JP6409940B2 - 非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法 - Google Patents

非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセルと、そのラミネートセルを保持するラミネートセルホルダー、並びにそのラミネートセル及びホルダーを用いた非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法に関する。
さらに詳しくは、充電過程において二次電池内において発生するガスを連続的に評価することが可能な発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセルと、そのラミネートセルを発生ガス評価時に保持するラミネートセルホルダー、およびそれら、ラミネートセル及びホルダーを用いた非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット自動車を始めとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池に代表される非水系電解質二次電池がある。非水系電解質二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
しかし、非水系電解質二次電池は、従来の二次電池に比べて、充放電サイクルによりガスが発生しやすいという性質があり、さらに正極を高い電位となるまで充電して使用すると、正極活物質と電解液とが反応してガスが発生する可能性もあった。これらの発生したガスが正負極間に留まった場合には、正負極間の対向状態が悪くなり、スムーズな充放電が阻害されることが問題であった(例えば、非特許文献1参照)。
そこで、このような非水系電解質二次電池におけるガス発生を抑えるため、電解液や負極活物質などの研究開発が進められている。
この係る研究開発において、新たに開発された電解液や負極活物質などによるガス発生抑制効果を把握するため、開発された材料を試験するために、その材料を構成要素の一部に使用した非水系電解質二次電池を作製し、その非水系電解質二次電池を充放電等させて、その際に発生したガスの量やガスの成分を測定することが必要である。
ガス発生量の測定に関して、例えば、特許文献1には、既知の容積を持つ密閉空間中に二次電池のセルを収容し、その空間を真空にした時の圧力とその空間内でセルを解体した時に生じるガスによる圧力差を読み取り、その圧力差をガスの体積に換算し、発生したガス量を定量する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、専用に設計された分析装置を組み立てる必要があり、設備を保有するまでに要するコストや時間が大きくなる。しかも、測定のためには電池を解体しなければならず、充電過程中の発生ガスをリアルタイムに分析することができなかった。
このような問題の解決を図るために、ラミネートセルを用いてガス発生量を簡易的に測定する方法が検討されている。例えば、特許文献2には、ラミネートセルを液中に浸漬し、アルキメデスの原理を利用してその液量の増加分からガス発生量を測定する方法が開示されている。また、特許文献3には、充電後の正極極板を切り出し、正極極板と電解液とをラミネートセルの中に封じて80℃で保持し、その後、発生したガスを、水上置換法を用いて収集し、ガスクロマトグラフィーによりガス発生量を測定する方法が記載されている。
ここで、ラミネートセルは、正極集電箔に正極活物質層が形成された正極シートと、負極集電箔に負極活物質層が形成された負極シートとの間にセパレーターを介挿して積層シートを形成し、この積層シートを袋内に収容して電解液を注入し、その後袋を密封して製造されたものである。
しかしながら、特許文献2の方法では、微妙な液量の変化を容器の目盛で判断するため、読み取り誤差が生じやすく、連続的に測定することは困難である。また、導電性の液体を用いる場合は感電する危険性があるので、液の種類が絶縁性の液体に限定されてしまう。さらには、発生したガス量の評価は可能であるが、そのガス成分を分析することはできない。
また、特許文献3では、充電後の正極極板を切り出し、ラミネートセル内で電解液と反応させるものであり、測定に時間を要するばかりか、電池の充放中に連続してガス成分の評価を行うことは困難である。
特開2001−332312号公報 特開2007−258102号公報 特開2007−273259号公報
Panasonic Technical Journal Vol.56 No.2 Jul.2010
