JP2018050418A - 回転機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の多相巻線組を有する回転機の位置センサレス制御において、系統間の不平衡による位置誤差を低減する回転機の制御装置を提供する。【解決手段】モータ制御装置101は、3相2系統のモータ802への通電を位置センサレス制御で制御する。系統和誘起電圧推定部41は、電圧和v*γδw及び電流和iγδwに基づいて、2系統の拡張誘起電圧の和である系統和誘起電圧eγδwを推定する。系統差誘起電圧推定部43は、電圧差v*γδs及び電流差iγδsに基づいて、2系統の拡張誘起電圧の差である系統差誘起電圧eγδsを推定する。磁極位置推定部56は、系統和誘起電圧eγδw、系統和誘起電圧に系統差誘起電圧を加算した値(eγδw+eγδs)、及び、系統和誘起電圧から系統差誘起電圧を減算した値(eγδw−eγδs)のうちから位置誤差Δθが最小となるように選択されたいずれかの値に基づいて、ロータの磁極位置θγを推定する。【選択図】図1

Description

本発明は、位置センサレス制御を行う回転機の制御装置に関する。
従来、複数のインバータにより多重巻線同期回転機を駆動する制御装置において、電圧や電流情報から磁極位置を推定する位置センサレス制御を行う制御装置が知られている。
例えば特許文献1に開示された同期機の位置センサレス制御装置では、マスターインバータ及びスレーブインバータでそれぞれ推定位置を演算した後、平均値を算出する。
特許第5527025号公報
本明細書では、回転機の巻線組への通電を制御する一群の構成要素の単位を「系統」と定義する。特許文献1の図1等に開示されたマスターインバータ及びスレーブインバータを含む構成は、2系統の構成である。複数の系統間において、巻線抵抗、インダクタンス等のモータ定数や電源電圧には不平衡が存在し得るため、系統毎の電圧、電流に基づいて推定される拡張誘起電圧には誤差が含まれる。そして、拡張誘起電圧から演算される位置誤差を0にしようとするPI制御が行われる結果、推定された磁極位置に位置誤差が発生する。
特許文献1の装置では、2系統の拡張誘起電圧の平均値、すなわち和(以下「系統和誘起電圧」)に基づいて位置を推定する。仮に第1系統の拡張誘起電圧の誤差と第2系統の拡張誘起電圧の誤差との符号が逆で、且つ絶対値が等しい場合、平均値を算出することで2系統の誤差が相殺し、系統和誘起電圧から演算される磁極位置の誤差は小さくなる。
しかし、2系統の拡張誘起電圧の誤差が同符号である場合や、拡張誘起電圧の誤差が一方の系統にのみ存在し他方の系統ではほぼ0である場合、系統和誘起電圧に誤差が残る。そのため、系統和誘起電圧の誤差に基づいて位置誤差が発生することとなる。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、複数の多相巻線組を有する回転機の位置センサレス制御において、系統間の不平衡による位置誤差を低減する回転機の制御装置を提供することにある。
本発明の回転機の制御装置は、3相以上の多相巻線組をステータ(84)に複数有する回転機(80)に対し、複数の巻線組への通電を位置センサレス制御で制御する。この回転機の制御装置は、複数の電力変換器(61、62)と、系統和誘起電圧推定部(41、42)と、系統差誘起電圧演算部(43、44、47)と、磁極位置推定部(56)とを備える。
複数の電力変換器は、入力された電力を交流電力に変換し、回転機に供給する。
特定の前記巻線組への通電を制御する一群の構成要素の単位を「系統」と定義すると、系統和誘起電圧推定部は、複数系統から選択した特定の2系統の拡張誘起電圧の和である系統和誘起電圧(eγδw)を推定する。系統差誘起電圧演算部は、特定の2系統の拡張誘起電圧の差である系統差誘起電圧(eγδs)を演算する。
ここで、拡張誘起電圧の「和」には、加算値を2で除した平均値を含み、「差」には、減算値を2で除した半差分値を含むものと解釈する。
磁極位置推定部は、系統和誘起電圧、系統和誘起電圧に系統差誘起電圧を加算した値、及び、系統和誘起電圧から系統差誘起電圧を減算した値のうちから位置誤差(Δθ)が最小となるように選択されたいずれかの値に基づいて、回転機のロータ(85)の磁極位置(θγ)を推定する。
このように本発明は、特許文献1の従来技術のように常に系統和誘起電圧を用いるのではなく、場合に応じて、系統和誘起電圧と系統差誘起電圧との加減算値を利用しても磁極位置を推定可能である。3種類の拡張誘起電圧の演算値のうち位置誤差が最小となる値を適宜選択することで、磁極位置推定部が推定する位置誤差を低減することができる。
本発明の回転機の制御装置は、好ましくは判断部(53)をさらに備える。判断部は、系統和誘起電圧、系統和誘起電圧に系統差誘起電圧を加算した値、及び、系統和誘起電圧から系統差誘起電圧を減算した値のうち最小の値を選択し、磁極位置推定部による磁極位置の推定に用いる選択後拡張誘起電圧(eγδ#)として出力する。
具体的に判断部は、回転機の制御装置の動作中に都度入力される3種類の演算値のうち最小の値を選択し、選択後拡張誘起電として磁極位置推定部に出力する。これにより、誤差パターンが既知でない場合や経時変化する場合にも、磁極位置推定部による位置推定の周期毎に位置誤差を最小にすることができる。
第1実施形態による回転機の制御装置の制御ブロック図。 (a)界磁回路の模式図。(b)2系統回転機のステータの部分断面図。 3相2系統回転機の巻線の模式図。 固定座標系、回転座標系、推定回転座標系の軸の関係を説明する図。 磁極位置の推定を説明する1系統の回転機の制御装置の制御ブロック図。 誘起電圧ベクトルのベクトル図。 2系統の推定誘起電圧の誤差パターンと和の誤差、差との関係を示す表。 判断部による演算値選択処理のフローチャート(1)。 判断部による演算値選択処理のフローチャート(2)。 判断部による演算値選択処理のフローチャート(3)。 第2実施形態による回転機の制御装置の制御ブロック図。 第3実施形態による回転機の制御装置の制御ブロック図。 第4実施形態による回転機の制御装置の制御ブロック図。 3相2系統電流の和の演算による(a)6次高調波、(b)12次高調波の作用を説明する図。 (a)速度(モータ回転数)とカットオフ周波数との関係、(b)系統和/系統差誘起電圧推定部のカットオフ周波数の関係を示す図。 比較例の回転機の制御装置の制御ブロック図。
