JP2018049002A - 試料ホルダーおよびx線分析方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ただし、上記特許文献1に記載の技術には、下記のとおり、更に改善すべき点があることを本発明者は見出した。
特許文献1に記載の技術では、一対の支持部材を備える試料ホルダーをX線分析装置の試料台に取り付けることにより、試料台の上にラミネートセルを垂直に立てて支持するようになっている。このため、たとえばX線分析装置の仕様等により、試料台に向かうX線の光軸(以下、「入射光軸」という。)が、試料台に対して斜めに傾いて設定されている場合は、試料台と平行に設定されている場合に比べて、ラミネートセルに入射するX線の侵入深さが深くなり、X線のエネルギー損失の割合が多くなってしまう。その結果、回折ピークの強度が低下し、回折X線のS/N比(signal-noise ratio)が悪化するおそれがある。
本発明の第1の態様は、
セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封した薄板状のラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に用いられる試料ホルダーであって、
前記ラミネートセルを両側から挟んで支持する第1支持部材および第2支持部材と、
前記第1支持部材および前記第2支持部材を互いに離間しないように押さえる押さえ手段と、を備え、
前記第1支持部材は、前記試料ホルダーの取付基準面が形成されたベース部と、前記取付基準面に対して所定の角度で傾いて前記ベース部から立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記立ち上がり部の一方の主面が前記ラミネートセルを支持するための支持面になっていて、この支持面内にX線透過用孔が形成されており、
前記第2支持部材は、前記立ち上がり部と対向する向きで前記第1支持部材に取り付けられるとともに、前記立ち上がり部と対向する側の主面が前記ラミネートセルを支持するための支持面になっていて、この支持面内にX線透過用孔が形成されている
ことを特徴とする試料ホルダーである。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記立ち上がり部の支持面内に形成されたX線透過用孔は、前記支持面から遠ざかるにつれて孔の大きさが拡大するように、前記ベース部から遠い側の孔内面が前記支持面に対してテーパー状に傾いて形成されている
ことを特徴とする上記第1の態様に記載の試料ホルダーである。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記取付基準面に対する前記立ち上がり部の傾き角度を調整可能な傾き調整機構を備える
ことを特徴とする上記第1または第2の態様に記載の試料ホルダーである。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記傾き調整機構は、前記ベース部上で前記立ち上がり部の傾き角度が変化する方向に前記立ち上がり部を回動可能に支持する回動支持部と、前記立ち上がり部の傾き角度が所定の角度となるように前記立ち上がり部の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備える
ことを特徴とする上記第3の態様に記載の試料ホルダーである。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記傾き調整機構は、前記立ち上がり部の傾き角度を目視確認するための目印を有する ことを特徴とする上記第3または第4の態様に記載の試料ホルダーである。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封した薄板状のラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に際して、
前記ラミネートセルを第1支持部材および第2支持部材により両側から挟んで支持するとともに、前記第1支持部材および前記第2支持部材を互いに離間しないように押さえ、かつ、前記X線の入射光軸の傾き角度に合わせて前記ラミネートセルを所定の角度で傾けて支持することにより、前記ラミネートセルの主面にX線を垂直に入射させる
ことを特徴とするX線分析方法である。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.X線分析装置の構成
2.ラミネートセルの構成
3.試料ホルダーの構成
4.X線分析方法
5.実施形態の効果
6.他の実施形態
7.変形例等
図1はX線分析装置の一例として透過型のX線回折測定装置の構成例を示す概略図である。
X線回折測定装置は、X線源1と、モノクロメータ2と、試料台3と、X線検出器4とを備える。X線源1は、X線を出射するものである。X線源1としては、たとえば銅のターゲットに電子を衝突させてX線を発生させる銅管球を用いることができる。モノクロメータ2は、X線源1が発生するX線から所定の波長成分を除去するものである。モノクロメータ2としては、たとえばヨハンソン型モノクロメータを用いることができる。X線源1として銅管球を用いた場合は、モノクロメータ2によってCukα2線を除去(分離)することができる。試料台3は、X線分析の対象となる試料を保持する試料ホルダーを取り付ける部分となる。試料ホルダーは試料台3の上面に取り付けられる。試料台3の上面は、平面視四角形に形成されるとともに、水平に配置されている。本実施形態においては、後述するラミネートセルを試料とする。X線検出器4は、試料で回折したX線の強度を検出するものである。図中の「2θ」は、X線の回折角を示している。以降の説明では、試料で回折したX線を「回折X線」ともいう。