本発明は、上記問題点に鑑み、充電中の電池内で発生するガスを、連続的に回収して分析することが可能な非水系電解質二次電池ラミネートセルと、そのラミネートセルを固定するラミネートセルホルダーを提供することを目的とする。さらには、充電中の電池内で発生するガスを容易に分析することが可能な本発明に係るラミネートセル及びセルホルダーを用いた非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するため、充電中の電池内で発生するガスの採取方法について鋭意検討した結果、発生したガスをセル外に運搬し、回収するフローガスの供給口と回収口をラミネートセルに備え、充電中の電池にフローガスを供給して発生した微量なガスを、供給したフローガスとともに回収することにより、容易に連続的なガス分析が可能であるとの知見を得て、本発明の完成に至ったものである。
本発明の第1の発明は、非水系電解質二次電池の充電時に、その二次電池内部で発生するガス成分を採取、回収して分析する非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法であって、その非水系電解質二次電池が、正極と負極を、セパレーターを介して対向配置して構成した電極部と、その電極部を内部に備えるラミネートセル外装と、そのラミネートセル外装の内部にフローガスを連続的に供給するラミネートセル外装の外面に設けられるガス供給機構と、その電極部からの発生ガスを、そのフローガスとともに連続的に排出するラミネートセル外装の外面に設けられるガス回収機構と、そのガス供給機構から連続的に供給されたフローガスに、充電時に電極部で発生する発生ガスを吸収させる機構を備え、その発生ガスを吸収したフローガスを、ラミネートセル外装の外面に設けられたガス回収機構から連続的に回収する非水系電解質二次電池ラミネートセルで、前記非水系電解質二次電池を充電しながら、その二次電池内部へ連続してフローガスを供給し、二次電池内部で発生する発生ガスを、フローガスに吸収させ、発生ガスを吸収したフローガスを二次電池の外部へ排出、回収して、連続的にガス分析装置に供給することにより、発生ガスを分析することを特徴とする非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法である。
本発明の第2の発明は、第1の発明における発生ガスを吸収するフローガスが、フローガスの供給位置から回収位置間の直線距離より長い距離の迂回流路を経由して回収されることを特徴とする非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明におけるフローガスが、不活性ガスであることを特徴とする非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法である。
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明におけるガス分析装置が、ガスクロマトグラフィー装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置、誘電結合プラズマ質量分析装置、赤外線ガス分析装置、レーザーガス分析装置から選択される1種以上であることを特徴とする非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法である。
本発明によれば、充電中の電池内で発生するガスを、発生に即して容易に、且つ連続的に回収し、分析することが可能である。
また、本発明が提供するラミネートセルおよびラミネートセルホルダーは、構造が簡単でコスト的に安価であり、取り扱いも容易である。
さらに、本発明の発生ガス評価方法は、多種のガス分析に対応可能なものであり、その工業的価値は極めて大きく、工業上顕著な効果を奏するものである。
本発明に係る発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセルの一実施例における各部材の配置を示す概略図である。 本発明に係る発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセルのセル外装本体に用いたアルミラミネート外装を示す概略図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。 発生ガス評価時におけるラミネートセルホルダーと発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセルの使用形態を示す模式図である。 本発明に係るラミネートセルホルダーにおけるラミネートセル上部ホルダーを示す概略図である。 本発明に係るラミネートセルホルダーにおけるラミネートセル下部ホルダーを示す概略図である。 発生ガス評価において、比較に用いた非水系電解質二次電池ラミネートセルにおける各部材の配置を示す模式図である。