以下、回転機の制御装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。複数の実施形態において実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。また、前出の実施形態で説明した事項について、後出の実施形態で異なる旨を記載する事項以外は、原則として共通に適用されるものとする。
この回転機の制御装置は、例えば駆動力源としてエンジンを備える車両において、スタータ及びオルタネータの機能を統合したISG(Integrated Starter Generator)の通電を制御するシステムに適用される。
以下の実施形態の説明では、特許請求の範囲における「回転機」を「モータ」と記し、「回転機の制御装置」を「モータ制御装置」と記す。また、第1〜第4実施形態を包括して「本実施形態」という。
各実施形態のモータ制御装置は、3相以上の多相巻線組をステータに複数有するモータに対し、複数の電力変換器から対応する巻線組への通電を制御する装置である。以下、特定の巻線組への通電を制御する一群の構成要素の単位を「系統」と定義する。具体的に、第1〜第4実施形態のモータの相数は、いずれも3相2系統である。そのような構成を前提として、各実施形態のモータ制御装置は、位置センサレス制御により、各系統の電力変換器の出力電圧を制御する。
各実施形態によるモータ制御装置の符号は、「10」に続く3桁目に実施形態の番号を付す。また、各実施形態の2系統のモータの符号は、「80」に続く3桁目に「2」を付す。各系統の構成要素である電力変換器、電流センサ等は、2桁又は3桁符号の末尾数字を系統の番号とする。例えば第1系統の構成要素は符号末尾を「1」、第2系統の構成要素は符号末尾を「2」とする。
(第1実施形態)
第1実施形態による3相2系統のモータ制御装置について、図1〜図10を参照して説明する。図1に示すように、モータ制御装置101は、2系統の3相巻線組を有するモータ802に2台の電力変換器61、62から交流電力を供給するシステムに適用される。モータ802は、例えば永久磁石式同期型の3相交流モータである。モータ802には、ロータの磁極位置を検出する回転角センサは設けられていない。
図2(a)に示すように、モータ802の近傍には、インダクタンスMfの界磁巻線88を有し、界磁電流ifが流れる界磁回路87が設けられている。なお、界磁電流ifを制御する制御器の図示を省略する。
図2(b)に示すように、永久磁石同期型のモータ802は、周方向に磁極86が配置されたロータ85が、ステータ84の径内側に回転可能に支持されている。図2(b)には、ロータ85にN極及びS極が2対(すなわち計4極)設けられた例を示す。
ステータ84に巻回される巻線について、例えば「U1」は第1系統のU相巻線を意味し、「V2」は第2系統のV相巻線を意味する。第1系統と第2系統との同相巻線は、ステータ84の周方向に交互に配置されている。
図3に、第1系統巻線81を実線、第2系統巻線82を破線で表し、3相2系統のモータ802の巻線の配置を模式的に示す。3相2系統のモータ802の各相巻線は、第1系統と第2系統との間の位相が電気角30(すなわち、60/2)°ずれている。
また、2相固定座標系のαβ軸は、α軸α1、α2がU相軸U1、U2と一致するように定義される。
図1に戻り、第1系統及び第2系統の電力変換器61、62は、それぞれ第1系統巻線81及び第2系統巻線82に対応する。電力変換器61、62の入力側信号線及び出力側電力経路に付した3本の斜線は、3相であることを表す。典型的には、電力変換器61、62は、バッテリ等の直流電源から入力された直流電力を複数のスイッチング素子の動作により交流電力に変換するインバータである。
図1には、電力変換器61、62の入力側電力経路の図示を省略する。直流電源と電力変換器61、62との間にはDCDCコンバータ等が設けられてもよい。
また、3相上下アームの6個のスイッチング素子を含む3相交流インバータの構成も周知技術であるため図示を省略する。
電力変換器61、62とモータ802との間の電力経路に図示される三角波マークは、各系統の相電流を検出する電流センサ71、72を示す。電流センサ71、72は、3相全てに設けられてもよく、3相のうち2相に設けられ、残る1相の電流をキルヒホッフの法則により算出するようにしてもよい。
モータ制御装置101は、例えば特許第3411878号公報等に開示された周知技術である位置センサレス制御でのベクトル制御の構成を基本とする。ここで、ベクトル制御に用いられる各座標系の軸の関係を図4に示す。αβ軸は2相固定座標系で互いに直交する軸であり、dq軸は2相回転座標系で互いに直交する軸である。ロータ85の回転により、電気角θ、すなわち、αβ軸に対するdq軸の位相は時間と共に変化する。
実際の電気角θを直接検出しない位置センサレス制御では、dq軸とは別に、2相推定回転座標系のγδ軸を定義する。γ軸は推定d軸であり、δ軸は推定q軸である。そして、γδ軸における推定磁極位置θγと実際の電気角θとの差を「位置誤差Δθ」と表す。位置センサレス制御では、位置誤差Δθを0に収束させるように、PI制御等により電気角速度ωを演算することにより、推定磁極位置θγを実際の電気角θとみなして制御演算を実行する。