図2はX線分析の対象試料の一例となるラミネートセルの構成を示す概略断面図である。図2ではラミネートセルの幅方向(図の奥行き方向)の中心部を縦方向に断面した状態を示している。
図示したラミネートセル10は、正極11と、負極12と、セパレータ13とを有する電池要素14を備える。正極11は、ラミネートセル10の正面方向(図の左右方向)から見て矩形のシート状に形成されている。正極11の片面には正極活物質層15が形成されている。正極活物質層15は、たとえば、ニッケル酸リチウムと、導電助剤と、結着剤とを用いて、塗膜形成されている。負極12は、正極11と同様に、ラミネートセル10の正面方向から見て矩形のシート状に形成されている。負極12の片面には負極活物質層16が形成されている。負極活物質層16は、たとえば、グラファイトと、結着剤とを用いて、塗膜形成されている。セパレータ13は、上記正極11および負極12と同様に、ラミネートセル10の正面方向から見て矩形のシート状に形成されている。電池要素14は、セパレータ13を間に挟んで正極11と負極12を積層した構造になっている。電池要素14の積層構造においては、正極11の正極活物質層15と負極12の負極活物質層16とが、セパレータ13を介して対向する状態に配置されている。
図3は本発明の実施形態に係る試料ホルダーの一構成例を説明する側断面図である。
図示した試料ホルダー20は、上述したラミネートセル10を試料としてX線分析を行う際に用いられるものである。ここで記述する「X線分析」とは、ラミネートセル10にX線を入射して分析データを得るin−situX線分析をいう。また、「in−situX線分析」とは、リチウムイオン二次電池を構成するラミネートセル10を分解することなくX線分析を行うことをいう。
図4は第1支持部材を正面から見た図であり、図5は第1支持部材を正面側から見た斜視図であり、図6は第1支持部材を背面側から見た斜視図である。なお、図1における第1支持部材の断面は、図4のA−A位置での断面を示している。また、以降の説明では図4の左右方向を第1支持部材21の幅方向という。
図7は第2支持部材を正面から見た図であり、図8は第2支持部材を正面側から見た斜視図である。なお、図1における第2支持部材22の断面は、図7のB−B位置での断面を示している。
上記構成からなる第1支持部材21および第2支持部材22には、それぞれ窓部材41,42が貼り付けられている。窓部材41は第1支持部材21の支持面31にX線透過用孔32の開口を塞ぐように貼り付けられ、窓部材42は第2支持部材22の支持面36にX線透過用孔37の開口を塞ぐように貼り付けられている。窓部材41,42は、それぞれX線を透過する性質を有する。また、窓部材41,42は、第1支持部材21および第2支持部材22でラミネートセル10を挟んだ場合に、ラミネートセル10に直接、接触する。
押さえ手段23は、第1支持部材21および第2支持部材22によってラミネートセル10を挟んで支持する場合に、それらが離間しないように第1支持部材21および第2支持部材22を押さえるものである。押さえ手段23は、第1支持部材21および第2支持部材22の各X線透過用孔32,37を通るX線と干渉しないように、X線透過用孔32,37の形成部位以外の箇所で第1支持部材21と第2支持部材22を押さえる。
次に、本発明の実施形態に係る試料ホルダーを用いたX線分析方法について説明する。本実施形態においては、X線分析方法の一例として、あらかじめ決められた測定条件にしたがってラミネートセル10の充放電を繰り返し行うとともに、この充放電を行ったまま、ラミネートセル10にX線を照射し、そこで回折したX線の強度を測定することにより、ラミネートセル10のX線回折プロファイルに関する分析データを得る方法について説明する。
本発明の実施形態においては、試料台3の上をX線が斜めに通過する場合でも、X線の傾き角度に対応する角度で第1支持部材21の立ち上がり部25を傾けた構成とし、この立ち上がり部25の支持面31と第2支持部材22の支持面36との間にラミネートセル10を挟んで押さえ手段23により押さえることにより、ラミネートセル10の主面に垂直にX線を入射させることができる。このため、試料台3の上にラミネートセル10を垂直に立てて支持する場合に比べて、X線のエネルギー損失の割合が少なくなる。したがって、X線の入射光軸が試料台3に対して傾きをもつ場合でも、回折ピークの強度が高く、S/N比が良好な分析データを得ることが可能となる。また、充放電の繰り返しによってラミネートセル10内にガスが発生しても、ラミネートセル10の両面を第1支持部材21と第2支持部材22によって押さえているため、ラミネートセル10の膨らみを抑制して正極と負極の電気的な接続状態を良好に維持することができる。このため、ラミネートセル10の充放電の状態を正しく反映した分析データを得ることが可能となる。
図11は本発明の他の実施形態に係る試料ホルダーの構成例を説明する部分側断面図である。
本実施形態においては、先述した実施形態に係る試料ホルダーと同様の部分に同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
傾き調整機構50は、試料ホルダー20を正面(図11の左側)から見たときに左右両側に設けられるもので、取付基準面28に対する立ち上がり部25の傾き角度θb(図3参照)を調整可能な機構である。図12は試料ホルダーを正面から見たときの傾き調整機構の構成を示す部分断面図である。傾き調整機構50は、立ち上がり部25を回動可能に支持する回動支持部52と、立ち上がり部25の姿勢を保持する姿勢保持部53と、を備える。回動支持部52および姿勢保持部53は、いずれも固定部51を用いて構成されている。
