェットインク組成物に用いる有機溶剤としては、含窒素溶剤を含むことが好ましい。含窒素溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
含窒素溶剤の含有量は、水系インクジェットインク組成物の総質量(100質量%)に対して、1.0質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以上17質量%以下であることがさらに好ましい。含窒素溶剤の含有量が前記範囲内にあることにより、耐擦性に優れた記録物が得られやすくなる。また、上記の樹脂がインク組成物に溶解しやすくなるので、ノズルの目詰まりが発生しやすくなる。
なお、沸点が280℃以上の有機溶剤は、インクの水分を吸収して、インクジェットヘッド付近のインクを増粘させる場合があり、これにより、インクジェットヘッドの吐出安定性を低下させる場合がある。また、インクの乾燥性が大幅に低下する。このため、本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。この場合には、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体において、記録媒体上でのインク組成物の乾燥性が高くなるので、ブリードの発生が抑制され、画像の濃淡ムラを抑制して画質に優れた画像を形成できる。
沸点が280℃以上の有機溶剤としては、例えば、グリセリンを挙げることができる。グリセリンは吸湿性が高く、沸点が高いため、インクジェットヘッドの目詰まりや、動作不良の原因となる場合がある。また、グリセリンは、防腐性が乏しく、カビや菌類を繁殖させやすいので、インク組成物に含有しないことが好ましい。
1.2.5.界面活性剤
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が挙げられ、これらの少なくとも1種を含有することが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールおよび2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールおよび2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される1種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(商品名、エアープロダクツ社製)、サーフィノール465やサーフィノール61やサーフィノールDF110D(商品名、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、サーフロンS144、S145(以上商品名、AGCセイミケミカル株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(以上商品名、住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(以上商品名、Dupont社製);FT−250、251(以上商品名、株式会社ネオス製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、BYK Additives & Instruments社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
これらの中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、ノズルの目詰まり回復性をさらに向上させることができる。一方、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤は、記録媒体上でインクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有している点で好ましい。したがって、本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、シリコーン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤の少なくとも一方と、アセチレングリコール系界面活性剤と、を含有することがより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量の下限は、水系インクジェットインク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。一方、含有量の上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が前記範囲にあると、ノズルの目詰まり回復性が向上する効果が得られやすい。
フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の含有量の下限は、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましい。一方、含有量の上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤の含有量が前記範囲にあると、記録媒体上でインクの濃淡ムラや滲みを生じないように均一に広げる作用を有している点で好ましい。
1.2.6.その他の含有成分
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、その保存安定性およびヘッドからの吐出安定性を良好に維持するため、目詰まり改善のため、又はインクの劣化を防止するため、消泡剤、溶解助剤、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、有機溶剤ではない保湿剤、および分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤などの、種々の添加剤を適宜添加することもできる。
pH調整剤としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
有機溶剤ではない保湿剤としては、トリメチロールプロパンや糖などの常温で固体の保湿剤が挙げられる。
1.2.7.水系インクジェットインク組成物の調製方法
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.2.8.水系インクジェットインク組成物の物性
本実施形態において、水系インクジェットインク組成物は、画像品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
なお、水系インクジェットインク組成物と、後述の反応液の表面張力の差の絶対値が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。水系インクジェットインク組成物と反応液の表面張力の差の絶対値が10以下であることにより、記録時の濡れ性が確保されるため、画質に優れる記録を行うことができる。