以下の明細書及び図面において、記号「iγδ」は、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを意味する。数式では、γ軸電流iγ及びδ軸電流iδを別個に行列形式で表す。「vγδ」及び「eγδ」についても同様とする。またdq軸拡張誘起電圧についても「edq」と記す。
なお、「θγ」については、γを下付文字でなく通常文字で記載する。
図1に戻り、本実施形態のモータ制御装置101は、2系統の3相巻線組を有するモータ802の通電を位置センサレス制御により制御する。ここで、2系統のγδ軸電圧指令値v* γδ1、v* γδ2を演算するまでの構成は、いずれかの周知技術を適用可能であるものとし、図示を省略する。例えばγδ軸電圧指令値v* γδ1、v* γδ2は、検出された実電流を電流指令値に一致させる電流フィードバック制御により演算されてもよい。或いは、検出された実トルク、又は実電流から推定された推定トルクをトルク指令値に一致させるトルクフィードバック制御により演算されてもよい。
モータ制御装置101は、第1系統の2相3相変換部171、3相2相変換部181、第2系統の2相3相変換部172、3相2相変換部182を備える。
また、モータ制御装置101は、電圧和算出器31、電流和算出器32、電圧差算出器33、電流差算出器34、系統和誘起電圧推定部41、系統差誘起電圧推定部43、和差加算器51、和差減算器52、判断部53、及び、磁極位置推定部56等を備える。
なお、一点鎖線で示すI部は、第4実施形態の説明で引用される。
破線で示すように、第1系統の2相3相変換部171及び3相2相変換部181には、磁極位置推定部56が推定した磁極位置θγが入力される。ここでは、磁極位置θγは、軸基準の定義により、第1系統の磁極位置を表すものとする。一方、第2系統の磁極位置は、第1系統の磁極位置を基準として電気角30°の位相差(図3参照)が加算される。したがって、第2系統の2相3相変換部172及び3相2相変換部182には、角度加算器272、282により、磁極位置θγに電気角30°が加算された位置が入力される。
各系統の2相3相変換部171、172、及び3相2相変換部181、182は、入力された位置情報を用いて上記の座標変換演算を行う。
各系統の2相3相変換部171、172は、γδ軸電圧指令値v* γδ1、v* γδ2を3相電圧指令値v* UVW1、v* UVW2に変換し、電力変換器61、62に出力する。
各系統の3相2相変換部181、182は、電流センサ71、72が検出した相電流iUVW1、iUVW2を取得し、γδ軸電流検出値iγδ1、iγδ2に変換する。
以下、相電圧又は相電流との変換に関する記載以外では「γδ軸電圧指令値v* γδ1、v* γδ2」及び「γδ軸電流検出値iγδ1、iγδ2」の「γδ軸」を適宜省略し、「電圧指令値v* γδ1、v* γδ2」及び「電流検出値iγδ1、iγδ2」と記す。
電圧和算出器31は、第1系統の電圧指令値v* γδ1と第2系統の電圧指令値v* γδ2との電圧和v* γδwを算出し、系統和誘起電圧推定部41に出力する。
電流和算出器32は、第1系統の電流検出値iγδ1と第2系統の電流検出値iγδ2との電流和iγδwを算出し、系統和誘起電圧推定部41に出力する。
電圧差算出器33は、第1系統の電圧指令値v* γδ1から第2系統の電圧指令値v* γδ2を減じた電圧差v* γδsを算出し、系統差誘起電圧推定部43に出力する。
電流差算出器34は、第1系統の電流検出値iγδ1から第2系統の電流検出値iγδ2を減じた電流差iγδsを算出し、系統差誘起電圧推定部43に出力する。
ここで、本明細書において、「AとBとの和」は、文字通り「A+B」の意味のみでなく、「(A+B)/2」、すなわち「AとBとの平均値」の意味で用いられる。また、「AからBを減じた差」は、文字通り「A−B」の意味のみでなく、「(A−B)/2」、すなわち「AからBを減じた値を2で除した半差分値」の意味で用いられる。
電圧和算出器31及び電流和算出器32は、平均値を意味する電圧和v* γδw及び電流和iγδwを算出し、電圧差算出器33及び電流差算出器34は、半差分値を意味する電圧差v* γδs及び電流差iγδsを算出する。なお、末尾記号「w」は「和」を意味し、末尾記号「s」は「差」を意味する。「w」、「s」は、明細書中では通常文字で記し、図及び数式中では下付文字として記載する。
要するに、モータ制御装置101の各ブロックが扱う電圧及び電流値は、基本的に「1系統当たりに換算した値」である。換算のため2で除する演算は、単に調整の意味合いを持つにすぎない。それよりも本実施形態では、2系統の電圧及び電流値を加算するのか、又は減算するのか、という違いが重要な意味を持つ。
このような技術的思想により、本明細書では、「和」又は「差」の区別に重点を置く。したがって、本質的に「和」は平均値を含む概念であり、「差」は半差分値を含む概念であるものとして解釈する。
系統和誘起電圧推定部41は、電圧和v* γδw及び電流和iγδwに基づいて、2系統の拡張誘起電圧の和である系統和誘起電圧eγδwを推定する。
系統差誘起電圧推定部43は、電圧差v* γδs及び電流差iγδsに基づいて、2系統の拡張誘起電圧の差である系統差誘起電圧eγδsを推定する。
和差加算器51は、系統和誘起電圧eγδwと系統差誘起電圧eγδsとを加算し、判断部53に出力する。
和差減算器52は、系統和誘起電圧eγδwから系統差誘起電圧eγδsを減算し、判断部53に出力する。
判断部53は、系統和誘起電圧推定部41から系統和誘起電圧eγδwを直接取得する他、和差加算器51による加算結果(eγδw+eγδs)、及び、和差減算器52による減算結果(eγδw−eγδs)を取得する。すなわち、判断部53は、拡張誘起電圧eγδに関する3種類の演算値を取得する。
以下、文脈から自明である場合等、適宜、系統和誘起電圧eγδwを簡単に「和」と記す。また、和差加算器51による加算結果(eγδw+eγδs)を「和+差」と記し、和差減算器52による減算結果(eγδw−eγδs)を「和−差」と記す。
