JP2018051826A - インクジェット印刷装置及びそのフラッシング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フラッシングの吐出量を抑制することができるとともに、印刷品質を良好に維持させることができるインクジェット印刷装置を提供する。
【解決手段】インクジェット印刷装置1は、連続紙WPを加湿する加湿装置7を備える。加湿装置7から供給された気体は、連続紙WPの裏面SF2に浸透して蒸発し、インクジェットヘッド25のノズル面における湿度を高くする。インクジェットヘッド25におけるインク滴の乾燥を抑制できるので、離散的フラッシングを少ない吐出量で行うことができる。加湿は連続紙WPの反対面である表面SF1から行うので、裏面SF2におけるインクの滲みを最小限にとどめることができる。したがって、印刷品質を良好に維持させることができる。
【選択図】図1
【解決手段】インクジェット印刷装置1は、連続紙WPを加湿する加湿装置7を備える。加湿装置7から供給された気体は、連続紙WPの裏面SF2に浸透して蒸発し、インクジェットヘッド25のノズル面における湿度を高くする。インクジェットヘッド25におけるインク滴の乾燥を抑制できるので、離散的フラッシングを少ない吐出量で行うことができる。加湿は連続紙WPの反対面である表面SF1から行うので、裏面SF2におけるインクの滲みを最小限にとどめることができる。したがって、印刷品質を良好に維持させることができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、インク滴を吐出して印刷用紙に印刷を行うインクジェット印刷装置及びそのフラッシング方法に係り、特に、インクの乾燥に起因する吐出不良を解消したり防止したりするためにインク滴を吐出させるフラッシングの技術に関する。
インクジェット印刷装置は、インク滴をインクジェットヘッドから吐出して印刷用紙に対して画像を形成させることによって印刷を行う。インクジェットヘッドは、インク滴を細かい複数個のノズルから吐出させるが、インク滴の乾燥に起因してノズルが詰まることがある。このようなノズルの詰まりが生じると、インク滴が打たれるべき印刷用紙の箇所にインク滴が打たれない、いわゆるノズル欠けが生じて印刷物の印刷品質が低下する。そこで、印刷のためにインク滴を吐出させるのではなく、ノズル欠けを解消あるいは防止するためにインク滴の吐出を行わせる。これは、一般的に「フラッシング」と呼ばれている。
フラッシングとしては、印刷領域と印刷領域との間の印刷領域外において、搬送方向に直交する方向に配列された複数個のノズルから一斉にインク滴を吐出させたり、印刷領域内において視認しがたい大きさのインク滴を複数個のノズルから離散的に吐出させたりする手法がある。前者は、「ラインフラッシング」と呼ばれ、後者は、「離散的フラッシング」(スターフラッシングとも呼ばれる)と呼ばれている。
ラインフラッシングでは、印刷用紙のうちフラッシングに用いた部分を切断する必要があるので、連続紙の損失(損紙)の発生や、印刷後の裁断装置の仕様の制限を受けるデメリットがある。その一方、ラインフラッシングでは、吐出量を多く設定できるので、ノズル欠け解消やノズル欠け防止には有利となるメリットがある。また、離散的フラッシングでは、印刷領域内でフラッシングを行うので、損紙が生じないメリットがある。その一方、離散的フラッシングでは、印刷品質を損なわないために、小さなインク滴で、かつ、その吐出量を少なく設定することが必要となる。そのため、設定された吐出量が少なすぎる場合や、装置が乾燥した低湿度環境に設置されている場合には、フラッシング効果が十分に得られず、ノズル欠け解消やノズル欠け防止を十分に行えない恐れがある。
上述したノズル欠けの問題は、裏面印刷装置を表面印刷装置の下流側に備え、両面印刷に対応したインクジェット印刷装置のうち、裏面印刷機において顕著に発生する。表面印刷装置では、印刷後に印刷用紙をヒートローラに巻き付けて高温で乾燥させているので、その下流側に配置された裏面印刷装置では乾燥した印刷用紙に対して印刷するからである。乾燥した印刷用紙に印刷する際には、印刷用紙の印刷面とインクジェットヘッドとの間が低湿度環境となっているので、ノズル欠けが生じやすくなっている。
そこで、ノズル欠けを抑制するために、インクジェットヘッドと印刷用紙の印刷面との間に、インク滴の乾燥を抑制する気体を供給する気体供給部を備えた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。インク滴の乾燥を抑制するための気体は、インク滴に含まれる溶剤や水蒸気を含んでいる。これによりインクジェットヘッドにおけるインク滴の乾燥を抑制し、ノズル欠けを抑制している。