また、同様の観点から、本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物の20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
また、本実施形態に係る水系インクジェットインク組成物は、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下である。本実施形態において、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることにより、細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物を提供することができる。また、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であることにより、インク成分の分散安定性が優れるため、吐出安定性に優れたインクとすることができる。
インク組成物の導電率は、下限値は0μs/cm以上であり、限るものでは無いが100μs/cm以上が好ましく、500μs/cm以上がより好ましく、700μs/cm以上であることがさらに好ましく、850μs/cm以上であることがさらにより好ましく、1000μs/cm以上であることが特に好ましい。また、インク組成物の導電率は、上限値が2450μs/cm以下であることが好ましく、2200μs/cm以下であることがさらに好ましく、2000μs/cm以下であることがいっそう好ましい。イン
ク組成物の導電率が前記範囲にあることにより、より吐出安定性と保存安定性に優れた水系インクジェットインク組成物とすることができる。
なお、インク組成物の導電率は、例えば、導電率計(Eutech Instruments製 EC Tester 11+)を用いて測定することができる。
インク組成物の導電率の調整は、例えば、インク組成物に含有させる成分のうち導電率を有する成分の種類やインク組成物における含有量を調整することで行うことができる。導電率を有する成分としては、例えば、顔料分散体、樹脂分散体などが挙げられる。顔料分散体の導電率は、顔料分散体の表面にイオン性官能基を導入する表面処理を施す際の処理の程度を調整したり、顔料分散に用いる分散剤樹脂が有するイオン性官能基の量を調整することで調整が可能である。樹脂分散体の導電率は、樹脂分散体を構成する樹脂が有するイオン性官能基の量を調整したり、樹脂分散体の分散に用いる分散剤が有するイオン性官能基の量を調整することで調整が可能である。導電率を有する成分としては、他にもイオン性官能基を有する化合物が挙げられる。
1.3.反応液
次に、インクジェット記録方法で用いられる反応液について説明する。本実施形態で用いられる反応液は、水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有するものである。以下、本実施形態で用いられる反応液に含まれる成分および含まれ得る成分ついて詳細に説明する。
なお、本実施形態において、反応液とは、色材の含有量が0.2質量%以下であり、記録媒体に着色するために用いる上述の水系インクジェットインク組成物ではなく、水系インクジェットインク組成物を付着する前に記録媒体へ付着させて用いる補助液である。
1.3.1.凝集剤
本実施形態で用いられる反応液は、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する。反応液が凝集剤を含むことにより、後述するインク付着工程において、凝集剤と水系インクジェットインク組成物に含まれる樹脂とが速やかに反応する。そうすると、水系インクジェットインク組成物中のリン含有基を表面に有する表面処理顔料や樹脂の分散状態が破壊され、表面処理顔料や樹脂が凝集する。そして、この凝集物が表面処理顔料の記録媒体への浸透を阻害するため、記録画像の画質の向上の点で優れたものとなると考えられる。
凝集剤としては、例えば、多価金属塩、カチオンポリマー、カチオン性界面活性剤、有機酸が挙げられる。これらの凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの凝集剤の中でも、水系インクジェットインク組成物に含まれる樹脂との反応性に優れるという点から、多価金属塩およびカチオンポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の凝集剤を用いることが好ましい。
多価金属塩としては、二価以上の多価金属イオンとこれら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶な化合物である。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+などの二価金属イオン;Al3+、Fe3+、Cr3+などの三価金属イオンが挙げられる。陰イオンとしては、Cl、I、Br、SO 2−、ClO3−、NO3−、およびHCOO、CHCOOなどが挙げられる。これらの多価金属塩の中でも、反応液の安定性や凝集剤としての反応性の観点から、カルシウム塩およびマグネシウム塩が好ましい。
有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコ
ール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオンポリマーとしては、例えば、カチオン性のウレタン樹脂、カチオン性のオレフィン樹脂、カチオン性のアリルアミン樹脂等が挙げられる。
カチオン性のウレタン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。カチオン性のウレタン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP−7010、CP−7020、CP−7030、CP−7040、CP−7050、CP−7060、CP−7610(以上商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(以上商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR−2120C、WBR−2122C(以上商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶剤等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB−1200、CD−1200(以上商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