判断部53は、「和」、「和+差」及び「和−差」の3種類の演算値のうち、磁極位置推定部56が磁極位置θγの推定に用いるのに最適なものを選択し、「選択後拡張誘起電圧eγδ#」として磁極位置推定部56に出力する。その選択方法については後述する。
ここで、磁極位置推定部56が用いる演算値は、原則として「和」が基準値であると考えると、「和+差」又は「和−差」を用いる場合、基準値である「和」を「差」により補正する処理が実行されると解することもできる。この考え方によると、「選択後拡張誘起電圧」を「補正後拡張誘起電圧」と言い換えてもよい。
磁極位置推定部56は、判断部53から取得した選択後拡張誘起電圧eγδ#に基づいて、詳しくは後述する位置推定原理により、磁極位置θγ及び電気角速度ωを推定する。つまり、「磁極位置推定部」は、正確には「磁極位置及び速度推定部」として機能する。磁極位置推定部56の詳細な構成は、次に説明する図5に示される構成に準ずる。
以下、電気角速度ωを適宜、「速度ω」と記す。また、速度ωに比例定数を乗ずることによりモータ回転数となるため、モータ回転数の意味でも「ω」を用いる。
ここで、位置センサレス制御における一般的な位置推定原理について、図5、図6を参照して説明する。
図5に、3相1系統のモータ801の駆動を制御するモータ制御装置100の制御ブロック図を示す。2相3相変換部171、3相2相変換部181、電力変換器61及び電流センサ71については、図1に示すモータ制御装置101における第1系統の構成要素の符号を援用する。
また、電流フィードバック制御の構成として、電流減算器14及び電流制御器15が示される。電流センサ71で検出された相電流iUVWは、3相2相変換部181でγδ軸電流検出値iγδに変換され、γδ軸電流指令値i* γδに対してフィードバックされる。電流制御器15は、電流減算器14で算出された電流指令値i* γδと電流検出値iγδとの差分を0に収束させるように、PI制御等により電圧指令値v* γδを演算する。
推定回転座標系の電圧方程式は数式1で表される。数式1中の下記の記号はモータ定数である。拡張誘起電圧推定部40は、電圧指令値v* γδ及び電流検出値iγδを取得し、数式1より、拡張誘起電圧eγδを演算する。
R :抵抗
d、Lq:d軸、q軸自己インダクタンス
E:逆起電力定数
Figure 2018050418
磁極位置推定部56は、アークタンジェント演算部57、PI制御器58、及び積分器59を含む。
アークタンジェント演算部57は、数式1の「−sin△θ、cos△θ」に基づき、数式2により位置誤差Δθを演算する。
Figure 2018050418
また、図6のγδ軸ベクトル図に示すように、拡張誘起電圧eγδのδ軸成分eδの大きさを1としたときのγ軸成分eγの大きさの絶対値をベクトル比率Xと表すと、位置誤差Δθは、「Δθ=tan-1|X|」と表すことができる。
PI制御器58は、位置誤差Δθが0になるように、PI制御により速度ωの目標値を演算する。位置誤差Δθが0のとき、拡張誘起電圧eγδは数式3で表される。つまり、位置誤差Δθが0のとき、拡張誘起電圧eγδのγ軸成分eγは、「eγ=0」となる。
Figure 2018050418
積分器(図中、「1/s」)59は、PI制御器58が演算した速度ωを積分し、磁極位置θγを演算する。
ところで、電圧指令値v* γδと実電圧との誤差、電流検出値iγδと実電流との誤差、又は、モータ定数の誤差が存在すると仮定する。すると、数式4に示すように、拡張誘起電圧推定部40が推定した拡張誘起電圧eγδは、実dq軸の拡張誘起電圧edqに対し、誤差Δeγδを含むものとなる。
Figure 2018050418
例えばモータ定数である抵抗Rが誤差ΔRを含むとすると、これによる拡張誘起電圧の誤差Δeγδは、数式5で表される。
Figure 2018050418
このように、拡張誘起電圧推定部40が推定した拡張誘起電圧に誤差Δeγδが含まれる場合でも、PI制御器58の作用により、位置誤差Δθが0になるように制御される。つまり、拡張誘起電圧の推定誤差Δeγδの分を補償するように速度ω及び磁極位置θγが演算されるため、その分の位置誤差Δθが発生する。
次に、図1に戻り、2系統のモータ制御装置101での位置推定について説明する。
2系統での電圧方程式には、モータ定数として、系統間干渉を考慮したd軸、q軸相互インダクタンスMd、Mqが含まれる。また、数式1における逆起電力定数KEに対応する定数として、数式6、7では、図2(a)に示す界磁回路87のインダクタンスMf及び界磁電流ifの積の値を用いる。
第1系統の推定回転座標系の電圧方程式、及び拡張誘起電圧eγδ1は、数式6で表される。各記号の添え字「1」は、第1系統の値であることを示す。
Figure 2018050418
第2系統の推定回転座標系の電圧方程式、及び拡張誘起電圧eγδ2は、数式7で表される。各記号の添え字「2」は、第2系統の値であることを示す。
Figure 2018050418
まず、第1系統及び第2系統の電圧、電流の「和」の情報のみを用いた位置推定について説明する。「和」の情報のみによる推定構成は、図1における電圧和算出器31、電流和算出器32、及び系統和誘起電圧推定部41により実行される。つまり、図1における電圧差算出器33、電流差算出器34及び系統差誘起電圧推定部43、更に、和差加算器51、和差減算器52、判断部53は、実質的に除外されたものとみなされる。
言い換えれば、図16に示す比較例のモータ制御装置109の構成が、「和」の情報のみによる推定構成に相当する。図16に示す比較例の構成は、基本的に、従来技術である特許文献1(特許第5527025号公報)の構成に相当するものである。
第1系統及び第2系統の電圧、電流、拡張誘起電圧のそれぞれの「和」(すなわち平均値)を数式8で定義する。
Figure 2018050418
また、2系統の自己インダクタンスについて数式9の関係が成り立つと仮定する。