[発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセル]
本発明の発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセル(以下、単にラミネートセルという。)は、充電時にセルの内部に設置された、正極と負極とがセパレーターを介して対向するように積層配置された電極部からの発生ガスを採取してセル外部に導出し、その発生ガスの成分組成分析に供するものである。
以下、図1を用いて説明する。図1は本発明のラミネートセルの一実施例で、このラミネートセルAは、試験したい材料を用いた電極部(セパレーター4を介した正極シート2と負極シート3の積層体)を内部に設置したラミネートセル外装1(以下、「セル外装」とも称す)と、そのセル外装1の内部、即ち設置した電極部にフローガスを連続的に供給するガス供給機構7と、セル内部に配置された電極部からの発生ガスを、供給されたフローガスをキャリアガスとして用いて連続的に回収するガス回収機構8を有している。
さらに、セル外装1に設けたガス供給機構7から連続的に供給されたフローガスに、充電時に生じる電極部からの発生ガスを吸収させる機能と、その発生ガスをフローガスとともにセル外装1に設置されたガス回収機構8から連続的に排出して、求めるガスを回収する機能を有する。
このような機構のセルを用いることにより、充電中の電極部で生じる発生ガスを連続的に回収することが可能となり、回収したガスをガス分析装置に供給することでガス成分の連続的な分析を可能とするものである。
フローガスの連続的な供給機構であるガス供給機構7は、ガスの供給口を形成可能な部材(以下、供給口形成部材という)をラミネートセルAのセル外装1に機密性を保持して取り付けることで構成することができる。
この供給口形成部材は、外部からガスの供給が可能であって、取り付け部の機密性が保持できればよく、例えば、ガス配管用のコネクターなどは好ましく用いられる。また、供給口形成部材は、セル外装1に損傷を与えないものが好ましく、軽量で軟らかい樹脂製とすることが好ましい。さらに、電解液に含まれる有機溶媒との反応性の低いものが好ましく、例えば、ポリプロピレン製やフッ素樹脂製のものなどを用いるのが好ましい。
一方、セルの内部に配置した電極部からの発生ガスを、供給されたフローガスをキャリアガスとして用いた連続的な回収機構であるガス回収機構8も、ガス供給機構7と同様の構成及び材質とすればよい。
以上のような構成を有するラミネートセルAでは、フローガスの流路とガス発生部を空間的に開放された状態とすることで、発生ガスはフローガスに吸収される。またガスの発生は、電圧が印加される正極と負極およびセパレーターから形成された電極で、その多くが生じる。そのため、フローガスの流路が電極と空間的に分離されない状態で、フローガスをセル内に供給することにより、フローガスに発生ガスを吸収できる。
したがって、電極部への充電中に、フローガスを連続的に供給することで、フローガスとともに発生ガスを連続的に回収することができる。
一方、ラミネートセルAでは、充放電を良好な状態に維持するため、セルの内部に設置した電極部を加圧することが好ましい。
そのためガス供給装置及びガス回収装置に対応したガス供給機構7(例えば、上記供給口)、およびガス回収機構8(例えば、上記回収口)が、セル外装1の平面内、且つ電極部上にあると、均一かつ十分な加圧をする際に支障をきたすことがあるので、セル外装1の平面内において、正極2と負極3をセパレーター4を介して積層した電極部の占有部と異なる部分に、両方のガスのガス溜まり部9を備え、供給口および採取口が、そのガス溜まり部9に形成されていることが好ましい。このような構成により、電極部上を回避して供給口および採取口を形成することが可能となる。
また、充電中に生じた発生ガスが、そのガス溜まり部9内でフローガスに均一に吸収され、効率よく回収することができる。さらに、フローガスにガス成分を十分に吸収させるためには、供給口と採取口の距離を可能な範囲で長くすることが好ましい。
また、ガス溜まり部9が、電流入出力用タブリード(5は負極タブリード、6は正極タブリード)の接続位置と異なる位置で電極部と接していることが好ましい。電極部は、電流入出力用タブリードと接続されて外部と電流の入出力が行われるが、タブリードの接続位置にガス溜まり部を形成すると、タブリードと供給口および採取口が干渉するため、構造が複雑になるという問題や機密性の保持が十分にできなくなるという問題が生じることがある。