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、印刷用紙の印刷面側に気体を供給して加湿しているので、インク滴による印刷が滲んで印刷品質が低下するという問題がある。
すなわち、従来の装置は、印刷用紙の印刷面側に気体を供給して加湿しているので、インク滴による印刷が滲んで印刷品質が低下するという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、印刷面の反対側を加湿することにより、フラッシングの吐出量を抑制することができるとともに、印刷品質を良好に維持させることができるインクジェット印刷装置及びそのフラッシング方法を提供することを目的とする。
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、印刷用紙に対してインク滴を吐出する複数個のノズルをノズル面に備えたインクジェットヘッドと、前記ノズル面に離間して対向した位置にて印刷用紙を搬送方向に搬送する搬送手段と、搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側にて、前記印刷用紙のうち前記インクジェットヘッドによる印刷面とは反対面に、加湿された気体を供給する加湿気体供給手段と、前記搬送手段で印刷用紙を搬送させ、かつ、前記加湿気体供給手段から加湿された気体を供給させながら、前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させて印刷を行わせ、前記加湿気体供給手段を非作動とした場合におけるインク滴の吐出量よりもインク滴の吐出量を少なくしてフラッシングを行わせる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、印刷用紙に対してインク滴を吐出する複数個のノズルをノズル面に備えたインクジェットヘッドと、前記ノズル面に離間して対向した位置にて印刷用紙を搬送方向に搬送する搬送手段と、搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側にて、前記印刷用紙のうち前記インクジェットヘッドによる印刷面とは反対面に、加湿された気体を供給する加湿気体供給手段と、前記搬送手段で印刷用紙を搬送させ、かつ、前記加湿気体供給手段から加湿された気体を供給させながら、前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させて印刷を行わせ、前記加湿気体供給手段を非作動とした場合におけるインク滴の吐出量よりもインク滴の吐出量を少なくしてフラッシングを行わせる制御手段と、を備えていることを特徴とするものである。
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、制御手段で操作されて加湿気体供給手段から供給された気体は、印刷用紙の印刷面の反対側から印刷面に浸透して蒸発し、印刷用紙の印刷面とインクジェットヘッドのノズル面との間の湿度を高くする。したがって、インクジェットヘッドにおけるインク滴の乾燥を抑制できるので、ノズル欠け解消またはノズル欠け防止のために行うフラッシングを、加湿気体供給手段を動作させていない状態を基準とした場合のインク滴の吐出量よりも少ない吐出量で行うことができる。また、加湿は印刷用紙の印刷面の反対面から行うので、印刷面におけるインクの滲みを最小限にとどめることができる。したがって、印刷品質を良好に維持させることができる。
また、本発明において、前記加湿気体供給手段は、気体を加湿するための液体に界面活性剤を添加していることが好ましい(請求項2)。
界面活性剤により液体の接触角が小さくなるので、印刷用紙における印刷面の反対面にムラなく液体を付着させることができる。したがって、印刷用紙の印刷面とインクジェットヘッドのノズル面との間の空間における湿度分布を均等にできるので、複数個のノズルにおけるフラッシングの吐出量を均等にしても、十分にノズル欠け解消またはノズル欠け防止を図ることができる。
また、本発明において、前記制御手段は、前記フラッシングを離散的フラッシングとすることが好ましい(請求項3)。
離散的フラッシングは、印刷領域において実施されるので、印刷品質を低下させないために吐出量が少ない方が好ましい。その一方、低湿度の乾燥した環境などでは、吐出量が少ないとノズル欠け解消やノズル欠け防止には不十分となる場合があるが、加湿気体供給手段によりインクジェットヘッドと印刷用紙の印刷面の間の湿度が高くできるので、離散的フラッシングの吐出量を少なくしつつも、ノズル欠け解消やノズル欠け防止に十分貢献できる。
また、本発明において、前記気体の加湿量は、10〜11[g/m2]であることが好ましい(請求項4)。
気体の加湿量を10〜11[g/m2]とすることにより、印刷用紙の印刷面側における湿度環境を好適にすることができ、ノズル欠けの解消やノズル欠けの防止を少ない吐出量のフラッシングで行うことができる。