Figure 2018050418
2系統の電圧、電流の「和」を用いた電圧方程式、及び拡張誘起電圧eγδwは、数式10で表される。比較例のモータ制御装置109において、磁極位置推定部56は、数式10により推定される位置誤差Δθを0にするようにPI制御し、速度ω及び磁極位置θγを推定する。
Figure 2018050418
先に1系統モータ制御装置の例で説明した通り、推定された拡張誘起電圧eγδには、電圧、電流、モータ定数の誤差に基づく誤差Δeγδが生じる可能性がある。さらに、2系統のモータ構成では、系統間の電圧、電流、モータ定数の不平衡により、各系統の誘起電圧eγδ1、eγδ2にそれぞれ誤差Δeγδ1、Δeγδ2が生じると考えられる。そして、2系統の誤差Δeγδ1、Δeγδ2の関係には多様なパターンがあり得る。
続いて、比較例による「和の情報のみによる位置推定」の構成と対比しつつ、第1実施形態による「和と差の情報による位置推定」の構成について説明する。
まず、2系統モータ制御装置における系統間の不平衡による拡張誘起電圧の誤差について、数式を用いて記述する。以下、拡張誘起電圧の推定値を「推定誘起電圧」と記す。
第1系統の推定誘起電圧eγδ1、及び第2系統の推定誘起電圧eγδ2は、数式11で表される。
Figure 2018050418
また、行列形式の数式11を簡略化し、γδ軸の推定誘起電圧をまとめて数式12のように表す。
Figure 2018050418
2系統のdq軸誘起電圧の「和」(すなわち平均値)edqwを数式13のように定義する。
Figure 2018050418
また、数式14のように、各系統のdq軸誘起電圧は等しいと仮定する。
Figure 2018050418
2系統の推定誘起電圧の「和」(すなわち平均値)eγδwは、数式15で表される。
Figure 2018050418
行列形式の数式15を簡略化し、γδ軸の推定誘起電圧の和をまとめて数式16のように表す。第2項をまとめた「Δeγδw」は、推定誘起電圧の「和の誤差」を示す。
Figure 2018050418
また、第1系統の推定誘起電圧eγδ1から第2系統の推定誘起電圧eγδ2を減じた差(すなわち半差分値)eγδsは、数式17で表される。
Figure 2018050418
行列形式の数式17を簡略化し、γδ軸の推定誘起電圧の差をまとめて数式18のように表す。
Figure 2018050418
続いて図7を参照する。ここで、2系統の推定誘起電圧の誤差パターンとして、3通りのパターンを想定する。以下、「各系統の推定誘起電圧の誤差」を単に「各系統の誤差」という。また、「2系統の推定誘起電圧の和の誤差」を単に「和の誤差」といい、「2系統の推定誘起電圧の差」を単に「差」という。「和の誤差」は数式16、「差」は数式18に示す通りである。
パターン[A]は、「第1系統の誤差Δeγδ1が、第2系統の誤差Δeγδ2の符号を反転した値に等しい場合」である。つまり、第1系統の誤差Δeγδ1と第2系統の誤差Δeγδ2との符号が逆(Δeγδ1>0,Δeγδ2<0、又は、Δeγδ1<0,Δeγδ2>0)であり、且つ絶対値が等しい(|Δeγδ1|=|Δeγδ2|)場合である。
このとき、第1系統の誤差Δeγδ1と第2系統の誤差Δeγδ2とが相殺するため、和の誤差Δeγδwが0になる。なお、差eγδsは、第1系統の誤差Δeγδ1に等しくなる。
パターン[B]は、「第1系統の誤差Δeγδ1が0の場合」である。このとき、和の誤差Δeγδwは、第2系統の誤差の2分の1(=Δeγδ2/2)に等しくなり、差eγδsは、第2系統の誤差の2分の1の符号反転値(=−Δeγδ2/2)に等しくなる。
したがって、「和の誤差+差(Δeγδw+eγδs)」が0になる。
パターン[C]は、「第2系統の誤差Δeγδ2が0の場合」である。このとき、和の誤差Δeγδw、差eγδsのいずれも、第1系統の誤差の2分の1(=Δeγδ1/2)に等しくなる。
したがって、「和の誤差−差(Δeγδw−eγδs)」が0になる。
このように、各パターンにおいて0となる演算値は、次のようになる。
パターン[A]:和の誤差Δeγδ
パターン[B]:和の誤差+差(Δeγδw+eγδs)
パターン[C]:和の誤差−差(Δeγδw−eγδs)
比較例による「和の情報のみによる位置推定」の構成は、パターン[A]の場合、推定誘起電圧の誤差Δeγδwが0となるため、位置誤差Δθを低減可能である。しかし、比較例の構成では、パターン[B]、[C]には対応することができず、位置誤差Δθの増大を招くおそれがある。
そこで、第1実施形態のモータ制御装置101は、構成の説明において上述した通り、系統和誘起電圧推定部41により「和eγδw」を演算することに加え、系統差誘起電圧推定部43により「差eγδs」を演算する。また、和差加算器51及び和差減算器52により、「和+差(eγδw+eγδs)」及び「和−差(eγδw−eγδs)」を演算する。したがって、「和eγδw」、「和+差(eγδw+eγδs)」、「和−差(eγδw−eγδs)」の3種類の演算値を利用することが可能となる。
そして、現実の誤差パターンを[A]、[B]、[C]のうち最も近いパターンに分類し、磁極位置推定部56において、パターン毎に、3種類の演算値のうち最小の値を用いて磁極位置θγを推定することで、位置誤差Δθを低減することができる。
また、本実施形態では、判断部53が、モータ制御装置の動作中に都度入力される3種類の演算値のうち最小の値を選択し、選択後拡張誘起電圧eγδ#として磁極位置推定部56に出力する。
続いて、判断部53が実行する「演算値選択処理」の3通りの具体例について、図8〜図10のフローチャートを参照する。
各フローチャートの説明で記号Sは「ステップ」を表す。また、図8〜図10において共通のステップには同一のステップ番号を付す。さらに、共通ではないが互いに対応するステップには、同一のステップ番号の後に枝番「−1、−2、−3」を付して記す。