そこで、ガス溜まり部9をタブリード5、6の接続位置とは異なる位置に形成し、かつ電極部と接した位置に形成することにより、電極で生じた発生ガスを、ガス溜まり部9に流入させ、そこでフローガスに吸収させて効率よく回収することができる。また、ラミネートセルの構造もシンプルとなり、ガス漏れなどの問題を回避することができる。
さらに、ガス成分を効率よく回収するためには、供給口と採取口との間に、フローガスの流れを迂回させる迂回機構を有することが好ましい。
迂回機構としては、例えば、図1に示すガス溜り部9の斜線部位Mの位置で、セル外装1の表裏面を溶着することにより、供給口と採取口の直線的経路を遮断すればよい。或いはセルホルダーを用いて、そのセルホルダーに、セル外装1に設けた供給口と回収口間の直線的経路を外部から圧力を加えて遮断、調整する調整機構を備えて行っても良い。
このようにフローガスの流れを迂回させことで、フローガスがガス成分を吸収することなくラミネートセルから排出されることを抑制し、発生ガスをさらに効率よく回収することができる。
ラミネートセルAでは、供給口をセル外部に設置されたフローガスの供給装置と接続する機構と、回収口をセル外部に設置されたガス分析装置と接続し、そのガス分析装置に回収された発生ガスを直接的、かつ連続的に供給する機構を有することが好ましい。
これにより、フローガスの供給装置およびガス分析装置とラミネートセルA間でのガス漏れを抑制することかできるとともに、容易に連続的にガス分析装置に発生ガスを供給することができる。なお、それぞれの接続は、例えば、チューブなどを用いて行えばよく、供給口と回収口を、例えば、ガス配管用のコネクターで形成してチューブと接続すればよい。
さらに、供給口および回収口は、開閉機構を有することが好ましく、充電中における発生ガスの評価時以外は供給口および回収口を閉じることで、ラミネートセルA内への外気の流入を防止して、ラミネートセルAの劣化を抑制することができる。
[ラミネートセルホルダー]
本発明のラミネートセルホルダーを説明する。
図3に示すように、本発明のラミネートセルホルダーCは、本発明に係るラミネートセルAの充放電時に、そのラミネートセルAを保持して電極部を加圧する機能を有するもので、ラミネートセルAの電極部加圧機構と、フローガスの供給口と発生したガスをフローガスと共に回収する回収口との間を加圧して、図3の黒矢印に示すフローガスの供給口から回収口への直線的流路を遮断し、フローガスの迂回流路(白抜き矢印で示す流れ)を形成する機構を備えることで、供給口からセル内部に設置された電極部にフローガスを連続的に効率良く供給し、そのフローガスを回収口から連続的に排出させることができる。
図3において、Cはラミネートセルホルダー、Aはラミネートセル、22は圧力調整取付ネジ孔である。
本発明に係るラミネートセルホルダー(以下、単にホルダーという)に本発明のラミネートセルAを保持することで、ホルダーの電極部加圧機構によりラミネートセルAの電極部が加圧され、ラミネートセルAで十分な充放電を生じさせることができる。
また、供給口と採取口との間を加圧することで、この間の直線的なフローガスの流れが遮断されて迂回流路が形成され、これにより、迂回流路をフローガスが流れている間に、フローガスに電極部で発生した発生ガスを効率よく吸収させて回収することが可能となり、発生ガスの成分組成の分析を容易かつ正確に行うことができる。
この電極部への加圧を行うホルダーCの電極部加圧機構として、その加圧部にバネなどの弾性体を取り付けて加圧可能な構造としてもよいが、図4、図5に示すようにホルダーCを、ラミネートセル上部ホルダーC、およびラミネートセル下部ホルダーCの分離構造として、上下部をネジで連結し、そのネジの締め込み力を調整することにより任意の加圧状態が得られることから、構造的に簡単で調整も容易であることから好ましい。また、ネジによる連結に替えてバイスなどで挟み込んで上下部の固定と加圧を行ってもよい。
図4、図5において、20Uは上部ホルダー本体、20Lは下部ホルダー本体、21はラミネートセルAの電極部に対する加圧部、22はホルダーCを組み立て、ラミネートセルAを保持し、ラミネートセルAの電極部への加圧力を調整する圧力調整取付ネジ用の圧力調整取付ネジ孔である。なお、図4、図5はいずれもラミネートセルAと接する面から示した図である。
図3のラミネートホルダーCでは、上下左右の4箇所に圧力調整取付ネジ孔22を設け、ネジの締め込み力の調製により、電極部への所定の加圧状態及びフローガス流路の遮断、調整を行うことができる。
