JP2018053172A - 捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 - Google Patents

捺染インクジェットインク組成物及び記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】目詰まり性と吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる捺染インクジェットインク組成物及び記録方法を提供する。【解決手段】本発明に係る捺染インクジェットインク組成物は、樹脂分散体と保湿剤とを含有し、前記樹脂分散体が、架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有し、前記保湿剤が、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインの少なくともいずれかとを含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、捺染インクジェットインク組成物及び記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出させて、記録媒体に付着させて記録を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で記録できるという特徴を有する。インクジェット記録方法においては、用いるインクの性質、記録における安定性、得られる画像の品質をはじめとして、非常に多くの検討要素があり、インクジェット記録装置のみならず、用いるインク組成物に対する研究も盛んである。
また、インクジェット記録方法を用いて、布帛等を染色(捺染)することも行われている。従来、布帛(織布や不織布)に対する記録方法としては、スクリーン捺染法、ローラー捺染法等が用いられてきたが、多種少量生産性ならびに即時プリント性等の観点から、インクジェット記録方法を適用することが有利であるため種々検討されている。
インク組成物に顔料と定着樹脂とを配合して布帛を捺染する、いわゆる顔料捺染についても検討が為されている。顔料捺染の場合には、布帛の繊維等に顔料を物理的に固着させることが重要となる。
これに対し、例えば、特許文献1には、中空樹脂粒子および金属化合物粒子から選ばれる少なくとも1種の色材と、ガラス転移温度が65℃以下のポリウレタン樹脂とを含有するインク組成物で印刷することを特徴とする画像形成方法が記載されている。この文献では、特定のガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂を用いることにより、色材を記録媒体上に強固に定着させ、優れた堅牢性を有する画像を得ることができるとしている。
特開2010−188597号公報
しかしながら、特定のガラス転移温度を有するポリウレタン樹脂を用いるだけでは、堅牢性の向上は不十分である。そこで、さらなる堅牢性の向上のため、出願人は架橋性の樹脂を用いることを見出したが、架橋性の樹脂を用いると、画像の摩擦堅牢性が向上するが、架橋性の樹脂を含有するインクは乾燥性が高いため、インクを吐出するノズルの目詰まりを生じやすいことが明らかとなった。そこで、保湿剤を添加することが考えられたが、保湿剤の種類によってはインクの乾燥や増粘により目詰まりが発生したり、吐出安定性が低下する場合があることが明らかとなった。また、保湿剤が記録面に残留することで摩擦堅牢性も低下する場合があることが明らかとなった。インクの増粘は、記録時の加温によって低減することもできたが、インクに含まれる樹脂の架橋性成分が熱で反応する場合があり、記録時の加温は好ましくない。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、目詰まり性と吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性や洗濯堅牢性に優れた捺染物が得られる捺染インクジェットインク組成物及び記録方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る捺染インクジェットインク組成物の一態様は、
樹脂分散体と保湿剤とを含有し、
前記樹脂分散体が、架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有し、
前記保湿剤が、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインの少なくともいずれかとを含有する。
適用例1の捺染インクジェットインク組成物によれば、架橋性基を含有するウレタン樹脂と、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインの少なくともいずれかとを含有することにより、インクの乾燥性や再分散性、粘度を適度に調整することができ、目詰まり性と吐出安定性に優れると共に、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる。
[適用例2]
上記適用例において、
前記常温固体の多価アルコール又はベタインと、前記標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が、1:2〜1:5であることができる。
適用例2によれば、常温固体の多価アルコール又はベタインと、標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が1:2〜1:5の範囲にあることにより、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られると共に、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例3]
上記適用例において、
前記常温固体の多価アルコール又はベタインと、前記架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が、1:1〜1:2であることができる。
適用例3によれば、常温固体の多価アルコール又はベタインと、架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が1:1〜1:2の範囲にあることにより、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られると共に、より広範囲の温度域において、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例4]
上記適用例において、
さらに顔料を含有することができる。
適用例4によれば、顔料捺染において、目詰まり性と吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例5]
上記適用例において、
前記常温固体の多価アルコールが、トリメチロールプロパンを含有することができる。
適用例5によれば、目詰まり性と吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例6]
上記適用例において、
前記架橋性基を含有するウレタン樹脂の固形分濃度が、3.0質量%以上6.0質量%以下であることができる。
適用例6によれば、架橋性基を含有するウレタン樹脂の固形分濃度が、3.0質量%以上6.0質量%以下であることにより、より摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られると共に、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例7]
上記適用例において、
前記標準沸点280℃以上である有機溶剤の濃度が、6.0質量%以上20.0質量%以下であることができる。
適用例7によれば、標準沸点280℃以上である有機溶剤の濃度が、6.0質量%以上20.0質量%以下であることにより、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例8]
上記適用例において、
前記常温固体の多価アルコール又はベタインの濃度が、2.5質量%以上9.0質量%以下であることができる。
適用例8によれば、常温固体の多価アルコール又はベタインの濃度が、2.5質量%以上9.0質量%以下であることにより、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる捺染インクジェットインク組成物が得られる。
[適用例9]
上記適用例において、
前記架橋性基を含有するウレタン樹脂が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂又はポリエーテル系ウレタン樹脂であることができる。
適用例9によれば、さらに摩擦堅牢性の良好な捺染物を得ることができる。
[適用例10]
本発明に係る記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例9のいずれか1例に記載の捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録する。
適用例10によれば、上記適用例に係る捺染インクジェットインク組成物を用いて記録するため、吐出が安定し、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れ、更には摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる記録方法が得られる。
[適用例11]
上記適用例において、
加温を行わずに行うことができる。