固定部51は、ベース部24の上面に固定されている。ベース部24に固定部51を固定する手段としては、ベース部24と固定部51を一体構造とする、あるいは接着、ネジ等で固定する、などの手段を採用することが可能である。固定部51は、板状に形成されるとともに、ベース部24の上面から垂直に起立するように配置されている。
回動支持部52は、ベース部24上で立ち上がり部25の傾き角度が変化する方向に立ち上がり部25を回動可能に支持するもので、固定部51に取り付けられた軸部材によって構成されている。回動支持部52を構成する軸部材は、円形の断面形状を有するピン状の部材であって、たとえば固定部51に圧入、接着等によって固定されている。回動支持部52の軸方向(長さ方向)の一端側は、固定部51の内側の面から横方向に突出し、その突出部分が立ち上がり部25の下端部に嵌合されている。立ち上がり部25の下端部には、回動支持部52の外径に対応した内径を有する孔25aが形成されている。回動支持部52は、立ち上がり部25の孔25aに嵌合されている。これにより、立ち上がり部25は、回動支持部52を構成するピン状部材の軸を中心に回動可能(時計回りおよび反時計回りの両方向に回転可能)に支持されている。なお、回動支持部52は、立ち上がり部25を回動可能に支持するものであれば、他の構成を採用してもよい。
姿勢保持部53は、立ち上がり部25の傾き角度が所定の角度となるように立ち上がり部25の姿勢を保持する。所定の角度に関しては、先述したとおりである。立ち上がり部25の姿勢とは、回動支持部52の軸を中心に立ち上がり部25を所定の角度に傾けるときの姿勢であって、たとえば取付基準面28に対する立ち上がり部25の傾き角度θbを60°とする場合は、θc=60°の条件を満たす立ち上がり部25の姿勢をいう。また、立ち上がり部25の姿勢を保持するとは、立ち上がり部25の姿勢が変化しないように、立ち上がり部25を固定状態に維持することをいう。このため、立ち上がり部25の姿勢を保持した場合は、立ち上がり部25の傾き角度が一定に保たれる。
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
2…モノクロメータ
3…試料台
4…X線検出器
10…ラミネートセル
20…試料ホルダー
21…第1支持部材
22…第2支持部材
23…押さえ手段
24…ベース部
25…立ち上がり部
26…脚部
28…取付基準面
31,36…支持面
32,37…X線透過用孔
45…ネジ
46…ナット
47a,47b…加圧子
50…傾き調整機構
51…固定部
52…回動支持部
53…姿勢保持部
60〜63…目印
Claims (6)
- セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封した薄板状のラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に用いられる試料ホルダーであって、
前記ラミネートセルを両側から挟んで支持する第1支持部材および第2支持部材と、
前記第1支持部材および前記第2支持部材を互いに離間しないように押さえる押さえ手段と、を備え、
前記第1支持部材は、前記試料ホルダーの取付基準面が形成されたベース部と、前記取付基準面に対して所定の角度で傾いて前記ベース部から立ち上がる立ち上がり部とを有し、前記立ち上がり部の一方の主面が前記ラミネートセルを支持するための支持面になっていて、この支持面内にX線透過用孔が形成されており、
前記第2支持部材は、前記立ち上がり部と対向する向きで前記第1支持部材に取り付けられるとともに、前記立ち上がり部と対向する側の主面が前記ラミネートセルを支持するための支持面になっていて、この支持面内にX線透過用孔が形成されている
ことを特徴とする試料ホルダー。 - 前記立ち上がり部の支持面内に形成されたX線透過用孔は、前記支持面から遠ざかるにつれて孔の大きさが拡大するように、前記ベース部から遠い側の孔内面が前記支持面に対してテーパー状に傾いて形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の試料ホルダー。 - 前記取付基準面に対する前記立ち上がり部の傾き角度を調整可能な傾き調整機構を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の試料ホルダー。 - 前記傾き調整機構は、前記ベース部上で前記立ち上がり部の傾き角度が変化する方向に前記立ち上がり部を回動可能に支持する回動支持部と、前記立ち上がり部の傾き角度が所定の角度となるように前記立ち上がり部の姿勢を保持する姿勢保持部と、を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の試料ホルダー。 - 前記傾き調整機構は、前記立ち上がり部の傾き角度を目視確認するための目印を有する ことを特徴とする請求項3または4に記載の試料ホルダー。
- セパレータを間に挟んで正極と負極を積層してなる電池要素を、電解液とともにラミネートフィルムにより密封した薄板状のラミネートセルを試料とし、前記ラミネートセルにX線を照射して分析データを得るin−situX線分析に際して、
前記ラミネートセルを第1支持部材および第2支持部材により両側から挟んで支持するとともに、前記第1支持部材および前記第2支持部材を互いに離間しないように押さえ、かつ、前記X線の入射光軸の傾き角度に合わせて前記ラミネートセルを所定の角度で傾けて支持することにより、前記ラミネートセルの主面にX線を垂直に入射させる
ことを特徴とするX線分析方法。
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