加圧力は、電極の各部が固定され、充放電が十分に行われる程度に調整すればよい。過度に加圧すると、正極あるいは負極が破壊されることがあり、好ましくない。
供給口と採取口との間のガス流路への加圧は、電極部への加圧と同様に行えばよく、フローガスの迂回流路が形成されればよい。
また、供給口からセル内部に前記フローガスを連続的に供給し、フローガスを採取口から連続的に排出させることが必要であり、フローガスは流路内を流れるため、供給口から採取口まで連続した流路を形成させる必要がある。
フローガスの流路はホルダーで加圧されないラミネートセルの部分に形成されるため、ホルダーの形状は流路を形成する部分が加圧されないようにすればよい。一方、ラミネートセルの電極部は、電極が内部にあるため、その他の部分と比べると厚くなっているため、迂回流路を形成する加圧力が十分に得られないことがある。このため、ホルダーは、電極部への加圧力と、供給口と採取口との間の加圧力を個別に調整することを可能とする機構を有することが好ましい。
例えば、図4、図5のように、上下部をネジで連結する構造とした場合には、ラミネートセルの外縁より外側に少なくとも4箇所の複数のネジ(ラミネートセル外縁より外側の3箇所のネジは電極部への加圧力を調整、ラミネートセル下方中央のネジは迂回流路を形成するための加圧力を調整)を配置し、電極部への加圧力と、供給口と採取口との間で迂回流路形成するための加圧力を、これら複数のネジの締め込み力により調整する調整機構とすることができる。また、各加圧部の厚みを変えるか、各加圧部にスペーサーなどを挟み込み、加圧力を調整してもよい。さらに、複数のネジの締め込み力による調整と厚みやスペーサーによる調整を併用してもよい。
ホルダーCの材質は、特に限定されず、各部への加圧が十分に可能な強度を有する材質であればよく、金属や樹脂を用いることができるが、加工が容易で絶縁体である樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂製とすることで、ネジの締め込み力により調整する際には調整が容易であり好ましい。
ホルダーCにより形成される迂回流路は、前記供給口と前記採取口の直線距離より長く、かつ前記電極の外周部に形成されることが好ましく、図3の「白抜き矢印」で示すように形成されることがより好ましい。これにより、電極部への加圧を妨げることなく、迂回流路を形成することが可能であり、電極部の外周部を前記フローガスが流れ、その際に発生ガス(図3の「白抜き矢印」に向かう「破線矢印」)を十分に吸収することができる。特に、迂回流路長は、上述のように電極外周の半分以上の長さとすることが好ましく、これにより、ガス成分の吸収をさらに十分なものとすることができる。
[非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法]
本発明の非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法(以下、単にガス評価方法という)は、非水系電解質二次電池の充電時に、電池内で発生する発生ガスを採取、回収して分析するものである。
その特徴とする所は、非水系電解質二次電池を充電しながら、電池の内部へ連続的にフローガスを供給し、電池内部で発生する発生ガスを、フローガスに吸収させてフローガスとともに電池の外へ排出、回収される発生ガスを、連続的にガス分析装置に供給することにより、発生ガスの成分組成を連続的に分析するものである。
本発明のガス評価方法では、充電中に生じるガス発生の反応に即して、発生ガスを分析することが可能であり、ガス発生の反応状況をより詳細に分析することができる。
また、充電中に生じるガスの回収は、急激に多量のガスが発生するような場合を除き、その発生が微量であるため、発生ガスのみでは回収が困難である。そこで、本発明のガス評価方法では、電池の内部へ連続的にキャリアガスとしてフローガスを供給し、電池内部で発生する発生ガスを、フローガスに吸収させ、フローガスとともに電池の外へ排出されることで、微量の発生ガスまでガス発生の反応に即して分析することを可能としている。
本発明のガス評価方法においては、フローガスに発生ガスを吸収させて排出、回収させるため、発生ガスを十分にフローガスに吸収させることが好ましく、そのためには、フローガスの供給位置から回収位置までの直線距離より長い迂回流路を経由してフローガスを流すことが好ましい。
これにより、電池内でフローガスが流れる間に、フローガスに発生ガスを十分に吸収させることが可能とすることができる。このように電池内でフローガスが流れる時間を十分なものとするためには、適切な流路を電池内に形成することが必要であり、形状の自由度が高いラミネートセルを用いることが好ましく、本発明のラミネートセルは好適であり、さらに本発明のラミネートセルをセルホルダーで保持した形態の装置は発生ガスの評価により好適である。