適用例11によれば、上記適用例に係る捺染インクジェットインク組成物を用いて記録
するため、加温を行わなくても吐出が安定し、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れ、更には摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる記録方法が得られる。
[適用例12]
上記適用例において、
15℃以上35℃以下の温度域で記録を行うことができる。
適用例12によれば、15℃以上35℃以下の温度域で記録を行うことにより、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる記録方法が得られる。
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.捺染インクジェットインク組成物
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、樹脂分散体と保湿剤とを含有し、前記樹脂分散体が、架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有し、前記保湿剤が、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインの少なくともいずれかとを含有する。この捺染インクジェットインク組成物は、加温を行わずに、布帛へ付着させて記録する記録方法に用いられる。以下、捺染インクジェットインク組成物(以下、単に「捺染インク組成物」、「インク組成物」または「インク」ともいう。)について説明する。
1.1.樹脂分散体
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、樹脂分散体を含有する。樹脂分散体に含まれる樹脂は、樹脂被膜を形成することで、インク組成物により形成される画像の定着性を向上させる機能を備え、画像の洗濯堅牢性や摩擦堅牢性を向上させることができる。なお、樹脂分散体としては、エマルション状態および溶液状態としたものをいずれも用いることができるが、インクの粘度上昇を抑えるという点から、エマルション状態としたものを使用することが好ましい。
樹脂分散体に含まれる樹脂としては、特に制限されないが、少なくとも、樹脂分散体が架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有する。架橋性基(イソシアネート基)は、化学的に保護されており(キャッピングあるいはブロッキング)、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、結合(例えば、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等)を形成することになる。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基は、1分子に3つ以上設けられているため、架橋性基の反応により、架橋構造が形成される。なお、本明細書においてウレタン系樹脂とは、イソシアネート基が他の反応性の基(例えば、水酸基、アミノ基、ウレタン結合基、カルボキシル基等)と反応して形成される、ウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等を含む樹脂のことを指す(ただし、架橋反応に寄与する未反応のイソシアネート基、ブロックドイソシアネート基を有する。)。したがって、本明細書では、例えば、尿素樹脂は、ウレタン系樹脂に包含されることとする。ウレタン系樹脂としては、イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物とを反応して得られるウレタン結合を有する化合物であることが好ましい。
ブロックドイソシアネート(化学的に保護されたイソシアネート)は、イソシアネート
基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有し、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ブロック剤とを反応させることにより得ることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体等が挙げられる。ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体等)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体等)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)等)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体等)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体等)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン等)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体等)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体等が挙げられる。
なお、ポリイソシアネート化合物を2種類以上併用する場合には、例えば、ブロックドイソシアネートの製造時において、2種類以上のポリイソシアネート化合物を同時に反応させてもよく、また、各ポリイソシアネート化合物を個別に用いて得られたブロックドイソシアネートを混合してもよい。
ブロック剤は、イソシアネート基をブロックして不活性化する一方、脱ブロック後にはイソシアネート基を再生又は活性化し、また、イソシアネート基をブロックした状態および脱ブロックされた状態において、イソシアネート基を活性化させる触媒作用も有する。
ブロック剤としては、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ピリミジン系化合物、グアニジン系化合物、アルコール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキシム系化合物、カルバミン酸系化合物、尿素系化合物、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系化合物、トリアゾール系化合物、ピラゾール系化合物、メルカプタン系化合物、重亜硫酸塩等が挙げられる。
イミダゾール系化合物としては、例えば、イミダゾール(解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2−メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4−メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2−エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
イミダゾリン系化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾリン(解離温度110℃)、2−フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
ピリミジン系化合物としては、例えば、2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン等が挙げられる。
グアニジン系化合物としては、例えば、3,3−ジメチルグアニジン等の3,3−ジアルキルグアニジン、例えば、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(解離温度120℃)等の1,1,3,3−テトラアルキルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン等が挙げられる。
アルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−または2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン(解離温度140℃)、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、s−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−s−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2−ヒドロキシピリジン(解離温度80℃)、2−または8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオール(解離温度70℃)等が挙げられる。
活性メチレン系化合物としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジアルキル(例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジ−t−ブチル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸メチルn−ブチル、マロン酸エチルn−ブチル、マロン酸メチルs−ブチル、マロン酸エチルs−ブチル、マロン酸メチルt−ブチル、マロン酸エチルt−ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t−ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネート等)、アセト酢酸アルキル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニル等)、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチル等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン(解離温度130℃)、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、または、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンア
ミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン(解離温度140℃)、ジシクロヘキシルアミン(解離温度130℃)、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン(解離温度130℃)、t−ブチルメチルアミン、t−ブチルエチルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルプロピルアミン、t−ブチルブチルアミン、t−ブチルベンジルアミン(解離温度120℃)、t−ブチルフェニルアミン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(解離温度80℃)、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸等が挙げられる。
イミン系化合物としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジン等が挙げられる。
オキシム系化合物としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(解離温度130℃)、シクロヘキサノンオキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルt−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシム等が挙げられる。
カルバミン酸系化合物としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニル等が挙げられる。
尿素系化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。
酸アミド系(ラクタム系)化合物としては、例えば、アセトアニリド、N−メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ピロリドン、2,5−ピペラジンジオン、ラウロラクタム等が挙げられる。
酸イミド系化合物としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミド等が挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、例えば、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール(解離温度120℃)、3,5−ジイソプロピルピラゾール、3,5−ジフェニルピラゾール、3,5−ジ-t-ブチルピラゾール、3−メチルピラゾール、4−ベンジル−3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−フェニルピラゾール等が挙げられる。
メルカプタン系化合物としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン等が挙げられる。
重亜硫酸塩としては、例えば、重亜硫酸ソーダ等が挙げられる。
さらに、ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水
イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタート等のその他のブロック剤も挙げられる。
なお、上記例示した幾つかの化合物については、イソシアネート基を再生させる温度として、解離温度を併記した。
このようなブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。ブロック剤の解離温度は、適宜選択することができる。解離温度としては、例えば、60℃以上230℃以下、好ましくは80℃以上200℃以下、より好ましくは100℃以上180℃以下、さらに好ましくは110℃以上160℃以下である。係る温度範囲であれば、捺染インクジェットインク組成物のポットライフを十分長くすることができるとともに、加熱工程での温度を高くしすぎないようにすることができる。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂の主鎖は、エーテル結合を含むポリエーテル型、エステル結合を含むポリエステル型、カーボネート結合を含むポリカーボネート型、等いずれであってもよい。架橋性基を有するウレタン系樹脂が架橋した場合(架橋体)の破断点伸度や100%モジュラスは、架橋点の密度と、このような主鎖の種類を変更することによって調節することができる。これらのうち、ポリカーボネート系骨格、又は、ポリエーテル系骨格を有する架橋性基を有するウレタン系樹脂は、破断点伸度と100%モジュラスのバランスが良好であり、画像の摩擦堅牢性、印捺物の風合いを向上しやすい点でより好ましい。特にポリカーボネート系骨格を有するウレタン樹脂は摩擦堅牢性を良好とできる傾向があり好ましい。
また、架橋性基を有するウレタン系樹脂は、架橋が形成された後(架橋体)において、破断点伸度が、150%以上、好ましくは170%以上、より好ましくは200%以上、さらに好ましくは、300%以上であることが好ましい。このような破断点伸度となるように架橋点の密度や、主鎖の種類を選択することにより、印捺物の風合いを向上させることができる。
ここで、破断点伸度は、例えば、架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションを硬化させて、約60μmの厚さのフィルムを作成し、引張試験ゲージ長20mm及び引っ張り速度100mm/分の条件下で測定して得られる値を採用することができる。また、100%モジュラスは、前記引張試験においてフィルムが元の長さに対し100%伸びた時の引っ張り応力を測定して得られる値を採用することができる。測定するフィルムは、架橋性基を有するウレタン系樹脂エマルションを用いて形成してもよいし、同種の樹脂を用いて成形により形成してもよいが、エマルション樹脂を用いて形成することが好ましい。
架橋性基を有するウレタン系樹脂は、エマルションの形態で配合されてもよい。このような樹脂エマルションは、いわゆる自己反応型のウレタン系樹脂エマルションであり、親水性基を有するブロック剤でブロック化したイソシアネート基を有するウレタン系樹脂エマルションとして市販されているものを用いることができる。
架橋性基を有するウレタン系樹脂の市販品としては、タケラックWS−6021(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリエーテル由来骨格を有する、ポリエーテル系ポリウレタン)、WS−5100(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション、ポリカーボネート由来骨格を有する、ポリカーボネート系ポリウレタン)、エラストロンE−37、H−3(以上は主鎖がポリエステル由来骨格を有するポリエステル系ポリウレタン)、エラストロンH−38、BAP、C−52、F−29、W−11P(以上は主鎖がポリエーテル由来骨格を有するポリエーテル系ポリウレタン)(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、スーパーフレッ
クス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルション)、パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルション)、NeoRez R−9660、R−9637、R−940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルション)、アデカボンタイター HUX−380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルション)、等を例示することができる。
本実施形態において、架橋性基を含有するウレタン樹脂の固形分濃度は、捺染インクジェットインク組成物の総質量を100質量%としたときに、1.0質量%以上10.0質量%以下であってもよく、3.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、これらのウレタン系樹脂は、後述する本実施形態の記録方法において、前処理液を使用した場合に、前処理液に含まれてもよく、その場合には、前処理液に含まれるウレタン系樹脂と、捺染インクジェットインク組成物に含まれるウレタン系樹脂とは、同じでも異なっていてもよい。
また、後述する本実施形態の記録方法における加熱工程の温度は、これらの架橋性基を有するウレタン系樹脂のイソシアネート基の脱保護温度(解離温度)を考慮して、架橋性基の少なくとも一部が活性化するように設定される。
1.2.保湿剤
