JP2018048237A - セルロースナノファイバーの製造装置及びセルロースナノファイバーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図1のセルロースナノファイバーの製造装置1は、セルロースナノファイバーを製造するための装置である。セルロースナノファイバーの製造装置1は、スラリー中のパルプ繊維に対して、酸化処理、加水分解処理又はこれらの組み合わせからなる化学的処理を施す化学的処理機構2と、上記スラリー中のパルプ繊維を粗解繊するためのリファイナー3と、スラリー中のパルプ繊維を微細化する高圧ホモジナイザー4とを備える。また、当該製造装置1は、上記高圧ホモジナイザー4により発生した熱を水を用いて除去する除熱手段51を有する熱交換機構5を備えている。この熱交換機構5は、上記除熱手段51で加熱された水を用いて上記化学的処理機構2のスラリーを加熱する加熱手段52をさらに有している。
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るセルロースナノファイバーの製造方法は、前処理工程(s1)及び微細化工程(s2)を備え、上記前処理工程(s1)は化学的処理工程(s1a)及び粗解繊工程(s1b)を備える。化学的処理工程(s1a)と粗解繊工程(s1b)との順番は特に限定されるものではなく、いずれの工程を先に行ってもよい。当該製造方法によれば、化学的処理工程(s1a)と粗解繊工程(s1b)との2種類の前処理の組み合わせにより、パルプ繊維が柔軟になり、予備的な解繊が効率的に生じ、後工程の微細化工程の短縮化、すなわち省エネルギー化を図ることができる。また、当該製造方法は上記高圧ホモジナイザー4によって発生した熱を水によって除去する熱交換工程(s3)を備えている。上記熱交換工程(s3)では、除熱によって加熱された水を用いて上記化学的処理工程(s1a)のスラリーを加熱する。これらの結果、省エネルギーでセルロースナノファイバーを製造することができる。以下、各工程を詳説する。
前処理工程(s1)は、スラリー中のパルプ繊維に対して前処理を施す工程であり、パルプ繊維を機械的な処理により微細化する前に、パルプ繊維に対して前処理を施す工程である。以下に、セルロースナノファイバーの原料となるパルプ繊維について説明する。
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ;
ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の機械パルプ;
茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ;
古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
前処理工程(s1)の一つである化学的処理工程(s1a)は、上記スラリー中のパルプ繊維に対して、酸化処理、加水分解処理又はこれらの組み合わせからなる化学的処理を施す工程である。このような化学的処理を施すことにより、パルプ繊維中の化学結合の一部を分断すると共に、パルプ繊維を膨潤させることができる。
粗解繊処理工程(s1b)は、前処理工程(s1)の一つとして、粗解繊処理工は、スラリー中のパルプ繊維をリファイナーにより粗解繊する処理であり、パルプ繊維に対して予備的な解繊を行う。リファイナーは、上記「セルロースナノファイバーの製造装置」において説明したものを用いることができる。
化学的処理工程(s1a)と粗解繊処理工程(s1b)とは、いずれの工程を先に行ってもよいが、化学的処理工程(s1a)を先に行うことが好ましい。化学的処理工程(s1a)及び上記粗解繊工程(s1b)の順に行うことで、化学的前処理により膨潤したパルプ繊維に対して、リファイナーにより剪断力が効率的に付与されるため、予備的な解繊の効率性を高め、消費エネルギー量を低減することができる。
微細化工程(s2)は、前処理された上記スラリー中のパルプ繊維を高圧ホモジナイザー処理により微細化する工程である。本工程を経ることによりセルロースナノファイバーを得ることができる。本発明のセルロースナノファイバーの製造方法によれば、上述した2種類の前処理を行っているため、本微細化工程(s2)を短縮(処理回数の低減)し、省エネルギー化を図ることができる。
熱交換工程(s3)は、上記微細化工程(s2)によって発生した熱を化学的処理工程(s1a)に供給する工程である。具体的には、この熱交換工程(s3)では、微細化工程(s2)後のスラリーと水(冷却水)との間で熱交換させる。そして、熱交換後の水(温水)は化学的処理工程(s1a)に供給される。また、熱交換後のスラリーは、微細化工程(s2)に供給されることが好ましい。熱交換後のスラリーは、微細化工程(s2)に供給されることで、上記微細化工程(s2)を複数回行うことができる。そして、熱交換工程(s3)後のスラリーのパルプ繊維が十分に微細化された際には、各工程が終了する。この熱交換工程(s3)の熱交換に際しては、「セルロースナノファイバーの製造装置」において説明した熱交換機構を用いることができる。