カチオン性のアリルアミン樹脂としては、公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。このようなカチオン性のアリルアミン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、PAA−HCL−01、PAA−HCL−03、PAA−HCL−05、PAA−HCL−3L、PAA−HCL−10L、PAA−H−HCL、PAA−SA、PAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、PAA−25、PAA−H−10C、PAA−D11−HCL、PAA−D41−HCL、PAA−D19−HCL、PAS−21CL、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−22SA、PAS−M−1A、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−92、PAS−92A、PAS−J−81L、PAS−J−81(以上商品名、ニットーボーメディカル会社製)、ハイモ Neo−600、ハイモロック
Q−101、Q−311、Q−501、ハイマックス SC−505、SC−505(以上商品名、ハイモ株式会社製)等を用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級および第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第
4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミン等の塩酸塩、酢酸塩等、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチル硫酸塩、ジメチルエチルオクチルアンモニウムエチル硫酸塩、トリメチルラウリルアンモニウム塩酸塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
反応液の凝集剤の濃度は、反応液1kg中において、0.03mol/kg以上であってもよい。また、反応液1kg中において、0.1mol/kg以上1.5mol/kg以下であってもよく、0.2mol/kg以上0.9mol/kg以下であってもよい。また、凝集剤の含有量は、例えば、反応液の総質量(100質量%)に対し、0.1質量%以上25質量%以下であってもよく、1質量%以上20質量以下であってもよく、3質量%以上10質量以下であってもよい。
1.3.2.水
本実施形態で用いられる反応液は、水を主溶媒とする水系であることが好ましい。この水は、反応液を記録媒体に付着させた後、乾燥により蒸発飛散する成分である。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、反応液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止できるので好適である。反応液に含まれる水の含有量は、反応液の総質量(100質量%)に対して、例えば、40質量%以上とすることができ、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。
1.3.3.有機溶剤
本実施形態で用いられる反応液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤を含有することにより、記録媒体に対する反応液の濡れ性を向上させたりすることができる。有機溶剤としては、上述の水系インクジェットインク組成物で例示する有機溶剤と同様のものを使用できる。有機溶剤の含有量は、特に限定されるものではないが、反応液の総質量(100質量%)に対して、例えば、10質量%以上80質量%以下とすることができ、好ましくは15質量%以上70質量%以下である。
有機溶剤の標準沸点は、前述のインク組成物に含有してもよい有機溶剤の標準沸点の好ましい範囲の温度に、インク組成物に含有してもよい有機溶剤の標準沸点とは独立して含有することができる。あるいは、有機溶剤の標準沸点は、180℃以上が好ましく、180℃以上300℃以下がより好ましく、190℃以上270℃以下がさらに好ましく、200℃以上250℃以下が特に好ましい。
なお、反応液は、有機溶剤として、上述の水系インクジェットインク組成物と同様に、標準沸点が280℃超の水溶性有機溶剤の含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。前記場合には、反応液の乾燥性が良いため、反応液の乾燥が迅速に行われるほか、得られた記録物のベタツキ低減や耐擦性に優れる。
1.3.4.界面活性剤
本実施形態で用いられる反応液には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を添加することにより、反応液の表面張力を低下させ、記録媒体との濡れ性を向上させることができる。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーンン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。これらの界面活性剤の具体例については、後述の水系インクジェットインク組成物で例示する界面活性剤と同様のものを使用できる。界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、反応液の総質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上5質量%以下とすることができる。
1.3.5.その他の成分
本実施形態で用いられる反応液には、必要に応じて、上記のようなpH調整剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を添加してもよい。
1.3.6.反応液の調製方法
本実施形態で用いられる反応液は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。上記の各成分を十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒子および異物を除去するためにろ過を行って、目的の反応液を得ることができる。
1.3.7.反応液の物性
本実施形態で用いられる反応液は、インクジェットヘッドで吐出させる場合には、20℃における表面張力が18mN/m以上40mN/mであることが好ましく、20mN/m以上35mN/m以下であることがより好ましく、22mN/m以上33mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートを反応液で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
なお、上述の水系インクジェットインク組成物と反応液の表面張力の差の絶対値が10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。水系インクジェットインク組成物と反応液の表面張力の差の絶対値が10以下であることにより、記録時の濡れ性が確保されるため、画質に優れる記録を行うことができる。