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、保湿剤を含有する。インクが保湿剤を含有することにより、常温(例えば、23℃前後の温度)におけるインクのインクジェット法による吐出を安定させることができ、インクを低粘度化させるための加温が不要となる。また、長期放置時によるインクジェットヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制することができる。
保湿剤としては水溶性有機溶剤であることが好ましく、例えば、ポリオール化合物、グリコールエーテル、ベタイン等が挙げられるが、本実施形態においては、少なくとも、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインの少なくともいずれかとを含有する。
ポリオール化合物としては、例えば、分子内の炭素数が2以上6以下であり、かつ、分子内にエーテル結合を1つ有してもよいポリオール化合物(好ましくはジオール化合物)等が挙げられる。具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコ−ルモノプロピルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール、3−(3−メチルフェノキシ)−1,2−プロパンジオール、3−ヘキシルオキシ−1,2−プロパンジオール、2−ヒドロキシメチル−2−フェノキシメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチ
ル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類が挙げられる。
グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。より好ましくは、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
ベタインとは、広義に、分子内に安定な正負両電荷をもつ化合物(双性イオン)であればよく、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物(分子内塩)である。好ましいベタインとしては、アミノ酸のN−アルキル置換体であり、より好ましくはアミノ酸のN−トリアルキル置換体である。ベタインとしては、例えば、トリメチルグリシン(「グリシンベタイン」ともいう。)、γ−ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリンおよびグルタミン酸ベタイン等が挙げられ、好ましくは、トリメチルグリシン等が例示できる。
また、水溶性有機溶剤として、ピロリドン誘導体を用いてもよい。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
標準沸点が280℃以上である有機溶剤としては、上述の水溶性有機溶剤のうち、例えば、グリセリンを挙げることができる。グリセリンを含む場合、インクの保湿性を保つことができるため、インクジェットヘッドの乾燥を防ぎ、後述の記録方法において、目詰まり性と吐出安定性に優れる記録方法を提供することができる。
本実施形態において、標準沸点280℃以上である有機溶剤の濃度は、捺染インクジェットインク組成物の総質量を100質量%としたときに、6.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上18.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以上16.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を防ぎ、吐出安定性に優れるものとすることができる。
常温固体の多価アルコールとしては、上述の水溶性有機溶剤のうち、例えば、トリメチロールプロパンを挙げることができる。その他の化合物としては、例えば、トレハロース、ラフィノース等の植物性の保湿剤が挙げられる。常温固体のベタインとしては、上述のベタインのうち、例えば、トリメチルグリシンを挙げることができる。なお、常温固体の多価アルコール又はベタインとしては標準沸点が280℃以上である有機溶剤は除くものとする。
ここで、本明細書において、「常温」とは、室温を意味し、23℃近辺を意味する。好ましくは、18〜28℃であり、より好ましくは、20〜26℃であり、さらに好ましくは、21〜25℃である。これらの化合物は、インク中に添加することにより、インクの増粘を緩和することができる。これにより、インクジェットヘッドのノズルの乾燥や目詰まりを防ぎ、吐出安定性に優れる記録方法を提供することができる。
常温固体の多価アルコール又はベタインの濃度は、捺染インクジェットインク組成物の総質量を100質量%としたときに、2.5質量%以上9.0質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以上7.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を防ぎ、吐出安定性に優れるものとすることができる。
本実施形態では、インクの摩擦堅牢性を向上させるために架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有しており、この架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有するインクは乾燥性が高い(再分散性が低い)ため、インクを吐出するノズルの目詰まりを生じやすい。そこで、本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、保湿剤として、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインとを組み合わせて含有することにより、インクの粘度を適度に調整することができ、インクの乾燥や増粘が抑制されるため、後述する記録方法において、インクの低粘度化を防止するための加温の必要がない。また、インクの乾燥や増粘に起因する目詰まりが発生したり、吐出安定性が低下することが防止される。なお、インクに含まれる樹脂の架橋性成分は、熱で反応する場合があり、記録時の加温は好ましくない。このため、加温しなくても記録可能である本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、目詰まり性と吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物を得るための記録方法に好適である。
本実施形態において、保湿剤として含まれる、常温固体の多価アルコール又はベタインと、標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が、1:2〜1:5(質量比)であることが好ましい。常温固体の多価アルコール又はベタインと、標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が1:2〜1:5の範囲にあることにより、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られると共に、インクの乾燥や増粘に起因するノズルの目詰まりを防止し、広い温度域において、吐出安定性に優れる記録方法を提供することができる。なお、より好ましくは、常温固体の多価アルコール又はベタインと、標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が、1:3〜1:4である.
常温固体の多価アルコール又はベタインに対する標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が2以上であることにより、標準沸点280℃以上である有機溶剤による保湿効果が好適となり、ノズルの乾燥による目詰まりのリスクを抑制することができ、また、低温時の吐出安定性を担保することができる。
常温固体の多価アルコール又はベタインに対する標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が5以下であることにより、標準沸点280℃以上である有機溶剤が記録媒体中に過剰に残留することを抑制でき、堅牢性を担保することができる。また、増粘が抑制され、高温時の吐出安定性を担保することができ、また目詰まりのリスクを抑制することができる。
また、本実施形態において、保湿剤として含まれる、常温固体の多価アルコール又はベタインと、架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が、1:1〜1:2(質量比)であることが好ましい。常温固体の多価アルコール又はベタインと、架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が1:1〜1:2の範囲にあることにより、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られると共に、より広範囲の温度域において、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる。なお、常温固体の多価アルコール又はベタインと、架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が1:1〜1:1.5の場合には、より低温域での吐出安定性に優れるものとなる。
常温固体の多価アルコール又はベタインに対する架橋性基を含有するウレタン樹脂の含
有量比が1以上であることにより、低温時の吐出安定性を担保することができる。