図8に、拡張誘起電圧ベクトルeγδの大きさに基づく選択処理のフローを示す。
S1にて、系統和誘起電圧推定部41及び系統差誘起電圧推定部43は、それぞれ系統和誘起電圧eγδw(以下「和eγδw」)及び系統差誘起電圧eγδs(以下「差eγδs」)を演算する。
S2−1にて、和差加算器51は、和eγδwに差eγδsを加算し、「和+差(eγδw+eγδs)」を算出する。和差減算器52は、和eγδwから差eγδsを減算し、「和−差(eγδw−eγδs)」を算出する。
S3−1、S4−1にて、判断部53は、「和eγδw」、「和+差(eγδw+eγδs)」、「和−差(eγδw−eγδs)」のうち最小の値を選択する。
まず、S3−1にて、「和eγδw」と、「和+差(eγδw+eγδs)、又は、和−差(eγδw−eγδs)の小さい方の値」とが比較される。「和eγδw」が小さい場合、YESと判断され、S5に移行する。
S3−1にて、「和+差(eγδw+eγδs)、又は、和−差(eγδw−eγδs)の小さい方の値」が小さい場合、NOと判断される。そして、S4−1にて、「和+差(eγδw+eγδs)」と「和−差(eγδw−eγδs)」とが比較される。
「和+差(eγδw+eγδs)」が小さい場合、YESと判断され、S6に移行する。
「和−差(eγδw−eγδs)」が小さい場合、NOと判断され、S7に移行する。
なお、判断の順番は上記の例に限らず、最終的に最小値が判別されればよい。
S5では、「和eγδw」が選択後拡張誘起電圧eγδ#に選択される。
S6では、「和+差(eγδw+eγδs)」が選択後拡張誘起電圧eγδ#に選択される。
S7では、「和−差(eγδw−eγδs)」が選択後拡張誘起電圧eγδ#に選択される。
こうして選択された選択後拡張誘起電圧eγδ#は、磁極位置推定部56に出力され、位置推定のアークタンジェント演算に利用される。
図9に、拡張誘起電圧の推定d軸(γ軸)成分eγの大きさに基づく選択処理のフローを示す。拡張誘起電圧ベクトルeγδは、本来、推定q軸方向のベクトルであり、推定q軸成分の誤差Δeδは相対的に無視して良いレベルであると考えられる。図9の処理は、その点に着目し、推定d軸成分の誤差Δeγのみを用いて判断するものである。
図9において枝番S「−2」を付したステップ(S2−2、S3−2、S4−2)は、いずれも、図8における枝番「−1」のステップの「γδ」を「γ」に置き換えたものである。それ以外は図8と同様であるため、説明を省略する。また、図9のS1、S5、S6、S7において括弧内に示した値は、次の第2実施形態で用いられる。
図9の処理では推定d軸成分の値のみを扱うため、図8の処理に比べ演算量を低減することができる。
図10に、拡張誘起電圧ベクトルeγδのδ軸基準位相に基づく選択処理のフローを示す。
S2−3にて、判断部53は、系統和誘起電圧eγδw及び系統差誘起電圧eγδsに基づいて、和、(和+差)、(和−差)の3通りのベクトル比率Xw、Xw+s、Xw−sを算出する。図6に示す通り、ベクトル比率Xは、誘起電圧ベクトルeγδのδ軸成分の大きさを1としたときのγ軸成分の大きさを表す値である。
S3−3、S4−3にて、判断部53は、各ベクトル比率Xw、Xw+s、Xw−sのアークタンジェントtan-1|Xw|、tan-1|Xw+s|、tan-1|Xw−s|のうち最小の値を選択する。このステップでは、δ軸基準位相の絶対値が最小の値、言い換えれば、最もδ軸に一致する拡張誘起電圧ベクトルeγδに対応する値が選択される。最小値選択の考え方、及び、選択後拡張誘起電圧eγδ#を決定するS5、S6、S7は図8と同様であるため、説明を省略する
図10の処理では、図8の処理と同様に、拡張誘起電圧ベクトルeγδのγ軸成分及びδ軸成分の情報を反映した判断をすることができる。
(効果)
本実施形態の2系統のモータ制御装置は、図16に示す比較例の構成に対し、系統和誘起電圧推定部41に加えて系統差誘起電圧推定部43を備える。
磁極位置推定部56は、系統和誘起電圧eγδw、系統和誘起電圧に系統差誘起電圧を加算した値(eγδw+eγδs)、及び、系統和誘起電圧から系統差誘起電圧を減算した値(eγδw−eγδs)のうちから位置誤差Δθが最小となるように選択されたいずれかの値に基づいて、ロータの磁極位置θγを推定する。これら3種類の演算値は、図7に示す[A]、[B]、[C]の推定誘起電圧誤差パターンに対応し、各誤差パターンにおける位置誤差Δθを最小とするものである。
したがって、2系統の不平衡により生ずる現実の推定誘起電圧の誤差パターンを、図7の[A]、[B]、[C]のうち最も近いパターンに分類し、磁極位置推定部56において、パターン毎に最適な演算値を用いて磁極位置θγを推定することにより、位置誤差Δθを低減することができる。
また、本実施形態の判断部53は、モータ制御装置の動作中に都度入力される3種類の演算値のうち最小の値を選択し、選択後拡張誘起電圧eγδ#として磁極位置推定部56に出力する。これにより、誤差パターンが既知でない場合や経時変化する場合にも、磁極位置推定部56による位置推定の周期毎に位置誤差Δθを最小にすることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態によるモータ制御装置について図11を参照して説明する。
第2実施形態のモータ制御装置102を構成する制御ブロックは、第1実施形態のモータ制御装置101と同じである。ただし、系統和誘起電圧推定部41から判断部53に対し、推定d軸の系統和誘起電圧eγwのみが出力される点が異なる。推定q軸の系統和誘起電圧eδwは、系統差誘起電圧eδsと加減算されることなく、磁極位置推定部56に直接出力される。
拡張誘起電圧ベクトルeγδは、本来、推定q軸方向のベクトルであり、推定q軸成分の誤差Δeδは相対的に無視して良いレベルであると考えられる。そこで、第2実施形態では、推定d軸成分についてのみ、系統和誘起電圧eγwと系統差誘起電圧eγsとを加減算する。