また、同様の観点から、本実施形態で用いられる反応液の20℃における粘度は、3mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上8mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
1.4.記録媒体
上述の水系インクジェットインク組成物は、インク乾燥性を有し、インク吸収性、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対する記録において、画質や耐擦性が優れた画像を得ることができる。特に、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対する記録において耐擦性が優れた画像を得ることができ好ましく用いることができる。
インク吸収性の記録媒体としては、例えば、上質紙や再生紙などの普通紙、インク吸収濃を有するインク受容層を設けたインクジェット専用紙などがあげられる。
インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット記録用に表面処理をしてい
ない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。なお、本明細書中において、インク非吸収性または低吸収性の記録媒体を、単に「プラスチックメディア」ともいう。
ここで、本明細書において「インク非吸収性または低吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
インク非吸収性の記録媒体としては、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
インク低吸収性の記録媒体としては、表面にインクを受容するための塗工層が設けられた記録媒体が挙げられ、例えば、基材が紙であるものとしては、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられ、基材がプラスチックフィルムである場合には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の表面に、親水性ポリマーが塗工されたもの、シリカ、チタン等の粒子がバインダーとともに塗工されたものが挙げられる。これらの記録媒体は、透明な記録媒体であってもよい。
また、エンボスメディア等の、表面に凹凸を有するインク非吸収性または低吸収性の記録媒体に対しても、好適に用いることができる。
なお、インクジェット記録装置1がシリアル式(マルチパス式)の記録装置である場合、記録媒体幅の好ましい幅は、3.2m以下であることが好ましい。この場合には、1回の主走査中に記録媒体がインクジェットヘッドと対向している時間、つまり、1走査中に使われないノズルが記録媒体から熱を受ける時間が12秒以下となり、ノズル内のインク組成物の乾燥および組成変動を抑制でき、ノズルの内壁に樹脂が溶着することを低減することができる。その結果、連続印字時のインクの着弾ずれを抑制でき、ノズルの目詰まり回復性も良好となる。なお、記録媒体幅の好ましい幅の下限値は30cm以上である。
2.インクジェット記録方法
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記の水系インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体へ付着させるインク付着工程を備えることを特徴とする。以下、図面を参照しながら説明する。
2.1.反応液付着工程
反応液付着工程は、水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を記録媒体へ付着させる工程である。水系インクジェットインク組成物の付着より前にインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液を記録媒体へ付着させるこ
とにより、インクのブリードを抑制して、耐擦性や画質に優れる記録を行うことができる。
反応液付着工程の前に図1に示すプレヒーター7により、または反応液付着工程の際に、図1に示すIRヒーター3またはプラテンヒーター4により記録媒体Mが加熱されていることが好ましい。加熱された記録媒体M上に反応液を付着させることにより、記録媒体M上に吐出された反応液が記録媒体M上で塗れ広がりやすくなり、反応液を均一塗布することができる。このため、後述のインク付着工程で付着されたインクと反応液が十分に反応し、優れた画質が得られるようになる。また、反応液は記録媒体M上で均一に塗布されるため、塗布量を減らすことができ、得られた画像の耐擦性低下を防止することができる。
ここで、反応液を付着させる際の記録媒体Mの表面温度は、後述するインクを付着させる際の記録媒体Mの表面温度(一次加熱温度)の好ましい範囲の温度に、インクを付着させる際の記録媒体Mの表面温度(一次加熱温度)とは独立して設定することができる。反応液を付着させる際の記録媒体Mの温度が前記範囲にある場合には、反応液を記録媒体Mに均一に塗布することができ、画質を向上させることができる。また、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑えることができる。
なお、反応液の付着は、インクジェットヘッド2による吐出により行ってもよく、それ以外の方法、例えば、反応液をロールコーター等で塗布する方法や、反応液を噴射する方法等が挙げられる。
2.2.インク付着工程
インク付着工程は、記録媒体Mへ、または反応液付着工程を行った記録媒体Mへ、上述の水系インクジェットインク組成物をインクジェットヘッド2から吐出させて付着させる工程である。この工程により、インクの液滴と、反応液とが記録媒体M上で反応する。これにより、記録媒体Mの表面にインク組成物からなる画像が形成される。また、反応液が凝集剤を含有することにより、凝集剤が記録媒体M上でインクの成分と反応し、より耐擦性に優れたものとすることができる。
ここで、本実施形態において、「画像」とは、ドット群から形成される記録パターンを示し、テキスト印字、ベタ画像も含める。なお、「ベタ画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録し、通常、記録媒体の記録領域がインクで覆われ記録媒体の地が見えていないような画像であるべき画像パターンを意味する。
本実施形態において、インク付着工程加熱工程は、反応液付着工程と同時に行われてもよい。
記録媒体Mへの単位面積当たりの水系インクジェットインク組成物の最大付着量は、好ましくは5mg/inch以上であり、より好ましくは7mg/inch以上であり、さらに好ましくは10mg/inch以上である。記録媒体の単位面積当たりの水系インクジェットインク組成物の付着量の上限は、特に限定されないが、例えば、20mg/inch以下が好ましく、好ましくは15mg/inch以下であり、特に好ましくは13mg/inch以下である。