また、本発明において、前記印刷用紙は、所定の印刷条件で前記印刷面の反対面にインク滴を吐出されて印刷処理が行われ、かつ、前記反対面を乾燥させるための加熱処理が施されたものであることが好ましい(請求項5)。
印刷処理されて加熱処理された後の印刷用紙に対して印刷を行う場合には特に印刷用紙が乾燥しているので、インクジェットヘッドのノズル面と印刷用紙の印刷面との間が低湿度環境となりやすい。この場合には、加湿気体供給手段で加湿した気体を供給することによる改善が特に望める。
また、本発明において、前記加湿気体供給手段は、前記印刷条件に応じて、搬送速度が速いほど気体の湿度を高く設定することが好ましい(請求項6)。
搬送速度が速いと乾燥処理も速く行う必要があるので、印刷用紙が特に高温になることがある。したがって、印刷用紙の湿度が低くなっているので、それを補うように気体の湿度を高くすることで、ノズル欠けの解消やノズル欠けの防止を好適に行うことができる。
また、請求項7に記載の発明は、インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置のフラッシング方法において、インク滴を吐出するインクジェットヘッドに対する印刷用紙の搬送方向における上流側にて、印刷用紙を搬送させつつ、前記印刷用紙のうち前記インクジェットヘッドによる印刷面とは反対面に、加湿された気体を供給する加湿気体供給過程と、前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させて前記印刷用紙の印刷面に印刷を行わせ、前記加湿気体供給過程を実施しない場合におけるインク滴の吐出量よりもインク滴の吐出量を少なくしてフラッシングを行わせる処理過程と、を特徴とするものである。
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、加湿気体供給過程で供給された気体は、印刷用紙の印刷面の反対側から印刷面に浸透して蒸発し、印刷用紙の印刷面とインクジェットヘッドのノズル面との間の湿度を高くする。したがって、インクジェットヘッドにおけるインク滴の乾燥を抑制できるので、印刷過程におけるノズル欠け解消またはノズル欠け防止のために行うフラッシングを、加湿気体供給手段を動作させていない状態を基準とした場合のインク滴の吐出量よりも少ない吐出量で行うことができる。また、加湿は印刷用紙の印刷面の反対面から行うので、処理過程における印刷面におけるインクの滲みを最小限にとどめることができる。したがって、印刷品質を良好に維持させることができる。
本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、制御手段で操作されて加湿気体供給手段から供給された気体は、印刷用紙の印刷面の反対側から印刷面に浸透して蒸発し、印刷用紙の印刷面とインクジェットヘッドのノズル面との間の湿度を高くする。したがって、インクジェットヘッドにおけるインク滴の乾燥を抑制できるので、ノズル欠け解消またはノズル欠け防止のために行うフラッシングを、加湿気体供給手段を動作させていない状態を基準とした場合のインク滴の吐出量よりも少ない吐出量で行うことができる。また、加湿は印刷用紙の印刷面の反対面から行うので、印刷面におけるインクの滲みを最小限にとどめることができる。したがって、印刷品質を良好に維持させることができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの概略構成を示す全体構成図であり、図2は、加湿装置の概略構成を示す全体構成図である。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの概略構成を示す全体構成図であり、図2は、加湿装置の概略構成を示す全体構成図である。
このインクジェット印刷システム1は、給紙部3と、表面印刷装置5と、加湿装置7と、反転装置8と、裏面印刷装置9と、排紙部11とを備えている。
給紙部3は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、表面印刷装置5に対して連続紙WPを巻き出して供給する。表面印刷装置5は、インク滴を吐出して画像を形成するインクジェット式の印刷装置であり、連続紙WPの表面に対して印刷を行う。加湿装置7は、詳細を後述するが、表面印刷装置5によって印刷された連続紙WPの印刷面(表面)に加湿された気体を供給する。換言すると、裏面印刷装置9で印刷する印刷面の反対面に、加湿された気体を供給する。反転装置8は、図示しない複数本のターンバーを備え、連続紙WPの上下面を反転させる。この例では、連続紙WPの裏面を上側に反転させる。裏面印刷装置9は、例えば、表面印刷装置5と同様の構成であり、連続紙WPの裏面に対して印刷を行う。排紙部11は、表面印刷装置5及び裏面印刷装置9で処理された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。図示省略しているが、上述した表面印刷装置5と裏面印刷装置9との間に表面印刷装置5で印刷された連続紙WPを冷却する冷却装置を配置してもよい。このような冷却装置を配置したとしても、一旦加熱された連続紙WPは、乾燥しているので、加湿装置7が効果を発揮する。