なお、上記実施形態においては、微細化工程(s2)において一台の高圧ホモジナイザー4によって微細化処理を行うものを例示的に説明したが、図4に示すように複数の高圧ホモジナイザー41を用いて微細化処理を行うことが可能である。複数の高圧ホモジナイザーを用いる場合、複数の高圧ホモジナイザーを直列的に配して複数の高圧ホモジナイザーによって連続的に微細化処理を行うことも可能であるが、図4に示すように複数の高圧ホモジナイザー41を並列的に配することが好ましい。これによって、複数の高圧ホモジナイザー41によって多量のスラリーの微細化処理を同時に行うことができる。
前処理工程を経て微細化工程に供されるパルプ繊維のファイン率の下限としては、例えば60%が好ましく、70%がより好ましく、75%がさらに好ましい。また、このファイン率の上限としては、例えば90%が好ましく、85%がより好ましい。このファイン率を上記下限以上とすることで、十分な前処理(解繊)が進んだパルプ繊維となり、微細化工程において効率的に更なる微細化を行うことができる。また、ファイン率を上記下限以上とすることで、微細化工程において高圧ホモジナイザーを用いて処理した際、パルプ繊維の流路内での詰まりの発生を低減することもできる。一方、このパルプ繊維のファイン率が上記上限以下とすることで、過剰に前処理、特に粗解繊処理を施すことを抑制することができ、製造工程全体としての、省エネルギー化及び高効率化を図ることができ、セルロースナノファイバーの生産性を高めることができる。なお、前処理工程と微細化工程との間に、パルプ繊維のファイン率を測定するファイン率測定工程を設けてもよい。ここで、「ファイン率」とは、繊維長が0.2mm以下、かつ繊維幅が75μm以下であるパルプ繊維の質量基準の割合をいう。このファイン率は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」によって測定することができる。繊維分析計「FS5」は、希釈したセルロース繊維が繊維分析計内部の測定セルを通過する際の画像分析により高い精度でセルロース繊維の長さ、幅を測定できる。
前処理工程を経て微細化工程に供されるパルプ繊維の平均繊維長としては特に限定されないが、下限としては、0.15mmが好ましく、0.2mmがより好ましく、0.25mmがさらに好ましい。一方、この上限としては、0.5mmが好ましく、0.4mmがより好ましい。このような繊維長のパルプ繊維を微細化工程に供することで、製造工程全体としての省エネルギー化及び高効率化を図ることができ、セルロースナノファイバーの生産性を高めることができる。
2 化学的処理機構
21 混合機構
22 反応槽
3 リファイナー
4 高圧ホモジナイザー
42a 一方のタンク
42b 他方のタンク
10 対向衝突型高圧ホモジナイザー
11 上流側流路
12 下流側流路
5 熱交換機構
51 除熱手段
52 加熱手段
53 返送路
S1、S2、S3 スラリー
X 合流部
s1 前処理工程
s2 微細化工程
s3 熱交換工程
s1a 化学的処理工程
s1b 粗解繊工程
Claims (4)
- スラリー中のパルプ繊維に対して、酸化処理、加水分解処理又はこれらの組み合わせからなる化学的処理を施す化学的処理機構、
上記スラリー中のパルプ繊維を粗解繊するリファイナー、
上記スラリー中のパルプ繊維を微細化する高圧ホモジナイザー、及び
上記高圧ホモジナイザーにより発生した熱を水を用いて除去する除熱手段を有する熱交換機構を備え、
上記熱交換機構が、上記除熱手段で加熱された水を用いて上記化学的処理機構のスラリーを加熱する加熱手段をさらに有するセルロースナノファイバーの製造装置。 - 上記化学的処理機構が反応槽を有し、上記加熱手段が上記加熱された水を上記反応槽に供給する請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造装置。
- 上記除熱手段が上記微細化処理後のスラリーから熱を除去し、
上記熱交換機構が、除去手段によって除熱したスラリーを上記高圧ホモジナイザーに返送するための返送路を有する請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造装置。 - スラリー中のパルプ繊維に対して、酸化処理、加水分解処理又はこれらの組み合わせからなる化学的処理を施す工程、
上記パルプ繊維をリファイナーにより粗解繊する工程、
上記スラリー中のパルプ繊維を高圧ホモジナイザーを用いた機械的な処理により微細化する工程、及び
上記高圧ホモジナイザーによって発生した熱を水によって除去する熱交換工程
を備え、
上記熱交換工程で、除熱によって加熱された水を用いて上記化学的処理工程のスラリーを加熱するセルロースナノファイバーの製造方法。
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