インク付着工程は、インク付着工程の前またはインク付着工程と同時に、IRヒーター3やプラテンヒーター4により記録媒体Mを加熱する加熱工程を備えるものであってもよく、加熱工程により加熱された記録媒体Mへ行うことが好ましい。これにより、記録媒体
M上でインクを迅速に乾燥させることができ、ブリードが抑制される。また、耐擦性および画質に優れた画像を形成できると供に、上述のインクを用いることにより、吐出安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
インクを付着させる際の記録媒体Mの表面温度(一次加熱温度)は、60℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましく、45℃以下であることがさらに好ましく、40℃以下であることが特に好ましく、38℃以下であることがいっそう好ましい。インクを付着させる際の記録媒体の表面温度が前記範囲にあることにより、インクジェットヘッド2への熱による影響を抑制し、ノズルの目詰まりを防止することができる。また、インクジェット記録の際の記録媒体Mの表面温度の下限値は25℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、32℃以上であることがさらに好ましく、35℃以上であることが特に好ましい。インクジェット記録の際の記録媒体Mの表面温度が上記の範囲であることにより、記録媒体M上でインクを迅速に乾燥させることができ、ブリードが抑制され、耐擦性に優れた画像を形成できる。
なお、インクジェット記録装置1がシリアル式の記録装置である場合、1回の主走査中に記録媒体がインクジェットヘッド2と対向している時間が12秒以下であることが好ましい。この時間の上限は、10秒以下であることがより好ましく、6秒以下であることが特に好ましい。この時間の下限は、1秒以上であることが好ましく、2秒以上であることがより好ましく、3秒以上であることがさらに好ましく、4秒以上であることが特に好ましい。1回の主走査中に記録媒体Mがインクジェットヘッド2と対向している時間は、1走査中に使われないノズルが記録媒体Mから熱を受ける時間に等しい。つまり、この時間が前記範囲にあると、1回の主走査中に使用されないノズルが記録媒体Mから熱を受ける時間が十分に短いので、ノズル内のインク組成物の乾燥および組成変動を抑制でき、ノズルの内壁に樹脂が溶着することを低減することができる。その結果、連続印字時のインクの着弾ずれを抑制でき、ノズルの目詰まり回復性もさらに良好となる。また、上記の時間が上記範囲以上である場合、記録媒体の走査幅が長い記録媒体へ記録できる点や記録装置の設計がしやすい点で好ましく、このような記録を行う場合であっても、吐出信頼性が得られる点で本実施形態が特に有用である。
2.3.二次加熱工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記インク付着工程の後、図1に示す硬化ヒーター5により水系インクジェットインク組成物が付着した記録媒体Mを加熱する二次加熱工程を有していてもよい。これにより、記録媒体M上の水系インクジェットインク組成物に含まれる樹脂微粒子が溶融してインク膜が形成される。このようにして、記録媒体M上においてインク膜が強固に定着(接着)して、耐擦性に優れた高画質な画像を短時間で得ることができる。
硬化ヒーター5により記録媒体Mの表面を加熱する温度(二次加熱温度)は、好ましくは40℃以上120℃以下であり、より好ましくは60℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上90℃以下である。加熱温度が上記範囲内であることにより、得られた記録物の耐擦性がより向上し、さらに記録媒体M上に密着性よくインク膜を形成することができる。
なお、二次加熱工程の後に、図1に示す冷却ファン6により、記録媒体M上のインク組成物を冷却する工程を有していてもよい。
2.4.クリーニング工程
本実施形態に係るインクジェット記録方法は、インクを吐出して記録するための圧力発生手段以外の手段により、つまり、インクジェットヘッド2が備える記録のためにインク
を吐出するための機構ではない他の機構により、インク組成物や反応液を排出させるクリーニング工程を備えていてもよい。
インクジェットヘッド2が備える記録のためにインクを吐出するための機構としては、圧力室に備えられてインクに圧力を付与するピエゾ素子やヒーター素子が挙げられる。該クリーニング工程は、インクジェットヘッド2に外部から圧力を付与してノズルから、水系インク組成物を排出させる工程としてもよい。この工程を備えることで、インクジェットヘッド2の内壁に樹脂が溶着する懸念がある場合にも、これを抑制し、目詰まり性を改善する点で一層優れたものとすることができる。
また、本実施形態に係るインクジェット記録方法では、インクジェット記録装置1を上述のクリーニング工程を行うことなく、つまり、クリーニングレスで1時間以上記録を行うように制御することが好ましい。このように制御することで、クリーニング工程に伴い記録を中断するなどにより記録速度を低減させることがない。また、本実施形態では、クリーニングレスの場合であっても、上述したインク組成物を用いることにより、インクジェットヘッド2の目詰まりを抑制でき、耐擦性に優れた良好な画像を記録することができる。
なお、上述の他の機構としては、吸引(負圧)の付与や、ヘッドの上流から正圧を付与すること、など圧力を付与する機構が挙げられる。これらは、インクジェットヘッド自身の機能によるインク排出(フラッシング)ではない。つまり、記録に際して、インクジェットヘッドからインクを吐出させる機能を用いての排出ではない。
また、記録の時間は連続でなくてもよく、インクジェットヘッドに外部から圧力を付与してノズルから水系インク組成物を排出させることをしなければ、休止はしてもよい。ここで、記録の時間とは、走査や走査の合間の停止時間も含めた記録の所要時間である。記録の時間は1時間以上が好ましく、1.5時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましく、3時間以上が特に好ましい。記録の時間の上限は限るものではないが、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下、さらに好ましくは4時間以下である。
また、本実施形態に係るインクジェット記録方法は、1回の記録に際して、記録中に上記のクリーニング工程を行わないとすることが、上記の点で好ましい。また、記録を行う前または記録を行った後の少なくとも何れかに、上述のクリーニング工程を行うとしても、上記の点で好ましい。
以上示したように、本実施形態に係るンクジェット記録方法では、インクの導電率を所定の範囲とすることにより、インク成分の分散安定性が優れるため、吐出安定性に優れた記録方法を提供することができる。また、記録媒体へのインクの浸透性や記録媒体との親和性が良いため、インクの記録媒体上での意図しない滲みや拡がりが抑制され、細線印刷時の印刷品質が確保され、耐擦性に優れた画像を得ることができる。さらに、本実施形態に係るインクジェット記録方法で記録を行う記録装置において、特にクリーニング工程を行わずに1時間以上吐出安定性に優れたインクジェット記録を実現することができる。また上述の記録や記録の制御を行う記録装置とすることができる。