常温固体の多価アルコール又はベタインに対する架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が2以下であることにより、増粘が抑制され、高温時の吐出安定性を担保することができ、また目詰まりのリスクを抑制することができる。
このように、本実施形態において、保湿剤として含まれる、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインが、特定比率で含有することで、広い温度域(例えば、15℃以上35℃以下)において、吐出を安定させることができる。
なお、保湿剤全体の配合量は、捺染インクジェットインク組成物の粘度調整、保湿効果による目詰まり防止や吐出安定性の点から、捺染インクジェットインク組成物の全量に対して合計で、10.0質量%以上30質量%以下であることが好ましく、12.0質量%以上24質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以上20.0質量%以下であることがさらに好ましい。
1.3.その他の成分
1.3.1.顔料
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、顔料を含有してもよい。係る顔料が布帛に付着されることにより、布帛が捺染され、捺染物(印捺物)が形成される。
顔料としては、特に制限されず、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用可能である。顔料としては、例えばアゾ系、フタロシアニン系、縮合多環系、ニトロ系、ニトロソ系、中空樹脂粒子、及び高分子粒子等の有機顔料(ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウォッチングレッド、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、アニリンブラック等);コバルト、鉄、クロム、銅、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、及びニッケル等の金属類、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫化亜鉛、及び酸化ジルコニウム等の金属酸化物及び硫化物、並びにファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、さらには黄土、群青、及び紺青等の無機顔料を用いることができる。
ブラック顔料として使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学株式会社製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven
1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社製)、Color
Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ社製)等が挙げられる。
ホワイト顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化
亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン),6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム),19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)等が挙げられる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメントヴァイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60等が挙げられる。
ブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタ及びシアン以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、及びC.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
これら例示した顔料は、複数種を混合して用いてもよい。捺染インクジェットインク組成物中の顔料(固形分)の合計の含有量は、使用する顔料種により異なるが、良好な発色性を得る観点から、捺染インクジェットインク組成物の総質量を100質量%としたときに、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%である。
なお、捺染インクジェットインク組成物に調製する際には、あらかじめ顔料を分散させた顔料分散液を調製して、その顔料分散液を捺染インクジェットインク組成物に添加してもよい。このような顔料分散液を得る方法としては、分散剤を使用せずに自己分散顔料を分散媒中に分散させる方法、ポリマー分散剤(樹脂分散剤)を使用して顔料を分散媒に分散させる方法、表面処理した顔料を分散媒に分散させる方法などがある。
(樹脂分散剤)
これらのうち、樹脂分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン
−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等及びこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を有するモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。また、共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
樹脂分散剤としては市販品を用いることもできる。具体的には、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
1.3.2.水
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、捺染インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
水の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、40質量%以上、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。なお捺染インクジェットインク組成物中の水というときには、例えば、原料として用いる樹脂粒子分散液、添加する水を含むものとする。水の含有量が40質量%以上であることにより、捺染インクジェットインク組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、捺染インクジェットインク組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。
1.3.3.無機アルカリ化合物
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、無機アルカリ化合物(無機塩基化合物)を含むことが好ましい。無機アルカリ化合物は、捺染インクジェットインク組成物のpHを高める性質を有している。また、無機アルカリ化合物は、架橋性基を有するウレタン系樹脂の分散安定性を高める機能、及び/又は、架橋性基を有するウレタン系樹脂の再分散性を向上させる機能を少なくとも有している。
無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩又はアルカリ土類金属のリン酸塩等が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属
の炭酸塩としては、炭酸カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物には、上記例示した無機アルカリ化合物の複数種を用いてもよい。無機アルカリ化合物の合計の含有量は、捺染インクジェットインク組成物の全量に対して、0.01質量%以上0.8質量%以下、好ましくは0.02質量%以上0.6質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上0.4質量%以下、さらに好ましくは0.04質量%以上0.3質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上0.2質量%以下、ことさら好ましくは0.05質量%以上0.1質量%以下である。
無機アルカリ化合物の配合量が係る範囲であれば、捺染インクジェットインク組成物のpHを十分に高めることができ、架橋性基を有するウレタン系樹脂の分散安定性を高める機能、及び/又は、架橋性基を有するウレタン系樹脂の再分散性を向上させる機能を発揮させることができる。なお、捺染インクジェットインク組成物のpHについては、物性の項で述べる。
1.3.4.界面活性剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。界面活性剤は、捺染インクジェットインク組成物の界面張力を低下させ、布帛への浸透性を高めることができる。ただし、カチオン系界面活性剤については、捺染インクジェットインク組成物の成分を凝集させる可能性があるため、微量とするか、他の種の界面活性剤を用いることがより好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤のうち少なくとも一種が好ましい。インク組成物がこれらの界面活性剤を含むことにより、布帛に対する濡れ性や顔料の分散安定性が一層良好となる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、比較的布帛への浸透性を小さくできるため、画像の発色性をさらに向上させる目的においてより好ましい。