なお、上述した連続紙WPが本発明における「印刷用紙」に相当する。
表面印刷装置5は、給紙部3からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ13を上流側に備えている。駆動ローラ13によって給紙部3から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ15に沿って下流側に搬送される。表面印刷装置5は、その最下流に、駆動ローラ17を備えている。駆動ローラ13と駆動ローラ17との間には、上流側から印刷部19と、ヒートローラ21と、検査部23とが配置されている。印刷部19は、インクジェットヘッド25を備えている。ヒートローラ21は、熱源を内蔵し、外周面に巻き付けられた連続紙WPを加熱して印刷面を乾燥させる。検査部23は、連続紙WPに印刷された画像を検査する。
なお、上述した駆動ローラ13と、搬送ローラ15と、ヒートローラ21とが本発明における「搬送手段」に相当する。
印刷部19は、例えば、4個のインクジェットヘッド25を備えている。具体的には、上流側から順に、ブラック(K)用のインクジェットヘッド25と、シアン(C)用のインクジェットヘッド25と、マゼンタ(M)用のインクジェットヘッド25と、イエロー(Y)用のインクジェットヘッド25とを備えている。各インクジェットヘッド25は、連続紙WPの搬送方向に沿って所定間隔を隔てて配置されている。また、各インクジェットヘッド25は、連続紙WPの印刷面側に対向して、複数個のノズルをノズル面に形成されている。このインクジェットヘッド25が吐出するインク滴は、水性顔料である。
裏面印刷装置9は、上述した表面印刷装置5とほぼ同様の構成である。ここでは、表面印刷装置5と異なる構成についてのみ説明する。
裏面印刷装置9の駆動ローラ13は、表面印刷装置5で印刷処理され、その後に加熱処理され、さらに加湿装置7で加湿されて反転装置8で反転された連続紙WPを取り込む。裏面印刷装置9の印刷部19は、印刷面となる裏面を上に向けた姿勢とされた連続紙WPの裏面に対して印刷を行う。
上述したインクジェット印刷システム1は、制御部27によって統括的に制御される。この制御部27は、図示しないCPUやメモリなどで構成されている。制御部27は、表面印刷装置5や裏面印刷装置9の印刷を制御するとともに、表面印刷装置5の印刷条件に応じて加湿装置7を制御する。具体的には、例えば、表面印刷装置5における印刷速度が基準値よりも速い場合には、加湿装置7における加湿量を基準量よりも増加させるように制御部27が操作する。
なお、上述した制御部27が本発明における「制御手段」に相当する。
ここで図2を参照して加湿装置7について詳細に説明する。
加湿装置7は、搬送ローラ13と、加湿気体生成器31と、液体供給部33と、界面活性剤供給部35とを備えている。搬送ローラ13は、表面印刷装置5から裏面印刷装置9に向かって連続紙WPを案内する。液体供給部33は、気体を加湿するための主たる液体を供給する。界面活性剤供給部35は、加湿気体生成器31に対して界面活性剤を供給する。加湿気体生成器31は、液体供給部35からの主たる液体に対して海面活性剤を添加して、気体(例えば、空気)を加湿する。その加湿量は、制御部27によって操作される。上記の液体は、例えば、水や、インクジェットヘッド25が吐出するインクに含まれている溶剤などである。
加湿気体生成器31は、連続紙WPに向けて加湿した気体を供給する。その気体の供給面は、表面印刷装置5で印刷が行われた連続紙WPの表面SF1である。この表面SF1は、換言すると、裏面印刷装置9でこれから印刷される連続紙WPの裏面SF2とは反対面である。
なお、上述した加湿装置7が本発明における「加湿気体供給手段」に相当する。
ここで、図3〜図5を参照する。なお、図3は、加湿量に応じた欠け率の変化を示すデータであり、図4は、図3のデータのグラフであり、図5は、一定の加湿量の条件下においてフラッシング量を減少させた場合の欠け率の変化を示すデータである。
図3は、印刷条件を、解像度:1200dpi×600dpi、搬送速度:75mpm、離散的フラッシングにおける吐出量:2.2ドット/A4とし、100mにわたって連続紙WPに離散的フラッシングを行いつつ印刷を行い、その際の加湿量を変えた場合におけるノズル欠けの発生状況を示すデータである。なお、参考のため、表面印刷装置5の入り口における連続紙WPの含水率(表機入口)と、裏面印刷装置9の入り口における連続紙WPの含水率(裏機入口)とを併記してある。これらの値から、表面印刷装置5で印刷処理された後のヒートローラ21による乾燥処理により、連続紙WPが印刷処理前よりも乾燥することがわかる。