3.実施例
以下、本発明の実施形態を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
3.1.インク
3.1.1.顔料分散体の調製
下記顔料分散体1〜5を用いた。
Figure 2018154805
・顔料分散体1
以下の手順を用いて、[2−(4−アミノフェニル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ジイル]ビスホスホン酸一ナトリウム塩を製造した。500mL三つ口フラスコに、凝縮器の頂部にガス出口を備えた凝縮器、温度計及び乾燥窒素入口、並びに100mL均圧添加漏斗を取り付けた。このフラスコに、最初に、32gの亜リン酸(380mmol)及び160mLのメタンスルホン酸(溶媒)を添加した。この撹拌混合物に、57.4gのアミノフェニル酢酸(380mmol)を少しずつ添加した。この撹拌混合物を65℃に1〜2時間加熱して、固体分を完全に溶解させた。この系全体を乾燥窒素でフラッシュし、そして固体分のすべてが溶解した後に温度を40℃に減じた。この加熱溶液に、添加漏斗を通じて70mLのPCl(800mmol)をゆっくり添加した。HClガスが反応から発生し、そしてこのガスはガス出口を通じて乾燥管中にそして次いで漏斗を通じてビーカー中の濃NaOH溶液中に流れた。添加が完了した後、反応混合物を2時間撹拌且つ40℃にて加熱した。この時間後、温度を65〜70℃に上げ、そしてこの混合物を一晩撹拌した。生じた清澄な茶色溶液を室温に冷却し、そして600gの氷/水混合物中への添加によりクエンチした。この水性混合物を1Lビーカー中に入れ、そして90〜95℃に4時間加熱した(ビーカーの頂部はガラス板で覆われ得る)。次いで、この混合物を室温に冷却し、そしてこの混合物のpHを50%NaOH溶液で4〜5に調整した(クエンチングの結果として温度が上昇するので、該NaOH溶液はゆっくり添加された)。この混合物を氷浴で5℃に2時間冷却し、そして次いで生じた固体分を吸引濾過により集め、1Lの冷脱イオン水で洗浄しそして60℃にて一晩乾燥して、白色又はオフホワイト色の固体生成物(収量は48g,39%であった)がもたらされた。このようにして、[2−(4−アミノフェニル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ジイル]ビスホスホン酸一ナトリウム塩を得た。
次に、200mlの脱イオン水に、顔料(カーボンブラック)20gと、上記で得た化合物の20mmolと、20mmolの硝酸とを加え、30分間、6000rpmで攪拌した。次に、混合液に亜硝酸ナトリウムの20mmolをゆっくり添加し、上記と同様に1時間攪拌した。得られた混合物のpHを、50%NaOH溶液を用いて10に調整した。30分後に、生成された変性顔料を脱イオン水で濾過し、顔料固形分が12質量%に調整された顔料分散液を得た。得られた顔料は、表面にホスホン酸基を有するものであった。
・顔料分散体2
キャボット社製、Cab−O−Jet300を用いた。
・顔料分散体3
キャボット社製、Cab−O−Jet200を用いた。
・顔料分散体4
イオン交換水80.1gに、スチレン−アクリル酸系高分子分散剤(BASFジャパン
株式会社製、ジョンクリル682)3.0gと、トリエタノールアミン1.8gを溶解させ、カーボンブラックを15gと消泡剤(日信科学工業株式会社製、サーフィノール104E)を0.1g加え、ジルコニアビースを用いてペイントシェーカーにて分散し、顔料分散体P−4(黒)を得た。
・顔料分散体5
上記顔料分散体1の調製において、4−ニトロケイ皮酸の水素化により製造された4−アミノフェニルプロピオン酸をアミノフェニル酢酸の代わりに用いたこと以外は顔料分散体1に記載された手順を用いて、[2−(4−アミノフェニル)−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジイル]ビスホスホン酸一ナトリウム塩を得た。該化合物を処理に用いたこと以外は、顔料分散体1と同様にして表面処理カーボンブラック顔料を含む顔料分散液を得た。得られた顔料は、表面にホスホン酸基を有するものであった。
3.1.2.樹脂エマルジョン
表2に示す樹脂エマルジョンを用いた。
Figure 2018154805
3.1.3.インクの調製
表3の配合割合になるように各成分を混合攪拌して、インク1〜14(実施例および比較例)を得た。なお、表3中の数値は全て質量%を示し、純水はインクの全質量が100質量%となるように添加した。また、顔料分散体および樹脂エマルジョンについては、固形分換算した値を示す。なお、調製後のインクの導電率の測定値が表3に記載する値となるように、必要に応じ、顔料分散体または樹脂分散体の含有量を調整した。
Figure 2018154805
なお、表3において商品名で記載した物質の詳細は、以下の通りである。
<界面活性剤>
・サーフィノール 465(商品名「サーフィノール DF110D」、日信科学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・BYK348(商品名、BYK Additives & Instruments社製、シリコーン系界面活性剤)
・E1010(商品名「オルフィン E1010」、日信科学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
3.1.4.インクの評価
得られたインク1〜14について、インク保存性試験と印刷評価を行うと共に、インクの導電率と表面張力を測定した。結果を表3に記載する。
<インク保存性試験>
ガラス瓶にインク組成物を8分目まで入れ、70℃の恒温環境に3日間保持し、保管前後の粘度および粒径変化を観察し、以下の基準で評価した。なお、粘度変化は、室温におけるインク粘度を粘度計(Physica社製 製品名「MCR−300」)を用いて測定し、下記式により粘度の変化を算出して評価した。
[(保管後の粘度−初期粘度)/(初期粘度)]×100(%)
粒径変化は、保管前後のインク中の粒子径分布における体積平均径(MV)をそれぞれ測定し、下記式により粘度の変化を算出して評価した。
[(保管後のMV−初期MV)/(初期MV)]×100(%)
粒子径分布における体積平均径の測定には、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(日機装株式会社製、形式「ナノトラックUPA−EX150」)を使用した。
(評価基準)
A:粘度変化≦20%、粒径変化≦30%
B:粘度変化≦20%、30%<粒径変化≦50%
C:粘度変化>20%、粒径変化>50%
<印刷評価(細線評価)>
インクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製)にインクを充填し、上質紙(OKプリンス上質;王子製紙株式会社製)に、720×720dpiの解像度、ドット重量8ng、4〜8ポイントで「驚」を常温で印字し、文字のつぶれ等が無いか、目視し、下記評価基準で評価した。なお、ここで「文字つぶれ」は、紙面で意図しないインクの拡がりが発生し、細線が太って文字が判断つかなくなる状態を意味する。
(評価基準)
A:4ポイントでも文字のつぶれ無し
B:4〜5ポイントで一部つぶれ有り
C:6〜8ポイントで一部つぶれ有り
<導電率の測定>
導電率の測定は、導電率計(Eutech Instruments製 EC Tester 11+)を用いて行った。
<表面張力の測定>
表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより行った。
3.2.反応液の調製
表4に記載の組成にしたがって、各成分を混合・攪拌した後、10μmのメンブレンフィルターでろ過することにより、反応液1〜6を調製した。なお、表4中の数値は全て質量%を示し、純水は反応液の全質量が100質量%となるように添加した。各反応液についても、上記のインクと同様に表面張力を測定した。
Figure 2018154805
なお、表4において商品名で記載した物質の詳細は、以下の通りである。
・ダイノール607(商品名、エアープロダクツジャパン社製、アセチレンジオール系界面活性剤)
・BYK348(商品名、BYK Additives & Instruments社製、シリコーン系界面活性剤)
・E1010(商品名「オルフィン E1010」、日信科学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
3.3.インクジェット記録方法の評価試験
3.3.1.吐出信頼性試験
後述する画質評価試験の記録条件と同じ条件にて2時間連続して記録を行った。ただし、インクジェットプリンターに送風機構を設け、記録中、ヘッドに、紙面搬送方向と反対方向に2m/sの風があたっている状態とした。また、記録中、吸引クリーニングなどインクジェットヘッドのピエゾ素子以外の機構を用いたクリーニング工程は行わなかった。記録後、360個のノズルのうち何本のノズルが不吐出(不良)かを確認し、以下の基準で評価した。なお、評価後、吸引クリーニングを行い不吐出ノズルの回復を図ったところ、いずれの例においても回復を図ることができた。
(評価基準)
A:不吐出ノズル(ノズル抜け)の数が0本
B:不吐出ノズルの数が1〜5本
C:不吐出ノズルの数が6〜20本
D:不吐出ノズルの数が21本以上
3.3.2.画質評価試験
インクジェットプリンター(製品名「SC−S30650」、セイコーエプソン株式会社製)改造機に記録媒体を搬入し、ヘッドの1ノズル列のノズルにインクおよび反応液をそれぞれ充填した。まず、反応液を1440×1440dpiの解像度、1.0mg/inchの付着量でインクジェット塗布した。次に、記録媒体を巻き戻して、インクを、1440×1440dpiの解像度、10.0mg/inchの付着量で反応液層に重ねてインクジェット塗布した。ここで、10×10mmのベタパターンを作成し、目視にて印刷ムラの有無を確認し、以下の基準で評価した。
なお、記録を行う際には、プラテンヒーターを作動させて、加熱した記録媒体に反応液やインクを付着させた。その際、記録媒体の表面温度が表5〜7に記載の1次乾燥温度となるようにプラテンヒーターを制御した。記録後、プリンターから記録媒体を排出し、80℃×5分で乾燥させた。記録媒体は、ポリ塩化ビニルシート(ORAFOL株式会社製、品番ORAJET 3164XG−010(1600mm) 光沢塩ビグレー糊)を用いた。
また、走査時間は、1回の走査におけるヘッドと記録媒体とが対向している時間である。一部の例はキャリッジ速度を調整して走査時間を異ならせた。
(評価基準)
A:パターン内にインクの濃さが不均一になっている様子が観察されない。
B:細かな不均一さが認められる。
C:大きな不均一さが認められるがピンホールがない。
D:不均一さが認められ、ピンホールがある。
Figure 2018154805
Figure 2018154805
Figure 2018154805
表5〜7において、ヘッドタイプは、それぞれ下記のヘッドを用いた。
・ヘッド1:図2に示す、段差22aも滞留部分26もあるインクジェットヘッド。ノズルプレート20は、シリコン層をエッチングしてノズルを形成することにより得た。ヘッド1は、生産性が高く量産に向いているものであった。また設計がし易いものであった。・ヘッド2:構造はヘッド1と同様。ノズルプレート20は、金属層に機械的に穴を開けてノズルを形成することにより得た。
・ヘッド3:図2に示したインクジェットヘッドにおいて、ノズルの位置を図2と比べて図の左方に設けて、ノズルと圧力室の左端との距離をヘッド1の半分の2の距離とした。ヘッド1と比べて圧力室の左方のインクの滞留部分が小さいヘッドであった。
3.3.3.耐擦性評価
上記記録試験で得られた記録物を、室温(25℃)条件下の実験室にて1時間放置した後、記録物の記録面を学振型摩擦堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式
会社製)を用いて、荷重200g下、綿布にて20回擦ったときの記録面の剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより、以下の基準で評価した。
(評価基準)
A:30往復しても傷無し
B:20〜29往復まで傷無し
C:10〜19往復まで傷無し
D:5〜9往復まで傷無し
E:5往復で傷有り
3.4.評価結果
インク組成物の評価を表3に、インクジェット記録方法の評価試験の結果を表5〜7に示す。
表3に示すインク組成物の評価においては、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体を含有し、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下であるいずれの実施例においても、細線印刷時の印刷品質とインクの保存安定性を確保することができた。さらに、導電率が2000μs/cm以下であるインク1、3〜7においては、インクの保存安定性が特に良好であった。
これに対し、比較例は、インク組成物の導電率が2600μs/cm超のインク11〜13ではインクの保存安定性が劣り、リン含有基を表面に有する表面処理顔料を有さないインク8〜10、14では、実施例よりも印刷評価が劣る傾向にあった。
また、表5〜7に示すインクジェット記録方法の評価においては、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体を含有しインク組成物の導電率が2600μs/cm以下であるインクを用いた何れの実施例においても、吐出信頼性と耐擦評価とが優れていた。これに対し、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体を含有しインク組成物の導電率が2600μs/cm以下であるインクではないインクを用いた比較例は、吐出信頼性評価と耐擦評価の何れかが劣っていた。