上記のアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、以下に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上を例示できる。また、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、AirProductsandChemicals.Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、S
K−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、メガファックF−479(DIC株式会社製)、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン系界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、オルフィンPD−501、オルフィンPD−502、オルフィンPD−570(いずれも、日信化学工業株式会社製)、BYK−347、BYK−348、BYK−302(いずれも、ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
さらに、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、しょ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を用いてもよい。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸系としてアルキルアミノ脂肪酸塩、ベタイン系としてアルキルカルボキシルベタイン、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。両性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
上記例示した界面活性剤は、複数種を混合して用いてもよい。
また、界面活性剤を選択する際には、HLB値を考慮することがより好ましい。すなわち、捺染インクジェットインク組成物に配合する界面活性剤のHLB値は、8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上である。このような範囲のHLB値を有する界面活性剤は、親水性がより高く、捺染インクジェットインク組成物の布帛への浸透性をより抑制しやすい。そのため、発色性をさらに向上できる場合がある。
なお、本明細書におけるHLB値とは、有機概念図における無極性値(I)と有極性値(O)との比(以下、単に「I/O値」ともいう)から下記式(1)により算出された値である。
HLB値=(無極性値(I)/有極性値(O))×10・・・(1)
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化
合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
捺染インクジェットインク組成物に界面活性剤を配合する場合には、捺染インクジェットインク組成物全体に対して、界面活性剤の合計で0.01質量%以上3質量%以下、好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上0.5質量%以下配合することが好ましい。
1.3.5.キレート剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、キレート剤を含んでもよい。キレート剤は、イオンを捕獲する性質を有する。そのようなキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)や、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。
1.3.6.防腐剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、防腐剤を含有してもよい。防腐剤を含有することにより、カビや細菌の増殖を抑制することができ、インク組成物の保存性がより良好となる。これにより、例えば、捺染インクジェットインク組成物を、長期的にプリンターを使用せず保守する際のメンテナンス液として使用しやすくなる。防腐剤の好ましい例としては、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、又はプロキセルTN等を挙げることができる。
1.3.7.pH調整剤
本実施形態の捺染インクジェットインク組成物は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤を含有することにより、例えば、インク流路を形成する部材からの不純物の溶出を抑制したり、促進したりすることができ、捺染インクジェットインク組成物の洗浄性を調節することができる。pH調整剤としては、例えば、モルホリン類、ピペラジン類、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、を例示できる。
1.3.8.その他の成分
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、上記保湿剤で用いた以外の樹脂エマルション(架橋性基を有しないウレタン系樹脂等)を含有してもよく、さらに、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤等の、種々の添加剤を適宜含有することができる。
1.4.インク組成物の調製方法
本実施形態で用いられる捺染インクジェットインク組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.5.捺染インクジェットインク組成物の物性
本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物は、インクジェット法によって布帛に付与される。そのため、捺染インクジェットインク組成物は、記録品質とインクジェット記録用のインクとしての信頼性とのバランスの観点から、25℃における表面張力が10mN/m以上40mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、捺染インクジェットインク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上5mPa・s以下であることがより好ましく、2mPa・s以上3.6mPa・s以下であることがより好ましい。粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、Pysica社製)を用いて、40℃または20℃の環境下での粘度を測定することができる。
2.記録方法
本実施形態に係る記録方法は、加温を行わずに、上記本実施形態に係る捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録することを特徴とする。以下、本実施形態に係る記録方法について、布帛、記録方法の順に説明する。
2.1.布帛
本実施形態に係る記録方法は、布帛を用いて行われる。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維等が挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。本実施形態で使用する布帛は、これらのうち綿、麻等のセルロースを含む繊維で形成されたものがより好ましい。このような布帛を用いることで、顔料のよりすぐれた定着性を得ることができる。
また、本実施形態で使用する布帛の目付は、1.0oz(オンス)以上10.0oz以下、好ましくは2.0oz以上9.0oz以下、より好ましくは3.0oz以上8.0oz以下、さらに好ましくは4.0oz以上7.0oz以下の範囲である。本実施形態の記録方法では、布帛の目付がこのような範囲であれば、良好な記録(捺染)を行うことができる。さらに、本実施形態の記録方法は、目付けの異なる複数種の布帛に適用することができ、良好な記録を行うことができる。
2.2.記録方法
次に、本実施形態に係る記録方法について工程毎に説明する。
2.2.1.インク付着工程
インク付着工程は、インクジェットヘッドのノズルより捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録する工程であり、この工程でインクの液滴を布帛に付着させることにより、布帛に画像を記録するものである。これにより、布帛にインク組成物からなる画像が記録された記録物(印捺物、捺染物)が得られる。
本実施形態では、上記捺染インクジェットインク組成物を用いて記録するため、インク付着時にインクの低粘度化と吐出安定性を確保するための加温の必要がなく、加温を行わなくても吐出が安定し、目詰まりが起こりにくくなる。また、インクに含まれる樹脂の架橋性成分が熱で反応する場合があるため、記録時の過剰な加温は好ましくない。このため、本実施形態に係る記録方法では、加温することなく、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる記録方法が提供できる。
なお、ここでいう加温とは、インクジェットヘッドからインク組成物を吐出し記録媒体にインクを付着させる際に、インク、インクジェットヘッド又は、布帛の少なくともいずれかをヒーター等の加熱機構により加温することを指し、インク、インクジェットヘッド又は、布帛表面温度が非加温状態での記録よりも高温であることを意味する。