加湿を行わなかった場合には、離散的フラッシングを行いつつ行う印刷において欠け率が100%となった。つまり、離散的フラッシングを行ってもノズル欠けを解消できず、印刷品質が低下することがわかる。
一方、加湿を行った場合であって、その加湿量を10〜11[g/m2]とすると、欠け率がほぼ0%となることが種々の実験から明らかになった。したがって、上述した加湿装置7は、制御部27の制御の下で、少なくとも10[g/m2]の加湿を連続紙WPに対して行うことが好ましい。
また、図5は、印刷条件を、解像度:600dpi×600dpi、搬送速度:120mpm、加湿量を2.7[g/m2]で固定した状態で、100mにわたって連続紙WPに離散的フラッシングを行いつつ印刷を行い、そのときのノズル欠けの発生状況を示すデータである。但し、このとき、離散的フラッシングにおける吐出量をそれぞれ4.5ドット/A4から最小2.2ドット/A4まで減少させていった。なお、加湿量が2.7[g/m2]と少なく設定されているのは、無加湿との比較のため、加湿の有りの場合であってもノズル欠けを生じさせるためである。
この結果から、加湿を行わない場合には、離散的フラッシングに3.8ドット以上の吐出量が必要である一方、加湿を行う場合には、離散的フラッシングに3.0ドット以上の吐出が必要であることがわかる。つまり、印刷前の連続紙WPに対して一定量の加湿を行うことにより、印刷中に行う離散的フラッシングの吐出量を、加湿しない場合に比較して少なくすることが可能であることを意味する。
上述した結果を考慮して、本実施例におけるインクジェット印刷システム1では、制御部27が加湿装置7を操作して連続紙WPの表面SF1に10〜11[g/m2]の加湿を行うとともに、裏面印刷装置9における印刷中における離散的フラッシングの吐出量を、加湿しない場合の離散的フラッシングの吐出量よりも少なくする。
上述した本実施例によると、制御部27で操作されて加湿装置7から供給された気体は、連続紙WPの裏面SF2の反対側にあたる表面SF1から裏面SF2に浸透して蒸発し、連続紙WPの裏面SF2とインクジェットヘッド25のノズル面との間の湿度を高くする(加湿気体供給過程)。したがって、インクジェットヘッド25におけるインク滴の乾燥を抑制できるので、印刷処理中に実施する、ノズル欠け解消またはノズル欠け防止のために行う離散的フラッシングを、加湿装置7を動作させていない状態を基準とした場合のインク滴の吐出量よりも少ない吐出量で行うことができる(処理過程)。また、加湿は連続紙WPの裏面SF2の反対面である表面SF1から行うので、裏面SF2におけるインクの滲みを最小限にとどめることができる。したがって、印刷品質を良好に維持させることができる。
また、界面活性剤供給部35から供給される界面活性剤により液体の接触角が小さくなるので、連続紙WPにおける裏面SF2の反対面である表面SF1にムラなく液体を付着させることができる。したがって、連続紙WPの裏面SF2とインクジェットヘッド25のノズル面との間の空間における湿度分布を均等にできるので、インクジェットノズル25が備える複数個のノズルにおける離散的フラッシングの吐出量を均等にしても、十分にノズル欠け解消またはノズル欠け防止を図ることができる。
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した実施例では、印刷用紙として連続紙WPを例にとって説明したが、本発明は印刷用紙が連続紙WPに限定されるものではない。つまり、加湿された気体を透過し難いフィルムを除いた紙の印刷媒体、例えば、枚葉用紙(単票用紙)であっても本発明を適用することができる。
(2)上述した実施例では、加湿量を10〜11[g/m2]としているが、本発明は加湿量がこの値に限定されるものではない。つまり、印刷用紙の種類や、印刷条件、装置が配置されている環境などに応じて調整すればよい。
(3)上述した実施例では、加湿装置7が界面活性剤を液体に添加する構成としているが、本発明は界面活性剤を添加することが必須ではない。
(4)上述した実施例では、フラッシングとして離散的フラッシングを例にとって説明したが、本発明は離散的フラッシングに限定されるものではない。例えば、印刷領域外においてフラッシングを行うラインフラッシングについても適用することができる。この場合であっても、連続紙WPを加湿することで、加湿しない場合に比較してラインフラッシングにおける吐出量を低減できる。