詳細には、インクと反応液の表面張力差が高い記録例3と比べ、表面張力差が低い記録例2は画質がより優れていた。また、記録例3、4と記録例1の比較から、インクがグリセリンを含まない場合には、吐出信頼性が少し劣る結果となったが、耐擦評価はより優れていた。さらに、記録例6と記録例3、4の比較から、グリセリンを含まない場合には、2−ピロリドンを含む方が2−ピロリドンを含まない方よりも耐擦評価がより優れていた。また、記録例1と記録例5の比較から、インクの導電率が高い方が画質や耐擦評価がより優れることがわかった。
記録例1と15〜19の比較から、凝集剤の種類を変えた場合でも画質が確保されていた。また、記録例1は反応液を用いない記録例20と比べて、耐擦評価は劣ったが画質はより優れていた。このことから、反応液を用いてより優れた画質を得る場合であっても、優れた耐擦評価が得られる点で、本実施形態が特に有用であることがわかった。また、記録例17〜19と記録例1、15、16の比較から、反応液が2−ピロリドンを含むと耐擦評価が特に優れていた。
記録例12は記録例1と比べて、走査時間を長くしたが、走査時間が長くなることにより、吐出信頼性が低くなる傾向にある。このことから、キャリッジ速度が遅い場合やあるいは記録媒体の走査方向の幅が長いことなどにより、走査時間が長い場合でも、吐出安定性が得られる点で本実施形態が特に有用であることがわかった。記録例12〜14の比較から、一次加熱温度が低い方が画質や耐擦性がやや劣るが、吐出信頼性は特に優れること
がわかった。このことから、一次加熱温度を低くしてより優れた吐出信頼性を得る場合でも優れた画質が得られる点で、本実施形態が特に有用であることがわかった。
記録例12は、記録例21、22と比べてヘッドの構造が異なっており、吐出信頼性が劣る傾向があるヘッドであることがわかったが、量産向きであり設計がしやすいヘッドであった。このことから、量産向きであり設計がしやすいヘッドを用いた場合でも、吐出信頼性が得られる点で、本実施形態が特に有用であることがわかった。
以上により、リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体と、樹脂分散体と、を含有し、インク組成物の導電率が2600μs/cm以下である場合には、細線印刷時の印刷品質を確保しながら、保存安定性に優れたインクとなり、これを用いたインクジェット記録では、さらに吐出信頼性と耐擦評価を確保することができた。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…インクジェット記録装置、2…インクジェットヘッド、3…IRヒーター、4…プラテンヒーター、5…硬化ヒーター、6…冷却ファン、7…プレヒーター、8…通気ファン、20…ノズルプレート、21…圧力室、22…ノズル、22a…段差、23…圧電素子、24…流出口、24a…壁、24b…延長線、24r…対向する位置、25…供給口、26…滞留部分、M…記録媒体

Claims (16)

  1. リン含有基を表面に有する表面処理顔料からなる顔料分散体と、樹脂分散体と、を含有し、
    インク組成物の導電率が2600μs/cm以下である、水系インクジェットインク組成物。
  2. 前記リン含有基として、P−O基またはP=O基の何れかを含む、請求項1に記載の水系インクジェットインク組成物。
  3. 前記導電率が1000μs/cm以上2000μs/cm以下である、請求項1または請求項2に記載の水系インクジェットインク組成物。
  4. 標準沸点が280℃以上の有機溶剤の含有量が5質量%以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  5. 前記樹脂分散体の固形分含有量が1質量以上15質量%以下である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  6. 前記表面処理顔料の含有量が0.5質量以上10質量%以下である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の水系インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して記録媒体へ付着させるインク付着工程を備える、インクジェット記録方法。
  8. 前記水系インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含む反応液を、前記記録媒体へ付着させる反応液付着工程を備える、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記記録媒体を加熱する加熱工程を備え、
    前記インク付着工程を、前記加熱工程により加熱された記録媒体に対して行う、請求項7または請求項8に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記インク付着工程において、前記記録媒体の表面温度が30℃以上55℃以下である、請求項9に記載のインクジェット記録方法。
  11. 前記記録媒体に対して前記インクジェットヘッドが相対的に位置を変えながら、前記インクジェットヘッドから前記水系インクジェットインク組成物を吐出して記録媒体へインク組成物を付着させる走査を複数回行いインク付着工程を行うものであり、1回の走査の走査時間が12s以下である、請求項7ないし請求項10のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記水系インクジェットインク組成物と前記反応液の表面張力の差の絶対値が10以下である、請求項8ないし請求項11のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記反応液は、標準沸点が280℃超の水溶性有機溶剤の含有量が5質量%以下である、請求項8ないし請求項12のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記インクジェットヘッドが、圧力室からノズルの間の前記水系インクジェットインク
    組成物が通過する流路に段差を有する、請求項7ないし請求項13のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
  15. インクジェットヘッドを備え、請求項7ないし請求項14のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法を行う、インクジェット記録装置。
  16. インクジェットヘッドからインクを排出する機構であってインクジェットヘッドが備えるインク組成物を吐出して記録するための圧力発生手段以外の機構を備え、
    前記インクジェット記録方法を、前記機構により行うクリーニング工程を行うことなく1時間以上行う制御を行う、請求項15に記載のインクジェット記録装置。
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