第2実施形態の判断部53は、図9のフローチャートのS1、S5、S6、S7において括弧内に示すように、推定d軸成分についてのみ演算値選択処理を実行し、選択後拡張誘起電圧としてeγ#を出力するようにしてもよい。
第2実施形態は、第1実施形態に対し、選択処理の演算量を低減することができる。
(第3実施形態)
第3実施形態によるモータ制御装置について図12を参照して説明する。
第3実施形態のモータ制御装置103は、系統差誘起電圧eγδsを演算する構成が第1実施形態と異なる。つまり、モータ制御装置103は、第1系統誘起電圧推定部45、第2系統誘起電圧推定部46、及び、系統差誘起電圧推定部47を備える。
第1系統誘起電圧推定部45は、基本的に第1系統の電圧指令値v* γδ1及び電流検出値iγδ1に基づいて、第1系統の拡張誘起電圧eγδ1を推定する。
第2系統誘起電圧推定部46は、基本的に第2系統の電圧指令値v* γδ2及び電流検出値iγδ2に基づいて、第2系統の拡張誘起電圧eγδ2を推定する。
このように、第1系統誘起電圧推定部45及び第2系統誘起電圧推定部46は、各系統の電圧及び電流を用いて系統毎に拡張誘起電圧を推定する。
なお、破線で示すように、第1系統の電圧指令値v* γδ1及び電流検出値iγδ1が更に第2系統誘起電圧推定部46に入力され、第2系統の電圧指令値v* γδ2及び電流検出値iγδ2が更に第1系統誘起電圧推定部45に入力されてもよい。例えば系統間の相互干渉を考慮する場合には、相手系統の電圧、電流値を用いて、干渉項を含む精密な演算をすることができる。
系統差誘起電圧推定部47は、第1系統の拡張誘起電圧eγδ1から第2系統の拡張誘起電圧eγδ2を減算し、系統差誘起電圧eγδsを算出する。系統差誘起電圧eγδsは、和差加算器51及び和差減算器52にて、系統和誘起電圧の誤差Δeγδwと加減算され、判断部53に入力される。
なお、系統差誘起電圧推定部に代えて又は加えて、系統和誘起電圧推定部が、第1系統の拡張誘起電圧eγδ1と第2系統の拡張誘起電圧eγδ2と加算し、系統和誘起電圧eγδwを算出してもよい。この構成によっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
(第4実施形態)
第4実施形態によるモータ制御装置について図13〜図15を参照して説明する。
第4実施形態のモータ制御装置104は、第1実施形態のモータ制御装置101を示す図1のI部の構成に代えて、図13に示す構成を採用する。すなわち、第4実施形態のモータ制御装置104では、系統和誘起電圧推定部42及び系統差誘起電圧推定部44は、入力信号中の高周波成分を除去するフィルタとして構成されている。
系統和誘起電圧推定部42は、「電圧指令値の和v* γδwから、インピーダンスZwと電流検出値の和iγδwとの積を減じた値」を入力とし、カットオフ周波数fcowを用いて表される数式19の伝達関数Gw(s)を用いてフィルタ処理する。
Figure 2018050418
系統差誘起電圧推定部44は、「電圧指令値の差v* γδsから、インピーダンスZsと電流検出値の和iγδsとの積を減じた値」を入力とし、カットオフ周波数fcosを用いて表される数式20の伝達関数Gs(s)を用いてフィルタ処理する。
Figure 2018050418
また、系統和誘起電圧推定部42及び系統差誘起電圧推定部44には、磁極位置推定部56が演算した速度ωが入力される。
なお、インピーダンスZw、Zsは、数式6、数式7の行列式の値をまとめたものであり、演算式の精度によっては、「Zw=Zs」ともなり得る。ただし、和演算と差演算で考慮するモータ定数の精度を変更する場合、現実の演算では「Zw≠Zs」として扱ってもよい。
一般に3相交流回転機の制御において、3相電流検出値iUVW1、iUVW2には、5次、7次、11次、13次等、(6k±1)次(kは自然数)の高調波成分が1次成分に重畳することが知られている。この高調波成分は、IPMモータにおけるロータマグネットの着磁不均一性やロータ及びステータの形状に起因する構造的要因やモータ動作中の外乱等により発生する。高調波成分は、脈動により、位置推定精度を低下させる要因となる。
相電流の1次成分に重畳する(6k±1)次成分は、座標変換により、γδ軸電流の6次、12次等の(6k)次成分となる。
図14(a)に、6次成分が重畳した2系統のγ軸電流iγ1_6次、iγ2_6次、及び、それらの和(平均値)を示す。2系統のγ軸電流0次成分の値、及び、γ軸電流6次成分の振幅は同一であると仮定する。
1周期が電気角60°に相当する6次成分について、位相が電気角30°ずれた2系統のγ軸電流iγ1_6次、iγ2_6次は、ちょうど山と谷とが反転した逆位相となる。そこで、電流和算出器32により逆位相のγ軸電流iγ1_6次、iγ2_6次の「和」を演算すると、6次高調波成分は互いにキャンセルされて系統和誘起電圧推定部42に入力される。
一方、図14(b)に示すように、1周期が電気角30°に相当する12次成分について、位相が電気角30°ずれた2系統のγ軸電流iγ1_12次、iγ2_12次は同位相となる。したがって、電流和算出器32により「和」を演算しても12次高調波成分はキャンセルされずに系統和誘起電圧推定部42に入力される。
そこで、系統和誘起電圧推定部42のカットオフ周波数fcowは、少なくとも12次高調波成分を除去できるような周波数に設定されることが好ましい。
また、系統差誘起電圧推定部44に入力される電流検出値の「差」については、逆に、同位相の12次高調波成分がキャンセルされ、逆位相の6次高調波成分はキャンセルされない。そこで、系統差誘起電圧推定部44のカットオフ周波数fcosは、少なくとも6次高調波成分を除去できるような周波数に設定されることが好ましい。