(5)上述した実施例では、加湿装置7を表面印刷装置5の下流かつ反転装置8の上流に配置しているが、本発明はこのような配置に限定されない。つまり、裏面印刷装置9において印刷する前に連続紙WPに加湿した気体を加えることができれば、同様の効果を奏することができる。
(6)上述した実施例では、裏面印刷装置9の上流に加湿装置7を配置しているが、本発明はこれに限定されない。つまり、表裏の印刷順序が逆の場合には、表面印刷装置5の上流に加湿装置7を配置すればよい。
(7)上述した実施例では、両面印刷を行うインクジェット印刷システム1において二番目に印刷を行う前に加湿する装置構成を例にとって説明した。しかしながら、本発明はこのような構成の両面印刷の装置に限定されない。例えば、特色インクを連続紙WPの印刷領域の全面に予め塗布したり、印刷面を滑らかにする特殊コーティングを連続紙WPに予め塗布したりした場合には、その連続紙WPが乾燥しているので、一番目の印刷を行う前に加湿するように構成すればよい。
1 … インクジェット印刷システム
3 … 給紙部
5 … 表面印刷装置
7 … 加湿装置
8 … 反転装置
9 … 裏面印刷装置
11 … 排紙部
13 … 搬送ローラ
15 … 駆動ローラ
19 … 印刷部
21 … ヒートローラ
25 … インクジェットヘッド
27 … 制御部
WP … 連続紙
SF1 … 表面
SF2 … 裏面
31 … 加湿気体生成器
33 … 液体共有部
35 … 界面活性剤供給部
3 … 給紙部
5 … 表面印刷装置
7 … 加湿装置
8 … 反転装置
9 … 裏面印刷装置
11 … 排紙部
13 … 搬送ローラ
15 … 駆動ローラ
19 … 印刷部
21 … ヒートローラ
25 … インクジェットヘッド
27 … 制御部
WP … 連続紙
SF1 … 表面
SF2 … 裏面
31 … 加湿気体生成器
33 … 液体共有部
35 … 界面活性剤供給部
Claims (7)
- インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置において、
印刷用紙に対してインク滴を吐出する複数個のノズルをノズル面に備えたインクジェットヘッドと、
前記ノズル面に離間して対向した位置にて印刷用紙を搬送方向に搬送する搬送手段と、
搬送方向における前記インクジェットヘッドの上流側にて、前記印刷用紙のうち前記インクジェットヘッドによる印刷面とは反対面に、加湿された気体を供給する加湿気体供給手段と、
前記搬送手段で印刷用紙を搬送させ、かつ、前記加湿気体供給手段から加湿された気体を供給させながら、前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させて印刷を行わせ、前記加湿気体供給手段を非作動とした場合におけるインク滴の吐出量よりもインク滴の吐出量を少なくしてフラッシングを行わせる制御手段と、
を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。 - 請求項1に記載のインクジェット印刷装置において、
前記加湿気体供給手段は、気体を加湿するための液体に界面活性剤を添加していることを特徴とするインクジェット印刷装置。 - 請求項1または2に記載のインクジェット印刷装置において、
前記制御手段は、前記フラッシングを離散的フラッシングとすることを特徴とするインクジェット印刷装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記気体の加湿量は、10〜11[g/m2]であることを特徴とするインクジェット印刷装置。 - 請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット印刷装置において、
前記印刷用紙は、所定の印刷条件で前記印刷面の反対面にインク滴を吐出されて印刷処理が行われ、かつ、前記反対面を乾燥させるための加熱処理が施されたものであることを特徴とするインクジェット印刷装置。 - 請求項5に記載のインクジェット印刷装置において、
前記加湿気体供給手段は、前記印刷条件に応じて、搬送速度が速いほど気体の湿度を高く設定することを特徴とするインクジェット印刷装置。 - インク滴を吐出して印刷を行うインクジェット印刷装置のフラッシング方法において、
インク滴を吐出するインクジェットヘッドに対する印刷用紙の搬送方向における上流側にて、印刷用紙を搬送させつつ、前記印刷用紙のうち前記インクジェットヘッドによる印刷面とは反対面に、加湿された気体を供給する加湿気体供給過程と、
前記インクジェットヘッドからインク滴を吐出させて前記印刷用紙の印刷面に印刷を行わせ、前記加湿気体供給過程を実施しない場合におけるインク滴の吐出量よりもインク滴の吐出量を少なくしてフラッシングを行わせる処理過程と、
を特徴とするインクジェット印刷装置のフラッシング方法。
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