加温方法としては、例えば、布帛支持部(プラテン)に取り付けたヒーターにより加温
することができる。
温度の測定は例えば、インク付着時(印刷時)の布帛表面温度(布帛搬送方向におけるヘッドと対向する位置にある布帛の表面温度)を非接触温度計(例えば、商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)で測定することにより行うことができる。なお、布帛支持部(プラテン)をヒーター加熱する場合、周辺雰囲気の温度も上昇し、インクジェットヘッドおよびインクも加温状態となる場合がある。
本実施形態に係る記録方法は、15℃以上40℃以下の温度域で記録を行うことができ、15℃以上35℃以下の温度域で記録を行うことが好ましく、20℃以上30℃以下の温度域で記録を行うことがより好ましい。本実施形態に係る記録方法では、上記捺染インクジェットインク組成物を用いて記録するため、広範囲の温度域において、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れるが、15℃以上35℃以下の温度域では、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる記録方法となる。また、得られた記録物は摩擦堅牢性に優れたものとなる。
なお、前記の温度範囲は、インク付着時(印刷時)の布帛表面温度の温度範囲であり、布帛表面の温度とは、布帛搬送方向におけるヘッドと対向する位置にある布帛の表面温度を非接触温度計(例えば、商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)で測定したものである。
また、後述する前処理工程を有する場合には、前処理工程によって前処理液を付与した領域の少なくとも一部に、インクジェット捺染用のインク組成物を布帛へ付着させることができる。これにより、インク組成物に含まれる色材等の成分と前処理液に含まれる凝集剤とが反応することで、色材等の成分が布帛上で凝集し、発色性に優れた画像が得られる。さらに、色材と前処理液の凝集剤と反応することにより、記録される画像の摩擦堅牢性も良好になる。
インク組成物を吐出させるインクジェット記録方式としては、いずれの方式でもよく、荷電偏向方式、コンティニュアス方式、オンデンマンド方式(ピエゾ式、バブルジェット(登録商標)式)などが挙げられる。これらのインクジェット記録方式の中でも、ピエゾ式のインクジェット記録装置を用いる方式が特に好ましい。
なお、インク付着工程では、インク組成物の付着量が、1.5mg/cm以上6mg/cm以下となるように布帛に付与することが好ましく、2mg/cm以上5mg/cm以下となるように布帛に付与することがより好ましい。インク組成物の付着量が1.5mg/cmであることで、記録される画像の発色性が良好となり、かつ、記録される画像の乾燥性が良好となり、画像の滲みを抑制できる。
2.2.2.布帛を加熱する工程
本実施形態に係る記録方法は、布帛に付与したインク組成物(画像)を加熱する加熱工程を含んでもよい。
布帛に付与したインク組成物を加熱する加熱方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、熱風乾燥法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
布帛に付与したインク組成物を加熱する際の加熱温度としては、これに限定されるものではないが、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下
であることがより好ましい。ただし、加熱温度(到達温度)は、少なくとも上述した架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基が活性化される温度以上の温度である。係る架橋性基は、化学的に保護されており(キャッピングあるいはブロッキング)、熱が加えられることにより脱保護されて活性化し、結合(例えばウレタン結合、尿素結合、アロファネート結合等)を形成することになる。また、架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基は、1分子に3つ以上設けられているため、架橋性基の反応により、架橋構造が形成される。
本工程により、捺染インク組成物に含有される架橋性基を有するウレタン系樹脂の架橋性基が活性化され、ウレタン系樹脂の架橋構造が生成される。これにより、ウレタン系樹脂の堅牢な被膜が形成され、例えば色材が布帛に定着される。また、布帛に、前処理液が付着している場合には、前処理液に含まれる凝集剤にカチオン性有機化合物を用いた場合には、これがウレタン系樹脂の架橋体の網目に侵入する等の現象が生じて、より強固に布帛に対して画像を定着させることができる場合がある。
加熱温度が上記範囲内にあることで、布帛のダメージを低減できたり、捺染インクジェットインク組成物に含まれる樹脂(その他の樹脂を含んでもよい。)の皮膜化を促進できる。なお、本加熱工程における加熱温度とは、布帛に形成された画像表面の温度のことをいい、例えば非接触温度計(商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)を用いて測定することができる。また、加熱時間としては、これに限定されるものではないが、例えば30秒以上20分以下とすることができる。
2.2.3.前処理液を布帛に付着させる工程
本実施形態に係る記録方法は、インク付着工程の前に、前処理液を布帛に付着させる工程を有してもよい。前処理液を布帛に付着させる工程は、布帛の少なくとも一部の領域に、前処理液を付与する工程である。
ここで、前処理液としては、捺染インクジェットインク組成物の成分を凝集させる凝集剤を含むものであれば特に限定されないが、例えば、多価金属塩、有機酸、カチオン性化合物(カチオン性樹脂、カチオン性界面活性剤等)が挙げられる。これらの凝集剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの凝集剤の中でも、捺染インクジェットインク組成物に含まれる樹脂微粒子との反応性に優れるという点から、多価金属塩及び有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種の凝集剤を用いることが好ましい。また、前処理液においても、上記インク組成物に含まれている架橋性基を有するウレタン系樹脂を含んでもよく、その場合には、前処理液に含まれるウレタン系樹脂と、捺染インクジェットインク組成物に含まれるウレタン系樹脂とは、同じでも異なっていてもよい。
前処理液を布帛に付与する方法としては、例えば、前処理液中に布帛を浸漬させる方法(浸漬塗布)、前処理液を、ヘラ、ローラー、刷毛、ロールコーター等で塗布する方法(ローラー塗布)、前処理液をスプレー装置等によって噴射する方法(スプレー塗布)、前処理液をインクジェット方式により噴射する方法(インクジェット塗布)等が挙げられ、いずれの方法も使用してもよい。これらの中でも、装置構成が簡便であり、前処理液の付与が迅速に行えるという点から、浸漬塗布、ローラー塗布、スプレー塗布等の接触式又は非接触式の手法を使用することが好ましく、これらの手法を組み合わせてもよい。また、インクジェット塗布によれば、所定の位置に前処理液を容易かつ正確に塗布することができ、前処理液の使用量を削減できるのでより好ましい。
本実施形態に係る捺染方法は、前処理液を付着させる工程の後、布帛に付与された前処理液を乾燥する前処理液の乾燥工程を含んでもよい。前処理液の乾燥は、自然乾燥で行っ
てもよいが、乾燥速度の向上という観点から、加熱を伴う乾燥であることが好ましい。前処理液の乾燥工程において加熱を伴う場合に、その加熱方法は特に限定されるものではないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、及びサーモフィックス法が挙げられる。また、加熱の熱源としては、以下に限定されないが、例えば赤外線(ランプ)が挙げられる。
2.3.作用効果
本実施形態の記録方法によれば、インクの乾燥性や粘度が適度に調整された上記捺染インクジェットインク組成物を用いて記録するため、インクの低粘度化させるための加温の必要がなく、加温を行わなくても吐出が安定し、目詰まりが起こりにくくなる。このため、本実施形態に係る記録方法では、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れ、摩擦堅牢性に優れた捺染物が得られる記録方法が得られる。さらに、上記捺染インクジェットインク組成物の保湿剤が特定の含有量比で含有されている場合には、広範囲の温度域において、目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れ、特に、15℃以上35℃以下の温度域において、より目詰まりが起こりにくく、吐出安定性に優れる記録方法となる。
3.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
3.1.捺染インクジェットインク組成物の調製
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、各捺染インクジェットインク組成物を得た。表1中の数値は、質量%を示し、純水(イオン交換水)は各捺染インクジェットインク組成物の質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。
Figure 2018053172
なお、表1において、顔料分散体として、C.I.ピグメントブルー15:3、65部