これらの理由により、第4実施形態による系統和誘起電圧推定部42及び系統差誘起電圧推定部44のカットオフ周波数fcow、fcosは、図15に示すように設定される。
図15(a)に示すように、カットオフ周波数fcow、fcosは、速度(モータ回転数)ωが下限値ωLIM以上の領域では、速度(モータ回転数)ωが高くなるほど高くなるように設定される。
このように、モータ制御装置104の系統和誘起電圧推定部42及び系統差誘起電圧推定部44は、モータ回転数ωに応じてフィルタのカットオフ周波数が可変に設定される。これにより、高調波成分の影響を適切に低減することができる。
図15(b)の周波数特性図には、ゲインが−3[dB]となる周波数をカットオフ周波数とする例を示す。6次高調波成分の除去を目的とする系統差誘起電圧推定部44(差フィルタ)のカットオフ周波数fcosは、12次高調波成分の除去を目的とする系統和誘起電圧推定部42(和フィルタ)のカットオフ周波数fcowよりも低く、例えば2分の1程度の値に設定される。
このように、モータ制御装置104の系統和誘起電圧推定部42及び系統差誘起電圧推定部44は、フィルタのカットオフ周波数fcow、fcosが互いに異なる値に設定される。これにより、高調波成分の影響を適切に低減することができる。
(その他の実施形態)
(a)上記実施形態の判断部53は、モータ制御装置の動作中に都度、「和eγδw」、「和+差(eγδw+eγδs)」、「和−差(eγδw−eγδs)」のうち最小値を選択し、選択後拡張誘起電圧eγδ#として磁極位置推定部56に出力する。
しかし、例えば第1系統又は第2系統の拡張誘起電圧の誤差Δeγδ1、Δeγδ2が常に0であることが既知である場合、判断部53を設けず、「和+差(eγδw+eγδs)」又は「和−差(eγδw−eγδs)」を利用して位置推定することを予め選択してもよい。
同様に、第1系統の誤差Δeγδ1が第2系統の誤差Δeγδ2の符号を反転した値に常に等しいことが既知である場合、判断部53を設けず、「和eγδw」を利用して位置推定することを予め選択してもよい。
(b)本発明の制御対象とする回転機は、3相回転機に限らず、4相以上の回転機であってもよい。
また、回転機の複数の巻線組の数、言い換えればモータ制御装置の系統数は3系統以上であってもよい。ただし、3系統以上のうち任意に選択した特定の2系統を対象として、本発明による位置推定が実行される。3系統のうち特定の2系統を固定するか、或いは、状況に応じていずれかの2系統を選択するか等の詳細な方法は、適宜決定してよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
101、102、103、104・・・モータ制御装置(回転機の制御装置)、
41、42・・・系統和誘起電圧推定部、
43、44、47・・・系統差誘起電圧推定部、
53・・・判断部、
56・・・磁極位置推定部、
61、62・・・電力変換器、
80・・・モータ(回転機)。

Claims (7)

  1. 3相以上の多相巻線組をステータ(84)に複数有する回転機(80)に対し、前記複数の巻線組への通電を位置センサレス制御で制御する回転機の制御装置であって、
    入力された電力を交流電力に変換し、前記回転機に供給する複数の電力変換器(61、62)と、
    一組の前記巻線組への通電を制御する一群の構成要素の単位を系統と定義すると、複数系統から選択した特定の2系統の拡張誘起電圧の和である系統和誘起電圧(eγδw)を推定する系統和誘起電圧推定部(41、42)と、
    前記特定の2系統の拡張誘起電圧の差である系統差誘起電圧(eγδs)を演算する系統差誘起電圧演算部(43、44、47)と、
    前記系統和誘起電圧、前記系統和誘起電圧に前記系統差誘起電圧を加算した値、及び、前記系統和誘起電圧から前記系統差誘起電圧を減算した値のうちから位置誤差(Δθ)が最小となるように選択されたいずれかの値に基づいて、前記回転機のロータ(85)の磁極位置(θγ)を推定する磁極位置推定部(56)と、
    を備える回転機の制御装置。
  2. 前記系統和誘起電圧、前記系統和誘起電圧に前記系統差誘起電圧を加算した値、及び、前記系統和誘起電圧から前記系統差誘起電圧を減算した値のうち最小の値を選択し、前記磁極位置推定部による前記磁極位置の推定に用いる選択後拡張誘起電圧(eγδ#)として出力する判断部(53)をさらに備える請求項1に記載の回転機の制御装置。
  3. 前記系統和誘起電圧推定部(41、42)は、前記特定の2系統の電圧和及び電流和に基づき前記系統和誘起電圧を推定し、
    前記系統差誘起電圧推定部(43、44)は、前記特定の2系統の電圧差及び電流差に基づき前記系統差誘起電圧を推定する請求項1または2に記載の回転機の制御装置。
  4. 前記特定の2系統について、各系統の電圧及び電流を用いて系統毎に拡張誘起電圧を推定する2つの系統誘起電圧推定部(45、46)をさらに備え、
    前記系統和誘起電圧推定部又は前記系統差誘起電圧算出部(47)の少なくともいずれか一方は、前記2つの系統誘起電圧推定部が推定した拡張誘起電圧の和又は差を算出する請求項1または2に記載の回転機の制御装置。
  5. 前記系統和誘起電圧推定部(42)及び前記系統差誘起電圧推定部(44)は、入力信号中の高周波成分を除去するフィルタとして構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転機の制御装置。
  6. 前記系統和誘起電圧推定部及び前記系統差誘起電圧推定部は、前記回転機の電気角速度に応じてフィルタのカットオフ周波数が可変に設定される請求項5に記載の回転機の制御装置。
  7. 前記系統和誘起電圧推定部及び前記系統差誘起電圧推定部は、フィルタのカットオフ周波数が互いに異なる値に設定される請求項5または6に記載の回転機の制御装置。
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