ここで、フローガスの流量は、フローガスに吸収させ連続的にガス分析装置に供給することが可能で、ガス分析装置で分析が可能な量とすればよく、ガス分析装置への必要供給量に合わせて決定すればよい。一方、フローガスは、電池内での充放電時の反応に関与せず、ガス分析に無害であるものが好ましい。したがって、Ar、Heなどの不活性ガスが好ましく、Heがより好ましい。
ラミネートセル内にガスを発生させる方法はとくに限定されないが、例えば、ラミネートセルを高電圧状態に維持することによって、ガスを発生させることができる。具体的には、測定温度を25〜80℃の範囲に設定することが好ましい。ラミネートセルを高電圧状態まで充電させることで、正極と電解液との反応によって、ラミネートセル内に水素やメタンなどのガスを発生させることができる。
例えば、リチウムイオン二次電池に使用される正極および負極の材料と電解液を使用して製造したラミネートセルであれば、正極の電位がリチウム基準で4.0〜5.0Vとなるまで充電させことでガスを発生させることができる。
ガス評価に使用するガス分析装置は、特に限定されるものでなく、分析目的に応じて分析装置を選択することが可能であるが、例えば、ガスクロマトグラフィー装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置、誘電結合プラズマ質量分析装置、赤外線ガス分析装置、レーザーガス分析装置から選択される1種以上を用いてガス分析することが可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
[ラミネートセル]
図1に示す構造のラミネートセルAを作製した。
先ず、ラミネートセル外装1を準備した。ラミネートセル外装1は、図2に示すように大気捕集用ミニバルブ付スリーブ(ガス採取用コネクター)付のアルミニウム製サンプリングバック(ジーエルサイエンス製)をラミネートセル外装本体10に用い、縦90mm、幅80mmに加工して作製した。図2において、1はラミネートセル外装(アルミニウム製)、7はガス供給機構のフローガス供給用コネクター、8はガス回収機構の発生ガス回収用コネクター、10はラミネートセル外装本体、14はミニバルブ付スリーブである。
以下にラミネートセルの作製手順を示す。
電極にアルミニウム製集電箔(厚み0.02mm)に正極活物質層が形成された正極タブリード6を有する正極シート2(正極)と、銅製集電箔(厚み0.02mm)に負極活物質層が形成された負極タブリード5を有する負極シート3(負極)を用い、その間に、ポリプロピレン製微多孔膜(厚み20.7μm、空孔率密度43.9容量%)からなるセパレーター4を介挿して、3層積層シートを形成した。この積層シートを、二つ折りになっているラミネートシートの間に挟み、正極タブリード6および負極タブリード5が、予め準備したラミネートセル外装(アルミラミネート外装)1の端縁から突出した状態になるように収容した。
そして、ラミネートセル外装1の2辺を熱融着で密封した。その後、残った辺の開口からラミネートセル外装内を真空引きした後、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとの混合溶媒(容量比3:3:4)にLiPF(1mol/L)とシクロヘキシルベンゼン(2質量%)を溶解した電解液(宇部興産製)を520μl注入し、その開口も熱融着で密封し、ラミネートセルAを作製した。作製されたラミネートセルAの大きさは、縦90mm、幅80mm、厚み550μmであった。
[ラミネートセルホルダー]
次に、図4、5に示す構造のラミネートセル上部ホルダーCと下部ホルダーCを、MCナイロンを用いて作製した。その後、図3に示すように、ラミネートセルAをラミネートセルホルダーC、Cに挟んで4箇所(圧力調整取付ネジ孔22)をネジ止めして保持した。各部への加圧力は、4箇所のネジの締め込み量を調整することで行った。
図3、4、5において、21は電極加圧部、22は圧力調整取付ネジ孔、Cはラミネートセル上部ホルダー、Cはラミネートセル下部ホルダー、Cはラミネートセルホルダー、黒矢印はフローガスの直線流路、白抜き矢印はガスの迂回流路を示す。
[ガス分析]
図3に示すようにラミネートセルホルダーCで保持したラミネートセルAのフローガス供給用コネクター7とヘリウム(He)ガス供給装置(図示せず)、発生ガス回収用コネクター8とガス分析装置のガスクロマトグラフィー装置(図示せず)をチューブ(図示せず)で接続し、フローガスがラミネートセルA内を経由してガス供給装置からガス分析装置まで連続的に流れる状態とした。