をスチレン−アクリル酸系分散樹脂であるジョンクリル611(商品名:BASFジャパン株式会社製)35部、水酸化カリウム1.70部、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水250部を混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行い、ガラス繊維ろ紙GA−100(商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して粗大粒子を除き、顔料濃度が15質量%となるように調整したものを用い、捺染インクジェットインク組成物における顔料の濃度が4.5質量%となるように量を調整した。
また、表1において、タケラックはウレタン樹脂の樹脂分散体であり、その詳細は以下の通りである。なお、表1中の数値は、ウレタン樹脂の固形分含有量である。
・タケラックWS−6021(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製、架橋性基としてブロックドイソシアネートを含有する、ポリエーテル系ウレタン樹脂)
・タケラックWS−5100(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製、架橋性基としてブロックドイソシアネートを含有する、ポリカーボネート系ウレタン樹脂)
・タケラックWS−6110(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製、架橋性基としてブロックドイソシアネートを含有しないウレタン樹脂)
なお、表1中、GL/Tとは、常温固体の多価アルコール又はベタイン(トリメチロールプロパン、トレハロースまたはトリメチルグリシン)に対するグリセリンの含有量比(質量比)を表し、ウレタン樹脂/Tとは、常温固体の多価アルコール又はベタイン(トリメチロールプロパン、トレハロースまたはトリメチルグリシン)に対するウレタン樹脂(上記タケラックWS−6021、5100、6110含有量比(質量比)を表す。
また、表1中、EDTAは、エチレンジアミン四酢酸塩であり、無機アルカリは、水酸化カリウムであり、界面活性剤は、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)である。
3.2.評価試験
3.2.1.印捺物の作成
プリンターとして、SC−F2000(セイコーエプソン株式会社製)の改造機を用意した。布帛支持部(プラテン)にヒーターを取りつけ、インク付着時(印刷時)の布帛表面温度を表1の吐出信頼性の括弧内の値に制御可能とした。つまり、布帛表面の温度とは、布帛搬送方向におけるヘッドと対向する位置にある布帛の表面温度を非接触温度計(商品名「IT2−80」、株式会社キーエンス製)で測定したものであり、表面温度が、狙いとする温度(表1の吐出信頼性温度)になるようにプラテンヒーターを調整した。なお、25℃(常温)以下では、ヒーターによる加熱は行っていない。20℃、15℃の場合は、適宜室温を低下させることにより温度調節を行った。
上記プリンターを用いて、表1に記載の条件で、布帛(haines社製ヘビーウェイト、綿100%、白色生地)に対して、解像度1440dpi×1440dpiとし、塗布量200mg/inchで印刷を行った。該印刷後に、コンベアオーブン(熱風乾燥法)にて、165℃・5分間の熱処理を行い、印捺物の定着を行った。
3.2.2.摩擦堅牢性試験
各例の印捺物に対してISO−105 X12に規定の方法に従い、I型(クロックメーター)試験機を用いて摩擦に対する染色堅牢度試験を実施した。乾摩擦はISO−105 X12に規定される乾燥試験に則って試験し、汚染グレースケールを用いて評価した。評価基準は以下の通りとし、結果を表1に記載した。
◎:摩擦堅牢性が4級以上である。
○:摩擦堅牢性が3級以上4級未満である。
△:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である。
×:摩擦堅牢性が2級未満である。
3.2.3.目詰まり性試験
表1に記載の各捺染インクジェットインク組成物について、布帛表面温度25℃(常温)の条件下で、上記の印刷を1時間連続して行い、終了後、1ノズル列(360個ノズル)の吐出異常(不吐出)を検査した。なお、記録開始前は全ノズル正常な状態で開始し、下記の基準に基づいて評価した。
◎:吐出異常ノズル数が0ノズル。
○:吐出異常ノズル数が1〜2ノズル。
△:吐出異常ノズル数が3〜5ノズル。
×:吐出異常ノズル数が5ノズル以上。
3.2.4.吐出信頼性(吐出安定性)試験
表1に記載の温度条件において得られた印捺物の印捺面を目視で観察し、下記の基準に基づいて評価した。
◎:ドット抜けや着弾位置のズレが全く観察されない。吐出信頼性に優れる。
○:着弾位置のズレが認められるが、自然に回復する。吐出信頼性良好。
△:着弾位置のズレが認められる。実用上問題なし。
×:ドット抜けが発生。実用不可。
3.2.5.洗濯堅牢性試験
各例の印捺物に対して、JIS L 0844(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)のA−2法に準拠して、洗濯堅ろう性試験を実施した。具体的には、洗濯処理を施し、すすぎ、脱水、乾燥した後に、試験片における捺染部の変退色を判定した。変退色は、JIS L0804:2004(ISO 105−A02:1993)の変退色グレースケールに従って、退色の程度を下記の基準に基づいて評価した。
◎:摩擦堅牢性が4級以上である。
○:摩擦堅牢性が3級以上4級未満である。
△:摩擦堅牢性が2級以上3級未満である。
×:摩擦堅牢性が2級未満である。
3.3.評価結果
樹脂分散体が、架橋性基を含有するウレタン樹脂を含み、保湿剤としてグリセリンと常温固体の多価アルコール又はベタインとを含有する実施例では、いずれも摩擦堅牢性と洗濯堅牢性と常温での吐出信頼性に優れた結果となった。特に、GL/Tが2〜5の範囲にあり、ウレタン樹脂/Tが1〜2の範囲にある例では、目詰まりも起こりにくく、また、15〜35℃の広範囲における吐出信頼性に優れた結果となった。
これに対して、架橋性を有しない樹脂を用いた比較例1では、摩擦堅牢性や洗濯堅牢性が不十分であった。また、保湿剤としてグリセリンを含まない比較例2では、目詰まりが発生したり、常温での吐出信頼性に劣る結果となった。特に、トリメチロールプロパンは常温で固体のため、15℃での吐出信頼性に劣る結果となった。さらに、保湿剤として常温固体の多価アルコール又はベタインを含まない比較例3では、ノズルが乾燥しやすくなったり、インクが増粘するため、摩擦堅牢性も洗濯堅牢性も常温での吐出信頼性も不十分であった。特にグリセリンのみを高濃度で含有することにより、高温での吐出信頼性や摩擦堅牢性、洗濯堅牢性に劣る結果となった。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実
施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (12)

  1. 樹脂分散体と保湿剤とを含有し、
    前記樹脂分散体が、架橋性基を含有するウレタン樹脂を含有し、
    前記保湿剤が、標準沸点が280℃以上である有機溶剤と、常温固体の多価アルコール又はベタインの少なくともいずれかとを含有する、捺染インクジェットインク組成物。
  2. 前記常温固体の多価アルコール又はベタインと、前記標準沸点280℃以上である有機溶剤の含有量比が、1:2〜1:5である、請求項1に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  3. 前記常温固体の多価アルコール又はベタインと、前記架橋性基を含有するウレタン樹脂の含有量比が、1:1〜1:2である、請求項1又は請求項2に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  4. さらに顔料を含有する、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  5. 前記常温固体の多価アルコールが、トリメチロールプロパンを含有する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  6. 前記架橋性基を含有するウレタン樹脂の固形分濃度が、インク組成物の総質量に対して、3.0質量%以上6.0質量%以下である、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  7. 前記標準沸点280℃以上である有機溶剤の濃度が、インク組成物の総質量に対して、6.0質量%以上20.0質量%以下である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  8. 前記常温固体の多価アルコール又はベタインの濃度が、インク組成物の総質量に対して、2.5質量%以上9.0質量%以下である、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  9. 前記架橋性基を含有するウレタン樹脂が、ポリカーボネート系ウレタン樹脂又はポリエーテル系ウレタン樹脂である、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の捺染インクジェットインク組成物を布帛へ付着させて記録する、記録方法。
  11. 加温を行わずに記録を行う、請求項10に記載の記録方法。
  12. 15℃以上35℃以下の温度域で記録を行う、請求項10又は請求項11に記載の記録方法。
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