次に、ラミネートセルAを25〜35℃の範囲に保持し、フローガスとして定量のヘリウムガスを流しながら、リチウム基準で4.6Vとなるまで充電した。充電中はヘリウムガスが、ガスクロマトグラフィー装置まで安定して連続的に供給され、ガス分析が可能であることを確認した。
高電圧状態では、正極と電解液との反応によって、ラミネートセルA内に水素やメタンなどのガスが発生し、フローガスに運搬されてガス分析装置に送られることを確認した。
(比較例1)
実施例1と同様にして図6に示すラミネートセルBを作製した。
実施例1と同様の条件で充電したが、ラミネートセル外装部に直接シリンジを刺してガスを採取、回収したため、連続的なガス成分の分析は不可能であり、ガス採取後の充放電は不可能となるため、発生ガス評価を中止した。
本発明は、充電時に電池内で発生するガス種や目的に応じて分析装置を使い分け(例:ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析装置、誘電結合プラズマ質量分析装置 )が可能であり、各種の電池試験(例:高温保存試験、過充電試験、サイクル試験など)における発生ガス評価に応用することができる。
1 ラミネートセル外装
2 正極シート
3 負極シート
4 セパレーター
5 負極タブリード
6 正極タブリード
7 ガス供給機構(供給口、フローガス供給用コネクター)
8 ガス回収機構(回収口、発生ガス回収用コネクター)
9 ガス溜り部
10 ラミネートセル外装本体
14 ミニバルブ付スリーブ
20U 上部ホルダー本体
20L 下部ホルダー本体
21 電極加圧部
22 圧力調整取付ネジ孔
A (本発明に係る)発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセル
B (比較例で使用した)発生ガス評価用非水系電解質二次電池ラミネートセル
C ラミネートセルホルダー
ラミネートセル上部ホルダー
ラミネートセル下部ホルダー
M (ガス溜り部の) 直線的経路遮断部位

Claims (4)

  1. 非水系電解質二次電池の充電時に、前記二次電池内部で発生するガス成分を採取、回収して分析する非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法であって、
    前記非水系電解質二次電池が、正極と負極を、セパレーターを介して対向配置して構成した電極部と、前記電極部を内部に備えるラミネートセル外装と、前記ラミネートセル外装の内部にフローガスを連続的に供給する前記ラミネートセル外装の外面に設けられるガス供給機構と、前記電極部からの発生ガスを、前記フローガスとともに連続的に排出する前記ラミネートセル外装の外面に設けられるガス回収機構と、前記ガス供給機構から連続的に供給された前記フローガスに、充電時に前記電極部で発生する発生ガスを吸収させる機構を備え、前記発生ガスを吸収したフローガスを、ラミネートセル外装の外面に設けられたガス回収機構から連続的に回収する非水系電解質二次電池ラミネートセルで、
    前記非水系電解質二次電池を充電しながら、前記二次電池内部へ連続してフローガスを供給し、前記二次電池内部で発生する発生ガスを、前記フローガスに吸収させ、発生ガスを吸収したフローガスを前記二次電池の外部へ排出、回収して、連続的にガス分析装置に供給することにより、前記発生ガスを分析することを特徴とする非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法。
  2. 発生ガスを吸収するフローガスが、フローガスの供給位置から回収位置間の直線距離より長い距離の迂回流路を経由して回収されることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法。
  3. 前記フローガスが、不活性ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法。
  4. 前記ガス分析装置が、ガスクロマトグラフィー装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置、誘電結合プラズマ質量分析装置、赤外線ガス分析装置、レーザーガス分析装置から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系電解質二次電池の発生ガス評価方法。
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